(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付用治具、コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/00 20060101AFI20240903BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240903BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
E04G21/00
E04G21/12 105Z
E04G21/02
(21)【出願番号】P 2020165398
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.試験日:2020(令和2)年8月25日 2.試験場所:前田製管株式会社 宇都宮工場 〒321-0406 栃木県宇都宮市金田町 466 3.公開者:中西 博 4.試験内容:中西 博が、前田製管株式会社宇都宮工場にて、江里口 玲及び中西 博が発明した、「コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付用治具、コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付方法」について、その性能検証試験を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江里口 玲
(72)【発明者】
【氏名】中西 博
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-192319(JP,A)
【文献】特開2004-092376(JP,A)
【文献】特開2013-057190(JP,A)
【文献】米国特許第04463979(US,A)
【文献】特開平05-306934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 21/00-21/10
E04G 21/12
E04G 25/00-25/08
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付用治具であって、
第一方向に延在する第一部材と、
前記センサが固定される第二部材とを備え、
前記第二部材は、複数の小部材を有してなり、
前記複数の小部材に属する第一小部材及び第二小部材は、それそれが異なる位置で前記第一部材に対して回動可能に連結し、
前記第一小部材及び前記第二小部材は、それぞれ前記センサを接続するための接続部材が連結されていることを特徴とする、取付用治具。
【請求項2】
前記複数の小部材は、連結点を介して相互に直列的に連結されており、
前記複数の小部材のうち、前記第一部材に連結された前記第一小部材及び前記第二小部材以外の小部材は、隣接する小部材に対して回動可能に連結され、
前記第一部材及び前記第二部材によって形成される枠状体の内側に、前記センサが位置することを特徴とする、請求項1に記載の取付用治具。
【請求項3】
前記第二部材を引っ掛けるための第三部材を備え、
前記第三部材は、前記第二部材に引っ掛かることで前記第一方向に平行な方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せ可能な第一フック部を有し、
前記第二部材は、前記第三部材により引き寄せられた際に、当該第二部材の少なくとも一部が回動して、前記枠状体の内側の面積が減少するように、前記枠状体の形状が変形可能に構成されることを特徴とする、請求項2に記載の取付用治具。
【請求項4】
前記第二部材を引っ掛けるための第四部材を備え、
前記第四部材は、前記第二部材に引っ掛かることで前記第一方向に直交する方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せ可能な第二フック部を有し、
前記第二部材は、前記第四部材により引き寄せられた際に、当該第二部材の少なくとも一部が回動して、前記枠状体の内側の面積が増加するように、前記枠状体の形状が変形可能に構成されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の取付用治具。
【請求項5】
前記第一小部材及び前記第二小部材に連結された前記接続部材は、弾性体で構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の取付用治具。
【請求項6】
前記第一小部材及び前記第二小部材は、それぞれ2箇所以上で前記接続部材が連結されていることを特徴とする、請求項5に記載の取付用治具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の取付用治具を用いた、コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付方法であって、
前記第一部材と、前記第一部材に対して回動可能に連結された前記第二部材とを準備する工程(a)と、
前記第二部材に対して前記センサを固定する工程(b)と、
前記工程(b)の後、前記第二部材を前記第一部材に近づける方向に回動させた状態で、前記センサが目標位置に達するまで前記第一部材を押し込む工程(c)とを有することを特徴とする、センサの取付方法。
【請求項8】
前記第二部材は、連結点を介して相互に直列的に連結された複数の小部材を有してなり、
前記複数の小部材に属する第一小部材及び第二小部材は、それそれが異なる位置で前記第一部材に対して回動可能に連結され、
前記複数の小部材のうち、前記第一部材に連結された前記第一小部材及び前記第二小部材以外の小部材は、隣接する小部材に対して回動可能に連結され、
前記第一部材及び前記第二部材によって枠状体が形成され、
前記工程(b)は、前記第一部材、並びに、前記第二部材に属する前記第一小部材及び前記第二小部材に対して、それぞれ異なる位置で前記センサを固定する工程であり、
前記工程(c)は、
第一フック部を含む第三部材を前記第二部材に引っ掛けた後に前記第一方向に平行な方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せることで、前記第二部材の少なくとも一部を回動させて、前記枠状体の内側の面積を減少させるように前記枠状体の形状を変形させる工程(c1)と、
前記工程(c1)の後に、前記第一部材を押し込む工程(c2)とを有し、
前記工程(c)の後、前記枠状体の形状を再変形させる工程(d)を有し、
前記工程(d)は、
前記第二部材を引っ掛けるための第二フック部を含む第四部材を準備する工程(d1)と、
前記第二フック部を前記第二部材に引っ掛けた後に前記第一方向に直交する方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せることで、前記第二部材の少なくとも一部を回動させて、前記工程(c1)によって変形された前記枠状体の内側の面積を増加させるように前記枠状体の形状を再変形させる工程(d2)とを有することを特徴とする、請求項7に記載のセンサの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの取付用治具に関し、特にコンクリート構造物内に設置されるセンサの取付用治具に関する。また、本発明は、このような治具を用いてコンクリート構造物内に設置されるセンサを取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の歪みを計測するために、歪みセンサをコンクリート構造物内に設置する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート構造物を建築する際には、多くの鉄筋が配筋された状態でフレッシュコンクリートが打設される。
図1は、コンクリート構造物の配筋構造を模式的に示す図面である。コンクリート構造物4には、多数の主筋2及び帯筋3が配設されている。
【0005】
一般的に、コンクリート構造物4が大型化するほど、主筋2及び帯筋3の数は多くなり、またそれらの間隔も狭くなる。
図2は、フレッシュコンクリートを打設する前の状態における配筋状態の一例を示す平面図であり、
図1の斜視図をZ方向から見たときの平面図に対応する。ただし、
図1と
図2では図示の都合上、主筋2や帯筋3の本数が異なっている。
図2に示す主筋2同士の間隔d2は、100mmに達しない場合も少なくない。また、コンクリート構造物が大型化・高層化すると、例えば柱部材等においては、一辺の長さが1.5mを超えるような場合も生じる。この場合には、主筋2の本数は当然に多くなる。
図2に図示された主筋2の本数はあくまで模式的に示されたものである。
【0006】
図3は、フレッシュコンクリートを打設する前の状態における配筋状態の一例を示す平面図であり、
図1の斜視図を
図2とは別の方向(Y方向)から見たときの模式的な図面である。ただし、
図1と
図3では図示の都合上、主筋2や帯筋3の本数が異なっている。上述したように、主筋2同士の間隔d2に加えて、
図3に示すように帯筋3同士の間隔d3についても、100mmに達しない場合が少なくない。
【0007】
コンクリート構造物4に対して、コンクリート用の歪みセンサ5(
図2参照)を設置しようとする場合、歪みセンサ5は、なるべくコンクリート構造物4の中央付近に設置することが望ましい。このため、
図2に示すように、帯筋3で形成された枠状の領域の中央付近に歪みセンサ5を位置させた状態で、フレッシュコンクリートを打設することになる。
【0008】
しかし、歪みセンサ5は、100mmを超えるサイズのものもあり、特に大型のコンクリート構造物4に対して設置する場合には、このようなサイズの歪みセンサ5を利用することが想定される。すると、主筋2と帯筋3に挟まれた開口領域P1を通じて歪みセンサ5を中央付近まで挿入する作業が困難となる場合がある。
図3では、一例として歪みセンサ5のZ方向に係る長さ5zが、主筋2同士の間隔d2及び帯筋3同士の間隔d3よりも大きい場合が、図示されている。
【0009】
また、コンクリート構造物4が大型となる場合には、コンクリート柱の一辺が長くなるため、歪みセンサ5を所定の位置に設置するために作業員が回り込むことも難しい場合がある。この場合、歪みセンサ5を目標となる設置場所に位置させるために、現場の状況に応じて、例えばセンサ5を吊り上げて上から挿入する等、作業工程を工夫する必要が生じ、作業が煩雑化してしまう。
【0010】
なお、上記の説明は、コンクリート用の歪みセンサをコンクリート構造物内に設置する場合を想定して行ったが、歪みセンサ以外のコンクリート構造物内に設置する必要がある他のセンサについても、同種の課題が生じ得る。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、簡易な作業によって、コンクリート構造物内に設置されるセンサを取り付けることを可能にするセンサの取付用治具を提供することを目的とする。また、本発明は、簡易な作業によって、コンクリート構造物内に設置されるセンサを取り付ける方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るセンサの取付用治具は、コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付用治具であって、
第一方向に延在する第一部材と、
前記センサが固定される第二部材とを備え、
前記第二部材は、前記第一部材に対して回動可能に連結されることを特徴とする。
【0013】
上記の取付用治具によれば、第二部材が第一部材に対して回動可能に連結されているため、第一方向に直交する方向(以下、「第二方向」と呼ぶ。)に関して、第二部材の端部の第一部材からの離間距離を調整できる。つまり、センサを取り付ける際には、第二部材にセンサを固定した後、第二部材を回動させることで、第二方向に関して第二部材を第一部材に接近させることができる。これにより、第一部材と第二部材を含んでなる取付用治具の、第二方向に係る長さが縮小された状態が実現できるため、主筋と帯筋に挟まれた領域(例えば
図3における開口領域P1)が狭い場合であっても、これらの領域を通じて取付用治具を挿入することが可能となる。これにより、センサを目的の箇所に容易に位置させることができる。
【0014】
なお、本明細書において「回動可能」であるとは、ある支点を中心として回転移動が可能であることを意味するものであり、移動可能な回転角度は問わない。
【0015】
前記第二部材は、複数の小部材を有してなり、
前記複数の小部材に属する第一小部材及び第二小部材は、それそれが異なる位置で前記第一部材に対して回動可能に連結し、
前記第一小部材及び前記第二小部材は、それぞれ前記センサを接続するための接続部材が連結されているものとしても構わない。
【0016】
上記構成によれば、第一部材の延在方向に関して、センサを挟むように両側から接続部材を通じて第二部材に固定される。この結果、第二部材(より詳細には第一小部材と第二小部材)を回動させても、センサは第一小部材と第二小部材の間の位置に留めることができ、その方向についても、第一小部材や第二小部材の延在方向に実質的に沿わせることができる。この結果、センサが目標位置に達するまで第一部材を押し込んだ後であっても、センサの向きを調整しやすくなる。
【0017】
前記複数の小部材は、直列的に回動可能に連結されており、
前記第一部材及び前記第二部材によって形成される枠状体の内側に、前記センサが位置するものとしても構わない。
【0018】
上記構成によれば、第二部材を構成する複数の小部材が、それぞれの連結点を支点として回動可能に構成されることで、回動動作によって枠状体の形状・面積を変形できる。特に、上記構成によれば、第一部材に対して回動可能に連結された、第一小部材及び第二小部材に対してセンサが固定されるため、第二部材の形状を変形したとしても、センサを第一部材と第二部材の間の位置に収束できる。これにより、取付用治具を挿入後においても、センサの位置を精度よく調整できる。
【0019】
なお、ここでいう複数の小部材が「直列的に」連結されるという内容には、複数の小部材が「直並列的に」連結される場合が含まれる。言い換えれば、直列的に連結されている小部材の数は1本である必要はなく、並列に並べられた複数本からなる小部材群であっても構わない。具体的な例としては、隣接配置された2本の小部材(A1,A2)からなる小部材群Aと、隣接配置された2本の小部材(B1,B2)からなる小部材群Bとが直列的に連結されている場合も含まれる。この場合、小部材群Aは、小部材群Bに対して回動可能に連結されている。
【0020】
前記取付用治具は、前記第二部材を引っ掛けるため第三部材を備え、
前記第三部材は、前記第二部材に引っ掛かることで前記第一方向に平行な方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せ可能な第一フック部を有し、
前記第二部材は、前記第三部材により引き寄せられた際に、当該第二部材の少なくとも一部が回動して、前記枠状体の内側の面積が減少するように、前記枠状体の形状が変形可能に構成されるものとしても構わない。
【0021】
上記構成によれば、センサが取り付けられた状態の取付用治具を挿入する際に、第三部材で第二部材を引き寄せることで、第二部材を回動させ、第二方向に関して第二部材を第一部材側に容易に接近させることができる。これにより、第一部材と第二部材を含んでなる取付用治具の第二方向に係る長さを容易に縮小できる。
【0022】
前記取付用治具は、前記第二部材を引っ掛けるための第四部材を備え、
前記第四部材は、前記第二部材に引っ掛かることで前記第一方向に直交する方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せ可能な第二フック部を有し、
前記第二部材は、前記第四部材により引き寄せられた際に、当該第二部材の少なくとも一部が回動して、前記枠状体の内側の面積が増加するように、前記枠状体の形状が変形可能に構成されるものとしても構わない。
【0023】
センサによっては、好ましい設置の向きが定められているものが存在する。センサが取り付けられた状態の取付用治具を挿入する際に、第二部材を回動させて第二部材を第一部材側に接近させると、第二部材に対して固定されたセンサも、この第二部材の回動に連れて回転移動する。この状態で、センサが目標の位置に達するまで取付用治具を挿入すると、センサは好ましい向きから傾いた状態で位置する場合がある。
【0024】
これに対し、上記の構成のように、取付用治具が、第二部材に対して引っ掛けることのできる第二フック部を備える第四部材を備えることで、センサが目標の位置に達するまで取付用治具が挿入された後、第二部材に対して第四部材を介して容易に外力を加えることができる。これにより、第二部材が回動し、第二部材によって形成される枠状体の形状を変形できる。そして、第二部材の回動に伴って、第二部材に固定されたセンサも回動し、センサの傾きを調整できる。
【0025】
前記第一小部材及び前記第二小部材は、それぞれ前記センサを固定するための弾性体が付設されているものとしても構わない。
【0026】
これによれば、第二部材が回動することで、第二部材によって形成される枠状体の形状が変形しても、弾性体の弾性力によって変形に伴って生じるセンサに対する応力を吸収でき、センサに対する物理的な損傷を防止できる。また、取付用治具を挿入後に第二部材を回動させてセンサの傾きを調整する場合にも、センサに対する物理的損傷を招くことなく、容易にセンサの傾きを調整できる。
【0027】
前記第一小部材及び前記第二小部材は、それぞれ前記センサを固定するための弾性体が2つ以上付設されているものとしても構わない。
【0028】
上記構成によれば、取付用治具を挿入後に第二部材を回動させた場合に、センサの傾きをより精度よく調整できる。
【0029】
本発明に係るセンサの取付方法は、上述した構成の取付用治具を用いた、コンクリート構造物内に設置されるセンサの取付方法であって、
前記第一部材と、前記第一部材に対して回動可能に連結された前記第二部材とを準備する工程(a)と、
前記第二部材に対して前記センサを固定する工程(b)と、
前記工程(b)の後、前記第二部材を前記第一部材に近づける方向に回動させた状態で、前記センサが所定の目標位置に達するまで前記第一部材を押し込む工程(c)とを有することを特徴とする。
【0030】
前記第二部材は、直列的に回動可能に連結された複数の小部材を有すると共に、前記複数の小部材に属する第一小部材及び第二小部材のそれぞれが異なる位置で前記第一部材に対して回動可能に連結されることで、前記第一部材に対して枠状体が形成されるように連結されており、
前記工程(b)は、前記第二部材に属する前記第一小部材及び前記第二小部材に対して、それぞれ異なる位置で前記センサを固定する工程であり、
前記工程(c)は、
第一フック部を含む第三部材を前記第二部材に引っ掛けた後に前記第一方向に平行な方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せることで、前記第二部材の少なくとも一部を回動させて、前記枠状体の内側の面積を減少させるように前記枠状体の形状を変形させる工程(c1)と、
前記工程(c1)の後に、前記第一部材を押し込む工程(c2)とを有するものとしても構わない。
【0031】
なお、工程(c1)の実行後は、第三部材を回収しても構わない。
【0032】
前記センサの取付方法は、前記工程(c)の後、前記枠状体の形状を再変形させる工程(d)を有し、
前記工程(d)は、
前記第二部材を引っ掛けるための第二フック部を含む第四部材を準備する工程(d1)と、
前記第二フック部を前記第二部材に引っ掛けた後に前記第一方向に直交する方向成分を有する外力で前記第二部材を引き寄せることで、前記第二部材の少なくとも一部を回動させて、前記第三部材によって変形された前記枠状体の内側の面積を増加させるように前記枠状体の形状を再変形させる工程(d2)とを有するものとしても構わない。
【0033】
前記センサの取付方法は、前記工程(d2)の後、前記第一部材及び前記第四部材を、周囲の筋体に連結固定する工程(e)を有するものとしても構わない。
【0034】
ここでいう筋体としては、主筋でも帯筋でも構わないし、他の筋体であっても構わない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、簡易な作業によって、コンクリート構造物内に設置されるセンサを取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】コンクリート構造物の配筋構造を模式的に示す図面である。
【
図2】フレッシュコンクリートを打設する前の状態における配筋状態の一例を示す平面図である。
【
図3】フレッシュコンクリートを打設する前の状態における配筋状態の一例を示す平面図である。
【
図4】取付用治具を構成する第一部材及び第二部材の構造を説明するための模式的な図面である。
【
図5】取付用治具を構成する第一部材及び第二部材の構造を説明するための模式的な図面である。
【
図6】取付用治具を構成する第三部材の構造を説明するための模式的な図面である。
【
図7】取付用治具を構成する第四部材の構造を説明するための模式的な図面である。
【
図8】取付用治具を用いてセンサを目標の位置に設置する際の一工程を説明するための模式的な図面である。
【
図9】取付用治具を用いてセンサを目標の位置に設置する際の一工程を説明するための模式的な図面である。
【
図10】取付用治具を用いてセンサを目標の位置に設置する際の一工程を説明するための模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係るセンサの取付用治具及びセンサの取付方法につき、以下において図面を参照して説明する。なお、以下の図面は模式的に図示されたものであり、実際の寸法比と図面上の寸法比は必ずしも一致していない。また、図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0038】
図4~
図7は、本発明に係るセンサの取付用治具の構造を模式的に示す図面である。また、
図8~
図10は、本発明に係るセンサの取付用治具を用いてセンサを取り付ける作業手順を模式的に示す図面である。
【0039】
[取付用治具の構成]
本実施形態において、取付用治具1は、第一部材10、第二部材20、第三部材30、及び第四部材40を備える。ただし、第三部材30については、後述するように第二部材20を回動させるために外力を加えるための部材であり、取付用治具1のための専用の部材である必要はなく、汎用の部材で構成されていても構わない。
【0040】
(第一部材10)
図4及び
図5に示すように、第一部材10は、所定の方向に延在する部材である。ここでは、第一部材10の延在方向をX方向としている。このX方向は「第一方向」に対応する。
【0041】
(第二部材20)
図4に示すように、第二部材20は、第一部材10に対して連結されている。より詳細には、第二部材20は、複数の小部材(21,23,22)が直列的に連結されている。
【0042】
小部材21は、第一部材10に対して連結点51で回動可能な状態で連結されている。小部材22は、連結点51とは異なる連結点52において、第一部材10に対して連結点51で回動可能な状態で連結されている。小部材23は、小部材21及び小部材22に対して、それぞれ連結点53で回動可能な状態で連結されている。以下では、小部材21を「第一小部材21」と称し、小部材22を「第二小部材22」と称することがある。
【0043】
本実施形態では、第二部材20を構成する複数の小部材(21,22,23)と第一部材10とによって、枠状体Q1が形成されている。本実施形態では、第二部材20が、3本の小部材(21,22,23)で構成されているため、枠状体Q1が矩形状であるが、枠状体Q1の形状は矩形には限定されない。言い換えれば、第二部材20を構成する小部材(21,…)の数は、3本には限定されない。例えば、第二部材20が相互に直列的に連結された5本の小部材(21,22,…)を備える場合には、枠状体Q1は六角形状を呈する。
【0044】
図5は、
図4に示す取付用治具1に対して歪みセンサ5が取り付けられた状態を模式的に示す図面である。歪みセンサ5は、電気信号の送受用のケーブル71が接続されており、
図5の例では、このケーブル71が固定点61で固定されている。これは、ケーブル71が固定されていないと作業の邪魔になる場合があるためであり、本発明において、ケーブル71は第一部材10に対して固定されていなくても構わない。また、歪みセンサ5は、複数の弾性体62によって第二部材20に対して固定されている。より詳細には、歪みセンサ5は、第一小部材21及び第二小部材22に対して、それぞれ弾性体62によって固定されている。弾性体62は、弾性力を発揮できる部材であればその材質は問わず、汎用的なバネやゴム等を利用できる。
【0045】
歪みセンサ5は、好ましくは、センシング領域5aと非センシング領域5bを有し、非センシング領域5bが第一部材10及び第二部材20に対して連結される。これにより、歪みセンサ5が、第一部材10や第二部材20の状態を検知して、コンクリート構造物の歪み状態を誤検知するのを防止できる。
【0046】
本実施形態では、歪みセンサ5は、コンクリート構造物のY方向に係る歪みを検知する場合が想定されている。この場合、
図5に示すように、歪みセンサ5は、センシング領域5aをY方向に向けた状態で設置するのが好ましい。このY方向は「第二方向」に対応する。
【0047】
取付用治具1は、
図5に示すように、第一部材10及び第二部材20に対して歪みセンサ5が取り付けられた状態で利用される。このとき、歪みセンサ5のセンシング領域5aをY方向に沿うように位置調整すると、取付用治具1のY方向に係る長さD1が長くなり、このままでは主筋2と帯筋3に挟まれた領域(
図3における開口領域P1)を通じて挿入できない場合がある。そこで、取付用治具1を用いて歪みセンサ5を設置する際には、第二部材20を第一部材10に対して回動させることで、取付用治具1のY方向に係る長さを短くする動作が行われる。この動作については、後述される。
【0048】
(第三部材30)
図6に示すように、第三部材30は、端部位置に目標物を引っ掛けるための第一フック部31を有する。この第三部材30は、第一フック部31に第二部材20を引っ掛けた状態で、第二部材20を回動させる際に利用される。
【0049】
(第四部材40)
図7に示すように、第四部材40は、所定の位置に目標物を引っ掛けるための第二フック部41を有する。この第四部材40は、第二フック部41に第二部材20を引っ掛けた状態で、第二部材20を回動させる際に利用される。
【0050】
なお、後述されるように、歪みセンサ5の取付作業が完了した時点で、第四部材40は、第一部材10及び第二部材20と共に、主筋2又は帯筋3等の現場の筋体に対して連結される。このため、異種金属が連結されることによる腐食を防止する観点から、第一部材10、第二部材20、及び第四部材40は、主筋2や帯筋3と同種の鋼材で構成されるのが好ましい。
【0051】
一方、第三部材30については、歪みセンサ5の取付作業の際に利用された後、回収が可能である。よって、第三部材30は、第一フック部31に第二部材20を引っ掛けた状態で、第二部材20を回動できる程度に剛性があればよく、その材質は任意である。
【0052】
[取付方法]
以下、取付用治具1を用いて歪みセンサ5を取り付ける手順について説明する。
【0053】
(ステップS1)
図4に示すように、取付用治具1を構成する第一部材10及び第二部材20を準備する。上述したように、第二部材20は、第一部材10に対して回動可能に連結された状態で準備される。このステップS1が工程(a)に対応する。
【0054】
(ステップS2)
歪みセンサ5を、第一部材10及び第二部材20に対して固定する。好ましくは、
図5を参照して上述したように、第二部材20に対しては弾性体62を通じて歪みセンサ5を固定する。このとき、
図5に示すように、Y方向に係る複数の箇所で歪みセンサ5を第二部材20に対して固定するのが好ましい。
【0055】
歪みセンサ5が第一部材10に対して固定される箇所(固定点61)は、X方向に関して、第二部材20と第一部材10とが回動可能に連結される箇所(51,52)に挟まれる位置である。
【0056】
このステップS2が工程(b)に対応する。なお、ステップS2までの工程は、センサ5を実際に設置する現場以外の場所で行うことも可能である。
【0057】
(ステップS3)
図8に示すように、第三部材30の第一フック部31を第二部材20(この例では第一小部材21)に対して引っ掛けて、外力f1で引っ張る。これにより、第二部材20を構成する各小部材(21,22,23)は、それぞれの連結点(51,52,53)を支点として回動し、枠状体Q1が変形する。本実施形態の例では、枠状体Q1の形状が長方形状から平行四辺形状に変形し、枠状体Q1の内側の面積が減少する。
【0058】
この結果、第一小部材21及び第二小部材22が、第一部材10の延在方向(X方向)に対して傾斜した状態となる。これにより、第二部材20がY方向に関して第一部材10側に接近し、取付用治具1のY方向に係る長さD1が
図5の状態から比べて短くなる。
【0059】
このステップS3が工程(c1)に対応する。
【0060】
なお、このステップS3は、枠状体Q1の形状を変形させて第二部材20をY方向に関して第一部材10側に接近させ、取付用治具1のY方向に係る長さD1を短くする目的で行われる。かかる観点から、第三部材30を通じて加えられる外力f1は、X方向に平行な成分を少なくとも有していればよく、必ずしもX方向に完全に平行な方向に加えられる必要はない。
【0061】
(ステップS4)
ステップS3の実行後、歪みセンサ5を目標の位置に達するまで取付用治具1を挿入する。
図8に示すように、取付用治具1のY方向に係る長さD1が短くなったことで、取付用治具1を主筋2と帯筋3に挟まれた領域を通じて挿入することが可能となる。
【0062】
このステップS4が工程(c2)に対応する。
【0063】
(ステップS5)
図7を参照して上述した第四部材40を準備する。このステップS5が工程(d1)に対応する。このステップS5についても、ステップS1~S2と同様に、現場以外の場所で行うことも可能である。
【0064】
(ステップS6)
図9に示すように、第四部材40の第二フック部41を第二部材20(ここでは小部材23)に対して引っ掛けて、Y方向に平行な成分(より詳細には第一部材10から遠ざかる方向成分)を少なくとも有する外力f2で引っ張る。これにより、第二部材20を構成する各小部材(21,22,23)は、それぞれの連結点(51,52,53)を支点として回動し、枠状体Q1が変形する。
【0065】
このステップS6では、ステップS3と比べて、第二部材20の回動方向が反転する。この結果、
図8の状態と比較して、第一小部材21及び第二小部材22の、第一部材10の延在方向(X方向)に対する傾斜角度が低下し、第二部材20がY方向に関して第一部材10側に対して遠ざかり、取付用治具1のY方向に係る長さD1が
図8の状態から長くなる。つまり、本実施形態の例では、枠状体Q1の形状が長方形状に近づき、枠状体Q1の内側の面積が増加する。
【0066】
このステップS6は、歪みセンサ5の向きを調整する目的で行われる。例えば、上述したように、歪みセンサ5のセンシング領域5aをY方向にほぼ平行な向きに調整したい場合には、枠状体Q1の形状が長方形状になるまで、第四部材40を通じて第二部材20を外力f2で引っ張る。この結果、枠状体Q1は、
図5に示す形状に復帰する。なお、
図5では第四部材40の図示が省略されている。
【0067】
なお、歪みセンサ5は、第二部材20との間で弾性体62を通じて固定されているため、第二部材20の回動に伴う枠状体Q1の変形動作を経ても、歪みセンサ5に対して物理的損傷を与えるような応力が加えられるのを防止できる。
【0068】
このステップS6が工程(d2)に対応する。
【0069】
(ステップS7)
図10に示すように、第一部材10及び第四部材40を、現場の筋体(ここでは主筋2)に、番線55等で固定する。このステップS7が工程(e)に対応する。
【0070】
(後工程)
ステップS1~S7を経て、
図2に示すような帯筋3に囲まれた領域内に歪みセンサ5が設置された状態が実現される。この後、フレッシュコンクリートが打設される。
【0071】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0072】
〈1〉上記実施形態では、コンクリート構造物の歪みセンサ5を目標位置に設置する場合について説明した。しかし、本発明の取付用治具1は、歪みセンサ5には限定されず、コンクリート構造物の内部に設置される対象となるセンサ全般に適用可能である。一例として、変位センサ、無応力センサ等が挙げられる。また、各種センサで検知した信号の送信手段は、無線形式であっても有線形式であっても構わない。
【0073】
〈2〉上記実施形態では、ステップS5~S6を通じて、枠状体Q1を再変形する工程を行う場合について説明した。この工程は、上述したように、歪みセンサ5のセンシング領域5aの方向を調整する目的で行われる。
【0074】
ただし、センサによっては、設置される方向が問われないものが存在する。かかる場合には、ステップS5~S6を省略してもよい。かかる場合には、取付用治具1としては、第四部材40を備える必要がない。
【0075】
また、設置対象のセンサが歪みセンサ5であっても、ステップS4を実行後の歪みセンサ5の設置態様に関し、センシング領域5aの延在方向で問題ない場合には、ステップS5~S6を省略してもよい。
【0076】
〈3〉上記実施形態では、ステップS3において、第三部材30を用いて枠状体Q1の形状を変形させて第二部材20をY方向に関して第一部材10側に接近させるものとして説明した。しかし、このステップS3は、第二部材20を第一部材10に対して接近させるべく枠状体Q1の形状を変形できればよく、この限りにおいてその方法は限定されない。言い換えれば、ステップS3の実行時に第三部材30を用いるかどうかは任意である。かかる場合には、取付用治具1としては、第三部材30を備える必要がない。
【0077】
〈4〉上記実施形態では、第二部材20を構成する複数の小部材のうち、第一部材10に対して回動可能に連結される小部材(21,22)と、これら小部材(21,22)に対して連結される小部材23を有することで、第二部材20と第一部材10とが枠状体Q1を形成する場合について説明した。しかし、第二部材20が小部材23を備えないことで、第二部材20と第一部材10とで枠状体Q1を形成しない場合も、本発明の範囲内である。
【0078】
かかる場合であっても、ステップS3において、第二部材20を外力f1で引っ張ることで、第二部材20の端部を第一部材10側に引き寄せることができ、これによって、取付用治具1のY方向に係る長さD1が短くなり、主筋2と帯筋3に挟まれた領域を通じて挿入することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 :取付用治具
2 :主筋
3 :帯筋
4 :コンクリート構造物
5 :歪みセンサ
5a :センシング領域
5b :非センシング領域
10 :第一部材
20 :第二部材
21 :小部材(第一小部材)
22 :小部材(第二小部材)
23 :小部材
30 :第三部材
31 :第一フック部
40 :第四部材
41 :第二フック部
51 :連結点
52 :連結点
53 :連結点
55 :番線
61 :固定点
62 :弾性体
71 :ケーブル
f1 :外力
f2 :外力
P1 :開口領域
Q1 :枠状体