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特許7548778衝突冷却によってガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置
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  • 特許-衝突冷却によってガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置 図1
  • 特許-衝突冷却によってガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置 図2
  • 特許-衝突冷却によってガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】衝突冷却によってガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20240903BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20240903BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D9/02 102
F02C7/18 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020185004
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2021076115
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】10 2019 129 835.0
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレーメンス・ベルンハルト・ドムニック
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0179905(US,A1)
【文献】特表2017-529477(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3460190(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン/ターボ機械の構成部品(1)を冷却するための装置であって、高温ガスが衝突する外面(2)と一体化された冷却通路(3)とを具備する前記装置において、
前記冷却通路(3)の内部には、少なくとも1つの衝突冷却ボア(5)を具備する衝突冷却要素(4)が配置されており、
前記衝突冷却要素(4)が、冷却すべき前記構成部品(1)の標的表面(6)から離隔配置されており、且つ、衝突冷却噴流が前記標的表面(6)に導かれる場合に冷却流体で前記構成部品(1)を冷却するようになっており、
表面構造体(8)が、前記衝突冷却噴流が衝突する前記標的表面(6)に形成されており、
前記表面構造体(8)が、放射状に配置されたリブ(9)であって、前記標的表面(6)から突出している前記リブ(9)によって形成されており、
前記リブ(9)が、直線棒状の形状を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記表面構造体(8)が、放射状に配置されたリブ(9)であって、少なくとも交互に異なる形状で前記標的表面(6)から延在している前記リブ(9)によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記表面構造体(8)の前記リブ(9)が、前記衝突冷却ボア(5)の反対側に配置されている中心点(Z)から離隔するように、ラジアル方向外側に向かって延在していることを特徴とする請求項又はに記載の装置。
【請求項4】
前記リブ(9)が、外側に向かってテーパー状になっている液滴状の形状を有していることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記標的表面(6)の上に延在している前記リブ(9)が、異なる長さ及び/又は高さを有していることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記リブ(9)から成る星形の配置が、前記標的表面(6)において、前記衝突冷却ボア(5)の対応する列の反対側に位置する列に形成及び配置されていることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
ラジアル方向内側に配置されている前記リブ(9)それぞれの開始点と中心点(Z)との距離が、前記リブ(9)の長さの75%~150%に相当することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記リブ(9)の側面が、少なくとも接続部において前記標的表面(6)に対して直角に延在しており、移行部においてのみシュラウド面(10)に対して傾斜して又は丸められて形成されていることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
シュラウド面(10)が、平坦に且つ前記標的表面(6)に対して平行に形成されていることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のガスタービン/ターボ機械の構成部品(1)を冷却するための装置を有していることを特徴とするガスタービン/ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガスが衝突する外面を具備するガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置であって、少なくとも1つの衝突冷却ボアを具備する衝突冷却要素が内蔵されている装置に関する。
【0002】
ガスタービンの複数の構成部品、例えばブレードは、燃焼室の燃焼ガスの高温に曝されている。さらに、ガスタービンの効率は、燃焼室で実現される燃焼温度を高めることによって、さらに改善可能とされる。しかしながら、このような温度の上昇には、高温ガスに曝される構成部品の熱容量に起因して、限界が存在する。このことは、特に燃焼室の下流に位置するタービン段の案内ブレード及び可動ブレードに当て嵌まる。当該案内ブレード及び可動ブレードには、機械的主応力も作用するからである。
【0003】
このような理由のため、特定の冷却方法が、構成部品の破損を防止するために、且つ、材料に起因する温度限界を超えないために必要とされる。関連する構成部品と、特に高い熱応力を受ける当該関連する構成部品の領域とが、既知の方法で圧縮機から分岐された冷却空気によって冷却される。従来技術では、これらブレードの翼部は、冷却空気を供給するための冷却装置を装備している。圧縮空気の一部を圧縮機から抽出し、抽出された圧縮空気をタービン部分に通すことによって、ブレードの冷却が実現される。圧縮空気をタービン部分に導入することに続いて、この冷却空気は、ブレードのブレード翼部に形成された通路を通じて流れる。
【0004】
特許文献1は、主応力を受けるブレード先端キャップの領域におけるメタル温度を低減させるために、局所化され且つ方向づけられた衝突冷却によってブレード先端キャップを一層効率的に冷却することを開示している。
【0005】
これとは別に、例えば特許文献2に開示されるタービンブレードのための衝突冷却において、長手方向に延在している分離壁が、例えば細長い冷却空気供給路と冷却空気分配チャンバとを、冷却空気供給路及び冷却空気分配チャンバに隣接している複数の衝突冷却空気チャンバと同様に側壁部分と共に形成している、2つの側壁によって形成されている中空ブレードの内部に配置されている。衝突空気通路によって、冷却空気チャンバに導入された冷却空気が、隣接する衝突空気冷却チャンバに到達する。これにより、内側から高い熱応力を受けるタービンブレードの外壁の領域の内面を冷却することができる。ひいては、高効率で材料を損傷させること無く、好ましくは高い燃焼温度でガスタービンを動作させることができる。分離壁では、衝突空気通路が、外壁の内面に衝突する衝突冷却空気にとって望ましい角度を確保するために、直線的であるが斜めに方向づけられている。さらに、タービンブレードの側壁の空気通路を介して衝突空気冷却チャンバから流出した空気は、ブレード材料と高温ガスとの間に絶縁層を形成するので、タービンブレードに作用する熱応力をさらに低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102008003412号明細書
【文献】欧州特許出願公報第1001135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、冷却効率がさらに改善されたガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該に目的は、本願請求項1に係る特徴の組み合わせによって解決される。
【0009】
本発明は、高温ガスが衝突する外面と内蔵された冷却通路とを具備する、ガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置を提供する。冷却通路の内部には、少なくとも1つの衝突冷却ボアを具備する衝突冷却要素が配置されている。当該衝突冷却要素は、当該冷却すべき構成要素の標的表面から離隔配置されており、且つ、衝突冷却噴流が衝突冷却ボアを通じて標的表面に導通可能とされている場合に冷却流体で冷却すべき構成要素を冷却するようになっている。さらに、衝突冷却噴流が衝突する表面構造体が、標的表面に形成されている。
【0010】
このような構造の優位点は、標的表面の微細構造が適切に形成された表面構造体を介して熱伝達を改善することである。これにより、冷却媒体を滞留させる冷却効果によって冷却媒体の消費が低減され、ひいては冷却媒体の滞留に起因する冷却媒体の消費によって冷却能力が改善される。その結果として、本発明は、冷却空気を節約するように、ひいては冷却効率を高めるという主目的を達成するように機能する。
【0011】
優位な実施例では、表面構造体が、放射状に配置されたリブであって、標的表面から突出しているリブによって形成されている。本発明における標的表面の微細構造は、衝突冷却噴流に対してラジアル方向に配置されているリブを備えている。これら適切に形成されたリブによって、熱伝達を向上させる複数の物理的効果が利用される。第一に、標的表面の表面積がこのようにして大きくなり、リブが対応して配置されているので、流れの局所的加速を通じて熱流密度が高められる。さらに、熱伝達に悪影響を及ぼす横方向流れの冷却空気流が遮断され、流れの分離が防止される。
【0012】
さらなる優位な実施例では、本発明における表面構造体が、放射状に配置されたリブであって、交互に異なる形状で標的表面から突出しているリブによって形成されている。特定用途では、複数列で標的表面に配置されているリブは、流れ特性ひいては冷却性能をさらに改善する。表面構造体は、冷却すべき構成要素の形状に最適に適応することができるからである。
【0013】
好ましくは、表面構造体のリブが、衝突冷却ボアの反対側に配置されている中心点から離隔するようにラジアル方向外側に向かって延在するように、構成要素を冷却するための装置は形成されている。このことは、衝突冷却噴流の冷却性能にとって優位である。衝突冷却噴流は、標的表面に衝突した直後に表面構造体又はリブを通過して導かれるからである。
【0014】
本発明の例示的な実施例では、リブは、外側に向かってテーパー状になっている液滴の形状を有している。特別に形成された外形であるので、冷却空気流れの流れ特性すなわち冷却性能が最適化される。
【0015】
さらに、リブが直線棒状の形状を有している実施例が好ましい。具体的には、複数列に形成された表面構造体によって、交互に異なる形状で配置されたリブが、冷却空気流れの最適な冷却性能について望ましい。
【0016】
本発明におけるガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置は、一の実地例では、標的表面の上に延在しているリブが異なる長さ及び/又は高さを有しているように形成されている。このことは、冷却空気の流れについて優位な効果を有しているので、その結果として冷却効率が向上する。
【0017】
さらに、放射状に配置されたリブが標的表面において衝突冷却ボアの対応する列の反対側に列に形成されている場合に優位である。これにより、適切なリブを具備する特別な表面構造体は、冷却空気流れが衝突冷却ボアを通過し標的表面に衝突する領域それぞれの標的表面に配置されている。その結果として、ガスタービン/ターボ機械の構成部品の冷却性能が、これら領域それぞれにおいて高められる。
【0018】
さらに、本発明に係る装置の代替的な実施例では、ラジアル方向内側に配置されたリブそれぞれの開始点と中心点との距離が、リブの長さの約75%~約150%に相当する。ここで、冷却性能を最適化するために、冷却空気流れが、最初に冷却表面に衝突した後に関連するリブを通過して流れることが望ましい。
【0019】
本発明の好ましい実施例では、リブの側面が、少なくとも結合部において標的表面に対して直角に延在しており、好ましくは移行部においてのみシュラウド面に対して傾斜して又は丸められて形成されている。本発明におけるさらなる優位な実施例では、シュラウド面が平坦に且つ標的表面に対して平行に形成されている。これにより、リブの表面が最大化され、冷却のための最適な又は最大の表面を有している。
【0020】
さらに、本発明は、上述のガスタービン/ターボ機械の構成部品を冷却するための装置を有しているガスタービン/ターボ機械を提供する。
【0021】
本発明の他の優位なさらなる発展形態については、従属請求項に示されているか、又は図面を介して若しくは本発明の好ましい実施例の説明と共に以下に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】衝突冷却の標的表面に表面構造体を具備するガスタービン構成部品の断面図である・
図2】一列に配置されているリブを具備する標的表面の斜視図である。
図3】複数列に配置されているリブを具備する標的表面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、衝突冷却装置の標的表面6に表面構造体8を備えている当該衝突冷却装置を有しているガスタービン構成部品の斜視図である。
【0024】
ガスタービン構成部品1は、動作の際に高温ガスが衝突する外面2と、冷却のために内蔵された冷却通路3とを備えている。冷却通路3の内部に延在している衝突冷却要素4は、冷却通路3を、冷却剤を供給するための供給部11と、冷却すべき標的表面6が配置されている冷却部12とに分割している。衝突冷却要素4は、ガスタービン構成部品1の冷却部12に配置された冷却すべき標的表面6から離隔配置されている。さらに、衝突冷却要素4は、4つの衝突冷却ボア5を図示の領域に備えており、冷却流体が、ガスタービン構成部品1を冷却するための衝突冷却噴流として、衝突冷却ボア5を介して、衝突冷却ボア5の反対側に配置された標的表面6の中心点Zに導通可能とされる。
【0025】
図2は、複数列に配置されたリブ9を具備する標的表面6の斜視図である。表面構造体8は、図1に表わす代表物に対応しており、以下に説明される。
【0026】
衝突冷却噴流が衝突する表面構造体8は、標的表面6に形成されている。表面構造体8は、放射状に配置されたリブ9によって形成されており、リブ9それぞれが、交互に異なる形状で標的表面6から突出している。リブ9は、衝突冷却ボア5の反対側に配置されている中心点Zから離隔するように、ラジアル方向外側に向かって延在している。標的表面6におけるリブ9のラジアル方向配置は、衝突冷却ボア5の対応する列の反対側に位置する列に形成及び配置されている。リブ9の側面は、結合部において標的表面6に対して直角に延在しており、移行部においてシュラウド面10に向かって傾斜して且つ丸められて形成されている。このこととは別に、交互に配置されたリブ9それぞれが、リブとは異なる長さ及び高さを有しており、標的表面6の上に延在している。2つのラジアル方向配置のうち一のラジアル方向配置は、外側に向かってテーパー状になっている液滴形状のリブ9を備えており、ラジアル方向内側に配置されているリブ9それぞれの開始点と中心点Zとの距離が、当該リブ9の長さの約75%に相当する。対照的に、他方のラジアル方向配置のリブ9は、直線棒状の形態を有しており、ラジアル方向内側に配置されているリブ9それぞれの開始点と中心点Zとの距離が、当該リブ9の長さの約150%に相当する。リブ9のシュラウド面10は、平坦に且つ標的表面6に対して平行に形成されている。
【0027】
図2は、一列に配置されているリブ9を具備する標的表面6の斜視図である。表面構造体8は、上述の放射状に配置された液滴形状のリブ9であって、標的表面6から突出しているリブ9によって形成されている。
【符号の説明】
【0028】
1 ガスタービン構成部品
2 (ガスタービン構成部品1の)後面
3 (ガスタービン構成部品1の)冷却通路
4 衝突冷却要素
5 衝突冷却ボア
6 標的表面
8 表面構造体
9 リブ
10 シュラウド面
11 供給部
12 冷却部
Z 中心点
図1
図2
図3