(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】収容袋
(51)【国際特許分類】
G03F 1/66 20120101AFI20240903BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03F1/66
B65D30/02
(21)【出願番号】P 2020211399
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(72)【発明者】
【氏名】富永 優
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-18272(JP,A)
【文献】特開2012-208158(JP,A)
【文献】特開2002-182374(JP,A)
【文献】特開2007-12793(JP,A)
【文献】特開2017-090618(JP,A)
【文献】特開2010-184837(JP,A)
【文献】特開2010-120323(JP,A)
【文献】特開2012-025411(JP,A)
【文献】特開2015-091721(JP,A)
【文献】特開2020-049942(JP,A)
【文献】特開平01-090743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0029824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
B65D 30/02
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルケースを収容する収容袋であって、
前記収容袋を構成するフィルムは、前記ペリクルケースに対向する側に配されヒートシール可能な第1の層を少なくとも備え、
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により測定される、前記フィルムの有機ガスの発生量が200ppb以下であることを特徴とする、収容袋。
【請求項2】
ペリクルケースを収容する収容袋であって、
前記収容袋を構成するフィルムは、前記ペリクルケースに対向する側に配されヒートシール可能な第1の層を少なくとも備え、
前記第1の層の酸素透過速度が200ml/m
2・day・MPa以下であることを特徴とする、収容袋。
【請求項3】
前記第1の層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、及びポリビニルアルコール(PVA)から成る群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の収容袋。
【請求項4】
多層構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の収容袋。
【請求項5】
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、ポリエチレンテレフタラート(PET)層を備える、請求項4に記載の収容袋。
【請求項6】
前記PET層として、シリカ蒸着PET層を備える、請求項5に記載の収容袋。
【請求項7】
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、金属蒸着層を備える、請求項4に記載の収容袋。
【請求項8】
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、ナイロン(NY)層を備える、請求項4~7のいずれか1項に記載の収容袋。
【請求項9】
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、静電防止層を備える、請求項4~8のいずれか1項に記載の収容袋。
【請求項10】
前記静電防止層は、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側の最外層を構成する、請求項9に記載の収容袋。
【請求項11】
前記フィルムの多層構造における少なくとも一つの層間に、ドライラミネート層が配されてなる、請求項4~10のいずれか1項に記載の収容袋。
【請求項12】
前記フィルムの厚みが20μm~200μmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の収容袋。
【請求項13】
前記フィルムの厚みが30μm~100μmである、請求項1~12のいずれか1項に記載の収容袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクルケースを収容する収容袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)等の製造工程では、フォトマスクを防塵するため、ペリクルが用いられる。ペリクルは、一般に、ペリクル枠と、ペリクル枠の一端側に配された、透明な薄膜であるペリクル膜と、ペリクル枠の他端側(ペリクル枠のペリクル膜とは反対側)に配された、フォトマスクに張り付けられるための粘着層と、を有する。
【0003】
このようなペリクルを保管、輸送する場合、ペリクルは、ペリクル収納容器(ペリクルケース)に収納された状態で、さらに包装袋に収容される。
【0004】
ペリクルを収納するペリクル収納容器は、一般的には、ペリクルを載置する容器本体と、それに周縁部で嵌合し密封する蓋体とから構成される。
【0005】
そして、包装袋には、清浄性の他に、内部のペリクル収納容器に異物を付着させないための密閉性、静電防止性能等が求められるため、従来から、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンフタレート(PET)などの樹脂材質からなる包装袋が用いられている(例えば、特許文献1)。また、静電防止性能を確保するために、通常、材質中に静電防止剤あるいは導電材料の練り込みが行われるが(例えば、特許文献2)、ときにはアルミ箔をラミネートしたものや、導電印刷を施したものが用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-240946号公報
【文献】特開2012-208158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、包装袋の樹脂材料や接着剤由来の有機ガス(「アウトガス」と称する場合がある)の化学成分が、ペリクル表面に吸着することが問題となっている。
【0008】
現在、LSI製品の包装袋としてアルミ製の袋が使用されている。内袋のアウトガス量が多いため、脱ガス処理を行う必要があり、手間やコストがかかってしまう。
【0009】
市場に存在する防湿性の高いフィルムは、内層にポリエチレン(PE)フィルムを用いているため、材料・接着剤由来のアウトガスが問題となる。袋としてはガスバリア性があるが、ヒートシールができるようにするために、PE/LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層をもつ。これらの層から発生する炭化水素系等のガスが内袋に溶出していく。ヒートシール部分からのアウトガスは特に多い。接着フィルムからのガス(炭化水素や他の揮発性ガス成分)が経時的に溶出していると考えているが、LLDPEからも発生するアウトガスは多い。
【0010】
アウトガス量が多いと、ガスがペリクルに付着し、ユーザーが使用する際にペリクル膜の汚れ(ヘイズ)になるおそれがある。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、ヒートシール可能であるとともに、袋体内部へのアウトガスの発生を抑えることにより、ペリクルのヘイズの発生を抑えたペリクルケースの収容袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]
ペリクルケースを収容する収容袋であって、
前記収容袋を構成するフィルムは、前記ペリクルケースに対向する側に配されヒートシール可能な第1の層を少なくとも備え、
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により測定される、前記フィルムの有機ガスの発生量が200ppb以下であることを特徴とする、収容袋。
[2]
ペリクルケースを収容する収容袋であって、
前記収容袋を構成するフィルムは、前記ペリクルケースに対向する側に配されヒートシール可能な第1の層を少なくとも備え、
前記第1の層の酸素透過速度が200ml/m2・day・MPa以下であることを特徴とする、収容袋。
[3]
前記第1の層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、及びポリビニルアルコール(PVA)から成る群より選択される少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の収容袋。
[4]
多層構造を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の収容袋。
[5]
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、ポリエチレンテレフタラート(PET)層を備える、[4]に記載の収容袋。
[6]
前記PET層として、シリカ蒸着PET層を備える、[5]に記載の収容袋。
[7]
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、金属蒸着層を備える、[4]に記載の収容袋。
[8]
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、ナイロン(NY)層を備える、[4]~[7]のいずれかに記載の収容袋。
[9]
前記第1の層の、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側に、静電防止層を備える、[4]~[8]のいずれかに記載の収容袋。
[10]
前記静電防止層は、前記ペリクルケースに対向する側とは反対側の最外層を構成する、[9]に記載の収容袋。
[11]
前記フィルムの多層構造における少なくとも一つの層間に、ドライラミネート層が配されてなる、[4]~[10]のいずれかに記載の収容袋。
[12]
前記フィルムの厚みが20μm~200μmである、[1]~[11]のいずれかに記載の収容袋。
[13]
前記フィルムの厚みが30μm~100μmである、[1]~[12]のいずれかに記載の収容袋。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒートシール可能であるとともに、袋体内部へのアウトガスの発生を抑えることにより、ペリクルのヘイズの発生を抑えたペリクルケースの収容袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の収容袋の一構成例を模式的に示す図である。
【
図2】収容袋を構成するフィルムの一構成例を示す断面図である。
【
図3】収容袋を構成するフィルムの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「~」を用いて示される数値範囲は、上限および下限の数値を含むものとする。
【0016】
図1は、本発明の収容袋の一構成例を模式的に示す図である。また、
図2および
図3は、収容袋を構成するフィルムの一構成例を示す断面図である。
【0017】
第1の本発明の収容袋1は、ペリクルケース20を収容する収容袋であって、収容袋1を構成するフィルム10は、ペリクルケース20に対向する側に配されヒートシール可能な第1の層11を少なくとも備え、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により測定される、フィルム10の有機ガスの発生量が200ppb以下であることを特徴とする。
【0018】
なお、本明細書において、「有機ガス」とは、フィルム10を構成する有機材料から放出される有機系のガス成分、いわゆるアウトガスのことを示す。例えば炭化水素系のガスが挙げられる。
【0019】
GC-MSにより測定される、フィルム10の有機ガスの発生量が200ppb以下であることで、袋体内部へのアウトガスの発生が抑えられたものとなる。
【0020】
また、第2の本発明の収容袋1は、ペリクルケース20を収容する収容袋であって、収容袋1を構成するフィルム10は、ペリクルケース20に対向する側に配されヒートシール可能な第1の層11を少なくとも備え、第1の層11の酸素透過速度が200ml/m2・day・MPa以下であることを特徴とする。
【0021】
第1の層11の酸素透過速度が200ml/m2・day・MPa以下と、低い酸素透過濃度、すなわち高いガスバリア性を有していることで、フィルム10を構成する各層、および各層を接合する接着剤(例えば後述するドライラミネート層)から発生するアウトガスが、収容袋1の内側に透過してくることを抑制できる。
【0022】
なお、本明細書において、「酸素透過速度」は、JIS K7126-2:2006「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験法」に準拠した方法(等圧法)により測定された値である。
【0023】
すなわち、等圧式のガスクロ法で、試験片のフィルム10(サンプル)を境に、両側の圧力を等しく(等圧)し、分圧差によってフィルムを透過するガスをガスクロマトグラフにて分離し、時間あたりの酸素透過量を求めたものである。
【0024】
このような本発明の収容袋1によれば、第1の層11にガスバリア機能を備えたシーラントフィルムを用いているので、ヒートシール可能であるとともに、アウトガスの発生、および袋の内側にアウトガスが溜まることを抑えることができる。その結果、アウトガスが内部のペリクル30に付着することに起因するヘイズの発生を抑制することができる。
【0025】
以下、各層について具体的に説明する。
本実施形態の収容袋1を構成するフィルム10は、
図2に示すように、ペリクルケース20に対向する側から順に、第1の層11(ヒートシール層)と、ガスバリア層12と、静電防止層13とを順に有する。
なお、
図2および後掲する
図3では、図中下側が、収容袋1の内側、すなわちペリクルケース20に対向する側となる。
【0026】
(第1の層)
第1の層11は、ヒートシール可能な材料から構成される。
なお、本明細書において「ヒートシール」とは、熱可塑性プラスチックの熱可塑性を利用して加熱と冷却によって接着することをいい、第1の層11(ヒートシール層)は、第1の層11同士を互いに密着させた状態で加熱することにより、溶着させることができる。この性質を利用して、袋体状に形成したフィルム10を同様の状態で加熱することにより封緘、すなわちヒートシールすることができる。
【0027】
本明細書においては、第1の層11が溶着状態となる温度をヒートシール温度とする。第1の層11は、ヒートシール温度が好ましくは170℃~250℃であり、より好ましくは180℃~230℃であるような材料で構成され得る。特に、第1の層11をヒートシール温度が200℃以下であるような材料から構成することで、ヒートシールが容易になるため、アウトガスの発生量が多いLDPE(高圧法低密度ポリエチレン)等を用いる必要がなくなる。
【0028】
そして、本発明の収容袋1では、第1の層11の酸素透過速度が200ml/m2・day・MPa以下である。第1の層11の酸素透過速度は50ml/m2・day・MPa以下であることが好ましく、第1の層11の酸素透過速度が10ml/m2・day・MPa以下であることがより好ましい。
【0029】
第1の層11を構成する材料としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、及びポリビニルアルコール(PVA)から成る群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0030】
収容袋1を構成するフィルム10、特にペリクルケース20に対向する側の面に、ポリエチレンやポリプロピレンといった材料を使うと、これらはアウトガスの発生量が多いため、材料由来のアウトガスが徐々に発生して収容袋1の内側に溜まり、ガスがペリクルに付着するとヘイズの原因となってしまう。
【0031】
また、第1の層11がヒートシール性を有するため、接着剤や粘着テープを用いることなく、ヒートシールにより収容袋1の開口部を閉じることができるため、接着剤や粘着剤由来のアウトガスの発生も抑制することができる。
【0032】
このような第1の層11として具体的には、クラレ社製のエバールEF-E(EVOH)やユニチカ社製のエンブレムDCやクラレ社製のエクセバール等が好ましいものとして挙げられる。EVOHは、アウトガスの発生量が低く、ヒートシールも可能であり、さらに、プラスチックの中で最大のガスバリア性を示すことから好ましい。また多層構造にした場合のドライラミネート層から発生するアウトガスや空気中のイオン等を収容袋1の内側に透過させない。また、透明であるため、収容物を外部から見ることができる。
【0033】
第1の層11中には、上記樹脂成分以外に各種添加剤等を適宜併用してもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐電防止剤、防曇剤等、着色剤等を適宜使用できる。これら添加剤を使用する場合には、第1の層11に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0034】
第1の層11の厚みは、1μm~100μmが好ましく、10μm~40μmがより好ましい。
なお、フィルム10が第1の層11のみの単層構造の場合には、第1の層11の厚みは、40μm~100μmが好ましい。
【0035】
(ガスバリア層)
ガスバリア層12は、ガスバリア性を有する材料から構成され、第1の層11の、ペリクルケース20に対向する側とは反対側に、ガスバリア層12を配することで、酸素や水蒸気の透過を抑制することができる。
【0036】
ガスバリア層12としては、例えば、金属蒸着層、シリカ蒸着層、ポリエチレンテレフタラート(PET)層、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)層、ナイロン(NY)層、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)層のいずれかの1層以上からなるものが挙げられ、その中でも、ポリエチレンテレフタラート(PET)層、金属蒸着層、ナイロン(NY)層が好ましい。
【0037】
また、PET層は、PETフィルムに酸化アルミニウムや二酸化ケイ素(シリカ)等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着PET層であってもよく、シリカ蒸着PET層が好ましい。
【0038】
金属蒸着層は、アルミニウムを蒸着させたもの、アルミニウム箔層が挙げられる。
【0039】
これらの層は、1層を単独でも、複数の層を組み合わせても構わない。例えば、金属蒸着層と、シリカ蒸着PET層とを備えてもよい。
【0040】
このようなガスバリア層12として具体的には、例えば、三菱ケミカル社製のテックバリア(シリカ蒸着PET)等が好ましいものとして挙げられる。シリカ蒸着PETは高いガスバリア性を有し、アルミニウム箔を使ったフィルムと異なり透明であるため、収容物が見える上、金属探知機による検査も可能である。
【0041】
ガスバリア層12の厚みとしては、特に限定されるものではないが、5μm~40μmであることが好ましく、5μm~30μmであることがより好ましい。
【0042】
(静電防止層)
静電防止層13は、第1の層11の、ペリクルケース20に対向する側とは反対側に配され、収容袋1において、ペリクルケース20に対向する側とは反対側の最外層を構成する。静電防止層13は、静電防止剤を含んでおり、収容袋1が帯電することを防止するための層である。静電防止層13を有することによって、静電気が帯電して収容袋1の表面へのゴミやチリ等の付着を防止することや、他の面との接触による静電気の発生を防止することができる。
【0043】
静電防止剤としては、例えば、高分子型静電防止剤、界面活性剤、導電性微粉末等が挙げられる。高分子型静電防止剤としてはポリエーテル-ポリオレフィンブロックポリマー、ポリチオフェン系ポリマー、アイオノマー等が挙げられる。界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルアミン、第四級アンモニウム、アルキルスルホネート等が挙げられる。導電性微粉末としては酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
このような静電防止層13として具体的には、具体的には、例えば、フタムラ化学社製のFE2021(静電防止PET)等が好ましいものとして挙げられる。静電防止性に優れるほか、透明であるため、収容物を外部から見ることができる。
【0045】
静電防止層13の厚みとしては、特に限定されるものではないが、5μm~50μmであることが好ましく、8μm~35μmであることがより好ましい。
【0046】
(ドライラミネート層)
収容袋1を構成するフィルム10は、上述したような多層構造(ヒートシール層、ガスバリア層12、静電防止層13)における少なくとも一つの層間に、ドライラミネート層(図示せず)が配されてなる。
ドライラミネート層は、接着剤をドライラミネート加工することで得られたものであり、層間を接着するための接着層として機能する。
【0047】
各構成層をポリエチレン(PE)フィルムではなく、ドライラミネート層で接着することで、PE由来のアウトガスの発生を抑制することができる。
【0048】
このようなドライラミネート層による接着によれば、接着剤を完全に乾燥できるため、接着剤フィルム層由来のアウトガスの発生抑制の観点からも好ましい。
【0049】
なお、接着剤フィルム層由来のアウトガスが発生したとしても、第1の層11が高いガスバリア性を有していることで、アウトガスが収容袋1の内側に透過してくることを抑制できる。
【0050】
収容袋1を構成するフィルム10全体の厚みは、破れの防止やハンドリング性の観点から、20μm~200μmであることが好ましく、35μm~100μmであることがより好ましい。
【0051】
上述したようなフィルム10は、第1の層11(ヒートシール層)が内側となるように所定の形状に折り曲げられて、ヒートシールにより外縁部が接着されることで、開口部を有する袋体状に形成され、収容袋1として構成される。これらのフィルム10および収容袋1は、異物の付着を防止する観点からクリーンルーム内で製造されることが好ましい。
収容袋1の形状、大きさとしては特に限定されるものではなく、収容物(ペリクルケース20)の形状、大きさに合わせて適宜設定される。
【0052】
そして、
図1に示すように、本発明の収容袋1は、ペリクル30を収納したペリクルケース20を、さらに収容するために用いられる。
なお、
図1では、わかりやすくするためにペリクルケース20と収容袋1との間に隙間を設けて示しているが、これに限定されるものではない。
【0053】
ペリクル30は、一般に、ペリクル枠31と、ペリクル枠31の一端側に配された、透明な薄膜であるペリクル膜32と、ペリクル枠31の他端側(ペリクル枠31のペリクル膜32とは反対側)に配された、フォトマスクに張り付けられるための粘着層33と、を有する。
【0054】
ペリクルケース20は、一般的には、ペリクル30を載置する容器本体21と、それに周縁部で嵌合し密封する蓋体22とから構成される。
【0055】
収容袋1にペリクルケース20を収容する場合には、まず、開口部から袋体内部にペリクルケース20を挿入し、袋体の開口部を押さえて所定のヒートシール温度(第1の層11の融点以上)で加熱することにより袋体を密封(ヒートシール)する。これらの収容作業も、クリーンルーム内で行われることが好ましい。
【0056】
収容袋1は、収容物保護の観点から、そのシール強度が、シール部分の引張強度として5N/15mm以上であることが好ましく、10N/15mm以上であることがより好ましい。シール強度が5N/15mm以上であれば、シール部を手で引っ張っても開封できないレベルであり、輸送や保管中に収容袋が不用意に開封してしまうことを防止できる。
【0057】
本発明の収容袋1によれば、有機ガス(アウトガス)の発生量が200ppb以下であるようなフィルム10から構成されていること、および、第1の層11の酸素透過速度が200ml/m2・day・MPa以下であることにより、ヒートシール可能であるとともに、アウトガスの発生、および袋の内側にガスが溜まることを抑えることができる。その結果、アウトガスが内部のペリクル30に付着することに起因するヘイズの発生を抑制することができる。
【0058】
なお、収容袋1は、フィルム10を予め袋体状に形成した場合に限定されず、枚葉状のフィルム10で、第1の層11が内側となるようにペリクルケース20を包み込んだ後で、ヒートシールにより接着密封するものであってもよい。
【0059】
上述した説明では、収容袋1を構成するフィルム10として、ヒートシール層(第1の層11)と、ガスバリア層12と、静電防止層13とを順に有するフィルム(
図2参照)を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば
図3に示すように、第1の層11(ヒートシール層)と、ガスバリア層12とを備えた構成であってもよい。また、第1の層11(ヒートシール層)と、静電防止層13とを備えた構成であってもよい。また、フィルム10は、上述したような多層構造ではなく、第1の層11のみを備えた単層構造であってもよい。
【0060】
また、本発明の収容袋1を構成するフィルム10は、上述した第1の層11(ヒートシール層)、ガスバリア層12および静電防止層13以外の層をさらに備えていても、もちろん構わない。このような層としては、例えば、クッション層、断熱層、防湿層が挙げられる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0062】
本発明の収容袋は、ペリクルを収納したペリクルケースを収容するために用いられるが、もちろん、ペリクル以外の部品(例えば精密電子部品)を、直接あるいはケースに収納された状態で収容する場合にも、好適に用いられることができる。
【実施例】
【0063】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明する。しかしながら、本実施の形態は、その要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下に示すサンプルの作製および評価実験は、特に説明のない限り、室温(23℃)にて行った。
【0064】
[収容袋の作製]
以下に示すようにして多層構造のフィルムを作製し、該フィルムを袋体状に形成、接着することにより収容袋を作製した。
【0065】
(実施例1)
第1の層としてEVOHフィルム(厚み30μm)と、ガスバリア層としてAL箔(厚み7μm)と、PETフィルム(厚み23μm)をドライラミネートにて張り合わせることにより、実施例1のフィルムを作製した。
このフィルムを袋体状(縦:33cm×横:26cm)に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら200℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0066】
(実施例2)
第1の層としてEVOHフィルム(厚み25μm)と、ガスバリア層としてシリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)と、静電防止層として静電防止PETフィルム(厚み13μm)とを、実施例1と同様にドライラミネートにて張り合わせることにより、実施例2のフィルムを作製した。
このフィルムを実施例1と同様の袋体状に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら200℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0067】
(実施例3)
第1の層としてPVCDコートNYフィルム(厚み40μm)と、静電防止層として静電防止NYフィルム(厚み40μm)を、実施例1と同様にドライラミネートにて張り合わせることにより、実施例3のフィルムを作製した。
このフィルムを実施例1と同様の袋体状に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら190℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0068】
(実施例4)
第1の層としてPVAフィルム(厚み25μm)と、ガスバリア層としてシリカ蒸着PETフィルム(厚み15μm)と、静電防止層として静電防止PETフィルム(厚み20μm)とを、実施例1と同様のドライラミネートにて張り合わせることにより、実施例4のフィルムを作製した。
このフィルムを実施例1と同様の袋体状に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら230℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0069】
(比較例1)
第1の層としてLLDPEフィルム(厚み50μm)と、ガスバリア層としてPEフィルム(厚み30μm)とを、接着層フィルムとしてポリエチレン接着層フィルム(厚み20μm)を介して張り合わせることにより、比較例1のフィルムを作製した。
このフィルムを実施例1と同様の袋体状に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら150℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0070】
(比較例2)
第1の層としてCPPフィルム(厚み50μm)と、ガスバリア層としてOPPフィルム(厚み20μm)とを、実施例1と同様のドライラミネートにて張り合わせることにより、比較例2のフィルムを作製した。
このフィルムを実施例1と同様の袋体状に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら150℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0071】
(比較例3)
第1の層としてLDPEフィルム(厚み70μm)と、ガスバリア層としてAl箔(厚み7μm)と、静電防止層として静電防止NYフィルム(厚み13μm)とを、接着層フィルムとしてポリエチレン接着層フィルム(厚み20μm)にて張り合わせることにより、比較例3のフィルムを作製した。
このフィルムを実施例1と同様の袋体状に形成し、開口部に0.2MPaの圧力をかけながら130℃に加熱することで開口部をヒートシールした。
【0072】
上記実施例および比較例、表中で用いられている略語について以下に示す。
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体
PET:ポリエチレンテレフタラート
PVDC:ポリ塩化ビニリデン
NY:ナイロン
PVA:ポリビニルアルコール
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
PE:ポリエチレン
CPP:無延伸ポリプロピレン
OPP:2軸延伸ポリプロピレン
LDPE:高圧法低密度ポリエチレン
【0073】
[特性評価]
上記のようにして作製されたフィルムおよび収容袋の特性について、以下の方法により測定した。
【0074】
(第1の層の酸素透過速度)
第1の層の酸素透過速度は、「酸素透過速度」は、JIS K7126-2:2006「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験法」に準拠した方法(等圧法)により測定した。
すなわち、測定装置「酸素透過率測定装置(等圧法)」を用い、等圧式のガスクロ法で、試験片のフィルム(サンプル)を境に、両側を等圧にし、フィルムを透過したガスをガスクロマトグラフにて分離し、時間あたりの酸素透過量を求めた。
【0075】
(ヒートシール性)
ヒートシール性の評価として、以下の条件により、シール部分の引張強度を測定した。
評価サンプル部:袋体ボトム部分のシール部
サンプル形状:幅W:15mm×長さL:200mm×厚み:0.055mm(掴み具間:100mm、掴みしろ:30mm)
引張速度:300mm/min
ロードセル:500N
上記条件にて引張強度を測定し、以下の基準で評価し、×を不合格とした。
〇:引張強度が10N/15mm超え
△:引張強度が5N/15mm~10N/15mm
×:引張強度が5N/15mm未満
【0076】
(アウトガス発生量)
袋体の中に吸着管を入れて3日間放置し、吸着管により捕集したガスをGC/MSにより分析することでアウトガス発生量を測定した。GC/MS分析条件は下記である。
GC装置:Agilent Technologies 7890A GC System
カラム:Agilent Technologies 19091J-413 HP-5(30m×0.320mm×0.25μm)
温度条件:50℃・2時間
MS装置:JEOL Jms-Q1000GC K9
有機化合物の発生量をアウトガスとした。
上記条件にてアウトガス発生量を測定し、以下の基準で評価した。
〇:アウトガス発生量が200ppb以下
×:アウトガス発生量が200ppb超え
【0077】
(長期保管後のアウトガス発生量)
作製した封止状態の袋体をクリーンルーム内に6カ月間静置させた。その後、アウトガス発生量測定と同様の測定を行い、以下の基準で評価した。
〇:保管前と長期保管後のアウトガス量の増加が1.5倍未満
×:保管前と長期保管後のアウトガス量の増加が1.5倍以上
【0078】
評価結果を表1にまとめて示す。
【0079】
【0080】
表1から明らかなように、最内層(第1の層)として酸素透過速度が200ml/m2・day・MPa以下であるような層を備えた実施例では、フィルムの有機ガス(アウトガス)の発生量が200ppb以下であり、長期保管後においてもアウトガスの発生は少なく良好な結果が得られた。特に第1の層としてEVOHを用いた実施例1,2ではヒートシール性も良好であった。
【0081】
これに対し、最内層に酸素透過速度が200ml/m2・day・MPaよりも大きい層を備えた比較例では、フィルムの有機ガス(アウトガス)の発生量が多く、長期保管後にアウトガスの発生量も増えてしまい不十分な結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明による収容袋を用いることで、ヒートシール可能であるとともに、袋体内部へのアウトガスの発生が抑えられ、その結果、アウトガスが内部のペリクルに付着することに起因するヘイズの発生が抑制され、ペリクルケースの収容袋として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1:収容袋
10フィルム
11:第1の層(ヒートシール層)
12:ガスバリア層
13:静電防止層
20:ペリクルケース
21:容器本体
22:蓋体
30:ペリクル
31:ペリクル枠
32:ペリクル膜
33:粘着層