(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】未固結試料採取装置
(51)【国際特許分類】
E02D 5/50 20060101AFI20240903BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
E02D5/50
E02D1/04
(21)【出願番号】P 2020211869
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123146
【氏名又は名称】米屋 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100066094
【氏名又は名称】米屋 武志
(72)【発明者】
【氏名】石川 実
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179855(JP,A)
【文献】特開2012-237192(JP,A)
【文献】特開2010-222799(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221101(JP,U)
【文献】特開2011-219969(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111703735(CN,A)
【文献】実開昭64-000041(JP,U)
【文献】実開昭54-052101(JP,U)
【文献】中国実用新案第210571490(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/50
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク部と、該タンク部の上端部に設けられ回転ロッドに連結可能なロッド連結部と、前記タンク部の下端部に設けられたアンカー部と、前記タンク部内に設けられた未固結試料を排出する試料排出ユニットを有し、前記タンク部は、有底略円筒状の収容部とその上端部に設けられたスライド式蓋部とを有し、該スライド式蓋部は、上蓋部と該上蓋部の下方に配置され前記上蓋部に対して相対的に回動可能に連結された下蓋部とを有し、前記上蓋部には、第1採取孔が形成されるとともに下方に突出する突出部が設けられ、前記下蓋部には、前記第1採取孔と対応する位置に第2採取孔が形成されるとともに、前記突出部が嵌合しつつスライド可能な溝部が設けられ、前記試料排出ユニットは、前記タンク部の内部と連通する流入孔及び前記タンク部の外部と連通する流出孔が形成され両端が密閉された略円筒状の本体部と、該本体部の内部を移動可能であって前記流入孔及び前記流出孔を閉塞可能な略円柱状のピストン部と、該ピストン部と連結され前記ピストン部の移動操作が可能なハンドル部を有することを特徴とする未固結試料採取装置。
【請求項2】
前記上蓋部の前記第1採取孔及び前記下蓋部の前記第2採取孔が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の未固結試料採取装置。
【請求項3】
前記上蓋部と前記下蓋部の間に、それらの隙間を塞ぐ第1シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の未固結試料採取装置。
【請求項4】
前記第1シール部材に潤滑剤を供給可能なグリス穴を有することを特徴とする請求項3に記載の未固結試料採取装置。
【請求項5】
前記上蓋部と前記下蓋部の間に、それらの隙間を塞ぐとともに、前記上蓋部に形成された前記第1採取孔または前記下蓋部に形成された前記第2採取孔の周縁を囲う第2シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の未固結試料採取装置。
【請求項6】
前記第1シール部材と前記第2シール部
材が摩擦を低減させる素材で形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の未固結試料採取装置。
【請求項7】
前記収容部に、逆止弁を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の未固結試料採取装置。
【請求項8】
前記収容部の側面において揺動可能に支持され、正回転時には縮径状態に、逆回転時には拡径状態に変位可能な拡大翼を、前記アンカー部に代えて、または前記アンカー部と共に有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の未固結試料採取装置。
【請求項9】
前記拡大翼は、前記収容部の前記側面に設けられた支持フレーム部によって揺動可能に支持されたアーム部と、該アーム部の先端部に設けられ未固結試料を前記収容部の前記側面と前記アーム部との間に誘導可能である先端係止部を有することを特徴とする請求項8に記載の未固結試料採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製杭の埋込み工法において、掘削孔に注入される未固結試料を採取する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既製杭の埋込み工法として、数多くのプレボーリング工法や中掘り工法が提案されている。そして、それらの工法において掘削孔を掘削する際、その先端部に築造する根固め部を拡大掘削する場合としない場合とがあるが、いずれの場合も掘削孔の先端部に根固め液を注入して掘削土砂と混合し、ソイルセメントを形成して固化させることで根固め部を築造する。また、プレボーリング工法では、杭周固定部に杭周固定液を注入して掘削土砂と混合し、ソイルセメントを形成して固化させることで、既製杭を地盤に定着させている。
【0003】
近年、先端支持力係数の大きな既製杭の高支持力工法が普及し、先端支持力が増大することとなった結果、根固め部および杭周固定部の強度の確保といった施工品質確保への関心が高まってきている。そのため、原位置でソイルセメントが固化する前の未固結試料を採取することによる根固め部等の強度確認や、ソイルセメントが固化した固結試料をコアボーリングで採取することによる根固め部等の強度確認などが行われている。
【0004】
しかし、コアボーリングによって根固め部等の固結試料を採取する場合は、採取する位置まで穿孔機を挿入して固化したソイルセメントを削孔する必要があるため、採取作業には多くの時間やコストを要していた。また、硬化後の根固め部が所定の品質を満たしていない場合は、既成杭を引き抜いて再度掘削孔を施工し直す必要があるためリスクが大きかった。
【0005】
そこで、ソイルセメントが固化した固結試料を採取するよりも、ソイルセメントが固化する前の未固結試料を採取して強度確認を行う方が作業としては容易であり、所定材齢における強度発現を推定することにより品質管理上のリスクを低減できることから、特定の容器により未固結試料の採取を行う採取装置が多く提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-179855号公報
【文献】特開2012-237192号公報
【0007】
しかし、上記特許文献1の未固結試料の採取装置の採取機構は、採取口の開閉を油圧によって行う複雑な構造であるため採取装置が高価であり、掘削用ロッドに設置した油圧配管の接続部が外れた場合には、作動油が流出して未固結試料の採取が行えなくなるだけでなく、環境汚染や作業環境の悪化を招くおそれがある。
【0008】
また、上記特許文献2の未固結試料の採取装置の採取機構は、採取口の開閉を機械構造によって行う機械式であるため、操作ロッドの操作により採取タンクの取込口を開放したり塞いだりする場合は、操作ロッドの操作のための人員が必要であるとともに、その操作には微調整が必要であるため操作に熟練を要するという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、構造が簡単かつ安価な装置であって、その操作を少ない人員で容易かつ安全に行えるとともに、掘削孔における任意の位置(深さ)において確実に未固結試料の採取を行える未固結試料採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、タンク部と、該タンク部の上端部に設けられ回転ロッドに連結可能なロッド連結部と、前記タンク部の下端部に設けられたアンカー部と、前記タンク部内に設けられた未固結試料を排出する試料排出ユニットを有し、前記タンク部は、有底略円筒状の収容部とその上端部に設けられたスライド式蓋部とを有し、該スライド式蓋部は、上蓋部と該上蓋部の下方に配置され前記上蓋部に対して相対的に回動可能に連結された下蓋部とを有し、前記上蓋部には、第1採取孔が形成されるとともに下方に突出する突出部が設けられ、前記下蓋部には、前記第1採取孔と対応する位置に第2採取孔が形成されるとともに、前記突出部が嵌合しつつスライド可能な溝部が設けられ、前記試料排出ユニットは、前記タンク部の内部と連通する流入孔及び前記タンク部の外部と連通する流出孔が形成され両端が密閉された略円筒状の本体部と、該本体部の内部を移動可能であって前記流入孔及び前記流出孔を閉塞可能な略円柱状のピストン部と、該ピストン部と連結され前記ピストン部の移動操作が可能なハンドル部を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、前記上蓋部の前記第1採取孔及び前記下蓋部の前記第2採取孔が複数形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、前記上蓋部と前記下蓋部の間に、それらの隙間を塞ぐ第1シール部材が設けられていることを特徴とし、請求項4に係る発明は、前記第1シール部材に潤滑剤を供給可能なグリス穴を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、前記上蓋部と前記下蓋部の間に、それらの隙間を塞ぐとともに、前記上蓋部に形成された前記第1採取孔または前記下蓋部に形成された前記第2採取孔の周縁を囲う第2シール部材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、前記第1シール部材と前記第2シール部材が摩擦を低減させる素材で形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に係る発明は、前記収容部に、逆止弁を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に係る発明は、前記収容部の側面において揺動可能に支持され、正回転時には縮径状態に、逆回転時には拡径状態に変位可能な拡大翼を、前記アンカー部に代えて、または前記アンカー部と共に有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項9に係る発明は、前記拡大翼は、前記収容部の前記側面に設けられた支持フレーム部によって揺動可能に支持されたアーム部と、該アーム部の先端部に設けられ未固結試料を前記収容部の前記側面と前記アーム部との間に誘導可能である先端係止部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記より、請求項1に係る発明によれば、未固結試料採取装置の構造が簡単であって機構調整等の必要が無いため、未固結試料の採取及び排出作業を容易に、安全かつ確実に行うことができる。また、タンク部はその上部に上蓋部と下蓋部を有するスライド式蓋部を有し、その下端部にアンカー部が設けられた構造であるため、アンカー部の先端を掘削孔の底面に食い込ませて回転ロッドを正逆回転させることにより下蓋部の第2採取孔を開閉させることができる。そのため、掘削孔の底面付近において未固結試料を採取する際は、未固結試料採取装置を連結した回転ロッドの操作以外の操作は必要なく、回転ロッドの操作者のみ(最少人数)によって未固結試料を採取することができる。
【0019】
また、請求項2に係る発明によれば、上蓋部の第1採取孔及び下蓋部の第2採取孔が複数形成されている構造であるため、複数個所の第2採取孔から効率的にタンク部の内の空気を排出しつつ未固結試料を収容可能であり、より短時間でかつ確実に未固結試料を採取することができる。
【0020】
また、請求項3及び請求項5に係る発明によれば、上蓋部と下蓋部の間に、それらの隙間を塞ぐ第1シール部材や第2シール部材が設けられている構造であるため、上蓋部と下蓋部の間からの未固結試料の侵入を防止でき、タンク部の密閉性を確保することができるとともに、掘削孔における底面付近の未固結試料のみを確実に採取することができる。また、上蓋部が下蓋部に対して相対的に回動する際に、第1シール部材または第2シール部材と上蓋部または下蓋部の間に摩擦が生じる構造であるため、未固結試料採取装置を掘削孔内で回転させつつ降下させている途中で、上蓋部に対して下蓋部が相対的にひとりでに回動し、下蓋部の第2採取孔が上蓋部の第1採取孔と重なって開口してタンク部内に未固結試料が侵入するのを防止することができる。
【0021】
また、請求項4に係る発明によれば、グリス穴から第1シール部材に潤滑剤を供給可能な構造であるため、請求項6に係る発明によれば、第1シール部材及び第2シール部材が摩擦を低減させる素材で形成されているため、上蓋部が下蓋部に対して相対的に回動する際の、第1シール部材または第2シール部材と上蓋部または下蓋部の間の摩擦が低減する。それに伴い、上記回動に必要な外力(荷重)も低減し、上蓋部を下蓋部に対して容易に相対的に回動させることができるようになるため、未固結試料を短時間でかつ確実に採取することができる。また、上記摩擦が低減することで、第1シール部材及び第2シール部の摩耗を軽減できるため、タンク部の密閉性を長期間維持することができる。
【0022】
また、請求項7に係る発明によれば、収容部に逆止弁を有する構造であるため、逆止弁からタンク部内の空気を抜いて気圧を低下させることで、圧力の差を利用してタンク部内に未固結試料を収容でき、未固結試料を短時間でかつ確実に採取することができる。
【0023】
また、請求項8に係る発明によれば、収容部の側面に揺動可能な拡大翼を有する構造であるため、回転ロッドを逆回転させて拡大翼を拡径状態にさせ、その先端部を掘削孔の側壁に食い込ませて回転ロッドを正逆回転させることにより下蓋部の第2採取孔を開閉させることができる。そのため、掘削孔の任意の深さにおいて未固結試料を確実に採取することができる。
【0024】
また、請求項9に係る発明によれば、拡大翼のアーム部の先端部に収容部の側面とアーム部との間に未固結試料を誘導可能な先端係止部を有する構造であるため、回転ロッドを逆回転させることで拡大翼を容易に拡径状態にさせることができ、未固結試料を短時間でかつ確実に採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置の分解図である。
【
図2】
図1に示すロッド連結部の(a)正面図(b)平面図(c)底面図(d)I-I線における断面図である。
【
図3】
図1に示す上蓋部の(a)正面図(b)平面図(c)底面図(d)II-II線における断面図である。
【
図4】
図1に示す下蓋部の(a)正面図(b)平面図(c)底面図(d)III-III線における断面図である。
【
図5】
図1に示す収容部の(a)平面図(b)底面図(c)正面図(d)IV-IV線における断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置の正面図である。
【
図7】
図6に示す未固結試料採取装置の未固結試料採取前の状態の(a)平面図(b)V-V線における断面図及び部分拡大断面図である。
【
図8】
図6に示す未固結試料採取装置の未固結試料採取時の状態の(a)平面図(b)VI-VI線における断面図及び部分拡大断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る未固結試料採取装置の平面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置を掘削孔内に降下させている状態の断面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置の未固結試料採取時の状態の断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置の未固結試料排出時の状態の断面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る未固結試料採取装置を掘削孔内に降下させている状態図である。
【
図14】
図13に示す未固結試料採取装置のVII-VII線における断面図である。
【
図15】
図13に示す未固結試料採取装置の未固結試料採取時の状態図である。
【
図16】
図15に示す未固結試料採取装置のVIII-VIII線における断面図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置による未固結試料採取時の状態図である。
【
図19】本発明の第1実施形態に係る未固結試料採取装置による未固結試料排出時の状態図である。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る未固結試料採取装置による未固結試料採取時の状態図である。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る未固結試料採取装置による未固結試料排出時の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について
図1ないし
図21に従って説明する。尚、以下では実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各図における同一の構成部材については同一の符号を付するとともに、その説明については省略する。まず、第1実施形態に係る未固結試料採取装置1について説明すると、未固結試料採取装置1は主に鋼製部材により形成され、
図1等に示すように、上端部にロッド連結部3が設けられ下端部にアンカー部42が設けられたタンク部2と、そのタンク部2内に設けられた試料排出ユニット44を有する。
【0027】
ロッド連結部3は、
図1及び
図2(a)~(d)に示すように、略円形状の板状部材である連結板4を有し、その上面の略中央部には、掘削機100等の回転ロッド101の先端部に連結可能な軸部7が設けられている。この軸部7は、その中心軸が連結板4に対し略垂直となるように設けられている。
【0028】
また、連結板4には、その略中央部に設けられた軸部7の下端部から連結板4の周縁にかけて延びる、中心角が約30°の略扇状に欠けた第1えぐり部5が形成されている。この第1えぐり部5の軸部7の下端部側には、連結板4の上面から下面にかけて、第1えぐり部の面積が広くなる方向に傾斜する傾斜面5aが形成されている。
【0029】
連結板4の下面の略中央部には、後述するシャフト30の頭部30aを挿入し嵌合可能な略円柱状の凹部6が形成されている。また、連結板4の周縁付近には、円周方向に略等間隔で、ボルト15を挿通してスライド式蓋部10に固定するためのボルト孔8(本実施形態では7つ)が形成されている。
【0030】
タンク部2は、スライド式蓋部10と収容部38を有する。スライド式蓋部10は、
図1等に示すように、上蓋部11と下蓋部18の二重構造となっている。上蓋部11は、
図3(a)~(d)に示すように、高さの低い略円筒状の胴部12と、その外径と略等しい外径を有し胴部12の上端部を塞ぐ下部天板部13とを有し、その下部天板部13の上面には、胴部12よりも外径が少し大きく且つ連結板4の外径と略等しい略円形状の板状部材である上部天板部14が設けられている。
【0031】
尚、胴部12の外周面には、胴部12の内周面に潤滑剤であるグリス等を注入可能なグリスニップル付きグリス穴12aが、胴部12の高さ方向の略中央であって円周方向に略等間隔で4か所に設けられている。
【0032】
上部天板部14において、その略中央部には後述するシャフト30の軸部30cを挿通させるためのシャフト孔14aが形成されている。このシャフト孔14aの内径は、シャフト30の軸部30cの外径よりもやや大きい大きさに形成されている。そして、そのシャフト孔14aの周縁の少し外側の位置から上部天板部14の周縁にかけて延びる、中心角が約30°の略扇状に欠けるとともに、連結板4の下面側に形成された第1えぐり部5の大きさと略同じ大きさの第2えぐり部14bが形成されている。
【0033】
また、上部天板部14の周縁付近には、円周方向に略等間隔で、ボルトを挿通して連結板4に固定するためのボルト孔14cが、連結板4の第1えぐり部5と上部天板部14の第2えぐり部14bが揃うように重ね合わせた際に、連結板4に形成されたボルト孔8の位置と対応する位置(本実施形態では7つ)に形成されている。
【0034】
下部天板部13において、
図3等に示すように、その略中央部には後述する第1ベアリング32を嵌合可能な嵌合孔13aが形成されている。この嵌合孔13aの内径は、第1ベアリング32の外径と略等しい大きさに形成されている。また、嵌合孔13aの周縁から少し外側の位置には下方に向けて突出する略円柱状の突出部13bが設けられ、その突出部13bの位置から嵌合孔13aを挟んで反対側の位置には、略楕円形状の第1採取孔13cが形成されている。
【0035】
尚、この第1採取孔13cの位置は、上部天板部14の第2えぐり部14bと対応する位置に形成されており、上蓋部11を上方からみたときに、
図3(b)に示すように、第1採取孔13cの大部分が第2えぐり部14bの隙間から見える状態となっている。
【0036】
上記構造により、
図7(a),(b)等に示すように、第1えぐり部5と第2えぐり部14bが揃うように上蓋部11の上部天板部14の上面にロッド連結部3の連結板4が重ねられ、後述するように上蓋部11の上部天板部14の上面から突出するシャフト30の頭部30aが、連結板4の下面に形成された凹部6に嵌合して、シャフト30が連結板4に固定された状態で、連結板4のボルト孔8及び上部天板部14のボルト孔14cに挿通されたボルト15とナット16が締結され、上蓋部11が連結板4に固定されている。
【0037】
このように、連結板4にはシャフト30及び上蓋部11が固定されているため、連結板4を回転させた場合、シャフト30及び上蓋部11は連結板4と同じ方向に同じ回転速度で回転する。
【0038】
下蓋部18は、
図4(a)~(d)に示すように、外径が上蓋部11の胴部12の内径と略等しいかやや小さく、その胴部12内に挿入可能な略円筒状の第1胴部19を有し、その下端部には第1胴部19の外周面に対し外側に向けて略垂直に突出するフランジ部20が設けられている。また、そのフランジ部20の周縁付近には、円周方向に略等間隔で、ボルト15を挿通して後述する収容部38に固定するためのボルト孔20a(本実施形態では8つ)が形成されている。
【0039】
第1胴部19の外周面には、円周方向に沿って連続して延びる防水用のシール部材である樹脂製の円環状のOリング25が、間隔を空けて2つ設けられている。
【0040】
尚、Oリング25は、後述するように、上蓋部11の胴部12内に下蓋部18の第1胴部19を挿入してスライド式蓋部10を組み立てた際に、下蓋部18の第1胴部19の外周面と対峙する上蓋部11の胴部12の内周面に設けられていてもよいし、上記外周面及び内周面の両方にそれぞれ設けられていてもよい。また、上蓋部11の下部天板部13の底面と、その底面と対峙する下蓋部18の第1胴部19の上端面とのいずれか一方または両方に設けられていてもよい。
【0041】
第1胴部19の内部には、第1胴部19よりも高さがやや低く、第1胴部19の内径よりも小さい外径を有する略円筒状の第2胴部22が、第1胴部19と中心軸が共通する位置関係に設けられている。この第2胴部22の上端部の位置は、第1胴部19の上端部と同じ高さに位置している。また、第2胴部22の内部には、その上端部からやや下寄りの位置を塞ぐ仕切り板23が設けられており、後述する第1ベアリング32を嵌合可能な収容部24が形成されている。
【0042】
仕切り板23の略中央部には、後述するシャフト30の軸部30cを挿通させるためのシャフト孔23aが形成されている。このシャフト孔23aの内径は、シャフト30の軸部30cの外径よりもやや大きい大きさに形成されている。
【0043】
第1胴部19の内周面の上端部と、第2胴部の外周面の上端部は、略円環状の連結部26により連結されている。この連結部26には、上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13cと略同じ大きさの略楕円形状の第2採取孔26aが形成されている。
【0044】
この第2採取孔26aは、後述するように、上蓋部11の胴部12内に下蓋部18の第1胴部19を挿入してスライド式蓋部10を組み立てた際に、第2採取孔26aは第1採取孔13cの位置と対応する位置に形成されているため、上蓋部11が下蓋部18に対し相対的に回動することで、第2採取孔26aが上蓋部11の下部天板部13によって塞がれた状態、または第1採取孔13cと完全に重なって開口した状態にすることができる構造となっている(
図7(a),(b)及び
図8(a),(b)参照)。
【0045】
また、連結部26の上面上には、第2採取孔26aの周縁を囲むように、第2採取孔26aと略同一形状の防水用のシール材である樹脂製のOリング26bが設けられている。
【0046】
尚、Oリング26bは、後述するように、上蓋部11の胴部12内に下蓋部18の第1胴部19を挿入してスライド式蓋部10を組み立てた際に、下蓋部18の連結部26の上面と対峙する上蓋部11の下部天板部13の下面上において第1採取孔13cの周縁を囲むように設けられていてもよいし、連結部26の上面上及び上記下面上の両方にそれぞれ設けられていてもよい。
【0047】
上記のようにOリング25,26bが設けられていることで、後述するように、上蓋部11の胴部12内に下蓋部18の第1胴部19を挿入してスライド式蓋部10を組み立てた際に、上蓋部11の胴部12の内周面と下蓋部18の第1胴部19の外周面との隙間、及び上蓋部11の下部天板部13と下蓋部18の連結部26の間の隙間が完全に塞がれた状態となる。そのため、上蓋部11と下蓋部18の間からタンク部2への未固結試料300の侵入を防止でき、タンク部2の密閉性を確保することができる。
【0048】
また、上蓋部11の胴部12の内周面と下蓋部18の第1胴部19の外周面に設けられたOリング25とが接している状態、及び上蓋部11の下部天板部13と下蓋部18の連結部26に設けられたOリング26bとが接している状態である。そのため、後述するように、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回動する際に、上蓋部11の胴部12の内周面と下蓋部18の第1胴部19のOリング25の間、及び上蓋部11の下部天板部13と下蓋部18の連結部26のOリング26bの間に摩擦が生じる。よって、上蓋部11と下蓋部18の位置関係を保ったままの状態で、回転ロッド101に連結した未固結試料採取装置1を掘削孔200内で回転させつつ降下・上昇させることができる。
【0049】
それにより、未固結試料採取装置1を掘削孔200内で回転させつつ降下・上昇させている途中で、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的にひとりでに回動して、後述する下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aが、上蓋部11の下部天板部13によって塞がれた状態から、その下部天板部13に形成された第1採取孔13cと重なって開口した状態(タンク部2の内部と外部が第1採取孔13c及び第2採取孔26aを介して連通した状態)となって、タンク部2内に未固結試料300が侵入するのを防止することができる。そのため、掘削孔200において未固結試料300を採取する際に、任意の位置(深さ)における未固結試料300のみを確実に採取することができる。
【0050】
また、上蓋部11の胴部12に設けられたグリス穴12aから潤滑剤であるグリスを注入することで、下蓋部18の第1胴部19の外周面に設けられた2つのOリング25,25の間の隙間にグリスを供給することができるため、上蓋部11の胴部12の内周面と下蓋部18に設けられたOリング25との間に生じる摩擦を低減させることができる。
【0051】
尚、Oリング25,26bは、摩擦係数の低い材質で形成されたものや、低摩擦となるように表面が加工処理されたものであってもよい。そのようなOリング26bを使用することで、上蓋部11の下部天板部13と下蓋部18の連結部26に設けられたOリング2bとの間に生じる摩擦を低減させることができる。
【0052】
上記のように摩擦を低減させることで、上蓋部11を下蓋部18に対して相対的に回動させる際に必要な外力(荷重)が低減するため、未固結試料採取装置1の操作性が向上し、上蓋部11を下蓋部18に対して容易に相対的に回動させることができるようになる。
そのため、未固結試料300を短時間でかつ確実に採取することができる。また、摩擦を低減させることで、Oリング25,26bの摩耗を軽減できるため、タンク部2の密閉性を長期間に亘り維持することができる。
【0053】
連結部26には、第2胴部22のすぐ外側において、第2胴部22に沿って湾曲するとともに下方に凹む略横長楕円形状の溝部28が設けられている。この溝部28は、第2胴部22を挟んで第2採取孔26aの位置とは反対側の位置から、第2胴部22の周囲を右回りに約90°囲うように延設されている。そのため、後述するように、上蓋部11の胴部12内に下蓋部18の第1胴部19を挿入してスライド式蓋部10を組み立てた際に、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bを溝部28の内部に嵌め込むことができるとともに、その状態で突出部13bが溝部28内を自由にスライド可能な状態となる。
【0054】
上記構造により、
図7(a),(b)等に示すように、シャフト30等によって上蓋部11及び下蓋部18が連結され、スライド式蓋部10が組み立てられている。ここで使用されているシャフト30は、
図1等に示すように、略円柱状の頭部30aを有し、その側面に円周方向に沿って滑り止め用のOリング30bが設けられている。また、頭部30aよりも外径が小さく、下方にネジが切られた軸部30cを有し、その下端部付近には割りピン36を挿通可能な直径方向に貫通するピン孔30dが形成されている。
【0055】
シャフト30の軸部30cが、上から順に上蓋部11のシャフト孔14a、高さの低い略円筒状の第1ベアリング32及び下蓋部18のシャフト孔23aに挿通されている。このとき、上蓋部11の胴部12内に下蓋部18の第1胴部19が挿入され、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28の内部に嵌め込まれた状態となる。また、第1ベアリング32が上蓋部11の下部天板部13の嵌合孔13aに嵌合されるとともに、下蓋部18の収容部24にも嵌合された状態となる。
【0056】
また、シャフト30の軸部30cが、上から順に高さの低い略円筒状の第2ベアリング33及びスリーブ34、ワッシャー37に挿通され、第2ベアリング33、スリーブ34及びワッシャー37は下蓋部18の第2胴部22内に挿入されている。そして、シャフト30の軸部30cの下端部にはナット35が緩く締結され、ナット35の上部が下蓋部18の第2胴部22内に挿入された状態で、第1ベアリング32や下蓋部18等がシャフト30の軸部30cから抜け落ちないようにピン孔30dに割りピン36が挿通され固定されている。このとき、シャフト30の頭部30aは、上蓋部11の上部天板部14の上面から突出した状態となっている。
【0057】
尚、第1ベアリング32、第2ベアリング33、スリーブ34、ワッシャー37及びナット35の外径は、第2胴部22の内径と略等しい大きさとなっている。また、第1ベアリング32、第2ベアリング33、スリーブ34、ワッシャー37の内径は、シャフト30の軸部30cの外径と略等しい大きさとなっている。
【0058】
スリーブ34の外周面には、円周方向に沿って連続して延びる防水用のシール部材である樹脂製の円環状のOリング34aが設けられ、第2胴部22の内周面とスリーブ34の外周面の間の隙間が完全に塞がれた状態となっている。そのため、後述するように、タンク部2内に収容した未固結試料300が、下蓋部18の第2胴部22とスリーブ34の隙間から侵入して、第2ベアリング33や第1ベアリング32と接触するのを防止することができる。
【0059】
また、シャフト30の軸部30cの下端部にナット35を締結して、ナット35の上部を下蓋部18の第2胴部22内に挿入させた状態とすることで、後述するように、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回動する際に、シャフト30を介してナット35が上蓋部11と同じ方向に回動するが、そのときにナット35の上部の外周面と下蓋部18の第2胴部22の内周面との間に摩擦が生じるため、シャフト30(上蓋部11)が回動する速度を抑えることができる。
【0060】
上記のように、上蓋部11及び下蓋部18はシャフト30等により連結されており、上蓋部11は連結板4に固定されている一方、後述するように、下蓋部18は収容部38に固定されている構造となっている。そのため、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回動可能な状態となっている。
【0061】
具体的には、
図7(a)に示すように、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28の右側端部(正回転方向の前方端部)に突き当たっている状態において、後述するように、掘削機100の回転ロッド101とともに未固結試料採取装置1を正回転(右回転)させつつ掘削孔200内を降下させ、アンカー部42の下端部を掘削孔200の底面200aに突き刺してアンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態にする。その後、回転ロッド101を逆回転(左回転)させることで、回転ロッド101と連結されているロッド連結部3の連結板4とともに同じ回転速度で上蓋部11は逆回転する。
【0062】
一方、下蓋部18及び収容部38は、連結板4や上蓋部11には固定されておらず、アンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態であるため、連結板4及び上蓋部11とともに同じ回転速度で逆回転することができず、連結板4等よりも遅い回転速度で逆回転するか、静止したままの状態が維持される。そのため、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回転し、
図8(a)に示すように、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28に沿ってその左側端部(逆回転方向の前方端部)に突き当たるまでスライドする。
【0063】
上記のような上蓋部11及び下蓋部18の動きにより、上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置は、下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aの位置と完全に重なり、第2採取孔26aが開口した状態となる。そのため、
図8(a),(b)に示すように、未固結試料採取装置1の外側に位置する未固結試料300が、連結板4の第1えぐり部5、上蓋部11の上部天板部14の第2えぐり部14b、下部天板部13の第1採取孔13c及び下蓋部18の連結部26の第2採取孔26aを通りタンク部2内に流入可能な状態となり、未固結試料300をタンク部2内に収容することができる。
【0064】
尚、上蓋部11の突出部13bが、下蓋部18の溝部28の左側端部に突き当たった後も回転ロッド101を逆回転させ続けた場合は、アンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態であっても、下蓋部18及びそれが固定されている収容部38は、連結板4及び上蓋部11とともに同じ回転速度で逆回転する。
【0065】
次に、
図8(a)に示すように、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28の左側端部に突き当たっている状態(上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置と、下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aの位置が完全に重なった状態)において、上記と同様にアンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態にしつつ、回転ロッド101を正回転させた場合、連結板4とともに同じ回転速度で上蓋部11は正回転する。
【0066】
一方、下蓋部18及び収容部38は、連結板4や上蓋部11には固定されておらず、アンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態であるため、連結板4や上蓋部11とともに同じ回転速度で正回転することができず、連結板4等よりも遅い回転速度で正回転するか、静止したままの状態が維持される。そのため、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回転し、
図7(a)に示すように、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28に沿ってその右側端部に突き当たるまでスライドする。
【0067】
上記のような上蓋部11及び下蓋部18の動きにより、上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置は、下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aの位置からシャフト30の軸部30cを中心にして時計回りに約90°ずれた位置となって、第1採取孔13cと第2採取孔26aは全く重なる部分がない状態となる。そのため、
図7(a),(b)に示すように、第2採取孔26aは、上蓋部11の下部天板部13によって塞がれた状態となるため、未固結試料採取装置1の外側に位置する未固結試料300が第2採取孔26aからタンク部2内に流入することがない。
【0068】
尚、上蓋部11の突出部13bが、下蓋部18の溝部28の右側端部に突き当たった後も回転ロッド101を正回転させ続けた場合は、アンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態であっても、下蓋部18及びそれが固定されている収容部38は、連結板4や上蓋部11とともに同じ回転速度で正回転する。
【0069】
上記第1実施形態に係る未固結試料採取装置1では、
図7(a),(b)等に示すように、上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13c及び下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aが1つずつであるが、
図9(a),(b)に示す第2実施形態に係る未固結試料採取装置1Aのように、スライド式蓋部10Aにおける上蓋部11Aの第1採取孔13cと下蓋部18Aの第2採取孔26aが対応する位置に複数(本実施形態では2つずつ)形成されていてもよい。
【0070】
上記構造により、上蓋部11Aが下蓋部18Aに対して相対的に回転し、
図9(a)に示すように、上蓋部11Aの下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18Aの連結部26に設けられた溝部28に沿ってその正回転方向の前方端部に突き当たるまでスライドすることで、上蓋部11Aの下部天板部13に形成された2つの第1採取孔13cの位置は、下蓋部18Aの連結部26に形成された2つの第2採取孔26aの位置と完全に重なり、2つの第2採取孔26aが開口した状態となる。それにより、スライド式蓋部10A(下蓋部18A)に形成された2つの第2採取孔26aからタンク部2内の空気を効率的に排出しつつ、未固結試料300をタンク部2内に収容可能となるため、より短時間でかつ確実に未固結試料300を採取することができる。
【0071】
尚、第2実施形態に係る未固結試料採取装置1Aの構造は、上記スライド式蓋部10Aの構造以外は、第1実施形態に係る未固結試料採取装置1の構造と同様である。また、未固結試料採取装置1の構造と同様に、2つの第2採取孔26aの周縁または第1採取孔13cの周縁を囲むように、Oリング26bが設けられている。
【0072】
収容部38は、
図5(a)~(d)に示すように、底板部38aを有する略円筒状の部材であって、その内部には未固結試料300を収容することが可能となっている。また、収容部38の上端部は開口するとともに、その側面に対し略垂直に外側に向けて突出するフランジ部40が設けられており、その周縁付近には略等間隔でボルト15を挿通して下蓋部18を固定するためのボルト孔40aが形成されている。このボルト孔40aは、下蓋部18のフランジ部20と収容部38のフランジ部40が揃うように重ね合わせた際に、下蓋部18のボルト孔20aと対応する位置(本実施形態では8つ)に形成されている。
【0073】
また、フランジ部40のボルト孔40aよりも内側の位置において、円周方向に沿って連続して延び、収容部38の密閉性を高めるための防水用のシール部材である樹脂製の円環状のOリング39が設けられている。
【0074】
そのため、
図7(a),(b)等に示すように、ボルト孔20a,40aが揃うように下蓋部18のフランジ部20と収容部38のフランジ部40が重ねられ、それぞれのボルト孔20a,40aに挿通されたボルト15とナット16が締結され、下蓋部18が収容部38に固定されており、収容部38の上端部が密閉されている。
【0075】
収容部38の底板部38aには、タンク部2の収容部38内に収容された未固結試料300を収容部38外に排出するための略円筒状の排出口41が設けられている。具体的には、略円筒状の排出口41が、収容部38の底板部38aを貫通し、その底板部38aの上面及び下面から突出した状態で設けられている。
【0076】
また、底板部38aには、アンカー部42が設けられている。このアンカー部42は、
図5(b)~(d)に示すように、略長方形状の2枚の板状部材よりなり、底板部38aの略中央部でそれら2枚の板状部材が交差して十字状に形成されており、底板部38aの下面に対してアンカー部42が略垂直で下方に延びるように設けられている。
【0077】
収容部38内の底板部38aの上面上において、底板部38aの略中央部を通り直径方向に延びる試料排出ユニット44が設けられている。この試料排出ユニット44は、底部45bを備える略円筒状の本体部45を有し、その両端部が収容部38から突出した状態で設置されている。本体部45は、その一端部は底部45bにより密閉され、他端部は開口するとともに側面45aに対し略垂直に外側に向けて突出するフランジ部45cが設けられ、そのフランジ部45cに、その外径と略等しい外径を有する端板部46が固定されることで密閉されている。
【0078】
また、本体部45の側面45aにおいて、収容部38内の上下方向の一番高い位置に略円形状の流入孔45dが、一番低い位置に流出孔45eが形成されている。尚、これらの流入孔45dと流出孔45eの内径は略等しく形成されている。
【0079】
また、試料排出ユニット44の上方には、下方に向けて窄まるテーパ部48aを有する漏斗部材48が設けられている。具体的には、漏斗部材48のテーパ部48aの上端部の全周縁部が、収容部38の内周面と隙間なく密着した状態で固定され、テーパ部48aの下端部には下方に向けて延びる略円筒状の開口部48bが設けられ、その下端部が試料排出ユニット44の本体部45の側面45aに形成されている流入孔45dと隙間なく連結されている。
【0080】
また、本体部45の側面45aの流出孔45eが、収容部38の底板部38aに設けられた排出口41の上端部と隙間なく連結されている。
【0081】
尚、未固結試料採取装置1,1Aにおいては、収容部38内に収容された未固結試料300を収容部38外に排出しやすいように、漏斗部材48の開口部48bと、試料排出ユニット44の流入孔45d及び流出孔45eと、収容部38の排出口41は、すべて収容部38の上下方向において対応する位置(一直線上)に設けられているが、必ずしも対応する位置に設けられていなくてもよい。
【0082】
本体部45の内部には、本体部45の内径と略等しい外径を有する略円柱状のピストン部49が収容されており、そのピストン部49が本体部45内においてその長手方向に移動可能となっている。ピストン部49の側面の両端部付近には、円周方向に沿って連続して延びる防水用のシール部材である樹脂製の円環状のOリング50が設けられ、そのOリング50が本体部45の側面45aの内周面と接している。それにより、側面45aの内周面とピストン部49のOリング50の間に摩擦が生じるため、本体部45内においてピストン部49を所望の位置にとどまらせておくことができる。尚、ピストン部49の長さは、本体部45の側面45aに形成された流入孔45d及び流出孔45eの内径よりも長く形成されている。
【0083】
ピストン部49には、その両端面(両底面)を貫通した状態で固定されているとともに、本体部45の長手方向に延びるロッド部51が設けられている。このロッド部51は、試料排出ユニット44の端板部46の略中心に形成された挿通孔46aに挿通されるとともに端板部46から突出しており、ロッド部51の先端部にはピストン部49を移動させるためのハンドル部52が設けられている。
【0084】
上記構造により、ハンドル部52を操作することによって、ピストン部49を本体部45内においてその長手方向に移動させることが可能となっている。具体的には、ハンドル部52を本体部45に向けて一番奥まで押し込むことで、
図5(d)に示すように、ロッド部51を介してピストン部49を本体部45内の左端(一番奥)の位置に移動させることができる。
【0085】
それにより、試料排出ユニット44の本体部45の流入孔45d及び流出孔45eがピストン部49によって塞がれた状態となるため、タンク部2の収容部38内に収容された未固結試料300が、流入孔45d等から収容部38の外に排出されるのを防止することができる。
【0086】
反対に、ハンドル部52を手前に引っ張ることで、
図12に示すように、ロッド部51を介してピストン部49を本体部45内において右端(手前)の位置に向けて移動させることができる。
【0087】
それにより、ピストン部49により塞がれていた本体部45の流入孔45d及び流出孔45eが開口した状態(タンク部2の内部と外部が流入孔45d及び流出孔45eを介して連通した状態)となるため、タンク部2の収容部38内に収容された未固結試料300を、漏斗部材48の開口部48b、本体部45の流入孔45d及び流出孔45e、排出口41を通してタンク部2外へ排出することができる。
【0088】
尚、収容部38の側面に、タンク部2内の空気を抜くことが可能な逆止弁が設けられていてもよい(図示せず)。未固結試料採取装置1,1Aの下蓋部18,18Aの第2採取孔26aが上蓋部11,11Aの下部天板部13によって塞がれた状態とするとともに、試料排出ユニット44の本体部45の流入孔45d及び流出孔45eがピストン部49によって塞がれた状態とし、真空ポンプ等を使用して逆止弁よりタンク部2内の空気を抜くことで、タンク部2内の気圧を低下させることができる。こうすることで、タンク部2内外の圧力の差を利用して未固結試料300をタンク部2内に収容することができるため、未固結試料300をより短時間でかつ確実に採取することができる。
【0089】
次に、未固結試料採取装置1,1Aを使用した未固結試料300の採取方法について具体的に説明する。まず、
図17に示すように、掘削機100の回転ロッド101の先端に掘削装置102を連結し、回転させながら地面201に所定の深さの掘削孔200を掘削する。掘削後、掘削孔200の先端部に根固め液を注入しながら掘削装置102を回転させつつ上下反復し、根固め液と掘削土砂と混合し撹拌する。こうして、未固結試料300である固化する前のソイルセメント300aを形成しながら根固め部を築造する。
【0090】
その後、杭周固定液を注入しながら掘削装置102を回転させつつ上下反復し、杭周固定液と掘削土砂と混合し撹拌する。こうして、未固結試料300である固化する前のソイルセメント300bを形成しながら杭周固定部を築造する。
【0091】
そして、掘削孔200から回転ロッド101及び掘削装置102を引き上げ、回転ロッド101の先端に連結されている掘削装置102を外し、代わりにロッド連結部3を介して未固結試料採取装置1,1Aを連結する。
【0092】
このとき、スライド式蓋部10,10Aは、
図7(a),(b)、
図9(a)に示すように、上蓋部11,11Aの下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18,18Aの連結部26に設けられた溝部28の右側端部(正回転方向の前方端部)に突き当たっている状態であり、下蓋部18,18Aの第2採取孔26aは、下部天板部13によって塞がれた状態となっている。また、試料排出ユニット44における本体部45の流入孔45d及び流出孔45eは、
図7(b)に示すように、ピストン部49により塞がれた状態となっている。
【0093】
尚、未固結試料採取装置1,1Aの収容部38の側面に、タンク部2内の空気を抜くことが可能な逆止弁が設けられている場合は、真空ポンプ等を使用して逆止弁よりタンク部2内の空気を抜いて、タンク部2内の気圧を低下させておく。
【0094】
そして、掘削孔200の根固め部におけるソイルセメント300aを採取するため、
図10に示すように、掘削機100の回転ロッド101とともに未固結試料採取装置1,1Aを正回転(右回転)させた状態で掘削孔200の底面200aまで降下させる。このとき、下蓋部18,18A及び収容部38は、連結板4及び上蓋部11とともに回転ロッド101と同じ回転速度で正回転する。
【0095】
そして、
図11及び
図18に示すように、アンカー部42の下端部を掘削孔200の底面200aに突き刺して、アンカー部42が回転する際に底面200aから抵抗を受ける状態とする。
【0096】
アンカー部42が抵抗を受ける状態とした後、今度は回転ロッド101を逆回転(左回転)させる。これにより、上記のように連結板4及び上蓋部11は回転ロッド101とともに同じ回転速度で逆回転するが、下蓋部18,18A及び収容部38は連結板4及び上蓋部11,11Aよりも遅い回転速度で逆回転するか、静止したままの状態が維持される。そのため、上蓋部11,11Aが下蓋部18,18Aに対して相対的に回転し、上蓋部11,11Aの下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18,18Aの連結部26に設けられた溝部28に沿ってその左側端部(逆回転方向の前方端部)に突き当たるまでスライドする。
【0097】
そして、
図8(a),(b)、
図9(b)及び
図11に示すように、上蓋部11,11
Aの下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置が、下蓋部18,18Aの連結部26に形成された第2採取孔26aの位置と完全に重なり、第2採取孔26aが開口した状態となるため、掘削孔200の根固め部において未固結試料採取装置1,1Aの第1採取口13c付近に存在するソイルセメント300aを、第1採取孔13c及び第2採取孔26aを介してタンク部2内に収容することができる。
【0098】
尚、上蓋部11の突出部13bが、下蓋部18,18Aの溝部28内の左側端部に突き当たった後は、下蓋部18,18A及び収容部38は連結板4及び上蓋部11,11Aとともに回転ロッド101と同じ回転速度で逆回転する。
【0099】
タンク部2内に十分な量のソイルセメント300aを収容した後、今度は回転ロッド101を正回転(右回転)させる。これにより、上記のように連結板4及び上蓋部11は回転ロッド101とともに同じ回転速度で正回転するが、下蓋部18,18A及び収容部38は連結板4及び上蓋部11,11Aよりも遅い回転速度で正回転するか、静止したままの状態が維持される。そのため、上蓋部11,11Aが下蓋部18,18Aに対して相対的に回転し、上蓋部11,11Aの下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18,18Aの連結部26に設けられた溝部28に沿ってその右側端部(正回転方向の前方端部)に突き当たるまでスライドする。
【0100】
それにより、
図7(a),(b)及び
図9(a)に示すように、上蓋部11,11Aの下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置が、下蓋部18,18Aの連結部26に形成された第2採取孔26aの位置とずれて、第2採取孔26aが上蓋部11,11Aの下部天板部13によって塞がれた状態となるため、第2採取孔26aからのタンク部2内へのソイルセメント300aの流入を遮断することができる。
【0101】
尚、上蓋部11,11Aの突出部13bが、下蓋部18,18Aの溝部28内の右側端部に突き当たった後は、下蓋部18,18A及び収容部38は連結板4及び上蓋部11,11Aとともに回転ロッド101と同じ回転速度で正回転する。
【0102】
上記のように、操作者400による掘削機100の回転ロッド101の操作のみによって、回転ロッド101の先端に連結した未固結試料採取装置1,1Aを操作することができ、掘削孔200の根固め部において確実にソイルセメント300aを採取することができる。
【0103】
次に、
図12及び
図19に示すように、掘削機100により掘削孔200から回転ロッド101及び未固結試料採取装置1,1Aを正回転させながら引き上げ、タンク部2内に収容したソイルセメント300aを回収するため、未固結試料回収箱103の真上に未固結試料採取装置1,1Aの排出孔41が位置するように、未固結試料採取装置1,1Aを移動させる。
【0104】
移動後は、操作者400がハンドル部52を手前に引っ張ることで、ピストン部49により塞がれていた試料排出ユニット44の本体部45の流入孔45d及び流出孔45eが開口した状態とし、タンク部2内に収容されたソイルセメント300aをタンク部3外へ排出させることで、未固結試料回収箱103内にソイルセメント300aを回収する。
【0105】
タンク部2内のソイルセメント300aをすべて排出した後は、ハンドル部52を本体部45に向けて一番奥まで押し込むことで、
図8等に示すように、試料排出ユニット44の本体部45の流入孔45d及び流出孔45eがピストン部49によって塞がれた状態とし、次の作業に備える。
【0106】
上記のように、未固結試料採取装置1,1Aは、その構造が簡単であって機構調整等の必要がないため、ソイルセメント300aの採取及び排出作業を容易に、安全かつ確実に行うことができる。
【0107】
次に第3実施形態に係る未固結試料採取装置1Bについて説明すると、上記第1実施形態に係る未固結試料採取装置1と同様に、上端部にロッド連結部3が設けられ下端部にアンカー部42が設けられたタンク部2と、そのタンク部2内に設けられた試料排出ユニット44を有するとともに、タンク部2の収容部38の側面の長手方向の略中央部付近に支持フレーム部54を介して拡大翼55が設けられている。
【0108】
具体的には、
図13ないし
図16に示すように、タンク部2の収容部38の側面において、その側面に対して外側へ向けて突出する2つの支持フレーム部54,54が、収容部38の中心軸を挟んで互いに反対側の位置に点対称に設けられている。この支持フレーム部54は、板状部材を折り曲げて形成された断面略コの字状のフレームであって、上部フレーム部54a、下部フレーム部54b及び側部フレーム部54cを有している。
【0109】
上部フレーム部54a及び下部フレーム部54bは、互いに平行であって、収容部38の側面に対してそれぞれ略垂直で且つ水平方向に延びるように設けられている。また、上部フレーム部54a及び下部フレーム部54bの間に渡すように、棒状の軸部54dが設けられている。側部フレーム部54cは、収容部38の側面に対して略垂直で且つ鉛直方向に延び、上部フレーム部54a及び下部フレーム部54bの端部の間に渡すように設けられている。
【0110】
拡大翼55は、アーム部56及び先端係止部58を有する。アーム部56は、湾曲する横長略長方形状の板状部材であって、収容部38の側面の曲率と略同様な曲率で収容部38側に湾曲しており、その一端には軸孔56cが形成されている。そして、上部フレーム部54a及び下部フレーム部54bの間において、支持フレーム部54の軸部54dがアーム部56の軸孔56cに挿通されている。そのため、アーム部56は、軸部54dにより収容部38の側面に対して垂直な状態で支持されているとともに、軸部54d回りで水平方向に揺動可能に支持されている。
【0111】
また、先端係止部58は縦長略長方形状の板状部材であって、アーム部56の他端(先端)において、アーム部56に対して略垂直で且つ鉛直方向に延びるとともに、収容部38の側面に対しても略垂直となるように設けられている。
【0112】
上記構造により、
図13及び
図14に示すように、2つの拡大翼55,55のアーム部56が収容部38の側面に巻きついた状態(閉じた状態)で、掘削孔200の所定の深さの杭周固定部において、未固結試料採取装置1Bを掘削機100の回転ロッド101とともに正回転(右回転)させた場合、掘削孔200内の未固結試料300であるソイルセメント300bによって拡大翼55を軸部54d回りに右回転(拡径)させる力が作用しないため、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、収容部38の側面に巻きついたままの状態(閉じたままの状態)を維持する。
【0113】
一方、未固結試料採取装置1Bが回転ロッド101とともに逆回転(左回転)することで、ソイルセメント300bは先端係止部58の正面58aに当たり、先端係止部58の正面58aの上下左右方向へ逃げて流れるため、収容部38の側面と、先端係止部58の内側の端面58b及びアーム部56の内側の端面56aとの間にソイルセメント300bが流れ込み、それらの間に隙間が生じる。
【0114】
そして、未固結試料採取装置1Bが逆回転し続けることで、ソイルセメント300bがその隙間に流れ込んでアーム部56の内側の端面56aに当たり続けるとともに、先端係止部58の内側の端面58bにも当たり続ける。それにより、
図15及び
図16に示すように、ソイルセメント300bによって拡大翼55を軸部54d回りに右回転(拡径)させる力が作用し、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、その外側の端面56bが支持フレーム54の側部フレーム部54cに当たるまで、軸部54d回りに右回転(拡径)し続ける状態となる。
【0115】
また、2つの拡大翼55,55のアーム部56が拡径した状態で、未固結試料採取装置1Bが回転ロッド101とともに正回転(右回転)することで、ソイルセメント300bがアーム部56の外側の端面56bに当たり続ける。それにより、ソイルセメント300bによって拡大翼55を軸部54d回りに左回転(縮径)させる力が作用し、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、その内側の端面56aが収容部38の側面に当たるまで、軸部54d回りに左回転(縮径)し続ける状態となる。
【0116】
尚、アーム部56の先端に設けられた先端係止部58は、未固結試料採取装置1Bが逆回転(左回転)する際に、容易に拡大翼55のアーム部56が軸部54d回りに右回転(拡径)してソイルセメント300bを短時間でかつ確実に採取することができるように、収容部38の側面と、先端係止部58の内側の端面58b及びアーム部56の内側の端面56aとの間への十分なソイルセメント300bの流量を確保しうる程度の大きさ(面積)を有することが望ましい。
【0117】
また、未固結試料採取装置1Bが逆回転(左回転)する際に、拡大翼55の先端係止部58の正面58aに当たったソイルセメント300bを、収容部38の側面と、先端係止部58の内側の端面58b及びアーム部56の内側の端面56aとの間にスムーズに誘導して、より容易に拡大翼55が軸部54d回りに右回転(拡径)するように、拡大翼55が収容部38の側面に巻きついた状態(閉じた状態)において、収容部38の側面に対する先端係止部58の角度αが90度以下であることが望ましい(
図14参照)。
【0118】
次に、未固結試料採取装置1Bを使用した未固結試料300の採取方法について具体的に説明する。まず、
図17に示すように、上記実施形態と同様に、掘削機100の回転ロッド101の先端に掘削装置102を連結して、地面201に所定の深さの掘削孔200を掘削し、根固め液及び杭周固定液を注入し混合攪拌することで未固結試料300である固化する前のソイルセメント300a,300bを形成しながら根固め部及び杭周固定部を築造する。
【0119】
そして、掘削孔200から回転ロッド101を引き上げ、その先端に連結されている掘削装置102を外し、代わりにロッド連結部3を介して未固結試料採取装置1Bを連結する。
【0120】
このとき、スライド式蓋部10は、
図7(a),(b)に示す場合と同様に、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28の右側端部(正回転方向の前方端部)に突き当たった状態であるため、下蓋部18の第2採取孔26aは、下部天板部13によって塞がれた状態となっている。また、試料排出ユニット44における本体部45の流入孔45d及び流出孔45eは、
図7(b)に示す場合と同様に、ピストン部49により塞がれた状態となっている。また、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、収容部38の側面に巻きついた状態(閉じた状態)となっている。
【0121】
尚、未固結試料採取装置1Bの収容部38の側面に、タンク部2内の空気を抜くことが可能な逆止弁が設けられている場合は、真空ポンプ等を使用して逆止弁よりタンク部2内の空気を抜いて、タンク部2内の気圧を低下させておく。
【0122】
そして、掘削孔200の所定の深さの杭周固定部におけるソイルセメント300bを採取するため、掘削機100の回転ロッド101とともに未固結試料採取装置1Bを正回転(右回転)させた状態で掘削孔200の所定の深さまで降下させる。このとき、下蓋部18及び収容部38は、連結板4及び上蓋部11とともに回転ロッド101と同じ回転速度で正回転し、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、
図13及び
図14に示すように、収容部38の側面に巻きついたままの状態(閉じたままの状態)を維持する。
【0123】
未固結試料採取装置1Bが所定の深さまで降下した後、今度は回転ロッド101を逆回転(左回転)させる。これにより、連結板4及び上蓋部11は回転ロッド101とともに同じ回転速度で逆回転するとともに、下蓋部18及び収容部38も同じ回転速度で逆回転する。このとき、上記のように拡大翼55の先端係止部58の正面58aに当たったソイルセメント300bの流れにより、収容部38の側面と、先端係止部58の内側の端面58b及びアーム部56の内側の端面56aとの間に隙間が生じ、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、軸部54d回りに右回転(拡径)し続ける状態となる。
【0124】
そして、拡大翼55が軸部54d回りに右回転(拡径)し続けることで、
図15,
図16及び
図20に示すように、拡大翼55の先端係止部58が、掘削孔200の側壁200bに当たって突き刺さり、深く食い込んだ状態とする。それにより、拡大翼55が側壁200bから抵抗を受ける状態となり、拡大翼55が設けられている収容部38及びその収容部38に固定されている下蓋部18は、回転ロッド101とともに同じ回転速度で逆回転することができず、回転ロッド101よりも遅い回転速度で逆回転するか、静止したままの状態が維持される。
【0125】
一方、連結板4及び上蓋部11は回転ロッド101とともに同じ回転速度で逆回転を続ける。そのため、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回転し、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28に沿ってその左側端部(逆回転方向の前方端部)に突き当たるまでスライドする。
【0126】
上記のような上蓋部11及び下蓋部18の動きにより、
図8(a),(b)及び
図11に示す場合と同様に、上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置が、下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aの位置と完全重なり、第2採取孔26aが開口した状態となるため、掘削孔200の杭周固定部において未固結試料採取装置1Bの第1採取孔13c付近に存在するするソイルセメント300bを、第1採取孔13c及び第2採取孔26aを介してタンク部2内に収容することができる。
【0127】
尚、上蓋部11の突出部13bが、下蓋部18の溝部28内の左側端部に突き当たった後は、拡大翼55が側壁200bから抵抗を受ける状態であっても、下蓋部18及び収容部38は連結板4及び上蓋部11とともに回転ロッド101と同じ回転速度で逆回転する。
【0128】
タンク部2内に十分な量のソイルセメント300bを収容した後、今度は回転ロッド101を正回転(右回転)させる。これにより、上記のように連結板4及び上蓋部11は回転ロッド101とともに同じ回転速度で正回転する。
【0129】
一方、拡大翼55の先端係止部58が掘削孔200の側壁200bに深く食い込んで、拡大翼55が側壁200bから抵抗を受けている状態であるため、下蓋部18及び収容部38は回転ロッド101よりも遅い回転速度で正回転するか、静止したままの状態が維持される。そのため、上蓋部11が下蓋部18に対して相対的に回転し、上蓋部11の下部天板部13に設けられた突出部13bが、下蓋部18の連結部26に設けられた溝部28に沿ってその右側端部(正回転方向の前方端部)に突き当たるまでスライドする。
【0130】
それにより、
図7(a),(b)に示す場合と同様に、上蓋部11の下部天板部13に形成された第1採取孔13cの位置が、下蓋部18の連結部26に形成された第2採取孔26aの位置とずれて、第2採取孔26aが上蓋部11の下部天板部13によって塞がれた状態となるため、第2採取孔26aからのタンク部2内へのソイルセメント300bの流入を遮断することができる。
【0131】
尚、上蓋部11の突出部13bが、下蓋部18の溝部28内の右側端部に突き当たった後は、下蓋部18及び収容部38は連結板4及び上蓋部11とともに回転ロッド101と同じ回転速度で正回転する。それにより、掘削孔200の側壁200bに深く食い込んだ状態の拡大翼55の先端係止部58は側壁200bから外れ、ソイルセメント300bがアーム部56の外側の端面56bに当たり続ける。それにより、2つの拡大翼55,55のアーム部56は、その内側の端面56aが収容部38の側面に当たるまで軸部54d回りに左回転(縮径)し続ける状態となり、
図13及び
図14に示すように、収容部38の側面に巻きついた状態(閉じた状態)に戻る。
【0132】
上記のように、操作者400による掘削機100の回転ロッド101の操作のみによって、回転ロッド101の先端に連結した未固結試料採取装置1Bを操作することができ、掘削孔200の杭周固定部の任意の深さにおいて確実にソイルセメント300bを採取することができる。
【0133】
また、第3実施形態に係る未固結試料採取装置1Bにおいては、上記のように拡大翼55を使用することにより掘削孔200の杭周固定部のソイルセメント300bを採取可能であるが、上記第1実施形態と同様にしてアンカー部42を使用することで、根固め部のソイルセメント300aも採取可能である。
【0134】
尚、上記第2実施形態に係る未固結試料採取装置1Aと同様の構造を有するとともに、タンク部2の収容部38の側面の長手方向の略中央部付近に支持フレーム部54を介して拡大翼55が設けられている未固結試料採取装置についても、操作者400による掘削機100の回転ロッド101についての上記未固結試料採取装置1Bの操作と同様の操作を行うことによって、未固結試料採取装置を操作することができ、掘削孔200の根固め部及び杭周固定部において確実にソイルセメント300a,300bを採取することができる。
【0135】
次に、
図21に示すように、掘削機100により掘削孔200から回転ロッド101及び未固結試料採取装置1Bを正回転させながら引き上げ、タンク部2内に収容したソイルセメント300bを回収するため、未固結試料回収箱103の真上に未固結試料採取装置1Bの排出孔41が位置するように、未固結試料採取装置1Bを移動させる。
【0136】
移動後は、
図12に示す場合と同様に、操作者400がハンドル部52を手前に引っ張ることで、ピストン部49により塞がれていた試料排出ユニット44の本体部45の流入孔45d及び流出孔45eが開口した状態とし、タンク部2内に収容されたソイルセメント300bをタンク部3外へ排出させることで、未固結試料回収箱103内にソイルセメント300bを回収する。
【0137】
タンク部2内のソイルセメント300bをすべて排出した後は、ハンドル部52を本体部45に向けて一番奥まで押し込むことで、
図8等に示す場合と同様に、試料排出ユニット44の本体部45の流入孔45d及び流出孔45eがピストン部49によって塞がれた状態とし、次の作業に備える。
【0138】
尚、掘削孔200の杭周固定部における任意の位置(深さ)のソイルセメント300bの採取のみが目的である場合には、第3実施形態に係る未固結試料採取装置1Bは、アンカー部42が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1,1A,1B 未固結試料採取装置 36 割りピン
2 タンク部 37 ワッシャー
3 ロッド連結部 38 収容部
4 連結板 39 Oリング
5 第1えぐり部 40 フランジ部
6 凹部 41 排出口
7 軸部 42 アンカー部
8 ボルト孔 44 試料排出ユニット
10,10A スライド式蓋部 45 本体部
11,11A 上蓋部 46 端板部
12 胴部 48 漏斗部材
13 下部天板部 49 ピストン部
14 上部天板部 50 Oリング
15 ボルト 51 ロッド部
16 ナット 52 ハンドル部
18,18A 下蓋部 54 支持フレーム部
19 第1胴部 55 拡大翼
20 フランジ部 56 アーム部
22 第2胴部 58 先端係止部
23 仕切り板 100 掘削機
24 収納部 101 回転ロッド
25 Oリング 102 掘削装置
26 連結部 103 未固結試料回収箱
28 溝部 200 掘削孔
30 シャフト 201 地面
32 第1ベアリング 300 未固結試料
33 第2ベアリング 400 操作者
34 スリーブ
35 ナット