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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】生分解性重合体組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240903BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240903BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/013
C08K5/053
C08K5/06
C08K5/10
C08L3/02 ZBP
C08L71/02
C08L97/02
C08L101/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020533341
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2019088370
(87)【国際公開番号】W WO2019228273
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】201810522059.5
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520070792
【氏名又は名称】金発科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCI. & TECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.33 Kefeng Road, Science City, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 春平
(72)【発明者】
【氏名】焦 建
(72)【発明者】
【氏名】麦 開錦
(72)【発明者】
【氏名】董 学騰
(72)【発明者】
【氏名】楊 暉
(72)【発明者】
【氏名】区 偉達
(72)【発明者】
【氏名】熊 凱
(72)【発明者】
【氏名】盧 昌利
(72)【発明者】
【氏名】曾 祥斌
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲トン▼旻
(72)【発明者】
【氏名】黄 険波
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】松本 直子
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-518538(JP,A)
【文献】特表2010-505017(JP,A)
【文献】特開2011-026538(JP,A)
【文献】特開2003-145534(JP,A)
【文献】特開2017-082234(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094382(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108383996(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08L 3/02
C08K 5/053
C08K 3/20
C08K 3/34
C08K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル組成物であって、
重量部基準で、成分として、i)脂肪族-芳香族コポリエステル58重量部~70重量部と、ii)澱粉20重量部~25重量部と、iii)加工助剤0~10重量部と、を含み、
成分i)の前記脂肪族-芳香族コポリエステルは、芳香族カルボン酸が二塩基酸の全量に対して44モル%~48モル%であり、且つ前記脂肪族-芳香族コポリエステルの結晶ピーク幅Dが5℃~16℃である、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT、ポリブチレンセバケートテレフタレートPBSeTから選ばれる1種又はこれらの混合物であり、
成分ii)では、前記澱粉は、原料の粒子径D(50)は、4μm~12μmであり、
成分iii)の前記加工助剤は、水、グリセリン、ポリグリセリン、エポキシ大豆油、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、エチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる1種又は複数種の混合物である
ことを特徴とする生分解性ポリエステル組成物。
【請求項2】
重量部基準で、成分として、i)脂肪族-芳香族コポリエステル62重量部~70重量部と、ii)澱粉20重量部~25重量部と、iii)加工助剤0~8重量部と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項3】
成分i)では、前記脂肪族-芳香族コポリエステルにおいて、前記脂肪族-芳香族コポリエステルの結晶ピーク幅Dは8℃~12℃である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項4】
成分ii)では、前記澱粉は、原料の粒子径D(50)が5μm~10μmである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項5】
重量部基準で、有機又は無機フィラー0~20重量部をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1-2のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記有機フィラーは、天然繊維、わら、木粉から選ばれる1種又は複数種の混合物であり、
前記無機フィラーは、滑石粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、黒鉛、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、ウォラストナイト、二酸化チタン、ケイ酸塩、マイカ、ガラス繊維及び鉱物繊維から選ばれる1種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とする請求項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項7】
重量部基準で、前記組成物は、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、抗UV助剤又は他のプラスチック添加剤である他の助剤0~4重量部をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1-2のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項8】
ショッピングバッグ、堆肥袋、マルチシール、保護用被覆膜、サイロフィルム、フィルムストリップ、織物、非織物、紡績品、漁網、負荷バッグ又はゴミ袋の製造における、請求項1-のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料変性の技術分野に属し、具体的には、生分解性重合体組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ポリエステルは、生物資源を原料とする高分子材料であり、石油化学資源を原料とする石油系高分子に比べて、生分解性ポリエステルは、生物又は生化学プロセス又は生物環境において分解することができ、現在の生分解性プラスチックのうち、盛んに研究が行われ、且つ市場での応用の将来性が期待できる分解性材料の1つである。
【0003】
従来、脂肪族ポリエステル又は脂肪族-芳香族コポリエステルを基礎樹脂とするポリエステル組成物は、ショッピングバッグ、生ゴミ袋などの分野に幅広く使用されている。而薄膜の縦横方向引裂特性は、製造されたショッピングバッグ、生ゴミ袋などの製品の特性を評価するための重要な指標である。たとえば、中国特許CN 101522797 Bに記載のとおり、現在市販されている澱粉に基づく生分解性バッグには、機械的特性、特に横方向及び縦方向の引裂強度の均一性が不十分であるという欠点がある。澱粉に基づく生分解性ポリエステル組成物を用いて製造される薄膜は、厚さが18μm~20μmである場合、前記膜の柔軟性又は脆性が過度に高いため、所定の限界重量に耐えられない。このような特性の制限性は、低湿度条件で、組成物における水分の損失により特に明らかになる。
【0004】
中国特許CN 101522797 Bでは、平均寸法が0.3μm未満の澱粉を分散相、弾性率が1000MPaより大きい剛性及び脆性を有する重合体を別の分散相とし、また、前記組成物を低温度及びせん断条件にある押出機械又はほかの装置において加工して、粒子寸法が小さい澱粉分散相及び剛性及び脆性を有する典型的な層状構造の重合体の分散相を得る。上記方法は、材料の縦横方向引裂特性の均一性を効果的に向上できるが、ナノ澱粉を分散相とするため、澱粉の粒子が小さく凝集しやすいことで、寸法安定性の問題を解決するために特定の加工装置及び加工プロセスを必要とし、このため汎用性がなく、一方、ナノ澱粉は、一般的な寸法の澱粉よりも高価であるため、製品の費用対効果を低減させる。
【0005】
中国特許CN 102639594 Bでは、芳香族酸の含有量がジカルボン酸の全モル含有量の48~70モル%の脂族-芳族コポリエステルを基礎樹脂、平均寸法が1μmの澱粉を分散相とすることによって、ポリエステル組成物の機械的特性をある程度向上させる。
【0006】
中国特許CN 102597105 Bには、現在市販されているポリエステルは、通常、48モル%未満の芳香族カルボン酸の量を有し、この閾値以上であれば、このようなポリエステルの生分解百分率が明らかに低下するため、工業的堆肥化又は家庭堆肥化の条件で、効果的に分解できないことが報告されている。
【0007】
Mullerら(Angew.Chem.,Int.Ed(1999),38,1438-1441)によれば、テレフタル酸のモル百分率が42%のポリコハク酸アジペート-コ-テレフタレートタイプの共重合体は、堆肥化するときに12週間内で完全に生分解できる一方、テレフタル酸エステルのモル百分率が51%の産物の生分解百分率が40%未満であることが報告されている。
【0008】
中国特許CN02804139.9には、CEN 13432方法による生分解性を満たすために、生分解性脂肪族-芳香族重合体には、テレフタル酸の含有量(酸の全モル数)が55%以下、好ましくは50%以下であることが必要であることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】中国特許第101522797号明細書
【文献】中国特許第102639594号明細書
【文献】中国特許第102597105号明細書
【文献】中国特許第02804139.9号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Mullerら(Angew.Chem.,Int.Ed(1999),38,1438-1441)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明では、研究した結果、意外なことに、芳香族カルボン酸が二塩基酸の全量に対して44モル%~48モル%の脂肪族-芳香族コポリエステルをマトリックス樹脂とし、且つ前記脂肪族-芳香族コポリエステル結晶のピーク幅Dが5℃~16℃であり、粒子径D(50)が2μm~12μmの澱粉を別の相とし、また、特定含有量の加工助剤を添加することによって、製造されたポリエステル組成物は、優れている横方向及び縦方向の引裂強度を有し、さらに、前記ポリエステル組成物は、工業的堆肥化に対応でき、分解テストを12週間行ったところ生分解率が90%以上に達することを見出した。
【0012】
従来技術の欠陥又は欠点を解決するために、本発明の主な目的は、優れている横方向及び縦方向の引裂強度を有し、且つ工業的堆肥化に対応でき、分解テストを12週間行ったところ生分解率が90%以上に達する生分解性ポリエステル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の技術案によって実現される。
【0014】
生分解性ポリエステル組成物であって、重量部基準で、成分として、
i)脂肪族-芳香族コポリエステル58重量部~80重量部と、
ii)澱粉20重量部~32重量部と、
iii)加工助剤0~10重量部と、を含む。
【0015】
好ましくは地、前記生分解性ポリエステル組成物は、重量部基準で、成分として、
i)脂肪族-芳香族コポリエステル62重量部~80重量部と、
ii)澱粉20重量部~30重量部と、
iii)加工助剤0~8重量部と、を含む。
【0016】
成分i)では、前記脂肪族-芳香族コポリエステルにおいて、芳香族カルボン酸は、二塩基酸の全量に対して44モル%~48モル%であり、且つ前記脂肪族-芳香族コポリエステル結晶のピーク幅Dは、5℃~16℃、好ましくは8℃~12℃である。
【0017】
本発明では、芳香族カルボン酸の含有量が二塩基酸の全モル含有量の44モル%-48モル%である脂肪族-芳香族コポリエステルをマトリックス樹脂とすることによって、テレフタル酸の含有量が低すぎることによってポリエステル組成物の機械的特性が劣化することがない一方、テレフタル酸の含有量が高すぎることによって、ポリエステル組成物の生分解性に大きな悪影響を及ぼすことがない。また、脂肪族-芳香族コポリエステル結晶のピーク幅Dを5℃~16℃とすることにより、製造されたポリエステル組成物は、優れた結晶性を有し、さらに、本発明は、適用分野において材料に要求される機械的特性に応じて、脂肪族-芳香族コポリエステルの添加量を選択する。
【0018】
本発明の前記成分i)では、前記脂肪族-芳香族コポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT、ポリブチレンセバケートテレフタレートPBSeTから選ばれる1種又はこれらの混合物である。
【0019】
本発明では、澱粉をポリエステル組成物の成分ii)とするのは、澱粉が天然由来の重合体であるため、低価であり、毒性が低いという特徴を有し、このため、澱粉と脂肪族-芳香族コポリエステルをブレンドすると、ポリエステル組成物の機械的特性を向上できるだけでなく、組成物のコストを大幅に削減でき、さらに、天然由来の重合体である澱粉は、前記ポリエステル組成物の生分解性向上に寄与するためである。
【0020】
本発明の前記的成分ii)では、前記澱粉の粒子径D(50)は、2μm~12μm、好ましくは3μm~11μm、より好ましくは5μm~10μmであり、澱粉の粒子径が大きいほど、凝集しにくくなり、ポリエステル組成物における分散に有利であり、一方、澱粉の粒子径D(50)が12μmを超えると、澱粉の粒子が大きすぎるため、薄膜製品の表面特性(荒い)へ影響を与え、ポリエステル組成物の加工には材料を可塑化するためにより高い加工温度が必要となり、高すぎる加工温度により脂肪族-芳香族コポリエステルが分解し、それにより材料の特性へ悪影響を与え、さらに、高すぎる加工温度のため、エネルギー消費量及び加工コストの増大が生じる。
【0021】
前記加工助剤は、水、グリセリン、ポリグリセリン、エポキシ大豆油、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、エチレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる1種又は複数種の混合物、好ましくは水、グリセリン又はポリグリセリンのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0022】
前記生分解性重合体組成物では、重量部基準で、前記生分解性重合体組成物は、有機又は無機フィラー0~20重量部をさらに含む。
【0023】
前記有機フィラーは、天然繊維、わら、木粉から選ばれる1種又は複数種の混合物であり、前記無機フィラーは、滑石粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、黒鉛、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、ウォラストナイト、二酸化チタン、ケイ酸塩、マイカ、ガラス繊維又は鉱物繊維から選ばれる1種又は複数種の混合物である。
【0024】
実際の特性のニーズに応じて、本発明の前記生分解性重合体組成物は、重量部基準で、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、抗UV助剤又はほかのプラスチック添加剤であるほかの助剤0~4重量部をさらに含む。
【0025】
前記離型剤は、シリコーンマスターバッチ、モンタンワックス、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドであり、
前記界面活性剤は、ポリソルベート、パルミテート又はラウレートのうちの1種又は2種以上の混合物であり、
前記ワックスは、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、蜜蝋又は蜜蝋エステルのうちの1種又は2種以上の混合物であり、
前記帯電防止剤は、永久帯電防止剤であり、具体的には、PELESTAT-230、PELESTAT-6500、SUNNICO ASA-2500のうちの1種又は2種以上の混合物が挙げられ、
前記染料は、カーボンブラック、ブラックマスターバッチ、チタン白粉、硫化亜鉛、フタロシアニンブルー、蛍光オレンジのうちの1種又は2種以上の混合物である。
【0026】
抗UV助剤は、UV吸収剤及びUV安定剤を含み、
前記UV吸収剤は、UV-944、UV-234、UV531、UV326のうちの1種又は複数種であり、
前記UV安定剤は、UV-123、UV-3896、UV-328のうちの1種又は複数種であり、
前記ほかのプラスチック添加剤は、核形成剤、防曇剤、潤滑剤(たとえばステアリン酸カルシウム)、主酸化防止剤、副酸化防止剤、可塑剤などであってもよい。
【0027】
本発明の前記ポリエステル組成物を用いて製造された12μm±1μm薄膜は、標準ASTM D-882/88に準じてテストしたところ、優れている横方向及び縦方向の引裂強度を有し、縦方向引裂強度≧1000mN、好ましくは≧1100mN、より好ましくは≧1200mN、横方向引裂強度≧2400mN、好ましくは≧2600mN、より好ましくは≧2800mNであり、
本発明の前記ポリエステル組成物を用いて製造された12μm±1μm薄膜は、標準ISO 16929(2013)に準じてテストしたところ、12週間後の生分解率が90%より大きい。
【0028】
本発明の前記ポリエステル組成物は、標準EN 13432に準じて工業的に堆肥化したところ、生分解性である。
【0029】
本発明は、ショッピングバッグ、堆肥袋、マルチシール、保護用被覆膜、サイロフィルム、フィルムストリップ、織物、非織物、紡績品、漁網、負荷バッグ又はゴミ袋の製造における上記生分解性ポリエステル組成物の使用をさらに開示する。
【発明の効果】
【0030】
従来技術に比べて、本発明は、下記有益な効果を有する。
本発明では、研究した結果、意外なことに、芳香族カルボン酸が二塩基酸の全量に対して44モル%~48モル%の脂肪族-芳香族コポリエステルをマトリックス樹脂とし、且つ前記脂肪族-芳香族コポリエステル結晶のピーク幅Dが5℃~16℃であり、粒子径D(50)が2μm~12μmの澱粉を別の相とし、また、特定含有量の加工助剤を添加することによって、製造されたポリエステル組成物は、優れている横方向及び縦方向の引裂強度を有し、さらに、前記ポリエステル組成物は、工業的堆肥化に対応でき、分解テストを12週間行ったところ生分解率が90%以上に達することを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、特定実施形態にて本発明をさらに説明するが、以下の実施例は、本発明の好適実施形態に過ぎず、本発明の実施形態は、下記実施例により制限されない。
【0032】
本発明の実施例及び比較例に使用される原料は、以下のとおりである。
成分i)
PBAT-1:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸46モル%、結晶ピーク幅D 11℃;
PBAT-2:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸44モル%、結晶ピーク幅D 8℃;
PBAT-3:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸48モル%、結晶ピーク幅D 15℃;
PBAT-4:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸38モル%、結晶ピーク幅D 11℃;
PBAT-5:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸58モル%、結晶ピーク幅D 11℃;
PBAT-6:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸46モル%、結晶ピーク幅D 4℃;
PBAT-7:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸46モル%、結晶ピーク幅D 25℃;
PBAT-8:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸58モル%、結晶ピーク幅D 25℃;
PBSeT:二塩基酸の全量に対して芳香族カルボン酸46モル%、結晶ピーク幅D 11℃;
【0033】
成分ii)
澱粉-1、粒子径D(50)4μm;
澱粉-2、粒子径D(50)8μm;
澱粉-3、粒子径D(50)12μm;
澱粉-4、粒子径D(50)16μm;
澱粉-5、粒子径D(50)1μm;
【0034】
成分iii)
加工助剤:水、グリセリン;
フィラー:滑石粉、炭酸カルシウム;
ほかの助剤
可塑剤:クエン酸エステル;
界面活性剤:パルミテート;
ほかの成分は、すべて市販品として入手される。
【0035】
各特性指標の評価方法
脂肪族-芳香族コポリエステルの結晶ピーク幅Dのテスト方法
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、具体的なテスト方法は、以下のとおりであった。高純度標準物(インジウム)を用いて示差走査熱量計を校正し、脂肪族-芳香族コポリエステル5~10mgをアルミ製るつぼに投入して、10℃/minの速度(一回目の走査)で220℃に加熱し、5min保温し、次に10℃/minの速度で-30℃に冷却し、一回目の走査による示差熱分析グラフの降温曲線から脂肪族-芳香族コポリエステルの結晶ピークを得た。結晶のピーク開始端及び終了端を用いて接線を作成し、2つの接線端点の温度差を結晶ピーク幅とした。
【0036】
澱粉の粒子径D(50)のテスト方法
本発明の前記澱粉の粒子径D(50)テスト方法は、GB/T 19077.1『粒度分析レーザー回折法』方法を参照して測定した。
【0037】
ポリエステル組成物の縦方向及び横方向の引裂強度
前記ポリエステル組成物を用いて12μm±1μm薄膜を製造し、標準ASTM D-882/88に準じてテストして得た。
ポリエステル組成物の12週間後の生分解率
前記ポリエステル組成物を用いて12μm±1μm薄膜を製造し、標準ISO 16929(2013)に準じてテストして得た。
【0038】
実施例1-11及び比較例1-4(実施例5-11は参考例)
表1に記載の重量部の配合比で、脂肪族-芳香族コポリエステル、澱粉、加工助剤、フィラー、ほかの助剤を均一に混合した後、単軸押出機に投入して、140℃-240℃で押し出し、造粒して生分解性ポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の各特性のテストデータを表1に示した。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕生分解性ポリエステル組成物であって、
重量部基準で、成分として、i)脂肪族-芳香族コポリエステル58重量部~80重量部と、ii)澱粉20重量部~32重量部と、iii)加工助剤0~10重量部と、を含む、
ことを特徴とする生分解性ポリエステル組成物。
〔2〕重量部基準で、成分として、i)脂肪族-芳香族コポリエステル62重量部~80重量部と、ii)澱粉20重量部~30重量部と、iii)加工助剤0~8重量部と、を含む、
ことを特徴とする〔1〕に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔3〕成分i)では、前記脂肪族-芳香族コポリエステルにおいて、芳香族カルボン酸は二塩基酸の全量に対して44モル%~48モル%であり、且つ前記脂肪族-芳香族コポリエステルの結晶ピーク幅Dは5℃~16℃、好ましくは8℃~12℃である、
ことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔4〕成分ii)では、前記澱粉の粒子径D(50)は、2μm~12μm、好ましくは3μm~11μm、より好ましくは5μm~10μmである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔5〕前記ポリエステル組成物を用いて製造された12μm±1μm薄膜は、標準ASTM D-882/88に準じてテストされた縦方向引裂強度≧1000mN、好ましくは≧1100mN、より好ましくは≧1200mNであり、
前記ポリエステル組成物を用いて製造された12μm±1μm薄膜は、標準ASTM D-882/88に準じてテストされた横方向引裂強度≧2400mN、好ましくは≧2600mN、より好ましくは≧2800mNであり、
前記ポリエステル組成物を用いて製造された12±1μm薄膜は、標準ISO 16929(2013)に準じてテストされた12週間後の生分解率が90%より大きい、
ことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔6〕成分i)では、前記脂肪族-芳香族コポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT、ポリブチレンセバケートテレフタレートPBSeTから選ばれる1種又はこれらの混合物である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔7〕前記加工助剤は、水、グリセリン、ポリグリセリン、エポキシ大豆油、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、エチレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる1種又は複数種の混合物、好ましくは水、グリセリン又はポリグリセリンのうちの1種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とする〔1〕-〔2〕のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔8〕重量部基準で、有機又は無機フィラー0~20重量部をさらに含む、
ことを特徴とする〔1〕-〔2〕のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔9〕前記有機フィラーは、天然繊維、わら、木粉から選ばれる1種又は複数種の混合物であり、
前記無機フィラーは、滑石粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、黒鉛、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、ウォラストナイト、二酸化チタン、ケイ酸塩、マイカ、ガラス繊維及び鉱物繊維から選ばれる1種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とする〔8〕に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔10〕重量部基準で、前記組成物は、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、抗UV助剤又は他のプラスチック添加剤である他の助剤0~4重量部をさらに含む、
ことを特徴とする〔1〕-〔2〕のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
〔11〕ショッピングバッグ、堆肥袋、マルチシール、保護用被覆膜、サイロフィルム、フィルムストリップ、織物、非織物、紡績品、漁網、負荷バッグ又はゴミ袋の製造における、〔1〕-〔10〕のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物の使用。
【0039】
表1 実施例及び比較例における各成分の配合比及び特性のテスト結果(重量部)
【0040】
【表1】
【表2】