(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F27D 7/06 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
F27D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2021018961
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔一
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】朝原 祐輔
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012294(JP,A)
【文献】特開2000-297989(JP,A)
【文献】特開2014-159947(JP,A)
【文献】特開昭61-201718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/00-15/02
F27B 17/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する処理室と、ヒータと、送風機とを有し、前記ヒータで温度調節された空気が前記処理室に供給される熱処理装置において、
複数の往路側送風路を有し、
前記処理室には、前記送風機からの距離が異なる位置に設けられた複数の空気導入部があり、
前記各往路側送風路が、前記各空気導入部のいずれかに接続されており、
前記各往路側送風路を経由して前記処理室に温度調節された空気が供給され、
少なくとも複数の前記往路側送風路に、ダンパーが設けられており、
前記ダンパーと前記空気導入部との間に
設けられ、前記ダンパーの下流側で直線的にのびて空気流を整流する直線部と、当該直線部の下流で内部の圧力を均一化する大容積部とによって構成される整流化部があることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
被処理物を収容する処理室と、ヒータと、送風機とを有し、前記ヒータで温度調節された空気が前記処理室に供給される熱処理装置において、
複数の往路側送風路を有し、
前記処理室には、前記送風機からの距離が異なる位置に設けられた複数の空気導入部があり、
前記各往路側送風路が、前記各空気導入部のいずれかに接続されており、
前記各往路側送風路を経由して前記処理室に温度調節された空気が供給され、
少なくとも複数の前記往路側送風路に、ダンパーが設けられており、
前記ダンパーと前記空気導入部との間に設けられ、空気流を整流する直線部を有する整流化部があり、
複数の復路側送風路を有し、
前記処理室には、前記ヒータまでの距離が異なる位置に設けられた複数の空気排出部があり、
前記各復路側送風路が、前記各空気排出部のいずれかに接続されており、
前記各復路側送風路を経由して前記ヒータ側に前記処理室内の空気が戻され、
少なくとも複数の前記復路側送風路に、ダンパーが設けられていることを特徴とす
る熱処理装置。
【請求項3】
複数の復路側送風路を有し、
前記処理室には、前記ヒータまでの距離が異なる位置に設けられた複数の空気排出部があり、
前記各復路側送風路が、前記各空気排出部のいずれかに接続されており、
前記各復路側送風路を経由して前記ヒータの異なる領域に前記処理室内の空気が戻されることを特徴とする請求項
1に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記各復路側送風路を経由して前記ヒータの異なる領域に前記処理室内の空気が戻されることを特徴とする請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記ダンパーは、前記処理室の前記各空気導入部が設けられた壁面の幅方向
の長
さが前記壁面の幅の60パーセント以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関するものである。本発明の熱処理装置は、基板等の被加熱物を熱風によって加熱する装置や、乾燥機、オーブン、エージング装置、環境試験装置、その他の加熱装置として使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているような熱処理装置が液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display)、有機ELディスプレイ等のようなフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)等の製作に使用されている。
特許文献1に開示された熱処理装置は、PDPを加熱する炉空間と、電気ヒータと、熱風循環ファンを有している。
従来技術の熱処理装置では、炉空間の側面に、パンチングメタルによる熱風の進入口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の熱処理装置では、熱風の吹き出し口にパンチングメタルを設置して、炉空間(処理室)に導入される空気の風速や風量の均一化を図っている。
しかしながら、単に処理室への空気導入部にパンチングメタルを装着しただけでは、処理室に導入される空気の風速等が均一にならない場合があり、細かい調節を行うことが必要な場合がある。
例えば、場所によってパンチングメタルの開口率を変えるといった工夫が必要である場合がある。また最適条件を得るために、パンチングメタルを取り換えて実験を繰り返すことが必要となる場合がある。
また送風機をインバータ制御する等によって、送風量を変更する場合がある。しかしながら送風量自体を変更すると、パンチングメタルの開口率の最適条件が変わってしまう場合がある。
本発明は、従来技術の上記した課題に注目し、処理室にバランスよく熱風を供給することができる、熱処理装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するための態様は、被処理物を収容する処理室と、ヒータと、送風機とを有し、前記ヒータで温度調節された空気が前記処理室に供給される熱処理装置において、複数の往路側送風路を有し、前記処理室には、前記送風機からの距離が異なる位置に設けられた複数の空気導入部があり、前記各往路側送風路が、前記各空気導入部のいずれかに接続されており、前記各往路側送風路を経由して前記処理室に温度調節された空気が供給され、少なくとも複数の前記往路側送風路に、ダンパーが設けられており、前記ダンパーと前記空気導入部との間に整流化部があることを特徴とする熱処理装置である。
【0006】
本態様の熱処理装置は、ヒータ側から処理室に至る送風路が、複数の往路側送風路に分かれている。
また複数の往路側送風路にダンパーが設けられているので、各空気導入部から処理室に供給される空気量を個別に調節することができる。
そのため、処理室にバランスよく熱風を供給することができる。
また本態様の熱処理装置では、ダンパーと空気導入部との間に整流化部がある。そのため、ダンパーで乱れた空気の流れを整流化部で整えることができ、さらにバランスよく処理室に熱風を供給することができる。
【0007】
上記した態様において、複数の復路側送風路を有し、前記処理室には、前記ヒータまでの距離が異なる位置に設けられた複数の空気排出部があり、前記各復路側送風路が、前記各空気排出部のいずれかに接続されており、前記各復路側送風路を経由して前記ヒータ側に前記処理室内の空気が戻され、少なくとも複数の前記復路側送風路に、ダンパーが設けられていることが望ましい。
【0008】
本態様の熱処理装置では、処理室からヒータ側に至る送風路についても、複数の復路側送風路に分かれている。
また複数の復路側送風路にダンパーが設けられているので、処理室の各部から排出される空気量を個別に調節することができる。
そのため、処理室からの空気の排気バランスが良く、結果的に処理室内の空気の流れが安定する。
【0009】
上記した各態様において、複数の復路側送風路を有し、前記処理室には、前記ヒータまでの距離が異なる位置に設けられた複数の空気排出部があり、前記各復路側送風路が、前記各空気排出部のいずれかに接続されており、前記各復路側送風路を経由して前記ヒータの異なる領域に前記処理室内の空気が戻されることが望ましい。
【0010】
本態様の熱処理装置では、処理室内の空気がヒータの各領域に、バランスよく戻される。そのため、送風が保有する熱量が均一化し、処理室内に供給する空気の温度が均一化する。
【0011】
上記した各態様において、前記ダンパーは、前記処理室の前記各空気導入部が設けられた壁面の幅方向に長いものであることが望ましい。
【0012】
本態様の熱処理装置が採用するダンパーは、外形形状が長い。そのため、送風路の断面積の変化が比較的小さく、送風が乱流状態になりにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱処理装置によると、処理室にバランスよく熱風を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の熱処理装置の斜視図である。
【
図2】
図1の熱処理装置の内部構造を示す断面図である。
【
図3】
図2の部分拡大図であり、往路側送風領域と、復路側送風領域を拡大して示したものである。
【
図4】
図1の熱処理装置で採用するダンパー及び往路側送風路の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の熱処理装置1は、例えばガラス板を加熱するものである。
熱処理装置1は、
図2の様に、断熱壁で覆われた筐体3を有し、当該筐体3内に、処理室6と、ヒータ7と送風機8が内蔵されている。
また筐体3内に、一連の空気循環路が形成されている。
以下、説明する。
【0016】
筐体3は、
図1の様に、正面に扉10を有しており、当該扉10を開くことによって、処理室6の一面を開放することができる。
筐体3の内部は、
図2の様に、大きく4領域に分かれている。
即ち、筐体3の上部側に、空調部領域11がある。当該空調部領域11の下に処理室6が位置し、その図面右側が往路側送風領域15となっており、図面左側が復路側送風領域16となっている。
【0017】
処理室6は、金属板で正面を除く5面が覆われた部屋である。
図2、
図3の様に、処理室6の図面右側の側面壁17に、複数の空気導入部20、21、22がある。本実施形態では、空気導入部20、21、22が3か所に設けられている。
空気導入部20、21、22は、高さ方向の上下に分かれている。説明の便宜上、3個の空気導入部を、上部空気導入部20、中部空気導入部21、下部空気導入部22と称する。
各空気導入部20、21、22は、高さに比べて幅(奥行)が広い。また、各空気導入部20、21、22の幅の全長は側面壁17の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、各空気導入部20、21、22の幅の全長は側面壁17の幅の80%以上である。更に望ましくは、各空気導入部20、21、22の幅の全長は側面壁17の幅の90%以上である。各空気導入部20、21、22には小孔23が多数設けられた板が装着されている。
【0018】
また処理室6の図面左側の側面壁18に、複数の空気排出部30、31、32がある。空気排出部30、31、32は、それぞれ空気導入部20、21、22と対向する位置にあり、その大きさや構造は、空気導入部20、21、22と同等である。
即ち空気排出部30、31、32は、高さ方向の上下に分かれている。説明の便宜上、3個の空気排出部を、上部空気排出部30、中部空気排出部31、下部空気排出部32と称する。
各空気排出部30、31、32は、高さに比べて幅(奥行)が広い。また、各空気排出部30、31、32の幅の全長は側面壁18の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、各空気排出部30、31、32の幅の全長は側面壁18の幅の80%以上である。更に望ましくは、各空気排出部30、31、32の幅の全長は側面壁18の幅の90%以上である。各空気排出部30、31、32には小孔33が多数設けられた板が装着されている。
【0019】
空調部領域11には、ヒータ7と、複数の送風機8が設置されている。
ヒータ7は、高さに比べて幅(奥行)が広いものである。ヒータ7の幅の全長は、側面壁17、18の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、ヒータ7の幅の全長は側面壁17、18の幅の80%以上である。更に望ましくは、ヒータ7の幅の全長は側面壁17、18の幅の90%以上である。ヒータ7は側面壁17、18に沿う方向に配置されている。
【0020】
本実施形態では、送風機8を複数有している。
送風機8は、遠心送風機であり、羽根40とモータ41とを有している。送風機8は、それぞれケーシング48を有し、当該ケーシング48内に羽根40が設けられたものである。
モータ41は、筐体3の外に配置されており、ケーシング48及び羽根40は、筐体3の天井部から垂下されている。
送風機8は前記した様に遠心送風機であり、羽根40の下部側に吸気部42があり図面右側に向かって排気される。
複数の送風機8は、側面壁17、18の幅(奥行)方向に向かって直線的に配置されている。即ち、複数の送風機8は、
図1の様に、熱処理装置1の奥行方向に直線的に配置されている。
本実施形態では送風機8を4台有しているが、送風機8の台数は任意である。送風機8は、1台であってもよいが、複数台であることが望ましい。
【0021】
空調部領域11は、一連の空気流路となっている。
即ち空調部領域11の図面左側には、後記する複数の復路側送風路35、36、37の末端が開口し、空調部領域11の図面右側には、後記する複数の往路側送風路25、26、27の始端が開口している。
ヒータ7の下流側の流路は、
図2の様に下方に誘導され、各送風機8の吸気部42に繋がっている。
【0022】
図2、
図3の様に、往路側送風領域15には往路側送風路25、26、27が配置されている。また復路側送風領域16には復路側送風路35、36、37が配置されている。
往路側送風路25、26、27は、空調部領域11の送風機8の下流側と、処理室6と、を繋ぐダクトである。往路側送風路25、26、27は、それぞれ独立したダクトであり、独立した流路である。
説明の便宜上、各往路側送風路を、第一往路側送風路25、第二往路側送風路26、第三往路側送風路27と称する。
【0023】
第一往路側送風路25は、空調部領域11と処理室6の上部空気導入部20とを繋ぐ空気流路である。
本実施形態では、送風機8が筐体3内の上部に設置されているから、上部空気導入部20は、送風機8に最も近い位置、即ち送風機8からの送風距離が最も短い位置にある。
第一往路側送風路25は、上部空気導入部20に末端部が接続されている。すなわち、第一往路側送風路25は、処理室6への接続口の高さが最も高い上部空気導入部20と空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
【0024】
第二往路側送風路26は、空調部領域11と処理室6の中部空気導入部21とを繋ぐ空気流路である。
中部空気導入部21は、送風機8から中程度の位置、即ち送風機8からの送風距離が中程度の位置にある。
第二往路側送風路26は、中部空気導入部21に末端部が接続されている。すなわち、第二往路側送風路26は、処理室6への接続口の高さが前記した上部空気導入部20とは異なる位置にある中部空気導入部21と、空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
【0025】
第三往路側送風路27は、空調部領域11と処理室6の下部空気導入部22とを繋ぐ空気流路である。
下部空気導入部22は、送風機8から最も遠い位置、即ち送風機8からの送風距離が最も長い位置にある。
第三往路側送風路27は、下部空気導入部22に末端部が接続されている。すなわち、第三往路側送風路27は、処理室6への接続口の高さが前記した上部空気導入部20及び中部空気導入部21のいずれとも異なる位置にある下部空気導入部22と、空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
【0026】
本実施形態の熱処理装置1では、往路側送風路25、26、27の幅(奥行)Wが広く、処理室6の側面壁17の幅(奥行)に匹敵し、略同じである。すなわち、
図4の様に、各往路側送風路25、26、27は、いずれも幅(奥行)Wが広い。また、各往路側送風路25、26、27の幅Wの全長は側面壁17の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、各往路側送風路25、26、27の幅Wの全長は側面壁17の幅の80%以上である。更に望ましくは、各往路側送風路25、26、27の幅Wの全長は側面壁17の幅の90%以上である。
図3の様に、各往路側送風路25、26、27の始端には、送風機8に向かって開口する曲路部28がある。各往路側送風路25、26、27の開口部45、46、47は、上下方向に積み重ねられている。
各往路側送風路25、26、27の始端の近傍には、それぞれダンパー50、51、52が設けられている。
説明の便宜上、第一往路側送風路25に設けられたダンパー50を第一ダンパー50と称し、第二往路側送風路26に設けられたダンパー51を第二ダンパー51と称し、第三往路側送風路27に設けられたダンパー52を第三ダンパー52と称する。
【0027】
ダンパー50、51、52の幅(奥行)Wは、往路側送風路25、26、27の他の部分に匹敵し、略同じである。また処理室6の側面壁17の幅(奥行)にも匹敵し、略同じである。すなわち、
図4の様に、各ダンパー50、51、52は、いずれも幅(奥行)Wが広い。また、各ダンパー50、51、52の幅Wの全長は側面壁17の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、各ダンパー50、51、52の幅Wの全長は側面壁17の幅の80%以上である。更に望ましくは、各ダンパー50、51、52の幅Wの全長は側面壁17の幅の90%以上である。
【0028】
各ダンパー50、51、52は、いずれも長手方向に2分割されている。
即ち、第一ダンパー50は、第一前ダンパー50aと第一後ダンパー50bが直列的に接続されたものである。
第一前ダンパー50aは、操作ハンドル53aを有し、当該操作ハンドル53aを手動で回すことによって、第一前ダンパー50aの開度を変更することができる。
操作ハンドル53aは、筐体3の正面側に突出している。
第一後ダンパー50bにも同様に操作ハンドル53bがある。第一後ダンパー50bは、操作ハンドル53bを有し、当該操作ハンドル53bを手動で回すことによって、第一後ダンパー50bの開度を変更することができる。すなわち、本実施形態では、一前ダンパー50aと第一後ダンパー50bを独立して動作する。
操作ハンドル53bは、筐体3の背面側に突出している。
他のダンパー51、52についても、第二前ダンパー51a、第三前ダンパー52a、第二後ダンパー51b、第三後ダンパー52bに分割され、操作ハンドル53a、53bを有している。
【0029】
なお、第一前ダンパー50aと第一後ダンパー50bを連動して動作させるようにしてもよい。すなわち、操作ハンドル53a及び操作ハンドル53bの少なくとも一方を手動で回すことによって、ダンパー50の開度を変更してもよい。他のダンパー51、52についても同様である。
【0030】
図3の様に、各往路側送風路25、26、27は、いずれも直線部60と、大容積部61を有している。各ダンパー50、51、52の下流側は、垂直下方にのびる直線部60となっている。そして、空気導入部20、21、22に接続されている部分は、容積が他の領域に比べて大きな大容積部61となっている。本実施形態では、直線部60と、大容積部61で、整流化部63が構成されている。本実施形態では、整流化部63は、各ダンパー50、51、52と、空気導入部20、21、22との間にある。
【0031】
復路側送風領域16には復路側送風路35、36、37が配置されている。
復路側送風領域16の構造は、往路側送風領域15と略同様であり、復路側送風領域16は、往路側送風領域15と対称のダクトである。
説明の便宜上、各復路側送風領域16を、第一復路側送風路35、第二復路側送風路36、第三復路側送風路37と称する。
【0032】
第一復路側送風路35は、処理室6の上部空気排出部30と空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
本実施形態では、ヒータ7が筐体3内の上部に設置されているから、上部空気排出部30は、ヒータ7に最も近い位置、即ちヒータ7への送風距離が最も短い位置にある。第一復路側送風路35は、上部空気排出部30に先端部が接続されている。すなわち、第一復路側送風路35は、処理室6への接続口の高さが最も高い上部空気排出部30と空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
【0033】
第二復路側送風路36は、処理室6の中部空気排出部31と、空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
中部空気排出部31は、ヒータ7から中程度の位置、即ちヒータ7への送風距離が中程度の位置にある。
第二復路側送風路36は、中部空気排出部31に先端部が接続されている。すなわち、第二復路側送風路36は、処理室6への接続口の高さが前記した上部空気排出部30とは異なる位置にある中部空気排出部31と、空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
【0034】
第三復路側送風路37は、処理室6の下部空気排出部32と、空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。第三復路側送風路37は、ヒータ7から最も遠い位置、即ちヒータ7への送風距離が最も長い位置にある。
第三復路側送風路37は、下部空気排出部32に先端部が接続されている。すなわち、第三復路側送風路37は、処理室6への接続口の高さが前記した上部空気排出部30及び中部空気排出部31のいずれとも異なる位置にある下部空気排出部32と、空調部領域11とを繋ぐ空気流路である。
【0035】
本実施形態の熱処理装置1では、復路側送風路35、36、37の幅(奥行)Wが広く、処理室6の側面壁18の幅(奥行)に匹敵し、略同じである。すなわち、各復路側送風路35、36、37は、いずれも幅(奥行)が広い。また、各復路側送風路35、36、37の幅の全長は側面壁18の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、各復路側送風路35、36、37の幅の全長は側面壁18の幅の80%以上である。更に望ましくは、各復路側送風路35、36、37の幅の全長は側面壁18の幅の90%以上である。
各復路側送風路35、36、37の末端には、ヒータ7に向かって開口する曲路部65、66、67がある。各復路側送風路35、36、37の開口部80、81、82は、上下方向に積み重ねられている。
【0036】
第一復路側送風路35の一部たる曲路部65は、ヒータ7の下部領域に向かって開口している。即ち、第一復路側送風路35の開口部80は、ヒータ7の下部領域に向かって開口している。
第二復路側送風路36の一部たる曲路部66は、ヒータ7の中間高さ領域に向かって開口している。即ち、第二復路側送風路36の開口部81は、ヒータ7の中間高さ領域に向かって開口している。
第三復路側送風路37の一部たる曲路部67は、ヒータ7の上部領域に向かって開口している。即ち、第三復路側送風路37の開口部82は、ヒータ7の上部領域に向かって開口している。
このように、本実施形態では、各復路側送風路35、36、37の末端が、ヒータ7の異なる領域に向かって開口している。
【0037】
各復路側送風路35、36、37の末端の近傍には、それぞれダンパー70、71、72が設けられている。
ダンパー70、71、72の形状及び構造は、前記したダンパー50、51、52と同じである。
ダンパー70、71、72の幅(奥行)Wは、復路側送風路35、36、37の他の部分に匹敵し、略同じである。また処理室6の側面壁18の幅(奥行)にも匹敵し、略同じである。すなわち、ダンパー70、71、72は、いずれも幅(奥行)が広い。また、ダンパー70、71、72の幅の全長は側面壁18の幅の60パーセント以上に及んでいる。望ましくは、各ダンパー70、71、72の幅の全長は側面壁18の幅の80%以上である。更に望ましくは、各ダンパー70、71、72の幅の全長は側面壁18の幅の90%以上である。また各ダンパー70、71、72は、いずれも長手方向に2分割されている。さらに各ダンパー70、71、72は操作ハンドル73a、73bを有している。
【0038】
各復路側送風路35、36、37は、いずれも直線部75と、大容積部76を有している。即ち、空気排出部30、31、32に接続されている部分は、容積が他の領域に比べて大きな大容積部76となっている。大容積部76と各ダンパー70、71、72の間は、垂直上方にのびる直線部75となっている。
【0039】
次に、本実施形態の熱処理装置1の機能について説明する。
本実施形態の熱処理装置1は、処理室6に棚77が設置され、当該棚77に処理対象たるガラス板(図示せず)が設置される。
そしてヒータ7及び送風機8を起動する。送風機8によって、筐体3内の空気がヒータ7を経由して循環する。
また図示しない温度センサーによって、処理室6内の温度がヒータ7にフィードバックされ、処理室6内の温度が熱処理に適した高温に調整される。
【0040】
熱風の流れについて、ヒータ7を起点として説明すると、ヒータ7で加熱された空気が、送風機8の吸気部42に吸引されて加圧され、往路側送風路25、26、27の始端の開口部45、46、47に向かって吐出される。
そして加熱された空気が、各往路側送風路25、26、27を通過して処理室6に供給される。
ここで、第一往路側送風路25に導入された空気は、送風機8からの送風距離が近い位置に設けられた上部空気導入部20に供給される。
第二往路側送風路26に導入された空気は、送風機8からの送風距離が中程度の中部空気導入部21に供給される。
第三往路側送風路27に導入された空気は、送風機8からの送風距離が最も遠い下部空気導入部22に供給される。
【0041】
各往路側送風路25、26、27はいずれも独立したダクトであり、他の送風路の影響を受けない。
そのため各往路側送風路25、26、27に導入された空気がすべて、それぞれ対応する空気導入部20、21、22に供給され、処理室6に導入される。
【0042】
また各往路側送風路25、26、27にそれぞれダンパー50、51、52が設けられているので、ダンパー50、51、52の開度を調節することによって、各往路側送風路25、26、27に導入される空気の割合を任意に調節することができる。
そのため、各空気導入部20、21、22から処理室6に向かって吹き出される送風は、位置によるばらつきが少なく、バランスが良い。
【0043】
また、本実施形態の熱処理装置1では、往路側送風路25、26、27の幅Wが広く、処理室6の側面壁17の幅(奥行)に匹敵する。そのため、流路の断面積の変化が小さく、空気の流れは層流状態に近い。
往路側送風路25、26、27には、ダンパー50、51、52があり、当該ダンパー50、51、52の部分で流路の断面積が絞られるが、ダンパー50、51、52の幅(奥行)Wは、往路側送風路25、26、27の他の部分と略同じであり、流路の幅方向の長さは変化しない。
さらに、ダンパー50、51、52の下流に整流化部63が設けられているので、各空気導入部20、21、22の各小孔から均等に空気が処理室6に放出される。
【0044】
前記した様に、整流化部63は、直線部60と、大容積部61によって構成されている。整流化部63は、ダンパー50、51、52の下流側にある。ダンパー50、51、52は、流路を一時的に絞る部材であり、ダンパー50、51、52を通過した直後の送風は、乱流状態である。
本実施形態では、ダンパー50、51、52の下流に、直線部60があり、当該直線部60を流れるうちに、空気流が整流され、層流化が進む。
そして空気は、容積が大きい大容積部61に入る。大容積部61は、容積が大きいので、内部の圧力が均一化する。その結果、各小孔23から、均等に空気が処理室6に放出される。
【0045】
各空気導入部20、21、22は、処理室6の一方の側面壁17に設けられているので、各空気導入部20、21、22から放出された空気は、対向する側面壁18に向かって送風される。
本実施形態では、対向する側面壁18に、空気排出部30、31、32があり、空気導入部20、21、22から放出された空気は、対向する位置の空気排出部30、31、32から処理室6の外部に排出される。
そして各空気排出部30、31、32から排出された空気は、それぞれ連通する復路側送風路35、36、37を流れて、空調部領域11に戻る。
【0046】
ここで、本実施形態では、各復路側送風路35、36、37にダンパー70、71、72が設けられているから、ダンパー70、71、72の開度を調節することによって、各空気排出部30、31、32に排出される空気の割合を任意に調節することができる。
そのため、各空気導入部20、21、22から処理室6に導入される空気と、処理室6から各空気排出部30、31、32に排出される空気のバランスを確保することができ、処理室6内の空気流を均一にすることができる。
【0047】
処理室6内の空気は、各復路側送風路35、36、37の末端の開口部80、81、82から空調部領域11に戻される。ここで、各復路側送風路35、36、37の末端の開口部80、81、82は、それぞれヒータ7の異なる領域に向かって開口している。
そのため、ヒータ7の各部を均等に空気が通過し、加熱される。そのため、ヒータ7を通過した空気は、温度むらが少なく、均質である。その結果、温度むらが少ない空気が処置室に供給される。
【0048】
以上の様に、本実施形態の熱処理装置1によると、ダンパー50、51、52、70、71、72の開度を調節することにより、処理室6内にバランスよく送風することができる。
上記した流路の説明では、空気導入部20、21、22の送風機8からの距離について説明したが、空気導入部20、21、22のヒータ7からの距離についても送風機8と同様の関係にある。
また上記した流路の説明では、空気排出部30、31、32とヒータ7との距離について説明したが、空気排出部30、31、32と送風機8の距離についてもヒータ7と同様の関係にある。
【0049】
以上説明した実施形態で採用するダンパー50、51、52、70、71、72は、2分割された構造であるが、一体のものであってもよい。
以上説明した実施形態では、ダンパー50、51、52、70、71、72に操作ハンドル53、73を設け、当該操作ハンドル53、73を手動で回すことによって、ダンパー50、51、52、70、71、72の開度を調節した。
これを発展させ、モータ等のアクチェータによってダンパー50、51、52、70、71、72を調節してもよい。
また処理室6内の各部の風量や風速を図示しないセンサーで監視し、これらが均等になる様に、アクチェータを制御装置で自動制御してもよい。また故意に、処理室6内の風量量にばらつきができるように、ダンパー50、51、52、70、71、72の開度を調節してもよい。
【0050】
以上説明した実施形態では、ヒータ7の下流に送風機8が設置されているが、両者の順番は逆であってもよく、送風機8の下流にヒータ7があってもよい。
以上説明した実施形態では、全ての往路側送風路25、26、27にダンパー50、51、52を設けたが、ダンパーを持たない往路側送風路があってもよい。ただし、少なくとも複数の往路側送風路にダンパーがあることが必要である。復路側送風路35、36、37のダンパー70、71、72は、無くてもよい。
【0051】
以上説明した実施形態では、3系統の往路側送風路25、26、27と、3系統の復路側送風路35、36、37を設けたが、往路側送風路の数と、復路側送風路の数は、より多くてもよい。
以上説明した実施形態では、往路側送風路の数と、復路側送風路の数が同数であるが、両者が異なっていてもよい。
復路側送風路は、1系統であってもよい。
【0052】
以上説明した実施形態では、ヒータ7と送風機8が、処理室6の上部側に設置されているが、これらのレイアウトは任意でありヒータ7や送風機8が、処理室6の下部に設置されていてもよい。またヒータ7や送風機8が、処理室6の側方や後方にあってもよい。
【0053】
以上説明した実施形態では、ダンパー50、51、52、70、71、72は、いずれもバタフライ型のダンパーであり、板状の弁体の中心にシャフトがあり、当該シャフトを中心として弁体を回動するものである。本発明は、ダンパーの構造を実施形態に限定するものではなく、公知のあらゆるダンパーを採用することができる。例えば、板状の弁体の端部や、一辺を中心として揺動するものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 熱処理装置
3 筐体
6 処理室
7 ヒータ
8 送風機
11 空調部領域
15 往路側送風領域
16 復路側送風領域
17 側面壁
18 側面壁
20 上部空気導入部
21 中部空気導入部
22 下部空気導入部
25 第一往路側送風路
26 第二往路側送風路
27 第三往路側送風路
30 上部空気排出部
31 中部空気排出部
32 下部空気排出部
35 第一復路側送風路
36 第二復路側送風路
37 第三復路側送風路
50a 第一前ダンパー(風量調節手段)
50b 第一後ダンパー(風量調節手段)
51a 第二前ダンパー(風量調節手段)
51b 第二後ダンパー(風量調節手段)
52a 第三前ダンパー(風量調節手段)
52b 第三後ダンパー(風量調節手段)
53a、53b 操作ハンドル
60 直線部
61 大容積部
63 整流化部
65、66、67 曲路部
70、71、72 ダンパー(風量調節手段)