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特許7548854多層配線基板及び多層配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】多層配線基板及び多層配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240903BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20240903BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 G
H05K1/11 N
H05K3/40 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021050875
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148980
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】河合 義樹
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-258430(JP,A)
【文献】特開2009-170669(JP,A)
【文献】特開2015-038909(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122245(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/007857(WO,A1)
【文献】特開2003-332716(JP,A)
【文献】特開2020-161731(JP,A)
【文献】特開2016-166855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/11
H05K 3/40
H01L 23/12-23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細り形状の複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、
前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板であって、
前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している。
【請求項3】
請求項2に記載の多層配線基板であって、
前記第1のビアの基端面は凸状に湾曲し、
前記第2のビアの前記中心軸は、前記第1のビアの基端面から離れるに従って前記第1のビアの前記中心軸から離れるように傾斜している。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、
前記第1のビアの基端面は凸状に湾曲し、
前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径される形状を有する。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、
前記第2のビアの基端面の面積は、前記第1のビアの基端面の面積より大きい。
【請求項6】
第1の絶縁層に先細り形状の第1の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第1の貫通孔を導電体で満たして第1のビアを形成することと、
前記第1のビアの形成の後に、前記第1のビアの基端面を覆う第2の絶縁層に、前記第1のビアの基端面に到達する先細り形状の第2の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第2の貫通孔を導電体で満たして第2のビアを形成することと、
前記第1及び第2のビアを含むスタックビアを形成することと、を含む多層配線基板の製造方法であって、
前記第1のビアを、その基端面が凹状又は凸状に湾曲する形状になるように形成することと、
前記第1のビアの基端面のうち中心からずれた位置を焦点にしてレーザー光を照射して、前記第2の貫通孔を形成することと、を含む。
【請求項7】
請求項6に記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記第1のビアを、その基端面が凸状に湾曲する形状になるように形成することと、
前記第1のビアの基端面に照射されるレーザー光が、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に反射して前記第2の貫通孔が非軸対称形状に形成されることと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のビアを有する多層配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の多層配線基板として、複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-131727号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単独のビアに比べてスタックビアは長い分、スタックビアとその周りの絶縁層との間で熱変形による応力が大きくなり、多層配線基板の劣化が起こることが考えられる。そのため、多層配線基板のスタックビアの近傍の劣化を抑制することが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた多層配線基板は、先細り形状の複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている。
【0006】
上記課題を解決するためになされた多層配線基板の製造方法は、第1の絶縁層に先細り形状の第1の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第1の貫通孔を導電体で満たして第1のビアを形成することと、前記第1のビアの形成の後に、前記第1のビアの基端面を覆う第2の絶縁層に、前記第1のビアの基端面に到達する先細り形状の第2の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第2の貫通孔を導電体で満たして第2のビアを形成することと、前記第1及び第2のビアを含むスタックビアを形成することと、を含む多層配線基板の製造方法であって、前記第1のビアを、その基端面が凹状又は凸状に湾曲する形状になるように形成することと、前記第1のビアの基端面のうち中心からずれた位置を焦点にしてレーザー光を照射して、前記第2の貫通孔を形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の多層配線基板の側断面図
図2】多層配線基板のスタックビアの側断面図
図3】スタックビアの拡大側断面図
図4】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図5】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図6】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図7】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図8】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図9】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図10】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図11】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図12】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図13】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図14】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図15】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図16】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図17】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図18】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図19】第2実施形態の多層配線基板におけるスタックビアの拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1には、本開示の一実施形態の多層配線基板10が示されている。多層配線基板10は、コア基板11の表裏の一方の面である第1面11F上に第1ビルドアップ部15Aが積層され、コア基板11の表裏の他方の面である第2面11S上に第2ビルドアップ部15Bが積層されている構造を有する。
【0009】
コア基板11は、絶縁性基材11K上に、表裏の両側から(即ち、第1面11F側と第2面11S側とから)、導電層12が積層されている構造になっている。絶縁性基材11Kは、導電体であるビア25に貫通されている。第1面11F側の導電層12と、第2面11S側の導電層12とは、それぞれ所定パターンに形成され、絶縁性基材11Kを貫通するビア25によって接続されている。本実施形態の例では、このビア25は、コア基板11の第2面11S側に先細りする先細り形状(例えばテーパー状)になっている。なお、絶縁性基材11Kは、例えば、エポキシ樹脂又はBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂と、ガラスクロスとを含んでなる。
【0010】
第1ビルドアップ部15Aと第2ビルドアップ部15Bは、それぞれコア基板11側から層間絶縁層21と導電層22とが交互に積層されている構造を有する。層間絶縁層21は、複数のビア25に貫通されている。導電層22は、所定パターンに形成され、隣り合う導電層22同士は、層間絶縁層21を貫通する導電体であるビア25によって接続されている。また、第1ビルドアップ部15A及び第2ビルドアップ部15Bにおいて、最も内側の(即ち、コア基板11に最も近い)導電層22が、層間絶縁層21を貫通するビア25により、コア基板11の各導電層12に接続されている。層間絶縁層21を貫通するビア25は、コア基板11側に先細りする先細り形状になっている。
【0011】
なお、層間絶縁層21は、例えば、プリプレグ(ガラスクロス等の繊維からなる心材を樹脂含浸してなるBステージのシート)又はビルドアップ基板用の絶縁フィルム(心材を有さず例えば無機フィラーを含む熱硬化性樹脂からなるフィルム)で構成されている。
【0012】
第1ビルドアップ部15A及び第2ビルドアップ部15Bの導電層22のうち最も外側(最もコア基板11から離れた側)に配置される最外の導電層22上には、ソルダーレジスト層27が形成されている。ソルダーレジスト層27は、多層配線基板10の最外層を構成する。ソルダーレジスト層27には、開口部27Aが形成され、上記最外の導電層22のうち開口部27Aによってソルダーレジスト層27から露出する部分により、パッド28が形成されている。なお、例えば、多層配線基板10の表裏の面のうち第1ビルドアップ部15A側の面である第1面10Fに露出するパッド28上には、半田バンプ(図示せず)が形成され、半田バンプを介して多層配線基板10が第1面10Fに搭載される電子部品(図示せず)と接続される。また、例えば、多層配線基板10の表裏の面のうち第2ビルドアップ部15B側の面である第2面10Sに露出するパッド28上にも、半田バンプ(図示せず)が形成され、この半田バンプを介して多層配線基板10がマザーボード(図示せず)に接続される。
【0013】
多層配線基板10には、多層配線基板10の厚み方向に複数のビア25が積み重なるスタックビア30が形成されている。例えば、スタックビア30は、多層配線基板10の絶縁層の全てを貫通して多層配線基板10の厚み方向全体に形成されていてもよいし、多層配線基板10の一部の絶縁層のみ貫通して多層配線基板10の厚み方向の一部にのみ形成されていてもよい。
【0014】
図2に示されるように、スタックビア30には、多層配線基板10の厚み方向の同じ側に先細りするように配置され、連続して積み重なっている複数のビア25(以下、「同じ向きのビア群」と適宜いうこととする。)が設けられている。上述のように、層間絶縁層21を貫通するビア25は、コア基板11側に先細りする形状になっているので、同じ向きのビア群では、ビア25の先端面25S(先細りしている側の端面)が、そのビア25よりもコア基板11側に配置されるビア25の基端面25K(先端面25Sと反対側の面)に重ねられる(図3参照)。なお、以下では、同じ向きのビア群において、コア基板11側を「下側」、コア基板11と反対側を「上側」、と適宜いうこととする。
【0015】
図3に示されるように、本実施形態では、ビア25の基端面25Kは、凸状に湾曲していて、例えば、凸球面状になっている。そして、下側のビア25の基端面25Kの中心Kに対して、その基端面25Kに重ねられる上側のビア25の先端面25Sの中心Sがずれている。
【0016】
互いに隣り合って重なるビア25同士において、上側のビア25の中心軸Jは、下側のビア25の中心軸Jに対して傾斜している。これらビア25同士において、上側のビア25の中心軸Jは、下側のビア25の基端面25Kから離れるに従って下側のビア25の中心軸Jから離れるように傾斜している。また、スタックビア30において、ビア25の凸状に湾曲した基端面25Kに重ねられる上側のビア25は、非軸対称形状になっていると共に、そのビア25(上側のビア25)の中心軸Jは、多層配線基板10の厚み方向に対して傾斜している。なお、本実施形態の例では、ビア25の中心軸Jは、ビア25の先端面25Sと基端面25Kの中心S,K同士を通る軸のことである。
【0017】
図3には、スタックビア30の同じ向きのビア群のうち、コア基板11の絶縁性基材11Kを貫通する第1ビア25Aと、第1ビルドアップ部15Aにおいてその第1ビア25Aのすぐ上側に配置される第2ビア25Bと、が示されている。第1ビア25Aは、同じ向きのビア群においてビア25の積み重ねの最も下側に配置されている。第1ビア25Aは、多層配線基板10の厚み方向に略平行な中心軸Jを有して、テーパー状になっている。なお、第1ビア25Aの先端面25Sは、コア基板11の第2面11S側の平坦な導電層12に重なっている。
【0018】
コア基板11の第1面11F上の層間絶縁層21を貫通し、第1ビア25Aにすぐ上側から重なる第2ビア25Bは、第1ビア25Aの形状に対して、第1ビア25Aの中心軸Jから離れる側に拡径される形状を有している。第2ビア25Bは、上述のように非軸対称形状になっていて、本実施形態では、第2ビア25Bの基端面25Kの面積は、第1ビア25Aの基端面25Kの面積よりも大きくなっている。なお、第2ビア25Bの基端面25Kの面積が、第1ビア25Aの基端面25Kの面積よりも小さくなっていてもよい。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の例では、同じ向きのビア群において第1ビア25Aに上側から積み重なる複数のビア25は、非軸対称形状になっていると共に、それら複数のビア25の中心軸が多層配線基板10の厚み方向に対して交互に反対側に傾斜するように積み重なっている。例えば、これら複数のビア25は、第1面10Fのパッド28まで連なっている。
【0020】
なお、図1に示されるように、本実施形態の例では、平坦な導電層(導電層12又は導電層22)上に形成されるビア25は、上述の第1ビア25Aと同様に、多層配線基板10の厚み方向と略平行な中心軸を有してテーパー状になっている。このようなビア25の例として、第2ビルドアップ部15Bにおいてコア基板11の第2面11S上に積層されるビア25Cが挙げられる(図2参照)。このビア25Cは、第2面11S側の平坦な導電層12上に形成され、この導電層12を第1ビア25Aとの間に挟むように配置されている。本実施形態の例では、第2ビルドアップ部15Bにおいて、このビア25Cに上側から(第2面10S側から)複数のビア25が積み重なることで、スタックビア30(具体的には、同じ向きのビア群)が形成されている。なお、これら複数のビア25は、これら複数のビア25の中心軸が多層配線基板10の厚み方向に対して交互に反対側に傾斜するように積み重なっている。例えば、これら複数のビア25は、第2面10Sのパッド28まで連なっている。
【0021】
本実施形態の多層配線基板10は、例えば、以下のようにして製造される。
(1)図4(A)に示される銅張積層板11Dが準備される。銅張積層板11Dは、絶縁性基材11Kの表裏の両面に銅箔12Cが積層されたものである。
【0022】
(2)図4(B)に示されるように、銅張積層板11Dに表裏の一方側からレーザー加工が行われて、銅張積層板11Dを貫通するビアホール25Hが形成される。ビアホール25Hは、レーザー光により、銅張積層板11Dの表裏の一方側から他方側に向かって先細りする形状(例えば、テーパー状)に穿孔される。
【0023】
(3)無電解めっき処理が行われ、銅箔12C上とビアホール25Hの内面に無電解めっき膜(図示せず)が形成される。次いで、電解めっき処理が行われ、銅箔12C上の無電解めっき膜(図示せず)の上に電解めっき膜12Dが形成される(図4(C)参照)。また、この電解めっき処理により、電解めっきでビアホール25H内が満たされて複数のビア25が形成される。これら複数のビア25は、銅張積層板11Dの表裏の他方側(図4(C)における下側)に先細りする形状(例えば、テーパー状)となる。これら複数のビア25の中には、層間絶縁層21を貫通するビア25が積み重なる第1ビア25Aも含まれる。ここで、この電解めっき処理では、銅張積層板11Dの表裏の一方側の面において、電解めっきがビアホール25H上に盛り上がるように形成される。これにより、ビア25の基端面25K(図4(C)における上側の面)が、凸状に膨出するように形成される。
【0024】
(4)図5(A)に示されるように、銅張積層板11Dの表裏の銅箔12C上の電解めっき膜12Dの上に、所定パターンのエッチングレジスト40が形成される。
【0025】
(5)エッチングが行われ、電解めっき膜12D、無電解めっき膜(図示せず)及び銅箔12Cにおいてエッチングレジスト40に覆われていない部分が除去される。その後、エッチングレジスト40が除去される(図5(B)参照)。そして、残された電解めっき膜12D、無電解めっき膜及び銅箔12Cにより、絶縁性基材11Kの表裏の両面に導電層12が形成され、それら導電層12同士がビア25によって接続される(図5(B)参照)。これにより、コア基板11が形成される。
【0026】
(6)図6(A)に示されるように、コア基板11の表裏の両面(第1面11F及び第2面11S)の導電層12の上に、層間絶縁層21としてのプリプレグと、銅箔26と、が積層される。そして、その積層体が、加熱プレスされ、コア基板11の表裏の両面上に層間絶縁層21が形成される。なお、この加熱プレスの際、コア基板11の表裏の両面において、導電層12のパターンの非形成部分がプリプレグの樹脂により埋められる。層間絶縁層21としては、プリプレグの代わりにビルドアップ基板用の絶縁フィルムを用いてもよい(後述の(11)の工程でも同様)。この場合は、ビルドアップ基板用の絶縁フィルムの上に、銅箔26を積層することなく、直接、後述の(8)の工程における無電解めっき処理により無電解めっき膜を形成することができる。
【0027】
(7)図6(B)に示されるように、コア基板11の表裏の両側の銅箔26上からレーザー光が照射されることで、銅箔26及び層間絶縁層21を貫通するビアホール25Hが穿孔される。レーザー光は、絶縁性基材11Kを貫通する第1ビア25Aの基端面25K上にも照射され、層間絶縁層21に覆われていた基端面25Kがビアホール25Hによって露出する。ビアホール25Hは、コア基板11側に先細りする形状に形成される。
【0028】
図7に示されるように、第1ビア25A上にビアホール25Hを形成するにあたっては、第1ビア25Aの基端面25Kのうち中心Kからずれた位置を焦点にしてレーザー光が照射される。そして、基端面25Kに到達したレーザー光の一部は、反射される。ここで、第1ビア25Aの基端面25Kは、凸状に湾曲しているので、基端面25Kの中心Kから一側方に(図7の例では右側に)ずれた位置を焦点にして照射されたレーザー光は、基端面25Kで反射されるときには、一側方側に(図7の例では右側に)反射され易くなる。そして、この反射したレーザー光によってビアホール25Hの内面が偏って除去され、ビアホール25Hが非軸対称形状に形成される。詳細には、ビアホール25Hは、第1ビア25Aの基端面25Kに照射されるレーザー光が第1ビア25Aの中心軸Jから離れる側に反射することで非軸対称形状に形成される。このビアホール25Hの中心軸は、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜する。なお、層間絶縁層21をプリプレグで構成する場合には、例えば、プリプレグのガラス繊維が少なくなっている部分が、上述の反射したレーザー光により特に大きく除去され易い。なお、例えば、レーザー光は、コア基板11の第2面11S側の平坦な導電層12(例えば、第1ビア25Aが接続される部分)にも、第2面11S側から照射される。これにより、略軸対称となったテーパー状のビアホール25Hも形成される(図6(B)参照)。
【0029】
(8)無電解めっき処理が行われ、銅箔26上とビアホール25Hの内面とに無電解めっき膜(図示せず)が形成される。次いで、電解めっき処理が行われ、無電解めっき膜(図示せず)の上に電解めっき膜22Dが形成される(図8(A)参照)。また、この電解めっき処理により、電解めっきでビアホール25H内が満たされてビア25(第2ビア25B)が形成され、第2ビア25Bが第1ビア25Aに積み重なることでスタックビア30が形成される。第2ビア25Bは、第1ビア25Aの基端面25Kに向かって先細り形状に形成されると共に、第2ビア25Bの中心軸Jが、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜するように形成される(図8(B)参照)。第2ビア25Bの中心軸Jは、第1ビア25Aの基端面25Kから離れるに従って第1ビア25Aの中心軸Jから離れるように傾斜する。また、この電解めっき処理では、電解めっきがビアホール25H上に盛り上がるように形成される。これにより、ビア25の基端面25Kが、凸状に膨出するように形成される。
【0030】
(9)図9(A)に示されるように、コア基板11の表裏の両側の電解めっき膜22D上に、所定パターンのエッチングレジスト40が形成される。
【0031】
(10)エッチングが行われ、電解めっき膜22D、無電解めっき膜(図示せず)及び銅箔26においてエッチングレジスト40に覆われていない部分が除去される。その後、エッチングレジスト40が除去される(図9(B)参照)。そして、残された電解めっき膜22D、無電解めっき膜及び銅箔26により、層間絶縁層21上に導電層22が形成される(図9(B)参照)。導電層22と導電層12とは、ビア25によって接続される。
【0032】
(11)図10に示されるように、層間絶縁層21上の導電層22の上に、層間絶縁層21としてのプリプレグと、銅箔26と、が積層される。そして、その積層体が、加熱プレスされ、コア基板11の表裏の両面上に層間絶縁層21が形成される。なお、この加熱プレスの際、コア基板11の表裏の両側の導電層22のパターンの非形成部分がプリプレグの樹脂により埋められる。
【0033】
(12)図11に示されるように、コア基板11の表裏の両側の銅箔26上からレーザー光が照射されることで、銅箔26及び層間絶縁層21を貫通するビアホール25Hが形成される。レーザー光は、第1ビア25Aに積み重なっている第2ビア25Bの基端面25K上にも照射され、層間絶縁層21に覆われていた基端面25Kがビアホール25Hによって露出する。ビアホール25Hは、コア基板11側に先細りする形状に形成される。
【0034】
図12に示されるように、第2ビア25B上にビアホール25Hを形成するにあたっては、第2ビア25Bの基端面25Kのうち中心Kからずれた位置を焦点にしてレーザー光が照射される。そして、基端面25Kに到達したレーザー光の一部は、反射される。ここで、第2ビア25Bの基端面25Kは、凸状に湾曲しているので、基端面25Kの中心から他側方に(図12の例では左側に)ずれた位置を焦点にして照射されたレーザー光は、基端面25Kで反射されるときには、他側方側に(図12の例では左側に)反射され易くなる。そして、この反射したレーザー光によってビアホール25Hの内面が偏って除去され、ビアホール25Hが非軸対称形状に形成される。詳細には、ビアホール25Hは、第2ビア25Bの基端面25Kに照射されるレーザー光が第2ビア25Bの中心軸Jから離れる側に反射することで非軸対称形状に形成される。このビアホール25Hの中心軸は、第2ビア25Bの中心軸Jに対して傾斜すると共に、コア基板11の厚み方向に対して第2ビア25Bの中心軸Jとは反対側に傾斜する。なお、レーザー光は、ビア25上以外にも、導電層22の平坦な部分の上にも照射され、これにより、略軸対称となったテーパー状のビアホール25Hも形成される(図11参照)。
【0035】
(13)無電解めっき処理が行われ、銅箔26上とビアホール25Hの内面とに無電解めっき膜(図示せず)が形成される。次いで、電解めっき処理が行われ、無電解めっき膜(図示せず)の上に電解めっき膜22Dが形成される(図13参照)。また、この電解めっき処理により、電解めっきでビアホール25H内が満たされてビア25が形成される。図14に示されるように、このビア25の中心軸は、第2ビア25Bの中心軸Jに対して、第2ビア25Bの基端面25Kから離れるに従って第2ビア25Bの中心軸Jから離れるように傾斜し、コア基板11の厚み方向に対して第2ビア25Bの中心軸Jとは反対側に傾斜する。また、この電解めっき処理においては、電解めっきがビアホール25H上に盛り上がるように形成される。これにより、ビア25の基端面25K(図14における上側の面)が、凸状に膨出するように形成される。
【0036】
(14)図15に示されるように、コア基板11の表裏の両側の電解めっき膜22D上に、所定パターンのエッチングレジスト40が形成される。
【0037】
(15)エッチングが行われ、電解めっき膜22D、無電解めっき膜(図示せず)及び銅箔26においてエッチングレジスト40に覆われていない部分が除去される。その後、エッチングレジスト40が除去される(図16参照)。そして、残された電解めっき膜22D、無電解めっき膜及び銅箔26により、層間絶縁層21上に導電層22が形成される(図16参照)。積層方向で隣り合う導電層22同士は、ビア25によって接続される。
【0038】
(16)上記した(11)~(15)と同様の工程が繰り返され、コア基板11上の導電層12の上に、層間絶縁層21と導電層22とが交互に所定の層数ずつ積層される(図17参照)。また、積層方向で隣り合う導電層22同士が、層間絶縁層21を貫通するビア25によって接続される。これにより、コア基板11の第1面11F上に、第1ビルドアップ部15Aが形成されると共に、コア基板11の第2面11S上に、第2ビルドアップ部15Bが形成される。
【0039】
(17)図18に示されるように、コア基板11から表裏の両側で最も離れている最外の導電層22上に、それぞれソルダーレジスト層27が積層される。
【0040】
(18)コア基板11の表裏の両側のソルダーレジスト層27の所定箇所に、例えば、レーザー加工やフォトリソグラフィー処理等により、開口部27Aが形成される(図1参照)。そして、最外の導電層22のうち開口部27Aによりソルダーレジスト層27から露出した部分でパッド28が形成される。以上により、多層配線基板10が完成する。
【0041】
本実施形態の多層配線基板10の構造及び製造方法に関する説明は以上である。次に多層配線基板10の作用効果について説明する。本実施形態の多層配線基板10では、第2ビア25Bの先端面25Sが重ねられる第1ビア25Aの基端面25Kが湾曲していて、第2ビア25Bの先端面25Sの中心Sが、第1ビア25Aの基端面25Kとの中心Kに対してずれている。従って、第1ビア25Aと第2ビア25Bを含むスタックビア30の複数のビア25の熱変形量を、一方向に加算され難くすることが可能となり、多層配線基板10におけるスタックビア30の近傍の熱変形による劣化を抑制することが可能となる。また、第1ビア25Aと第2ビア25Bは、それらの中心軸J同士が単にずれるだけではなく、中心軸J同士が互いに傾斜している。従って、第1ビア25Aと第2ビア25Bを含むスタックビア30が直線状に配置される場合に比べて、スタックビア30の近傍の熱変形量を、より一方向に加算され難くすることが可能となる。これにより、多層配線基板10におけるスタックビア30の近傍の熱変形による劣化をより抑制可能となる。
【0042】
また、スタックビア30を構成する複数のビア25がずれているので、これら複数のビアが直線状に積み重なる構成に比べて、スタックビア30に応力が集中することを抑制可能となる。
【0043】
本実施形態の多層配線基板10の製造方法では、第2ビア25B用のビアホール25Hを形成するにあたって、第1ビア25Aの基端面25Kのうち中心Kからずれた位置を焦点にしてレーザー光が照射される。従って、凸状に湾曲する基端面25Kで、レーザー光を一側方に反射させ易くすることが可能となる。これにより、第2ビア25Bを非軸対称形状に容易に形成することが可能となると共に、第2ビア25Bの中心軸Jが、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜するように、第2ビア25Bを形成することが容易となる。
【0044】
[第2実施形態]
図18には、第2実施形態の多層配線基板10Vが示されている。本実施形態においても、スタックビア30の第1ビア25Aの基端面25Kの中心Kと、第2ビア25Bの先端面25Sの中心Sとが、ずれている。ここで、本実施形態の多層配線基板10は、ビア25の基端面25Kが、凹状に湾曲している点が、上記第1実施形態の多層配線基板10とは異なる。例えば、ビア25の基端面25Kは、凹球面状になっている。なお、第2ビア25Bの基端面25Kの断面積は、第1ビア25Aの基端面25Kの断面積よりも大きくなっていてもよいし、小さくなっていてもよい。
【0045】
本実施形態の多層配線基板10Vの製造方法では、コア基板11の絶縁性基材11Kを貫通する第1ビア25Aを電解めっきにより形成する際には、第1ビア25Aの基端面25Kが、凹状に湾曲するように形成される。
【0046】
第1ビア25A上の層間絶縁層21にビアホール25Hが形成されたら、上記第1実施形態と同様に、無電解めっき処理を経て、ビアホール25H内が電解めっきで満たされる。これにより、第1ビア25Aに、第2ビア25Bが積み重なり、スタックビア30が形成される。なお、このとき、第2ビア25Bの基端面25Kも、凹状に湾曲するように形成される。本実施形態の多層配線基板10Vの製造方法のその他の点は、上記第1実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態の多層配線基板10V及びその製造方法によっても、上記第1実施形態の配線基板10と同様の効果を奏することが可能となる。
【0048】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、基端面25Kが凸状に湾曲するビア25と、基端面25Kが凹状に湾曲するビア25と、が両方設けられていてもよい。
【0049】
(2)スタックビア30のうち同じ向きのビア群において、積み重なっているビア25が、非軸対称形状でなくてもよく、略軸対称形状であってもよい。
【0050】
(3)コア基板11の絶縁性基材11Kを、層間絶縁層21と同様にプリプレグで構成してもよい。
【0051】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0052】
10,10V 多層配線基板
10F 第1面
10S 第2面
11 コア基板
12 導電層
21 層間絶縁層
22 導電層
25 ビア
25A 第1ビア
25B 第2ビア
25C ビア
25H ビアホール
25K 基端面
25S 先端面
30 スタックビア
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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