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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】鉄道車両用融雪装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/04 20060101AFI20240903BHJP
   B61K 3/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60S3/04
B61K3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021051633
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149461
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 祐太
(72)【発明者】
【氏名】八木 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203914(JP,A)
【文献】特開2002-59815(JP,A)
【文献】特開2002-37069(JP,A)
【文献】特開2008-149984(JP,A)
【文献】特開2009-96271(JP,A)
【文献】実開平7-4223(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0124868(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/04
B61K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に台車が配設されている複数の車両が編成されてなる列車に対して液体を噴射し、前記台車に付着した雪を除去する鉄道車両用融雪装置であって、
前記台車毎に対応して設けられ、各台車に向けて前記液体を噴射するための複数の噴射ノズルと、
前記噴射ノズル毎に設けられており、前記噴射ノズルから前記液体を噴射させる複数の噴射ポンプと、
前記液体が貯留された貯留槽から前記複数の噴射ノズル及び前記複数の噴射ポンプに向けて前記液体を送液する圧送ポンプと、
を備え、
前記噴射ポンプが作動しない場合に、その噴射ポンプに対応する前記噴射ノズルに対して前記液体を送液可能な状態に切り替えられるバイパス配管が設けられていることを特徴とする鉄道車両用融雪装置。
【請求項2】
前記列車の先頭車両と後方車両における列車端部側の台車に向けて液体を噴射するための第一噴射部と、前記列車における前記車両の連結部側の台車に向けて液体を噴射するための第二噴射部と、を有し、
前記第一噴射部には、前記圧送ポンプと前記噴射ポンプの間の配管と、前記噴射ポンプと前記噴射ノズルの間の配管と、を繋ぐ第一バイパス配管が設けられており、
前記車両の連結部において隣接した配置となって対を成す前記第二噴射部には、前記噴射ポンプと前記噴射ノズルの間の配管を繋ぐ第二バイパス配管が設けられており、
前記第一バイパス配管と前記第二バイパス配管の途中には、通常は閉状態にされるバルブが設けられており、
前記第一噴射部の前記噴射ノズルから前記液体を噴射させる前記噴射ポンプが作動しない場合、前記バルブを開くことで前記第一バイパス配管を通じて前記噴射ノズル側に前記液体が送液されるように構成されており、
対を成した前記第二噴射部におけるいずれか一方の前記噴射ノズルから前記液体を噴射させる前記噴射ポンプが作動しない場合、前記バルブを開くことで前記第二バイパス配管を通じてその一方の前記噴射ノズル側に前記液体が送液されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用融雪装置。
【請求項3】
前記対を成す前記第二噴射部におけるそれぞれの噴射ノズルは、互いの配管が近接した位置にあるように対称的に配置されており、
前記噴射ノズルは複数の噴出孔を有しており、前記列車の延在方向に沿って列をなすように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地や積雪地を走行する鉄道車両の台車に雪が付着し、その付着した雪が高速走行時に落下して、軌道上の設備や車体を損傷させてしまうことがある。その被害の防止対策として、台車に付着した雪を除去する雪落とし作業が行われる。
従来、雪落とし作業は多くの作業員による手作業で行われていたが、その作業効率化や省力化を図るために鉄道車両用の融雪装置が開発されている。
例えば、短時間で融雪作業を行うことを可能にした装置として、鉄道車両の台車に向けて温水を噴射する融雪装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この融雪装置は、駅に停車した鉄道車両の側方に配置される複数のロボットを備えており、各ロボットがそれぞれに割り当てられた台車に向けて温水を噴射するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-4223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の融雪装置の場合、ロボットに温水を送るポンプユニットに故障が発生してしまうと、そのロボットが担当する台車の融雪作業が行えないという不具合が発生してしまうことがある。
直ちに部品交換などによってポンプユニットを作動させることができればよいが、部品が手元に無く取り寄せなければならないような場合には、その修理が終わるまでの期間、雪落とし作業を作業員に頼らざるを得なくなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、温水などの液体を送液するポンプの一部が故障しても融雪作業を可能にする鉄道車両用融雪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
前後に台車が配設されている複数の車両が編成されてなる列車に対して液体を噴射し、前記台車に付着した雪を除去する鉄道車両用融雪装置であって、
前記台車毎に対応して設けられ、各台車に向けて前記液体を噴射するための複数の噴射ノズルと、
前記噴射ノズル毎に設けられており、前記噴射ノズルから前記液体を噴射させる複数の噴射ポンプと、
前記液体が貯留された貯留槽から前記複数の噴射ノズル及び前記複数の噴射ポンプに向けて前記液体を送液する圧送ポンプと、
を備え、
前記噴射ポンプが所定の出力で作動しない場合に、その噴射ポンプに対応する前記噴射ノズルに対して前記液体を送液可能な状態に切り替えられるバイパス配管が設けられているようにした。
この鉄道車両用融雪装置が融雪作業の対象にする列車に編成されている車両には、車両の前後両側に台車が配設されている。つまり、各車両には台車が2つ配設されている。
そして、この鉄道車両用融雪装置は、複数の車両の台車毎に設けられ、各台車に向けて液体を噴射するための複数の噴射ノズルと、複数の噴射ノズル毎に設けられている噴射ポンプと、複数の噴射ノズル及び複数の噴射ポンプに向けて液体を送液する共通の圧送ポンプ等を備えている。
【0007】
かかる構成の鉄道車両用融雪装置であれば、噴射ポンプの一部が作動しない場合でも、その噴射ポンプに対応する噴射ノズルに対してバイパス配管を通じて液体を送出することができるので、送液圧力は低下するものの噴射ノズルから液体を台車に向けて噴射することができ、融雪作業を継続することができる。
つまり、この鉄道車両用融雪装置は、装備されている複数の噴射ポンプの一部が故障しても融雪作業を行うことができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記列車の先頭車両と後方車両における列車端部側の台車に向けて液体を噴射するための第一噴射部と、前記列車における前記車両の連結部側の台車に向けて液体を噴射するための第二噴射部と、を有し、
前記第一噴射部には、前記圧送ポンプと前記噴射ポンプの間の配管と、前記噴射ポンプと前記噴射ノズルの間の配管と、を繋ぐ第一バイパス配管が設けられており、
前記車両の連結部において隣接した配置となって対を成す前記第二噴射部には、前記噴射ポンプと前記噴射ノズルの間の配管を繋ぐ第二バイパス配管が設けられており、
前記第一バイパス配管と前記第二バイパス配管の途中には、通常は閉状態にされるバルブが設けられており、
前記第一噴射部の前記噴射ノズルから前記液体を噴射させる前記噴射ポンプが所定の出力で作動しない場合、前記バルブを開くことで前記第一バイパス配管を通じて前記噴射ノズル側に前記液体が送液されるように構成されており、
対を成した前記第二噴射部におけるいずれか一方の前記噴射ノズルから前記液体を噴射させる前記噴射ポンプが所定の出力で作動しない場合、前記バルブを開くことで前記第二バイパス配管を通じてその一方の前記噴射ノズル側に前記液体が送液されるように構成されているようにする。
【0009】
例えば、第一噴射部の噴射ノズルから液体を噴射させる噴射ポンプが所定の出力で作動しない場合、バルブが開かれ第一バイパス配管を通じて噴射ノズル側に液体が送出されるので、第一噴射部の噴射ポンプに異常が生じた場合などには送液圧力は低下するものの、第一噴射部の噴射ノズルから液体を台車に向けて噴射することができ、融雪作業を継続することができる。
また、対を成した第二噴射部におけるいずれか一方の噴射ノズルから液体を噴射させる噴射ポンプが所定の出力で作動しない場合、バルブが開かれ第二バイパス配管を通じてその一方の噴射ノズル側に液体が送出されるので、第二噴射部の一方の噴射ポンプに異常が生じた場合などには送液圧力は低下するものの、第二噴射部の噴射ノズルから液体を台車に向けて噴射することができ、融雪作業を継続することができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記対を成す前記第二噴射部におけるそれぞれの噴射ノズルは、互いの配管が近接した位置にあるように対称的に配置されており、
前記噴射ノズルは複数の噴出孔を有しており、前記列車の延在方向に沿って列をなすように設けられているようにする。
【0011】
こうすることで、第二バイパス配管を短く設計して第二バイパス配管による送液経路を短くすることができるので、対を成した第二噴射部におけるいずれか一方の噴射ノズルから液体を噴射させる噴射ポンプが作動しない場合に、比較的短い第二バイパス配管を通じてその一方の噴射ノズル側に液体を効率的に送液することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温水などの液体を送液するポンプの一部が故障しても融雪作業を可能にする鉄道車両用融雪装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の鉄道車両用融雪装置を示す概略図である。
図2】本実施形態の鉄道車両用融雪装置の第一噴射部に関する説明図(a)(b)である。
図3】本実施形態の鉄道車両用融雪装置の第二噴射部に関する説明図(a)(b)である。
図4】第二噴射部における第二バイパス配管の説明図である。
図5】第二噴射部の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る鉄道車両用融雪装置の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
本実施形態の鉄道車両用融雪装置100は、前後に台車Wが配設されている複数の車両Vが編成されてなる列車Tに対して温水などの液体を噴射し、台車Wに付着した雪を除去する装置である。
ここでの列車Tに編成されている車両Vには、車両Vの前後両側に台車Wが配設されている。つまり、各車両Vには台車Wが2つ配設されている。
【0016】
この鉄道車両用融雪装置100は、例えば、図1に示すように、複数の台車W毎に対応して設けられ、各台車Wに向けて温水を噴射するための複数の噴射ノズル10と、噴射ノズル10毎に設けられており、噴射ノズル10から温水を噴射させる複数の噴射ポンプ20と、温水が貯留された温水層50から噴射ノズル10及び噴射ポンプ20に向けて温水を送液する圧送ポンプ30等を備えている。
噴射ノズル10と噴射ポンプ20の間、噴射ポンプ20と圧送ポンプ30の間、圧送ポンプ30と温水層50の間などの送液経路には、所定の配管が設けられている。
そして、噴射ポンプ20が作動しない場合に、その噴射ポンプ20に対応する噴射ノズル10に対して温水を送液可能な状態に切り替えられるバイパス配管40が設けられている。
このバイパス配管40(第一バイパス配管41、第二バイパス配管42)については後述する。
なお、ここでいう噴射ポンプ20が作動しない場合とは、噴射ポンプ20が完全に作動しない(送液出力がゼロ)場合と、噴射ポンプ20が所定の出力で作動しない(所定の送液出力に満たない)場合を含んでいる。
【0017】
また、鉄道車両用融雪装置100は、装置各部を制御する図示しない制御部を備えている。
この制御部(図示省略)は、噴射ポンプ20や圧送ポンプ30のオン/オフを切り替え、鉄道車両用融雪装置100の作動と停止を切り替える処理を実行する。例えば、列車Tが駅ホームの所定位置に停車したことが検知されると、鉄道車両用融雪装置100が作動され、所定時間後(例えば3分後)に停止されるようになっている。
また、この制御部(図示省略)は、例えば、噴射ポンプ20による温水の送液圧力や送液流量を検出するセンサーから検出データを取得し、噴射ポンプ20が正常に作動しているか否か監視する処理を実行する。
例えば、センサーからの検出データの値が閾値以上であると、制御部は噴射ポンプ20の出力は良好であり、噴射ポンプ20が正常に作動していると判断する。
一方、センサーからの検出データの値が閾値未満であると、制御部は噴射ポンプ20の出力が低下しており、噴射ポンプ20が正常に作動していないと判断する。
なお、噴射ポンプ20による温水の送液圧力や送液流量の値を検出するセンサーは、各噴射ポンプ20の送液経路の下流側に設置されている。
また、制御部(図示省略)は、後述するバイパス配管40が、温水を送液できない状態と、温水を送液可能な状態とに切り替える処理を実行する。
【0018】
また、鉄道車両用融雪装置100は、例えば、図1に示すように、上水を溜める受水槽60と、受水槽60から水が補給される貯水槽70と、貯水槽70の水を加熱する熱源機80と、を備え、熱源機80によって加熱された温水が貯留槽である温水層50に貯留されるようになっている。
また、列車Tに対して噴射された温水や雪が解けた水を回収するピットPが設けられており、ピットPに溜まった温水(水)は除塵機90で濾過されて貯水槽70に送られる。
【0019】
この鉄道車両用融雪装置100は、駅のホームに停車した列車Tの雪落とし作業に用いる装置であり、鉄道路線の本線下に設置されている。
そして、駅のホームの所定位置に列車Tが停車した際に、その列車Tの車両Vの台車Wに向けて温水を噴射できる箇所に、噴射ノズル10や噴射ポンプ20が設置されている。
図1には、7両編成の列車Tが図示されており、14組の噴射ノズル10と噴射ポンプ20が設置された態様を示している。圧送ポンプ30は、14組の噴射ノズル10と噴射ポンプ20に対して1つ設けられている。
ここでは、14組の噴射ノズル10と噴射ポンプ20に対して圧送ポンプ30を1つ設けるようにしたが、サブの圧送ポンプ30を装備するようにしてもよい。
なお、この鉄道車両用融雪装置100は、鉄道路線の本線下に設けられていることに限らず、例えば、車両基地の線路下に設けられていてもよい。
また、編成された車両Vの数に応じて、設置する噴射ノズル10と噴射ポンプ20の数を調整して設計すればよい。
【0020】
次に、本実施形態の鉄道車両用融雪装置100の要部について説明する。
【0021】
この鉄道車両用融雪装置100は、図2図3に示すように、列車Tの先頭車両Vと後方車両Vにおける列車端部側の台車Wに向けて温水を噴射するための第一噴射部1(図2参照)と、列車Tにおける車両Vの連結部側の台車Wに向けて温水を噴射するための第二噴射部2(図3参照)と、を有している。
つまり、図1に示した鉄道車両用融雪装置100において、列車Tの両端側に配されている噴射ノズル10と噴射ポンプ20が第一噴射部1に相当し、それ以外の噴射ノズル10と噴射ポンプ20が第二噴射部2に相当する。
【0022】
図1図2(a)(b)に示すように、第一噴射部1には、圧送ポンプ30と噴射ポンプ20の間の配管と、噴射ポンプ20と噴射ノズル10の間の配管とを繋ぐ第一バイパス配管41が設けられている。
第一バイパス配管41には、制御部(図示省略)による遠隔操作によって開閉が切り替えられるバルブ40aが配設されている。
このバルブ40aが閉じられることで、第一バイパス配管41は温水を送液できない状態に切り替えられる。また、バルブ40aが開かれることで、第一バイパス配管41は温水を送液可能な状態に切り替えられる。なお、バルブ40aは通常閉じられている。
【0023】
図1図3(a)(b)に示すように、車両Vの連結部において隣接した配置となって対を成す第二噴射部2には、噴射ポンプ20と噴射ノズル10の間の配管を繋ぐ第二バイパス配管42が設けられている。つまり、第二噴射部2は、2つ1組とされた態様になっており、対を成す第二噴射部2が第二バイパス配管42によって繋がれている。
第二バイパス配管42には、制御部(図示省略)による遠隔操作によって開閉が切り替えられるバルブ40aが配設されている。
このバルブ40aが閉じられることで、第二バイパス配管42は温水を送液できない状態に切り替えられる。また、バルブ40aが開かれることで、第二バイパス配管42は温水を送液可能な状態に切り替えられる。なお、バルブ40aは通常閉じられている。
【0024】
次に、本実施形態の鉄道車両用融雪装置100による融雪作業と、その融雪作業における動作処理について説明する。
【0025】
鉄道車両用融雪装置100は、駅のホームの所定位置に列車Tが停車した状態で作動される。例えば、駅のホームの所定位置に列車Tが停車したことが列車検知用センサーなどによって検知されたことに伴い、鉄道車両用融雪装置100が作動されるようになっている。
この鉄道車両用融雪装置100が作動されると、圧送ポンプ30によって第一噴射部1や第二噴射部2に向けて温水が送液される。
そして、第一噴射部1や第二噴射部2においては、噴射ポンプ20によって噴射ノズル10から温水が噴射され、その温水が台車Wに向けて高圧噴射される。
例えば、圧送ポンプ30による送液圧力が0.24[MPa]であり、噴射ポンプ20による送液圧力が0.33[MPa]であると、噴射ノズル10から温水が0.57[MPa]で噴射される。
こうして、各噴射ノズル10(本実施形態では14個の噴射ノズル10)から台車Wに向けて温水を噴射して融雪作業が行われる。
こうした融雪作業中、鉄道車両用融雪装置100においては制御部(図示省略)によって各噴射ポンプ20(本実施形態では14台の噴射ポンプ20)の作動状態が監視されている。
【0026】
具体的には、第一噴射部1の噴射ポンプ20が正常に作動している場合、図2(a)に示すように、第一バイパス配管41のバルブ40aが閉じられて、第一バイパス配管41は温水を送液できない状態に切り替えられている。
そして、所定の圧力(例えば、0.57[MPa])で噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射する。
【0027】
一方、図2(b)に示すように、第一噴射部1の噴射ポンプ20が正常に作動していない場合、第一バイパス配管41のバルブ40aが開かれて、第一バイパス配管41は温水を送液可能な状態に切り替えられている。このとき、正常に作動していない噴射ポンプ20は停止されている。
そして、圧送ポンプ30による送液圧力(例えば、0.24[MPa])で、噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射する。
このように、第一噴射部1の噴射ノズル10から温水を噴射させる噴射ポンプ20が作動しない場合、第一バイパス配管41を通じて噴射ノズル10側に温水が送液されるように構成されている。
こうして、第一噴射部1の噴射ポンプ20に異常が生じた場合、暫定的な処置とはなるが、第一噴射部1の噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射することができ、融雪作業を継続することができる。
【0028】
また、第二噴射部2の噴射ポンプ20が正常に作動している場合、図3(a)に示すように、第二バイパス配管42のバルブ40aが閉じられて、第二バイパス配管42は温水を送液できない状態に切り替えられている。
そして、所定の圧力(例えば、0.57[MPa])で噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射する。
【0029】
一方、図3(b)に示すように、対を成した第二噴射部2におけるいずれか一方の噴射ポンプ20(ここでは図中右側の噴射ポンプ20)が正常に作動していない場合、第二バイパス配管42のバルブ40aが開かれて、第二バイパス配管42は温水を送液可能な状態に切り替えられている。このとき、正常に作動していない噴射ポンプ20は停止されている。
そして、圧送ポンプ30による送液圧力(例えば、0.24[MPa])と、作動中の噴射ポンプ20(ここでは図中左側の噴射ポンプ20)の半分の圧力(例えば、0.165[MPa])をあわせた圧力(ここでは、0.405[MPa])で、噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射する。
このように、対を成した第二噴射部2におけるいずれか一方の噴射ノズル10から温水を噴射させる噴射ポンプ20が作動しない場合、第二バイパス配管42を通じてその一方の噴射ノズル10側に温水が送液されるように構成されている。
こうして、第二噴射部2の一方の噴射ポンプ20に異常が生じた場合、暫定的な処置とはなるが、第二噴射部2の噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射することができ、融雪作業を継続することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態の鉄道車両用融雪装置100であれば、噴射ノズル10から温水を噴射させる噴射ポンプ20に異常が生じた場合でも、バイパス配管40(第一バイパス配管41、第二バイパス配管42)を通じて噴射ノズル10側に温水を送液し、その噴射ノズル10から温水を台車Wに向けて噴射することができる。
このように、本実施形態の鉄道車両用融雪装置100は、温水を送液する噴射ポンプ20の一部が故障しても融雪作業を行うことができるので、例えば、直ちに噴射ポンプ20を修理することができない場合でも、融雪作業を継続することができる。
【0031】
例えば、圧送ポンプ30が汎用的な機器であって修理や交換が容易であるのに対し、噴射ポンプ20が受注品のような特殊な機器であって修理や交換が容易でない場合に、このような構成の鉄道車両用融雪装置100であれば好適に融雪作業に使用することができる。
【0032】
また、本実施形態の鉄道車両用融雪装置100であれば、駅のホームの所定位置に列車Tが停車したことに伴い鉄道車両用融雪装置100が作動するように自動化することで、作業員を介さずに融雪することが可能になる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図4に示すように、対を成す第二噴射部2におけるそれぞれの噴射ノズル10が、互いの配管が近接した位置にあるように対称的に配置されているようにする。
ここでの噴射ノズル10は複数の噴出孔10aを有しており、列車Tの延在方向あるいは線路の延在方向に沿って列をなすように設けられている。
具体的には、車両Vの連結部に対応する位置に第二噴射部2の噴射ノズル10の配管が配置されており、その配管から互いに離間する方向であって列車T(線路)の延在方向に延出されるように、複数の噴出孔10aを有する長尺な噴射ノズル10が設けられている。
こうすることで、第二バイパス配管42を短く設計することが可能になり、第二バイパス配管42による送液経路を短くすることができるので、対を成した第二噴射部2におけるいずれか一方の噴射ノズル10から温水を噴射させる噴射ポンプ20が作動しない場合に、比較的短い第二バイパス配管42を通じてその一方の噴射ノズル10側に温水を効率的に送液することが可能になる。
【0034】
また、以上の実施の形態においては、第一噴射部1に第一バイパス配管41を設け、第二噴射部2に第二バイパス配管42を設けるとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、第二噴射部2に第二バイパス配管42と第一バイパス配管41を設けるようにしてもよい。
【0035】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 第一噴射部
2 第二噴射部
10 噴射ノズル
10a 噴出孔
20 噴射ポンプ
30 圧送ポンプ
40 バイパス配管
40a バルブ
41 第一バイパス配管
42 第二バイパス配管
50 温水層(貯留槽)
60 受水槽
70 貯水槽
80 熱源機
90 除塵機
100 鉄道車両用融雪装置
T 列車
V 車両
W 台車
P ピット
図1
図2
図3
図4
図5