(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】対象物加工方法及び対象物加工システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240903BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240903BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240903BHJP
B23K 26/046 20140101ALI20240903BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/53
B23K26/03
B23K26/046
H01L21/304 621C
(21)【出願番号】P 2021061029
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2020/184179(JP,A1)
【文献】特開2014-233731(JP,A)
【文献】特開2019-162665(JP,A)
【文献】特開平06-226480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/53
B23K 26/03
B23K 26/046
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物における表面から研削予定位置までの部分を研削する研削工程と、
前記研削工程の前に、ラインに沿って前記対象物に集光レンズを介してレーザ光を照射し、前記対象物の内部における前記表面と前記研削予定位置との間に1又は複数列の改質領域を前記ラインに沿って形成するレーザ加工工程と、を備え、
前記レーザ加工工程は、
前記対象物におけるレーザ光入射面の変位に関する測定データを取得するデータ取得工程と、
前記レーザ光の集光位置を前記ラインに沿って移動させながら、前記測定データに基づいて前記集光位置を前記レーザ光入射面の変位に追従させる集光工程と、
前記測定データに基づいて前記集光位置を前記レーザ光入射面の変位に追従させる場合に、前記集光レンズの光軸方向において、最も前記研削予定位置側の前記改質領域の形成予定位置と前記研削予定位置との間に定められたエラー検知位置を、当該集光位置への前記レーザ光の集光で形成される前記改質領域が前記研削予定位置側に越えるかどうかを監視する監視工程と、を含む、対象物加工方法。
【請求項2】
前記監視工程では、
前記測定データに基づき前記集光位置を前記レーザ光入射面の変位に追従させる場合において、当該集光位置への前記レーザ光の集光で形成される前記改質領域の位置が当該改質領域の形成予定位置からずれるときの、前記光軸方向におけるずれ量に対応する蛇行量を算出し、
前記蛇行量が、前記形成予定位置から前記エラー検知位置までの前記光軸方向における距離を超えるかどうかを監視する、請求項1に記載の対象物加工方法。
【請求項3】
前記測定データは、前記レーザ光入射面で反射した測距用レーザ光の反射光を受光するセンサにより取得された、前記反射光に応じた電圧値である、請求項1又は2に記載の対象物加工方法。
【請求項4】
前記監視工程は、
前記測定データが目標電圧値となるように、前記光軸方向に前記集光レンズを移動させるフィードバック制御を行うことで、前記集光位置を前記レーザ光入射面の変位に追従させる工程と、
前記フィードバック制御を行った結果において前記センサにより取得された電圧値であるフィードバック後電圧値と前記目標電圧値との差分に基づいて、前記改質領域が前記エラー検知位置を前記研削予定位置側に越えるかどうかを監視する工程と、を含む、請求項3に記載の対象物加工方法。
【請求項5】
前記レーザ加工工程は、前記エラー検知位置を入力部を介して入力する入力工程を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の対象物加工方法。
【請求項6】
前記集光工程では、
前記ラインに沿う方向における前記集光位置が、前記監視工程にて前記改質領域が前記エラー検知位置を前記研削予定位置側に越えるとしたときのエラー領域にある場合には、前記光軸方向における前記集光レンズの位置を固定する、請求項1~5の何れか一項に記載の対象物加工方法。
【請求項7】
前記集光工程では、
前記ラインに沿う方向における前記集光位置が、前記監視工程にて前記改質領域が前記エラー検知位置を前記研削予定位置側に越えるとしたときのエラー領域にある場合には、前記集光位置の追従に係る制御パラメータを当該追従が鈍るように変更する、請求項1~5の何れか一項に記載の対象物加工方法。
【請求項8】
前記集光工程では、
前記ラインに沿う方向における前記集光位置が、前記監視工程にて前記改質領域が前記エラー検知位置を前記研削予定位置側に越えるとしたときのエラー領域にある場合には、前記対象物への前記レーザ光の照射を停止する、請求項1~5の何れか一項に記載の対象物加工方法。
【請求項9】
前記監視工程では、前記改質領域が前記エラー検知位置を前記研削予定位置側に越えると判定した場合に、表示部にエラー表示を表示する、請求項1~8の何れか一項に記載の対象物加工方法。
【請求項10】
対象物における表面から研削予定位置までの部分を研削する研削装置と、
前記研削装置による研削の前に、ラインに沿って前記対象物に集光レンズを介してレーザ光を照射し、前記対象物の内部における前記表面と前記研削予定位置との間に1又は複数列の改質領域を前記ラインに沿って形成するレーザ加工装置と、を備え、
前記レーザ加工装置は、
前記対象物を支持する支持部と、
前記対象物に前記集光レンズを介して前記レーザ光を照射する照射部と、
前記レーザ光の集光位置が移動するように前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
前記集光レンズの光軸方向に沿って前記集光レンズを駆動するアクチュエータと、
前記対象物における前記レーザ光が入射するレーザ光入射面の変位に関する測定データを取得する測定データ取得部と、
前記照射部、前記移動機構、及び前記アクチュエータを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記レーザ光の集光位置が前記ラインに沿って移動するように前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を前記ラインに沿って移動させながら、前記測定データに基づいて、前記集光位置が前記レーザ光入射面の変位に追従するように前記支持部及び前記集光レンズの少なくとも一方を前記光軸方向に沿って移動させる集光処理と、
前記測定データに基づいて前記集光位置が前記レーザ光入射面の変位に追従するように前記支持部及び前記集光レンズの少なくとも一方を前記光軸方向に沿って移動させる場合に、前記光軸方向において、最も前記研削予定位置側の前記改質領域の形成予定位置と前記研削予定位置との間に定められたエラー検知位置を、当該集光位置への前記レーザ光の集光で形成される前記改質領域が前記研削予定位置側に越えるかどうかを監視する監視処理と、を実行する、対象物加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物加工方法及び対象物加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物における表面から研削予定位置までの部分を研削する研削工程と、研削工程の前に、ラインに沿って対象物に集光レンズを介してレーザ光を照射し、対象物の内部における表面と研削予定位置との間に改質領域をラインに沿って形成するレーザ加工工程と、を備えた対象物加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような対象物加工方法のレーザ加工工程では、対象物の内部に集光させたレーザ光の集光位置をラインに沿って移動させながら、当該集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、レーザ光の集光位置(以下、単に「集光位置」ともいう)をレーザ光入射面に追従させた場合、例えば対象物の振動、凹凸、反射率変化及び荒れ等に起因して、集光位置が集光レンズの光軸方向において局所的に大きく変位する可能性がある。この場合、対象物において研削予定位置を表面側とは反対側に超えた部分(つまり、研削により除去されない部分)に改質領域が形成され、研削後の対象物に改質領域が残存してしまうおそれがある。その結果、研削後の対象物の品質が悪化してしまう。なお、以下では、表面側とは反対側に越える(移る)ことを、単に「越える」ともいう。
【0005】
そこで、本発明は、研削後の対象物に改質領域が残存することを抑制可能な対象物加工方法及び対象物加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る対象物加工方法は、対象物における表面から研削予定位置までの部分を研削する研削工程と、研削工程の前に、ラインに沿って対象物に集光レンズを介してレーザ光を照射し、対象物の内部における表面と研削予定位置との間に1又は複数列の改質領域をラインに沿って形成するレーザ加工工程と、を備え、レーザ加工工程は、対象物におけるレーザ光入射面の変位に関する測定データを取得するデータ取得工程と、レーザ光の集光位置をラインに沿って移動させながら、測定データに基づいて集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる集光工程と、測定データに基づいて集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる場合に、集光レンズの光軸方向において、最も研削予定位置側の改質領域の形成予定位置と研削予定位置との間に定められたエラー検知位置を、当該集光位置へのレーザ光の集光で形成される改質領域が研削予定位置側に越えるかどうかを監視する監視工程と、を含む。
【0007】
この対象物加工方法では、集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる場合、当該集光位置への集光により形成される改質領域が、研削予定位置よりも表面側に定められたエラー検知位置を越えるかどうかを監視する。よって、監視の結果、改質領域がエラー検知位置を越えると判断した場合には、例えばその間の当該集光位置を研削予定位置に接近しないようにする等により、改質領域が研削予定位置については越えないように対処することが可能となる。すなわち、研削後の対象物に改質領域が残存することを抑制することが可能となる。
【0008】
本発明に係る対象物加工方法において、監視工程では、測定データに基づき集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる場合において、当該集光位置へのレーザ光の集光で形成される改質領域の位置が当該改質領域の形成予定位置からずれるときの、光軸方向におけるずれ量に対応する蛇行量を算出し、蛇行量が、形成予定位置からエラー検知位置までの光軸方向における距離を超えるかどうかを監視してもよい。この場合、蛇行量を利用して、エラー検知位置を改質領域が研削予定位置側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0009】
本発明に係る対象物加工方法において、測定データは、レーザ光入射面で反射した測距用レーザ光の反射光を受光するセンサにより取得された、反射光に応じた電圧値であってもよい。この場合、レーザ光入射面で反射した測距用レーザ光の反射光を受光するセンサを利用して、エラー検知位置を改質領域が研削予定位置側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0010】
本発明に係る対象物加工方法において、監視工程は、測定データが目標電圧値となるように、光軸方向に集光レンズを移動させるフィードバック制御を行うことで、集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる工程と、フィードバック制御を行った結果においてセンサにより取得された電圧値であるフィードバック後電圧値と目標電圧値との差分に基づいて、改質領域がエラー検知位置を研削予定位置側に越えるかどうかを監視する工程と、を含んでいてもよい。この場合、レーザ光入射面で反射した測距用レーザ光の反射光を受光するセンサを効果的に利用して、エラー検知位置を改質領域が研削予定位置側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0011】
本発明に係る対象物加工方法において、レーザ加工工程は、エラー検知位置を入力部を介して入力する入力工程を含んでいてもよい。この場合、ユーザは、入力部を介して所望なエラー検知位置を設定することができる。
【0012】
本発明に係る対象物加工方法において、集光工程では、ラインに沿う方向における集光位置が、監視工程にて改質領域がエラー検知位置を研削予定位置側に越えるとしたときのエラー領域にある場合には、光軸方向における集光レンズの位置を固定してもよい。この場合、改質領域が研削予定位置を越えないように具体的に対処することができる。
【0013】
本発明に係る対象物加工方法において、集光工程では、ラインに沿う方向における集光位置が、監視工程にて改質領域がエラー検知位置を研削予定位置側に越えるとしたときのエラー領域にある場合には、集光位置の追従に係る制御パラメータを当該追従が鈍るように変更してもよい。この場合、改質領域が研削予定位置を越えないように具体的に対処することができる。
【0014】
本発明に係る対象物加工方法において、集光工程では、ラインに沿う方向における集光位置が、監視工程にて改質領域がエラー検知位置を研削予定位置側に越えているとしたときのエラー領域にある場合には、対象物へのレーザ光の照射を停止してもよい。この場合、改質領域が研削予定位置を越えないように具体的に対処することができる。
【0015】
本発明に係る対象物加工方法において、監視工程では、改質領域がエラー検知位置を研削予定位置側に越えると判定した場合に、表示部にエラー表示を表示してもよい。この場合、表示部に表示したエラー表示により、例えば研削後の対象物に改質領域が残存する可能性が高いことをユーザに知らせることができる。
【0016】
本発明に係る対象物加工システムは、対象物における表面から研削予定位置までの部分を研削する研削装置と、研削装置による研削の前に、ラインに沿って対象物に集光レンズを介してレーザ光を照射し、対象物の内部における表面と研削予定位置との間に1又は複数列の改質領域をラインに沿って形成するレーザ加工装置と、を備え、レーザ加工装置は、対象物を支持する支持部と、対象物に集光レンズを介してレーザ光を照射する照射部と、レーザ光の集光位置が移動するように支持部及び照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、集光レンズの光軸方向に沿って集光レンズを駆動するアクチュエータと、対象物におけるレーザ光が入射するレーザ光入射面の変位に関する測定データを取得する測定データ取得部と、照射部、移動機構、及びアクチュエータを制御する制御部と、を有し、制御部は、レーザ光の集光位置がラインに沿って移動するように支持部及び照射部の少なくとも一方をラインに沿って移動させながら、測定データに基づいて、集光位置がレーザ光入射面の変位に追従するように支持部及び集光レンズの少なくとも一方を光軸方向に沿って移動させる集光処理と、測定データに基づいて集光位置がレーザ光入射面の変位に追従するように支持部及び集光レンズの少なくとも一方を光軸方向に沿って移動させる場合に、光軸方向において、最も研削予定位置側の改質領域の形成予定位置と研削予定位置との間に定められたエラー検知位置を、当該集光位置へのレーザ光の集光で形成される改質領域が研削予定位置側に越えるかどうかを監視する監視処理と、を実行する。
【0017】
この対象物加工システムでは、集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる場合、当該集光位置への集光により形成される改質領域が研削予定位置よりも表面側のエラー検知位置を越えるかどうかを監視する。よって、監視の結果、改質領域がエラー検知位置を越えると判断した場合には、例えばその間の当該集光位置を研削予定位置に接近しないようにすること等により、改質領域が研削予定位置については越えないように対処することが可能となる。したがって、研削後の対象物に改質領域が残存することを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、研削後の対象物に改質領域が残存しないように監視することができる対象物加工方法及び対象物加工システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態の対象物加工システムを示す構成図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1のレーザ加工装置のGUIの入出力画面の例を示す図である。
図3(b)は、
図1の研削装置のGUIの入出力画面の例を示す図である。
【
図4】
図4は、エラー検知位置を説明する対象物の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る対象物加工方法を説明するための対象物を示す平面図である。
図5(b)は、
図5(a)の対象物を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態に係る対象物加工方法の
図5(a)の続きを示す平面図である。
図6(b)は、
図6(a)の対象物を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、実施形態に係る対象物加工方法の
図6(a)の続きを示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)の対象物を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、実施形態に係る対象物加工方法の
図7(a)の続きを示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るトリミング加工を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態に係る監視工程の監視結果の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11(a)は、変形例に係る切断加工を示す対象物の平面図である。
図11(b)は、
図11(a)の続きを示す対象物の平面図である。
【
図12】
図12(a)は、変形例に係る剥離加工を示す対象物の平面図である。
図12(b)は、
図12(a)の続きを示す対象物の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、対象物加工システム101は、対象物100を加工するためのシステムであって、レーザ加工装置1と、対象物搬送機構40と、研削装置60と、を備える。
【0022】
[レーザ加工装置]
レーザ加工装置1は、対象物100に集光位置(少なくとも集光領域の一部,集光点)を合わせてレーザ光を照射することにより、対象物100に改質領域を形成する装置である。レーザ加工装置1は、研削装置60による研削の前に、改質領域の形成を予定するラインに沿って対象物100にレーザ光を照射し、対象物100の内部に1又は複数列の改質領域をラインに沿って形成する。レーザ加工装置1は、トリミング加工及び放射カット加工を対象物100に施す。トリミング加工は、対象物100において不要部分を除去するための加工である。放射カット加工は、トリミング加工で除去する当該不要部分を分離するための加工である。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0023】
図5に示されるように、対象物100は、第1基板100Tと、機能素子層112と、第2基板100Bと、を有する。第1基板100T、機能素子層112及び第2基板100Bは、この順で積層するように配置されている。第1基板100T及び第2基板100Bは、円板状に形成されたウェハである。第1基板100T及び第2基板100Bは、例えばシリコン基板等の半導体基板、圧電材料で形成された圧電材料基板、及び、ガラスで形成されたガラス基板等である。第1基板100T及び第2基板100Bには、結晶方位を示すノッチ又はオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0024】
機能素子層112は、複数の機能素子を含む。各機能素子は、例えば、配線用素子、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。各機能素子は、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合、及び、マトリックス状に配列される場合がある。ここでの機能素子層112は、複数の金属層と複数の非金属層とを含む。金属層は、Ti(チタン)層及びSn(すず)層等を含む。非金属層は、例えば酸化膜層及び窒化膜層を含む。非金属層12bは、例えばSiO(一酸化シリコン)層及びSiCN(シリコンカーボンナイトライド)層を含む。
【0025】
対象物100には、トリミング予定ラインとしてのライン(環状ライン)M1が設定されている。ラインM1は、トリミング加工による改質領域の形成を予定するラインである。ラインM1は、対象物100の外縁の内側において環状に延在する。ここでのラインM1は、円環状に延在する。ラインM1は、トリミング加工で除去する除去領域Eとその内側の有効領域Rとの境界に設定されている。ラインM1の設定は、後述のGUI(Graphical User Interface)9において行うことができる。ラインM1は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。ラインM1は、座標指定されたものであってもよい。ラインM1の設定に関する説明は,後述のラインM2,M4,M5においても同様である。
【0026】
図6に示されるように、対象物100には、放射カット予定ラインとしてのライン(直線状ライン)M2が設定されている。ラインM2は、放射カット加工による改質領域の形成を予定するラインである。ラインM2は、レーザ光入射面から見て、対象物100の径方向に沿う直線状(放射状)に延在する。ラインM2は、レーザ光入射面から見て、除去領域Eが周方向に等分割(ここでは四分割)するように複数設定されている。
【0027】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、ステージ7、レーザ加工ヘッド10A、Z軸レール22、Y軸レール24、撮像部25、GUI9及び制御部8を備える。ステージ7は、対象物100を支持する支持部である。ステージ7は、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能に構成されている。ステージ7上には、対象物100が載置される。ステージ7は、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により回転駆動される。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、ステージ7に載置された対象物100に集光部14を介してレーザ光L1をZ方向に沿って照射し、当該対象物100の内部に改質領域を形成する。レーザ加工ヘッド10Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、Z軸レール22に沿ってZ方向に直線的に移動可能である。レーザ加工ヘッド10Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、Y軸レール24に沿ってY方向に直線的に移動可能である。レーザ加工ヘッド10Aは、照射部を構成する。集光部14は、集光レンズを含む。
【0029】
図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、を備える。入射部12は、光源(不図示)から出力されたレーザ光L1を筐体11内に入射させる。光源は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力する。調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13が有する各構成は、筐体11内に設けられた光学ベース29に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11と一体となっている。
【0030】
調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を有する。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
【0031】
集光部14は、筐体11の下壁部に形成された孔26aに挿通するように配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。
【0032】
レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
【0033】
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測距センサ16と、観察部17と、アクチュエータ18と、回路部19と、を更に備える。ダイクロイックミラー15は、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型が好ましい。
【0034】
測距センサ16は、対象物100のレーザ光入射面に対して測距用レーザ光L10を照射し、当該レーザ光入射面で反射した測距用レーザ光L10の反射光を受光するセンサである。測距センサ16は、受光した反射光に関する情報を、対象物100のレーザ光入射面の変位(凹凸及び傾き等を含む)に関する測定データとして取得する。測定データは、変位データである。測定データは、例えば、受光した反射光に応じた電圧値である。測距センサ16としては、レーザ光L1と同軸のセンサであることから、非点収差方式等のセンサを利用することができる。なお、レーザ光L1と別軸のセンサである場合、測距センサ16としては、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。測距センサ16の種類は特に限定されず、様々なセンサを利用することができる。なお、レーザ光L1と同軸の測距センサ16としては、集光部14における測距用レーザ光L10及びその反射光の偏心を利用した三角測距方式のセンサを利用することができる。測距センサ16は、測定データ取得部を構成する。
【0035】
観察部17は、対象物100のレーザ光入射面を観察するための観察光L20を出力し、レーザ光入射面で反射された観察光L20を検出する。つまり、観察部17から出力された観察光L20は、集光部14を介してレーザ光入射面に照射され、レーザ光入射面で反射された観察光L20は、集光部14を介して観察部17で検出される。レーザ光L1、測距用レーザ光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
【0036】
アクチュエータ18は、光学ベース29に取り付けられている。アクチュエータ18は、例えば圧電素子の駆動力によって、集光部14をレーザ光L1の光軸方向であるZ方向に沿って移動させる。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測距センサ16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測距センサ16から出力された信号に基づいてアクチュエータ18を制御する。回路部19は、制御部8(
図1参照)に電気的に接続されている。
【0037】
回路部19は、測距センサ16で取得した測定データに基づいて、集光部14がレーザ光入射面に追従するようにアクチュエータ18を駆動させる。例えば、測距センサ16で測定データとしての電圧値を取得しつつ、当該電圧値が目標電圧値となるようにアクチュエータ18を駆動させ、集光部14をZ方向に移動させるフィードバック制御を行う。これにより、集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる。目標電圧値は、レーザ入射面に追従するように集光部14を駆動するための基準(目標)となる電圧値であって、後述のハイトセット時に測距センサ16で取得した電圧値に基づく値である。レーザ光入射面に追従するように集光部14を駆動する制御のことを、以下、AF(オートフォーカス)追従制御ともいう。AF追従制御では、対象物100のレーザ光入射面とレーザ光L1の集光位置との距離が一定に維持されるように、当該変位データに基づき集光部14がZ方向に沿って移動する。
【0038】
回路部19は、集光部14がレーザ光入射面に追従するようにアクチュエータ18を駆動させた駆動電圧値(制御指令値)を記憶(取得)する。なお、アクチュエータ18を追従駆動させる機能及び駆動電圧値を記憶する機能は、制御部8又はその他の回路部が有していてもよい。
【0039】
図1に戻り、Z軸レール22は、Z方向に沿って延びるレールである。Z軸レール22は、取付部21を介してレーザ加工ヘッド10Aに取り付けられている。Z軸レール22は、レーザ光L1の集光位置がZ方向に沿って移動するように、レーザ加工ヘッド10AをZ方向に沿って移動させる。Y軸レール24は、Y方向に沿って延びるレールである。Y軸レール24は、取付部23を介してZ軸レール22に取り付けられている。Y軸レール24は、レーザ光L1の集光位置がY方向に沿って移動するように、レーザ加工ヘッド10AをY方向に沿って移動させる。Z軸レール22及びY軸レール24は、移動機構を構成する。以下、集光部14によるレーザ光L1の集光位置を単に「集光位置」ともいう。
【0040】
撮像部25は、レーザ光L1の入射方向に沿う方向から対象物100を撮像する。撮像部25は、アライメントカメラAC及び撮像ユニットIRを含む。アライメントカメラAC及び撮像ユニットIRは、レーザ加工ヘッド10Aと共に取付部21に取り付けられている。アライメントカメラACは、例えば、対象物100を透過する光を用いてデバイスパターン等を撮像する。これにより得られる画像は、対象物100に対するレーザ光L1の照射位置のアライメントに供される。
【0041】
撮像ユニットIRは、対象物100を透過する光により対象物100を撮像する。例えば、対象物100がシリコンを含むウェハである場合、撮像ユニットIRにおいては近赤外領域の光が用いられる。撮像ユニットIRは、光源と、対物レンズと、光検出部と、を有する。光源は、対象物100に対して透過性を有する光を出力する。光源は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、例えば近赤外領域の光を出力する。光源から出力された光は、ミラー等の光学系によって導光されて対物レンズを通過し、対象物100に照射される。対物レンズは、対象物100のレーザ光入射面とは反対側の面で反射された光を通過させる。つまり、対物レンズは、対象物100を伝搬(透過)した光を通過させる。対物レンズは、補正環を有している。補正環は、例えば対物レンズを構成する複数のレンズにおける相互間の距離を調整することにより、対象物100内において光に生じる収差を補正する。光検出部は、対物レンズを通過した光を検出する。光検出部は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光を検出する。撮像ユニットIRは、対象物100の内部に形成された改質領域、及び、改質領域から延びる亀裂の少なくとも何れかを撮像することができる。レーザ加工装置1においては、撮像ユニットIRを用いて、非破壊にてレーザ加工の加工状態を確認できる。
【0042】
制御部8は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部8では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。制御部8は、レーザ加工装置1の各部を制御し、各種の機能を実現する。
【0043】
制御部8は、ステージ7と、レーザ加工ヘッド10Aと、Z軸レール22に沿うレーザ加工ヘッド10Aの移動と、Y軸レール24に沿うレーザ加工ヘッド10Aの移動と、を少なくとも制御する。制御部8は、ステージ7の回転、レーザ加工ヘッド10Aからのレーザ光L1の照射、及び、レーザ光L1の集光位置の移動を制御する。制御部8は、ステージ7の回転量に関する回転情報(以下、「θ情報」ともいう)に基づいて、各種の制御を実行可能である。θ情報は、ステージ7を回転させる駆動装置の駆動量から取得されてもよいし、別途のセンサ等により取得されてもよい。θ情報は、公知の種々の手法により取得することができる。
【0044】
制御部8は、ステージ7を回転させながら、対象物100におけるラインM1上に集光位置を位置させた状態で、AF追従制御の下、θ情報に基づいてレーザ加工ヘッド10Aにおけるレーザ光L1の照射の開始及び停止を制御することにより、ラインM1に沿って改質領域を形成させるトリミング処理を実行する。トリミング処理は、トリミング加工を実現する制御部8の処理である。
【0045】
制御部8は、ステージ7を回転させずに、対象物100におけるラインM2上に集光位置を位置させた状態で、AF追従制御の下、レーザ加工ヘッド10Aにおけるレーザ光L1の照射の開始及び停止を制御すると共に、当該レーザ光L1の集光位置をラインM2に沿って移動させることにより、ラインにM2に沿って改質領域を形成させる放射カット処理を実行する。放射カット処理は、放射カット加工を実現する制御部8の処理である。
【0046】
改質領域の形成及びその停止の切り替えは、次のようにして実現することができる。例えば、レーザ加工ヘッド10Aにおいて、レーザ光L1の照射(出力)の開始及び停止(ON/OFF)を切替えることで、改質領域の形成と当該形成の停止とを切り替えることが可能である。具体的には、レーザ発振器が固体レーザで構成されている場合、共振器内に設けられたQスイッチ(AOM(音響光学変調器)、EOM(電気光学変調器)等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光L1の照射の開始及び停止が高速に切り替えられる。レーザ発振器がファイバレーザで構成されている場合、シードレーザ、アンプ(励起用)レーザを構成する半導体レーザの出力のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光L1の照射の開始及び停止が高速に切り替えられる。レーザ発振器が外部変調素子を用いている場合、共振器外に設けられた外部変調素子(AOM、EOM等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光L1の照射のON/OFFが高速に切り替えられる。
【0047】
或いは、改質領域の形成及びその停止の切り替えは、次のようにして実現してもよい。例えば、シャッタ等の機械式機構を制御するによってレーザ光L1の光路を開閉し、改質領域の形成と当該形成の停止とを切り替えてもよい。レーザ光L1をCW光(連続波)へ切り替えることで、改質領域の形成を停止させてもよい。反射型空間光変調器34の液晶層に、レーザ光L1の集光状態を改質できない状態とするパターン(例えば、レーザ散乱させる梨地模様のパターン)を表示することで、改質領域の形成を停止させてもよい。アッテネータ等の出力調整部を制御し、改質領域が形成できないようにレーザ光L1の出力に低下させることで、改質領域の形成を停止させてもよい。偏光方向を切り替えることで、改質領域の形成を停止させてもよい。レーザ光L1を光軸以外の方向に散乱させて(飛ばして)カットすることで、改質領域の形成を停止させてもよい。
【0048】
GUI9は、各種の情報を表示する。GUI9は、例えばタッチパネルディスプレイを含む。GUI9には、ユーザのタッチ等の操作により、加工条件に関する各種の設定が入力される。GUI9は、ユーザからの入力を受け付ける入力部を構成する。
【0049】
図3(a)に示される例は、GUI9の入出力画面の例を示す図である。
図3(a)は、対象物100の内部に4列の改質領域形成する場合の例を示す。
図3(a)中では、SD1、SD2、SD3及びSD4は、この順にレーザ光入射面から遠い(この順に研削予定位置に近い)改質領域を示している。Zハイトは、改質領域の形成予定位置に対応する。Zハイトは、レーザ光入射面を基準(0)とし、レーザ光入射面から対象物100の内部に行くにしたがって値が大きくなるよう規定されている。改質領域の形成予定位置は、例えばZハイト×DZレート±αで表される。DZレートは、予め設定された所定値である。αは、種々の加工条件の設定に応じた補正値であって経験により定められる値である。出力は、改質領域を形成する際のレーザ光L1の出力に対応する。
【0050】
GUI9においてユーザは、SD1~SD4それぞれのZハイトと出力と詳細条件とを入力可能である。また、GUI9においてユーザは、後述するエラー検知位置T2(
図4参照)を入力可能である。SD1のZハイトは、最も研削予定位置側の改質領域4Tの形成予定位置T1(
図4参照)に対応する。レーザ加工装置1で設定される各条件は、第1基板100Tの最終的な厚さに基づいて、設定される。
【0051】
[対象物搬送機構]
対象物搬送機構40は、レーザ加工装置1で加工後の対象物100を研削装置60へ搬送する機構である。対象物搬送機構40は、対象物100を保持可能なアーム41と、アーム41の基端側に設けられたスライダ42と、スライダ42を水平方向に移動させるためのレール43と、を備える。対象物搬送機構40の構成は特に限定されず、対象物100をレーザ加工装置1と研削装置60との間で搬送できれば、公知の種々の構成を採用することができる。
【0052】
対象物搬送機構40は、制御部48及びGUI49を備える。制御部48は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部48では、メモリ等に読み込まれたソフトウェアがプロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。制御部48は、対象物搬送機構40の各部を制御し、各種の機能を実現する。GUI49は、各種の情報を表示する。GUI49は、例えばタッチパネルディスプレイを含む。GUI49には、ユーザのタッチ等の操作により、搬送条件に関する各種の設定が入力される。
【0053】
[研削装置]
研削装置60は、レーザ加工装置1で加工後の対象物100を研削する装置である。研削装置60は、対象物100における表面100aから研削予定位置T3(
図4参照)までの部分を研削する装置である。研削装置60は、高速で回転可能な研削砥石である研磨ホイール61と、研磨ホイールを回転可能に支持するベース62と、ベース62を鉛直方向に移動させるための鉛直レール63と、ベース62を水平方向に移動させるための水平レール64と、研削する対象物100の厚さを計測する厚さ計66と、研削する対象物100が載置されるステージ67と、を備える。ステージ67は、鉛直方向に平行な軸線を中心線として回転可能に構成されている。
【0054】
研削装置60は、制御部68及びGUI69を備える。制御部68は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部68では、メモリ等に読み込まれたソフトウェアがプロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。制御部68は、研削装置60の各部を制御し、各種の機能を実現する。GUI69は、各種の情報を表示する。GUI69は、例えばタッチパネルディスプレイを含む。GUI69には、ユーザのタッチ等の操作により、研削条件に関する各種の設定が入力される。
【0055】
図3(b)に示される例は、GUI69の入出力画面の例を示す図である。図中では、加工前の厚さは、研削装置60による研削前の対象物100の厚さH1(
図4参照)である。仕上げ厚さは、研削装置60による研削後の対象物100の厚さH2(
図4参照)である。ステージ回転数は、研削装置60による研削の際のステージ67の回転数である。研磨ホイール回転数は、研削装置60による研削の際の研磨ホイール61の回転数である。GUI69においてユーザは、加工前厚さ、仕上げ厚さ、ステージ回転数、研磨ホイール回転数及び詳細条件を入力可能である。研削装置60で設定される各条件は、第1基板100Tの最終的な厚さに基づいて、設定される。
【0056】
本実施形態の要部について更に説明する。
【0057】
レーザ加工装置1の回路部19及び制御部8は、トリミング処理(集光処理)、放射カット処理及び監視処理を実行する。トリミング処理では、レーザ加工ヘッド10Aによりレーザ光L1を対象物100の内部に集光させると共に、レーザ光L1の集光位置がラインM1に沿って移動するようにステージ7を回転させながら、AF追従制御を行って集光位置をレーザ光入射面である表面100aの変位に追従させる。放射カット処理では、レーザ加工ヘッド10Aによりレーザ光L1を対象物100の内部に集光させると共に、レーザ光L1の集光位置がラインM2に沿って移動するようにステージ7及びレーザ加工ヘッド10Aの少なくとも何れかを移動させながら、AF追従制御を行って集光位置をレーザ光入射面である表面100aの変位に追従させる。
【0058】
レーザ光L1が対象物100の内部に集光されると、レーザ光L1の集光位置に対応する部分においてレーザ光L1が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0059】
パルス発振方式によって出力されたレーザ光L1が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインM1,M2に沿ってレーザ光L1の集光位置が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインM1,M2に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光L1の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光L1の集光位置の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。設定されるラインM1,M2の形状は、格子状、環状、直線状、曲線状及びこれらの少なくとも何れかを組合せた形状であってもよい。
【0060】
監視処理は、トリミング加工のAF追従制御において、集光位置へのレーザ光L1の集光で形成される改質領域4がエラー検知位置T2(
図4参照)をZ方向における研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視する。
図4に示されるように、エラー検知位置T2は、最も研削予定位置側の改質領域4Tの形成予定位置T1と研削予定位置T3との間に定められた位置である。形成予定位置T1は、改質領域4Tの形成を予定する位置である。形成予定位置T1は、改質領域4Tの研削予定位置T3側の端を基準にすることができる。エラー検知位置T2は、GUI9を介してユーザに入力されたエラー検知位置の値に対応する。エラー検知位置T2は、形成予定位置T1と研削予定位置T3との中間位置に設定されていてもよい。エラー検知位置T2は、研削予定位置T3に応じて自動的に定められる値であってもよい。
【0061】
監視処理では、AF追従制御の蛇行量を算出し、算出した蛇行量が、形成予定位置T1からエラー検知位置T2までのZ方向における距離(以下、「蛇行許容範囲」ともいう)を超えるかどうかを監視する。これにより、AF追従制御にてエラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視する。監視処理では、エラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えると判定した場合に、GUI9にエラー表示を表示する。この場合のGUI9は、表示部を構成する。監視処理では、エラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えることを示す情報を、レーザ加工装置1の外部へ出力してもよい。蛇行量は、AF追従制御の下においてレーザ光L1の集光で形成される改質領域4の位置が当該改質領域4の形成予定位置からずれるときの、Z方向におけるずれ量に対応する。蛇行量は、例えば以下の式で表すことができる。
蛇行量=AF差分信号×レート
AF差分信号は、目標電圧値と、AF追従制御の結果において測距センサ16で取得された電圧値であるフィードバック後電圧値と、の差分である。レートは、予め設定されたパラメータである。なお、フィードバック後電圧値は、AF追従制御による集光位置の追従が精度よく実現されている場合には、目標電圧値である(このとき、AF差分信号=0)。一方で、フィードバック後電圧値は、何らかの事情のためにAF追従制御による集光位置の追従が精度よく実現できていない場合には、目標電圧値よりもずれた値となる(このとき、AF差分信号≠0)。
【0062】
すなわち、監視処理では、測定データが目標電圧値となるように、アクチュエータ18によりZ方向に集光部14を移動させるフィードバック制御を行うことで、集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる。監視処理では、フィードバック制御を行った結果において測距センサ16により取得されたフィードバック後電圧値と目標電圧値との差分(AF差分信号)に基づいて、改質領域4Tがエラー検知位置T2を研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視する。
【0063】
トリミング処理では、ラインM1に沿う方向における集光位置が、監視工程にて改質領域4Tがエラー検知位置T2を研削予定位置T3側に越えているとしたときのエラー領域(
図10参照)にある場合には、アクチュエータ18の駆動電圧値を固定して(その直前の電圧値で変動しないようにして)、Z方向における集光部14の位置を固定する。
【0064】
次に、対象物加工システム101を用いて対象物100を加工する対象物加工方法の一例について説明する。
【0065】
まず、レーザ加工装置1においてレーザ加工工程を実施する。すなわち、
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、表面100aをレーザ入射面側にした状態でステージ7上に対象物100を載置する。続いて、トリミング加工を実施する。トリミング加工では、GUI9を介して入力された加工条件等に基づき、制御部8によりトリミング処理を実行する。トリミング加工では、ステージ7を一定の回転速度で回転しながら、ラインM1上に集光位置を位置させた状態で、AF追従制御の下、θ情報に基づいてレーザ加工ヘッド10Aにおけるレーザ光L1の照射の開始及び停止を制御する。これにより、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、対象物100の第1基板100Tの内部においてラインM1に沿って改質領域4を形成する。ここでは、対象物100の内部にZ方向に4列の改質領域4を形成する。形成した改質領域4は、改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂Cを含む。
【0066】
続いて、放射カット加工を実施する。放射カット加工では、GUI9を介して入力された加工条件等に基づき、制御部8により放射カット処理を実行する。放射カット加工では、ステージ7を回転させずに、レーザ加工ヘッド10Aからレーザ光L1を照射すると共に、AF追従制御の下、集光位置がラインM2に沿って移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール24に沿って移動する。ステージ7を90度回転させた後、ステージ7を回転させずに、レーザ加工ヘッド10Aからレーザ光L1を照射すると共に、AF追従制御の下、集光位置がラインM2に沿って移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール24に沿って移動する。これにより、ラインM2に沿って1又は複数列の改質領域4を形成する。形成した改質領域4は、改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂を含む。その後、
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、例えば冶具又はエアーにより、改質領域4を境界として、除去領域Eを切り分けて除去する(取り除く)。
【0067】
続いて、GUI49を介して入力された搬送条件等に基づき、対象物搬送機構40により対象物100をレーザ加工装置1から研削装置60へ搬送する。続いて、GUI69を介して入力された研削条件等に基づき、研削装置60により研削工程を実施する。すなわち、
図8に示されるように、対象物100の表面100aから研削予定位置T3(
図4参照)までの部分について、対象物厚さ計66の計測結果に基づきながら研磨ホイール61により研削を行う。以上の結果、半導体デバイス100Kが取得(製造)される。
【0068】
次に、トリミング加工に関して、
図9のフローチャートを参照して詳説する。
【0069】
まず、レーザ加工装置1のGUI9において、形成する複数例の改質領域4それぞれの形成予定位置に関する情報を入力して設定する。最も研削予定位置T3(
図4参照)側の改質領域4Tの形成予定位置に関する情報については、研削予定位置T3よりも当該改質領域4Tが表面100a側に位置するように設定する(ステップS1)。このとき、亀裂Cの伸び量及び上述の蛇行許容範囲が考慮される。これと共に、レーザ加工装置1のGUI9において、エラー検知位置を入力して設定する(ステップS2:入力工程)。
【0070】
なお、ここでは、GUI9における各設定は、研削装置60のGUI69の設定に基づいてユーザにより入力されるが、研削装置60のGUI69の設定に関する情報が通信等により入力される場合には、その情報から自動で設定されてもよい。また、GUI9における各設定は、研削装置60のGUI69の設定に関する情報が通信等により入力される場合には、その情報に基づくガイダンス及び制限の下に、ユーザにより入力されてもよい。
【0071】
一例として、最も研削予定位置T3(
図4参照)側の改質領域4Tの形成予定位置は、改質領域4Tの下端距離(第1基板100Tにおける第2基板100B側の主面までの距離)が第1基板100Tの仕上げ厚である50μmを越えるように設定される。AF追従制御の蛇行許容範囲及び亀裂Cの伸び量を考慮し、改質領域4Tの下端距離が65μmとなるように、改質領域4Tの形成予定位置が設定される。このような設定の場合、許される蛇行量は、改質領域4Tの形成予定位置(下端距離65μm)から第1基板100Tの仕上げ厚50μmを引いた15μmである。この間に、エラー検知位置が設定される。例えば、12μm以上の蛇行量の蛇行が発生した場合の位置に、エラー検知位置が設定されている。
【0072】
続いて、例えば撮像部25によって取得された対象物100のレーザ光入射面の画像に基づいて、集光位置がレーザ光入射面に位置するように制御部8によりZ方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させ、集光部14をZ方向に沿って移動させる。このようなレーザ光入射面に対する集光部14の位置合せを「ハイトセット」といい、このときの集光部14の位置をハイトセット位置という。ハイトセットでは、対象物100のレーザ光入射面におけるラインM1上に集光位置を合わせてもよいし、対象物100のレーザ光入射面における中央部に集光位置を合わせてもよい。
【0073】
続いて、トリミング加工前にAF追従制御を実施し、測定データ及びAF差分信号を取得する(ステップS3:データ取得工程及び監視工程)。上記ステップS3では、レーザ加工ヘッド10Aからレーザ光L1を照射せずに、ステージ7を回転させながら、測距センサ16で測定データとしての電圧値を取得する。加えて、上記ステップS3では、測距センサ16で取得した測定データとしての電圧値が目標電圧値となるように、回路部19によりアクチュエータ18を駆動して、集光部14をレーザ光入射面の変位に追従するようにZ方向に移動させるフィードバック制御であるAF追従制御を実行する。また上記ステップS3では、回路部19により、当該AF追従制御の結果において測距センサ16により取得された電圧値であるフィードバック後電圧値を、対象物100の位置情報(ここでは、θ位置)に関連付けて取得する。そして上記ステップS3では、目標電圧値と取得したフィードバック後電圧値との差分であるAF差分信号を算出する。AF差分信号は、制御部8又は回路部19に記憶される。
【0074】
AF追従制御において、エラー検知位置T2を越える改質領域4Tの蛇行が発生するか否かを監視する(ステップS4:監視工程)。上記ステップS4では、AF追従制御を行う場合の蛇行量を、差分信号に基づき算出する。上記ステップS4では、算出した蛇行量が、形成予定位置T1からエラー検知位置T2までのZ方向における距離である蛇行許容範囲を超えるかどうかを監視する。
【0075】
上記ステップS4の監視の結果、エラー検知位置T2を越える蛇行が発生すると判定した場合、GUI9にエラー表示を表示させる(ステップS5でYES,ステップS6)。エラー表示は、特に限定されず、エラー検知位置T2を越える蛇行が発生する旨を注意喚起するものであってもよい。エラー表示に加えて、GUI9から音を出力してもよい。
【0076】
上記ステップS6の後、エラー検知位置T2を越える蛇行が発生したθ位置の範囲であるエラー領域(
図10参照)に集光位置が位置するときにアクチュエータ18の駆動電圧値を固定するAF追従制御を含むトリミング加工を実施する(ステップS7:集光工程)。つまり、上記ステップS7では、AF追従制御(アクチュエータ18の駆動電圧値の固定あり)を含むトリミング加工を行う。上記ステップS7のAF追従制御では、具体的には、測定データとしての電圧値が目標電圧値となるように回路部19によりアクチュエータ18を駆動して、集光部14をレーザ光入射面の変位に追従するようにZ方向に移動させると共に、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合には、当該アクチュエータ18の駆動電圧値を、エラー領域の直前のθ位置における駆動電圧値で固定する。上記ステップS7においては、集光位置のθ位置がエラー領域にある場合には、Z方向における集光部14の位置が固定される。
【0077】
一方、上記ステップS4の監視の結果、エラー検知位置T2を越える蛇行が発生しないと判定した場合、通常のAF追従制御(アクチュエータ18の駆動電圧値の固定なし)を含むトリミング加工を実行する(ステップS5でNO,ステップS8:集光工程)。
【0078】
図10は、監視工程の監視結果の一例を示すグラフである。
図10では、集光位置のθ位置に関連付けられた蛇行量、改質領域4Tの形成予定位置T1、エラー検知位置T2、及び研削予定位置T3が示されている。
図10では、集光位置のθ位置を横軸とし、各データを縦軸で表している。
図10では、説明の便宜上、形成予定位置T1、エラー検知位置T2、及び研削予定位置T3は、集光位置のθ位置によらずに一定としている。
【0079】
図10に示される例では、集光位置のθ位置がθ1からθ2までの間で、蛇行量がエラー検知位置T2を下側(研削予定位置T3側)へ越えるまで大きくなっている。このような集光位置のθ位置がθ1からθ2までの間の領域が、エラー領域であって、上記ステップS4にて改質領域4Tがエラー検知位置T2を研削予定位置T3側に越えるとされるときの、ラインM1に沿う方向の集光位置の領域である。本実施形態では、エラー領域において、アクチュエータ18の駆動電圧値が固定されて一定にされ、Z方向における集光部14の位置が固定されて一定にされ、集光位置が表面100aを追従せず、蛇行量が一定にされる。
【0080】
以上、対象物加工方法及び対象物加工システム101では、集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させるAF追従制御を行う場合に、当該集光位置への集光により形成される改質領域4Tが、研削予定位置T3よりも手前(表面100a側)のエラー検知位置T2を越えるかどうかを監視する。よって、監視の結果、改質領域4Tがエラー検知位置T2を越えると判断した場合には、例えばその間の当該集光位置を研削予定位置T3に接近しないようにすること等により、改質領域4Tが研削予定位置T3については越えないように対処することが可能となる。すなわち、研削後の対象物100に改質領域4Tが残存することを抑制することが可能となる。
【0081】
AF追従制御では、局所的に発生する様々な要因(例えば、ステージ7の振動、レーザ光入射面の凹凸、レーザ光入射面上の膜の反射率変化、レーザ光入射面の荒れ等)に起因して、測距センサ16の電圧値及び/又はアクチュエータ18の駆動電圧値にオーバーシュート(急峻な変動)が発生する場合がある。この点、本実施形態では、不要なオーバーシュートを予測して、回避することができる。研削工程の前の除去領域Eの除去時における第2基板100Bの割れ等の破損を抑制することができる。トリミング加工後の対象物100の品質悪化を抑制することができる。
【0082】
対象物加工方法において、測定データは、測距センサ16により取得された反射光に応じた電圧値である。この場合、測距センサ16を利用して、エラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0083】
対象物加工方法において、監視工程は、AF追従制御を行って集光位置をレーザ光入射面の変位に追従させる工程と、AF追従制御を行った結果において測距センサ16により取得されたフィードバック後電圧値と目標電圧値との差分(AF差分信号)に基づいて改質領域4Tがエラー検知位置T2を研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視する工程と、を含む。この場合、測距センサ16を効果的に利用して、エラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0084】
対象物加工方法において、監視工程では、AF追従制御の蛇行量を算出し、蛇行量が形成予定位置T1からエラー検知位置T2までのZ方向における距離を超えるかどうかを監視する。この場合、蛇行量を利用して、エラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0085】
なお、監視工程では、AF追従制御の蛇行量を算出せず、測定データを直接用いて、研削後の対象物100に改質領域4Tが残存しないように監視してもよい。具体的には、AF追従制御において、AF差分信号が、形成予定位置T1からエラー検知位置T2までの距離に対応する電圧値を超えるかどうかを監視してもよい。この場合、測距センサ16を効率よく利用して、エラー検知位置T2を改質領域4Tが研削予定位置T3側に越えるかどうかを監視することが可能となる。
【0086】
対象物加工方法においては、レーザ加工工程は、エラー検知位置T2をGUI9を介して入力する入力工程を含む。この場合、ユーザは、GUI9を介して所望なエラー検知位置T2を設定することができる。
【0087】
対象物加工方法において、集光工程では、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合には、Z方向における集光位置を固定する。この場合、改質領域4が研削予定位置T3を越えないように具体的に対処することができる。
【0088】
対象物加工方法において、監視工程では、改質領域4Tがエラー検知位置T2を研削予定位置T3側に越えると判定した場合に、GUI9にエラー表示を表示する。この場合、GUI9に表示したエラー表示により、例えば研削後の対象物100に改質領域4Tが残存すること又はその可能性が高いことを、ユーザに知らせることができる。
【0089】
以上、本発明の一態様は、上述した実施形態に限定されない。
【0090】
上述した実施形態及び変形例では、トリミング工程において、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合には、AF追従制御におけるアクチュエータ18の駆動電圧値を固定してZ方向における集光部(集光レンズ)14を固定したが、これに限定されない。例えばトリミング工程において、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合、測定データとしての電圧値を固定してもよい。また例えばトリミング工程において、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合、対象物100へのレーザ光L1の照射を停止してもよい。この場合にも、改質領域4Tが研削予定位置T3を越えないように具体的に対処することができる。
【0091】
或いは、例えばトリミング工程において、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合、AF追従制御における集光位置の追従に係る制御パラメータを当該追従が鈍るように変更してもよい。ここでの制御パラメータの変更は、具体的には、アクチュエータ18の駆動電圧値にオーバーシュート(急峻な変動)が起きないようにAF追従制御で実施するPID制御の制御パラメータのゲインを減らす、比例帯を大きくする、及び、積分時間を大きくする、の少なくとも何れかであってもよい。この場合にも、改質領域4Tが研削予定位置T3を越えないように具体的に対処することができる。
【0092】
なお、AF追従制御では、レーザ光入射面のゆるやかな変位(例えば2μm/10mm程度)に追従ができればよい場合があるため、異物等によるレーザ光入射面の急激な変位(例えば2μm/0.1mm)には追従せずにアクチュエータ18を固定、又は追従が鈍るようにアクチュエータ18を鈍く駆動させても、品質は問題ない。
【0093】
或いは、例えばトリミング工程において、ラインM1に沿う方向における集光位置がエラー領域にある場合、集光部14を強制的に表面100aに近づく方向に所定距離移動させる制御を更に行ってもよい。この場合にも、改質領域4Tが研削予定位置T3を越えないように具体的に対処することができる。
【0094】
上述した実施形態及び変形例では、トリミング工程におけるAF追従制御において、エラー検知位置T2を改質領域4Tが越えるかどうかを監視したが、これに限定されない。例えば、放射カット工程におけるAF追従制御において、エラー検知位置を改質領域が越えるかどうかを監視してもよい。上述した実施形態及び変形例では、トリミング加工においてエラー検知位置T2を改質領域4Tが越えないように各種の対処を行ったが、これに限定されない。例えば、放射カット工程において、エラー検知位置T2を改質領域4Tが越えないように各種の対処を行ってもよい。
【0095】
上述した実施形態及び変形例では、トリミング加工の後、放射カット加工を実施したが、これに限定されない。例えば上述した実施形態及び変形例では、トリミング加工の後で研削工程の前に、格子状に伸びるラインに沿って有効領域Rの内部に改質領域を形成する切断加工(切断工程)を実施してもよい。具体的には、
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、トリミング加工の後、直線状のラインM4に沿って、有効領域Rに改質領域4を形成させてもよい。ラインM4は、対象物100に複数設定されている。複数のラインM4は、少なくとも有効領域Rに格子状に設定されている。この場合、切断工程におけるAF追従制御において、エラー検知位置を改質領域が越えるかどうかを監視してもよい。切断工程において、エラー検知位置を改質領域が越えないように各種の対処を行ってもよい。
【0096】
或いは、例えばトリミング加工の後で研削工程の前に、剥離加工(剥離工程)を実施してもよい。具体的には、
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、トリミング加工の後、対象物100の内部における仮想面上のラインM5に沿って、改質領域4を形成させてもよい。ラインM5は、有効領域Rに設定されている。ラインM5は、対象物100の中心位置を中心とする渦巻き状に延びる。この場合、剥離工程におけるAF追従制御において、エラー検知位置を改質領域が越えるかどうかを監視してもよい。剥離工程において、エラー検知位置を改質領域が越えないように各種の対処を行ってもよい。
【0097】
上記実施形態及び変形例では、測定データとして、測距センサ16で受光した反射光に応じた電圧値を用いているが、測定データは、レーザ光入射面の変位に関するデータであれば特に限定されず、そのような測定データは、種々の公知技術により取得することができる。測定データは、レーザ光L1の光軸と別軸で設けられる測距センサにより取得した電圧値であってもよい。この場合、取得した当該電圧値は、上述した測距センサ16の電圧値と同様に扱うことができる。測定データは、アクチュエータ18の可動部の位置に関するデータであってもよい。対象物100のレーザ光入射面の表面形状を測定できるセンサを別途に用いる場合、そのセンサの検出結果に関するデータを測定データとしてもよい。測定データは、Z方向における集光部14の絶対位置でもよい。測定データは、Z方向における集光部14のハイトセット時の位置に対する相対位置でもよい。
【0098】
上述した実施形態及び変形例では、AF差分信号を取得せずに、測定データのみから、蛇行量を算出してもよい。具体的には、集光位置の移動距離(移動時間)当たりレーザ光入射面の変位から、アクチュエータ18の駆動能力を超える変位が発生しているか否かを監視し、越えた分の変位を蛇行量として算出してもよい。一例として、集光位置の移動距離を300mm/sとして加工する際、移動距離10mmで変位2μmに追従可能な駆動能力を有するアクチュエータ18が搭載されている場合には、移動距離10mmでレーザ光入射面の変位が4μmであれば、蛇行量が2μm程度(対象物100中では2μm×レート(ここでは4)=8μm程度)の蛇行が少なくとも発生し得るとしてもよい。この場合、実際にはオーバーシュートが発生することも考えられるため、オーバーシュートの発生の可能性を更に考慮して、エラー検知位置T2を改質領域4Tが越えるかどうかを監視してもよい。
【0099】
上述した実施形態及び変形例では、アクチュエータ18の駆動電圧値(アクチュエータ18の可動部の位置)とレーザ光入射面の変位とを用いて、エラー検知位置T2を改質領域4Tが越えるかどうかを監視してもよい。例えばこの場合、アクチュエータ18の駆動電圧値を集光部14(集光位置)のZ方向の移動量に換算した値と、レーザ光入射面の変位の値を比較し、比較結果に基づいてエラー検知位置T2を改質領域4Tが越えるかどうかを監視してもよい。
【0100】
上述した実施形態及び変形例では、アクチュエータ18の駆動電圧値とアクチュエータ18の可動部の現在位置との差分を用いて、エラー検知位置T2を改質領域4Tが越えるかどうかを監視してもよい。上述した実施形態及び変形例では、アクチュエータ18の駆動電圧値とアクチュエータ18の可動部の現在位置とのそれぞれに発生したオーバーシュートの形状に基づいて、エラー検知位置T2を改質領域4Tが越えるかどうかを監視してもよい。
【0101】
上述した実施形態及び変形例では、対象物100の表面100aをレーザ光入射面としたが、対象物100の他の表面をレーザ光入射面としてもよい。上述した実施形態及び変形例では、改質領域4は、例えば対象物100の内部に形成された結晶領域、再結晶領域、又は、ゲッタリング領域であってもよい。結晶領域は、対象物100の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、一旦は蒸発、プラズマ化あるいは溶融した後、再凝固する際に単結晶あるいは多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域であり、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。また、例えばレーザ加工装置1は、アブレーション等の加工へ適用されてもよい。
【0102】
上述した実施形態及び変形例では、移動機構は、ステージ7及びレーザ加工ヘッド10Aの少なくとも一方を移動させるように構成されていればよい。上述した実施形態及び変形例では、位置情報としてθ位置を用いたが、これに代えてもしくは加えて、レーザ加工の開始からの時間及び座標情報等の少なくとも何れかを位置情報として用いてもよい。位置情報は、対象物100の円周のどの位置のデータかがわかる情報であればよい。上述した実施形態及び変形例では、トリミング加工後に実施するハイトセットを省略したが、当該ハイトセットは省略しなくてもよい。
【0103】
上述した実施形態及び変形例では、上記ステップS3においてトリミング加工(集光工程)とは別でAF追従制御を実施して、測定データを取得しているが、これに限定されない。例えばトリミング加工時(集光工程時)において、レーザ光L1を照射しながらAF追従制御を実施して測定データを取得する、所謂リアルタイム加工を行ってもよい。
【0104】
上述した実施形態及び変形例では、監視工程において、最も研削予定位置T3側の改質領域4Tがエラー検知位置T2を越えるかどうかに加えて、改質領域4T以外の改質領域4がエラー検知位置T2を越えるかどうかを監視してもよい。この場合、集光工程では、監視工程での監視結果に応じて、改質領域4T以外の改質領域4がエラー検知位置T2を越えないように上述の各種の対処を行ってもよい。
【0105】
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態及び変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…レーザ加工装置、4…改質領域、4T…改質領域(最も研削予定位置側の改質領域)、7…ステージ(支持部)、8…制御部、9…GUI(入力部,表示部)、10A…レーザ加工ヘッド(照射部)、14…集光部(集光レンズ)、16…測距センサ(測定データ取得部)、18…アクチュエータ、19…回路部(測定データ取得部,制御部)、22…Z軸レール(移動機構)、24…Y軸レール(移動機構)、60…研削装置、100…対象物、100a…表面(レーザ光入射面)、101…対象物加工システム、L1…レーザ光、M1,M2,M4,M5…ライン、T1…形成予定位置、T2…エラー検知位置、T3…研削予定位置。