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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/44 20060101AFI20240903BHJP
   H01R 13/453 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01R13/44 K
H01R13/453
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021064303
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159862
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小園 誠二
(72)【発明者】
【氏名】津島 義高
(72)【発明者】
【氏名】岡本 征也
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-216882(JP,A)
【文献】特開平08-138785(JP,A)
【文献】米国特許第4176897(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0031235(US,A1)
【文献】米国特許第10348026(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続端子を収容するハウジングと、
前記ハウジングに回動自在に設けられ、相手コネクタの嵌合先端部が嵌合される前記ハウジングの前方開口を開閉するシャッターと、
前記前方開口の一側部側に配置されて前記相手コネクタのコネクタ嵌合方向と交差する回動軸を中心に前記ハウジングに対して回動自在に支持され、前記回動軸より前記ハウジングの前方へ延出するアーム部と、前記回動軸より前記前方開口の他側部側へ延出する連結係合部とを有する回動アームと、
前記シャッターと一体的に回転可能に設けられ、前記連結係合部の先端に押圧されて回動する第1レバー部を有する連結部材と、
を備えており、
前記嵌合先端部が前記前方開口に対向する位置に移動される前記相手コネクタの押圧力が前記アーム部に作用して前記回動アームを回動させることにより、前記連結係合部によって回動される前記連結部材と一体的に前記シャッターが回動されて前記前方開口を開放するコネクタ。
【請求項2】
前記連結部材は、前記連結係合部の先端を挟んで前記第1レバー部とは異なる方向の回転半径外方へ延びる第2レバー部を有し、
前記連結係合部は、前記連結係合部の先端が前記第1レバー部を押圧して前記連結部材を所定回転角度まで回動させた後、前記第2レバー部を押圧して前記連結部材を所定回転角度以上回動させるための補助係合部を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記連結部材は、弾性部材によって前記シャッターが前記前方開口を閉鎖する方向へ常時付勢される請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター機構を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載される各種電装品間を電気的に接続するワイヤハーネス(電線)は、コネクタによって接続されている。このようなコネクタは、通常、雄型コネクタと雌型コネクタとで構成されている。そして、例えば、オプション仕様に適用されるコネクタ構造の場合、予め配設された電線の端部に連結されている一方のコネクタは、他方のコネクタが嵌合されるまで、防塵、端子保護、周囲への感電防止等の目的で、ハウジングの前方開口にシャッター機構を設けたものが知られている。特に電気自動車等では、感電事故等を防止するうえでシャッター機構付コネクタ(インレット)が適用されて、コネクタの非接続時における前方開口での端子の露出を防いでいる。このような構成の一例として例えば特許文献1に開示されたシャッター機構付コネクタがある。
【0003】
このシャッター機構付コネクタは、一方のコネクタに、前面部に外力を受けると外側に回動するシャッターを設けると共に、他方のコネクタに先端部を設けることで、コネクタ嵌合時にこの先端部が一方のコネクタのシャッターの前面部を押圧してシャッターを回動させる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-138785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたシャッター機構付コネクタでは、コネクタ嵌合時、相手コネクタの先端部(嵌合フード部)がシャッターの前面部を押すことにより、ピンを中心にシャッターが外側(前方)に回動して開く。そこで、シャッターが開く回動軌跡を考慮し、相手コネクタのストローク(コネクタサイズ)を設定することで、コネクタ嵌合時の干渉を回避する必要がある。そのため、シャッター開閉スペース分だけ相手コネクタの嵌合フード部が長くなり、コネクタサイズが大きくなってしまう。
更に、上記シャッター機構付コネクタは、相手コネクタのコネクタ嵌合方向の押圧力によってシャッターを回動させて開くことにより、コネクタ内の端子を開放露出させて相手端子との結合を可能にする。そこで、コネクタ嵌合時には、端子と相手端子を結合する際の挿入抵抗に加えて、シャッターを回動させるための回動抵抗が作用し、コネクタ嵌合力が増大してしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シャッター機構付きコネクタのコネクタ嵌合力を低下させると共にコンパクトなコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 接続端子を収容するハウジングと、
前記ハウジングに回動自在に設けられ、相手コネクタの嵌合先端部が嵌合される前記ハウジングの前方開口を開閉するシャッターと、
前記前方開口の一側部側に配置されて前記相手コネクタのコネクタ嵌合方向と交差する回動軸を中心に前記ハウジングに対して回動自在に支持され、前記回動軸より前記ハウジングの前方へ延出するアーム部と、前記回動軸より前記前方開口の他側部側へ延出する連結係合部とを有する回動アームと、
前記シャッターと一体的に回転可能に設けられ、前記連結係合部の先端に押圧されて回動する第1レバー部を有する連結部材と、
を備えており、
前記嵌合先端部が前記前方開口に対向する位置に移動される前記相手コネクタの押圧力が前記アーム部に作用して前記回動アームを回動させることにより、前記連結係合部によって回動される前記連結部材と一体的に前記シャッターが回動されて前記前方開口を開放するコネクタ。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタによれば、コネクタ嵌合時、嵌合先端部がハウジングの前方開口に対向する位置に相手コネクタを移動させると、相手コネクタの側面部がアーム部を押圧し、回動アームを回動させる。そして、回動された回動アームは、連結係合部の先端によって第1レバー部が回動される連結部材と一体的にシャッターを回動させてハウジングの前方開口を開放する。そこで、側面部がアーム部を押圧してシャッターを開放させた状態を維持したままで相手コネクタをコネクタ嵌合方向に沿って前方開口に向けて移動させれば、ハウジングの前方開口内の接続端子に相手コネクタの相手接続端子を嵌合することができる。
この時、回動アームが連結部材を介してシャッターを回動させるので、相手コネクタの側面部がアーム部を押圧する押圧力は、従来の相手コネクタの嵌合先端部がシャッターの前面部を直接押圧する押圧力よりも小さくなる。
従って、コネクタ嵌合時、コネクタ嵌合方向に移動する相手コネクタには、接続端子と相手接続端子を結合する際の挿入抵抗が作用するが、シャッターを回動させるための回動抵抗は殆んど作用せず、従来よりもコネクタ嵌合力が低下する。
また、本構成のコネクタは、従来のシャッター機構付コネクタのように、シャッターの開閉軌跡を考慮して相手コネクタの嵌合フード部を長くする必要がなくなる。
【0009】
(2) 前記連結部材は、前記連結係合部の先端を挟んで前記第1レバー部とは異なる方向の回転半径外方へ延びる第2レバー部を有し、
前記連結係合部は、前記連結係合部の先端が前記第1レバー部を押圧して前記連結部材を所定回転角度まで回動させた後、前記第2レバー部を押圧して前記連結部材を所定回転角度以上回動させるための補助係合部を有する上記(1)に記載のコネクタ。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタによれば、前方開口を開閉するために必要なシャッターの回転角度が第1レバー部の所定回転角度より大きい場合でも、連結係合部の補助係合部が第2レバー部を押圧して連結部材を回動させことで、前方開口を開閉するために必要な回転角度までシャッターを確実に回動させることができる。
即ち、連結係合部の先端が第1レバー部を押圧して連結部材を所定回転角度まで回動させると、連結係合部の先端における回転半径内から第1レバー部が外れてしまう場合、連結係合部の先端はそれ以上第1レバー部を押圧して連結部材を回動させることができない。そして、前方開口を開閉するために必要なシャッターの回転角度が連結部材の所定回転角度より大きい場合、連結係合部の先端は前方開口を開閉するために必要な回転角度までシャッターを回動させることができない。しかしながら、本構成のコネクタによれば、連結係合部の補助係合部が第2レバー部を押圧して連結部材を所定回転角度以上回動させることで、回動アームは連結部材を介して前方開口を開閉するために必要な回転角度までシャッターを回動させることができる。
【0011】
(3) 前記連結部材は、弾性部材によって前記シャッターが前記前方開口を閉鎖する方向へ常時付勢される上記(1)又は(2)に記載のコネクタ。
【0012】
上記(3)の構成のコネクタによれば、シャッターは、弾性部材により常時付勢された連結部材を介して前方開口を閉鎖する方向へ付勢される。そして、弾性部材によって常時付勢された連結部材は、連結係合部に対して隙間なく常時接触した状態とされる。そこで、アーム部が相手コネクタに押圧されて回動アームが回動された際には、連結係合部は連結部材を介してシャッターを速やかに回動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シャッター機構付きコネクタのコネクタ嵌合力を低下させると共にコンパクトなコネクタを提供することにある。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを構成するインレットと、このインレットに嵌合される相手コネクタであるインレットプラグとを示す斜視図である。
図2】インレットの分解斜視図である。
図3図1に示したインレットの斜視図及び要部拡大図である。
図4】インレットとインレットプラグの嵌合前状態を示す側面図である。
図5】インレットとインレットプラグの嵌合開始状態を示す側面図である。
図6】インレットとインレットプラグの嵌合途中状態を示す側面図である。
図7】嵌合時のインレットにおけるインレットプラグを省略した斜視図である。
図8】嵌合先端部がハウジングの前方開口に対向する位置に相手コネクタを移動させた時の接続端子部分における縦断面図である。
図9】嵌合時のインレットとインレットプラグとの接続端子部分における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタを構成するインレット1と、このインレット1に嵌合される相手コネクタであるインレットプラグ5とを示す斜視図である。図2は、インレット1の分解斜視図である。図3は、図1に示したインレット1の斜視図及び要部拡大図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタであるインレット1は、ハウジング10を有しており、このハウジング10には、インレットプラグ(相手コネクタ)5のプラグハウジング80が嵌合される。これにより、インレット1に収容された接続端子70と、インレットプラグ5に収容された相手接続端子90とが、電気的に接続される。
【0018】
なお、本明細書中において、前後方向とはハウジング10のコネクタ嵌合方向(図4中、左右方向)に沿う方向であり、インレットプラグ5のプラグハウジング80が嵌合される側を前方とし、上下方向とはハウジング10のコネクタ嵌合方向と直交してシャッター41が開閉する方向(図4中、上下方向)であり、ハウジング10の上壁部11側を上方とする。
【0019】
図1図3に示すように、インレット1は、ハウジング10と、回動アーム31と、シャッター41と、連結部材61とを備えている。
【0020】
本実施形態のハウジング10は、電気絶縁性の合成樹脂から成形されたものである。ハウジング10は、図2に示すように、矩形状の上壁部11と、上壁部11の両縁部から下方へ延びる一対の側壁部12と、ハウジング10の中央部分に設けられた端子収容部20とを有している。この端子収容部20には、インレットプラグ5側へ突出する一対の端子収容筒部23,23が設けられている。
【0021】
端子収容筒部23内には、高圧ケーブル71の端末部に接続された接続端子70が収容されている。端子収容筒部23の前端には、インレットプラグ5の相手接続端子90が挿入される前方開口である前面開口25が形成されている。接続端子70に接続された高圧ケーブル71は、端子収容筒部23の後端開口から引き出される。
【0022】
接続端子70は、導電性金属材料から形成されたメス端子で、円筒形に配置された複数の可撓片により構成されている。接続端子70は、その後端部に、接合穴72が形成されており、この接合穴72には、端子収容筒部23の後端開口から引き出される高圧ケーブル71の導体73が挿し込まれてカシメ接続されている(図8及び図9参照)。
【0023】
端子収容筒部23の後端開口から引き出される高圧ケーブル71には、シール部材75が装着され、端子収容筒部23に対して液密にシールされる。シール部材75は、端子収容筒部23の後端に装着されるリヤホルダー77によって離脱が規制される(図8及び図9参照)。
【0024】
端子収容部20の前方部分には、一対の側壁部12の前縁から前方にそれぞれ延びるガイド壁13が設けられている。一対のガイド壁13は、前方に向かって徐々に間隔が広がるように構成されており、嵌合されるプラグハウジング80の嵌合先端部を端子収容部20に向けて挿入ガイドする。
更に、ハウジング10は、上壁部11の前方に、庇部15が延設されている。上壁部11の中央部分には、庇部15に亘ってコネクタ嵌合方向に延びる嵌合ガイド溝16が形成されている。嵌合ガイド溝16は、インレットプラグ5に向かうにつれて幅が拡大するテーパ部を有する。この嵌合ガイド溝16は、インレットプラグ5がインレット1に嵌合される際、プラグハウジング80の上面に突設された拾いリブ85と係合することにより、プラグハウジング80をハウジング10に嵌合案内することができる。
【0025】
上壁部11の後方には、ハウジング10の左右方向に延びるアーム支持穴14が貫通形成されている。アーム支持穴14に回転自在に挿通された回動支持ピン51は、回動アーム31をハウジング10に対して開閉自在に支持する。回動支持ピン51は、外周面の一部が長手方向に沿って突出した鍵穴形状(円形と方形を連結した形状)の断面を有するピンである。
【0026】
ハウジング10は、その上壁部11に、側方へ張り出す固定部19を有しており、これらの固定部19には、取付けネジ(図示略)を通す孔部19aが形成されている。更に、固定部19の先端には、回動アーム31の係止片37に係合して回動を規制するストッパ部18が設けられている。
【0027】
ハウジング10の両側壁部12の下縁前端には、シャッター41を開閉自在に支持するための回動支持ピン53が回転自在に挿通されるシャッター支持穴12aが形成されている。回動支持ピン53は、外周面の一部が長手方向に沿って突出した鍵穴形状(円形と方形を連結した形状)の断面を有するピンである。
【0028】
ハウジング10の一方(図2中、右方)の側壁部12のシャッター支持穴12a近傍には、ばね係止突起17が外側方に向かって突設されている。
【0029】
本実施形態の回動アーム31は、図2に示すように、一対のアーム部材31A,31Bを組み合わせて構成されており、ハウジング10の左右方向に延びる連結部34の両端部からそれぞれハウジング10の前後方向へ延びる一対のアーム部32を有するU字状のアーム部材である。
【0030】
回動アーム31は、アーム部32の後端に形成された嵌合孔32aに嵌挿された回動支持ピン51を介してハウジング10のアーム支持穴14に回動自在に軸支される。嵌合孔32aは、回動支持ピン51に対応した鍵穴形状の開口であり、嵌合孔32aに嵌挿された回動支持ピン51は回動アーム31と一体的に回動する。
【0031】
アーム支持穴14は、端子収容筒部23における前面開口25の一側部側(上方側部側)に位置する上壁部11に形成されている。そこで、回動アーム31は、前面開口25の上方側部側に配置されてコネクタ嵌合方向と交差する回動軸X(回動支持ピン51の中心線)を中心にハウジング10に対して回動自在に支持される。
【0032】
回動アーム31のアーム部32は、回動軸X(嵌合孔32a)よりハウジング10の前方へ延出するように構成されている。また、回動アーム31は、アーム部32の後端に形成された嵌合孔32a(回動軸X)より前面開口25の他側部側(下方側部側)へ延出する連結係合部36を有している。
【0033】
即ち、回動アーム31は、前面開口25の上方側部側に配置されてインレットプラグ5のコネクタ嵌合方向と交差する回動軸Xを中心にハウジング10に対して回動自在に支持される。そして、回動アーム31は、回動軸Xよりハウジング10の前方へ延出するアーム部32と、回動軸Xより前面開口25の下方側部側へ延出する連結係合部36とを有する。アーム部32と連結係合部36とで画成された三角形の入隅には、補強壁35が設けられている。
【0034】
前端部が連結部34で連結された一対のアーム部32は、上壁部11の左右方向幅より広い間隔を有している。そこで、ハウジング10のアーム支持穴14に回転自在に挿通された回動支持ピン51を介して軸支された回動アーム31は、連結部34が庇部15の前方を上下に揺動自在な状態となる。
また、回動力が付与されていない状態では、自重により下方へ回動した回動アーム31は、係止片37がハウジング10のストッパ部18に係合することで、先端側が庇部15の斜め下方に突出するように傾いた状態で回動が規制される。
【0035】
連結係合部36の先端36aは、回動アーム31(アーム部32)の先端側が上方へ回動されると、後述する連結部材61の第1レバー部62を押圧して回動させる。
連結係合部36の後面36bには、先端が下方に延びるように形成された鉤状の補助係合部33が設けられている。
【0036】
本実施形態のシャッター41は、図2に示すように、矩形平板状のカバー部43と、カバー部43の左右方向両端部における内面の下方にそれぞれ突設された回動支持部47と、を有する。
【0037】
回動支持部47は、ハウジング10の側壁部12のシャッター支持穴12aに回転自在に挿通された回動支持ピン53を介して回動自在に軸支されることで、開閉方向へ回転されるカバー部43の回転中心となる。回動支持部47の嵌合孔は、回動支持ピン53に対応した鍵穴形状の開口であり、嵌合孔に嵌挿された回動支持ピン53はシャッター41と一体的に回動する。
【0038】
シャッター41は、端子収容部20における端子収容筒部23の前面開口25をカバー部43が覆うことで、インレット1の非接続時における前面開口25での接続端子70の露出を防ぐことができる。
【0039】
本実施形態の連結部材61は、図2及び図3に示すように、シャッター41と一体的に回転可能に設けられ、回動アーム31(アーム部32)の連結係合部36に係合することで、回動アーム31(アーム部32)の回転に連動してシャッター41を回動させる。連結部材61は、ハウジング10の両側壁部12の外側におけるシャッター41の左右両側にそれぞれ配置される。これら連結部材61は、側壁部12のシャッター支持穴12aに挿通された第2連結ピン53の両端部にそれぞれ連結されており、回動アーム31(アーム部32)の回動に連動して同期作動される。第2連結ピン53に連結される連結部材61の嵌合孔は、第2連結ピン53に対応した鍵穴形状の開口であり、嵌合孔に嵌挿された第2連結ピン53は連結部材61と一体的に回動する。
【0040】
連結部材61は、第2連結ピン53が嵌挿される嵌合孔に対して半径方向外方へ延びる第1レバー部62と、回動アーム31(アーム部32)の連結係合部36の先端36aを挟んで第1レバー部62とは異なる方向の回転半径外方へ延びる第2レバー部63と、第1レバー部62の基部に形成されたばね掛止部64と、を有して構成される。
【0041】
第1レバー部62は、図3に示すように、回動力が付与されず回動アーム31(アーム部32)の先端側が庇部15の斜め下方に突出するように傾いた状態では、連結係合部36の前面に側面62aが添うように当接する。そして、回動アーム31(アーム部32)の先端側が上方へ回転されると、第1レバー部62の側面62aが連結係合部36の先端36aに押圧されて回動する。
【0042】
第2レバー部63は、回動力が付与されず回動アーム31(アーム部32)の先端側が庇部15の斜め下方に突出するように傾いた状態では、連結係合部36の下方を向いて突出している。そして、回動アーム31(アーム部32)の先端側が上方へ回転されると、第2レバー部63の側面63aが連結係合部36の補助係合部33に押圧されて回動する。
【0043】
そこで、本実施形態の連結部材61は、回動アーム31(アーム部32)の先端側が斜め下方に突出するように傾いた状態から上方へ回転されると、連結係合部36の先端36aが第1レバー部62を押圧することで所定回転角度まで回動される。そして、更に回動アーム31(アーム部32)の先端側が上方へ回転されると、連結係合部36の補助係合部33が第2レバー部63を押圧することで所定回転角度以上回動させる。なお、所定回転角度とは、連結係合部36の先端36aにおける回転半径内から第1レバー部62が外れてしまう時の連結部材61の回転角度である。
【0044】
連結部材61は、弾性部材であるねじりコイルばね65によってシャッター41が前面開口25を閉鎖する方向へ常時付勢される。ねじりコイルばね65は、回動支持ピン53に嵌挿されて一方(図3中、右方)の連結部材61に並設されている。ねじりコイルばね65は、一端部が側壁部12のばね係止突起17に掛止され、他端部が連結部材61のばね掛止部64に掛止されることで、シャッター41が前面開口25を閉鎖する方向へ連結部材61を常時付勢している。
【0045】
シャッター41と一体的に回動する連結部材61は、図1及び図2に示すように、回動アーム31(アーム部32)の先端側が斜め下方に向けて傾いた状態では、シャッター41のカバー部43がコネクタ嵌合方向と交差してハウジング10の端子収容部20における端子収容筒部23の前面開口25を覆った位置にシャッター41を保持する。
また、連結部材61は、回動アーム31(アーム部32)がコネクタ嵌合方向に対し平行な水平状態では、シャッター41のカバー部43がコネクタ嵌合方向と平行になって端子収容筒部23の前面開口25を開放した位置にシャッター41を保持する(図6及び図7参照)。
【0046】
そして、組み立てられたインレット1では、ハウジング10の端子収容部20の前面開口25がシャッター41によって覆われる。これにより、インレット1の非接続時における前面開口25での接続端子70の露出が防がれる。
【0047】
そして、インレット1は、ハウジング10の上壁部11に形成された固定部19の孔部19aへ通したネジによって、例えば、電気自動車の車体等に取り付けられる。ここで、車体の上下方向が車体取り付け時におけるインレット1の上下方向とされる。
【0048】
インレット1に嵌合されて電気的に接続されるインレットプラグ5は、図1及び図8に示すように、インレット1の接続端子70に嵌合される相手接続端子90と、相手接続端子90を収容する一対の端子収容室83を有するプラグハウジング80と、を備えている。
【0049】
プラグハウジング80は、電気絶縁性の合成樹脂から成形されたものである。プラグハウジング80の上面には、拾いリブ85が突設されている。この拾いリブ85は、インレットプラグ5がインレット1に嵌合される際、インレット1の上壁部11に設けられた嵌合ガイド溝16と係合することにより、プラグハウジング80をハウジング10に嵌合案内することができる。
【0050】
端子収容室83内には、高圧ケーブル91の端末部に接続された相手接続端子90が収容されている。相手接続端子90に接続された高圧ケーブル91は、端子収容室83の後端開口から引き出される。
【0051】
相手接続端子90は、導電性金属材料から形成されたオス端子で、円柱形の棒状に形成されている。相手接続端子90は、その後端部に、接合穴92が形成されており、この接合穴92には、端子収容室83の後端開口から引き出される高圧ケーブル91の導体93が挿し込まれてカシメ接続されている。
【0052】
端子収容室83の後端開口から引き出される高圧ケーブル91にはシール部材95が装着され、端子収容室83に対して液密にシールされる。シール部材95は、端子収容室83の後端に装着されるリヤホルダー97によって離脱が規制される。
【0053】
次に、上記構成のインレット1に対してインレットプラグ5を嵌脱させる場合について説明する。
図4図6は、インレット1とインレットプラグ5の嵌合前状態、嵌合開始状態及び嵌合途中状態を示す側面図である。図7は、嵌合時のインレット1におけるインレットプラグ5を省略した斜視図である。図8は、嵌合先端部がハウジング10の前面開口25に対向する位置にインレットプラグ5を移動させた時の接続端子部分における縦断面図である。図9は、嵌合時のインレット1とインレットプラグ5との接続端子部分における縦断面図である。
【0054】
(嵌合時)
図4に示すように、インレットプラグ5が庇部15の下方に位置しており、インレットプラグ5の嵌合先端部がハウジング10の前面開口25に対向されない状態では、シャッター41がハウジング10の端子収容部20の前方に配置されている(図1参照)。これにより、端子収容部20における前面開口25がシャッター41によって覆われた閉鎖状態とされる。したがって、インレット1の接続端子70は、シャッター41が閉止して露出されていない。これにより、インレット1は、防塵、端子保護及び感電が防止されている。
【0055】
この状態から、図5に示すように、プラグハウジング80の上面が回動アーム31の先端側(連結部34)に接触して回動させるまでインレットプラグ5を上方へ移動させる。
回動アーム31(アーム部32)の先端側が上方へ回動されると、連結係合部36の先端36aは、連結部材61の第1レバー部62を押圧して所定回転角度まで回動させる。そこで、回動された回動アーム31の連結係合部36は、連結部材61を介してシャッター41を開放方向へ回動させる。
【0056】
更に、図6及び図8に示すように、プラグハウジング80の上面が庇部15の下面に当接するまでインレットプラグ5を上方へ移動させる。これにより、嵌合先端部がハウジング10の前面開口25に対向する位置にインレットプラグ5を移動させることができる。すると、インレットプラグ5の側面部であるプラグハウジング80の上面が回動アーム31の先端側(連結部34)を押圧し、回動アーム31のアーム部32を水平状態まで回動させる。
【0057】
回動アーム31(アーム部32)の先端側が水平状態まで回動されると、連結係合部36は、連結部材61の第1レバー部62との先端36aの係合が外れ、補助係合部33が連結部材61の第2レバー部63と係合する。そして、連結係合部36の補助係合部33は、連結部材61の第2レバー部63を押圧して前面開口25を開放するために必要な回転角度まで回動させる。そこで、回動された回動アーム31(アーム部32)は、連結部材61を介してシャッター41を開放するまで回動させる。即ち、回動された回動アーム31の連結係合部36は、図7に示すように、連結部材61を介してシャッター41を回動させてハウジング10の前面開口25を開閉する。
【0058】
次に、プラグハウジング80の上面が回動アーム31(連結部34)を押圧してシャッター41を開放させた状態を維持したままでインレットプラグ5をコネクタ嵌合方向に沿って端子収容部20の前面開口25に向けて移動させる。
すると、図9に示すように、ハウジング10の端子収容部20内の接続端子70にインレットプラグ5の相手接続端子90を嵌合することができる。そして、インレット1の接続端子70とインレットプラグ5の相手接続端子90とが互いに嵌合されて接続されることにより、高圧ケーブル71と高圧ケーブル91とが電気的に接続される。
【0059】
この時、回動アーム31の連結係合部36が連結部材61を介してシャッター41を回動させるので、インレットプラグ5の上面が回動アーム31の連結部34を押圧する押圧力は、従来のインレットプラグの嵌合先端部がシャッターの前面部を直接押圧する押圧力よりも小さくなる。
【0060】
従って、コネクタ嵌合時、コネクタ嵌合方向に移動するインレットプラグ5には、接続端子70と相手接続端子90を結合する際の挿入抵抗が作用するが、シャッター41を回動させるための回動抵抗は殆んど作用せず、従来よりもコネクタ嵌合力が低下する。
また、本実施形態のインレット1は、従来のシャッター機構付インレットのように、シャッター41の開閉軌跡を考慮してインレットプラグ5の嵌合フード部を長くする必要がなくなる。
【0061】
(離脱時)
インレット1からインレットプラグ5を離脱させるべく、インレットプラグ5をインレット1から引き抜くと、インレット1の接続端子70からインレットプラグ5の相手接続端子90が引き抜かれる。これにより、高圧ケーブル71と高圧ケーブル91との電気的な接続状態が解除される。
【0062】
インレットプラグ5が引き抜かれると、回動アーム31の連結部34を上方へ押圧していたプラグハウジング80の上面が回動アーム31(アーム部32)から離間する。そこで、回動アーム31は、図4に示したように、自重により下方へ回動した回動アーム31は、係止片37がハウジング10のストッパ部18に係合することで、先端側が庇部15の下方に突出するように傾いた状態となる。
従って、インレット1は、開放されていたハウジング10の前面開口25がシャッター41によって覆われた閉鎖状態とされる。したがって、インレット1の接続端子70は、シャッター41が閉止して露出されなくなり、インレット1は、防塵、端子保護及び感電が防止される。
【0063】
上述したように、本実施形態に係るインレット1では、前面開口25を開閉するために必要なシャッター41の回転角度は、第1レバー部62の所定回転角度より大きい。そこで、連結係合部36の先端36aが第1レバー部62を押圧して連結部材61を所定回転角度まで回動させると、連結係合部36の先端36aにおける回転半径内から第1レバー部62が外れてしまい、連結係合部36の先端36aはそれ以上第1レバー部62を押圧して連結部材61を回動させることができない。
しかしながら、本実施形態に係るインレット1によれば、連結係合部36の補助係合部33が第2レバー部63を押圧して連結部材61を所定回転角度以上回動させることで、回動アーム31のアーム部32は連結部材61を介して前面開口25を開閉するために必要な回転角度までシャッター41を回動させることができる。
なお、連結部材の第1レバー部62及び連結係合部36の形状を変更することで、第1レバー部62の所定回転角度をシャッターが必要な回転角度と同等にすれば、連結部材61の第2レバー部63を省略することもできる。
【0064】
また、本実施形態に係るインレット1によれば、シャッター41は、ねじりコイルばね65により常時付勢された連結部材61を介して前面開口25を閉鎖する方向へ付勢される。そして、ねじりコイルばね65によって常時付勢された連結部材61は、連結係合部36の先端36aに対して隙間なく常時接触した状態とされる。そこで、回動アーム31の連結部34がプラグハウジング80の上面に押圧されて回動アーム31(アーム部32)が回動された際には、連結係合部36は連結部材61を介してシャッター41を速やかに回動させることができる。
【0065】
従って、本実施形態に係るインレット1によれば、コネクタ嵌合力を低下させると共にコンパクトなコネクタを提供することができる。
【0066】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0067】
上記実施形態では、シャッター機構付きコネクタとして電気自動車等に用いられるインレットを例に説明したが、本発明のコネクタはこれに限らず、本発明の趣旨に基づく種々のコネクタに応用することができる。
【0068】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 接続端子(70)を収容するハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)に回動自在に設けられ、相手コネクタ(インレットプラグ5)の嵌合先端部が嵌合される前記ハウジング(10)の前方開口(前面開口25)を開閉するシャッター(41)と、
前記前方開口(前面開口25)の一側部側に配置されて前記相手コネクタ(インレットプラグ5)のコネクタ嵌合方向と交差する回動軸(X)を中心に前記ハウジング(10)に対して回動自在に支持され、前記回動軸(X)より前記ハウジング(10)の前方へ延出するアーム部(32)と、前記回動軸(X)より前記前方開口(前面開口25)の他側部側へ延出する連結係合部(36)とを有する回動アーム(31)と、
前記シャッター(41)と一体的に回転可能に設けられ、前記連結係合部(36)の先端(36a)に押圧されて回動する第1レバー部(62)を有する連結部材(61)と、
を備えており、
前記嵌合先端部が前記前方開口(前面開口25)に対向する位置に移動される前記相手コネクタ(インレットプラグ5)の押圧力が前記アーム部(32)に作用して前記回動アーム(31)を回動させることにより、前記連結係合部(36)によって回動される前記連結部材(61)と一体的に前記シャッター(41)が回動されて前記前方開口(前面開口25)を開放するコネクタ(インレット1)。
[2] 前記連結部材(61)は、前記連結係合部(36)の先端(36a)を挟んで前記第1レバー部(62)とは異なる方向の回転半径外方へ延びる第2レバー部(63)を有し、
前記連結係合部(36)は、前記連結係合部(36)の先端(36a)が前記第1レバー部(62)を押圧して前記連結部材(61)を所定回転角度まで回動させた後、前記第2レバー部(63)を押圧して前記連結部材(61)を所定回転角度以上回動させるための補助係合部(33)を有する上記[1]に記載のコネクタ(インレット1)。
[3] 前記連結部材(61)は、弾性部材(ねじりコイルばね65)によって前記シャッター(41)が前記前方開口(前面開口25)を閉鎖する方向へ常時付勢される上記[1]又は[2]に記載のコネクタ(インレット1)。
【符号の説明】
【0069】
1…インレット(コネクタ)
5…インレットプラグ(相手コネクタ)
10…ハウジング
25…前面開口(前方開口)
31…回動アーム
32…アーム部
41…シャッター
61…連結部材
62…第1レバー部
63…第2レバー部
65…ねじりコイルばね(弾性部材)
70…接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9