IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスペック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インキュベータ 図1
  • 特許-インキュベータ 図2
  • 特許-インキュベータ 図3
  • 特許-インキュベータ 図4
  • 特許-インキュベータ 図5
  • 特許-インキュベータ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】インキュベータ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240903BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021074677
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022168955
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔一
(72)【発明者】
【氏名】矢田 寛
(72)【発明者】
【氏名】芦田 兼治
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐亮
【審査官】三谷 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-190268(JP,A)
【文献】特開2016-109682(JP,A)
【文献】特開2018-191546(JP,A)
【文献】特開2005-095097(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125748(WO,A1)
【文献】米国特許第04336329(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温室と空調室とが区画され、前記恒温室と前記空調室との間で第1空気が循環する筐体と、
前記空調室において前記第1空気の温度を調節する空調装置と、を備え、
前記空調室には、前記第1空気が流通する流路が形成され、
前記空調装置は、
前記第1空気よりも低温の第2空気を前記流路に供給するための供給口を有する供給部と、
前記供給口よりも上流側に配置され、前記恒温室の前記第1空気を前記流路へ流入させる上流ファンと、
前記供給口よりも下流側に配置され、前記第2空気を前記第1空気に混合し、前記第2空気が混合された前記第1空気を前記流路から前記恒温室へ流出させる下流ファンと、を有し、
前記流路は、前記流路の流れ方向に直交する幅方向の拡がりを有し、
前記供給部は、前記第2空気が流通し、前記供給口が形成された複数のダクトを有し、
前記複数のダクトのそれぞれは、前記流路において前記幅方向に延びるように配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの下流端部は、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの前記供給口は、前記ダクトの下流端部側において前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置され、
前記流路において、前記供給口に対し、前記流路の流れ方向及び前記幅方向の両方に直交する方向の両側には前記第1空気の流通する空間が形成されているインキュベータ。
【請求項2】
恒温室と空調室とが区画され、前記恒温室と前記空調室との間で第1空気が循環する筐体と、
前記空調室において前記第1空気の温度を調節する空調装置と、を備え、
前記空調室には、前記第1空気が流通する流路が形成され、
前記空調装置は、
前記第1空気よりも低温の第2空気を前記流路に供給するための供給口を有する供給部と、
前記供給口よりも上流側に配置され、前記恒温室の前記第1空気を前記流路へ流入させる上流ファンと、
前記供給口よりも下流側に配置され、前記第2空気を前記第1空気に混合し、前記第2空気が混合された前記第1空気を前記流路から前記恒温室へ流出させる下流ファンと、
前記流路において前記下流ファンよりも下流側に配置され、前記下流ファンによって前記第2空気が混合された前記第1空気を加熱するヒータと、を有し、
前記流路は、前記流路の流れ方向に直交する幅方向の拡がりを有し、
前記供給部は、前記第2空気が流通し、前記供給口が形成された複数のダクトを有し、
前記複数のダクトのそれぞれは、前記流路において前記幅方向に延びるように配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの下流端部は、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの前記供給口は、前記ダクトの下流端部側において前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されるインキュベータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインキュベータにおいて、
前記上流ファンは、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されるように複数設けられているインキュベータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のインキュベータにおいて、
前記下流ファンは、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されるように複数設けられているインキュベータ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載のインキュベータにおいて、
前記第1空気を前記筐体の外部に排出する排気ファンをさらに備えるインキュベータ。
【請求項6】
請求項1又は3乃至5の何れか1つに記載のインキュベータにおいて、
前記空調装置は、前記流路において前記供給口よりも下流側に配置され、前記第1空気を加熱するヒータをさらに有するインキュベータ。
【請求項7】
請求項6に記載のインキュベータにおいて、
前記ヒータは、前記流路において前記下流ファンよりも下流側に配置されているインキュベータ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載のインキュベータにおいて、
前記筐体は、空気の温度が調節された部屋に収容されて使用されるものであり、
前記供給部は、前記部屋の前記空気を前記第2空気として前記流路に供給するインキュベータ。
【請求項9】
請求項8に記載のインキュベータにおいて、
前記供給部は、前記部屋の前記空気を前記流路に供給する吸気ファンをさらに有するインキュベータ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のインキュベータにおいて、
前記部屋は、クリーンルームであるインキュベータ。
【請求項11】
恒温室と空調室とが区画され、前記恒温室と前記空調室との間で第1空気が循環する筐体と、
前記空調室において前記第1空気の温度を調節する空調装置と、を備え、
前記筐体は、前記第1空気よりも低温の第2空気で満たされた部屋に収容されて使用されるものであり、
前記空調室には、前記第1空気が流通する流路が形成され、
前記空調装置は、
前記部屋の前記第2空気を前記流路に供給する供給口を有する供給部と、前記流路に配置され、前記流路と前記恒温室との間で前記第1空気を循環させるファンとを有し、
前記第2空気を前記第1空気に混合し、前記第2空気が混合された前記第1空気を前記流路から前記恒温室へ流出させ、
前記流路は、前記流路の流れ方向に直交する幅方向の拡がりを有し、
前記供給部は、前記第2空気が流通し、前記供給口が形成された複数のダクトを有し、
前記複数のダクトのそれぞれは、前記流路において前記幅方向に延びるように配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの下流端部は、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの前記供給口は、前記ダクトの下流端部側において前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置され、
前記流路において、前記供給口に対し、前記流路の流れ方向及び前記幅方向の両方に直交する方向の両側には前記第1空気が流通する空間が形成されているインキュベータ。
【請求項12】
恒温室と空調室とが区画され、前記恒温室と前記空調室との間で第1空気が循環する筐体と、
前記空調室において前記第1空気の温度を調節する空調装置と、を備え、
前記筐体は、前記第1空気よりも低温の第2空気で満たされた部屋に収容されて使用されるものであり、
前記空調室には、前記第1空気が流通する流路が形成され、
前記空調装置は、
前記部屋の前記第2空気を前記流路に供給する供給口を有する供給部と、前記流路に配置され、前記流路と前記恒温室との間で前記第1空気を循環させるファンと、前記流路において前記供給口よりも下流側に配置され、前記第2空気が混合された前記第1空気を加熱するヒータと、を有し、
前記第2空気を前記第1空気に混合し、前記第2空気が混合された前記第1空気を前記流路から前記恒温室へ流出させ、
前記流路は、前記流路の流れ方向に直交する幅方向の拡がりを有し、
前記供給部は、前記第2空気が流通し、前記供給口が形成された複数のダクトを有し、
前記複数のダクトのそれぞれは、前記流路において前記幅方向に延びるように配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの下流端部は、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置され、
前記複数のダクトのそれぞれの前記供給口は、前記ダクトの下流端部側において前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されているインキュベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、インキュベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、細胞の培養等に用いられるインキュベータが知られている。例えば特許文献1に開示されているインキュベータは、恒温室(培養室)および空調室を備え、空調室で冷却または加熱した空気を恒温室との間で循環させることにより、恒温室を設定温度に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-110033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インキュベータの恒温室において、温度分布の均一化は重要な要素の一つである。前述した特許文献1のインキュベータでは、その温度分布の均一化に関してまだ改善の余地がある。
【0005】
本開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、恒温室の温度分布を均一化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のインキュベータは、恒温室と空調室とが区画され、前記恒温室と前記空調室との間で第1空気が循環する筐体と、前記空調室において前記第1空気の温度を調節する空調装置とを備えている。前記空調室には、前記第1空気が流通する流路が形成されている。前記空調装置は、供給部と、上流ファンと、下流ファンとを有している。前記供給部は、前記第1空気よりも低温の第2空気を前記流路に供給するための供給口を有している。前記上流ファンは、前記供給口よりも上流側に配置され、前記恒温室の前記第1空気を前記流路へ流入させる。前記下流ファンは、前記供給口よりも下流側に配置され、前記第2空気を前記第1空気に混合し、前記第2空気が混合された前記第1空気を前記流路から前記恒温室へ流出させる。
【0007】
前記の構成では、第2空気が供給部によって空調室の流路に供給されることにより、流路を流通する第1空気が第2空気と混合して所望温度に冷却される。こうして所望温度に調節された第1空気は、下流ファンによって空調室から恒温室に流出する一方、恒温室の第1空気は、上流ファンによって空調室の流路に流入する。これにより、恒温室が所望温度に制御される。
【0008】
ここで、上流ファンと下流ファンとの間に供給口が配置されている。そのため、供給口から供給された第2空気に、第1空気が上流ファンによって押し込まれる。これにより、第1空気と第2空気との混合が促進される。さらに、第2空気が混合された第1空気が下流ファンによって吸い込まれる。この下流ファンの吸い込み作用によって、第1空気が撹拌されるので、第1空気と第2空気との混合がより促進される。そのため、第1空気の温度が均一になる。温度が均一化された第1空気が恒温室に供給されることにより、恒温室における温度分布を均一化することができる。
【0009】
前記流路は、前記流路の流れ方向に直交する幅方向の拡がりを有し、前記供給部は、前記第2空気が流通し、前記供給口が形成された複数のダクトを有し、前記複数のダクトのそれぞれの前記供給口は、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されていてもよい。
【0010】
例えば、供給口が形成された1つのダクトで第2空気を供給した場合、供給口における第2空気の供給流量にばらつきが生じる虞がある。そうすると、流路の幅方向に亘って満遍なく第2空気を供給することが困難となって、第1空気と第2空気との混合比率が不均一になり得る。
【0011】
これに対し、前記の構成では、供給口が形成され、第2空気が流通する複数のダクトが設けられ、複数のダクトのそれぞれの供給口は、流路において幅方向の異なる位置に配置されている。これにより、各供給口へそれぞれのダクトを介して適切な流量の第2空気を供給することができる。そのような供給口が幅方向に並んで複数設けられているので、流路の幅方向に亘って満遍なく第2空気が供給される。これにより、第1空気と第2空気との混合比率が幅方向において均一化される。ひいては、第2空気が混合された第1空気の温度分布が幅方向で均一化される。
【0012】
前記上流ファンは、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されるように複数設けられていてもよい。
【0013】
前記の構成では、上流ファンが複数配置されているため、恒温室から流路に押し込まれる第1空気の流量が増大する。そのため、第1空気と第2空気との混合がより促進される。しかも、複数の上流ファンは、流路の幅方向において異なる位置に配置されているため、恒温室から流路へ吸い込まれる第1空気の流量が流路の幅方向において均一化される。流路の幅方向において満遍なく第1空気が第2空気に押し込まれる。そのため、第1空気と第2空気との混合比率が幅方向において均一化される。
【0014】
前記下流ファンは、前記流路において前記幅方向の異なる位置に配置されるように複数設けられていてもよい。
【0015】
前記の構成では、下流ファンが複数配置されているため、第2空気が混合された第1空気の下流ファンによる吸い込み流量が増大する。そのため、第1空気と第2空気との混合がより促進される。しかも、複数の下流ファンは、流路の幅方向において異なる位置に配置されているため、第1空気と第2空気との混合度が幅方向において均一化される。
【0016】
本開示のインキュベータは、前記第1空気を前記筐体の外部に排出する排気ファンをさらに備えていてもよい。
【0017】
前記の構成では、例えば、供給口から供給される第2空気の供給量と同等量の第1空気を排気ファンによって筐体から排出することにより、恒温室の圧力上昇が防止される。つまり、恒温室の圧力が一定に保たれる。
【0018】
前記空調装置は、前記流路において前記供給口よりも下流側に配置され、前記第1空気を加熱するヒータをさらに有するようにしてもよい。
【0019】
前記の構成では、供給口から第1空気よりも低温の第2空気が流路に供給されることにより、一旦、第1空気が所望の温度よりも低い温度まで冷却される。その後、第1空気は、ヒータによって所望の温度まで再熱される。これにより、第1空気の温度の調節幅が拡大される。
【0020】
前記ヒータは、前記流路において前記下流ファンよりも下流側に配置されるようにしてもよい。
【0021】
前記の構成では、下流ファンがヒータの上流側に配置されるので、ヒータで加熱された第1空気が下流ファンを通過することが防止される。そのため、下流ファンの温度上昇が抑制される。
【0022】
前記筐体は、空気の温度が調節された部屋に収容されて使用されるものであり、前記供給部は、前記部屋の前記空気を前記第2空気として前記流路に供給するようにしてもよい。
【0023】
前記の構成では、供給部が流路に供給する第2空気は、筐体が収容されている部屋の温度調節された空気である。つまり、供給部は、第2空気を供給するだけで、第2空気の温度を調節しない。この場合であっても、供給部は、安定した温度の第2空気を供給することができる。さらに、供給部は、冷凍機等が不要となるので、冷凍機に含まれる振動体である圧縮機が存在しなくなる。これにより、インキュベータにおける振動を抑制することができる。
【0024】
前記供給部は、前記部屋の前記空気を前記流路に供給する吸気ファンをさらに有するようにしてもよい。
【0025】
前記の構成では、吸気ファンを作動させることにより、部屋の空気が流路に強制的に取り込まれる。そのため、第1空気の冷却源である第2空気の供給流量を確保することが容易となる。
【0026】
前記部屋は、クリーンルームであってもよい。
【0027】
前記の構成では、第2空気がクリーンルーム内の空気であるため、清浄度の高い空気が流路に供給される。そのため、第2空気を清浄にするためのフィルタ等が不要となる。インキュベータにおいては、恒温室を一定の清浄度に保たなければならない場合が多いため、前記の構成が有効となる。
【発明の効果】
【0028】
本開示のインキュベータによれば、恒温室の温度分布を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】インキュベータの内部を前側から視て示す断面図である。
図2】インキュベータの内部を右側から視て示す断面図である。
図3】インキュベータの内部を上側から視て示す断面図である。
図4】インキュベータを一部省略して示す背面図である。
図5】変形例1に係る空調室を前側から視て示す拡大断面図である。
図6】変形例2に係る空調室を前側から視て示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、インキュベータ100の内部を前側から視て示す断面図である。
【0031】
インキュベータ100は、筐体1と、空調装置3とを備えている。インキュベータ100は、例えば、細胞培養や振とう機に用いられ、これらに必要な周囲環境を形成するものである。
【0032】
筐体1では、恒温室21と空調室22とが区画されている。筐体1においては、恒温室21と空調室22との間で第1空気(図1~3の実線矢印参照)が循環する。空調装置3は、空調室22において第1空気の温度を調節する。筐体1においては、恒温室21と空調室22とを第1空気が循環し、第1空気が空調室22で温度制御されることによって、所望温度の第1空気が恒温室21に供給される。
【0033】
筐体1は、クリーンルームCRに収容されている。クリーンルームCRは、空気の温度が調節された部屋の一例である。
【0034】
具体的には、筐体1は、略直方体状の箱型に形成されている。筐体1は、天井壁11、底壁12、前壁13、後壁14、右壁15及び左壁16を有している。筐体1は、内部空間を上下に仕切る仕切壁17をさらに有している。筐体1内の仕切壁17よりも下方の空間が恒温室21であり、筐体1内の仕切壁17よりも上方の空間が空調室22である。仕切壁17には、恒温室21と空調室22とを連通させる流入口17a及び流出口17bが形成されている。流入口17aは、仕切壁17の右端部に配置され、流出口17bは、仕切壁17の左端部に配置されている。
【0035】
恒温室21は、温度が所望の温度に保たれた空間であり、例えば、細胞を培養するための培養室である。恒温室21には、水平方向に拡がる複数の棚板25が設けられている。複数の棚板25は、上下方向に間隔を空けて配列されている。例えば、棚板25の上には、細胞を培養する培地が収容されたシャーレ26が載置される。
【0036】
空調室22には、第1空気が流通する流路23が形成されている。流路23は、流入口17aから流出口17bまで延びている。この例では、流路23における流体の流れ方向は、概ね水平方向を向いている。より詳しくは、流路23の流れ方向は、水平方向に右から左へ向かっている。
【0037】
流路23は、流路23の流れ方向に直交する幅方向に拡がっている。詳しくは、流れ方向に直交する流路23の断面形状は、図2に示すように、互いに直交する長手方向と短手方向に拡がる扁平な形状をしている。より具体的には、流路23の断面形状は、筐体1の前後方向に比較的長く且つ筐体1の上下方向に比較的短い横長の略長方形状をしている。この例では、流路23の断面形状の長手方向である、筐体1の前後方向を流路23の幅方向とする。
【0038】
筐体1は、流路23の幅を規定する2つの仕切壁18a,18bをさらに有している。2つの仕切壁18a,18bは、空調室22において筐体1の前後方向に(即ち、流路23の幅方向に)間隔を空けて並んでいる。
【0039】
空調装置3は、第1空気よりも低温の第2空気(図1~3の破線矢印参照)を供給する供給部4と、上流ファン31と、下流ファン32とを有している。空調装置3は、ヒータ33をさらに有している。
【0040】
供給部4は、クリーンルームCRの空気を第2空気として流路23に供給する。詳しくは、供給部4は、複数のダクト、具体的には、第1ダクト41Aと第2ダクト41Bとを有している。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bのそれぞれの内部には、第2空気が流通する供給路42が形成されている。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bのそれぞれの上流端は、後壁14に開口している。筐体1は、クリーンルームCRに配置されているので、後壁14の外側にはクリーンルームCR内の空気が存在している。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bの供給路42は、後壁14の開口を介して、クリーンルームCRと連通する。
【0041】
供給部4は、クリーンルームCRの空気を流路23に供給する吸気ファン44をさらに有する。詳しくは、図2~4に示すように、第1ダクト41A及び第2ダクト41Bのそれぞれの上流端に、吸気ファン44が設けられている。吸気ファン44は、後壁14に取り付けられている。吸気ファン44は、クリーンルームCR内の空気を供給路42へ流入させる。
【0042】
第1ダクト41A及び第2ダクト41Bは、流路23内に進入している。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bは、流路23内を流路23の幅方向(即ち、筐体1の前後方向)に延びている。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bのそれぞれの下流端部には、第2空気を流路23に供給する供給口43が形成されている。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bの供給路42は、供給口43を介して、流路23と連通する。
【0043】
複数のダクトのそれぞれの供給口43は、流路23において幅方向の異なる位置に配置されている。具体的には、流路23において、第2ダクト41Bは、第1ダクト41Aよりも流れ方向の上流側に配置されている。第2ダクト41Bは、流路23において、第1ダクト41Aよりも筐体1の前側まで延びている。第1ダクト41Aの下流端部には、流路23の幅方向に並ぶ2つの供給口43が形成されている。同様に、第2ダクト41Bの下流端部には、流路23の幅方向に並ぶ2つの供給口43が形成されている。第2ダクト41Bの2つの供給口43は、第1ダクト41Aの2つの供給口43よりも筐体1の前側に位置している。つまり、第1ダクト41Aの2つの供給口43と第2ダクト41Bの2つの供給口43との合計4つの供給口はそれぞれ、流路23の幅方向の異なる位置に配置されている。尚、第2ダクト41Bの2つの供給口43は、第1ダクト41Aの2つの供給口43に対して流路23の流れ方向の上流側へオフセットしている。
【0044】
上流ファン31は、流路23において供給口43よりも上流側に配置されている。上流ファン31は、恒温室21の第1空気を流路23へ流入させる。上流ファン31は、流路23において幅方向の異なる位置に配置されるように複数設けられている。具体的には、空調装置3は、図1~3に示すように、2つの上流ファン31を有している。2つの上流ファン31は、流路23のうち第1ダクト41A及び第2ダクト41Bが進入する部分よりも上流側の部分に配置されている。仕切壁17の右端部には、図2に示すように、流路23の幅方向に並ぶ2つの流入口17aが形成されている。2つの上流ファン31は、2つの流入口17aの近傍において、2つの流入口17aとそれぞれ対向するように配置されている。つまり、2つの上流ファン31は、流路23の幅方向に並んで配置されている。
【0045】
下流ファン32は、流路23において供給口43よりも下流側に配置され、第2空気を第1空気に混合し、第2空気が混合された第1空気を流路23から恒温室21へ流出させる。下流ファン32は、流路23において幅方向の異なる位置に配置されるように複数設けられている。具体的には、空調装置3は、図3に示すように、4つの下流ファン32を有している。4つの下流ファン32は、流路23のうち第1ダクト41A及び第2ダクト41Bが進入する部分よりも下流側の部分に配置されている。4つの下流ファン32は、流路23の幅方向に並んで配置されている。4つの下流ファン32は、流路23の流れ方向において第1ダクト41Aの2つの供給口43及び第2ダクト41Bの2つの供給口43にそれぞれ対向するように配置されている。
【0046】
ヒータ33は、流路23において供給口43よりも下流側に配置され、第1空気を加熱する。具体的には、ヒータ33は、図1,3に示すように、流路23において下流ファン32よりも下流側に配置されている。ヒータ33は、流路23の幅方向に亘って設けられている。ヒータ33は、流路23の流れ方向において4つの下流ファン32に対向するように配置されている。例えば、ヒータ33は、伝熱ヒータである。
【0047】
インキュベータ100は、図1,2,4に示すように、第1空気を筐体1の外部に排出する排気ファン5をさらに備えている。具体的には、インキュベータ100は、2つの排気ファン5を有している。2つの排気ファン5は、恒温室21において後壁14に設けられている。つまり、恒温室21は、排気ファン5を介してクリーンルームCRと連通している。より詳しくは、2つの排気ファン5は、恒温室21において仕切壁17aの近傍に配置されている。そのため、2つの排気ファン5は、恒温室21を流通して空調室22へ流入する直前の第1空気の一部を筐体1の外部へ排出する。
【0048】
インキュベータ100は、筐体1内の第1空気の温度を検出する温度センサ91と、温度センサ91の検出結果に基づいて第1空気の温度を制御する制御装置9とをさらに備えている。
【0049】
温度センサ91は、図1に示すように、恒温室21に配置されている。具体的には、温度センサ91は、恒温室21において流入口17aの近傍に配置されている。
【0050】
制御装置9は、プロセッサ等の制御部、記憶装置及びメモリ等を有している。制御装置9には、温度センサ91の検出信号が入力される。制御装置9は、ヒータ33に制御信号を出力し、ヒータ33の能力を制御する。具体的には、制御装置9は、温度センサ91によって検出される第1空気の温度が所望の温度となるように、ヒータ33の出力を調節する。
【0051】
続いて、このように構成されたインキュベータ100の動作について説明する。
【0052】
上流ファン31及び下流ファン32の作動によって、筐体1内には恒温室21と空調室22とを循環する第1空気の循環流が形成される。
【0053】
詳しくは、下流ファン32によって空調室22内の第1空気が恒温室21へ流出する。恒温室21の上部が仕切壁17で区画されており、仕切壁17の左端部に流出口17bが形成されている。空調室22の第1空気は、流出口17bを介して恒温室21の左上の部分に流出する。恒温室21の比較的左側の空間、即ち、恒温室21のうち棚板25よりも左側の空間では、下流ファン32によって下降気流が形成されている。
【0054】
恒温室21のうち棚板25よりも左側の空間において、第1空気は下方へ流れつつ、棚板25の間を通過して、恒温室21の右側へ流れていく。
【0055】
仕切壁17の右端部に流入口17aが形成されている。空調室22における流入口17aの近傍に上流ファン31が配置されている。そのため、恒温室21のうち棚板25よりも右側の空間においては、上流ファン31の吸引による上昇気流が形成されている。恒温室21のうち棚板25よりも右側の空間においては、第1空気が上方へ流れ、流入口17aを介して空調室22へ流入する。このとき、温度センサ91は、空調室22へ流入する第1空気の温度を検出する。
【0056】
空調室22において、流路23のうち流入口17aよりも下流側には、第1ダクト41A及び第2ダクト41Bの供給口43が位置している。第1ダクト41A及び第2ダクト41Bの供給路42には、吸気ファン44によってクリーンルームCRの空気が流通している。供給口43からは、クリーンルームCRの空気が流路23へ第2空気として供給されている。
【0057】
恒温室21から流入口17aを介して流路23へ流入した第1空気は、上流ファン31によって、流路23の下流側へ押し込まれる。第1空気は、第1ダクト41A及び第2ダクト41Bの周囲を通って供給口43の近傍を通過する。このとき、供給口43から第1空気へ第2空気が供給される。第2空気の温度は第1空気よりも低いので、第2空気が混合された第1空気の温度は低下する。
【0058】
第2空気が混合された第1空気は、上流ファン31による押し込み及び下流ファン32による吸い込みによって、さらに下流側へ流れ、下流ファン32によって吸い込まれる。下流ファン32は、第2空気を第1空気に満遍なく混合し、第2空気が混合された第1空気を吹き出す。
【0059】
下流ファン32から吹き出された第1空気は、ヒータ33を通過する。その際、第1空気は、ヒータ33によって加熱され、第1空気の温度が上昇する。このとき、ヒータ33の出力は、温度センサ91の検出結果に基づいて制御装置9によって制御されている。これにより、第1空気の温度が所望の温度に調節される。
【0060】
ヒータ33を通過して所望の温度に調節された第1空気は、前述の如く、流出口17bを介して流路23から恒温室21へ流出する。
【0061】
こうして、筐体1においては、恒温室21と空調室22との間で第1空気が循環する。このとき、空調室22において第1空気の温度が所望の温度に調節される。
【0062】
尚、筐体1内の圧力を一定に維持するために、供給部4によって供給された第2空気に対応する量の第1空気が排気ファン5によって筐体1から排出される。つまり、恒温室21のうち仕切壁17の近傍には排気ファン5が設けられている。そのため、恒温室21のうち棚板25よりも右側の空間において上方へ流れる第1空気の一部は、空調室22へ流入することなく、排気ファン5を介して筐体1からクリーンルームCRへ排出される。
【0063】
以上のように、構成されたインキュベータ100においては、筐体1内の温度分布を均一にすることができる。
【0064】
詳しくは、流れ方向において上流ファン31と下流ファン32との間に供給口43が配置されている。すなわち、流路23の流れ方向において供給口43の上流側と下流側の両方にファン(具体的には、上流ファン31及び下流ファン32)が設けられている。上流ファン31によって、供給口43の近傍に供給される第1空気の流量が増加する。これにより、供給口43の近傍における第1空気と第2空気との混合度が向上する。ここで、「混合度」とは、第1空気と第2空気とがいかに均一に混合されているかという混合の程度を意味する。それに加えて、供給口43の下流に下流ファン32が配置されているので、供給口43の近傍において第2空気が混合された第1空気が下流ファン32によって吸い込まれる。下流ファン32の吸い込みによって、第1空気が攪拌される。これにより、第1空気と第2空気との混合度がさらに向上する。その結果、第1空気の温度が均一になる。温度が均一になった第1空気が恒温室21に供給されることによって、恒温室21内の温度分布を均一化させることができる。
【0065】
さらに、供給部4は、第1ダクト41A及び第2ダクト41Bとを有し、第1ダクト41Aの供給口43と第2ダクト41Bの供給口43とは、流路23において幅方向の異なる位置に配置されている。これにより、第1ダクト41Aの供給口43及び第2ダクト41Bの供給口43から流路23のうち幅方向の異なる位置にそれぞれ第2空気が供給される。流路23の幅方向において第2空気の分布の偏りが軽減される。そのため、供給口43の近傍での第1空気と第2空気との混合比率が幅方向において均一化される。
【0066】
また、空調装置3は、流路23において幅方向の異なる位置に配置された複数の上流ファン31を有している。複数の上流ファン31が設けられていることによって、恒温室21から流路23へ押し込まれる第1空気の流量が増加する。そのため、第1空気と第2空気との混合度が向上する。それに加え、複数の上流ファン31が幅方向の異なる位置に配置されていることによって、恒温室21から流路23へ吸い込まれる第1空気の流量が流路23の幅方向において均一化される。そのため、第1空気と第2空気との混合比率が幅方向において均一化される。
【0067】
さらに、空調装置3は、流路23において幅方向の異なる位置に配置された複数の下流ファン32を有している。複数の下流ファン32が設けられていることによって、下流ファン32によって流路23へ吸い込まれる第1空気及び第2空気の流量が増加すると共に、第1空気と第2空気との撹拌が促進される。そのため、第1空気と第2空気との混合度が向上する。それに加えて、複数の下流ファン32が幅方向の異なる位置に配置されていることによって、第1空気と第2空気との混合度が幅方向において均一化される。
【0068】
また、第1空気を筐体1から排出する排気ファン5が設けられているため、恒温室21の圧力を上昇させることなく一定に維持することができる。そのため、空調室22から恒温室21への第1空気の供給が容易となる。特に、この例では、排気ファン5が恒温室21に設けられているため、恒温室21の第1空気を直接筐体1の外部に排出することができる。そのため、恒温室21の圧力上昇を速やかに抑えることができる。
【0069】
また、流路23には、供給口43よりも下流側に第1空気を加熱するためのヒータ33が設けられている。そのため、流路23に流入した第1空気は、第2空気との混合によって一旦所望の温度未満まで冷却された後、ヒータ33によって所望の温度まで再熱される。このような方法によれば、第1空気の温度の調節幅を拡大することができると共に、第1空気の温度調節を高精度に行うことができる。また、ヒータ33は、伝熱ヒータであり、冷媒回路等を利用するヒータではない。ヒータ33は、圧縮機等の振動を発生する機器を有さない。そのため、インキュベータ100における振動の発生を低減することができる。
【0070】
また、ヒータ33は下流ファン32の下流側に設けられているため、ヒータ33によって加熱された第1空気が下流ファン32を通過することを防止することができる。る。そのため、下流ファン32の温度上昇を抑えることができる。
【0071】
また、筐体1は空気の温度が調節された部屋に収容され、供給部4ではその部屋の空気が第2空気として流路23に供給される。つまり、部屋の空気が第1空気の冷却源として供給される。そのため、第1空気を冷却するための冷凍機が不要となる。これにより、冷凍機に含まれる振動体である圧縮機が存在しなくなるので、振動を抑制することができる。特に、振動によって悪影響を受けやすい例えば細胞培養に用いられるインキュベータ100においては、有効である。
【0072】
また、空気の温度が調節された部屋の空気を流路23に供給する吸気ファン44が設けられている。そのため、吸気ファン44を作動させることで、第1空気の冷却源である第2空気の供給流量を容易に確保することができる。
【0073】
また、空気の温度が調節された部屋はクリーンルームCRであるため、清浄度の高い空気を第2空気として流路23に供給することができる。そのため、第2空気を清浄にするためのフィルタ等が不要となる。特に、細胞培養等に用いられるインキュベータ100においては、恒温室21を一定の清浄度に保つ必要があるため、有効である。
【0074】
インキュベータ100は、インキュベータ100での振動を低減するという、恒温室21の温度分布の均一化とは別の課題も解決する。詳しくは、インキュベータ100は、恒温室21と空調室22とが区画され、恒温室21と空調室22との間で第1空気が循環する筐体1と、空調室22において第1空気の温度を調節する空調装置3とを備え、筐体1は、第1空気よりも低温の第2空気で満たされたクリーンルームCR(部屋)に収容されて使用されるものであり、空調室22には、第1空気が流通する流路23が形成され、空調装置3は、クリーンルームCRの第2空気を流路23に供給する供給口43を有する供給部4と、流路23に配置され、流路23と恒温室21との間で第1空気を循環させる上流ファン31又は下流ファン32(ファン)とを有し、第2空気を第1空気に混合し、第2空気が混合された第1空気を流路23から恒温室21へ流出させる。
【0075】
この構成によれば、恒温室21と空調室22とを第1空気が循環し、空調室22において供給部4によって第1空気に低温の第2空気が供給され、第1空気の温度が調節される。供給部4は、冷凍機等の空調装置を備えていない。供給部4は、クリーンルームCRの空気を第2空気として供給する。クリーンルームCRの空気は、第1空気の温度よりも低温に制御されている。つまり、供給部4は、第2空気を供給するだけで、第2空気の温度を調節しない。その場合であっても、第2空気は、温度管理されたクリーンルームCRの空気であるため、供給部4は、安定した温度の第2空気を供給することができる。それに加えて、供給部4は、冷凍機等を備えていないので、インキュベータ100における振動が低減される。つまり、冷凍機等は、圧縮機等の振動発生源となり得る機器を含んでいる。これらの機器を筐体1の上に配置したり、筐体1が設置された床等に配置したりすると、機器の振動が筐体1に伝わり得る。この振動は、恒温室21内のシャーレ26等の対象物に影響を与え得る。供給部4は、冷凍機等の空調装置を有していないので、筐体1に伝わる振動を抑制することができる。
【0076】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0077】
筐体1において、恒温室21と空調室22とは上下に並んで配置されているが、これに限定されない。例えば、恒温室21と空調室22とは、前後又は左右に並んで配置されていてもよい。さらに、空調室22は、恒温室21の上方から側方に亘って形成されていてもよい。
【0078】
上流ファン31、下流ファン32、ダクト、供給口43、吸気ファン44及び排気ファン5の個数は、一例に過ぎず、前述の例に限定されない。
【0079】
吸気ファン44は、省略されてもよい。その場合、供給口43が流路23に配置されているので、流路23を流通する第1空気のエジェクタ効果によって、クリーンルームCR内の空気がダクトを介して流路23に吸引され得る。
【0080】
例えば、ダクトの上流端は、後壁14から延びていなくてもよい。例えば、ダクトは、天井壁11から延びていてもよい。あるいは、供給部4は、流路23を区画する壁に形成された開口を有し、ダクトを有さなくてもよい。例えば、供給部4は、天井壁11に形成され、筐体1の外部と流路23とを連通させる開口を有していてもよい。前述の例のように第2空気がダクトの供給路42を流路23の幅方向に流通する場合には、供給口43からの第2空気の供給量が流路23の幅方向においてばらつき得る。一方、ダクトが天井壁11から延びている場合、又は、天井壁11に開口が設けられている場合は、第2空気の流れ方向は、筐体1の上下方向になり、流路23の幅方向ではない。供給口43からの第2空気の供給量の、流路23の幅方向におけるばらつきがそれほど大きくない。そのため、供給口43は、流路23の幅方向に延びる1つの開口であってもよい。その場合、吸気ファン44は、天井壁11に配置され得る。
【0081】
排気ファン5は、恒温室21ではなく、空調室22に設けられていてもよい。
【0082】
筐体1が収容される部屋は、クリーンルームCRに限定されない。筐体1が収容される部屋は、空気の温度が調節された部屋であればよい。
【0083】
流路23において、供給口43は、下流ファン32(即ち、流れ方向における下流側)に向かって開口しているが、これに限らず、流れ方向と直交する方向に向かって開口するようにしてもよい。
【0084】
また、流路23の幅方向は、筐体1の前後方向に限定されない。流路23の幅方向は、流路23の流れ方向に直交する方向であれば、任意の方向に設定され得る。例えば、流路23の断面形状が筐体1の前後方向に比べて筐体1の上下方向に長い縦長形状である場合には、流路23の幅方向を筐体1の上下方向としてもよい。その場合、第1ダクト41Aの供給口43と第2ダクト41Bの供給口43とは、流路23において幅方向、即ち、筐体1の上下方向における異なる位置に配置される。2つの上流ファン31も、流路23において筐体1の上下方向における異なる位置に配置され得る。複数の下流ファン32も、流路23において筐体1の上下方向における異なる位置に配置され得る。
【0085】
第2空気が第1空気に混合されることによって第1空気の温度が所望の温度に冷却し得る場合、ヒータ33を省略するようにしてもよい。
【0086】
また、上流ファン31及び下流ファン32の配置は、前述の例に限定されない。上流ファン31及び下流ファン32の配置の変形例を図5,6に示す。図5は、変形例1に係る空調室22を前側から視て示す拡大断面図である。図6は、変形例2に係る空調室22を前側から視て示す拡大断面図である。
【0087】
例えば、図5に示すように、上流ファン31は、空調室22において傾斜した状態で配置されていてもよい。下流ファン32は、空調室22において傾斜した状態で配置されていてもよい。詳しくは、上流ファン31は、空調室22において流入口17aの近傍に配置されている。上流ファン31の回転軸が上下方向に対して傾斜している。上流ファン31は、流入口17aから左斜め上に向かって第1空気を吸い込む。下流ファン32は、空調室22において流出口17bの近傍に配置されている。下流ファン32の回転軸が上下方向に対して傾斜している。流入口17aから左斜め下に向かって第1空気を吹き出す。このような構成によれば、空調室22の空間が狭い場合であっても、比較的大きな上流ファン31又は下流ファン32を配置することができる。尚、図5では、上流ファン31及び下流ファン32の両方が傾斜した状態で配置されているが、これに限定されず、上流ファン31及び下流ファン32の少なくとも一方が傾斜した状態で配置されていてもよい。
【0088】
また、図6に示すように、上流ファン31は、仕切壁17に配置されていてもよい。下流ファン32は、仕切壁17に配置されていてもよい。上流ファン31は、恒温室21に位置し、流入口17aを覆うように仕切壁17に取り付けられている。すなわち、上流ファン31は、仕切壁17(仕切壁17に取り付けられている場合も含む)から供給口43までの間に配置されていればよい。これにより、上流ファン31は、恒温室21の第1空気を流路23へ流入させることができる。下流ファン32は、恒温室21に位置し、流出口17bを覆うように仕切壁17に取り付けられている。すなわち、下流ファン32は、供給口43から仕切壁17(仕切壁17に取り付けられている場合も含む)までの間に配置されていればよい。これにより、下流ファン32は、第1空気を流路23から恒温室21へ流出させることができる。尚、上流ファン31又は下流ファン32の仕切壁17への取り付けは、直接的な取り付けであってもよく、スペーサ又はダクトを介した間接的な取り付けであってもよい。さらに、図6のように、ヒータ33は、流れ方向において下流ファン32の上流に配置されてもよい。この場合、ヒータ33で加熱後の第1空気が下流ファン32に吸い込まれる。これにより、ヒータ33で加熱後の第1空気の温度分布が均一化される。尚、図6では、上流ファン31及び下流ファン32の両方が仕切壁17に配置されているが、これに限定されず、上流ファン31及び下流ファン32の少なくとも一方が仕切壁17に配置されていてもよい。また、上流ファン31及び下流ファン32の少なくとも一方は、仕切壁17に対して傾斜した状態で仕切壁17に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100 インキュベータ
1 筐体
3 空調装置
4 供給部
5 排気ファン
21 恒温室
22 空調室
23 流路
31 上流ファン
32 下流ファン
33 ヒータ
41A 第1ダクト(ダクト)
41B 第2ダクト(ダクト)
43 供給口
44 吸気ファン
CR クリーンルーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6