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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】歩行訓練システム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61H1/02 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021081118
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175016
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晴介
(72)【発明者】
【氏名】戸本 毅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉将
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0143276(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166460(US,A1)
【文献】特開2015-223294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0275043(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0027803(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0136293(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの脚に装着された脚装具と、
前記脚装具に連結された引張部材と、
前記ユーザの歩行動作に応じて、前記引張部材に引張力を与える第1駆動機構と
前記脚装具の連結点と前記第1駆動機構との間において、前記引張部材の高さを保持する保持手段と、
前記ユーザの歩行動作に応じて、前記保持手段における前記引張部材の保持高さを変える第2駆動機構と、を備えた歩行訓練システムであって、
前記引張部材が前記ユーザの側方から前記脚装具に連結されており、前記脚装具には前記引張部材の引張力の方向を変化させる機構が設けられている歩行訓練システム。
【請求項2】
前記脚装具が、前記ユーザの歩行動作に応じて回動する関節機構を有しており、
前記第1駆動機構が前記引張部材を引っ張ることで、前記関節機構を回動する請求項1に記載の歩行訓練システム。
【請求項3】
前記引張部材が前記ユーザの前方から前記脚装具に連結され、前記第1駆動機構が前記引張部材を巻き取ることで、前記引張力を与える請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【請求項4】
前記保持手段が、前記ユーザの上方から吊り下げられた吊り下げ部材を有しており、前記第2駆動機構が、前記吊り下げ部材を巻き取ることで、前記保持高さを高くする請求項1~3のいずれか1項に記載の歩行訓練システム。
【請求項5】
前記保持手段が、上方に延びた支持部材を有しており、
前記第2駆動機構が前記支持部材を伸縮させることで、前記保持高さが変化する請求項1~3のいずれか1項に記載の歩行訓練システム。
【請求項6】
前記脚装具には、複数の前記引張部材が異なる方向から接続されている請求項1~5のいずれか1項に記載の歩行訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行訓練システム、及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歩行訓練装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-118706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような歩行訓練装置では、リハビリ患者などのユーザが脚部に足装具を装着することがある。特許文献1では、足装具が膝関節の伸展運動又は屈曲運動を補助するための駆動力を発生するモータを含んでいる。モータの駆動力を大きくすると、足装具の重量が重くなってしまう。訓練者に掛かる負荷が大きくなるため、訓練を適切に行うことが困難になるという問題点がある。さらに、装着が煩雑になるおそれがある。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、適切に歩行訓練を行うための歩行訓練システム、及びその動作方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態における歩行訓練システムは、ユーザの脚に装着された脚装具と、前記脚装具に連結された引張部材と、前記ユーザの歩行動作に応じて、前記引張部材に引張力を与える第1駆動機構と、前記脚装具の連結点と前記第1駆動機構との間において、前記引張部材の高さを保持する保持手段と、
前記ユーザの歩行動作に応じて、前記保持手段における前記引張部材の保持高さを変える第2駆動機構と、を備えた歩行訓練システム。
【0007】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記脚装具が、前記ユーザの歩行動作に応じて回動する関節機構を有しており、前記第1駆動機構が前記引張部材を引っ張ることで、前記関節機構を回動するようにしてもよい。
【0008】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記引張部材が前記ユーザの前方から前記脚装具に連結され、前記第1駆動機構が前記引張部材を巻き取ることで、前記引張力を与える請求項1、又は2に記載の歩行訓練システム。
【0009】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記保持手段が、前記ユーザの上方から吊り下げられた吊り下げ部材を有しており、前記第2駆動機構が、前記吊り下げ部材を巻き取ることで、前記保持高さを高くするようにしてもよい。
【0010】
前記保持手段が、上方に延びた支持部材を有しており、前記第2駆動機構が前記支持部材を伸縮させることで、前記保持高さが変化するようにしてもよい。
【0011】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記脚装具には、複数の前記引張部材が異なる方向から接続されていてもよい。
【0012】
上記の歩行訓練システムにおいて、前記引張部材が前記ユーザの側方から前記脚装具に連結されており、前記脚装具には前記引張部材の引張力の方向を変化させる機構が設けられていてもよい。
【0013】
本実施の形態にかかる歩行訓練システムの動作方法は、ユーザの脚に装着された脚装具と、前記脚装具に連結された引張部材と、前記引張部材に引張力を与える第1駆動機構と、前記脚装具の連結点と前記第1駆動機構との間において、前記引張部材の高さを保持する保持手段と、前記保持手段における前記引張部材の保持高さを変える第2駆動機構と、を備えた歩行訓練システムの動作方法であって、前記動作方法は、前記ユーザの歩行動作を検出し、前記ユーザの歩行動作に応じて、前記第1駆動機構、及び第2駆動機構を制御する。
【0014】
上記の歩行訓練システムの動作方法において、前記脚装具が、前記ユーザの歩行動作に応じて回動する関節機構を有しており、前記第1駆動機構が前記引張部材を引っ張ることで、前記関節機構を回動するようにしてもよい。
【0015】
上記の歩行訓練システムの動作方法において、前記引張部材が前記ユーザの前方から前記脚装具に連結され、前記第1駆動機構が前記引張部材を巻き取ることで、前記引張力を与えるようにしてもよい。
【0016】
前記保持手段が、前記ユーザの上方から吊り下げられた吊り下げ部材を有しており、前記第2駆動機構が、前記吊り下げ部材を巻き取ることで、前記保持高さを高くするようにしてもよい。
【0017】
上記の歩行訓練システムの動作方法において、前記保持手段が、上方に延びた支持部材を有しており、前記第2駆動機構が前記支持部材を伸縮させることで、前記保持高さが変化すようにしてもよい。
【0018】
上記の歩行訓練システムの動作方法において、前記脚装具には、複数の前記引張部材が異なる方向から接続されていてもよい。
【0019】
上記の歩行訓練システムの動作方法において、前記引張部材が前記ユーザの側方から前記脚装具に連結されており、前記脚装具には前記引張部材の引張力の方向を変化させる機構が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示により、適切に歩行訓練を行うための歩行訓練システム、及びその動作方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態にかかる歩行訓練システム1の概略斜視図である。
図2】脚装具の構成を示す側面図である。
図3】脚装具の構成を示す正面図である。
図4】脚装具の内部構成を示す図である
図5】歩行訓練システムの制御系を示す制御ブロック図である。
図6】脚装具を駆動するための主要構成を示す模式図である。
図7】膝関節の軌跡を示す模式図である。
図8】変形例1にかかる歩行訓練システムの主要構成を示す模式図である。
図9】変形例2にかかる歩行訓練システムの主要構成を示す模式図である。
図10】変形例3にかかる歩行訓練システムの主要構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0023】
実施の形態1.
以下、図面を参照して実施形態1について説明する。
(システム構成)
図1は、実施形態1にかかるリハビリ支援システムの一構成例を示す全体概念図である。本実施形態にかかるリハビリ支援システム(歩行訓練システム1)は、主に、歩行訓練装置100と、脚装具120によって構成される。以下の説明では、適宜XYZ3次元直交座標系を用いて説明を行う。X方向が訓練者900の歩行方向であり、Y方向が訓練者の左右方向であり、Z方向が鉛直上下方向である。つまり、歩行訓練中の訓練者900を基準として、+X方向が前方であり、-X方向が後方となる。同様に、+Y方向が左方向、-Y方向が右方向、+Z方向が上方向、-Z方向が下方向となる。
【0024】
歩行訓練装置100は、訓練者(ユーザ)900のリハビリ(リハビリテーション)を支援するリハビリ支援装置の一具体例である。歩行訓練装置100は、一方の脚に麻痺を患う片麻痺患者である訓練者900が、訓練スタッフ901の指導に従って歩行訓練を行うための装置である。ここで、訓練スタッフ901は、療法士(理学療法士)又は医師とすることができ、訓練者の訓練を指導又は介助などにより補助することから、訓練指導者、訓練介助者、訓練補助者などと称することもできる。
【0025】
歩行訓練装置100は、主に、全体の骨格を成すフレーム130に取り付けられた制御盤133と、訓練者900が歩行するトレッドミル131と、訓練者900の麻痺側の脚部である患脚に装着する脚装具120と、を備える。図1では、脚装具120は、訓練者900の右脚に装着されている。
【0026】
フレーム130は、床面に設置されるトレッドミル131上に立設されている。トレッドミル131は、不図示のモータによりリング状のベルト132を回転させる。トレッドミル131は、訓練者900の歩行を促す装置であり、歩行訓練を行う訓練者900は、ベルト132に乗り、ベルト132の移動に合わせて歩行動作を試みる。なお、訓練スタッフ901は、例えば図1に示すように訓練者900の背後のベルト132上に立って一緒に歩行動作を行うこともできるが、通常、ベルト132を跨いだ状態で立つなど、訓練者900の介助を行い易い状態に居ることが好ましい。
【0027】
フレーム130は、モータやセンサの制御を行う全体制御部210を収容する制御盤133や、訓練の進捗状況等を訓練者900へ提示する。例えば液晶パネルである訓練用モニタ138などを支持している。また、フレーム130は、訓練者900の頭上部前方付近で前側引張部135を、頭上部付近でハーネス引張部112を、頭上部後方付近で後側引張部137を、それぞれ支持している。また、フレーム130は、訓練者900が掴むための手摺り130aを含む。
【0028】
手摺り130aは、訓練者900の左右両側に配置されている。それぞれの手摺り130aは、訓練者900の歩行方向と平行な方向に配置されている。手摺り130aは、上下位置、及び左右位置が調整可能となっている。つまり、手摺り130aは、その高さ及び幅を変更する機構を含むことができる。さらに、手摺り130aは、例えば歩行方向の前方側と後方側とで高さを異ならせるように調整することで、その傾斜角度を変更できるように構成することもできる。例えば、手摺り130aは、歩行方向に沿って徐々に高くなるような傾斜角度を付すことができる。
【0029】
また、手摺り130aには、訓練者900から受ける荷重を検出する手摺りセンサ218が設けられている。例えば、手摺りセンサ218は、電極がマトリックス状に配置された抵抗変化検出型の荷重検出シートとすることができる。また、手摺りセンサ218は、3軸の加速度センサ(x,y,z)と3軸のジャイロセンサ(roll,pitch,yaw)とを複合させた6軸センサとすることもできる。但し、手摺りセンサ218の種類や設置位置は問わない。
【0030】
カメラ140は、訓練者900の全身を観察するための撮像部としての機能を担う。カメラ140は、訓練用モニタ138の近傍に、訓練者と相対するように設置されている。カメラ140は、訓練中の訓練者900の静止画や動画を撮影する。カメラ140は、訓練者900の全身を捉えられる程度の画角となるような、レンズと撮像素子のセットを含む。撮像素子は、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサであり、結像面に結像した光学像を画像信号に変換する。
【0031】
前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、脚装具120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0032】
前側ワイヤ134は、一端が前側引張部135の巻取機構に連結されており、他端が脚装具120に連結されている。前側引張部135の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて前側ワイヤ134を巻き取ったり繰り出したりする。同様に、後側ワイヤ136は、一端が後側引張部137の巻取機構に連結されており、他端が脚装具120に連結されている。後側引張部137の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて後側ワイヤ136を巻き取ったり繰り出したりする。このような前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、脚装具120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0033】
例えば、訓練スタッフ901は、オペレータとして、重度の麻痺を抱える訓練者に対しては、アシストするレベルを大きく設定する。アシストするレベルが大きく設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、比較的大きな力で前側ワイヤ134を巻き取る。訓練が進み、アシストが必要でなくなったら、訓練スタッフ901は、アシストするレベルを最小に設定する。アシストするレベルが最小に設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、脚装具120の自重をキャンセルするだけの力で前側ワイヤ134を巻き取る。
【0034】
歩行訓練装置100は、装具110、ハーネスワイヤ111、及びハーネス引張部112を主な構成要素とする、安全装置としての転倒防止ハーネス装置を備える。装具110は、訓練者900の腹部に巻き付けられるベルトであり、例えば面ファスナによって腰部に固定される。装具110は、吊具であるハーネスワイヤ111の一端を連結する連結フック110aを備え、ハンガーベルトと称することもできる。訓練者900は、連結フック110aが後背部に位置するように、装具110を装着する。
【0035】
ハーネスワイヤ111は、一端が装具110の連結フック110aに連結されており、他端がハーネス引張部112の巻取機構に連結されている。ハーネス引張部112の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、ハーネスワイヤ111を巻き取ったり繰り出したりする。このような構成により、転倒防止ハーネス装置は、訓練者900が転倒しそうになった場合に、その動きを検知した全体制御部210の指示に従ってハーネスワイヤ111を巻き取り、装具110により訓練者900の上体を支えて、訓練者900の転倒を防ぐ。
【0036】
装具110は、訓練者900の姿勢を検出するための姿勢センサ217を備える。姿勢センサ217は、例えばジャイロセンサと加速度センサを組み合わせたものであり、装具110が装着された腹部の重力方向に対する傾斜角を出力する。
【0037】
管理用モニタ139は、フレーム130に取り付けられており、主に訓練スタッフ901が監視及び操作するための表示入力装置である。管理用モニタ139は、例えば液晶パネルであり、その表面にはタッチパネルが設けられている。管理用モニタ139は、訓練設定に関する各種メニュー項目や、訓練時における各種パラメータ値、訓練結果などを表示する。また、管理用モニタ139の近傍には、非常停止ボタン232が設けられている。訓練スタッフ901が非常停止ボタン232を押すことで、歩行訓練装置100が非常停止する。
【0038】
脚装具120は、訓練者900の患脚に装着され、患脚の膝関節における伸展及び屈曲の負荷を軽減することにより訓練者900の歩行を補助する。脚装具120は、足裏荷重を計測するセンサ等を備え、運脚に関する各種データを全体制御部210へ出力してもよい。脚装具120の詳細については後述する。
【0039】
脚装具120には、ワイヤ161が接続されている。ワイヤ161は、第1駆動機構162に接続されている。第1駆動機構162は、訓練者900の歩行動作に応じて、ワイヤ161に引張力を与える。第1駆動機構162は、ワイヤ161に引張力を与えるためのモータや巻き取り機構を有している。つまり、第1駆動機構162がモータを駆動することで、ワイヤ161の巻き取り又は引き出しが行われる。ワイヤ161の一端が脚装具120に取り付けられ、他端が第1駆動機構162に取り付けられている。ワイヤ161は訓練者900の膝高さ程度の高さで引き回されている。ワイヤ161は水平方向に引き回されている。
【0040】
第1駆動機構162は訓練者900の前方に配置されている。例えば、第1駆動機構162は、トレッドミル131の前方にある制御盤133内に収容されている。ワイヤ161は、訓練者900の前方から脚装具120に接続されている。第1駆動機構162がワイヤ161を巻き取ることで、脚装具120に引張力を与えることができる。第1駆動機構162がワイヤ161を引き出すことで、脚装具120に引張力を弱くすることができる。これにより脚装具120の関節部分が駆動する。換言すると、第1駆動機構162は、脚装具120の関節部分の角度が所望の角度になるように、ワイヤ161を駆動する。
【0041】
ワイヤ161の途中には、保持ベルト171が接続されている。保持ベルト171は歩行動作中の訓練者900と干渉しない位置に配置されている。例えば、保持ベルト171は訓練者900の前方に配置されている。保持ベルト171とワイヤ161とは接続部173を介して接続されている。例えば保持ベルト171をワイヤ161に巻き付けることで、保持ベルト171の下端がワイヤ161に取り付けられている。接続部173は、保持ベルト171とワイヤ161とを接続する接続位置となる。ワイヤ161における保持ベルト171の接続位置は固定されていてもよい。保持ベルト171は、ワイヤ161の高さを保持する保持部となる。接続部173は、リングやフックなどの連結部材を有していてもよい。つまり、保持ベルト171がワイヤ161の高さを保持する。
【0042】
さらに、保持ベルト171は、第2駆動機構172に接続されている。第2駆動機構172は、訓練者900の上方において、フレーム130に固定されている。第2駆動機構172は、保持ベルト171に引張力を与えるためのモータや巻き取り機構を有している。保持ベルト171の上端が接続部173に取り付けられ、他端が第2駆動機構172に取り付けられている。保持ベルト171は、上方のフレーム130から、接続部173まで吊り下げられている。保持ベルト171は接続部173で、ワイヤ161と接続される。
【0043】
第2駆動機構172が保持ベルト171を巻き取ること又は引き出すことで、接続部173が上下に移動する。したがって、ワイヤ161の高さが変化する。第2駆動機構172は、ワイヤ161の保持高さを変える。つまり、ワイヤ161が所望の高さになるように、第2駆動機構172は保持ベルト171を駆動する。これにより、ワイヤ161の引張方向を変えることができる。
【0044】
全体制御部210は、訓練設定に関する設定パラメータ、訓練結果として各種センサから出力された運脚に関する各種データなどを含みうるリハビリデータを生成する。このリハビリデータには、訓練スタッフ901又はその経験年数や熟練度等を示すデータ、訓練者900の症状、歩行能力、回復度等を示すデータ、センサ等から出力された各種データなどを含むことができる。全体制御部210は、各駆動部を制御するための制御信号を生成する。全体制御部210は、各種センサからの検出信号に基づいて、各駆動部を制御する。これにより、訓練者900の歩行動作に応じて、適切に引張力や巻き取り長さなどを制御することができる。
【0045】
次に、脚装具120について、図2図4を用いて説明する。図2図4は、脚装具120の一構成例を示す図である。図2は、脚装具120の側面図、図3は、正面図である。図4は、関節機構123の内部構成を示す断面図を示している
【0046】
脚装具120は、上腿フレーム121と、下腿フレーム122と、関節機構123とを備えている。上腿フレーム121は、訓練者900の患脚の上腿に装着される。例えば、バンド、面ファスナ、ベルト(不図示)などを用いて、上腿フレーム121が上腿に固定される。つまり、上腿フレーム121から延びるバンドなどを訓練者900の上腿に巻き付けることで、上腿フレーム121が上腿に沿って配置される。上腿フレーム121にはワイヤ161を取り付けるための挿入口1211が設けられている。挿入口1211は、脚装具120に対するワイヤ161の連結点となる。
【0047】
下腿フレーム122は、訓練者900の患脚の下腿に装着される。例えば、バンド、面ファスナ、ベルト(不図示)などを用いて、下腿フレーム122が下腿に固定される。つまり、下腿フレーム122から延びるバンドなどを訓練者900の下腿に巻き付けることで、下腿フレーム122が下腿に沿って配置される。
【0048】
下腿フレーム122は、関節機構123を介して、上腿フレーム121に連結されている。関節機構123は、上腿フレーム121に対して下腿フレーム122を回動自在に連結している。関節機構123は、患脚の膝関節に対応している。関節機構123は上腿フレーム121と下腿フレーム122とを回動可能に連結している。関節機構123はヒンジや軸受けなどを有していてもよい。
【0049】
関節機構123は、訓練者900の膝関節の動作に応じて回動する。関節機構123は、膝関節の伸展方向又は屈曲方向に上腿フレーム121と下腿フレーム122との成す角度を変化させる。つまり、上腿フレーム121に対して、下腿フレーム122が関節機構123の関節軸Ha周りに回動する。患脚の膝関節の側方に配置された状態で、訓練者が脚装具120を装着する。上腿フレーム121と下腿フレーム122が関節軸Ha周りに回動する。これにより、歩行訓練時において、脚装具120が膝関節の動作を補助することができる。なお、上腿フレーム121と下腿フレーム122との可動範囲はストッパなどで機械的に制限されていてもよい。
【0050】
図3に示すように、関節機構123には、付勢部材1235が設けられている。付勢部材1235は、トーションスプリングなどであり、膝関節が伸展するように、上腿フレーム121と下腿フレーム122との間に付勢力を発生する。つまり、上腿フレーム121と下腿フレーム122とが平行になるように付勢部材1235が付勢力を発生させている。
【0051】
図2図4に示すように、関節機構123には、ワイヤ161が取り付けられている。例えば、ワイヤ161は、上腿フレーム121の挿入口1211から関節機構123の内部に挿入されている。ワイヤ161の先端が関節機構123の固定端1237に固定されている。また、挿入口1211において、ワイヤ161のアウター1610が上腿フレーム121に固定されている。
【0052】
第1駆動機構162がワイヤ161を引っ張ることで、膝関節を屈曲する方向に関節機構123が回動する。具体的には、図2などに示すように、ワイヤ161を直線矢印の方向に引っ張ることで、固定端1237から挿入口1211までのワイヤ161の長さが短くなる。これにより、固定端1237が挿入口1211に近づくため、膝関節を屈曲する方向に関節機構123が回動する。また、ワイヤ161の引張を停止すると、付勢部材1235の付勢力により関節機構123が伸展する方向に回動する。訓練者900の歩行動作に応じて、脚装具120は膝関節の伸展、屈曲を補助することができる。
【0053】
このように、脚装具120の外側からのワイヤ161を用いることで、関節機構123の関節角度を変えることができる。つまり、ワイヤ161の引張力を高くすることで、膝関節が屈曲する方向に関節機構123が駆動される。また、ワイヤ161の引張力を弱くすると、付勢部材1235の付勢力により膝関節が伸展する方向に、関節機構123が駆動される。よって、全体制御部は、訓練者900の膝関節の動作に応じて、図1に示した第1駆動機構162がワイヤ161に与える引張力を制御する。
【0054】
よって、外部から脚装具120に接続されるワイヤ161の引張力によって、膝関節の動作をサポートすることができる。換言すると、脚装具120の駆動力を与えるためのモータ、アクチュエータを脚装具120の外部に配置することができる。このようにすることで、脚装具に対して、モータなどの電気機器を外部に配置することができる。例えば、脚装具120は、モータやそれを駆動するための電源が不要となる。よって、脚装具120の軽量化、小型化を図ることができる。なお、関節機構123には、上腿フレーム121と下腿フレーム122との成す角度を検出する角度センサが設けられていても良い。
【0055】
(制御系)
次に、図5を参照しながら、歩行訓練装置100のシステム構成例について説明する。図5は、歩行訓練装置100のシステム構成例を示すブロック図である。図5に示すように、歩行訓練装置100は、全体制御部210、トレッドミル駆動部211、操作受付部212、表示制御部213、及び引張駆動部214を備えることができる。また、歩行訓練装置100は、ハーネス駆動部215、画像処理部216、姿勢センサ217、手摺りセンサ218、通信接続IF(インターフェース)219、入出力ユニット231を備えることができる。歩行訓練装置100は、関節駆動部221、荷重センサ222、角度センサ223、補助駆動部224を備えている。
【0056】
全体制御部210は、例えばMPU(Micro Processing Unit)であり、システムメモリから読み込んだ制御プログラムを実行することにより、装置全体の制御を実行する。
【0057】
トレッドミル駆動部211は、ベルト132を回転させるモータとその駆動回路を含む。全体制御部210は、トレッドミル駆動部211へ駆動信号を送ることにより、ベルト132の回転制御を実行する。全体制御部210は、例えば、訓練スタッフ901によって設定された歩行速度に応じて、ベルト132の回転速度を調整する。
【0058】
操作受付部212は、訓練スタッフ901からの入力操作を受け付けて、操作信号を全体制御部210へ送信する。訓練スタッフ901は、操作受付部212を構成する、装置に設けられた操作ボタンや管理用モニタ139に重畳されたタッチパネル、付属するリモコン等を操作する。この操作により、電源のオン/オフやトレーニングの開始の指示を与えることや、設定に関する数値の入力やメニュー項目の選択を行うことができる。なお、操作受付部212は、訓練者900からの入力操作を受け付けることもできる。
【0059】
表示制御部213は、全体制御部210からの表示信号を受け取って表示画像を生成し、訓練用モニタ138又は管理用モニタ139に表示する。表示制御部213は、表示信号に従って、トレーニングの進捗を示す画像や、カメラ140で撮影したリアルタイム映像を生成する。
【0060】
引張駆動部214は、前側引張部135を構成する、前側ワイヤ134を引張するためのモータとその駆動回路と、後側引張部137を構成する、後側ワイヤ136を引張するためのモータとその駆動回路と、を含む。全体制御部210は、引張駆動部214へ駆動信号を送ることにより、前側ワイヤ134の巻き取りと後側ワイヤ136の巻き取りをそれぞれ制御する。また、巻き取り動作に限らず、モータの駆動トルクを制御することにより、各ワイヤの引張力を制御する。全体制御部210は、例えば、荷重センサ222の検出結果から患脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わるタイミングを同定し、そのタイミングに同期して各ワイヤの引張力を増減させることにより、患脚の振出し動作をアシストする。
【0061】
ハーネス駆動部215は、ハーネス引張部112を構成する、ハーネスワイヤ111を引張するためのモータとその駆動回路を含む。全体制御部210は、ハーネス駆動部215へ駆動信号を送ることにより、ハーネスワイヤ111の巻き取りと、ハーネスワイヤ111の引張力を制御する。全体制御部210は、例えば、訓練者900の転倒を予測した場合に、ハーネスワイヤ111を一定量巻き取って、訓練者の転倒を防止する。
【0062】
画像処理部216は、カメラ140に接続されており、カメラ140から画像信号を受け取ることができる。画像処理部216は、全体制御部210からの指示に従って、カメラ140から画像信号を受け取り、受け取った画像信号を画像処理して画像データを生成する。また、画像処理部216は、全体制御部210からの指示に従って、カメラ140から受け取った画像信号に画像処理を施して、特定の画像解析を実行することもできる。例えば、画像処理部216は、トレッドミル131に接する患脚の足の位置(立脚位置)を、画像解析により検出する。具体的には、例えば、足の先端近傍の画像領域を抽出し、当該先端部と重なるベルト132上に描かれた識別マーカを解析することにより、立脚位置を演算する。
【0063】
姿勢センサ217は、上述の通り訓練者900の腹部の重力方向に対する傾斜角を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。全体制御部210は、姿勢センサ217からの検出信号を用いて、訓練者900の姿勢、具体的には体幹の傾斜角を演算する。なお、全体制御部210と姿勢センサ217は、有線で接続されていても良いし、近距離無線通信で接続されていても良い。
【0064】
手摺りセンサ218は、手摺り130aに加わる荷重を検出する。つまり、訓練者900が両脚で自身の体重を支えきれない分の荷重が手摺り130aに加わる。手摺りセンサ218は、この荷重を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。
【0065】
全体制御部210は、制御に関わる様々な演算や制御を実行する機能実行部としての役割も担う。全体制御部210は、各種センサから取得したデータを用いて、各駆動部を制御する。
【0066】
関節駆動部221は、第1駆動機構162(図1参照)の駆動制御回路を含む。関節駆動部221は、全体制御部210からの制御信号に応じて、巻取りモータの駆動信号を生成する。関節駆動部221が、第1駆動機構162に駆動信号を送ることにより、第1駆動機構162がワイヤ161の巻き取り又は引き出しを行う。これにより、上腿フレーム121と下腿フレーム122が関節軸H周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。このような動作により、膝の伸展動作及び屈曲動作をアシストしたり、膝折れを防止したりする。関節駆動部221は、歩行動作に応じて、第1駆動機構162を駆動する。訓練者900の膝関節動作に応じて、脚装具120の関節機構123を制御することができる。
【0067】
荷重センサ222は、上述の通り訓練者900の足裏が受ける垂直荷重の大きさと分布を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。荷重センサ222は、トレッドミル131に設けられていても良い。脚装具120が訓練者900の足平に装着される足平フレームを有する場合、足平フレームに荷重センサ222が設けられていても良い。また、荷重センサ222は、訓練者900の靴に取り付けられていてもよい。全体制御部210は、荷重センサ222からの検出信号に基づいて、遊脚/立脚の状態判別や切替り推定等を行う。
【0068】
角度センサ223は、上述の通り関節軸H周りの上腿フレーム121と下腿フレーム122の成す角を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。全体制御部210は、この検出信号を受け取って膝関節の開き角を演算する。なお、角度センサ223は、脚装具120に設けられていてもよく、脚装具120以外に設けられていても良い。例えば、訓練者900を側方から撮像するカメラが角度センサ223として用いられても良い。この場合、画像処理部216等が画像解析を行うことで、膝関節の開き角を求めることができる。
【0069】
補助駆動部224は、第2駆動機構172(図1参照)の駆動制御回路を含む。補助駆動部224は、全体制御部210からの制御信号に応じて、巻取りモータの駆動信号を生成する。補助駆動部224が、第2駆動機構172に駆動信号を送ることにより、第2駆動機構172が保持ベルト171の巻き取り又は引き出しを行う。これにより、ワイヤ161の高さを制御することができる。
【0070】
補助駆動部224は、歩行動作に応じて、第2駆動機構172を駆動する。例えば、歩行動作に応じて、訓練者900の膝高さが変動する。補助駆動部224は、膝高さの変動に追従するようにワイヤ161の高さを変化させる。換言すると、訓練者900の膝高さが上昇するタイミングでは、ワイヤ161の保持高さを高くする。反対に訓練者900の膝高さが下降するタイミングでは、ワイヤ161の保持高さを低くする。このように、訓練者900の膝関節軌道に応じて、ワイヤ161の高さを制御することができる。
【0071】
全体制御部210は、訓練者900の歩行動作を検出する。全体制御部210は、角度センサ223,荷重センサ222、姿勢センサ217などの各種センサの歩行動作を検出する。そして、訓練者900の歩行動作に応じて、第1駆動機構162、及び第2駆動機構172を制御する。全体制御部210は、各種センサからの検出信号に応じて、歩行動作における遊脚期と立脚期の切替タイミング、離地タイミング、着地タイミング等を検出する。歩行動作のフェーズやタイミングを検出するためのセンサは、公知の手法を用いることができるため、特に限定されるものではない。
【0072】
全体制御部210は、歩行動作に応じて、第1駆動機構162、及び第2駆動機構172を制御する。全体制御部210は、歩行動作のフェーズに応じて、各駆動部に対する制御信号を生成する。全体制御部210は、補助駆動部224、関節駆動部221、引張駆動部214,ハーネス駆動部215に制御信号を出力する。補助駆動部224、関節駆動部221、引張駆動部214,ハーネス駆動部215がモータなどを駆動する。例えば、歩行動作のフェーズやタイミングに応じた駆動パターンを登録しておけばよい。そして、駆動パターンに応じた制御信号を生成する。また、駆動パターンには、訓練者900の身長、体重、脚長さ、上腿長さ、下腿長さ等の身体情報が反映されていても良い。
【0073】
図6を用いて、脚装具120の駆動について説明する。図6は歩行訓練システムを模式的に示す側面図である。なお、図6では、図1に示す構成が適宜簡略化されている。具体的には、図6は、脚装具120とその駆動に関連する構成を示している。例えば、図6では、ハーネスワイヤ111、ハーネス引張部112、手摺り130a、前側ワイヤ134、前側引張部135、後側ワイヤ136、後側引張部137等は省略されている。
【0074】
脚装具120が訓練者900の右脚に装着されている。具体的には、上腿フレーム121と下腿フレーム122とが右脚の上腿と下腿とにそれぞれバンド128で取付けられている。すなわち、バンド128を上腿に巻き付けることで、上腿フレーム121が上腿に沿って固定される。同様に、バンド128を上腿に巻き付けることで、上腿フレーム121が下腿に沿って固定される。上腿フレーム121と下腿フレーム122とは、関節機構123によって回動可能に連結されている。
【0075】
さらに下腿フレーム122の下端には、足平フレーム126が取り付けられている。訓練者900は、右足を足平フレーム126の上に載せる。足平フレーム126がトレッドミル131のベルト132と接触する。足平フレーム126には上述の荷重センサ222が設けられていてもよい。もちろん、訓練者900の患脚が左脚の場合、訓練者900は、左脚に脚装具120を装着しても良い。
【0076】
そして、関節機構123にワイヤ161が接続されている。ワイヤ161は第1駆動機構162と関節機構123とを接続している。第1駆動機構162がワイヤ161を巻き取ることで、ワイヤ161に引張力が与えられる。これにより、関節機構123の角度が変化する。よって、歩行動作に応じて、脚装具120が膝関節の動作を補助することができる。
【0077】
第1駆動機構162が脚装具120の外部に配置されている。第1駆動機構162が脚装具120の外部から膝関節の動作を補助するための力を与えることができる。これにより、脚装具120にモータや電源等を内蔵させる必要がなくなる。よって、脚装具120の軽量化、小型化を図ることができる。
【0078】
さらに、保持ベルト171を歩行動作中の訓練者900の邪魔にならないように配置することが可能である。例えば、保持ベルト171は、訓練者900よりも前方に配置される。第1駆動機構162や第2駆動機構172も訓練者900の邪魔にならないように配置することができる。例えば、第2駆動機構172は、訓練者900の上方に配置され、第1駆動機構162は、訓練者900や保持ベルト171よりも前方に配置される。よって、訓練者900が各駆動機構などと干渉することなく、歩行訓練を行うことができる。
【0079】
また、関節機構123の駆動トルクを大きくするためにはワイヤ161を太くする。例えば、関節機構123に十分な引張力を与えるために、ワイヤ161の直径を15mmとする。ワイヤ161の重量が大きくなると、ワイヤ161が曲りにくくなる。訓練者900の膝関節の動くと、ワイヤ161により訓練者900の動きを阻害する抵抗を与えてしまう。第2駆動機構172が保持ベルト171の保持高さを変えているため、ワイヤ161が訓練者900の動きを阻害することを防ぐことができる。また関節機構123から地面にむけて、ワイヤ161に急激な曲げが発生する恐れがある。本実施の形態のように、保持ベルト171がワイヤ161の高さを保持することで、ワイヤ161の急激な曲げを防ぐことができる。
【0080】
第1駆動機構162は、トレッドミル131よりも前方により配置されると、ワイヤ161の長さが長くなる。この場合、ワイヤ161の自重による撓みにより、地面と接触するおそれがある。しかしながら、保持ベルト171がワイヤ161の高さを保持するため、ワイヤ161が地面と接触することを防ぐことができる。
【0081】
また、関節機構123を不要な引張力を与えないように、ワイヤ161と脚装具120との連結位置から、所定の距離に保つことが好ましい。ワイヤ161は、上腿に対して直角に引き回されていることが好ましい。この場合、ワイヤ161や接続部173が左右方向に自由度を持つ構造とすることが好ましい。つまり、歩行動作に応じてワイヤ161や接続部173を左右方向に移動させる機構を設けても良い。
【0082】
ワイヤ161は訓練者900の前方から脚装具120に接続されていることが好ましい。このようにすることで、訓練スタッフ901や他の構成と干渉することを防ぐことができる。この配置により、後方から訓練スタッフ901が訓練者900を介助することができる。また、訓練者900の側方に手摺り130aがある場合でも手摺り130aと干渉せずにワイヤ161を引き回すことができる。
【0083】
ワイヤ161を前方から引き回すことで、ワイヤ161の引き回し方向を水平方向と平行または近い方向とすることができる。ワイヤ161を水平方向から引き回すことで、訓練者900の腕と干渉することを防ぐことができる。上腿に直交する方向から引張力を与えることが好ましい。ワイヤ161を水平前方から引き回して、脚装具120に接続するように配置とする。第1駆動機構162を訓練者900の正面前方の膝高さ近傍に配置することが好ましい。
【0084】
図7は、訓練者900の膝関節の軌跡を計算した結果を示す図である。模式的に示す側面図である。図7では、訓練者の股関節から膝関節までの距離が50cmとしている。したがって、膝関節の軌跡Tが中心Oで、半径50cmの円弧となっている。つまり、歩行動作において、股関節に対する膝関節の相対位置が半径50cmの円弧の軌道に沿って変化している。
【0085】
ワイヤ161の曲げの最小半径を100cmとし、残りの部分を水平方向に延ばす。したがって、ワイヤ161は、直線部161aと円弧部161bに分けられる。円弧部161bは、ワイヤ161の先端側、つまり脚装具120側の部分であり、最小半径100cmの円弧となる。直線部161aは、第1駆動機構162(図7では不図示)側に設けられた部分であり、X方向と平行になる。
【0086】
この時、ワイヤ161は上腿と直角に接続されていることが望ましいため、膝関節の軌跡Tからワイヤ161の円弧部161bを接線でつなぐ。ワイヤ161と脚装具120の連結部Cにおいて、円弧部161bと軌跡Tが滑らかに接続される。この場合の接続部173の最適な保持高さの軌跡を軌跡Hとして示す。したがって、第2駆動機構172が軌跡Hに追従するように、接続部173の高さを変化させればよい。
【0087】
上記の説明では、脚装具120の関節機構123に引張力を与える引張部材として、ワイヤ161を用いたが、引張部材は、ワイヤ161に限られるものではない。引張部材は、ワイヤ161に限らず、ロープ、紐、バンド、ベルトなどであってもよい。引張部材の材料は金属、樹脂、繊維等とすることができる。引張部材が自重等により撓む材質であっても、保持ベルト171が保持高さを保持することができる。
【0088】
同様に、ワイヤ161の高さを保持する保持手段は、保持ベルト171に限られるものではない。保持手段は、ベルトに限らず、ワイヤ、ロープ、紐、バンドなどであってもよい。保持手段の材料は金属、樹脂、繊維等とすることができる。保持手段は、上方から吊り下げられた吊り下げ部材で有ることが好ましい。この構成では、モータ及び巻取り機構などによって、吊り下げ部材を上方に引っ張る引張力を与えることができる。第2駆動機構172が、吊り下げ部材を巻き取ることで、上方に引っ張る引張力を与えている。これにより、簡素な構成で保持高さを制御することができる。さらに、歩行動作に応じて、保持ベルト171のXY位置を変えるようしてもよい。
【0089】
また、脚装具120が補助する関節は膝関節に限られるものではない。例えば、脚装具120が股関節、足首関節(足関節)の関節動作を補助しても良い。脚装具120は、2つ以上の関節動作を補助しても良い。この場合、補助する関節の数に応じて、ワイヤ161や駆動機構を2つ以上設ければ良い。
【0090】
変形例1.
変形例1にかかるシステム構成について、図8を用いて説明する。変形例1では、ワイヤ161の保持高さを保持する保持手段が異なっている。ここでは、支持部材175が、ワイヤ161の高さを保持している。
【0091】
支持部材175は、床面から上方に延びている。支持部材175は伸縮可能に設けられている。支持部材175の上端がワイヤ161との接続部173になっている。例えば、支持部材175の上面にワイヤ161が固定されている。第2駆動機構172は、支持部材175を伸縮するためのモータやシリンダを有している。第2駆動機構172が支持部材175を伸縮させることで、接続部173の高さが変化する。つまり、支持部材175が伸縮することで、ワイヤ161の保持高さが変化する。このような構成であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0092】
変形例2.
変形例2にかかるシステム構成について、図9を用いて説明する。変形例2では、図6の構成に加えて、ワイヤ166、第3駆動機構182、接続部183、保持ベルト184、第4駆動機構185が設けられている。つまり、脚装具120に2本のワイヤ161、ワイヤ166が接続されている。ワイヤ161に関する構成は、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明を省略する。つまり、第1駆動機構162がワイヤ161に引張力を与えることで、膝関節が屈曲する方向に関節機構123が動作する。
【0093】
ワイヤ166は、後方から脚装具120に接続されている。ワイヤ166は第3駆動機構182に接続されている。第3駆動機構182は、トレッドミル131の後方に配置されている。第3駆動機構182は、第1駆動機構162と同様に、モータや巻取り機構を備えている。
【0094】
第3駆動機構182がワイヤ166を巻き取ることで、脚装具120に引張力を与えることができる。第3駆動機構182がワイヤ166を引き出すことで、脚装具120に引張力を弱くすることができる。これにより脚装具120の関節部分が駆動する。換言すると、第3駆動機構182は、脚装具120の関節部分の角度が所望の角度になるように、ワイヤ166を駆動する。
【0095】
接続部183において、ワイヤ166が保持ベルト184に接続されている。つまり、接続部183を介して、保持ベルト184がワイヤ166を保持している。保持ベルト184は、ワイヤ166が所定の高さになるように保持する。
【0096】
保持ベルト184は、第4駆動機構185に取り付けられている。第4駆動機構185は、第2駆動機構172と同様にモータや巻取り機構を有している。よって、第4駆動機構185が保持ベルト184を巻き取ること又は引き出すことで、ワイヤ166の保持高さを変えることができる。
【0097】
複数のワイヤ161、166が異なる方向から脚装具120に接続されている。第1駆動機構162による引張力と、第3駆動機構182による引張力とを異なる方向にすることが可能にある。ワイヤ161から脚装具120への前方への引張力が与えられ、ワイヤ166から脚装具120に後方への引張力が与えられる。2本のワイヤ161、166を設けることで、関節機構123を押し引きすることができる。このようにすることで、前後両方向から引張力を与えることが可能になる。2本以上のワイヤを脚装具120に接続することで2方向以上に引張力を与えることが可能となる。
【0098】
さらに、第1駆動機構162による引張力と、第3駆動機構182による引張力とで関節機構123の駆動方向を変えることもできる。例えば、第3駆動機構182の引張力により、膝関節が伸展する方向に関節機構123が動作する。第1駆動機構162の引張力により、膝関節が屈曲する方向に関節機構123が動作する。これにより、膝関節を速やかに所望の角度にすることができるため、膝関節の動作をより適切にサポートすることができる。
【0099】
変形例3.
変形例3では、訓練者900の側方からワイヤ161が引き回されている。具体的には、-Y側からワイヤ161が脚装具120に接続されている。ワイヤ161の先端が脚装具120に接続され、他端が第1駆動機構162に接続されている。そして、第1駆動機構162がワイヤ161を巻き取ることで、脚装具120に引張力が与えられる。これにより、関節機構123が駆動される。
【0100】
保持ベルト171がワイヤ161を保持している。ワイヤ161の途中には、保持ベルト171が接続されている。保持ベルト171とワイヤ161とは接続部173を介して接続されている。これにより、第2駆動機構172がワイヤ161の保持高さを歩行動作に応じて、上下させることができる。
【0101】
さらに、脚装具120には、引張力の方向を転換する転換機構129が設けられている。転換機構129は、例えばプーリなどを有している。そして、転換機構129は、左右方向に沿って設けられたワイヤ161の方向を変える。具体的には、ワイヤ161の方向を90°変えることで、引張力を前方から与えることができる。このようにすることで、第1駆動機構162が横方向にワイヤ161を引っ張ることができる。
【0102】
上記の歩行訓練システムの動作方法はコンピュータプログラムやハードウェアで実施可能である。全体制御部210はプログラムを格納するメモリや、プログラムを実行するプロセッサ等を備えている。全体制御部210がプログラムを実行することで、本実施の形態にかかる歩行訓練システム1の動作方法を実行することができる。
【0103】
このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0104】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 歩行訓練システム
100 歩行訓練装置
110 装具
110a 連結フック
111 ハーネスワイヤ
112 ハーネス引張部
120 脚装具
121 上腿フレーム
122 下腿フレーム
123 関節機構
126 足平フレーム
128 バンド
130 フレーム
130a 手摺り
131 トレッドミル
132 ベルト
161 ワイヤ
162 第1駆動機構
171 保持ベルト
172 第2駆動機構
173 接続部
175 支持部材
210 全体制御部
211 トレッドミル駆動部
214 引張駆動部
215 ハーネス駆動部
216 画像処理部
217 姿勢センサ
218 手摺りセンサ
221 関節駆動部
222 荷重センサ
223 角度センサ
224 補助駆動部
231 入出力ユニット
232 非常停止ボタン
900 訓練者
901 訓練スタッフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10