(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】円筒内面撮像装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20240903BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N21/954 Z
G01N21/84 A
(21)【出願番号】P 2021090064
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503193889
【氏名又は名称】株式会社エデックリンセイシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】井田 信
(72)【発明者】
【氏名】大山 和美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸太郎
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-096020(JP,A)
【文献】特開2016-003885(JP,A)
【文献】特開2019-168270(JP,A)
【文献】特開2011-089826(JP,A)
【文献】特開2003-302207(JP,A)
【文献】特開2018-036203(JP,A)
【文献】特開2018-017631(JP,A)
【文献】特開2016-183941(JP,A)
【文献】特開2015-135253(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00 -G01N21/958
G01B 9/00 -G01B11/30
G06T 7/00 -G06T 7/90
G06V10/00 -G06V20/90
G06V30/418
G06V40/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された円筒部に対して挿入し得る内視鏡と、前記内視鏡を介して前記円筒部内に光を照射する照明手段と、前記内視鏡を介して前記円筒部の内面の広角画像を取得する撮像手段と、前記内視鏡を挿入深さを制御しつつ前記円筒部に挿入する様に、少なくとも昇降機能を有する産業用ロボットと、前記撮像手段が撮像した広角画像に基づいて前記円筒部の内面展開画像を生成する情報処理手段とを備えると共に、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする円筒内面撮像装置。
(1A)前記撮像手段は前記産業用ロボットによって所定深さまで内視鏡が挿入されたときに前記照明手段によって照明されている範囲の広角画像を取得する手段として構成され、前記情報処理手段は、前記円筒部の深さ方向複数箇所において取得された複数個の広角画像ごとに周縁部所定範囲を切り出して極座標展開して得られた複数個の展開画像を前記円筒部の深さ方向に結合することによって前記内面展開画像を生成する手段として構成されていること。
(1B)前記撮像手段により広角画像を取得するための撮像条件
の内、前記照明手段における発光条件、若しくは前記撮像手段における露光条件を、前記内面展開画像における明るさムラを低減する様に、前記内視鏡の挿入深さに応
じて変化させた個別の条件として設定した撮像スケジュールを、撮像対象となる円筒部を特定するワーク情報と対応付けて記憶しておく撮像スケジュール記憶手段を備えていること。
(1C)前記ワーク情報に基づいて前記撮像スケジュール記憶手段から撮像対象となる円筒部に対する撮像スケジュールを読み出し、当該撮像スケジュールに従って、前記産業用ロボット、前記照明手段及び前記撮像手段の動作を制御する動作制御手段を備えていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1に記載の円筒内面撮像装置。
(2A)前記産業用ロボットに対して、撮像対象となる円筒部の深さ方向複数箇所において前記広角画像を取得するための動作をティーチングするティーチング手段を備えていること。
(2B)前記ティーチング手段により前記産業用ロボットの動作をティーチングする間に
前記撮像条件を決定し、当該ティーチングの対象となったワークに対する撮像スケジュールとして、当該ワークを特定するワーク情報と共に前記撮像スケジュール記憶手段に記憶させる撮像スケジュール追加手段を備えていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒内面撮像装置。
(3)前記照明手段がストロボ発光を実行する手段として構成され、前記撮像スケジュールは、少なくとも、前記広角画像を取得する箇所ごとのストロボ発光の発光期間を増減することにより、前記内面展開画像における明るさムラの低減を行う様に前記撮像条件が設定されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒内周面を撮像するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに形成された円筒状空間部に内視鏡を挿入して取得した広角画像に対して幾何学変換を施すことで、奥行き方向及び周方向を座標軸とする内壁側面の展開画像を作成し、この展開画像に対して奥行き方向に沿った第1の平滑化処理及び周方向に沿った第2の平滑化処理を順次施して得たトレンドを除去することにより、奥まった位置における欠陥部位の検出性や視認性を向上可能な表面検査システムの提案がなされている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、内視鏡先端部から外部に放射される際の光の拡散現象により、補助光の光量が先端部周辺で最大になると共に、奥行き方向に離れるにつれて急激に減衰する傾向を解消するための技術を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-96020(要約、0043、
図1,
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、筒孔の深い位置まで内視鏡を挿入して撮像を行う場合、特許文献1が指摘する奥行き方向の光の減衰とは逆に、底面に照明が反射することで、下に行くほど画像が明るく撮像されてしまうという現象が生じる。また、側面に凹凸が有る場合や、素材や表面処理が異なる場合においても、局所的に画像が明るく撮像される。このため、筒孔に内視鏡を挿入しながら順次撮像して画像を取得し、順次撮像した画像から挿入深さ近傍の画像を切り出して結合した内面全体の画像を得ようとする場合、特許文献1の指摘とは逆の明るさムラが生じることとなる。
【0006】
なお、撮像後の画像に対し明るさ調整の処理を施すことも出来るが、輝度が上下限値を超え(飽和して)、その箇所の輝度情報が欠落する場合はそれも不可能となる。
【0007】
そこで、本発明は、円筒内面を深さ方向に順次撮像して得られる画像からの結合画像における明るさムラを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた本発明の円筒内面撮像装置は、ワークに形成された円筒部に対して挿入し得る内視鏡と、前記内視鏡を介して前記円筒部内に光を照射する照明手段と、前記内視鏡を介して前記円筒部の内面の広角画像を取得する撮像手段と、前記内視鏡を挿入深さを制御しつつ前記円筒部に挿入する様に、少なくとも昇降機能を有する産業用ロボットと、前記撮像手段が撮像した広角画像に基づいて前記円筒部の内面展開画像を生成する情報処理手段とを備えると共に、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記撮像手段は前記産業用ロボットによって所定深さまで内視鏡が挿入されたときに前記照明手段によって照明されている範囲の広角画像を取得する手段として構成され、前記情報処理手段は、前記円筒部の深さ方向複数箇所において取得された複数個の広角画像ごとに周縁部所定範囲を切り出して極座標展開して得られた複数個の展開画像を前記円筒部の深さ方向に結合することによって前記内面展開画像を生成する手段として構成されていること。
(1B)前記撮像手段により広角画像を取得するための撮像条件の内、前記照明手段における発光条件、若しくは前記撮像手段における露光条件を、前記内面展開画像における明るさムラを低減する様に、前記内視鏡の挿入深さに応じて変化させた個別の条件として設定した撮像スケジュールを、撮像対象となる円筒部を特定するワーク情報と対応付けて記憶しておく撮像スケジュール記憶手段を備えていること。
(1C)前記ワーク情報に基づいて前記撮像スケジュール記憶手段から撮像対象となる円筒部に対する撮像スケジュールを読み出し、当該撮像スケジュールに従って、前記産業用ロボット、前記照明手段及び前記撮像手段の動作を制御する動作制御手段を備えていること。
【0009】
本発明の円筒内面撮像装置によれば、撮像対象となる円筒部を有するワークを特定するワーク情報が与えられると、動作制御手段が、撮像スケジュール記憶手段から対応する撮像スケジュールを読み出し、この撮像スケジュールに従って、産業用ロボット、照明手段及び撮像手段の動作を制御する。これにより、産業用ロボットはワークの円筒部に対して所定深さまで内視鏡を挿入したときに照明手段によって照明されている範囲の広角画像を撮像手段に取得させる動作が円筒部の深さ方向に順次実行される。この間、情報処理手段は、円筒部の深さ方向複数箇所において得られた複数個の広角画像のそれぞれから、周縁部所定範囲を切り出して極座標展開して得られた複数個の展開画像を円筒部の深さ方向に結合することによって内面展開画像を生成する。同一種類のワークについては、同じ撮像スケジュールに従って個々のワークが備える円筒部の内面展開画像が生成される。撮像対象となるワークが変更された場合は、当該変更後のワークのワーク情報が与えられることにより、動作制御手段による上述の動作が実行され、情報処理手段によって当該ワークの円筒部の内面展開画像が、深さ方向複数箇所で取得された広角画像の周縁部所定範囲を切り出して極座標展開して得られた複数個の展開画像を円筒部の深さ方向に結合することによって生成される。ここで、ワーク毎の撮像スケジュールは、照明手段によって照明されている範囲から撮像手段により広角画像を取得するための撮像条件を内視鏡の挿入深さに応じた個別の条件として設定した撮像スケジュールとなっているから、円筒部の上部と底部とでは異なる撮像条件を設定することができ、底部付近での反射光の影響による内面展開画像における明るさムラを生じない様にすることができる。
【0010】
ここで、本発明の円筒内面撮像装置は、さらに以下の構成をも備えたものとして構成するとよい。
(2A)前記産業用ロボットに対して、撮像対象となる円筒部の深さ方向複数箇所において前記広角画像を取得するための動作をティーチングするティーチング手段を備えていること。
(2B)前記ティーチング手段により前記産業用ロボットの動作をティーチングする間に
(2B)前記ティーチング手段により前記産業用ロボットの動作をティーチングする間に前記撮像条件を決定し、当該ティーチングの対象となったワークに対する撮像スケジュールとして、当該ワークを特定するワーク情報と共に前記撮像スケジュール記憶手段に記憶させる撮像スケジュール追加手段を備えていること。
【0011】
かかる構成をも備えた円筒内面撮像装置によれば、ティーチング手段によってワーク毎の円筒部への内視鏡挿入動作を産業ロボットに対してティーチングする際に、撮像スケジュール追加手段により、深さ方向複数箇所で取得される広角画像から生成される内面展開画像における明るさムラを低減するための撮像条件を決定し、当該ティーチングの対象となったワークに対する撮像スケジュールとして、当該ワークを特定するワーク情報と共に撮像スケジュール記憶手段に記憶させることができる。これにより、撮像対象ごとの最適な撮像条件を容易に設定することができる。
【0012】
これら本発明の円筒内面撮像装置は、さらに以下の構成をも備えたものとして構成するとよい。
(3)前記照明手段がストロボ発光を実行する手段として構成され、前記撮像スケジュールは、少なくとも、前記広角画像を取得する箇所ごとのストロボ発光の発光期間を増減することにより、前記内面展開画像における明るさムラの低減を行う様に前記撮像条件が設定されていること。
【0013】
内面展開画像における明るさムラを低減させるための撮像条件としては、内視鏡の挿入深さごとに、「(a)照明手段における照度を増減させる構成」、「(b)撮像手段における露光条件やゲイン明るさを増減させる構成」も適用可能である。しかしながら、(a)の「照度の増減」は照明手段のコストアップや制御の煩雑化、(b)の「撮像手段側の条件変更」は撮像手段のコストアップや制御の複雑化、などの新たな問題を生じる可能性があるのに対し、上述の様に、「(c)ストロボ発光の発光期間の増減」は「通電時間の長短」で実現することができ、照明手段や撮像手段のコストアップや制御の煩雑化・複雑化といった新たな問題を生じることなく明るさムラの低減を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、円筒内面を深さ方向に順次撮像して得られる画像からの結合画像における明るさムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の円筒内面撮像装置を示し、(A),(B)は多関節ロボットに装着して使用する様子を表した斜視図、(C)は撮像の際の照射光と反射光の関係を示す要部委拡大斜視図である。
【
図2】実施例1の円筒内面撮像装置を示し、(A)は制御系統のブロック図、(B)はティーチングルーチンのフローチャート、(C)は撮像条件決定ルーチンのフローチャートである。
【
図3】実施例1の円筒内面撮像装置を示し、(A)は撮像ルーチンのフローチャート、(B)は展開画像生成ルーチンのフローチャートである。
【
図4】実施例1の円筒内面撮像装置による作用・効果を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1の円筒内面撮像装置10は、
図1に示す様に、多関節ロボット1に装着し、ワークWの円筒部Whの中心に内視鏡11の軸心を一致させて移動させつつ照明装置12にてストロボ発光を実行させるタイミングで撮像装置13による撮像を行うことにより、円筒部Whの内面の画像を撮像するためのものである。このとき、
図1(C)に示す様に、円筒部whの奥深く内視鏡11を挿入した状態にあっては、底面付近からの反射光により撮像範囲が明るくなり過ぎるという問題が懸念される。本実施例の円筒内面撮像装置10は、この問題を解決するためのものである。
【0018】
実施例の円筒内面撮像装置10の制御系統は、
図2(A)に示す様に、演算装置100を中心に構成される。演算装置100は、モニタ110、記憶装置120、キーボード131、マウス132、カーソルキー133等の入力装置が備えられたパーソナルコンピュータで構成される。演算装置100は、多関節ロボット1、照明装置12及び撮像装置13に対して制御指令を送信して円筒部の撮像を実行する。
【0019】
演算装置100の記憶装置120には、ティーチングプログラム(
図2(B))、撮像条件決定プログラム(
図2(C))、撮像プログラム(
図3(A))、及び展開画像生成プログラム(
図3(B))がインストールされている。
【0020】
ティーチングプログラムを起動すると、
図2(B)に示す様に、演算装置100は、ワーク情報の入力を待つ(S10)。ワーク情報は、オペレータが、キーボード131、マウス132、カーソルキー133等の入力装置を操作して入力する。
【0021】
このワーク情報としては、円筒内面撮像対象となるワークWを特定するワークID、当該ワークの素材・表面処理・ワーク寸法などのワーク自体に関する情報、当該ワークに形成されている円筒部の位置、孔径、深さ等の寸法を特定する円筒部に関する情報、深さ方向の撮像ピッチや撮像した画像の周縁部所定範囲を極座標展開して得られる展開画像の明るさ等に関する展開画像の生成に関する情報などとなる。ここで、ワークIDはユニークなIDを自動的に採番する構成としておいてもよい。また、撮像開始位置、終了位置、移動ピッチを直接入力する様にしてもよい。加えて、照明の強度、カメラのゲイン、明るさ、ガンマ補正値などを基準となる撮像条件として入力する様にしてもよい。なお、このとき、演算装置100は、モニタ110にワーク情報の入力画面を表示してオペレータにワーク情報の入力を促す。
【0022】
ワーク情報が入力されると(S10:YES)、演算装置100はワーク情報を記憶装置120に記憶する(S20)。こうしてワーク情報の記憶が完了すると、演算装置100は、ワーク情報に基づいて撮像スケジュールを算出する(S30)。
【0023】
この撮像スケジュールは、内視鏡11の中心をワークの円筒部の中心に合わせ、撮像開始位置となる高さに内視鏡11の先端を位置させた後、円筒部の上部から順に所定ピッチで内視鏡11をまっすぐに下降させて停止する動作を円筒部の底近くの撮像終了位置まで多関節ロボット1に順次実行させ、下降停止時に照明装置12に所定時間のストロボ発光を実行させると共にそのときの広角画像を撮像装置13に撮像させるためのものである。S10,S20によって記憶したワーク情報が異なっていれば、この撮像スケジュールも異なったものとして算出される。なお、この撮像スケジュールを算出するため、記憶装置120には、ワークの素材・表面処理、及び円筒部の孔径をパラメータとする基準照度と基準発光期間と対応付けた情報を予め記憶させてある。
【0024】
次に、演算装置100は、今回のティーチングの対象となっているワークがセットされるのを待つ(S40)。このとき、演算装置100は、モニタ110にオペレータにワークセットを促す表示を行う。そして、演算装置100は、オペレータによるワークのセット完了の入力がなされたら(S40:YES)、撮像スケジュールに従って、内視鏡11の中心をワークの円筒部の中心に合わせ、撮像開始位置となる高さに内視鏡11の先端を位置させるための指令を多関節ロボット1に対して出力する(S50)。
【0025】
こうして撮像開始位置へと内視鏡11を移動させたら、演算装置100は撮像条件決定処理を実行する(S100)。この撮像条件決定処理を開始すると、
図2(C)に示す様に、演算装置100は撮像ポイントnに「1」をセットし(S110)、S30で算出した撮像スケジュールに従って内視鏡11を高さHnだけ下降させる指令を多関節ロボット1に出力し、多関節ロボット1から動作完了信号を受信したら発光条件Lnに基づいて照明装置12にストロボ発光を実行させると共にそのときの広角画像PHTnを撮像装置13にラッチさせる(S120)。
【0026】
続いて、ラッチした広角画像PHTnの周縁部の所定範囲を切り出して極座標展開した展開画像EXPIMGnを生成し、記憶装置120に記憶する(S130)。その後、円筒部Whに対して撮像すべき最大深さまで到達したか否かを撮像スケジュールに基づいて判定し(S140)、到達していない場合は撮像ポイントnをインクリメントし(S150)、S120へと戻る。
【0027】
こうして円筒部に対して撮像すべき最大深さまで到達するまでS120~S130の処理を繰り返し実行したら(S140;YES)、記憶装置120に記憶した展開画像EXPIMGnを読み出して深さ方向に結合した結合画像CMBIMGをモニタ110に表示し(S150)、発光条件Lnの調整が必要な撮像ポイントの有無に関するオペレータ入力を待つ(S160)。
【0028】
発光条件Lnの調整が必要な撮像ポイントがあるとの入力がなされたときは(S160:YES)、調整が必要な撮像ポイントの指定を促すメッセージをモニタ110に表示して調整ポイントmの指定を待つ(S170)。
【0029】
調整が必要な撮像ポイントmが指定されたら(S170:YES)、当該撮像ポイントmに対する発光条件Lmとしての発光期間を単位時間△tだけ増減したものへと撮像スケジュールを更新し(S180)、S110へと戻る。
【0030】
ここで、単位時間△tを増加するか減少するかは、オペレータに入力させてもよいし、減少させるか増加させるかを予め設定しておいても構わない。
【0031】
この撮像スケジュールの更新は、発光条件Lnの調整が必要な撮像ポイントがなくなったことを意味する入力がオペレータによってなされるまで繰り返し実行される。そして、発光条件Lnの調整が必要な撮像ポイントがなくなったことを意味する入力がオペレータによってなされたら(S160:NO)、最新の撮像スケジュールをワーク情報と共に記憶装置110に記憶し(S190)、ティーチングルーチンのメインフローへと戻る。
【0032】
こうして一つのワークに対する撮像スケジュールが決定できたら、撮像スケジュールを決定すべき次のワークがあるか否かを判定する(S200)。次のワークがあるか否かは、オペレータに入力装置を操作して入力させる。次のワークがある場合は(S200:YES)、S10からの処理を実行する。撮像予定の全てのワークに対する撮像スケジュールが決定されたら(S200:NO)、ティーチングルーチンを終了する。
【0033】
次に、本実施例における円筒内面の撮像処理について
図3のフローチャートに基づいて説明する。演算装置100は、オペレータによってワーク情報が入力されたら(S310:YES)、記憶装置110から当該ワーク情報に対応させて記憶してある撮像スケジュールを読み出し(S320)、今回の撮像対象となっているワークがセットされるのを待つ(S330)。演算装置100は、オペレータによるワークのセット完了の入力がなされたら(S330:YES)、S320で読み出した撮像スケジュールに従って、内視鏡11の中心をワークの円筒部の中心に合わせ、撮像開始位置となる高さに内視鏡11の先端を位置させるための指令を多関節ロボット1に対して出力する(S340)。
【0034】
こうして撮像開始位置へと内視鏡11を移動させたら、演算装置100は撮像処理を実行する(S400)。この撮像処理を開始すると、
図3(C)に示す様に、演算装置100は撮像ポイントnに「1」をセットし(S310)、S320で読み出した撮像スケジュールに従って内視鏡11を高さHnだけ下降させる指令を多関節ロボット1に出力し、多関節ロボット1から動作完了信号を受信したら発光条件Lnに基づいて照明装置12にストロボ発光を実行させると共にそのときの広角画像PHTnを撮像装置13にラッチさせる(S420)。
【0035】
続いて、ラッチした広角画像PHTnの周縁部の所定範囲を切り出して極座標展開した展開画像EXPIMGnを生成し、記憶装置120に記憶する(S430)。その後、円筒部に対して撮像すべき最大深さまで到達したか否かを撮像スケジュールに基づいて判定し(S440)、到達していない場合は撮像ポイントnをインクリメントし(S450)、S420へと戻る。
【0036】
こうして円筒部に対して撮像すべき最大深さまで到達するまでS420~S430の処理を繰り返し実行したら(S440;YES)、記憶装置120に記憶した展開画像EXPIMGnを読み出して深さ方向に結合した結合画像CMBIMGを生成し(S460)、こうして生成した結合画像CMBIMGを記憶装置120に記憶して撮像処理のメインルーチンへと戻る(S470)。
【0037】
撮像処理のメインルーチンへ戻ったら、演算装置100は、撮像対象となる同種のワークが残っているか否かを判定する(S500)。撮像対象となる同種のワークが残っている場合は(S500:YES)、S330の処理へと戻る。一方、撮像対象となる同種のワークが残っていないときは(S500:NO)、異なる種類のワークについても撮像を行うか否かを判定する(S600)。異なる種類のワークについての撮像を行う場合は(S600:YES)、S310へと戻り、当該ワークのワーク情報の入力を求め、新たなワーク情報が入力されたら(S310:YES)、新たに入力されたワーク情報に対応させて記憶してある撮像スケジュールを読み出し(S320)、S330以下の処理を実行する。
【0038】
本実施例による作用・効果について
図4の模式図で説明する。図示の様に、全ての撮像ポイントにおいて同一の発光条件で撮像を行った場合には、孔の上部では奥が暗い広角画像PHT1が撮像されるのに対して孔の底付近では底面の反射光の影響によって全体に明るい広角画像PHT4が撮像される。同一発光条件で撮像される広角画像PHT1等に基づいて周縁部所定範囲を切り出して得られる展開画像EXPIMG1~EXPIMG5は、円筒部whの深さ方向に明るさが異なり、これらから生成した結合画像CMBIMGは深さ方向に明るさムラが生じたものとなる。これに対し、本実施例のティーチング処理によって決定した撮像ポイントごとに最適な発光条件を決定して得られた撮像スケジュールに基づいて撮像される広角画像PHT1c等に基づいて周縁部所定範囲を切り出して得られる展開画像EXPIMG1c~EXPIMG5cはいずれも明るさが同程度のものとなり、これらから生成した結合画像CMBIMGcは深さ方向に明るさムラのないものとなる。
【0039】
こうして得られた結合画像CMBIMGcを画像処理手法等による判定処理にかければ、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0040】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々に実施することができる。
【0041】
例えば、撮像条件決定処理における発光条件の調整の要否は、画像処理プログラムによってこれを実行する様にしても構わない。また、実施例では、産業ロボットの一例として多関節ロボットを用いて内視鏡挿入動作をティーチングする事例を説明したが、多関節ロボットに代えてスカラーロボットや直交ロボットを用いて内視鏡挿入動作をティーチングする際に最適化した撮像条件を設定した撮像スケジュールを追加する様にしても構わない。このとき、産業ロボットとして昇降方向の直動軸だけを備える直交ロボットを採用する場合、円筒部と内視鏡の軸心合わせにはワーク毎の治具などを用いる様にすればよい。加えて、照明装置はストロボ発光に限らず、連続照明を実施するタイプのものとし、撮像装置側の露光条件などを内視鏡挿入深さに応じて変化させる撮像条件を撮像スケジュールとして設定する様にしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、各種ワークの円筒部の内面検査に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・多関節ロボット、10・・・円筒内面撮像装置、11・・・内視鏡、12・・・照明装置、13・・・撮像装置、CMBIMG,CMBIMGc・・・結合画像、EXPIMG1~EXPIMG5,EXPIMG1c~EXPIMG5c・・・展開画像、PHT1~PHT4,PHT1c~PHT4c・・・広角画像、W・・・ワーク、Wh・・・円筒部。