(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240903BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20240903BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240903BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20240903BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C33/14
B29C45/14
H01L21/56 H
H01L23/28 A
H01L23/50 G
(21)【出願番号】P 2021091680
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】山川 智行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 範行
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-009976(JP,A)
【文献】特開平10-309730(JP,A)
【文献】特開2011-166000(JP,A)
【文献】特開2019-057590(JP,A)
【文献】特開2007-301777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 33/14
B29C 45/14
H01L 23/28
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームのパッドの裏面を露出させて樹脂成形するための成形型であって、
上型と下型とを有し、
前記上型及び前記下型の少なくとも一方が、型締め時におけるリードフレームの変形を抑制又は防止する変形抑制機構を備え
、
前記リードフレームが、前記パッドに加え、さらに、リードとタイバーと吊りピンとを有し、
前記パッドは、前記吊りピンによって前記タイバーから吊り下げられており、
前記変形抑制機構が、前記リードフレームを押さえて前記タイバーの移動を抑制又は防止する押さえ部材を含み、
前記押さえ部材の形状は、平面視矩形形状であり、
前記押さえ部材を設ける位置は、複数の前記リードの最外部を覆うように押さえることができる位置である
ことを特徴とする成形型。
【請求項2】
前記リードフレームが、前記パッド、前記リード、前記タイバー及び前記吊りピンを含む全体を囲む枠部材を有していない、請求項1記載の成形型。
【請求項3】
前記変形抑制機構が、前記タイバーの移動を抑制又は防止する突起部を含む、請求項1又は2記載の成形型。
【請求項4】
前記突起部が、前記下型に設けられている請求項3記載の成形型。
【請求項5】
前記押さえ部材が、前記上型及び前記下型の少なくとも一方に設けられている請求項
1から4のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項6】
前記押さえ部材に、前記タイバーの移動を抑制又は防止する突起部が設けられている請求項
1から5のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の成形型を含むことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項8】
成形型を用いてリードフレームのパッドの裏面を露出させて樹脂成形する、樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型が、請求項1から
6のいずれか一項に記載の成形型であり、
前記リードフレームが、前記パッドに加え、さらに、リードとタイバーと吊りピンとを有し、
前記パッドは、前記吊りピンによって前記タイバーから吊り下げられており、
前記リードフレームが、前記パッド、前記タイバー及び前記吊りピンを含む全体を囲む枠部材を有しておらず、
前記樹脂成形品の製造方法は、
前記リードフレームを前記下型に載置するリードフレーム載置工程と、
前記変形抑制機構により前記タイバーの移動を抑制又は防止するタイバー移動抑制工程と、を含み、
前記変形抑制機構により前記タイバーの移動が抑制又は防止された状態で、前記上型と前記下型とを型締めし、前記リードフレームを樹脂成形することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、半導体チップ等の電子素子(以下、単に「チップ」ということがある。)は、樹脂封止(樹脂成形)されて用いられることが多い。より具体的には、例えば、チップを樹脂封止することにより、前記チップが樹脂封止された電子部品(完成品としての電子部品、又はパッケージ等ともいう。以下、単に「電子部品」ということがある。)とすることができる。
【0003】
電子部品の製造においては、例えば、特許文献1及び2に記載のとおり、チップを搭載したリードフレーム(又は、単にフレームともいう)を樹脂封止(樹脂成形)することが行われている。
【0004】
リードフレームは、例えば、チップが載置されたパッドと、リードとタイバーとを含み、パッド、リード及びタイバーを含む全体が、枠部材により囲まれている。例えば、特許文献1の
図1~3に記載されたリードフレーム1では、アイランド3がパッドに該当し、タイバー6がタイバーに該当し、それらを囲む枠フレーム2が枠部材に該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3150083号公報
【文献】特開2004-152994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、リードフレームの軽量化、省資源化、低コスト化等の観点から、枠部材(リードフレームのクレードル部分を含む。)を有しないリードフレームの使用が必要とされている。しかし、枠部材を有しないリードフレームは、枠部材を有するリードフレームと比較して強度が低いために、成形型の型締め時等にリードフレームが変形してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、枠部材を有しないリードフレームを用いてもリードフレームの変形を抑制又は防止できる成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の成形型は、
リードフレームのパッドの裏面を露出させて樹脂成形するための成形型であって、
上型と下型とを有し、
前記上型及び前記下型の少なくとも一方が、型締め時におけるリードフレームの変形を抑制又は防止する変形抑制機構を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の樹脂成形装置は、本発明の成形型を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、
成形型を用いてリードフレームのパッドの裏面を露出させて樹脂成形する、樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型が、本発明の成形型であり、
前記リードフレームが、前記パッドに加え、さらに、リードとタイバーと吊りピンとを有し、
前記パッドは、前記吊りピンによって前記タイバーから吊り下げられており、
前記リードフレームが、前記パッド、前記タイバー及び前記吊りピンを含む全体を囲む枠部材を有しておらず、
前記樹脂成形品の製造方法は、
前記リードフレームを前記下型に載置するリードフレーム載置工程と、
前記変形抑制機構により前記タイバーの移動を抑制又は防止するタイバー移動抑制工程と、を含み、
前記変形抑制機構により前記タイバーの移動が防止された状態で、前記上型と前記下型とを型締めし、前記リードフレームを樹脂成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、枠部材を有しないリードフレームを用いてもリードフレームの変形を抑制又は防止できる成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)~(c)は、本発明の成形型及びそれを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の樹脂成形装置における全体の構成の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明の成形型及びそれを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の別の一例を示す工程断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の成形型における下型の一例を示す平面図である。
図4(b)~(h)は、本発明の成形型における下型の別の一例を示す平面図である。
図4(i)は、
図4(a)の下型にリードフレームを配置した時の一部拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の成形型における変形抑制機構の一例を示す断面図である。
図5(b)は、本発明の成形型における変形抑制機構の別の一例を示す断面図である。
図5(c)は、本発明の成形型における変形抑制機構のさらに別の一例を示す断面図である。
図5(d)は、本発明の成形型における変形抑制機構のさらに別の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の成形型及びそれを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法に用いるリードフレームの一例を示す平面図である。
図6(b)は、
図6(a)のリードフレームの一部の拡大図である。
図6(c)は、
図6(b)に示す部分の斜視図である。
図6(d)は、
図6(a)のリードフレームを一般的な成形型の下型に配置したときの断面概略図である。
【
図7】
図7は、
図6に示したリードフレームにおけるタイバーの変形の様子を示すイメージ図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、
図6に示したリードフレームにおけるタイバーの変形の様子を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0014】
本発明の成形型において、例えば、
前記リードフレームが、前記パッドに加え、さらに、リードとタイバーと吊りピンとを有し、
前記パッドは、前記吊りピンによって前記タイバーから吊り下げられており、
前記リードフレームが、前記パッド、前記タイバー及び前記吊りピンを含む全体を囲む枠部材を有していなくてもよい。
【0015】
本発明の成形型において、例えば、前記変形抑制機構が、前記タイバーの移動を抑制又は防止する突起部を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の成形型において、例えば、前記突起部が、前記下型に設けられていてもよい。また、前記突起部は、例えば、前記上型に設けられていてもよいし、前記上型及び前記下型の両方に設けられていてもよい。
【0017】
本発明の成形型において、例えば、前記変形抑制機構が、前記リードフレームを押さえて前記タイバーの移動を抑制又は防止する押さえ部材を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の成形型において、例えば、前記押さえ部材が、前記上型及び前記下型の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0019】
本発明の成形型において、例えば、前記押さえ部材に、前記タイバーの移動を抑制又は防止する突起部が設けられていてもよい。
【0020】
本発明の成形型において、例えば、前記押さえ部材が、前記リードフレームの最外部を押さえることができる位置に設けられていてもよい。
【0021】
本発明において、成形型は、特に限定されないが、例えば、金型であっても良く、又は、セラミック型等であっても良い。
【0022】
なお、本発明において、「防止」と「抑制」とに明確な区別は無いものとする。例えば、本発明において、リードフレームの変形の「防止」という場合は、特に断らない限り、リードフレームの変形量をゼロにする場合に限定されず、リードフレームの変形量を小さく抑える(すなわち、リードフレームの変形を抑制する)場合も含むものとする。また、本発明において、例えば、タイバーの移動の「防止」という場合は、特に断らない限り、タイバーの移動量をゼロにする場合に限定されず、タイバーの移動量を小さく抑える(すなわち、タイバーの移動を抑制する)場合も含むものとする。また、逆に、本発明において、リードフレームの変形の「抑制」という場合は、特に断らない限り、リードフレームの変形量を小さく抑える場合に限定されず、リードフレームの変形量をゼロにする場合も含むものとする。本発明において、例えば、タイバーの移動の「抑制」という場合は、特に断らない限り、タイバーの移動量を小さく抑える場合に限定されず、タイバーの移動量をゼロにする場合も含むものとする。
【0023】
本発明において、樹脂成形品は、特に限定されないが、例えば、チップを樹脂封止した電子部品でもよい。なお、一般に、「電子部品」は、樹脂封止する前のチップをいう場合と、チップを樹脂封止した状態をいう場合とがある。ただし、本発明においては、前記チップを「電子素子」ともいい、「電子部品」は、前記チップが樹脂封止された電子部品(完成品としての電子部品)をいう。本発明において、「チップ」と「電子素子」とは同義である。本発明において、「チップ」又は「電子素子」は、樹脂封止する前のチップをいい、具体的には、例えば、IC、半導体チップ、電力制御用の半導体素子、抵抗素子、キャパシタ素子等のチップが挙げられる。なお、「半導体素子」は、例えば、半導体を素材として作られた回路素子をいう。本発明において、樹脂封止する前のチップは、樹脂封止後の電子部品と区別するために、便宜上「チップ」又は「電子素子」という。しかし、本発明における「チップ」又は「電子素子」は、樹脂封止する前のチップであれば、特に限定されず、チップ状でなくてもよい。
【0024】
本発明において、成形前の樹脂材料及び成形後の樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。本発明において、成形前の樹脂材料の形態としては、例えば、粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂を含む)、液状樹脂、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂等が挙げられる。なお、本発明において、液状樹脂とは、常温で液状であってもよいし、加熱により溶融されて液状となる溶融樹脂も含む。前記樹脂の形態は、成形型のキャビティやポット等に供給可能であれば、その他の形態でも構わない。
【0025】
本発明の樹脂成形品の製造方法において、樹脂成形方法は特に限定されず、例えば、トランスファ成形、射出成型、圧縮成形等であってもよい。
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【実施例1】
【0027】
本実施例では、本発明の成形型の一例、それを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の一例、及び、それらに用いるリードフレームの一例について説明する。
【0028】
まず、本実施例に用いるリードフレームの一例について説明する。本実施例では、リードフレームのパッド(チップ実装板であり、ダイパッドともいう)の裏面(チップが実装されていない側の面)を露出成形する。
図6(a)は、後述する本実施例の成形型及びそれを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法に用いるリードフレームの一例を示す平面図である。
図6(b)は、
図6(a)の左上隅における矩形の枠線で囲った部分の拡大図である。
図6(b)では、パッドは一番左側の列のみを示しており、その内側の列のパッドは省略している。
図6(c)は、
図6(b)に示す部分の斜視図である。図示のとおり、このリードフレーム300は、パッド301とタイバー302と吊りピン303とリード304と、さらに連結部材311とを有する。リードフレーム300全体は矩形であり、長尺の板状の連結部材311が二枚、リードフレーム300の矩形の長辺部分に配置されている。リード304は、パッド301の両側に、連結部材311と平行に配置されている。タイバー302は棒状であり、複数のタイバー302がリード304と垂直に交差して配置されている。各タイバー302の両端は、それぞれ連結部材311と連結されている。パッド301は矩形で、複数である。複数のパッド301は、隣り合う二本のタイバー302の間に挟まれるように配置されている。また、
図6(c)に示すとおり、各パッド301は、吊りピン303によってタイバー302から吊り下げられている。吊りピン303の太さは特に限定されないが、例えば、リード304よりも細い。図示のとおり、このリードフレーム300は、パッド301、タイバー302、リード304及び吊りピン303を含む全体を囲む枠部材を有していない。すなわち、
図6(b)の枠線Aで囲んだ部分に示すとおり、リードフレーム300の最も外側に枠部材が存在しない。枠線Aで囲んだ部分には、図示のとおり、枠部材でなくリード304が存在する。連結部材311は、パッド301、タイバー302、リード304及び吊りピン303を両側から挟んでいるだけで、全体を囲っていない。このように、このリードフレーム300は、枠部材が存在せず、最も外側のリード304が連結されていないため、枠部材が存在するリードフレームと比較して、軽量化、省資源化、低コスト化等が達成できる。一方、このリードフレーム300は、枠部材が存在するリードフレームと比較して強度が低いために、タイバー302等が変形しやすい。また、
図6(b)の枠線Bで囲んだ部分に示すとおり、タイバー302は、複数のパッド301毎に独立又は分離して設けられておらず、すなわち、1本のタイバー302は複数のパッド301に共通して設けられており長い。具体的には、
図6(a)に示すとおり、各タイバー302は、一方の連結部材311との連結部分から他方の連結部材311との連結部分まで、一本のタイバー302が連続している。このようにタイバー302が長いことも、タイバー302が変形しやすい原因となる。なお、
図6のリードフレーム300において、タイバー302の役割は、二枚の連結部材311同士を連結してリードフレーム300の骨格を保持するとともに、吊りピン303を介してパッド301を固定することである。それと同時に、タイバー302は、
下型キャビティ201からの樹脂漏れ防止の役割もする。
【0029】
図6(d)は、
図6(a)のリードフレーム300を、一般的な成形型の下型に載置した状態を示す。図示のとおり、リードフレーム300は、パッド301が下型キャビティ201の底面に配置され、パッド301から吊りピン303が斜め上方に延び、吊りピン303が接続されたタイバー302と、タイバーに交差して接続されたリード304は、下型200の型面から若干浮いた状態となって配置される。
【0030】
一般的な成形型を用いて樹脂成形した場合、
図7のイメージ図に示すとおり、型締め時の圧力でタイバー302が外側にたわんでしまうおそれがある。
図8(a)~(c)の工程断面図を用いて、この現象について、さらに具体的に説明する。同図に示すとおり、成形型1000は、上型100と下型200とを有する。上型100は上型キャビティ101を有する。下型200は下型キャビティ201を有する。上型キャビティ101及び下型キャビティ201は、互いに対向する位置に設けられている。上型100及び下型200を型締めした際に、上型キャビティ101及び下型キャビティ201が合わさって型キャビティが形成され、その型キャビティ内で樹脂成形を行うことができる。
【0031】
図8の成形型1000及び
図6のリードフレーム300を用いて樹脂成形を行おうとすると、例えば、
図8(a)~(c)の工程断面図に示すようなことが起こる。なお、
図8(a)~(c)において、図の左端がリードフレーム300の最も外側であり、図の右側方向がリードフレーム300の内側方向である。
【0032】
まず、
図8(a)に示すとおり、下型200の上にリードフレーム300を載置する。図示のとおり、リードフレーム300は、パッド301が下型キャビティ201の底面に接するように載置されている。前述のとおり、パッド301は、吊りピン303によってタイバー302から吊り下げられている。パッド301の裏面を露出成形するために、パッド301が確実に下型キャビティ201の底面に接するように、又はパッド301をキャビティ底面に押さえつけることができるように、吊りピン303の高さは下型キャビティ201の深さよりも若干高く設計されている。したがって、タイバー302及びリード304は、図示のとおり、下型200から若干浮いた状態になる。
【0033】
つぎに、
図8(b)の矢印X31に示すとおり、下型200を上昇させる。これにより、図示のとおり、タイバー302及びリード304が上型100に接触する。
【0034】
さらに下型200をさらに上昇させ、
図8(c)の矢印X32に示すとおり、上型100と下型200とを型締めする。これにより、上型キャビティ101及び下型キャビティ201が合わさって型キャビティが形成され、その型キャビティ内で樹脂成形を行うことができるようになる。このとき、吊りピン303、タイバー302及びリード304が型締めの圧力により押され、上型100とリードフレーム300(リードフレーム300のリード304及びタイバー302)と下型200とが隙間なく接触し、型締めが行われる。枠部材を有するリードフレームであれば、型締めの圧力は、主に上下方向にかかり、パッド301を下型キャビティ201の底面に押さえつけ、パッド301が接続する吊りピン303が変形し型締めが行われる。しかし、枠部材を有さない本実施例のリードフレーム300の場合、この型締めの圧力により、パッド301が接続する吊りピン303のみでなく、図の矢印Y11、Y12及びY13に示すとおり、吊りピン303が接続するタイバー302が外側に押されて移動し、全体的としてタイバー302がたわむ(すなわち変形する)。このタイバー302及びリード304の変形は、リードフレーム300の外側に向かうほど大きくなり、最外部(最も外側)のタイバー302の変形量が最も大きくなっている(
図7参照)。このようにタイバー302が変形する理由は、パッド301を下型キャビティ底面に押圧する力が水平方向に逃げて、その水平方向の力がタイバー302を変形させてしまうためと考えられる。
【0035】
本発明者らは、このリードフレームの変形を抑制又は防止するために検討を重ね、本発明に到達した。
【0036】
図1(a)~(c)の工程断面図に、本実施例の成形型及びそれを用いた本実施例の樹脂成形品の製造方法の工程の一部を示す。図示のとおり、本実施例の成形型1000は、上型100がリードフレーム押さえ機構120を有することと、下型200が突起部211を有すること以外は、
図8の成形型1000と同じである。リードフレーム押さえ機構120及び突起部211は、それぞれ、本発明の成形型における「変形抑制機構」に該当する。
【0037】
リードフレーム押さえ機構120は、弾性部材121と押さえ部材122とを含む。本実施例の押さえ部材122は、リードフレーム300の最外部(最も外側)のリード304全体を押えることができる大きさの平面視矩形形状であり(後述する
図4(f)の押さえ部材222と同じ形状で、
図4(f)とは異なり上型100に設けられている)、リードフレーム300の両端にある最外部のリード304を押さえることができる位置に設けられている。押さえ部材122は、弾性部材121を介して上型100の本体に取り付けられており、上型100の型面より突出して設けられている(
図1(a)参照)。押さえ部材122は、弾性部材121の伸縮によって上下動可能であり、型締めにより上型100の型面と面一となる。
【0038】
突起部211は、型締め時に上型100と下型200の間に隙間ができないように、リードフレーム300の厚み以下の高さ(厚み)を有し、隣り合うリード304の間に配置できる形状である(
図4(i)参照)。本実施例では、各突起部211は立方体形状である。
図4(b)に示すように、各突起部211は、下型200にリードフレーム300を載置した時、最外部のタイバー302の外側と、外側から二番目のタイバー302の内側とに接触する位置に設けられている。各突起部をこの位置に設けることによって、タイバー302の移動を抑制又は防止することができる。なお、本実施例では、1つのタイバー302に配置された突起部211において、隣接する突起部211どうしの距離(中心間距離)は、約5.2mmである。ただし、本発明において、隣接する突起部どうしの距離は、これに限定されず任意である。
【0039】
図1の成形型1000を用いた樹脂成形品の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、
図1(a)~(c)に示すリードフレーム300は、
図6に示したリードフレーム300と同一である。
【0040】
まず、
図1(a)に示すとおり、下型200の上にリードフレーム300を載置する(リードフレーム載置工程)。このとき、図示のとおり、リードフレーム300は、パッド301が下型キャビティ201の底面に接するように載置される。前述のとおり、パッド301は、吊りピン303によってタイバー302から吊り下げられている。
図8と同様に、吊りピン303の高さは下型キャビティ201の深さよりも若干高く設計されている。したがって、タイバー302及びリード304は、図示のとおり、下型200の型面から若干浮いた状態になる。
【0041】
つぎに、
図1(b)の矢印X11に示すとおり、下型200を上昇させる。これにより、図示のとおり、最外部のリード304が押さえ部材122により下方に押される。このとき、下型200に設けられた突起部211が、最外部のタイバー302の外側に嵌合する(
図4(i)参照)。これらにより、最外部のタイバー302の移動が抑制又は防止される。
【0042】
つぎに、
図1(c)の矢印X12に示すとおり、下型200をさらに上昇させ、上型100と下型200とを型締めする。このとき、弾性部材121が縮んで押さえ部材122が上昇する。この型締めにより、上型キャビティ101及び下型キャビティ201が合わさって型キャビティが形成され、その型キャビティ内で樹脂成形を行うことができるようになる。このとき、
図8(c)と同様に、タイバー302が型締めの圧力により押され、主に吊りピン303が変形して、上型100とリードフレーム300(リードフレーム300のリード304)と下型200とが隙間なく接触し、型締めが行われる。本実施例では、このとき、外側から二番目のタイバー302の内側に下型200の突起部211が嵌合し、タイバー302の移動が抑制又は防止される。図示のとおり、タイバー302の移動が抑制又は防止されていることにより、タイバー302は、
図7及び8のように外側にたわむことがない。すなわち、本実施例では、リードフレーム300の変形が抑制又は防止されている。
【0043】
なお、
図1(b)及び(c)において、押さえ部材122によりリード304を押さえてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、最外部のタイバー302に突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、及び、外側から二番目のタイバーに突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程は、それぞれ、本発明の樹脂成形品の製造方法における「タイバー移動抑制工程」の一部であるということができる。ただし、本発明の「タイバー移動抑制工程」は、後述するとおり、これに限定されない。例えば、
図1(b)及び(c)において、押さえ部材122によりリード304を押さえてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、最外部のタイバー302に突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、及び、外側から二番目のタイバー302に突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程のうち一部のみを、本発明の樹脂成形品の製造方法における「タイバー移動抑制工程」としてもよい。
【0044】
本実施例において、樹脂成形方法は特に限定されず、例えば、一般的な樹脂成形方法と同様又はそれに準じてもよい。本実施例における樹脂成形方法は、例えば、前述のとおり、トランスファ成形、射出成型、圧縮成形等であってもよい。より具体的には、例えば、
図1(a)の工程後、
図1(b)の工程に先立ち、固体状の樹脂材料(図示せず)を下型キャビティ201内に供給し、それを成形型1000の熱により溶融させて樹脂成形してもよい。この樹脂材料の形態も、前述のとおり特に限定されず、粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂を含む)、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂等であってもよい。また、例えば、
図1(c)のとおり型締めした後に、液状樹脂(図示せず)を、上型キャビティ101及び下型キャビティ201が合わさった型キャビティ内に注入し、それを固化(硬化)させて樹脂成形してもよい。この液状樹脂も特に限定されず、例えば、前述のとおり、常温で液状の樹脂であってもよいし、加熱により溶融されて液状となった溶融樹脂であってもよい。
【0045】
また、本発明において用いることができるリードフレームは、
図6及び7の形態に限定されず任意であり、どのようなリードフレームでもよい。ただし、本発明によれば、前述のとおり、枠部材を有しないリードフレームを用いてもリードフレームの変形を抑制又は防止できる。このため、本発明においては、枠部材を有しないリードフレームを用いることが好ましい。枠部材を有しないリードフレームを用いれば、例えば、前述のとおり、リードフレームの軽量化、省資源化、低コスト化等が可能である。例えば、リードフレームが枠部材を有しないことで、樹脂成形後にリードフレームの枠部材を切断除去する工程が不要となり、その分低コスト化も可能となる。なお、本発明において、リードフレームが「枠部材を有しない(有していない)」とは、リードフレーム全体(例えば、パッド、リード、タイバー及び吊りピンを含む全体)を囲む枠部材を有しないことをいう。例えば、
図6のリードフレーム300において、二枚の連結部材311は、リードフレーム300の矩形の長辺部分に配置されているが、リードフレーム300の矩形の短片部分には存在しない。すなわち、前述のとおり、連結部材311は、パッド301、リード304、タイバー302及び吊りピン303を両側から挟んでいるだけで、全体を囲っていない。したがって、連結部材311は「枠部材」ではない。本発明において、枠部材を有しないリードフレームは、例えば、リードフレームの周縁部の少なくとも一部が連結部材を有しないリードフレームであってもよい。
図6のリードフレーム300は、周縁部の二辺が連結部材を有し、他の二辺が連結部材を有していない。しかし、本発明において、枠部材を有しないリードフレームは、これに限定されない。例えば、枠部材を有しないリードフレームは、周縁部の三辺が連結部材を有し他の一辺が連結部材を有しないリードフレームでもよいし、周縁部の一辺が連結部材を有し他の三辺が連結部材を有しないリードフレームでもよい。また、枠部材を有しないリードフレームは、例えば、周縁部の長さの10%以上、20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上が連結部材を有しないリードフレームであってもよい。また、本発明において、枠部材を有しないリードフレームは、例えば、リードフレームの周縁部の少なくとも一部にリード、タイバー、吊りピン又はパッドが配置されているリードフレームであってもよい。枠部材を有するリードフレームは、リードフレームの周縁部の全体に枠部材が配置されているが、枠部材を有しないリードフレームは、周縁部の少なくとも一部に、枠部材ではない部材が配置されている。この枠部材ではない部材は、例えば、前述のとおり、リード、タイバー、吊りピン又はパッドであってもよい。例えば、
図6のリードフレーム300は、前述のとおり、周縁部の二辺にリード304が配置されている。本発明において、枠部材を有しないリードフレームは、例えば、周縁部の四辺のうち一辺、二辺、三辺又は四辺にリード、タイバー、吊りピン又はパッドが配置されているリードフレームであってもよい。また、本発明において、枠部材を有しないリードフレームは、例えば、周縁部の長さの10%以上、20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上にリード、タイバー、吊りピン又はパッドが配置されているリードフレームであってもよい。ただし、本発明において用いることができるリードフレームは、前述のとおり特に限定されず任意である。
【0046】
なお、本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、本発明の成形型を含む樹脂成形装置である。本発明の樹脂成形装置の構成は特に限定されず、例えば、本発明の成形型を含むこと以外は、一般的な樹脂成形装置と同様又はそれに準じてもよい。本実施例における樹脂成形装置の全体の構成も特に限定されないが、例えば、
図2に示すとおりであってもよい。以下、
図2について説明する。
【0047】
図2の平面図に、本発明の樹脂成形装置における全体の構成の一例を示す。図示のとおり、この樹脂成形装置1は、樹脂封止(樹脂成形)前のリードフレーム300及び樹脂タブレットTを供給する供給モジュール2と、樹脂成形する例えば2つの樹脂成形モジュール1000A、1000Bと、樹脂成形品を搬出するための搬出モジュール4とを、それぞれ構成要素として備えている。なお、構成要素である供給モジュール2と、樹脂成形モジュール1000A、1000Bと、搬出モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0048】
また、樹脂成形装置1は、供給モジュール2により供給されるリードフレーム300及び樹脂タブレットTを樹脂成形モジュール1000A、1000Bに搬送する搬送機構5(以下、「ローダ5」という。)と、樹脂成形モジュール1000A、1000Bにより樹脂成形された樹脂成形品を搬出モジュール4に搬送する搬送機構6(以下、「アンローダ6」という。)とを備えている。なお、樹脂タブレットTは、溶融することにより、溶融樹脂となることができる。また、その溶融樹脂は、固化(硬化)することにより、リードフレーム300を樹脂封止する封止樹脂となることができる。
【0049】
本実施形態の供給モジュール2は、基板供給モジュール7及び樹脂供給モジュール8を一体化したものである。
【0050】
基板供給モジュール7は、基板送出部71と、基板供給部72を有している。基板送出部71は、マガジン内のリードフレーム300を基板整列部に送り出すものである。基板供給部72は、基板送出部71からリードフレーム300を受け取り、受け取ったリードフレーム300を所定方向に整列させて、ローダ5に受け渡すものである。
【0051】
樹脂供給モジュール8は、樹脂送出部81と、樹脂供給部82とを有している。樹脂送出部81は、ストッカ(図示せず)から樹脂タブレットTを受け取り、樹脂供給部82に樹脂タブレットTを送り出すものである。樹脂供給部82は、樹脂送出部81から樹脂タブレットTを受け取り、受け取った樹脂タブレットTを所定方向に整列させて、ローダ5に受け渡すものである。
【0052】
樹脂成形モジュール1000A、1000Bは、それぞれ成形型1000を有している。各成形型1000は、
図1に示したように、下型200と、上型100とを有している。
【0053】
その他、上型100と下型200とには、それぞれヒータ等の加熱部(図示せず)が埋め込まれていてもよい。この加熱部により、上型100と下型200とを加熱できる。
【0054】
図2の樹脂成形装置1の動作は、例えば、以下のとおりである。まず、基板送出部71は、マガジン内のリードフレーム300を基板供給部72に送り出す。基板供給部72は、受け取ったリードフレーム300を所定の方向へ整列させて、ローダ5に引き渡す。これと並行して、樹脂送出部81は、ストッカ(図示せず)から受け取った樹脂タブレットTを樹脂供給部82に送り出す。樹脂供給部82は、受け取った樹脂タブレットTのうち必要な個数(
図2では4個)をローダ5に引き渡す。
【0055】
次に、ローダ5が、受け取った2枚のリードフレーム300と4個の樹脂タブレットTとを、成形型1000へ同時に搬送する。ローダ5は、リードフレーム300を下型200の装着部に、樹脂タブレットTを下型200に形成されたポットの内部に、それぞれ供給する。
【0056】
その後、上型100と下型200とを型締めする。そして、ポットブロック(図示せず)内の樹脂タブレットTを加熱して溶融させた溶融樹脂をプランジャ(図示せず)によって押圧する。これにより、溶融樹脂は、ランナ(樹脂通路)及びゲートを通して上型100及び下型200に形成された型キャビティ(
図1(a)~(c)参照)の内部に注入される。引き続き、硬化に必要な所要時間だけ溶融樹脂を加熱することによって、溶融樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する。これにより、型キャビティ内のパッド301は、型キャビティの形状に対応して成形された硬化樹脂(封止樹脂)内に封止される。
【0057】
次に、硬化に必要な所要時間の経過後において、上型100と下型200とを型開きして、樹脂成形品(図示なし)を離型する。その後、アンローダ6を使用して、成形型1000により樹脂封止された樹脂成形品を、搬出モジュール4の基板収容部401に収容する。
【0058】
上記の一連の動作を含む樹脂成形装置1全体の動作は、制御部9により制御される。この制御部9は、図2においては、供給モジュール2に設けているが他のモジュールに設けてもよい。なお、制御部9は、例えば、CPU、内部メモリ、AD変換器、入出力インバータ等を有する専用又は汎用のコンピュータから構成される。
【実施例2】
【0059】
つぎに、本発明の別の実施例について説明する。
【0060】
本実施例では、本発明の成形型の別の一例、及び、それを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。なお、本実施例において用いるリードフレームは、実施例1で用いたリードフレームと同じである。
【0061】
図3(a)~(c)の工程断面図に、本実施例の成形型及びそれを用いた本実施例の樹脂成形品の製造方法の工程の一部を示す。図示のとおり、本実施例の成形型1000は、下型200がリードフレーム押さえ機構220及び突起部211を有すること以外は、
図8の成形型1000と同じである。
【0062】
本実施例の成形型1000は、上型100がリードフレーム押さえ機構120を有さず、これに代えて下型200がリードフレーム押さえ機構220を有する。リードフレーム押さえ機構220及び突起部211は、それぞれ、本発明の成形型における「変形抑制機構」に該当する。リードフレーム押さえ機構220は、弾性部材221と押さえ部材222とを含む。押さえ部材222は、リードフレーム300の最外部(最も外側)のタイバー302を押さえることができる位置に設けられている。押さえ部材222は、弾性部材221を介して下型200の本体に取り付けられており、下型200の型面より突出して設けられている。本実施例では、この押さえ部材222の突出は、下型200に載置されるリードフレーム300の下型の型面から浮いたリード304及びタイバー302の部分を支えることができる距離であることが好ましい。押さえ部材222は、弾性部材221の伸縮によって上下動可能であり、型締めにより下型200と面一となる。
【0063】
本実施例の突起部211は、リードフレーム300の最外部のタイバー302の外側と、外側から二番目のタイバー302の内側とに嵌合する位置に複数設けられ、それによってタイバー302の移動を抑制又は防止することができる。また、本実施例においては、最外部の突起部211は、下型200本体ではなく押さえ部材222の上端に設けられている。
【0064】
図3の成形型1000を用いた樹脂成形品の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、
図3(a)~(c)に示すリードフレーム300は、前述のとおり、実施例1で用いたリードフレームすなわち
図6に示したリードフレーム300と同一である。
【0065】
まず、
図3(a)に示すとおり、下型200の上にリードフレーム300を載置する(リードフレーム載置工程)。実施例1と同様に、リードフレーム300は、パッド301が下型キャビティ201の底面に接するように載置される。また、吊りピン303の高さは下型キャビティ201の深さよりも若干高く設計されているため、タイバー302及びリード304は、下型200の型面から若干浮いた状態になる。本実施例では、前述のように、リードフレーム押さえ機構220の押さえ部材222が、弾性部材221によって、下型200より、この浮いた距離だけ突出して設けられている。したがって、このとき、下型200の押さえ部材222に設けられた突起部211が、最外部のタイバー302に嵌合し、押さえ部材122が、リードフレーム300の最外部のリード304及びタイバー302を下から支持する。そのため、最外部のタイバー302の移動は、実施例1の場合より抑制又は防止される。
【0066】
つぎに、
図3(b)の矢印X21に示すとおり、下型200を上昇させ、タイバー302及びリード304と上型100とを接触させる。
【0067】
つぎに、
図3(c)の矢印X22に示すとおり、下型200をさらに上昇させ、上型100と下型200とを型締めする。このとき、弾性部材221が縮んで押さえ部材222が下降する。この型締めにより、上型キャビティ101及び下型キャビティ201が合わさって型キャビティが形成され、その型キャビティ内で樹脂成形を行うことができるようになる。このとき、実施例1の
図1(c)と同様に、タイバー302が型締めの圧力により押され、上型100とリードフレーム300(リードフレーム300のリード304)と下型200とが隙間なく接触し、型締めが行われる。このとき、実施例1の
図1(c)と同様に、外側から二番目のタイバーに下型200の突起部211が嵌合し、タイバー302の移動が抑制又は防止される。図示のとおり、タイバー302の移動が抑制又は防止されていることにより、タイバー302は、
図7及び
図8のように外側にたわむことがない。すなわち、本実施例では、リードフレーム300の変形が抑制又は防止されている。
【0068】
なお、
図3(b)及び(c)において、押さえ部材222によりタイバー302を押さえてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、最外部のタイバー302に突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、及び、外側から二番目のタイバーに突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程は、それぞれ、本発明の樹脂成形品の製造方法における「タイバー移動抑制工程」の一部であるということができる。ただし、本発明の「タイバー移動抑制工程」は、これに限定されない。例えば、
図3(b)及び(c)において、押さえ部材222によりタイバー302を押さえてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、最外部のタイバー302に突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程、及び、外側から二番目のタイバーに突起部211を嵌合させてタイバー302の移動を抑制又は防止する工程のうち一部のみを、本発明の樹脂成形品の製造方法における「タイバー移動抑制工程」としてもよい。
【0069】
また、本実施例において、樹脂成形方法は特に限定されず、例えば、一般的な樹脂成形方法と同様又はそれに準じてもよいし、例えば、実施例1で説明した樹脂成形方法と同様であってもよい。さらに、樹脂成形装置全体の構成及びその動作も特に限定されず、例えば、
図2(実施例1)と同様であってもよい。
【実施例3】
【0070】
さらに、本発明は、実施例1及び2のみに限定されない。本実施例では、本発明の成形型の種々の例について説明する。
【0071】
図4(a)~(h)に、本発明の成形型の下型における種々の例を示す。
図4(a)~(h)において、
図1及び3と同一の構成要素は、同一の符号で示している。
【0072】
図4(a)の下型200は、その左右の両端における下型キャビティ201を、それぞれ二列の突起部211で挟むように、突起部211が設けられている。これら突起部211の列は、リードフレーム300(
図6参照)におけるタイバー302の方向と平行になるように設けられている。この突起部211の配置は、
図1(実施例1)の下型200における突起部211の配置と同じである。成形型の上型及び下型の型締め時には、例えば
図1に示すように、この二列の突起部211がタイバー302に嵌合し、タイバー302の移動を抑制又は防止する。
【0073】
図4(b)の下型200は、突起部211が、左右の最外部(両端の下型キャビティ201のさらに外側)に一列ずつのみ設けられていること以外は、
図4(a)の下型200と同じである。
【0074】
図4(c)の下型200は、複数の突起部211が、左右の両端だけでなく全ての下型キャビティ201を、それぞれ二列の突起部211で挟むように設けられ、突起部211が下型200全体に配置されている。
図4(d)の下型200は、左右の最外部以外の内側(図では、外側から2つめ)の下型キャビティ201にのみ、下型キャビティ201を二列の突起部211で挟むように、複数の突起部211が設けられている。
図4(e)の下型
200は、左右の最外部の下型キャビティ201の外側の中央部に、それぞれ1個の突起部211が設けられている。
【0075】
図4(f)の下型200は、突起部211を有しないことと、両端の下型キャビティ201のさらに外側に一つずつ押さえ部材222を有すること以外は、
図4(a)又は(b)の下型200と同じである。押さえ部材222は、リードフレーム300の最も外側のリード304の全部を押さえることができる長さ及び幅を有しており、最も外側のリード304の全部を押えることができる位置に設けられている。押さえ部材222は、
図3と同様に、弾性部材221を介して下型200の本体に取り付けられており、弾性部材221の伸縮によって上下動可能である。また、押さえ部材222の上端には、
図3と同様に突起部211を設けることもできる。
【0076】
図4(g)の下型200は、
図4(f)の押さえ部材222が複数に分割(ここでは、3つに分割)されて設けられている例である。この例では、押さえ部材222は、同じ大きさで分割されているが、より大きく変形する中央部分の部材がその他の部材より大きくてもよい。分割の個数や分割された押さえ部材222の大きさは、成形対象のリードフレームの形状に合わせて設計することが望ましい。
【0077】
図4(h)の下型200は、押さえ部材222が、リードフレーム300の最も外側のリード304の中央部分のみを押さえる長さ及び幅を有しており、最も外側のリード304の中央部分のみ押える位置に設けられている。それ以外は、
図4(h)の下型200は、
図4(f)の下型200と同じである。
図4(h)の下型200は、成形対象のリードフレームの形状が、中央部分において大きく変形する場合に適用できる。
【0078】
なお、本発明の成形型において、変形抑制機構における押さえ部材の位置は特に限定されないが、リードフレームの変形を抑制又は防止するために、リードフレームの強度が低い(弱い)部分を押さえることができる位置が好ましい。押さえ部材を設ける位置は、例えば、タイバーを押さえることができる位置が好ましく、最も外側のタイバーを押さえることができる位置が特に好ましい。前述のとおり、タイバーは強度が低くて変形しやすく、かつ、外側のタイバーほど変形しやすいためである。
【0079】
図4(a)~(h)は下型200の構成の例であるが、本発明の成形型において、突起部及び押さえ部材は、前述のとおり、上型に設けてもよい。
【0080】
本発明の成形型において、タイバーの移動を抑制又は防止する突起部は、なるべく外側に設けることが好ましく、最も外側のタイバーの移動を抑制又は防止できる位置に出来ることが、より好ましい。前述のとおり、外側のタイバーほど変形量が大きくなりやすいためである。また、突起部は、例えば、
図4(b)のように、最も外側のキャビティに対して一列でもよいし、
図4(a)のように最も外側のキャビティに対して二列でもよいし、
図4(c)のように全体的に配置してもよいし、
図4(e)のように最も外側のキャビティの中央部に1個ずつ配置してもよいし、その他、さらに、リードフレームの変形が大きい箇所のキャビティに対して同様に設けてもよい。一列当たりの突起部の個数は、成形対象のリードフレームの形状によって適宜設定することが望ましい。なお、実施例1及び2では、間隔5.2mm毎に1つの突起部を設けたが、前述のとおり、本発明はこれに限定されない。1つの突起部の大きさは、下型に載置されるリードフレームの隣り合うリードとリードとの間に配置できる大きさで、型締め時に上型と下型の型締めを邪魔しない高さであれば特に限定されない。実施例1及び2では、突起部の形状は立方体形状で、高さはリードフレームの厚みと同じとしたが、例えば突起部の形状は、直方体や角錐形状であってもよく、円柱形状であってもよい。
【0081】
本発明の成形型において、タイバーの移動を抑制又は防止する押さえ部材は、なるべく外側に設けることが好ましく、最も外側のタイバーの移動を抑制又は防止できる位置に出来ることが、より好ましい。前述のとおり、外側のタイバーほど変形量が大きくなりやすいためである。押さえ部材は、例えば、
図4(f)のように最も外側のリードを押えるように一つでもよいし、
図4(g)又は(h)のようにその他、リードフレームの変形が大きい箇所を押えるように設けても良い。押さえ部材の形状は、
図4(f)~(h)に例示した平面視矩形形状に限定されず、例えば、ピン形状、丸形状であってもよい。ただし、押さえ部材の形状は、加工の容易さや力が均一にかかることを考慮すると平面視矩形形状が好ましい。また、押さえ部材が押えるリードフレームの位置は、リードの部分に限定されず、リードとタイバーの両方の部分であっても良いし、タイバーの部分のみであってもよい。
【0082】
また、本発明の成形型における変形抑制機構は、これらに限定されない。例えば、本発明の成形型における変形抑制機構は、前述のとおり、タイバーの移動を抑制又は防止する突起部と、リードフレームを押さえてタイバーの移動を抑制又は防止する押さえ部材とを、両方含んでいてもよいし、一方のみ含んでいてもよい。変形抑制機構が、タイバーの移動を抑制又は防止する突起部を含む場合、突起部は、上型及び下型の両方に設けられていてもよいし、いずれか一方のみに設けられていてもよい。変形抑制機構が、タイバーの移動を抑制又は防止する押さえ部材を含む場合、押さえ部材は、上型及び下型の両方に設けられていてもよいし、いずれか一方のみに設けられていてもよい。
図5(a)~(d)の断面図に、それらの一部の例を示す。
図5(a)~(d)は、それぞれ、成形型1000における上型100及び下型200の、それぞれ最外部のみを拡大した断面図である。
図5(a)は、上型100及び下型200の両方に押さえ部材が設けられ、さらに、下型200の押さえ部材に突起部が設けられている例である。
図5(a)において、上型100は、
図1の上型100と同様の変形抑制機構120(弾性部材121と押さえ部材122とを含む)を有している。
図5(a)において、下型200は、
図3の下型200と同様の変形抑制機構220(弾性部材221と押さえ部材222とを含む)を有し、押さえ部材222の上端には、
図3と同様に突起部211が設けられている。
図5(b)は、上型100及び下型200のいずれにも押さえ部材が設けられておらず、下型200のみに突起部211が設けられている例である。
図5(c)は、上型100に押さえ部材及び突起部が設けられておらず、下型200には
図3及び
図5(a)と同様の変形抑制機構220(弾性部材221と押さえ部材222とを含む)及び突起部211が設けられている例である。
図5(d)は、上型100には
図1及び
図5(a)と同様の変形抑制機構120(弾性部材121と押さえ部材122とを含む)が設けられ、突起部が設けられておらず、下型200には押さえ部材が設けられておらず突起部211のみが設けられている例である。
【0083】
本発明の成形型における変形抑制機構は、前述のとおり、押さえ部材が、上型及び下型の両方に設けられていても、いずれか一方のみに設けられていても、設けられていなくてもよい。押さえ部材は、下型のみに設けられ、上型には設けられていないことが特に好ましい。上型に押さえ部材が設けられていなければ、
図1(b)のようにタイバー302が上型の押さえ部材122に押されて変形することがないため、リードフレーム300の変形量をより小さく抑えやすいためである。一方、下型に押さえ部材が設けられていると、例えば、
図3(b)に示すように、下型の押さえ部材222が、下型キャビティ201からの樹脂漏れを防止するダムの役割をすることもできる。また、変形抑制機構における突起部は、前述のとおり、上型及び下型の両方に設けられていても、いずれか一方のみに設けられていても、設けられていなくてもよいが、少なくとも下型に突起部が設けられていることが好ましい。下型に突起部が設けられていると、例えば
図3(a)に示すとおり、リードフレーム300を下型200に載置すると同時に下型の突起部
211をリードフレーム300に嵌合させて、タイバー302の移動を抑制又は防止できるためである。また、下型に押さえ部材が設けられ、その下型の押さえ部材に突起部が設けられていることが特に好ましい。そのような構成であると、例えば
図3(a)~(b)に示すとおり、押さえ部材222に設けられた突起部211によりタイバー302の移動を抑制又は防止しやすいとともに、前述のとおり、下型の押さえ部材222が、下型キャビティ201からの樹脂漏れを防止するダムの役割をすることもできるからである。
【0084】
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 樹脂成形装置
2 供給モジュール
4 搬出モジュール
5 搬送機構(ローダ)
6 搬送機構(アンローダ)
7 基板供給モジュール
8 樹脂供給モジュール
9 制御部
71 基板送出部
72 基板供給部
81 樹脂送出部
82 樹脂供給部
100 上型
101 上型キャビティ
120 リードフレーム押さえ機構(変形抑制機構)
121 弾性部材
122 押さえ部材
200 下型
201 下型キャビティ
211 突起部(変形抑制機構)
220 リードフレーム押さえ機構(変形抑制機構)
221 弾性部材
222 押さえ部材
300 リードフレーム
301 パッド
302 タイバー
303 吊りピン
311 連結部材
401 基板収容部
1000 成形型
1000A、1000B 樹脂成形モジュール
A リードフレーム300が枠部材を有しないことを示す枠線
B タイバー302が長いことを示す枠線
T 樹脂タブレット
X11、X12、X21、X22、X31、X32 下型200の上昇方向を示す矢印
Y11、Y12、Y13 タイバー302に平行方向の力が加わることを示す矢印