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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両制御システム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240903BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D113:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021106869
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005138
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 康佑
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佳夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 純也
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-190189(JP,A)
【文献】特開2021-059139(JP,A)
【文献】特開2019-156232(JP,A)
【文献】特開2020-059339(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013216931(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0012182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアバイワイヤ方式の車両を制御する車両制御システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の運転を支援する運転支援制御と、
前記運転支援制御による前記車両の転舵と連動して操舵反力成分をハンドルに付与する連動反力制御と
を実行するように構成され、
前記連動反力制御は、
前記ハンドルの操舵角に応じた目標転舵角であるドライバ転舵角を取得する処理と、
前記運転支援制御によって要求される目標転舵角である第1システム転舵角を取得する処理と、
前記車両のドライバの操舵意図に応じて前記第1システム転舵角を調整することによって第2システム転舵角を取得する調整処理と、
前記ドライバ転舵角と前記第2システム転舵角との間の差分を減少させる方向の操舵反力成分を前記ハンドルに付与する処理と
を含み、
前記調整処理は、前記第2システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の前記差分が前記第1システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の差分よりも小さくなるように、前記第1システム転舵角を調整して前記第2システム転舵角を取得する
車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムであって、
前記調整処理は、
前記ドライバの前記操舵意図に応じて連動反力ゲインを設定するゲイン設定処理と、
前記連動反力ゲインを前記第1システム転舵角に掛けることによって前記第2システム転舵角を算出する処理と
を含み、
前記ゲイン設定処理は、前記第2システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の前記差分が前記第1システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の前記差分よりも小さくなるように、前記連動反力ゲインを設定する
車両制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御システムであって、
前記ゲイン設定処理は、前記ドライバ転舵角と前記第1システム転舵角との間の前記差分に基づいて前記連動反力ゲインを設定する
車両制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御システムであって、
前記ゲイン設定処理は、
前記ドライバ転舵角と前記第1システム転舵角との間の前記差分を横加速度の次元に換算して横加速度偏差を取得する処理と、
前記横加速度偏差に基づいて前記連動反力ゲインを設定する処理と
を含む
車両制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の車両制御システムであって、
前記ゲイン設定処理は、
前記ドライバの前記操舵意図を反映した操舵パラメータが閾値を超えるか否かを判定する処理と、
前記操舵パラメータが前記閾値を超える場合、前記第2システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の前記差分が前記第1システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の前記差分よりも小さくなるように、前記連動反力ゲインを1とは異なる値に設定する処理と
を含む
車両制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両制御システムであって、
前記運転支援制御は、前記第2システム転舵角ではなく前記第1システム転舵角に基づいて前記車両の転舵を行う
車両制御システム。
【請求項7】
ステアバイワイヤ方式の車両を制御する車両制御方法であって、
前記車両の運転を支援する運転支援制御と、
前記運転支援制御による前記車両の転舵と連動して操舵反力成分をハンドルに付与する連動反力制御と
を含み、
前記連動反力制御は、
前記ハンドルの操舵角に応じた目標転舵角であるドライバ転舵角を取得する処理と、
前記運転支援制御によって要求される目標転舵角である第1システム転舵角を取得する処理と、
前記車両のドライバの操舵意図に応じて前記第1システム転舵角を調整することによって第2システム転舵角を取得する調整処理と、
前記ドライバ転舵角と前記第2システム転舵角との間の差分を減少させる方向の操舵反力成分を前記ハンドルに付与する処理と
を含み、
前記調整処理は、前記第2システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の前記差分が前記第1システム転舵角と前記ドライバ転舵角との間の差分よりも小さくなるように、前記第1システム転舵角を調整して前記第2システム転舵角を取得する
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアバイワイヤ(Steer-By-Wire)方式の車両を制御する技術に関する。特に、本開示は、車両の運転を支援する運転支援制御の機能を備えるステアバイワイヤ方式の車両を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の運転を支援する運転支援装置を開示している。その運転支援装置は、車両の周囲の障害物を検出すると、障害物との衝突可能性に基づいて、衝突を回避するための制動制御量を決定する。このとき、車両のドライバが障害物から離れるような操舵操作を行った場合、運転支援装置は、制動制御量が小さくなるように補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5781791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアバイワイヤ方式の車両が、車両の運転を支援する運転支援制御の機能も備える場合について考える。例えば、運転支援制御は、ドライバによる操舵操作によらず、自動的に車両の転舵を行う。その一方で、ステアバイワイヤ方式の車両では、操舵反力をハンドルに付与する反力制御が行われる。運転支援制御による車両転舵と連動して反力制御が行われる場合も考えられる。状況によっては、運転支援制御による車両転舵と連動して行われる反力制御に対してドライバが違和感を覚える可能性がある。
【0005】
本開示の1つの目的は、ステアバイワイヤ方式の車両において、運転支援制御による車両転舵と連動して行われる反力制御に対してドライバが感じる違和感を軽減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、ステアバイワイヤ方式の車両を制御する車両制御システムに関連する。
車両制御システムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、
車両の運転を支援する運転支援制御と、
運転支援制御による車両の転舵と連動して操舵反力成分をハンドルに付与する連動反力制御と
を実行するように構成される。
連動反力制御は、
ハンドルの操舵角に応じた目標転舵角であるドライバ転舵角を取得する処理と、
運転支援制御によって要求される目標転舵角である第1システム転舵角を取得する処理と、
車両のドライバの操舵意図に応じて第1システム転舵角を調整することによって第2システム転舵角を取得する調整処理と、
ドライバ転舵角と第2システム転舵角との間の差分を減少させる方向の操舵反力成分をハンドルに付与する処理と
を含む。
調整処理は、第2システム転舵角とドライバ転舵角との間の差分が第1システム転舵角とドライバ転舵角との間の差分よりも小さくなるように、第1システム転舵角を調整して第2システム転舵角を取得する。
【0007】
第2の観点は、ステアバイワイヤ方式の車両を制御する車両制御方法に関連する。
車両制御方法は、
車両の運転を支援する運転支援制御と、
運転支援制御による車両の転舵と連動して操舵反力成分をハンドルに付与する連動反力制御と
を含む。
連動反力制御は、
ハンドルの操舵角に応じた目標転舵角であるドライバ転舵角を取得する処理と、
運転支援制御によって要求される目標転舵角である第1システム転舵角を取得する処理と、
車両のドライバの操舵意図に応じて第1システム転舵角を調整することによって第2システム転舵角を取得する調整処理と、
ドライバ転舵角と第2システム転舵角との間の差分を減少させる方向の操舵反力成分をハンドルに付与する処理と
を含む。
調整処理は、第2システム転舵角とドライバ転舵角との間の差分が第1システム転舵角とドライバ転舵角との間の差分よりも小さくなるように、第1システム転舵角を調整して第2システム転舵角を取得する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、運転支援制御による車両転舵と連動して操舵反力成分をハンドルに付与する連動反力制御が行われる。連動反力制御のための操舵反力成分は、ドライバ転舵角とシステム転舵角との間の差分に基づいて生成される。このとき、ドライバの操舵意図に応じてシステム転舵角の調整が行われる。そして、調整前の第1システム転舵角ではなく、調整後の第2システム転舵角を用いることによって、連動反力制御のための操舵反力成分が生成される。調整後の第2システム転舵角とドライバ転舵角との間の差分は、調整前の第1システム転舵角とドライバ転舵角との間の差分よりも小さくなる。従って、ドライバの操舵意図がある場合には、連動反力制御のための操舵反力成分が抑制されることになる。その結果、連動反力制御に対してドライバが感じる違和感が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る車両及び車両制御システムの構成例を示す概略図である。
図2】実施の形態に係る車両制御システムの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】運転支援制御の一例であるリスク回避制御を説明するための概念図である。
図4】運転支援制御の他の例である車線維持支援制御を説明するための概念図である。
図5】運転支援制御の更に他の例である車線逸脱抑制制御を説明するための概念図である。
図6】比較例に係る連動反力制御部を示すブロック図である。
図7】実施の形態に係る連動反力制御部を示すブロック図である。
図8】実施の形態に係る連動反力制御部の調整部の構成例を示すブロック図である。
図9】実施の形態に係るゲイン設定部の第1の構成例を示すブロック図である。
図10】実施の形態に係るゲイン設定部の第2の構成例を示すブロック図である。
図11】実施の形態に係るゲイン設定部の第3の構成例を示すブロック図である。
図12】実施の形態に係る連動反力制御部の調整部の変形例を示すブロック図である。
図13】実施の形態における連動反力ゲインの変化の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
1.車両制御システム
図1は、本実施の形態に係る車両1及び車両制御システム10の構成例を示す概略図である。車両1は、車輪2及びハンドル(ステアリングホイール)3を備えている。ハンドル3は、車両1のドライバが操舵操作に用いる操作部材である。ステアリングシャフト4は、ハンドル3に連結されており、ハンドル3と共に回転する。車両1はステアバイワイヤ方式の車両であり、車輪2とハンドル3(ステアリングシャフト4)は機械的に切り離されている。
【0012】
車両制御システム10は、ステアバイワイヤ方式の車両1を制御する。車両制御システム10は、転舵装置20、反力装置30、運転環境情報取得装置40、及び制御装置100を備えている。
【0013】
転舵装置20は、車輪2を転舵する。転舵装置20は、車輪2を転舵するための転舵アクチュエータ21を含んでいる。例えば、転舵アクチュエータ21は、転舵モータである。転舵モータのロータは、減速機22を介して転舵軸23に連結されている。転舵軸23は、車輪2に連結されている。転舵モータが回転すると、その回転運動は転舵軸23の直線運動に変換され、それにより車輪2が転舵される。すなわち、転舵モータの作動により、車輪2を転舵することができる。転舵アクチュエータ21の動作は、制御装置100によって制御される。
【0014】
反力装置30は、ハンドル3に対して操舵反力(反力トルク)を付与する。反力装置30は、ハンドル3に操舵反力を付与するための反力アクチュエータ31を含んでいる。例えば、反力アクチュエータ31は、反力モータである。反力モータのロータは、減速機32を介してステアリングシャフト4につながっている。反力モータを作動させることにより、ステアリングシャフト4ひいてはハンドル3に操舵反力を付与することができる。反力アクチュエータ31の動作は、制御装置100によって制御される。
【0015】
運転環境情報取得装置40は、車両1の運転環境を示す運転環境情報ENVを取得する。運転環境情報取得装置40は、車両状態センサ50、認識センサ60、等を含んでいる。
【0016】
車両状態センサ50は、車両1の状態を検出する。車両状態センサ50は、操舵角センサ51、操舵トルクセンサ52、回転角センサ53、回転角センサ54、転舵電流センサ55、車速センサ56、等を含んでいる。操舵角センサ51は、ハンドル3の操舵角θs(ハンドル角)を検出する。操舵トルクセンサ52は、ステアリングシャフト4に印加される操舵トルクTsを検出する。回転角センサ53は、反力アクチュエータ31(反力モータ)の回転角Φを検出する。回転角センサ54は、転舵アクチュエータ21(転舵モータ)の回転角を検出する。転舵モータの回転角は、車輪2の転舵角(実転舵角δa)に相当する。よって、回転角センサ54は、車輪2の実転舵角δaを検出していると言うこともできる。転舵電流センサ55は、転舵アクチュエータ21を駆動する転舵電流Imを検出する。車速センサ56は、車両1の速度である車速Vを検出する。その他、車両状態センサ50は、ヨーレートセンサや加速度センサを含んでいてもよい。
【0017】
認識センサ60は、車両1の周辺の状況を認識(検出)する。認識センサ60としては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。
【0018】
運転環境情報取得装置40は、車両1の位置を取得する位置センサを含んでいてもよい。位置センサとしては、GPS(Global Positioning System)センサが例示される。運転環境情報取得装置40は、地図情報を取得してもよい。
【0019】
運転環境情報ENVは、車両状態情報及び周辺状況情報を含んでいる。車両状態情報は、車両状態センサ50によって検出される車両状態を示す。周辺状況情報は、認識センサ60による認識結果を示す。例えば、周辺状況情報は、カメラによって撮像される画像を含む。周辺状況情報は、車両1の周辺の物体に関する物体情報を含んでいてもよい。車両1の周辺の物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、標識、白線、路側構造物、等が例示される。物体情報は、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。運転環境情報ENVは、更に、車両1の位置情報、地図情報、等を含んでいてもよい。
【0020】
制御装置100は、車両1を制御する。制御装置100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ110は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置120は、プロセッサ110による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置120としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置100は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0021】
プロセッサ110がコンピュータプログラムである制御プログラムを実行することにより、制御装置100による各種処理が実現される。制御プログラムは、記憶装置120に格納される。あるいは、制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0022】
制御装置100(プロセッサ110)は、運転環境情報取得装置40から運転環境情報ENVを取得する。運転環境情報ENVは、記憶装置120に格納される。
【0023】
図2は、制御装置100の機能構成を示すブロック図である。制御装置100は、機能ブロックとして、転舵制御部200、反力制御部300、及び運転支援制御部400を含んでいる。これら機能ブロックは、制御プログラムを実行するプロセッサ110と記憶装置120の協働により実現される。尚、転舵制御部200、反力制御部300、及び運転支援制御部400は、それぞれ別の制御装置により実現されてもよい。その場合、それぞれの制御装置は、互いに通信可能に接続され、必要な情報を互いにやりとりする。
【0024】
以下、転舵制御部200、反力制御部300、及び運転支援制御部400のそれぞれについて詳しく説明する。
【0025】
2.転舵制御
転舵制御部200は、車輪2を転舵する「転舵制御」を行う。より詳細には、転舵制御部200は、転舵装置20の転舵アクチュエータ21を制御することによって、車輪2を転舵する。
【0026】
転舵制御部200は、ドライバによるハンドル3の操舵操作に応答して転舵制御を行う。例えば、転舵制御部200は、操舵角θs及び車速Vに基づいて目標転舵角δtを算出する。操舵角θsは、操舵角センサ51によって検出される。あるいは、操舵角θsは、回転角センサ53によって検出される回転角Φから算出されてもよい。車速Vは、車速センサ56によって検出される。転舵制御部200は、目標転舵角δtに従って車輪2を転舵する。車輪2の実転舵角δaは、回転角センサ54によって検出される。転舵制御部200は、実転舵角δaが目標転舵角δtに追従するように、転舵アクチュエータ21を制御する。より詳細には、転舵制御部200は、車輪2の目標転舵角δtと実転舵角δaとの偏差に基づいて、転舵アクチュエータ21を駆動するための制御信号を生成する。転舵アクチュエータ21は制御信号に従って駆動され、それにより車輪2が転舵される。尚、このときに転舵アクチュエータ21を駆動する電流が転舵電流Imである。
【0027】
また、転舵制御部200は、後に説明される運転支援制御部400からの要求に従って転舵制御を行う。この場合、転舵制御部200は、運転支援制御部400から目標制御量を取得し、その目標制御量に従って転舵制御を行う。
【0028】
3.反力制御
反力制御部300は、ハンドル3に操舵反力(反力トルク)を付与する「反力制御」を行う。より詳細には、反力制御部300は、反力装置30の反力アクチュエータ31を制御することによって、操舵反力をハンドル3に付与する。
【0029】
反力制御部300は、ドライバによるハンドル3の操舵操作に応答して反力制御を行う。例えば、反力制御部300は、操舵角θs及び車速Vに基づいて、車輪2にかかるセルフアライニングトルクに相当する目標操舵反力(ばね成分)を算出する。目標操舵反力は、更に、操舵速度(dθs/dt)に応じたダンピング成分を含んでいてもよい。そして、反力制御部300は、目標操舵反力が発生するように反力アクチュエータ31を制御する。より詳細には、反力制御部300は、目標操舵反力に基づいて、反力アクチュエータ31を駆動するための制御信号を生成する。反力アクチュエータ31は制御信号に従って駆動され、それにより操舵反力が発生する。
【0030】
また、反力制御部300は、後に説明される運転支援制御部400からの要求に従って反力制御を行ってもよい。更に、反力制御部300は、運転支援制御部400による運転支援制御と連動(連携)して反力制御を行ってもよい。運転支援制御と連動した反力制御については、後に詳しく説明される。
【0031】
4.運転支援制御
運転支援制御部400は、車両1の運転を支援する「運転支援制御」を行う。運転支援制御は、ドライバによる運転操作によらず、自動的に車両1の走行を制御する。本実施の形態では、特に、操舵に関連する運転支援制御について考える。そのような運転支援制御としては、自動運転制御、リスク回避制御、車線維持支援制御(LTA: Lane Tracing Assist)、車線逸脱抑制制御(LDA: Lane Departure Alert)、等が例示される。
【0032】
自動運転制御は、車両1の自動運転を制御する。具体的には、運転支援制御部400は、運転環境情報ENVに基づいて、車両1の走行プランを生成する。走行プランは、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、右左折を行う、障害物を回避する、等が例示される。更に、運転支援制御部400は、運転環境情報ENVに基づいて、車両1が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリTRJを生成する。目標トラジェクトリTRJは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、運転支援制御部400は、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するように車両走行制御を行う。
【0033】
より詳細には、運転支援制御部400は、車両1と目標トラジェクトリTRJとの間の偏差(横偏差、ヨー角偏差、速度偏差)を算出し、その偏差を減少させるために必要な目標制御量を算出する。目標制御量としては、目標転舵角、目標ヨーレート、目標速度、目標加速度、目標減速度、目標電流、等が挙げられる。運転支援制御部400は、目標制御量に従って車両走行制御を行う。車両走行制御は、転舵制御、加速制御、及び減速制御を含む。転舵制御は、上述の転舵制御部200を介して行われる。加速制御及び減速制御は、車両1の駆動装置及び制動装置(図示されない)を制御することにより行われる。
【0034】
図3は、リスク回避制御を説明するための概念図である。リスク回避制御は、車両1の前方の物体との衝突リスクを低減するための運転支援制御である。回避対象の物体としては、歩行者、自転車、二輪車、動物、他車両、等が例示される。運転支援制御部400は、運転環境情報ENVに含まれる周辺状況情報(物体情報)に基づいて、車両1の前方の物体を認識する。例えば、認識した物体との衝突リスクが閾値を超えた場合、運転支援制御部400は、リスク回避制御を行う。具体的には、運転支援制御部400は、物体との横距離を確保するために、物体から離れる方向に移動する目標トラジェクトリTRJを生成する。そして、運転支援制御部400は、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するように車両走行制御を行う。ここでの車両走行制御は、転舵制御と減速制御のうち少なくとも一方を含む。転舵制御は、上述の転舵制御部200を介して行われる。
【0035】
図4は、車線維持支援制御を説明するための概念図である。車線維持支援制御は、車両1が車線中央LCに沿って走行することを支援する運転支援制御である。車線は、左右の車線境界LBに挟まれた範囲である。車線境界LBとしては、白線(区画線)、縁石、等が例示される。車線中央LCは、車線の中心線である。運転支援制御部400は、運転環境情報ENVに含まれる周辺状況情報に基づいて、車線境界LB及び車線中央LCを認識する。車両1が車線中央LCから逸脱した場合、運転支援制御部400は、車線維持支援制御を行う。具体的には、運転支援制御部400は、車両1が車線中央LCに戻るように転舵制御を行う。転舵制御は、上述の転舵制御部200を介して行われる。
【0036】
図5は、車線逸脱抑制制御を説明するための概念図である。車線逸脱抑制制御は、車両1が走行車線から逸脱することを抑制するための運転支援制御である。運転支援制御部400は、運転環境情報ENVに含まれる周辺状況情報に基づいて、車線境界LBを認識する。車両1と車線境界LBとの距離が所定の閾値未満となった場合、運転支援制御部400は、車線逸脱抑制制御を行う。具体的には、運転支援制御部400は、車線逸脱の可能性をドライバに伝える。例えば、運転支援制御部400は、ハンドル振動機構(図示されない)を制御して、ハンドル3を振動させる。運転支援制御部400は、表示及び/あるいは音声を通して警告を出力してもよい。また、運転支援制御部400は、車両1が車線中央LCの方に移動するように転舵制御を行ってもよい。転舵制御は、上述の転舵制御部200を介して行われる。
【0037】
5.運転支援制御と反力制御との協調
次に、運転支援制御と反力制御との協調について考える。例えば、運転支援制御による車両1の転舵と連動(連携)して反力制御が行われる場合について考える。運転支援制御による車両1の転舵と連動して行われる反力制御を、以下、「連動反力制御」と呼ぶ。
【0038】
5-1.連動反力制御の概要
連動反力制御は、運転支援制御が作動しているときに、運転支援制御による車両1(車輪2)の転舵と連動してハンドル3を動かすことを目的としている。そのために、連動反力制御は、運転支援制御による車両1の転舵にハンドル3を追従させるための操舵反力成分をハンドル3に付与する。
【0039】
まず、図6を参照して、比較例について説明する。反力制御部300は、連動反力制御部310を含んでいる。連動反力制御部310は、連動反力制御のための操舵反力成分を生成するための目標制御量CON_Cを算出する。連動反力制御部310は、ドライバ転舵角取得部320、差分算出部370、及び制御量算出部380を含んでいる。
【0040】
ドライバ転舵角取得部320は、車両状態情報に含まれるハンドル3の操舵角θs(ハンドル角)を取得する。更に、ドライバ転舵角取得部320は、可変ギヤ比等に基づいて、ハンドル3の操舵角θsに応じた目標転舵角δtを算出する。この目標転舵角δtの算出は、上述の転舵制御部200によるものと同様である。便宜上、ハンドル3の操舵角θsに応じた目標転舵角δtを、以下、「ドライバ転舵角δx」と呼ぶ。
【0041】
一方、「システム転舵角δy」は、運転支援制御によって要求される目標転舵角δtである。システム転舵角δyは、上述の通り、運転支援制御部400によって決定される。連動反力制御部310は、運転支援制御部400によって決定されるシステム転舵角δyを取得する。
【0042】
差分算出部370は、ドライバ転舵角δxとシステム転舵角δyとの間の差分(偏差)を算出する。
【0043】
制御量算出部380は、ドライバ転舵角δxとシステム転舵角δyとの間の差分を減少させる方向の操舵反力成分を生成するための目標制御量CON_Cを算出する。例えば、制御量算出部380は、その差分が大きくなるにつれて操舵反力成分が増加するように、目標制御量CON_Cを算出する。
【0044】
尚、反力制御部300は、連動反力制御による目標制御量CON_Cを他の種類の反力制御による目標制御量と組み合わせることにより、最終的な目標制御量を算出する。そして、反力制御部300は、最終的な目標制御量に従って反力装置30の反力アクチュエータ31を制御し、反力制御を行う。
【0045】
このように、連動反力制御は、ドライバ転舵角δxとシステム転舵角δyとの間の差分を算出し、その差分を減少させる方向の操舵反力成分をハンドル3に付与する。但し、状況によっては、そのような連動反力制御に対してドライバが違和感を覚える可能性がある。例えば、ドライバが積極的な操舵意図を有する場合、連動反力制御により、ドライバはハンドル3が重いと感じる可能性がある。あるいは、連動反力制御により、ドライバはハンドル3が強く戻される感覚を覚える可能性がある。
【0046】
そこで、本実施の形態は、連動反力制御に対してドライバが感じる違和感を軽減することができる技術を提案する。
【0047】
図7は、本実施の形態に係る連動反力制御部310を示すブロック図である。図6で示された比較例の場合と比較して、連動反力制御部310は、更に調整部330を含んでいる。
【0048】
調整部330は、システム転舵角δyを調整する「調整処理」を実行する。運転支援制御によって要求されるシステム転舵角δy、すなわち、運転支援制御部400によって決定されるシステム転舵角δyを、便宜上、「第1システム転舵角δy1」と呼ぶ。調整部330は、第1システム転舵角δy1を取得し、ドライバの操舵意図に応じて第1システム転舵角δy1を調整する。調整後のシステム転舵角δyを、以下、「第2システム転舵角δy2」と呼ぶ。つまり、調整部330は、ドライバの操舵意図に応じて第1システム転舵角δy1を調整することによって第2システム転舵角δy2を取得する。
【0049】
ドライバの操舵意図は、操舵パラメータPsに反映される。例えば、操舵パラメータPsは、ドライバ転舵角δxである。他の例として、操舵パラメータPsは、ドライバ転舵角δxと第1システム転舵角δy1との間の差分であってもよい。更に他の例としては、操舵パラメータPsは、操舵トルクセンサ52によって検出される操舵トルクTsであってもよい。調整部330は、操舵パラメータPsに応じて第1システム転舵角δy1を調整することによって第2システム転舵角δy2を取得する。
【0050】
第1システム転舵角δy1と第2システム転舵角δy2との関係は、次の通りである。第1差分d1は、調整前の第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の差分(偏差)である。一方、第2差分d2は、調整後の第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の差分(偏差)である。調整部330は、第2差分d2の絶対値が第1差分d1の絶対値よりも小さくなるように、第1システム転舵角δy1を調整して第2システム転舵角δy2を取得する。
【0051】
その後、差分算出部370は、ドライバ転舵角δxと第2システム転舵角δy2との間の第2差分d2を算出する。そして、制御量算出部380は、第2差分d2を減少させる方向の操舵反力成分を生成するための目標制御量CON_Cを算出する。例えば、制御量算出部380は、第2差分d2が大きくなるにつれて操舵反力成分が増加するように、目標制御量CON_Cを算出する。
【0052】
このように、本実施の形態に係る連動反力制御では、ドライバの操舵意図に応じてシステム転舵角δyの調整が行われる。そして、調整前の第1システム転舵角δy1ではなく、調整後の第2システム転舵角δy2を用いることによって、連動反力制御のための操舵反力成分が生成される。調整後の第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の第2差分d2は、調整前の第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1よりも小さい。従って、ドライバの操舵意図がある場合には、連動反力制御のための操舵反力成分が抑制されることになる。その結果、連動反力制御に対してドライバが感じる違和感が軽減される。
【0053】
尚、システム転舵角δyの調整が行われるのは、ハンドル3に操舵反力を付与する連動反力制御においてのみである。運転支援制御部400は、自身が決定したシステム転舵角δy(すなわち第1システム転舵角δy1)に基づいて、転舵制御を含む運転支援制御を行う。よって、運転支援制御においては狙い通りの車両転舵が実現される。つまり、運転支援制御の性能が損なわれることはない。
【0054】
5-2.調整部の構成例
図8は、連動反力制御部310の調整部330の構成例を示すブロック図である。調整部330は、ゲイン設定部340と乗算部360を含んでいる。ゲイン設定部340は、連動反力ゲインGcを設定する「ゲイン設定処理」を実行する。ゲイン設定部340は、ドライバの操舵意図、すなわち、操舵パラメータPsに応じて連動反力ゲインGcを設定する。そして、乗算部360は、連動反力ゲインGcを第1システム転舵角δy1に掛けることによって、第2システム転舵角δy2を算出する(δy2=Gc×δy1)。
【0055】
ゲイン設定部340は、第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の第2差分d2が第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1よりも小さくなるように、連動反力ゲインGcを設定する。以下、ゲイン設定部340の様々な構成例について説明する。
【0056】
5-2-1.第1の構成例
図9は、ゲイン設定部340の第1の構成例を示すブロック図である。ゲイン設定部340は、差分算出部341とゲインマップ部342を含んでいる。
【0057】
差分算出部341は、第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1を算出する。尚、第1の構成例では、ドライバ転舵角δx、あるいは、第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1が、操舵パラメータPsに相当する。
【0058】
ゲインマップ部342は、第1差分d1に基づいて連動反力ゲインGcを設定する。例えば、ドライバ転舵角δxが第1システム転舵角δy1よりも大きい場合、第2システム転舵角δy2をドライバ転舵角δxにより近づけるために、連動反力ゲインGcは1よりも大きい値に設定される。一方、第1システム転舵角δy1がドライバ転舵角δxよりも大きい場合、第2システム転舵角δy2をドライバ転舵角δxにより近づけるために、連動反力ゲインGcは1よりも小さい値に設定される。これにより、第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の第2差分d2が、第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1よりも小さくなる。
【0059】
ゲインマップ部342は、第1差分d1と共に車速Vを考慮して連動反力ゲインGcを設定してもよい。
【0060】
5-2-2.第2の構成例
図10は、ゲイン設定部340の第2の構成例を示すブロック図である。ゲイン設定部340は、差分算出部341、横G換算部343、及びゲインマップ部344を含んでいる。差分算出部341は、第1の構成例の場合と同じである。
【0061】
横G換算部343は、車速Vに基づいて、第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1を横加速度の次元に換算する。車速Vは、車両状態情報から得られる。換算の結果、第1差分d1に相当する横加速度偏差d1’が得られる。
【0062】
ゲインマップ部344は、第1差分d1の代わりに横加速度偏差d1’に基づいて連動反力ゲインGcを設定する。連動反力ゲインGcの設定ポリシーは、上述の第1の構成例のゲインマップ部342の場合と同様である。但し、ゲインマップ部344は、車速Vに依存しないため、第1の構成例のゲインマップ部342よりも簡略化される。
【0063】
5-2-3.第3の構成例
図11は、ゲイン設定部340の第3の構成例を示すブロック図である。ゲイン設定部340は、ドライバ操舵判定部345とゲイン切替部346を含んでいる。
【0064】
ドライバ操舵判定部345は、ドライバが操舵意図を有しているか否かを判定する。そのために、ドライバ操舵判定部345は、ドライバの操舵意図を反映した操舵パラメータPsが閾値を超えるか否かを判定する。例えば、操舵パラメータPsは、操舵トルクセンサ52によって検出される操舵トルクTsである。他の例として、操舵パラメータPsは、ドライバ転舵角δxと第1システム転舵角δy1との間の第1差分d1であってもよい。更に他の例としては、操舵パラメータPsは、第1差分d1を横加速度の次元に換算した横加速度偏差d1’であってもよい。操舵パラメータPsが閾値を超える場合、ドライバ操舵判定部345は、ドライバが操舵意図を有していると判定する。
【0065】
ゲイン切替部346は、ドライバ操舵判定部345による判定の結果に応じて、連動反力ゲインGcを切り替える。具体的には、ドライバが操舵意図を有していないと判定された場合、ゲイン切替部346は、連動反力ゲインGcを「1」に設定する。一方、ドライバが操舵意図を有していると判定された場合、ゲイン切替部346は、連動反力ゲインGcを1とは異なる値αに設定する。
【0066】
例えば、第3の構成例は、ドライバによる操舵方向と運転支援制御による転舵方向が逆相の場合に適用される。逆相の場合、値αは1未満である。1未満の連動反力ゲインGcを用いることによって、第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の第2差分d2が、第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1よりも小さくなる。
【0067】
ドライバによる操舵方向と運転支援制御による転舵方向が同相の場合、値αは、ドライバ転舵角δxと第1システム転舵角δy1との大小関係に依存して変わる。ドライバ転舵角δxが第1システム転舵角δy1よりも大きい場合、値αは、1よりも大きい値に設定される。一方、第1システム転舵角δy1がドライバ転舵角δxよりも大きい場合、値αは1よりも小さい値に設定される。これにより、第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の第2差分d2が、第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1よりも小さくなる。
【0068】
5-3.変形例
図12は、連動反力制御部310の調整部330の変形例を示すブロック図である。図8図11で示された例と比較して、調整部330は、更にガード部350を含んでいる。ガード部350は、操舵反力の急変を抑制するために、連動反力ゲインGcを徐々に変化させる。
【0069】
図13は、連動反力ゲインGcの変化の例を説明するための図である。図13に示される例では、連動反力ゲインGcが「1」から「α」に徐々に変化している。例えば、連動反力ゲインGcの変化時間は、「第1システム転舵角δy1の主たる周波数成分の逆数」×1/2に設定される。これにより、第2システム転舵角δy2の変化勾配は、元の第1システム転舵角δy1の変化勾配未満となる。よって、操舵反力の急変が抑制される。
【0070】
5-4.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、運転支援制御による車両1の転舵と連動して操舵反力成分をハンドル3に付与する連動反力制御が行われる。連動反力制御のための操舵反力成分は、ドライバ転舵角δxとシステム転舵角δyとの間の差分に基づいて生成される。このとき、ドライバの操舵意図に応じてシステム転舵角δyの調整が行われる。そして、調整前の第1システム転舵角δy1ではなく、調整後の第2システム転舵角δy2を用いることによって、連動反力制御のための操舵反力成分が生成される。調整後の第2システム転舵角δy2とドライバ転舵角δxとの間の第2差分d2は、調整前の第1システム転舵角δy1とドライバ転舵角δxとの間の第1差分d1よりも小さくなる。従って、ドライバの操舵意図がある場合には、連動反力制御のための操舵反力成分が抑制されることになる。その結果、連動反力制御に対してドライバが感じる違和感が軽減される。
【0071】
尚、システム転舵角δyの調整が行われるのは、ハンドル3に操舵反力を付与する連動反力制御においてのみである。運転支援制御における転舵制御は、元の第1システム転舵角δy1に基づいて行われる。よって、運転支援制御においては狙い通りの車両転舵が実現される。つまり、運転支援制御の性能が損なわれることはない。
【0072】
また、本実施の形態によれば、連動反力ゲインGcは、ドライバ転舵角δxではなく、システム転舵角δyに掛けられる。よって、ドライバの操舵意図を反映したドライバ転舵角δxが影響を受けることはない。反力制御におけるドライバ転舵角δxの影響力は損なわれず、ドライバの操舵意図に応じた反力制御が実現される。
【0073】
また、システム転舵角δyの調整は、運転支援制御部400ではなく反力制御部300(連動反力制御部310)によって行われる。ドライバの操舵意図を反映した操舵パラメータPsを運転支援制御部400に送信する必要はない。よって、ECU間のデータ通信量が削減される。
【符号の説明】
【0074】
1 車両
2 車輪
3 ハンドル
10 車両制御システム
20 転舵装置
30 反力装置
40 運転環境情報取得装置
50 車両状態センサ
60 認識センサ
100 制御装置
110 プロセッサ
120 記憶装置
200 転舵制御部
300 反力制御部
310 連動反力制御部
320 ドライバ転舵角取得部
330 調整部
340 ゲイン設定部
350 ガード部
360 乗算部
370 差分算出部
380 制御量算出部
400 運転支援制御部
Gc 連動反力ゲイン
δx ドライバ転舵角
δy1 第1システム転舵角
δy2 第2システム転舵角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13