(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】試験システム
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20240903BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01D21/00 N
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2021143875
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】久保 直紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 一博
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122766(JP,A)
【文献】特開2016-134047(JP,A)
【文献】特開2009-164952(JP,A)
【文献】特開2014-98983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/00
G01M 17/007
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の個体識別情報を有するセンサと、
前記センサと通信可能に構成された試験装置と、
前記試験装置と通信可能に構成されたサーバと、を備え、
前記試験装置は、
供試体に取り付けられた前記センサの個体識別情報を取得する個体識別情報取得部を有し、前記取得した個体識別情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
試験に用いられるセンサの個体識別情報を含む試験情報を記憶する記憶部を有し、前記試験装置から得られるセンサの個体識別情報と前記試験情報に含まれるセンサの個体識別情報とを照合して、その照合結果を出力する
試験システム。
【請求項2】
前記試験に前記センサが複数用いられ、
前記試験装置は、
前記個体識別情報取得部が前記複数のセンサの各々についての個体識別情報を取得し、前記取得した個体識別情報の全てを前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記複数のセンサの各々についての個体識別情報を含む試験情報を前記記憶部に記憶し、前記試験装置から得られるセンサの個体識別情報と前記試験情報に含まれているセンサの個体識別情報との組み合わせをもとに照合を行う
請求項1に記載の試験システム。
【請求項3】
前記試験装置は、
前記試験における前記センサの検出結果を示す検出情報を収録する収録部を有し、前記収録した検出情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記検出情報と前記試験情報とを関連付けた試験結果情報を前記記憶部に記憶する
請求項1または2に記載の試験システム。
【請求項4】
前記サーバは、
前記試験結果情報の試験情報を読み出して個体識別情報の照合を行う
請求項3に記載の試験システム。
【請求項5】
前記サーバは、
読み出し操作によって個別に読み出し可能に前記試験結果情報を前記記憶部に記憶するとともに、前記読み出し操作を受け付けることにより、前記読み出し操作に応じた試験結果情報の試験情報を読み出して個体識別情報の照合を行う
請求項4に記載の試験システム。
【請求項6】
前記センサと前記試験装置とは、無線通信により通信を行う
請求項1~5のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項7】
前記サーバと通信可能に構成された入力端末を備え、
前記入力端末は、
前記試験情報を入力する入力部を有し、前記入力した試験情報を前記サーバに送信する
請求項1~6のいずれか一項に記載の試験システム。
【請求項8】
前記センサと前記入力端末とは、前記個体識別情報を無線通信可能に構成されている
請求項7に記載の試験システム。
【請求項9】
前記センサは、前記供試体における自身の位置を出力する位置出力部を有し、
前記試験情報は、前記供試体における前記センサの正規位置を示すセンサ位置情報を含み、
前記試験装置は、前記供試体における前記センサの実際の取付位置を示す取付位置情報を取得し、前記取得した取付位置情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記センサ位置情報における前記センサの正規位置と前記取付位置情報における前記センサの実際の取付位置とを照合して、その照合結果を出力する
請求項1~8のいずれか一項に記載の試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体の試験を行う試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
試験対象である供試体の試験を行う試験システムとして、特許文献1に記載の試験システムが知られている。特許文献1においては、供試体をパレット上に設置して、そのパレットを試験場所へと自動的に搬送して試験を行っている。
【0003】
具体的には、パレットには、供試体に取り付けられた各種センサが接続される端子や供試体に電源を供給する端子のほか、供試体を識別する識別情報が記載されたバーコードなどの識別情報が印刷されたラベルを指定位置に有するインターフェイスパッドが設けられている。試験場所の入口には、ラベルの識別情報を読み取る読取装置が設置されている。また、試験場所には、各種端子が電気的に接続される端子を有するパネルが設置されている。そして、試験場所の入口においてラベルの識別情報を読み取って供試体を識別するとともに、試験場所の所定位置までパレットが搬送されることにより、インターフェイスパッドの各種端子とパネルの各種端子とが接続されるように構成されている。こうした構成によれば、試験場所のダウンタイムを削減することが可能であるとともに、ラベルから識別情報を読み取ることで供試体を識別することができる。なお、こうしたラベルを用いた識別は、各種センサを用いて供試体の試験を行うとともに、それらの各種センサを試験場所とは異なる場所で取り付ける試験システムにも適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の試験システムでは、ラベルの読み取り装置を設置する必要があるばかりか、指定位置に対するラベルの取付作業が供試体ごとに必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する試験システムは、固有の個体識別情報を有するセンサと、前記センサと通信可能に構成された試験装置と、前記試験装置と通信可能に構成されたサーバと、を備える。前記試験装置は、供試体に取り付けられた前記センサの個体識別情報を取得する個体識別情報取得部を有し、前記取得した個体識別情報を前記サーバに送信する。前記サーバは、試験に用いられるセンサの個体識別情報を含む試験情報を記憶する記憶部を有し、前記試験装置から得られるセンサの個体識別情報と前記試験情報に含まれるセンサの個体識別情報とを照合して、前記供試体が試験対象であるか否かの照合結果を出力する。
【0007】
上記構成によれば、試験装置から得られる各センサの個体識別情報と試験情報に登録されている各センサの個体識別情報との照合により、その供試体が試験対象となる供試体であることを判別できる。すなわち、読み取り装置の設置や供試体ごとに指定位置にラベルを取り付ける作業が不要な構成のもとで供試体が試験対象であるか否かを判別できる。
【0008】
上記試験システムにおいては、前記試験に前記センサが複数用いられる場合、前記試験装置は、前記個体識別情報取得部が前記複数のセンサの各々についての個体識別情報を取得し、前記取得した個体識別情報の全てを前記サーバに送信する。前記サーバは、前記複数のセンサの各々についての個体識別情報を含む試験情報を前記記憶部に記憶し、前記試験装置から得られるセンサの個体識別情報と前記試験情報に含まれているセンサの個体識別情報との組み合わせをもとに照合を行うことが好ましい。
【0009】
上記構成のように試験に複数のセンサが用いられる場合には、試験装置から得られるセンサの個体識別情報と試験情報に含まれているセンサの個体識別情報との組み合わせをもとに照合を行うことで、その照合結果に対する信頼度を高めることができる。
【0010】
上記試験システムにおいて、前記試験装置は、前記試験における前記センサの検出結果を示す検出情報を収録する収録部を有し、前記収録した検出情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記検出情報と前記試験情報とを関連付けた試験結果情報を前記記憶部に記憶することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、例えば、サーバが記憶している試験結果情報に基づいて、供試体の諸元および試験条件に対してセンサの検出値が異常な傾向を示していないかを検証することができる。これにより、検証結果に基づいて、センサの校正時期を調整したり、センサの修理を早めに行ったりすることができる。すなわち、センサのメンテナンスに試験結果情報を利用することができる。
【0012】
上記試験システムにおいて、前記サーバは、前記試験結果情報の試験情報を読み出して個体識別情報の照合を行ってもよい。
上記構成によれば、過去に行った試験と同一の試験を改めて行う場合に、試験情報の入力を省略できる。その結果、試験に要する時間を短くすることができる。
【0013】
上記試験システムにおいて、前記サーバは、読み出し操作によって個別に読み出し可能に前記試験結果情報を前記記憶部に記憶するとともに、前記読み出し操作を受け付けることにより、前記読み出し操作に応じた試験結果情報の試験情報を読み出して個体識別情報の照合を行うことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、過去に行った試験と同一の試験を改めて行う場合に、その試験の試験情報を読み出し操作で読み出すことができる。これにより、試験情報の入力を省略できることから、試験に要する時間を短くすることができる。
【0015】
上記試験システムにおいて、前記センサと前記試験装置とは、無線通信により通信を行うことが好ましい。
上記構成によれば、センサと試験装置とを有線で接続する接続作業が不要となることから、例えば、試験装置が設置された試験室において供試体の試験が行われる場合に、その試験室のダウンタイムを削減することができる。
【0016】
上記試験システムは、前記サーバと通信可能に構成された入力端末を備える。前記入力端末は、前記試験情報を入力する入力部を有し、前記入力した試験情報を前記サーバに送信することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、試験装置を用いてある供試体の試験を行っている間に、他の供試体の試験情報を入力端末を通じてサーバに登録することができる。
上記試験システムにおいて、前記センサと前記入力端末とは、前記個体識別情報を無線通信可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、個体識別情報の入力作業、および、センサと入力端末とを有線で接続する接続作業が不要となることから、準備時間を含めた試験時間を短縮することができる。
【0019】
上記試験システムにおいて、前記センサは、前記供試体における自身の位置を出力する位置出力部を有し、前記試験情報は、前記供試体における前記センサの位置を示すセンサ位置情報を含み、前記試験装置は、前記供試体における前記センサの取付位置を示す取付位置情報を取得し、前記取得した取付位置情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記センサ位置情報における前記センサの位置と前記取付位置情報における前記センサの取付位置とを照合して、その照合結果を出力することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、供試体に取り付けられたセンサについて、その位置が正しいか否かを判別することができる。これにより、供試体の搬送中などにセンサが脱落したとしても、その脱落を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態における試験システムの概略構成を示す図。
【
図2】第1実施形態における試験の流れを示すフローチャート。
【
図3】第2実施形態における試験システムの概略構成を示す図。
【
図4】第2実施形態における試験の流れを示すフローチャート。
【
図5】変形例における試験システムの概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および
図2を参照して、試験システムの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、試験システム20は、供試体11に対して試験を行う際に用いられるシステムである。
【0023】
供試体11は、試験内容に応じた複数のセンサ12の取付等の準備が準備室13で行われたのちに試験室14へと搬送される。試験室14に搬送された供試体11は、所望の位置に設置される。試験システム20は、試験室14に搬送された供試体11が試験対象であるか否かを判定する。試験システム20は、供試体11が試験対象でない場合、その旨をオペレータに通知する。一方、供試体11が試験対象である場合、試験システム20は、供試体11の試験を行い、試験中に各センサ12が検出した検出値を収録する。
【0024】
試験システム20は、入力端末21、サーバ22、および、試験装置23を備える。入力端末21および試験装置23は、サーバ22と通信可能に構成されている。入力端末21は、試験の準備段階において各センサ12のチャンネル情報などの入力に使用される装置である。サーバ22の設置場所は、特に限定されるものではないが、準備室13および試験室14とは別の場所に設置されてもよい。サーバ22は、上述した試験対象の判定などを行う。試験装置23は、試験室14に搬入された供試体11に対して試験を行うとともに試験中における各センサ12の検出値の収録などを行う。
【0025】
各センサ12は、固有の識別情報である個体識別情報(MACアドレス)を有している。各センサ12は、入力端末21および試験装置23と通信可能に構成されている。本実施形態において、各センサ12は、入力端末21および試験装置23と無線通信可能に構成されている。各センサ12は、入力端末21や試験装置23に接続されると自身の個体識別情報を送信する。また、各センサ12は、供試体11の試験中、自身の検出値を試験装置23に送信する。
【0026】
(第1実施形態の試験システム)
入力端末21、試験装置23、および、サーバ22の各々は、情報処理装置を含んで構成されている。情報処理装置は、各種情報を取得し、その取得した各種の情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。情報処理装置は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0027】
入力端末21は、通信部25、入力部26、および、送受信部27を有する。
通信部25は、サーバ22との間で通信可能に構成されている。入力端末21は、通信部25によるサーバ22との通信を通じて、各種の情報をサーバ22に送信する。
【0028】
入力部26は、オペレータが操作可能なキーボードやマウス、タッチパネルなどで構成される。オペレータは、入力部26を通じて、各種情報や各種指示などを入力する。
送受信部27は、その送受信エリアに存在しているセンサ12との間で各種信号の送受信が可能に構成されている。送受信部27の送受信エリアは、準備室13全体が含まれる範囲であってもよいし、入力端末21の近傍の範囲であってもよい。入力端末21は、送受信部27を通じて、送受信エリアに存在しているセンサ12に接続される。
【0029】
サーバ22は、通信部30、記憶部31、および、処理部32を有する。
通信部30は、入力端末21および試験装置23との間で通信可能に構成されている。サーバ22は、通信部30による入力端末21との通信を通じて、入力端末21との間で各種情報などの送受信を行う。サーバ22は、通信部30による試験装置23との通信を通じて、試験装置23との間で各種情報などの送受信を行う。
【0030】
記憶部31は、各種情報を記憶する。記憶部31は、例えば、入力端末21がサーバ22に送信した情報や試験装置23がサーバ22に送信した情報を記憶する。
処理部32は、各種処理を実行する。処理部32は、例えば、試験室14内の供試体11が所望の試験対象であるか否かを判定する。
【0031】
試験装置23は、試験室14に常設されている。試験装置23の一例は、エンジンベンチ、トランスミッションベンチ、シャシダイナモなどの自動車試験装置、振動試験機、温度試験に用いる恒温槽などである。
【0032】
試験装置23は、通信部35、送受信部36、実行部37、および、収録部38を有する。通信部35は、サーバ22との間で通信可能に構成されている。試験装置23は、通信部35によるサーバ22との通信を通じて、サーバ22との間で各種情報の送受信を行う。
【0033】
送受信部36は、送受信エリアに存在しているセンサ12との間で各種信号の送受信が可能に構成されている。試験装置23は、送受信部36を通じて、送受信エリアに存在しているセンサ12に接続される。送受信部36の送受信エリアは、試験室14全体が含まれる範囲である。
【0034】
実行部37は、各種処理を実行する。実行部37は、例えば、供試体11に対して試験を行う試験処理を実行する。
収録部38は、各種情報を収録する。収録部38は、例えば、供試体11の試験中におけるセンサ12の検出結果を検出情報として収録する。
【0035】
(第1実施形態における試験の流れ)
図2を参照して、第1実施形態に対する試験の流れについて説明する。
図2に示すように、まず、準備室13においてセンサ12の取付作業が行われる(ステップS101)。取付作業では、供試体11に対して試験内容に応じたセンサ12が取り付けられる。
【0036】
次に、入力端末21が各センサ12の個体識別情報を取得する(ステップS102)。ステップS102においては、オペレータが入力端末21の入力部26を操作することで、送受信部27を通じて入力端末21と各センサ12が接続される。各センサ12と接続された入力端末21は、各センサ12の個体識別情報を取得する。
【0037】
次に、入力端末21にチャンネル情報が入力される(ステップS103)。チャンネル情報は、センサ12の検出値の名称や単位、スケールなどをセンサ12ごとに示す情報である。ステップS103においては、オペレータが入力端末21の入力部26を操作することで、各センサ12のチャンネル情報が入力端末21に入力される。
【0038】
次に、入力端末21に試験内容情報が入力される(ステップS104)。試験内容情報は、試験名称、供試体の諸元、試験条件、試験プログラム、インターロック条件などで構成されている。ステップS104においては、オペレータが入力端末21の入力部26を操作することで、試験名称、供試体の諸元、試験条件、試験プログラム、インターロック条件などの試験内容情報が入力端末21に入力される。
【0039】
各センサ12の個体識別情報の取得(ステップS102)、各センサ12のチャンネル情報の入力(ステップS103)、試験内容情報の入力(ステップS104)が終了すると、入力端末21は、これらの各種情報を含む試験情報をサーバ22に送信する(ステップS105)。ステップS105においては、オペレータが入力端末21の入力部26に対して所定の操作を行うことにより、通信部25を通じてサーバ22に試験情報が送信される。サーバ22は、試験情報を通信部30で受信すると、その試験情報を記憶部31に記憶する(ステップS106)。
【0040】
上記の各種ステップが完了すると、供試体11が準備室13から試験室14へと搬送される(ステップS107)。
試験室14に供試体11が搬送されると、まず、試験装置23が各センサ12の個体識別情報を取得する(ステップS108)。具体的には、試験装置23は、送受信部36を個体識別情報取得部として、供試体11に取り付けられている各センサ12の個体識別情報を送受信部36で受信することにより取得する。
【0041】
各センサ12の個体識別情報を取得した試験装置23は、その取得した各センサ12の個体識別情報を通信部35からサーバ22に送信する(ステップS109)。サーバ22は、試験装置23が送信した各センサ12の個体識別情報を通信部30で受信する。
【0042】
試験装置23からの個体識別情報をサーバ22が受信すると、サーバ22の処理部32は、個体識別情報の照合(ステップS110)を行ったのち、試験室14内の供試体11が試験対象であるか否かに応じた照合結果を出力する(ステップS111,S112)。
【0043】
具体的には、照合において、処理部32は、試験装置23からの個体識別情報と試験情報の個体識別情報との組み合わせが合致しているか否かを判定する。
処理部32は、個体識別番号の少なくとも1つが合致しない場合(ステップS110:NO)、その照合結果としてエラー出力を行う(ステップS111)。
【0044】
エラー出力において、処理部32は、例えば、通信部30からエラー信号を試験装置23に送信する。試験装置23は、通信部35でエラー信号を受信すると、試験室14に搬送された供試体11が試験対象ではないことを示すエラーをオペレータに通知する。通知方法としては、例えば、オペレータが視認可能な表示部にその旨を表示させたり、警報部から警報を鳴らしたりすることが挙げられる。
【0045】
なお、試験システム20は、供試体11の入替作業やセンサ12の付替作業が行われたのち、試験装置23などにおいて所定の操作がなされることにより、個体識別情報の取得(ステップS108)から再開可能に構成されている。
【0046】
一方、処理部32は、試験装置23からの個体識別情報と試験情報の個体識別情報との全てが合致する場合(ステップS110:YES)、すなわちそれらの個体識別情報の組み合わせが一致する場合、試験室14の供試体11が試験対象であると判断する。そして、処理部32は、照合結果の出力として、記憶部31から試験情報を読み出したのち、その読み出した試験情報を通信部30から試験装置23に送信する(ステップS112)。
【0047】
試験情報を通信部35で受信した試験装置23は、試験情報に沿った試験を供試体11に行うための各種設定を実行部37が行う(ステップS113)。具体的には、実行部37は、試験中における供試体11の運転パターンや各センサ12のチャンネル情報、インターロック条件などを設定する。
【0048】
各種設定が完了すると、実行部37は、その設定に基づいて試験を開始する(ステップS114)。試験は、各種設定が完了したことをオペレータに通知したのち、その通知を確認したオペレータが試験装置23に対して開始操作を行うことにより開始されてもよいし、オペレータの開始操作なしに自動的に開始されてもよい。試験装置23の収録部38は、試験中に送受信部36が受信した各センサ12の検出結果を検出情報として収録するとともに、収録部38に収録した検出情報を試験終了後に通信部35からサーバ22に送信する(ステップS115)。
【0049】
サーバ22は、試験装置23からの検出情報を通信部30で受信すると、記憶部31に記憶されている試験情報に対して検出情報や試験が行われた日時などを関連付けて、試験結果情報として記憶部31に記憶する(ステップS116)。サーバ22の記憶部31に記憶された試験結果情報に基づいて供試体11の良否などが判定される。
【0050】
第1実施形態の作用および効果について説明する。
(1-1)第1実施形態の試験システム20においては、試験に用いられるセンサ12の個体識別情報を含む試験情報と試験装置23から得られる供試体11に取り付けられているセンサ12の個体識別情報とが照合されたのち、その照合結果が出力される。これにより、読み取り装置の設置や指定位置へのラベルの取付作業が不要な構成のもとで供試体11が試験対象であるか否かを判別できる。
【0051】
(1-2)ラベルに印刷された識別情報の損傷やそのラベルそのものの脱落などの可能性がないため、ラベルの読み取りエラーが生じることもない。
(1-3)供試体11へのセンサ12の取付作業や試験情報の入力作業が準備室13で行われるため、試験室14や試験装置23のダウンタイムを削減することができる。
【0052】
(1-4)サーバ22は、試験装置23からの個体識別情報と試験情報に含まれる個体識別情報との組み合わせが一致する場合に、試験室14の供試体11が試験対象であると判断する。これにより、複数のセンサ12を用いた試験を行う場合に照合結果の信頼度を高めることができる。その結果、試験室14の供試体11が試験対象であるか否かを高い確度のもとで判断できる。
【0053】
(1-5)サーバ22は、個体識別情報の組み合わせが合致する場合、その照合結果の出力として試験装置23に試験情報を送信する。また、試験情報を受信した試験装置23は、その試験情報に基づいて各種設定を行う。これにより、試験装置23に対する試験情報の入力とそれにともなう各種設定が自動的に行われることから、オペレータへの負荷を軽減できる。
【0054】
(1-6)サーバ22は、個体識別情報の組み合わせが異なる場合、その照合結果の出力としてエラー出力を行う。これにより、試験室14の供試体11が試験対象でないことをオペレータに通知することができる。その結果、試験対象でない供試体11に対して誤って試験してしまうことが回避できる。
【0055】
(1-7)試験装置23は、収録部38に収録した検出情報をサーバ22に送信する。サーバ22は、検出情報と試験情報とを関連付けた試験結果情報を記憶部31に記憶する。これにより、例えば、サーバ22が記憶している試験結果情報に基づいて、センサ12の検出値が異常な傾向を示していないか確認することができる。しかも、こうした確認をサーバ22にアクセスすることで行うことができる。これにより、センサ12の校正時期を調整したり、センサ12の修理を早めに行ったりすることができる。すなわち、センサ12のメンテナンスに試験結果情報を利用することができる。
【0056】
(1-8)センサ12が有線接続である場合には、センサ12のケーブルを試験装置23に接続する作業が必要となる。この点、試験システム20においては、センサ12が入力端末21および試験装置23と無線通信により通信を行う。これにより、ケーブルの接続作業や個体識別情報の入力作業などが不要であることから、供試体11の試験に要する時間を準備時間を含めて短くすることができる。また、センサ12が有線接続である場合には、センサ12の接続順序によってセンサ12のチャンネルが決定されるが、試験システム20においては、ケーブルの接続順序に誤りが生じることもない。
【0057】
(1-9)試験システム20は、試験情報を入力可能な入力端末21を備えている。これにより、例えば、試験室14において第1供試体に対して試験を行っている間に、準備室13において第2供試体の試験情報をサーバ22に登録することができる。その結果、第1供試体の試験と第2供試体の試験との間に、試験室14において第2供試体の試験情報を試験装置23に入力する必要がなくなることから、試験室14のダウンタイムを削減することができる。
【0058】
また、各センサ12と入力端末21とが無線通信による通信を行うことで、試験情報の入力を効率よく行うことができる。その結果、第2供試体の試験についての準備時間が短縮されるため、準備室13のダウンタイムを削減することができる。
【0059】
(第2実施形態の試験システム)
図3および
図4を参照して、試験システムの第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態の試験システムは、第1実施形態における試験システムと主要な構成は同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0060】
第1実施形態で説明したように、供試体11は、準備室13においてセンサ12が取り付けられたのち、試験室14へと搬送されて所定位置に設置される。この設置作業中に一部のセンサ12が脱落してしまうおそれがある。一部のセンサ12が脱落してしまうと、正しい検出値が得られないばかりか、脱落に気づくまで、試験室14や試験装置23を無意味に稼動させることになる。第2実施形態の試験システムは、試験室14に設置された供試体11に全てのセンサ12が正しい位置に取り付けられているか否かも確認可能に構成される。
【0061】
図3に示すように、各センサ12は、自身の位置を出力する位置出力部40を有している。位置出力部40は、例えば、LED(Light Emitting Diode)である。入力端末21は、送受信部27から各センサ12に対して駆動信号を送信することにより、各センサ12の位置出力部40を駆動可能に構成されている。同様に、試験装置23は、送受信部36から各センサ12に対して駆動信号を送信することにより、各センサ12の位置出力部40を駆動可能に構成されている。
【0062】
試験システム20Aは、準備室13に設置された複数の撮像機41を有する。複数の撮像機41は、撮像範囲の組み合わせによって供試体11の全体が撮像されるように、すなわち供試体11に取り付けられたセンサ12に対して死角がないように設置される。複数の撮像機41は、入力端末21と通信可能に構成されている。複数の撮像機41は、入力端末21と有線通信可能であってもよいし、無線通信可能であってもよい。複数の撮像機41は、入力端末21から撮像信号が入力されると撮像範囲を撮像した撮像情報を入力端末21に送信する。なお、撮像機41は、入力端末21に内蔵されていてもよい。この場合、入力端末21は、当該入力端末21を持ったオペレータによって死角がないように供試体11が撮像されることにより、撮像情報を取得する。
【0063】
試験システム20Aは、試験室14に設置された複数の撮像機42を有する。複数の撮像機42は、撮像範囲の組み合わせによって供試体11の全体が撮像されるように、すなわち供試体11に取り付けられたセンサ12に対して死角がないように設置される。複数の撮像機42は、試験装置23と通信可能に構成されている。複数の撮像機42は、試験装置23と有線通信可能であってもよいし、無線通信可能であってもよい。複数の撮像機42は、試験装置23から撮像信号が入力されると撮像範囲を撮像した撮像情報を試験装置23に送信する。
【0064】
(第2実施形態における試験の流れ)
図4を参照して、第2実施形態における試験の流れについて説明する。なお、第2実施形態においては、基本的な試験の流れが第1実施形態における試験の流れ(
図2)と同じである。そのため、以下では、第1実施形態における試験の流れと異なる部分について説明する。
【0065】
図4に示すように、第2実施形態の試験システム20Aにおいては、試験内容情報の入力(ステップS104)のあとに、各センサ12の位置を示すセンサ位置情報の取得が行われる(ステップS121)。センサ位置情報は、準備段階において供試体11に取り付けられた各センサ12の位置であって、各センサ12の正規位置を示す情報である。各センサ12の位置は、供試体11に設けられた基準マークに対する相対位置で示されてもよいし、他のセンサ12に対する相対位置で示されてもよい。
【0066】
センサ位置情報の取得(ステップS121)は、入力端末21の入力部26において位置情報取得操作がなされることにより開始される。位置情報取得操作がなされると、入力端末21は、例えば、チャンネル順に位置出力部40を駆動するとともに、その位置出力部40の駆動に合わせて複数の撮像機41で供試体11を撮像する。入力端末21は、撮像された撮像情報に基づいて、各チャンネルのセンサ12の正規位置を取得する。各センサ12の位置を取得した入力端末21は、各センサ12の位置を示すセンサ位置情報を含む試験情報をサーバ22に送信する(ステップS105)。サーバ22は、センサ位置情報を含む試験情報を記憶部31に記憶する。
【0067】
また、第2実施形態の試験システム20Aにおいては、個体識別情報の送信(ステップS109)のあとに、試験装置23によって取付位置情報の取得(ステップS122)と取付位置情報の送信(ステップS123)とが行われる。
【0068】
取付位置情報の取得(ステップS122)では、試験装置23がチャンネル順に位置出力部40を駆動するとともに、その位置出力部40の駆動に合わせて複数の撮像機42で供試体11を撮像する。試験装置23は、撮像された撮像情報に基づいて、各チャンネルのセンサ12の取付位置を示す取付位置情報を取得する。取付位置情報は、試験直前における各センサ12の実際の取付位置を示す情報である。試験装置23は、取得した取付位置情報を通信部35からサーバ22に送信する(ステップS123)。
【0069】
試験装置23が送信した個体識別情報および取付位置情報を受信したサーバ22は、個体識別情報の照合(ステップS110)のほか、センサの脱落確認を行う(ステップS124)。センサの脱落確認において、サーバ22は、取付位置情報におけるセンサ12の実際の取付位置とセンサ位置情報におけるセンサ12の正規位置とを照合することで、脱落しているセンサ12の有無を判断する。
【0070】
センサ12の脱落が認められなかった場合(ステップS124:NO)、サーバ22は、センサ12の位置の照合結果として、試験情報を試験装置23に送信する(ステップS112)。一方、センサ12の脱落が認められた場合(ステップS124:YES)、サーバ22は、センサ12の位置の照合結果として、試験室14に設置された供試体11からセンサ12が脱落していることをオペレータに通知する脱落通知(ステップS125)を行う。通知方法としては、例えば、オペレータが視認可能な表示部にその旨を表示させたり、警報部から脱落警報を鳴らしたりすることが挙げられる。
【0071】
なお、試験システム20Aは、脱落しているセンサ12の取付作業が行われたのち、試験装置23などにおいて所定の操作がなされることにより、取付位置情報の取得(ステップS122)から再開可能に構成されている。
【0072】
第2実施形態の作用および効果について説明する。第2実施形態の試験システム20Aによれば、第1実施形態に記載した(1-1)~(1-9)の作用および効果に加えて、以下の作用および効果が得られる。
【0073】
(2-1)第2実施形態の試験システム20Aにおいては、試験室14に設置された供試体11からのセンサ12の脱落が検出される。これにより、センサ12の脱落に起因した試験の中断を回避できる。その結果、試験室14や試験装置23のダウンタイムの削減をより確実に図ることができる。
【0074】
第1実施形態および第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0075】
・第2実施形態の試験システム20Aにおいて、位置出力部40は、自身の位置を示す信号を出力できるものであればよく、そのチャンネルごとに設定された点滅パターンで点滅する構成であってもよい。また、位置出力部40は、準備室13や試験室14に設置された基準座標に対する相対位置座標を示す位置信号を出力する位置信号送信機などであってもよい。この場合、入力端末21や試験装置23は、位置信号送信機が出力した位置信号を受信する受信機を含んで構成される。
【0076】
・第1実施形態および第2実施形態の試験システム20,20Aにおいて、センサ12は、入力端末21や試験装置23に対して有線により接続されてもよい。この場合、各センサ12がTEDS(Transducer Electronic Data Sheet)機能を有するセンサであることが好ましい。これにより、個体識別情報の入力作業を不要にすることが可能である。
【0077】
・第1実施形態および第2実施形態の試験システム20,20Aにおいて、入力端末21や試験装置23は、RF-ID(radio frequency identifier)などの無線通信によって各センサ12の個体識別情報を取得する構成であってもよい。この場合、個体識別情報を有するタグが各センサ12に取り付けられる。こうした構成によれば、センサ12が個体識別情報を有していない有線接続のセンサである場合であっても、個体識別情報の入力作業を不要なものとすることができる。
【0078】
・第1実施形態および第2実施形態の試験システム20,20Aにおいて、サーバ22は、ステップS110の個体識別情報の照合を、記憶部31に記憶している試験結果情報の試験情報を読み出して行ってもよい。すなわち、全く同じセンサ12の組み合わせによって行われた試験が過去にあるか否かを照合してもよい。全く同じセンサ12の組み合わせによって行われた試験が過去にある場合(ステップS110:YES)、サーバ22は、ステップS112において、その過去の試験の試験情報を試験装置23に送信する。
【0079】
こうした構成によれば、全く同じセンサ12の組み合わせで過去に行った試験を再び行う場合には、それらのセンサ12が取り付けられた供試体11を試験室14に搬送・設置するだけで試験装置23に試験情報が送信される。これにより、試験情報の入力を省略することができることから、供試体11の試験に要する時間を短くすることができる。こうした構成は、定型化された試験を行う場合に特に有用である。
【0080】
・第1実施形態および第2実施形態の試験システム20,20Aにおいて、サーバ22は、読み出し操作によって試験結果情報を個別に読み出し可能に記憶部31の記憶し、読み出し操作を受け付けることにより、その読み出し操作に応じた試験結果情報の試験情報を読み出して個体識別情報の照合を行ってもよい。
【0081】
こうした構成によれば、過去の試験と全く同じセンサ12の組み合わせにより試験を行う場合には、読み出し操作によって読み出された試験結果情報の試験情報を用いて個体識別情報の照合を行うことができる。その結果、試験情報の入力を省略できることから、供試体11の試験に要する時間を短くすることができる。こうした構成は、定型化された試験を行う場合に特に有用である。また、読み出し操作は、入力端末21で操作可能に構成されてもよいし、試験装置23において操作可能に構成されてもよい。
【0082】
・第1実施形態および第2実施形態の試験システム20,20Aにおいて、サーバ22は、例えば、試験情報を含むプログラムのインストールや試験情報を記憶した記憶媒体との通信により、記憶部31に試験情報を記憶する構成であってもよい。こうした構成によれば、入力端末21を用いることなく記憶部31に試験情報が記憶されることから、入力端末21を用いた入力作業を省略することができる。
【0083】
・
図5に示すように、第1実施形態および第2実施形態の試験システム20,20Aにおいて、試験装置は、試験室14に常設された試験装置23に限らず、例えば、複数の試験室14の間を移動可能な計測装置45であってもよい。こうした構成においては、一方の試験室14での供試体11の試験中、他方の試験室14を準備室として、センサ12の取付作業や入力端末21を用いた情報の入力など、供試体11の試験準備を行うことができる。これにより、計測装置45のダウンタイムを削減することができる。こうした構成は、試験室がEMC(Electromagnetic Compatibility)試験室や無響室などの場合に特に有用である。なお、入力端末21は、
図5に示すように試験室14ごとに設置されてもよいし、試験室14の間を持ち運び可能な端末によって構成されてもよい。
【0084】
・センサ12は、試験中における供試体11の振動などによって脱落してしまうおそれがある。そのため、センサの脱落確認は、試験中に行われてもよい。試験中におけるセンサの脱落確認は、例えば、定期的に位置出力部40を駆動させることで位置出力部40の座標変化値を取得する。そして、位置出力部40の座標変化値が所定の閾値を超えることにより、センサ12の脱落を検知することができる。脱落が検知された場合、オペレータへの脱落通知が行われる。こうした構成によれば、センサ12の脱落が検知された場合に、試験を中断させた状態でそのセンサ12を正規位置に取り付けたうえで試験を再開することが可能となる。これにより、一部のセンサ12が脱落した状態での試験の進行が回避されるため、結果として、試験室14のダウンタイムを削減することができる。
【符号の説明】
【0085】
11…供試体、12…センサ、13…準備室、14…試験室、20,20A…試験システム、21…入力端末、22…サーバ、23…試験装置、25…通信部、26…入力部、27…送受信部、30…通信部、31…記憶部、32…処理部、35…通信部、36…送受信部、37…実行部、38…収録部、40…位置出力部、41,42…撮像機、45…計測装置。