(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】周波数検出器
(51)【国際特許分類】
G01R 23/10 20060101AFI20240903BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240903BHJP
【FI】
G01R23/10 B
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2021164210
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手操 亮裕
(72)【発明者】
【氏名】森島 直樹
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-005362(JP,A)
【文献】特開平09-166630(JP,A)
【文献】特開平08-005679(JP,A)
【文献】特開昭61-186865(JP,A)
【文献】特開平10-319057(JP,A)
【文献】特開平11-083914(JP,A)
【文献】特開平11-083915(JP,A)
【文献】特開2007-232380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/00-23/20
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器の後段に配置され、交流電圧波形の立上りにおける連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを含む第1のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立上りにおける電圧の値が0となる第1の零クロス時刻を算出し、交流電圧波形の立下りにおける連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを含む第2のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立下りにおける電圧の値が0となる第2の零クロス時刻を算出し、前記第1の零クロス時刻と、前記第2の零クロス時刻とに基づいて、前記交流電圧波形の半周期の時間を算出する半周期時間演算部と、
を備え
、
前記半周期時間演算部は、
前記半周期時間演算部に順次入力される複数の電圧について、N個の電圧を1単位として、前記1単位の電圧の前記交流電圧波形の半周期に含まれる時間を推定して出力する時間推定部と、
前記時間推定部から出力される値の総和を算出する総和演算部とを含む、周波数検出器。
【請求項2】
前記半周期時間演算部は、前記第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻から電圧値を算出する第1の1次式の係数を算出し、前記第1の1次式の係数を用いて、前記第1の零クロス時刻を算出し、
前記第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻から電圧値を算出する第2の1次式の係数を算出し、前記第2の1次式の係数を用いて、前記第2の零クロス時刻を算出する、請求項1記載の周波数検出器。
【請求項3】
前記時間推定部は、
前記半周期時間演算部に順次入力される複数の電圧について、N個の間隔で基準電圧を設定し、
前記基準電圧の値が正であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が正の場合には、N×ΔTを出力し、
前記基準電圧の値が正であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、前記基準電圧および前記基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値を前記第1のセットのデータとして、前記第1の零クロス時刻を算出し、前記基準電圧の時刻と前記第1の零クロス時刻との間の時間を出力し、
前記基準電圧の値が負であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が負の場合には、0を出力し、
前記基準電圧の値が負であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、前記基準電圧および前記基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の時刻および値を前記第2のセットのデータとして、前記第2の零クロス時刻を算出し、N×ΔTから、前記基準電圧の時刻と前記第2の零クロス時刻との間の時間を減算した時間を出力する、
ΔTは、順次入力される複数の電圧の時間間隔である、請求項
1記載の周波数検出器。
【請求項4】
前記総和演算部は、
前記時間推定部の出力の累積値を算出する累積部と、
前記時間推定部の出力と、0とを比較する比較部と、
前記時間推定部の出力が0以下のときにホールド指示信号を活性化し、前記時間推定部の出力が0よりも大きいときに前記ホールド指示信号を非活性化するホールド指示部と、
前記ホールド指示信号が活性化されたタイミングで前記累積部から出力される累積値を保持するホールド部と、
前記ホールド指示信号を1クロック分遅延させて、遅延ホールド指示信号を出力する遅延部と、
前記累積部は、前記遅延ホールド指示信号が活性化されたタイミングで前記累積値を0にリセットする、請求項
3記載の周波数検出器。
【請求項5】
前記時間推定部は、
順次入力される複数の電圧について、N個間隔で基準電圧を設定し、
前記基準電圧の値が負であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が負の場合には、N×ΔTを出力し、
前記基準電圧の値が負であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、前記基準電圧および前記基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値を前記第2のセットのデータとして、前記第2の零クロス時刻を算出し、前記基準電圧の時刻と前記第2の零クロス時刻との間の時間を出力し、
前記基準電圧の値が正であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が正の場合には、0を出力し、
前記基準電圧の値が正であり、かつ前記基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、前記基準電圧および前記基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値を前記第1のセットのデータとして、前記第1の零クロス時刻を算出し、N×ΔTから、前記基準電圧の時刻と前記第1の零クロス時刻との間の時間を減算した時間を出力する、
ΔTは、順次入力される複数の電圧の時間間隔である、請求項
1記載の周波数検出器。
【請求項6】
前記総和演算部は、
前記時間推定部の出力の累積値を算出する累積部と、
前記時間推定部の出力と、0とを比較する比較部と、
前記時間推定部の出力が0以下のときにホールド指示信号を活性化し、前記時間推定部の出力が0よりも大きいときに前記ホールド指示信号を非活性化するホールド指示部と、
前記ホールド指示信号が活性化されたタイミングで前記累積部から出力される累積値を保持するホールド部と、
前記ホールド指示信号を1クロック分遅延させて、遅延ホールド指示信号を出力する遅延部と、
前記累積部は、前記遅延ホールド指示信号が活性化されたタイミングで前記累積値を0にリセットする、請求項
5記載の周波数検出器。
【請求項7】
前記半周期時間演算部を第1の半周期時間演算部として備え、
前記周波数検出器は、さらに、
前記半周期時間演算部と同様の構成を有する第2の半周期時間演算部と、
前記半周期時間演算部に順次入力される複数の電圧の各々に-1を乗算して、前記第2の半周期時間演算部に出力する乗算部とを備える、請求項
4または
6記載の周波数検出器。
【請求項8】
N×ΔTから前記時間推定部の出力を減算する減算部と、
前記減算部の出力を受ける第2の総和演算部と、をさらに備え、
第2の総和演算部は、前記総和演算部と同様の構成を備える、請求項
4または
6記載の周波数検出器。
【請求項9】
前記A/D変換器の出力と前記半周期時間演算部との間に配置されたローパスフィルタをさらに備える、請求項1~
6のいずれか1項に記載の周波数検出器。
【請求項10】
アナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器の後段に配置され、交流電圧波形の立上りにおける連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを含む第1のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立上りにおける電圧の値が0となる第1の零クロス時刻を算出し、交流電圧波形の立下りにおける連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを含む第2のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立下りにおける電圧の値が0となる第2の零クロス時刻を算出し、前記第1の零クロス時刻と、前記第2の零クロス時刻とに基づいて、前記交流電圧波形の半周期の時間を算出する半周期時間演算部と、
前記A/D変換器の出力と前記半周期時間演算部との間に配置された部分線形化部
とを備え、
前記部分線形化部は、前記A/D変換器から出力される電圧の値に対して部分線形化関数を適用して得られる値を前記半周期時間演算部に出力する
、周波数検出器。
【請求項11】
前記部分線形化部は、前記A/D変換器から出力される電圧の値をvとしたときに、以下の式によって得られるzを前記半周期時間演算部に出力し、
【数1】
ただし、前記A/D変換器から出力される電圧の定格振幅をV0、定格角周波数をω0、線形化範囲の下限閾値をVm、線形化範囲の上源閾値をVpとし、-V0≦Vm<0<Vp≦V0である、請求項
10記載の周波数検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、周波数検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から交流電圧の周波数を検出する方法が知られている。
たとえば、特許文献1に記載の周波数検出方法では、交流電圧のサンプリング値のうちマイナスからプラスへ極性変化する2つのサンプリング値を線形補完することによって、交流電圧の零クロス時刻を算出する。特許文献1に記載の周波数検出方法では、このようにして算出された零クロス時刻を用いて、交流電圧の周波数を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、交流電圧の零クロス時刻を算出するために、2つのサンプリング値だけを用いるので、誤差の影響を大きく受ける。
【0005】
それゆえに、本開示の目的は、交流電圧の周波数を高精度に検出することができる周波数検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の周波数検出器は、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換器と、A/D変換器の後段に配置され、交流電圧波形の立上りにおける連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを含む第1のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立上りにおける電圧の値が0となる第1の零クロス時刻を算出し、交流電圧波形の立下りにおける連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを含む第2のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立下りにおける電圧の値が0となる第2の零クロス時刻を算出し、第1の零クロス時刻と、第2の零クロス時刻とに基づいて、交流電圧波形の半周期の時間を算出する半周期時間演算部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の周波数検出器によれば、交流電圧の周波数を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】参考例1の周波数検出器の構成を表わす図である。
【
図2】参考例2の周波数検出器の構成を表わす図である。
【
図3】参考例3の零クロス時刻推定演算を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1の周波数検出器1の構成を表わす図である。
【
図5】実施の形態1の時間推定部32による処理手順を表わすフローチャートである。
【
図6】実施の形態1における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【
図7】実施の形態2の周波数検出器1aの構成を表わす図である。
【
図8】実施の形態2の時間推定部32aによる処理手順を表わすフローチャートである。
【
図9】実施の形態2における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【
図10】実施の形態3の周波数検出器1bの構成を表わす図である。
【
図11】実施の形態4の周波数検出器1cの構成を表わす図である。
【
図12】実施の形態5の周波数検出器1dの構成を表わす図である。
【
図13】実施の形態6の周波数検出器1eの構成を表わす図である。
【
図14】実施の形態7の周波数検出器1fの構成を表わす図である。
【
図16】実施の形態7の部分線形化部62および時間推定部32による処理手順を表わすフローチャートである。
【
図17】実施の形態8の周波数検出器1gの構成を表わす図である。
【
図18】実施の形態8における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【
図19】実施の形態9の周波数検出器1hの構成を表わす図である。
【
図20】実施の形態9における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【
図21】実施の形態に係るフリッカ抑制装置の構成を説明する概略ブロック図である。
【
図22】周期時間演算部、部分線形化部、ローパスフィルタ、加算部、乗算部、および減算部の機能をソフトウェアを用いて実現する場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(参考例1)
図1は、参考例1の周波数検出器の構成を表わす図である。
【0010】
比較器11は、交流電圧とグランド電圧とを比較し、交流電圧がグランド電圧よりも大きいときに、ハイレベルの信号を立下りエッジ検出器15へ出力する。立下りエッジ検出器15は、ハイレベルからローレベルに遷移する信号を受けたときに、検出信号をハイレベルに活性化する。カウンタ12は、クロックパルスの数をカウントして、カウンタ値を出力する。ホールド器13は、検出信号がハイレベルに活性化されたときに、カウンタ値をホールドする。遅延器14は、検出信号を1クロック分遅延させて、遅延検出信号をカウンタ12へ出力する。カウンタ12は、遅延検出信号がハイレベルに活性化されたときに、カウンタ値をリセットする。乗算部16は、ホールド器13から出力されるカウンタ値をクロックの周期とを乗算して、1周期の時間THを出力する。
【0011】
参考例1では、交流電圧に高調波やノイズが重畳した場合に、交流電圧の極性が変化する付近における時間を正確にカウントすることができないため、検出できる周波数の精度が高くない。
【0012】
(参考例2)
図2は、参考例2の周波数検出器の構成を表わす図である。
【0013】
3相/2相変換部21は、3相電圧Va、Vb、VcをVα、Vβに変換する。cos変換部26は、cosθ′を出力する。sin変換部27は、sinθ′を出力する。
【0014】
乗算部22は、Vαとcosθ′とを乗算する。乗算部23は、Vβとsinθ′とを乗算する。加算部24は、乗算部22の出力と乗算部23の出力とを加算して、エラーeを出力する。PI制御部25は、エラーeをPI制御する。加算部28は、PI制御部25の出力と、定格角周波数ω0とを加算する。積分部29は、加算部28の出力を積分して、θ′を出力する。
【0015】
参考例2では、PLL制御の収束に時間がかかるため、周波数を高速に検出することができないという問題がある。
【0016】
(参考例3)
図3は、参考例3の零クロス時刻推定演算を説明するための図である。参考例3は、特許文献1である。
【0017】
参考例3では、交流電圧のサンプリング値のうちマイナスからプラスへ極性変化する2つのサンプリング値X0、X1を線形補完することによって、交流電圧の第1の零クロス時刻tz1を算出する。交流電圧のサンプリング値のうちマイナスからプラスへ極性変化する2つのサンプリング値X2n、X2n+1を線形補完することによって、交流電圧の第2の零クロス時刻tz2を算出する。参考例3では、これらの情報を用いることによって、交流電圧の周波数を検出する。
【0018】
参考例では、2点間の線形補間によって、交流電圧の零クロス時刻を検出する。2点の電圧のみを用いるため、電圧の誤差の影響が大きく受けるという問題がある。
【0019】
実施の形態1.
図4は、実施の形態1の周波数検出器1の構成を表わす図である。
【0020】
周波数検出器1は、A/D変換器31と、半周期時間演算部41とを備える。
A/D変換器31は、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換する。
【0021】
半周期時間演算部41は、A/D変換器31の後段に配置される。
半周期時間演算部41は、交流電圧波形の立上りにおける3個以上の連続する電圧の時刻と値とを含む第1のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立上りにおける電圧の値が0となる第1の零クロス時刻tz1を算出する。
【0022】
半周期時間演算部41は、交流電圧波形の立下りにおける3個以上の連続する電圧の時刻と電圧値とを含む第2のセットのデータを用いて、交流電圧波形の立下りにおける電圧の値が0となる第2の零クロス時刻tz2を算出する。
【0023】
半周期時間演算部41は、第1の零クロス時刻tz1と、第2の零クロス時刻tz2とに基づいて、交流電圧波形の半周期の時間THUを算出する。
【0024】
半周期時間演算部41は、時間推定部32と、総和演算部51とを備える。
時間推定部32は、半周期時間演算部41に順次入力される複数の電圧について、N個の電圧を1単位として、1単位の電圧の交流電圧波形の半周期に含まれる時間を推定して出力する。
【0025】
時間推定部32は、半周期時間演算部41に順次入力される複数の電圧について、N個の間隔で基準電圧を設定する。
【0026】
時間推定部32は、基準電圧の値が正であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が正の場合には、ΔTA(=N×ΔT)を出力する。ΔTは、順次入力される複数の電圧の時間間隔である。つまり、ΔTは、A/D変換器31のサンプリング時間間隔である。
【0027】
時間推定部32は、基準電圧の値が正であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第1のセットのデータに設定する。時間推定部32は、第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第1の1次式(v=a1×t+b1)の係数を算出し、第1の1次式の係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1を算出する。
【0028】
第1のセットのデータは、値が正となる電圧を少なくとも1つ含み、値が負となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。
【0029】
第1のセットのデータの時刻と電圧値を(t1、v1)、(t2、v2)、・・・(tk、vk)とする。ただし3≦k≦(N+1)とする。最小2乗法によって、以下の式の値が最小となるように係数a1、b1を求めることができる。ここで、時刻t1~tkは、基準電圧の時刻tsを基準とした相対時刻とすることとしてもよい。
【0030】
【0031】
算出された係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1は、式(0=a1×tz1+b1)によって算出される。
【0032】
時間推定部32は、基準電圧の時刻tsと第1の零クロス時刻tz1との間の時間ΔTB(=ts―tz1)を出力する。
【0033】
時間推定部32は、基準電圧の値が負であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が負の場合には、0を出力する。
【0034】
時間推定部32は、基準電圧の値が負であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の時刻および値(電圧値)を第2のセットのデータに設定する。時間推定部32は、第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第2の1次式(v=a2×t+b2)の係数を算出し、第2の1次式の係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2を算出する。
【0035】
第2のセットのデータは、値が正となる電圧を少なくとも1つ含み、値が負となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。
【0036】
第2のセットのデータの時刻と電圧値を(t1、v1)、(t2、v2)、・・・(tk、vk)とする。ただし3≦k≦(N+1)とする。最小2乗法によって、以下の式の値が最小となるように係数a2、b2を求めることができる。ここで、時刻t1~tkは、基準電圧の時刻tsを基準とした相対時刻とすることとしてもよい。
【0037】
【0038】
算出された係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2は、式(0=a2×tz2+b2)によって算出される。
【0039】
時間推定部32は、ΔTA(=N×ΔT)から、基準電圧の時刻tsと第2の零クロス時刻tz2との間の時間を減算した時間ΔTC(=ΔTA-(ts-tz2))を出力する。
【0040】
総和演算部51は、時間推定部32から出力される値の総和を算出する。総和演算部51は、累積部33と、比較部34と、ホールド指示部35と、ホールド部36と、遅延部37とを備える。
【0041】
累積部33は、時間推定部32の出力の累積値を算出する。
比較部34は、時間推定部32の出力と「0」とを比較する。比較部34は、時間推定部32の出力が「0」よりも大きいときにハイレベルの信号を出力し、時間推定部32の出力が「0」以下のときにロウレベルの信号を出力する。ホールド指示部35は、比較部34の出力がロウレベルのとき(すなわち、時間推定部32の出力が「0」以下のとき)にホールド指示信号を活性化する。ホールド指示部35は、比較部34の出力がハイレベルのとき(すなわち、時間推定部32の出力が「0」よりも大きいとき)にホールド指示信号を非活性化する。
【0042】
ホールド部36は、ホールド指示信号が活性化されたタイミングで累積部33から出力される累積値を保持する。ホールド部36は、交流電圧の上半周期の時間THUを出力する。
【0043】
遅延部37は、ホールド指示信号を1クロック分遅延させて、遅延ホールド指示信号を出力する。
【0044】
累積部33は、遅延ホールド指示信号が活性化されたタイミングで累積値を0にリセットする。
【0045】
図5は、実施の形態1の時間推定部32による処理手順を表わすフローチャートである。
図6は、実施の形態1における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【0046】
ステップS101において、時間推定部32は、A/D変換器31からデジタルの交流電圧を取得する。
【0047】
ステップS102において、時間推定部32が取得した電圧がN個の間隔で設定される基準電圧である場合には、処理がステップS103に進む。
【0048】
ステップS103において、取得した基準電圧が正の場合には、処理がステップS104に進む。取得した基準電圧が正でない場合は、処理がステップS108に進む。ステップS108において、取得した基準電圧が負の場合には、処理がステップS109に進む。
【0049】
ステップS104において、基準電圧の直前のN個の電圧の全てが正の場合には、処理がステップS105に進み、基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、処理がステップS106に進む。
【0050】
ステップS105において、時間推定部32は、ΔTA(=N×ΔT)を出力する。
ステップS106において、時間推定部32は、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第1のセットのデータに設定する。時間推定部32は、第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第1の1次式(v=a1×t+b1)の係数を算出し、第1の1次式の係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1を算出する。
【0051】
ステップS107において、時間推定部32は、基準電圧の時刻tsと第1の零クロス時刻tz1との間の時間ΔTB(=ts―tz1)を出力する。
【0052】
ステップS109において、基準電圧の直前のN個の電圧の全てが負の場合には、処理がステップS110に進み、基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、処理がステップS111に進む。
【0053】
ステップS110において、時間推定部32は、0を出力する。
ステップS111において、時間推定部32は、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の時刻および値(電圧値)を第2のセットのデータに設定する。時間推定部32は、第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第2の1次式(v=a2×t+b2)の係数を算出し、第2の1次式の係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2を算出する。
【0054】
ステップS113において、時間推定部32は、ΔTA(=N×ΔT)から、基準電圧の時刻tsと第2の零クロス時刻tz2との間の時間を減算した時間ΔTC(=ΔTA-(ts-tz2))を出力する。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、連続する少なくとも3個の電圧の時刻と値とを用いて交流電圧波形の零クロス時刻を算出するので、量子化誤差および標本化誤差を低減することができる。また、本実施の形態によれば、電圧信号に高調波およびノイズが重畳した場合でも、その影響を除去した零クロス時刻を算出することができる。また、本実施の形態によれば、半周期ごとに半周期の時間を検出するので、周波数の変化を高速に検出することができる。
【0056】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2の周波数検出器1aの構成を表わす図である。
【0057】
周波数検出器1aは、A/D変換器31と、半周期時間演算部41aとを備える。
A/D変換器31は、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換する。
【0058】
半周期時間演算部41aは、A/D変換器31の後段に配置される。半周期時間演算部41aは、時間推定部32aと、総和演算部51aとを備える。
【0059】
時間推定部32aは、半周期時間演算部41に順次入力される複数の電圧について、N個の電圧を1単位として、1単位の電圧の交流電圧波形の半周期に含まれる時間を推定して出力する。
【0060】
時間推定部32aは、半周期時間演算部41に順次入力される複数の電圧について、N個の間隔で基準電圧を設定する。
【0061】
時間推定部32aは、基準電圧の値が負であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が負の場合には、ΔTA(=N×ΔT)を出力する。ΔTは、順次入力される複数の電圧の時間間隔である。つまり、ΔTは、A/D変換器31のサンプリング時間間隔である。
【0062】
時間推定部32aは、基準電圧の値が負であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第2のセットのデータに設定する。時間推定部32は、第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第2の1次式(v=a2×t+b2)の係数を算出し、第2の1次式の係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2を算出する。
【0063】
第2のセットのデータは、値が正となる電圧を少なくとも1つ含み、値が負となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。
【0064】
第2のセットのデータの時刻と電圧値を(t1、v1)、(t2、v2)、・・・(tk、vk)とする。ただし3≦k≦(N+1)とする。最小2乗法によって、以下の式の値が最小となるように係数a2、b2を求めることができる。ここで、時刻t1~tkは、基準電圧の時刻tsを基準とした相対時刻とすることとしてもよい。
【0065】
【0066】
算出された係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2は、以下の式によって算出される。
【0067】
0=a2×tz2+b2
時間推定部32aは、基準電圧の時刻tsと第2の零クロス時刻tz2との間の時間ΔTB(=ts―tz2)を出力する。
【0068】
時間推定部32aは、基準電圧の値が正であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の全ての値が正の場合には、0を出力する。
【0069】
時間推定部32aは、基準電圧の値が正であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の時刻および値(電圧値)を第1のセットのデータに設定する。時間推定部32aは、第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第1の1次式(v=a1×t+b1)の係数を算出し、第1の1次式の係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1を算出する。
【0070】
第1のセットのデータは、値が正となる電圧を少なくとも1つ含み、値が負となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。
【0071】
第1のセットのデータの時刻と電圧値を(t1、v1)、(t2、v2)、・・・(tk、vk)とする。ただし3≦k≦(N+1)とする。最小2乗法によって、以下の式の値が最小となるように係数a1、b1を求めることができる。ここで、時刻t1~tkは、基準電圧の時刻tsを基準とした相対時刻とすることとしてもよい。
【0072】
【0073】
算出された係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1は、以下の式によって算出される。
【0074】
0=a1×tz1+b1
時間推定部32aは、ΔTA(=N×ΔT)から、基準電圧の時刻tsと第1の零クロス時刻tz1との間の時間を減算した時間ΔTC(=ΔTA-(ts-tz1))を出力する。
【0075】
総和演算部51aは、時間推定部32から出力される値の総和を算出する。総和演算部51aは、累積部33と、比較部34と、ホールド指示部35と、ホールド部36と、遅延部37とを備える。
【0076】
累積部33は、時間推定部32の出力の累積値を算出する。
比較部34aは、時間推定部32の出力と、0とを比較する。
【0077】
比較部34は、時間推定部32の出力と「0」とを比較する。比較部34は、時間推定部32の出力が「0」よりも大きいときにハイレベルの信号を出力し、時間推定部32の出力が「0」以下のときにロウレベルの信号を出力する。ホールド指示部35は、比較部34の出力がロウレベルのとき(すなわち、時間推定部32の出力が「0」以下のとき)にホールド指示信号を活性化する。ホールド指示部35は、比較部34の出力がハイレベルのとき(すなわち、時間推定部32の出力が「0」よりも大きいとき)にホールド指示信号を非活性化する。
【0078】
ホールド部36は、ホールド指示信号が活性化されたタイミングで累積部33から出力される累積値を保持する。ホールド部36は、交流電圧の下半周期の時間THLを出力する。
【0079】
遅延部37は、ホールド指示信号を1クロック分遅延させて、遅延ホールド指示信号を出力する。
【0080】
累積部33は、遅延ホールド指示信号が活性化されたタイミングで累積値を0にリセットする。
【0081】
図8は、実施の形態2の時間推定部32aによる処理手順を表わすフローチャートである。
図9は、実施の形態2における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【0082】
ステップS201において、時間推定部32aは、A/D変換器31からデジタルの交流電圧を取得する。
【0083】
ステップS202において、時間推定部32aが取得した電圧がN個の間隔で設定される基準電圧である場合には、処理がステップS203に進む。
【0084】
ステップS203において、取得した基準電圧が負の場合には、処理がステップS204に進む。取得した基準電圧が負でない場合には、処理がステップS208に進む。ステップS208において、取得した基準電圧が正の場合には、処理がステップS209に進む。
【0085】
ステップS204において、基準電圧の直前のN個の電圧の全てが負の場合には、処理がステップS205に進み、基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、処理がステップS206に進む。
【0086】
ステップS205において、時間推定部32aは、ΔTA(=N×ΔT)を出力する。
ステップS206において、時間推定部32aは、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第2のセットのデータに設定する。時間推定部32aは、第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第2の1次式(v=a2×t+b2)の係数を算出し、第2の1次式の係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2を算出する。
【0087】
ステップS207において、時間推定部32aは、基準電圧の時刻tsと第2の零クロス時刻tz2との間の時間ΔTB(=ts―tz2)を出力する。
【0088】
ステップS209において、基準電圧の直前のN個の電圧の全てが正の場合には、処理がステップS210に進み、基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、処理がステップS211に進む。
【0089】
ステップS210において、時間推定部32aは、0を出力する。
ステップS211において、時間推定部32aは、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の時刻および値(電圧値)を第1のセットのデータに設定する。時間推定部32aは、第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第1の1次式(v=a1×t+b1)の係数を算出し、第1の1次式の係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1を算出する。
【0090】
ステップS212において、時間推定部32aは、ΔTA(=N×ΔT)から、基準電圧の時刻tsと第1の零クロス時刻tz1との間の時間を減算した時間ΔTC(=ΔTA-(ts-tz1))を出力する。
【0091】
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、量子化誤差および標本化誤差を低減することができるとともに、周波数の変化を高速に検出することができる。
【0092】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3の周波数検出器1bの構成を表わす図である。
【0093】
周波数検出器1bは、A/D変換器31と、第1の半周期時間演算部42と、第2の半周期時間演算部43と、加算部121とを備える。
【0094】
第1の半周期時間演算部42は、実施の形態1において説明した半周期時間演算部41と同様である。第1の半周期時間演算部42は、上半周期の時間THUを出力する。
【0095】
第2の半周期時間演算部43は、実施の形態2において説明した半周期時間演算部41aと同様である。第2の半周期時間演算部43は、下半周期の時間THLを出力する。
【0096】
加算部121は、上半周期の時間THUと、下半周期の時間THLとを加算して、1周期の時間TH(=THU+THL)を出力する。
【0097】
実施の形態4.
図11は、実施の形態4の周波数検出器1cの構成を表わす図である。
【0098】
周波数検出器1cは、A/D変換器31と、第1の半周期時間演算部42と、第2の半周期時間演算部43aと、乗算部71と、加算部121とを備える。
【0099】
第1の半周期時間演算部42は、実施の形態1において説明した半周期時間演算部41と同様である。第1の半周期時間演算部42は、上半周期の時間THUを出力する。
【0100】
第2の半周期時間演算部43aは、実施の形態1において説明した半周期時間演算部41と同様である。第2の半周期時間演算部43aは、下半周期の時間THLを出力する。
【0101】
乗算部71は、A/D変換器31の出力と(―1)とを乗算して、第2の半周期時間演算部43aに出力する。これによって、第1の半周期時間演算部42と同じ構成を有する第2の半周期時間演算部43aが、下半周期の時間THLを出力することができる。
【0102】
加算部121は、上半周期の時間THUと、下半周期の時間THLとを加算して、1周期の時間TH(=THU+THL)を出力する。
【0103】
実施の形態4の変形例.
変形例の周波数検出器1cは、A/D変換器31と、第1の半周期時間演算部42と、第2の半周期時間演算部43aと、乗算部71と、加算部121とを備える。
【0104】
第1の半周期時間演算部42は、実施の形態2において説明した半周期時間演算部41aと同様である。第1の半周期時間演算部42は、下半周期の時間THLを出力する。
【0105】
第2の半周期時間演算部43aは、実施の形態2において説明した半周期時間演算部41aと同様である。第2の半周期時間演算部43aは、上半周期の時間THUを出力する。
【0106】
乗算部71は、A/D変換器31の出力と(―1)とを乗算して、第2の半周期時間演算部43aに出力する。これによって、第1の半周期時間演算部42と同じ構成を有する第2の半周期時間演算部43aが、上半周期の時間THUを出力することができる。
【0107】
加算部121は、上半周期の時間THUと、下半周期の時間THLとを加算して、1周期の時間TH(=THU+THL)を出力する。
【0108】
実施の形態5.
図12は、実施の形態5の周波数検出器1dの構成を表わす図である。
【0109】
周波数検出器1dは、A/D変換器31と、半周期時間演算部41と、第2の総和演算部52と、減算部72と、加算部121とを備える。
【0110】
半周期時間演算部41は、実施の形態1において説明した半周期時間演算部41と同様である。半周期時間演算部41は、上半周期の時間THUを出力する。
【0111】
第2の総和演算部52は、実施の形態1において説明した総和演算部51と同様である。第2の総和演算部52は、下半周期の時間THLを出力する。
【0112】
減算部72は、ΔTA(=N×ΔT)から時間推定部32の出力を減算して、第2の総和演算部52に出力する。これによって、総和演算部51と同様の構成を有する第2の総和演算部52が、下半周期の時間THLを出力することができる。
【0113】
加算部121は、上半周期の時間THUと、下半周期の時間THLとを加算して、1周期の時間TH(=THU+THL)を出力する。
【0114】
実施の形態5の変形例.
変形例の周波数検出器1dは、A/D変換器31と、半周期時間演算部41と、第2の総和演算部52と、減算部72と、加算部121とを備える。
【0115】
半周期時間演算部41は、実施の形態2において説明した半周期時間演算部41aと同様である。半周期時間演算部41は、下半周期の時間THLを出力する。
【0116】
第2の総和演算部52は、実施の形態2において説明した総和演算部51aと同様である。第2の総和演算部52は、上半周期の時間THUを出力する。
【0117】
減算部72は、ΔTA(=N×ΔT)から時間推定部32の出力を減算して、第2の総和演算部52に出力する。これによって、総和演算部51aと同様の構成を有する第2の総和演算部52が、上半周期の時間THUを出力することができる。
【0118】
加算部121は、上半周期の時間THUと、下半周期の時間THLとを加算して、1周期の時間TH(=THU+THL)を出力する。
【0119】
実施の形態6.
図13は、実施の形態6の周波数検出器1eの構成を表わす図である。
【0120】
実施の形態6の周波数検出器1eが、実施の形態1の周波数検出器1と相違する点は、実施の形態6の周波数検出器1eが、A/D変換器31の出力と半周期時間演算部41との間に配置されたローパスフィルタ61を備える点である。
【0121】
ローパスフィルタ61は、A/D変換器31の出力の低周波成分を通過させる。これによって、A/D変換器31の出力の雑音を低減することができる。
【0122】
実施の形態6の変形例.
実施の形態2~5の周波数検出器1a、1b、1c、1dもローパスフィルタ61を備えるものとしてもよい。
【0123】
実施の形態2におけるA/D変換器31の出力と半周期時間演算部41aとの間、実施の形態4のA/D変換器31の出力と第1の半周期時間演算部42および第2の半周期時間演算部43との間、実施の形態4のA/D変換器31の出力と第1の半周期時間演算部42および第2の半周期時間演算部43aとの間、および実施の形態5のA/D変換器31の出力と半周期時間演算部41との間においても、ローパスフィルタ61が配置されるものとしてもよい。
【0124】
実施の形態7.
図14は、実施の形態7の周波数検出器1fの構成を表わす図である。
【0125】
実施の形態7の周波数検出器1fが、実施の形態1の周波数検出器1と相違する点は、実施の形態7の周波数検出器1fが、A/D変換器31の出力と半周期時間演算部41との間に配置された部分線形化部62を備えるである。
【0126】
部分線形化部62は、A/D変換器31から出力される電圧vの値に対して部分線形化関数fを適用して得られる値zを半周期時間演算部41に出力する。
【0127】
部分線形化関数f(v)は、以下のように表される。
【0128】
【0129】
ここで、A/D変換器31から出力される電圧の定格振幅をV0、定格角周波数をω0、線形化範囲の下限閾値をVm、線形化範囲の上限閾値をVpとする。-V0≦Vm<0<Vp≦V0である。
【0130】
図15は、部分線形化関数の例を表わす図である。
vが交流電圧の波形を表わす。f(v)がvに対して部分線形化関数を適用して得られる値の波形を表わす。
【0131】
v=V0sin(ωt+θ)として、零クロス近傍Vm≦v≦Vpのz=f(v)を求めると、z=f(v)=(V0/ω0)*(ωt+θ)となり、zはtの線形関数になる。この部分線形化関数による変換により、線形最小二乗法のモデル式(at+b)とサンプルデータとが良く一致するようになり、零クロス点の推定精度が向上する。電圧の振幅が定格値と完全に一致しない場合でも、変換前より線形に近いデータ(t,f(v))が得られる。
【0132】
図16は、実施の形態7の部分線形化部62および時間推定部32による処理手順を表わすフローチャートである。
【0133】
ステップS201において、部分線形化部62は、A/D変換器31からデジタルの交流電圧vを取得する。
【0134】
ステップS202において、部分線形化部62は、A/D変換器31から出力される電圧vの値に対して部分線形化関数fを適用して得られる値zを半周期時間演算部41に出力する。
【0135】
ステップS102以降は、実施の形態1と同様なので、説明を繰り返さない。
実施の形態7の変形例.
実施の形態2~5の周波数検出器1a、1b、1c、1dも部分線形化部62を備えるものとしてもよい。
【0136】
実施の形態2におけるA/D変換器31の出力と半周期時間演算部41aとの間、実施の形態4のA/D変換器31の出力と第1の半周期時間演算部42および第2の半周期時間演算部43との間、実施の形態4のA/D変換器31の出力と第1の半周期時間演算部42および第2の半周期時間演算部43aとの間、および実施の形態5のA/D変換器31の出力と半周期時間演算部41との間においても、部分線形化部62が配置されるものとしてもよい。さらに、実施の形態5およびその変形例に含まれるローパスフィルタ61の直後に部分線形化部62が配置されるものとしてもよい。
【0137】
実施の形態7の変形例.
実施の形態7において説明した部分線形化関数f(v)におけるarcsin関数に代えて、その近似関数(多項式近似)を用いてもよい。また、部分線形化関数f(v)は交流電圧の正弦波の零クロス点付近において、正弦波を部分的に直線に変換できるものであればよい。
【0138】
実施の形態8.
図17は、実施の形態8の周波数検出器1gの構成を表わす図である。
図18は、実施の形態8における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【0139】
周波数検出器1fは、A/D変換器31と、周期時間演算部81とを備える。
A/D変換器31は、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換する。
【0140】
周期時間演算部81は、A/D変換器31の後段に配置される。
周期時間演算部81は、交流電圧波形の第1の立上りにおける3個以上の連続する電圧の時刻と値とを含む第1のセットのデータを用いて、交流電圧波形の第1の立上りにおける電圧の値が0となる第1の零クロス時刻tz1aを算出する。
【0141】
周期時間演算部81は、交流電圧波形の第1の立上りの次の第2の立上りにおける3個以上の連続する電圧の時刻と電圧値とを含む第2のセットのデータを用いて、交流電圧波形の第2の立上りにおける電圧の値が0となる第2の零クロス時刻tz1bを算出する。
【0142】
周期時間演算部81は、第1の零クロス時刻tz1aと第2の零クロス時刻tz1bとの時間差に基づいて、交流電圧波形の1周期の時間THを算出する。
【0143】
周期時間演算部81は、時間推定部82と、メモリ83と、減算部84とを備える。
時間推定部82は、周期時間演算部81に順次入力される複数の電圧について、N個の間隔で基準電圧を設定する。
【0144】
時間推定部82は、基準電圧の値が正であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第1のセットのデータに設定する。時間推定部82は、第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第1の1次式(v=a1×t+b1)の係数を算出し、第1の1次式の係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz1aを算出する。第1のセットのデータは、値が正となる電圧を少なくとも1つ含み、値が負となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。時間推定部82は、第1の零クロス時刻tz1aをメモリ83に出力する。
【0145】
時間推定部82は、その後、基準電圧の値が正であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に負が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第2のセットのデータに設定する。時間推定部82は、第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第2の1次式(v=a2×t+b2)の係数を算出し、第2の1次式の係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz1bを算出する。第2のセットのデータは、値が正となる電圧を少なくとも1つ含み、値が負となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。
【0146】
減算部84は、時間推定部82から出力される第2の零クロス時刻tz1bから、メモリ83から出力される第1の零クロス時刻tz1aを減算することによって、交流電圧波形の1周期の時間THを出力する。
【0147】
実施の形態9.
図19は、実施の形態9の周波数検出器1hの構成を表わす図である。
図20は、実施の形態9における交流電圧の周波数検出の例を説明するための図である。
【0148】
周波数検出器1hは、A/D変換器31と、周期時間演算部81aとを備える。
A/D変換器31は、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換する。
【0149】
周期時間演算部81aは、A/D変換器31の後段に配置される。
周期時間演算部81aは、交流電圧波形の第1の立下りにおける3個以上の連続する電圧の時刻と値とを含む第1のセットのデータを用いて、交流電圧波形の第1の立下りにおける電圧の値が0となる第1の零クロス時刻tz2aを算出する。
【0150】
周期時間演算部81aは、交流電圧波形の第1の立下りの次の第2の立下りにおける3個以上の連続する電圧の時刻と電圧値とを含む第2のセットのデータを用いて、交流電圧波形の第2の立下りにおける電圧の値が0となる第2の零クロス時刻tz2bを算出する。
【0151】
周期時間演算部81aは、第1の零クロス時刻tz2aと第2の零クロス時刻tz2bとの時間差に基づいて、交流電圧波形の1周期の時間THを算出する。
【0152】
周期時間演算部81aは、時間推定部82aと、メモリ83と、減算部84とを備える。
【0153】
時間推定部82aは、周期時間演算部81aに順次入力される複数の電圧について、N個の間隔で基準電圧を設定する。
【0154】
時間推定部82aは、基準電圧の値が負であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第1のセットのデータに設定する。時間推定部82aは、第1のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第1の1次式(v=a1×t+b1)の係数を算出し、第1の1次式の係数a1、b1を用いて、第1の零クロス時刻tz2aを算出する。第1のセットのデータは、値が負となる電圧を少なくとも1つ含み、値が正となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。時間推定部82aは、第1の零クロス時刻tz2aをメモリ83に出力する。
【0155】
時間推定部82aは、その後、基準電圧の値が負であり、かつ基準電圧の直前のN個の電圧の値に正が含まれる場合には、基準電圧および基準電圧の直前のN個の電圧のうちの連続する少なくとも3個の電圧の時刻および値(電圧値)を第2のセットのデータに設定する。時間推定部82aは、第2のセットのデータを用いて、最小2乗法によって、時刻tから電圧値vを算出する第2の1次式(v=a2×t+b2)の係数を算出し、第2の1次式の係数a2、b2を用いて、第2の零クロス時刻tz2bを算出する。第2のセットのデータは、値が負となる電圧を少なくとも1つ含み、値が正となる電圧を少なくとも1つ含むものとしてもよい。
【0156】
減算部84は、時間推定部82aから出力される第2の零クロス時刻tz2bから、メモリ83から出力される第1の零クロス時刻tz2aを減算することによって、交流電圧波形の1周期の時間THを出力する。
【0157】
実施の形態10.
図21は、実施の形態に係るフリッカ抑制装置の構成を説明する概略ブロック図である。
【0158】
フリッカ抑制装置100は、電圧源10及び交流電路20を含む電力系統に接続される。交流電路20には、太陽光発電装置に代表される分散型電源40を系統連系するためのPCS30が接続される。PCS30は、単独運転状態の検出機能を有しており、当該検出機能のための無効電力Qxを交流電路20に出力する。
【0159】
フリッカ抑制装置100は、電力変換器110と、周波数検出器120と、制御器150とを備える。周波数検出器120は、交流電路20上の交流電圧波形から当該電圧の周波数である系統周波数fsを検出する。制御器150は、周波数検出器120によって検出された系統周波数fsを用いて、電力変換器110が交流電路20へ出力する無効電力Qcを制御する。
【0160】
周波数検出器120は、実施の形態1~7で説明した周波数検出器1、1a、1b、1c、1d、1e、1fのいずれかを備える。これらが、半周期の時間THL,THU、または1周期の時間THを出力する場合には、周波数検出器120は、半周期の時間THL,THU、または1周期の時間THを周波数fsに変換する機能を備える。
【0161】
尚、本実施の形態において、無効電力Qc,Qx(無効電流)の位相の進み及び遅れは、JEM1498規定に準じている。具体的には、系統側(交流電路20)から電力変換器110又はPCS30に電力(電流)が流入する方向を「正」と定義して、当該電流方向にて、電圧に対して位相が90度遅れる電流による無効電力を「遅れ(遅相)無効電力」と定義し、反対に、当該電圧に対して位相が90度進んだ電流による無効電力を「進み(進相)無効電力」と定義する。
【0162】
電力変換器110は、進み位相又は遅れ位相の無効電力Qcを交流電路20へ出力する。本明細書では、Qc>0のときに進み無効電力が出力され、Qc<0のときに、遅れ無効電力が、電力変換器110から交流電路20(電力系統)へ出力されるものとする。又、電力変換器110は、Qc=0、即ち、無効電力を出力しない動作状態も有する。
【0163】
電力変換器110は、代表的には、STACOMで構成することが可能であるが、制御された進み無効電力又は遅れ無効電力を選択的に出力可能であれば、自励式及び他励式の無効電力調整装置を始めとして、任意の機器を適用することが可能である。
【0164】
制御器150は、周波数変化量算出部160と、制御演算部170と、電力変換器制御部180とを含む。周波数変化量算出部160は、周波数検出器120によって検出された系統周波数fsを用いて、系統周波数fsの変化(上昇又は低下)を示す周波数変化量fchgを算出する。制御演算部170は、周波数変化量fchgを入力とする、予め定められた制御演算に従って無効電力指令値Qrefを算出する。電力変換器制御部180は、無効電力指令値Qrefに従った無効電力Qcを出力するための、電力変換器110の制御指令Scvを生成する。制御指令Scvは、電力変換器110へ入力される。
【0165】
(ソフトウエア構成)
実施の形態1~7における半周期時間演算部、部分線形化部、ローパスフィルタ、加算部、乗算部、および減算部は、相当する動作をデジタル回路のハードウェアまたはソフトウェアで構成してもよい。
【0166】
図22は、半周期時間演算部、部分線形化部、ローパスフィルタ、加算部、乗算部、および減算部の機能をソフトウェアを用いて実現する場合の構成を示す図である。周波数検出器は、バス1003に接続されたプロセッサ1001およびメモリ1002を備える。メモリ1002に記憶されたプログラムをプロセッサ1001が実行する。
【0167】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、以下のような変形例も含む。
【0168】
(1)半周期時間の算出
実施の形態1および2では、第1の零クロス時刻tz1および第2の零クロス時刻tz2を算出するための最小2乗法の式において、相対時刻を用いたが、これに限定するものではない。最小2乗法の式において、絶対時刻を用いてもよい。これによって、算出される第1の零クロス時刻tz1および第2の零クロス時刻tz2も絶対時刻となるので、第1の零クロス時刻tz1と第2の零クロス時刻tz2との差分を求めて、これを半周期の時間THUまたはTHLとすることができる。
【0169】
(2)周波数の検出
上記の実施形態の周波数検出器は、上半周期の時間THU、下半周期の時間THL、または1周期の時間THを算出したが、さらに、以下の式のようにして周波数fsを算出するものとしてもよい。
【0170】
fs=1/(2×THU)
fs=1/(2×THL)
fs=1/(TH)
今回開示された実施の形態がすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0171】
1,1a~1h 周波数検出器、10 電圧源、11 比較器、12 カウンタ、13 ホールド器、14 遅延器、15 立下りエッジ検出器、16,22,23,71 乗算部、20 交流電路、24,28,121 加算部、25 制御部、29 積分部、31 変換器、32,32a,82a,82b 時間推定部、33 累積部、34 比較部、35 ホールド指示部、36 ホールド部、37 遅延部、40 分散型電源、41,41a 半周期時間演算部、42 第1の半周期時間演算部、43,43a 第2の半周期時間演算部、51,51a 総和演算部、52 第2の総和演算部、61 ローパスフィルタ、62 部分線形化部、72 減算部、81a,81b 周期時間演算部、83 減算部、100 フリッカ抑制装置、110 電力変換器、150 制御器、160 周波数変化量算出部、170 制御演算部、180 電力変換器制御部、1001 プロセッサ、1002 メモリ、1003 バス。