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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/22 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
F16K1/22 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021192373
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023079000
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 武則
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-062636(JP,A)
【文献】特開平08-189328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管に配置される弁装置であって、
回転軸と、
弁体であって、当該弁体と、前記配管の中心軸と直交する平面と、のなす角度が相対的に小さい第1位置と、前記角度が相対的に大きい第2位置と、の間で、前記回転軸を中心として回転変位可能に構成された弁体と、
上流から流れる流体の一部を、前記第1位置と前記第2位置の間における所定の範囲に位置する前記弁体の下流側の所定の方向に誘導する誘導部と、
を備え
前記弁体が前記第1位置に位置するときに下流側を向く面である下流面は、屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記弁体が前記所定の範囲に位置するときに、前記下流面における前記屈曲部よりも上流側の面と前記中心軸とのなす角度よりも、前記下流面における前記屈曲部よりも下流側の面と前記中心軸とのなす角度が大きくなるように屈曲する部分であり、
前記誘導部は、前記弁体が前記所定の範囲にある場合において、前記屈曲部よりも前記配管側の空間を下流に向かって流れる流体を、前記下流面に向けるように構成されている、
弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載された弁装置において、
前記誘導部は、下流側に向かうほど、前記中心軸に近づくように傾斜する傾斜面を有する、弁装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載された弁装置において、
前記誘導部は、前記弁体の回転変位の範囲を規制する、弁装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載された弁装置において、
前記誘導部は、前記回転軸の長さ方向に伸びる板状の部材である、弁装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載された弁装置において、
前記回転軸は、前記配管の中心軸から径方向に間隔を空けて配置されている、弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体が流れる配管に設置される弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両において高度な静粛性が要求されている。そのため、排気ガスの配管に設置される弁装置により発生する気流音についても、騒音の低減が図られている。特許文献1では、弁体が少し開いたときに発生する高速な空気流れを抑制するために、配管の内壁面に円弧状の低い障壁部材を配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-13500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁装置において気流音の発生する原因についてさらに調査したところ、弁体がある程度開いたときに、弁体の後方において気流音が発生することが判明した。
本開示の一態様においては、弁装置により生じる騒音を低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、流体が流れる配管に配置される弁装置であって、回転軸と、弁体と、誘導部と、を備える。弁体は、当該弁体と、配管の中心軸と直交する平面と、のなす角度が相対的に小さい第1位置と、上記角度が相対的に大きい第2位置と、の間で、回転軸を中心として回転変位可能に構成される。誘導部は、上流から流れる流体の一部を、第1位置と第2位置の間における所定の範囲に位置する弁体の下流側の所定の方向に誘導する。
【0006】
このような構成であれば、弁体が所定の範囲に位置するときに、流体が弁体の下流側の空間に流れやすくなる。これにより、弁体の下流側の空間において流体の渦が発生することを抑制できる。よって、弁装置を配置したことによって生じる渦に起因する騒音を低減することができる。
【0007】
上述した弁装置において、誘導部は、下流側に向かうほど、中心軸に近づくように傾斜する傾斜面を有してもよい。このような構成であれば、誘導部によって、流体の流れる方向を滑らかに変更することができる。そのため、誘導部と流体とにより騒音が発生してしまったり、誘導部が大きな圧力損失を発生してしまったりすることを抑制できる。
【0008】
上述した弁装置において、弁体が第1位置に位置するときに下流側を向く面である下流面は、屈曲部を有していてもよい。屈曲部は、下流面における屈曲部よりも上流側の面と中心軸とのなす角度よりも、下流面における屈曲部よりも下流側の面と中心軸とのなす角度が大きくなるように屈曲する部分であってもよい。弁体が上述した屈曲部を有する場合には、流体が屈曲部の近傍を通過するときに渦が発生しやすい。しかしながら上述した構成であれば、渦の発生を抑制できるため、屈曲部による騒音の発生を抑制できる。
【0009】
上述した弁装置において、誘導部は、弁体が所定の範囲にある場合において、屈曲部よりも配管側の空間を下流に向かって流れる流体を、下流面に向けるように構成されていてもよい。このような構成であれば、屈曲部よりも配管側を通過する、配管の軸方向に沿って流れている流体、すなわちスムーズに流れている流体を屈曲部の下流側の面に向けて流すことができる。そのため、渦が発生する空間に向けて流れる流体の量を多くすることができ、渦の発生を良好に抑制することができる。
【0010】
上述した弁装置において、誘導部は、弁体の回転変位の範囲を規制してもよい。このような構成であれば、誘導部が弁体の回転変位の範囲を規制するため、同様の機能を有するストッパの数を減らしたり、或いはストッパを無くしたりすることができる。その結果、弁装置の構成を簡素化できる。また、誘導部ではないストッパによって騒音が発生することを抑制できる。
【0011】
上述した弁装置において、誘導部は、回転軸の長さ方向に伸びる板状の部材であってもよい。このような構成であれば、誘導部が配管の内部に広く配置されるため、広い範囲で流体の流れる方向を変化させることができ、渦の発生を良好に抑制できる。
【0012】
上述した弁装置において、回転軸は、配管の中心軸から径方向に間隔を空けて配置されていてもよい。このような構成であれば、弁体が流体に押圧されたときに開位置に向かう力となる範囲が広くなる。そのため、弁体が流体に押圧されたときに、第1位置から第2位置へ向かう回転力を好適に生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の弁装置の断面図である。
図2図2A-2Dは第1実施形態の弁装置の断面図であって、図2Aは閉位置の状態であり、図2Bは弁体が30°回転した状態であり、図2Cは弁体が60°回転した状態であり、図2Dは開位置である。また図2E-2Hは、第1実施形態の弁装置を上流側から見た図であり、図2E-2Hがそれぞれ図2A-2Dに対応する図である。
図3図3Aが誘導部を有しない比較例の弁装置による排気ガス流れを説明する図であり、図3Bが屈曲部の特徴を説明する図であり、図3Cが第1実施形態の弁装置による排気ガス流れを説明する図である。
図4図4A-4Bが第2実施形態の弁装置を示す断面図であり、図4C-4Dが第2実施形態の弁装置を上流側から見た図である。
図5図5A及び図5Bが、弁装置の変形例を示す側面図である。
図6図6A及び図6Bが、弁装置の変形例を上流側から見た図である。
図7】弁装置の変形例を示す側面図である。
図8図8A及び図8Bは弁装置の変形例を示す断面図であり、図8C及び図8Dは弁装置の変形例を上流側から見た図である。
図9図9A及び図9Bは弁装置の変形例を示す断面図であり、図9C及び図9Dは弁装置の変形例を上流側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0015】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
第1実施形態の弁装置1は、図1及び図2A-2Hに示されるように、流体が流れる配管3に配置される弁装置である。本実施形態では、配管3は、車両のエンジンからの排気ガスが流れる排気管として用いられる。弁装置1は、排気管のどの位置に設けられてもよいが、例えば、車両の排気ガスの流路に搭載されたマフラの内側パイプに設けてもよい。以下、流体の一例として排気ガスを用いて説明する。配管3は、一例として、略直線状に延びる円筒状の部材である。以後、配管3における排気ガスの流れ方向に直交する平面による断面の略中心を通過する線を、中心軸3aと記載する。弁装置1は、配管3により構成される流路の開度を調整するように構成されており、回転軸11、上流壁13、支持体15、付勢部17、及び誘導部19を有する。また、上流壁13及び支持体15によって、弁体21が構成される。
【0016】
回転軸11は、配管3に固定される棒状の部材であり、弁体21の回転中心となる。回転軸11は、その長さ方向が、配管3における排気ガスの流れ方向(中心軸3aの方向)と直交する方向となるように配置される。回転軸11は、図1に示されるように、配管3の中心軸3aから径方向に間隔を空けて配置されている。また、回転軸11は、例えば図2Hに示されるように、配管3の内部に配置され、配管3の壁面を貫通するように配置される。なお回転軸11は、弁体21が回転軸11を中心として回転変位可能に構成されていれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0017】
上流壁13は、配管3内部の流路の開度を調整する部材であり、図2E-2Hに示されるように、略円板状の部材である。上流壁13は、弁体21において排気ガスが流れる方向の上流側の面をなす壁部材である。上流壁13における排気ガスが当たる面は平坦面となっている。上流壁13は、回転軸11を中心として回転可能に設けられる。上流壁13の回転動作を図2A-2Hを用いて説明する。図2A-2Dは、配管3の中心軸3aを通過し、かつ回転軸11と直交する平面による断面図である。図2E-2Hは、弁装置1を配管3の上流側から見た図である。
【0018】
図2Aは、弁体21が閉位置である場合を示す。閉位置とは、弁体21と、中心軸3aと直交する平面Sと、のなす角度Θが相対的に小さい位置である。弁体21の角度は、上流壁13の主たる面を基準としてもよい。この場合、上流壁13と平面Sとのなす角度が角度Θとなる。ここでいう上流壁13の主たる面とは、上流壁13を略平坦面とみなした場合のその面であってもよい。また、弁体21の全体を1つの平面とみなして角度Θを特定してもよい。なお角度Θは、弁体21のおおよその傾斜状態を示唆する値である。
【0019】
弁体21が閉位置にあるとき、角度Θは0°である。閉位置は、弁体21による配管3の閉塞度合が相対的に大きい位置である。ここでいう閉塞度合とは、排気ガスの流れにくさを示す程度である。本実施形態における閉位置は、弁体21が回転変位可能な範囲で最も排気ガスが流れにくい位置である。弁体21が図2Aに示す閉位置のとき、図2Eに示されるように、流路は上流壁13によりほぼ塞がれている。上述した閉位置が、第1位置に相当する。
【0020】
図2Bは、弁体21が回転して傾斜し、角度Θが30°となった場合を示す。弁体21が傾斜した状態では、図2Fに示されるように、流路における排気ガスが移動可能な空間5が徐々に大きくなり、閉位置よりも排気ガスが流れやすくなる。
【0021】
図2Cは、弁体21が回転して傾斜し、角度Θが60°となった場合を示す。このように傾斜した状態では、図2Gに示されるように、角度Θが30°のときよりも空間5が大きくなり、排気ガスがより良好に流れる。また、このときには上流側から誘導部19が視認できるようになる。すなわち、配管3の長さ方向に沿って流れる排気ガスが誘導部19に当たりやすくなる。
【0022】
図2Dは、弁体21が開位置である場合を示す。開位置とは、角度Θが相対的に大きい位置である。図2Dにおいて、角度Θは90°である。また開位置は、上述した閉塞度合が相対的に小さい位置である。このように傾斜した状態では、図2Hに示されるように、空間5は最も大きくなり、すなわち開度が最も大きくなり、排気ガスが最もスムーズに弁装置1を通過する。上述した開位置が、第2位置に相当する。
【0023】
弁体21は、閉位置と開位置との間で回転変位可能である。
上流壁13は、図1及び図2Aに示されるように、弁体21が上述した閉位置にある場合に、回転軸11よりも流体の流れ方向の上流側となる位置に配置されている。
【0024】
なお以下の説明において、弁体21が開位置から閉位置へ向かう回転方向を閉方向と記載し、閉位置から開位置へ向かう回転方向を開方向と記載する。閉位置へ向かうほど、弁装置1の開度は減少し、閉塞度合が上昇する。また以下の説明において、上流及び下流とは、排気ガスの流れ方向に関する上流及び下流である。
【0025】
支持体15は、閉位置において上流壁13の下流側に固定される容器型の部材である。すなわち、支持体15は、弁体21が閉位置にあるときに下流側を向く面である下流面15aを構成する。下流面15aは、図1に示す状態において下流側に突出する屈曲部15bを有する。屈曲部15bの具体的な構成については後述する。
【0026】
支持体15には回転軸11が固定されている。この支持体15を介して上流壁13は回転軸11に取り付けられる。
付勢部17は、弁体21が閉位置に向かうように弁体21を付勢する。付勢部17は、弾性力により弁体21を付勢するバネ部品である。付勢部17は配管3の外部に配置されており、一端が配管3の側面に連結され、他端が回転軸11に連結されている。付勢部17は弁体21が閉位置に向かうように回転軸11に回転力を加えている。
【0027】
誘導部19は、回転軸11よりも下流側において配管3に固定され、回転軸11の長さ方向に沿って延びる板状の部材である。誘導部19は、下流に向かうほど、図1に示される仮想平面11aに近づくように傾斜する。ここでいう仮想平面11aとは、配管3を上流側から見たときに回転軸11の中心が存在する位置に広がる平面である。
【0028】
誘導部19は、端部以外の主要部分が配管3の内壁面から間隔を空けて配置されている。よって、誘導部19と弁体21との間の空間と、誘導部19を基準として弁体21が位置する側とは反対側の空間(誘導部19と配管3の内側面との間の空間)と、の両方を排気ガスが通過可能である。
【0029】
また誘導部19は、弁体21の回転変位の範囲を規制する。誘導部19は、図2Aに示されるように、閉位置にある弁体21の支持体15と当接し、それ以上閉方向に回転することを抑制する。また誘導部19は、図2Dに示されるように、開位置にある弁体21の支持体15と当接し、それ以上開方向に回転することを抑制する。
【0030】
[1-2.誘導部による排気ガス流れ制御]
誘導部19は、排気ガスの流れを制御する機能を有する。しかしながら、例えば弁体21が図2Aの角度の場合は排気ガスがほぼ流れず、また図2Dの角度の場合は誘導部19と支持体15との間に隙間がなくその隙間を排気ガスが流れないため、そのような場合には以下に説明する機能は発揮されない。誘導部19は、弁体21が閉位置と開位置の間における所定の範囲に位置するときに、以下に説明する機能を発揮する。所定の範囲とは、弁体21が閉位置から開方向に回転変位した結果、上流から流れる排気ガスが誘導部19に当接し、誘導部19と弁体21の間を排気ガスが流れるようになる弁体21の回転角度の範囲である。以下の説明においては、弁体21の角度Θが60°となった場合について説明する。確認的に記載すると、後述する誘導部19の機能が発揮される角度Θは60°に限定されず、60°を含む特定の角度範囲で誘導部19の機能が発揮される。
【0031】
図3Aに、比較例の構成として、誘導部19を備えない場合の排気ガスの流れを示す。以下の説明において、配管3の半径方向のうち、回転軸11の長さ方向と直交する方向を第1方向及び第2方向とする。第1方向とは、弁体21が開位置にある場合に上流側に位置する端部を上流端部21aとしたとき、弁体21が閉位置にある場合に回転軸11から見て上流端部21aが位置する方向である。また第2方向とは第1方向の反対側の方向である。
【0032】
図3Aに示すように、弁体21が閉位置から開方向に回転したとき、排気ガスは弁体21を中心に第1方向と第2方向とに分離して流れる。排気ガスが弁体21の横を通過するとき、弁体21によって流路が上流側よりも狭くなることから、排気ガスの流速は大きくなる。一方、弁体21のすぐ下流側の空間では、排気ガスの流速が小さくなる。排気ガスがこのように流れる結果、弁体21の下流側の空間に渦が発生する。この渦が気流音の原因となる。
【0033】
なお上述した屈曲部15bは、図3Aに示される弁体21の回転位置において、下流面15aが下流側に向かうほど中心軸3aとのなす角度が大きくなるように屈曲する部分である。つまり、図3Bに示すように、下流面15aにおける屈曲部15bよりも上流側の表面15cと中心軸3aとがなす角度Θ1よりも、下流面15aにおける屈曲部15bよりも下流側の表面15dと中心軸3aとがなす角度Θ2の方が大きい。このような弁体21の形状では、屈曲部15bの横を通過したときに急激に流路が広がるため、排気ガスが弁体21から剥離しやすくなり、渦の発生がより顕著になる。
【0034】
図3Cに、誘導部19を備える第1実施形態の弁装置1を示す。誘導部19は、下流に向かうほど、中心軸3aに近づくように傾斜する傾斜面19aを有する。誘導部19は、排気ガスの一部を、弁体21の下流面15aにおける下流側の表面15dに誘導する。その結果、排気ガスが弁体21から剥離することが抑制され、弁体21の下流側の空間により多くの排気ガスが流れ込むことで、渦の発生が抑制される。
【0035】
図3Cに示す仮想平面15eは、配管3を上流側から見たときに屈曲部15bが存在する位置に広がる平面である。誘導部19は、傾斜面19aの少なくとも一部が屈曲部15bよりも配管3の側に配置されている。その結果、誘導部19は、屈曲部15bよりも配管3の側の空間を下流に向かって流れる排気ガスを、弁体21の下流側の面に向ける。ここでいう配管3の側とは、配管3の半径方向に関して、屈曲部15b(下流面15a)が向く方向に位置する配管3の壁面の存在する側である。
【0036】
[1-3.弁体の回転]
付勢部17は、弁体21の回転角度に関わらず自然長よりも引っ張られた状態となっており、当該バネ部品を縮小させる復元力を生じている。弁体21が閉位置に位置する際は、付勢部17の伸びが最小であり、復元力が最小となる。また、弁体21が開位置に近づくに従い、付勢部17の伸びが大きくなり、復元力が増加する。そのため、付勢部17の復元力は、弁体21を閉位置に向けて(換言すれば、閉方向に)回転させるトルクを生じさせる。また弁体21は、配管3を流れる排気ガスにより開方向に回転する。
【0037】
上述したように、回転軸11は中心軸3aから径方向に離れた位置に配置されている。そのため、上述した平面Sに上流壁13を投影すると、上流端部21a側の面積が小さくなる。その結果、排気ガスからの回転力を上流端部21aの反対側が大きく受けることとなり、弁体21全体としては、開方向に向かうように回転力を受ける。その回転力が付勢部17の閉方向に向かう力よりも大きいときに、弁体21が開方向に開く。
【0038】
[1-4.効果]
(1a)弁装置1では、誘導部19が、排気ガスの一部を、閉位置と開位置の間における所定の範囲に位置する弁体21の下流面15aの下流側の表面15dに誘導するように構成されている。そのため、誘導部19によって排気ガスが弁体21の下流側の面(特に屈曲部15bよりも下流側の表面15d)に沿った空間に流れやすくなる。これにより、図3Aに示すような渦が発生することを抑制され、渦に起因する騒音を低減することができる。
【0039】
(1b)弁装置1では、誘導部19は、下流側に向かうほど、中心軸3aに近づくように傾斜する傾斜面19aを有する。この傾斜面19aによって、排気ガスの流れる方向を滑らかに変更することができるため、誘導部19により騒音が発生してしまったり、誘導部19が大きな圧力損失を発生してしまったりすることを抑制できる。
【0040】
(1c)弁装置1において、弁体21の下流面15aは屈曲部15bを有する。また誘導部19は、弁体21が所定の範囲に位置するとき、屈曲部15bよりも配管3側の空間を下流に向かって流れる排気ガスの流れる方向を、下流面15aに向ける。弁体21が屈曲部15bを有するため、屈曲部15bの下流側の空間において渦が発生しやすくなる。しかしながら、誘導部19が、屈曲部15bよりも配管3側の空間をスムーズに流れている排気ガスを屈曲部15bの下流側の面に向けるため、弁体21の下流側面に向けて流れる排気ガスの量を多くすることができ、渦の発生を良好に抑制できる。
【0041】
(1d)弁装置1では、誘導部19は、弁体21の回転変位の範囲を規制するストッパとして機能する。そのため、誘導部19とは別にストッパを設ける必要が無くなり、弁装置1の構成を簡素化できる。また、誘導部19ではないストッパによって排気ガスによる騒音が発生することを抑制できる。
【0042】
(1e)弁装置1では、誘導部19は、回転軸11の長さ方向に伸びる板状の部材である。このような構成であれば、誘導部19が配管3の内部に広く配置されるため、広い範囲で排気ガスの流れる方向を変化させることができ、渦の発生を良好に抑制できる。
【0043】
(1f)弁装置1では、回転軸11は、中心軸3aから径方向に間隔を空けて配置されている。そのため、弁体21が排気ガスに押圧されたときに、閉位置から開位置へ向かう回転力を好適に生じさせることができる。
【0044】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
第1実施形態の弁装置1では、誘導部19が配管3に固定される構成を例示した。一方、図4A-4Dに示される第2実施形態の弁装置101では、誘導部119は、回転軸111に固定されている点で相違する。
【0046】
誘導部119は、本体部119aと、一対の連結部119bと、を有する。119本体部119aは、回転軸111の長さ方向に沿って延びる板状の部材であり、配管3の内壁面から間隔を空けた位置に配置されている。よって、第1実施形態の誘導部19と同様に機能する。一対の連結部119bは、回転軸111から延び出し、本体部119aの長手方向の両端と回転軸111とを連結する。
【0047】
このように構成された弁装置101は、弁装置1と同様の機能を奏する。また、回転軸111に誘導部119が設けられていることから、誘導部119を配管3に固定する作業を削減できる。なお、弁体21が回転しても誘導部119が変位しないように、回転軸111は配管3に対して回転不能に固定される。弁体21を回転させるための付勢部の具体的な構成は特に限定されない。例えば一端が弁体21に連結され、他端が回転軸111に連結されるバネ部品であってもよい。
【0048】
[3.他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0049】
(3a)本開示の誘導部は、上流から流れる流体の一部の流れる方向を、所定の範囲に位置する弁体の下流側の面に誘導するように構成されていれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0050】
例えば、上記第1及び第2実施形態では、誘導部として平板状の部材を有する構成を例示した。しかしながら、誘導部は板の幅方向に関して湾曲していてもよい。例えば、図5Aに示す誘導部201のように、幅方向の中央が弁体211に向かうように湾曲していてもよいし、図5Bに示す誘導部203のように、幅方向の中央が弁体211から離れるように湾曲していてもよい。
【0051】
また、上記第1及び第2実施形態では、誘導部として回転軸の長さ方向に直線的に伸びる板状の部材を有する構成を例示した。しかしながら、誘導部は板の長さ方向に関して湾曲していてもよい。例えば、図6Aに示す誘導部301のように、長さ方向の中央が弁体311に向かうように湾曲していてもよいし、図6Bに示す誘導部303のように、長さ方向の中央が弁体311から離れるように湾曲していてもよい。また例えば、誘導部は回転軸の長さ方向の長さが短くてもよい。
【0052】
また、上記第1及び第2実施形態では、誘導部として1つの部材を備える構成を例示した。しかしながら、図7に示されるように、弁装置401が、複数の誘導部411,413を備えていてもよい。また、複数の誘導部は、互いに連結されていてもよい。
【0053】
また、上記第1及び第2実施形態では、誘導部が、下流側に向かうほど中心軸3aに近づくように傾斜する傾斜面を有する構成を例示した。しかしながら、誘導部は上述した形状に限定されない。例えば、誘導部は中心軸3aと直交する平面によって排気ガスの流れ方向を変更させる構成であってもよい。
【0054】
また、上記第1実施形態では、傾斜面19aの少なくとも一部が屈曲部15bよりも配管3の側に配置されることにより、屈曲部15bよりも配管3側の空間5を下流に向かって流れる流体を、弁体21の下流側の面に向ける構成を例示した。しかしながら、傾斜面19aの配置される位置は上記の位置に限定されず、傾斜面19a全体が屈曲部15bよりも回転軸11側に位置していてもよい。
【0055】
(3b)本開示の弁体の構成は特に限定されない。例えば、第1実施形態に示す屈曲部15bのような形状を弁体が有していなくてもよい。また、図8A-8Dに示される弁装置501のように、弁体511の上流側に位置する壁面513のうち、開方向に回転したときに下流側に移動する端部513aが、閉位置において上流側に反った形状であってもよい。
【0056】
また、上記第1及び第2実施形態では、弁体が屈曲部15bを有する構成を例示したが、弁体は屈曲部を有していなくてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態では、弁体が閉位置から開位置までの間で回転変位する構成を例示した。すなわち、閉位置が、弁体と、中心軸3aと直交する平面S(図2A参照)と、のなす角度が相対的に小さい位置であり、開位置が、上記角度が相対的に大きい第2位置である構成を例示した。しかしながら、第1位置及び第2位置は、上記実施形態にて例示した角度に限定されない。例えば、第1位置は平面Sに対して傾斜した位置であってもよい。また、第2位置において、弁体と平面Sのなす角度が90°ではない角度であってもよい。
【0057】
(3c)上記第1及び第2実施形態では、円筒状の配管3に弁装置が配置される構成を例示した。しかしながら、配管の具体的な形状は特に限定されない。例えば図9A-9Dに示される弁装置601のように、断面が略矩形の配管603に対して弁装置601が配置されていてもよい。この場合、上流壁613も矩形に形成されていてもよい。
【0058】
(3d)上記第1及び第2実施形態では、誘導部が弁体の回転変位の範囲を規制するストッパとして機能する構成を例示した。しかしながら、ストッパは誘導部とは別に設けられていてもよい。また、誘導部は、閉方向又は開方向のいずれか一方に向かう弁体の回転を抑制するように構成されていてもよい。
【0059】
(3e)上記第1及び第2実施形態では、排気流路の中心軸3aから間隔を開けた位置に回転軸が配置される構成を例示したが、回転軸は中心軸3aと交差するように配置されていてもよい。その場合、排気ガスが流れたときに、閉位置にある弁体に開方向に向かうトルクが生じるように、弁体の形状や空間5の設定などを調整するとよい。
【0060】
(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,101,401,501,601…弁装置、3,603…配管、3a…中心軸、5…空間、11,111…回転軸、11a,15e…仮想平面、13,613…上流壁、15…支持体、15a…下流面、15b…屈曲部、15c,15d…表面、17…付勢部、19,119,201,203,301,303,411,413…誘導部、19a…傾斜面、21,211,311,511…弁体、21a…上流端部、119a…本体部、119b…連結部、513…壁面、513a…端部、S…平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9