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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ガス処理システム及びこれを含む船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/30 20060101AFI20240903BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240903BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240903BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240903BHJP
   B63J 3/04 20060101ALI20240903BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20240903BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20240903BHJP
   B67D 9/00 20100101ALN20240903BHJP
【FI】
B63B27/30
B63B25/16 D
B63B25/16 M
B63B35/00 W
B63H21/38 C
B63J3/04
F17C13/00 302A
F17C13/02 302
B67D9/00 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021503688
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2019004166
(87)【国際公開番号】W WO2019194670
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040580
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0111828
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513235337
【氏名又は名称】エイチディー コリア シップビルディング アンド オフショア エンジニアリング カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520387760
【氏名又は名称】エイチディー ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ ビョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】イ フン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク ソク ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ シン グ
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0053105(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0050241(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0120862(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1756646(KR,B1)
【文献】”LNG ship to ship bunkering procedure”,Swedish Marine Technology Forum,2010年,p.14-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16, 27/30, 35/00
B63J 3/04
B63H 21/38
F17C 13/00 - 13/02
B67D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンカリング船舶の貯蔵タンクからガス推進船舶に設けられたC型の燃料タンクに液化ガスを伝達するガス処理システムであって、
前記貯蔵タンクの液化ガスを前記燃料タンクに供給するバンカリングラインと、
前記貯蔵タンクの蒸発ガスを冷媒で液化してリターンして前記貯蔵タンクの内圧を調整するバンカリング管理部と、
前記バンカリングラインを介したバンカリング時に前記燃料タンクで発生する蒸発ガスを前記バンカリング船舶に伝達する蒸発ガスリターンラインと、を含み、
前記バンカリング管理部は、
バンカリング前に前記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げ、バンカリング時に前記貯蔵タンクの内圧を前記燃料タンクの内圧未満に保持して前記蒸発ガスリターンラインを介して蒸発ガスが別の圧縮機による圧縮なしに伝達されるようにすることを特徴とするガス処理システム。
【請求項2】
前記貯蔵タンクはメンブレン型またはC型のタンクであり、
前記既設定圧は0.04barGまたは0.2barGであることを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記バンカリング管理部は蒸発ガスを液化する再液化装置を含み、
前記蒸発ガスリターンラインは前記再液化装置に蒸発ガスを伝達することを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記バンカリング管理部は、
バンカリング時に前記蒸発ガスリターンラインを介して伝達される蒸発ガスを再液化して前記貯蔵タンクに復帰させることで、前記貯蔵タンクの内圧を前記燃料タンクの内圧未満に保持することを特徴とする請求項3に記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記バンカリング管理部は、
バンカリング前の内圧が第1圧力で、バンカリング時に液化ガスの流入によって内圧が下降する前記燃料タンクにバンカリングする場合、バンカリング前及びバンカリング時の前記貯蔵タンクの内圧を前記燃料タンクのバンカリング完了時の内圧以下にすることを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記バンカリング管理部は、
バンカリング前の内圧が第2圧力で、バンカリング時に蒸発ガスの発生によって内圧が上昇する前記燃料タンクにバンカリングする場合、バンカリング前及びバンカリング時の前記貯蔵タンクの内圧を前記燃料タンクのバンカリング開始時の内圧以下にすることを特徴とする請求項5に記載のガス処理システム。
【請求項7】
前記第1圧力は、前記既設定圧と比べて0.05bar~0.1bar大きい値と同じか、より大きい圧力であり、
前記第2圧力は、前記既設定圧と比べて0.05bar~0.1bar大きい値よりも小さい圧力であることを特徴とする請求項6に記載のガス処理システム。
【請求項8】
前記第1圧力は0.5barG~8barGであり、
前記第2圧力は0.5barG以下であることを特徴とする請求項6に記載のガス処理システム。
【請求項9】
バンカリング船舶の貯蔵タンクからガス推進船舶に設けられた燃料タンクに液化ガスを伝達するガス処理システムであって、
前記貯蔵タンクの液化ガスを前記燃料タンクに供給するバンカリングラインと、
前記貯蔵タンクの蒸発ガスを冷媒との熱交換なしに圧縮、冷却、減圧してリターンすることで前記貯蔵タンクの内圧を調整するバンカリング管理部と、
前記バンカリングラインを介したバンカリング時に前記燃料タンクで発生する蒸発ガスを前記バンカリング船舶に伝達する蒸発ガスリターンラインと、を含み、
前記バンカリング管理部は、
バンカリング前に前記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げ、
バンカリング時に前記蒸発ガスリターンラインを介した蒸発ガスの伝達を遮断して前記燃料タンクが蓄圧されるようにするか、前記貯蔵タンクの内圧を前記燃料タンクの内圧未満に保持して前記蒸発ガスリターンラインを介して蒸発ガスが別の圧縮機による圧縮なしに伝達されるようにすることを特徴とするガス処理システム。
【請求項10】
前記貯蔵タンクはメンブレン型またはC型のタンクであり、
前記既設定圧は0.04barGまたは0.2barGであることを特徴とする請求項9に記載のガス処理システム。
【請求項11】
前記バンカリング管理部は、圧縮された蒸発ガスを前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスと熱交換する蒸発ガス熱交換器を含み、
前記蒸発ガスリターンラインは、前記貯蔵タンクと前記蒸発ガス熱交換器の間に蒸発ガスを伝達することを特徴とする請求項9に記載のガス処理システム。
【請求項12】
前記蒸発ガスリターンラインは、
前記蒸発ガス熱交換器を経由または迂回して前記貯蔵タンクと前記蒸発ガス熱交換器の間に蒸発ガスを伝達するように設けられることを特徴とする請求項11に記載のガス処理システム。
【請求項13】
前記バンカリング管理部は、
並列に設けられ、前記貯蔵タンクの蒸発ガスを圧縮して発電エンジンに供給する複数個の低圧圧縮機と、
前記低圧圧縮機と前記発電エンジンの間で分岐された位置に設けられ、余剰の蒸発ガスを150barG以上に圧縮する多段のブースト圧縮機と、
前記ブースト圧縮機で圧縮された蒸発ガスを減圧して液化する減圧弁と、を含み、
前記蒸発ガス熱交換器は、
前記ブースト圧縮機と前記減圧弁の間で高圧の蒸発ガスを前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスで冷却することを特徴とする請求項11に記載のガス処理システム。
【請求項14】
前記バンカリング管理部は、
バンカリング前に前記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げるために、複数個の前記低圧圧縮機を並列運転して前記貯蔵タンクの蒸発ガスを吸引することを特徴とする請求項13に記載のガス処理システム。
【請求項15】
前記バンカリング管理部は、
前記貯蔵タンクの蒸発ガスを圧縮して発電エンジンに供給する低圧圧縮機と、
前記低圧圧縮機と並列に設けられ、前記貯蔵タンクの蒸発ガスを150barG以上に圧縮する多段の高圧圧縮機と、
前記高圧圧縮機で圧縮された蒸発ガスを減圧して液化する減圧弁と、を含み、
前記蒸発ガス熱交換器は、
前記高圧圧縮機と前記減圧弁の間で高圧の蒸発ガスを前記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスで冷却し、
前記高圧圧縮機は中間段の蒸発ガスを前記発電エンジンに供給することを特徴とする請求項11に記載のガス処理システム。
【請求項16】
前記バンカリング管理部は、
前記貯蔵タンクの液化ガスの貯蔵量に応じて前記低圧圧縮機と前記高圧圧縮機を独立的に運転することを特徴とする請求項15に記載のガス処理システム。
【請求項17】
バンカリング船舶の貯蔵タンクからガス推進船舶に設けられた燃料タンクに液化ガスを伝達するガス処理システムであって、
前記貯蔵タンクの液化ガスを前記燃料タンクに供給するバンカリングラインと、
前記貯蔵タンクの液化ガスを冷媒で過冷却してリターンすることで前記貯蔵タンクの内圧を調整するバンカリング管理部と、
前記バンカリングラインを介したバンカリング時に前記燃料タンクで発生する蒸発ガスを前記バンカリング船舶に伝達する蒸発ガスリターンラインと、を含み、
前記バンカリング管理部は、
バンカリング前に前記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げ、
バンカリング時に前記蒸発ガスリターンラインを介した蒸発ガスの伝達を遮断して前記燃料タンクが蓄圧されるようにするか、前記貯蔵タンクの内圧を前記燃料タンクの内圧未満に保持して前記蒸発ガスリターンラインを介して蒸発ガスが別の圧縮機による圧縮なしに伝達されるようにすることを特徴とするガス処理システム。
【請求項18】
前記貯蔵タンクはメンブレン型またはC型のタンクであり、
前記既設定圧は0.04barGまたは0.2barGであることを特徴とする請求項17に記載のガス処理システム。
【請求項19】
前記バンカリング管理部は、
液化ガスを冷媒で過冷却させる過冷却装置と、
前記過冷却装置に冷媒を供給する冷媒供給部と、を含み、
前記冷媒供給部は、
冷媒を前記貯蔵タンクから発電エンジンに供給される液化ガスまたは蒸発ガスで冷却する冷媒熱交換器を含むことを特徴とする請求項17に記載のガス処理システム。
【請求項20】
前記冷媒供給部は、
冷媒圧縮機と、
圧縮された冷媒と前記過冷却装置で加熱された冷媒を熱交換する冷媒間熱交換器と、
圧縮後に前記冷媒間熱交換器を経た冷媒を膨張させる冷媒膨張機と、
圧縮された冷媒を前記発電エンジンに供給される液化ガスまたは蒸発ガスで冷却する前記冷媒熱交換器と、を含むことを特徴とする請求項19に記載のガス処理システム。
【請求項21】
前記冷媒供給部は、
冷媒圧縮機と、
圧縮された冷媒と前記過冷却装置で加熱された冷媒及び前記発電エンジンに供給される液化ガスまたは蒸発ガスを熱交換する前記冷媒熱交換器と、
圧縮後に前記冷媒熱交換器を経た冷媒を膨張させる冷媒膨張機と、を含むことを特徴とする請求項19に記載のガス処理システム。
【請求項22】
請求項1から請求項21の何れか1項に記載の前記ガス処理システムを有することを特徴とするバンカリング船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理システム及びこれを含む船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、大量の鉱物や原油、天然ガス、または数千個以上のコンテナなどを載せて大洋を航海する輸送手段で、鋼鉄からなり、浮力によって水線面に浮遊した状態でプロペラの回転により発生する推力で移動する。
【0003】
このような船舶は、エンジンやガスタービンなどを駆動することにより推力を発生させるが、このとき、エンジンはガソリンまたはディーゼルなどのオイル燃料を使用してピストンを動かし、ピストンの往復運動によってクランク軸を回転させ、クランク軸に連結されたシャフトが回転してプロペラが駆動されるようにし、一方、ガスタービンは、圧縮空気とともに燃料を燃焼させ、燃焼空気の温度/圧力によりタービン翼を回転させることで発電してプロペラに動力を伝達する方式を使用する。
【0004】
しかし、最近では、液化ガスの一種である液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)を運搬するLNG運搬船において、LNGを燃料として使用しエンジンやタービンなどの需要先を駆動するLNG燃料供給方式が使われており、LNGはクリーン燃料で、埋蔵量も石油より豊富であるため、需要先の燃料としてLNGを使用する方式はLNG運搬船以外の船舶にも適用されている。
【0005】
ところが、LNGはディーゼル油とは異なり、ロード/アンロードの際に液相を保持するためには極低温状態で保持しなければならないという特性がある。従って、LNG推進方式を適用したLNG運搬船以外の船舶に対してLNGを安定的にバンカリングする技術に対する研究及び開発が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために創出されたものであり、本発明の目的は液化ガスをガス推進船舶にバンカリングする過程で安定的且つ迅速な液化ガスの伝達を具現し、バンカリングの効率を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によるガス処理システムは、バンカリング船舶の貯蔵タンクからガス推進船舶に設けられたC型の燃料タンクに液化ガスを伝達するガス処理システムであって、上記貯蔵タンクの液化ガスを上記燃料タンクに供給するバンカリングラインと、上記貯蔵タンクの蒸発ガスを冷媒で液化してリターンして上記貯蔵タンクの内圧を調整するバンカリング管理部と、上記バンカリングラインを介したバンカリング時に上記燃料タンクで発生する蒸発ガスを上記バンカリング船舶に伝達する蒸発ガスリターンラインと、を含み、上記バンカリング管理部は、バンカリング前に上記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げ、バンカリング時に上記貯蔵タンクの内圧を上記燃料タンクの内圧未満に保持して上記蒸発ガスリターンラインを介して蒸発ガスが別の圧縮機による圧縮なしに伝達されるようにすることを特徴とする。
【0008】
具体的に、上記貯蔵タンクはメンブレン型またはC型のタンクであり、上記既設定圧は0.04barGまたは0.2barGであってもよい。
【0009】
具体的に、上記バンカリング管理部は蒸発ガスを液化する再液化装置を含み、上記蒸発ガスリターンラインは上記再液化装置に蒸発ガスを伝達することができる。
【0010】
具体的に、上記バンカリング管理部は、バンカリング時に上記蒸発ガスリターンラインを介して伝達される蒸発ガスを再液化して上記貯蔵タンクに復帰させることで、上記貯蔵タンクの内圧を上記燃料タンクの内圧未満に保持することができる。
【0011】
具体的に、上記バンカリング管理部は、バンカリング前の内圧が第1圧力で、バンカリング時に液化ガスの流入によって内圧が下降する上記燃料タンクにバンカリングする場合、バンカリング前及びバンカリング時の上記貯蔵タンクの内圧を上記燃料タンクのバンカリング完了時の内圧以下にすることができる。
【0012】
具体的に、上記バンカリング管理部は、バンカリング前の内圧が第2圧力で、バンカリング時に蒸発ガスの発生によって内圧が上昇する上記燃料タンクにバンカリングする場合、バンカリング前及びバンカリング時の上記貯蔵タンクの内圧を上記燃料タンクのバンカリング開始時の内圧以下にすることができる。
【0013】
具体的に、上記第1圧力は、上記既設定圧対比で0.05barG~0.1barG大きい値以上の圧力であり、上記第2圧力は、上記既設定圧対比で0.05barG~0.1barG大きい値未満の圧力であることができる。
【0014】
具体的に、上記第1圧力は0.5barG~8barGであり、上記第2圧力は0.5barG以下であることができる。
【0015】
本発明の一側面によるガス処理システムは、バンカリング船舶の貯蔵タンクからガス推進船舶に設けられた燃料タンクに液化ガスを伝達するガス処理システムであって、上記貯蔵タンクの液化ガスを上記燃料タンクに供給するバンカリングラインと、上記貯蔵タンクの蒸発ガスを冷媒との熱交換なしに圧縮、冷却、減圧してリターンすることで上記貯蔵タンクの内圧を調整するバンカリング管理部と、上記バンカリングラインを介したバンカリング時に上記燃料タンクで発生する蒸発ガスを上記バンカリング船舶に伝達する蒸発ガスリターンラインと、を含み、上記バンカリング管理部は、バンカリング前に上記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げ、バンカリング時に上記蒸発ガスリターンラインを介した蒸発ガスの伝達を遮断して上記燃料タンクが蓄圧されるようにするか、上記貯蔵タンクの内圧を上記燃料タンクの内圧未満に保持して上記蒸発ガスリターンラインを介して蒸発ガスが別の圧縮機による圧縮なしに伝達されるようにすることを特徴とする。
【0016】
具体的に、上記貯蔵タンクはメンブレン型またはC型のタンクであり、上記既設定圧は0.04barGまたは0.2barGであることができる。
【0017】
具体的に、上記バンカリング管理部は、圧縮された蒸発ガスを上記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスと熱交換する蒸発ガス熱交換器を含み、上記蒸発ガスリターンラインは、上記貯蔵タンクと上記蒸発ガス熱交換器の間に蒸発ガスを伝達することができる。
【0018】
具体的に、上記蒸発ガスリターンラインは、上記蒸発ガス熱交換器を経由または迂回して上記貯蔵タンクと上記蒸発ガス熱交換器の間に蒸発ガスを伝達するように設けられることができる。
【0019】
具体的に、上記バンカリング管理部は、並列に設けられ、上記貯蔵タンクの蒸発ガスを圧縮して発電エンジンに供給する複数個の低圧圧縮機と、上記低圧圧縮機と上記発電エンジンの間で分岐された位置に設けられ、余剰の蒸発ガスを150barG以上に圧縮する多段のブースト圧縮機と、上記ブースト圧縮機で圧縮された蒸発ガスを減圧して液化する減圧弁と、を含み、上記蒸発ガス熱交換器は、上記ブースト圧縮機と上記減圧弁の間で高圧の蒸発ガスを上記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスで冷却することができる。
【0020】
具体的に、上記バンカリング管理部は、バンカリング前に上記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げるために、複数個の上記低圧圧縮機を並列運転して上記貯蔵タンクの蒸発ガスを吸引することができる。
【0021】
具体的に、上記バンカリング管理部は、上記貯蔵タンクの蒸発ガスを圧縮して発電エンジンに供給する低圧圧縮機と、上記低圧圧縮機と並列に設けられ、上記貯蔵タンクの蒸発ガスを150barG以上に圧縮する多段の高圧圧縮機と、上記高圧圧縮機で圧縮された蒸発ガスを減圧して液化する減圧弁と、を含み、上記蒸発ガス熱交換器は、上記高圧圧縮機と上記減圧弁の間で高圧の蒸発ガスを上記貯蔵タンクから排出される蒸発ガスで冷却し、上記高圧圧縮機は中間段の蒸発ガスを上記発電エンジンに供給することができる。
【0022】
具体的に、上記バンカリング管理部は、上記貯蔵タンクの液化ガスの貯蔵量に応じて上記低圧圧縮機と上記高圧圧縮機を独立的に運転することができる。
【0023】
本発明の一側面によるガス処理システムは、バンカリング船舶の貯蔵タンクからガス推進船舶に設けられた燃料タンクに液化ガスを伝達するガス処理システムであって、上記貯蔵タンクの液化ガスを上記燃料タンクに供給するバンカリングラインと、上記貯蔵タンクの液化ガスを冷媒で過冷却してリターンすることで上記貯蔵タンクの内圧を調整するバンカリング管理部と、上記バンカリングラインを介したバンカリング時に上記燃料タンクで発生する蒸発ガスを上記バンカリング船舶に伝達する蒸発ガスリターンラインと、を含み、上記バンカリング管理部は、バンカリング前に上記貯蔵タンクの内圧を既設定圧以下に下げ、バンカリング時に上記蒸発ガスリターンラインを介した蒸発ガスの伝達を遮断して上記燃料タンクが蓄圧されるようにするか、上記貯蔵タンクの内圧を上記燃料タンクの内圧未満に保持して上記蒸発ガスリターンラインを介して蒸発ガスが別の圧縮機による圧縮なしに伝達されるようにすることを特徴とする。
【0024】
具体的に、上記貯蔵タンクはメンブレン型またはC型のタンクであり、上記既設定圧は0.04barGまたは0.2barGであることができる。
【0025】
具体的に、上記バンカリング管理部は、液化ガスを冷媒で過冷却させる過冷却装置と、上記過冷却装置に冷媒を供給する冷媒供給部と、を含み、上記冷媒供給部は、冷媒を上記貯蔵タンクから発電エンジンに供給される液化ガスまたは蒸発ガスで冷却する冷媒熱交換器を含むことができる。
【0026】
具体的に、上記冷媒供給部は、冷媒圧縮機と、圧縮された冷媒と上記過冷却装置で加熱された冷媒を熱交換する冷媒間熱交換器と、圧縮後に上記冷媒間熱交換器を経た冷媒を膨張させる冷媒膨張機と、圧縮された冷媒を上記発電エンジンに供給される液化ガスまたは蒸発ガスで冷却する上記冷媒熱交換器と、を含むことができる。
【0027】
具体的に、上記冷媒供給部は、冷媒圧縮機と、圧縮された冷媒と上記過冷却装置で加熱された冷媒及び上記発電エンジンに供給される液化ガスまたは蒸発ガスを熱交換する上記冷媒熱交換器と、圧縮後に上記冷媒熱交換器を経た冷媒を膨張させる冷媒膨張機と、を含むことができる。
【0028】
本発明の一側面によるガス処理システムは、バンカリング船舶として上記ガス処理システムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によるガス処理システム及びこれを含む船舶は、バンカリング船舶からガス推進船舶に液化ガスを伝達するとき液化ガスから蒸発ガスが発生することを考慮して、バンカリングの時間と効率を短縮させるための技術を創出して安全且つ安定的なバンカリングを保障することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1及び第2実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図2】本発明の第1実施例によるガス処理システムの概念図である。
図3】本発明の第1実施例によるガス処理システムにおける内圧変化のグラフである。
図4】本発明の第2実施例によるガス処理システムの概念図である。
図5】本発明の第2実施例によるガス処理システムにおける内圧変化のグラフである。
図6】本発明の第3実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図7】本発明の第4実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図8】本発明の第5実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図9】本発明の第6実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図10】本発明の第7実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図11】本発明の第8実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図12】本発明の第9実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
図13】本発明の第10実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付の図面と関わる以下の詳細な説明と好ましい実施例から更に明らかになるだろう。本明細書では、各図面の構成要素に参照番号を付するにおいて、同じ構成要素に限ってはたとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同じ番号を付したことに留意すべきである。また、本発明を説明するに当たり、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0032】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ちなみに、本明細書において、液化ガスはLNGであってもよいが、これに限定せず、沸点が常温より低くて貯蔵のために強制的に液化され、発熱量を有する全ての物質を包括することができる。
【0033】
また、本明細書において、液化ガス/蒸発ガスはタンク内部での状態に基づいて区分されるもので、名称によって液相または気相に必ずしも限定されるものではない。また、本明細書において、高圧/低圧は相対的なものであり、数値に限定されない。
【0034】
参考までに、以下、図1図5を通じて説明する第1、第2実施例は、冷媒で蒸発ガスを完全に再液化してバンカリング船舶BVのタンク内圧を下げてバンカリング時の蒸発ガスの発生を減らす思想を基盤としたものである。
【0035】
以下では、各実施例について詳細に説明する。
【0036】
図1は本発明の第1及び第2実施例によるガス処理システムの工程フローチャートであり、図2は本発明の第1実施例によるガス処理システムの概念図であり、図3は本発明の第1実施例によるガス処理システムにおける内圧変化のグラフである。
【0037】
図1図3を参照すると、本発明の第1実施例によるガス処理システムは、バンカリング船舶BVの貯蔵タンク110からガス推進船舶GFSに設けられた燃料タンク210aに液化ガスを伝達するバンカリングシステムである。
【0038】
本発明は以下に説明するガス処理システムを備えたバンカリング船舶BVを含んでもよい。本発明はガス処理システムを具現するために構成が特定されるガス推進船舶GFSも含む。例えば、本発明は以下のガス処理システムが適用されるガス推進船舶GFSであって、バンカリング時に発生する蒸発ガスをバンカリング船舶BVにリターンさせるための圧縮機(特にH/D compressor)が設けられないガス推進船舶GFSを含んでもよい。
【0039】
参考までに、ガス推進船舶GFSは液化ガス運搬船以外の商船であって、バルク船、コンテナ運搬船、鉱物運搬船などの船種であってもよく、燃料タンク210aに貯蔵された液化ガスまたは蒸発ガスを燃料処理部220(ポンプ、圧縮機、熱交換器など)によって圧縮/加圧/加熱などを経てガス供給ラインL6を介して推進エンジン230に供給する設備を備えてもよい。
【0040】
ガス処理システムは、貯蔵タンク110から燃料タンク210aに液化ガスを供給する構成を含んでもよい。このとき、貯蔵タンク110はメンブレン型またはC型のタンクであり、貯蔵タンク110内に設けられる移送ポンプ111によって液化ガスが貯蔵タンク110と燃料タンク210aを連結するバンカリングラインL1に沿って燃料タンク210aに伝達されることができる。
【0041】
また、ガス処理システムは、燃料タンク210aに液化ガスが供給されるとき、燃料タンク210a内で発生する蒸発ガスをバンカリング船舶BVにリターンさせる構成を含む。このとき、燃料タンク210aは、本実施例の場合、5barG~10barG前後の設計圧力を有するC型であってもよく、ガス推進船舶GFSの甲板の上部または船内などの様々な位置に設置されていてもよい。燃料タンク210aで発生した蒸発ガスは蒸発ガスリターンラインL2を介してバンカリング船舶BVにリターンされ、直接または間接的に貯蔵タンク110に伝達されることができる。
【0042】
また、ガス処理システムはバンカリング管理部120を含む。バンカリング管理部120は貯蔵タンク110の内圧を調整するが、例えば、貯蔵タンク110の蒸発ガスを冷媒(窒素、混合冷媒など制限なし)で液化して貯蔵タンク110にリターンさせて貯蔵タンク110の内圧を下げることができる。
【0043】
本発明は、以下で詳細に述べるバンカリング管理部120を設けることで、バンカリングラインL1を介して貯蔵タンク110の液化ガスを燃料タンク210aに供給するバンカリングの際に燃料タンク210aでの蒸発ガスの発生及び燃料タンク210aで生成された蒸発ガスのバンカリング船舶BVへのリターンなどの部分を従来対比で改善させることができる。
【0044】
具体的には、バンカリング管理部120はバンカリング前に貯蔵タンク110の内圧を既設定圧以下に下げることができる。例えば、バンカリング管理部120はバンカリングラインL1を介して液化ガスが伝達される前に、予め貯蔵タンク110の内圧を0.04barGまたは0.2barGなどの既設定圧に下げることができる。勿論、貯蔵タンク110の内圧が既に既設定圧以下を満たしているのであれば、蒸発ガスの液化リターンは省略されてもよい。
【0045】
即ち、本発明は、バンカリング船舶BVの貯蔵タンク110の内圧を予め下げておくことで、貯蔵タンク110から燃料タンク210aに伝達される液化ガスが十分に安定的な液体状態(例えば、過冷却(subcooled)状態)になるようにして、燃料タンク210aに液化ガスが供給されるときの蒸発ガスの発生量を低減させることができる。
【0046】
その後、バンカリングが開始されると、バンカリング管理部120は貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210aの内圧未満に保持する。この場合、燃料タンク210aで発生する蒸発ガスは、蒸発ガスリターンラインL2を介してバンカリング船舶BVに伝達される過程で、別の圧縮機による圧縮が必要なくなる。即ち、本発明は、バンカリング過程でガス推進船舶GFSからバンカリング船舶BVにリターンされる蒸発ガス(NBOG)が圧縮なしに伝達(Freeflow)されるようにする。
【0047】
具体的に、本発明は、バンカリング過程で貯蔵タンク110の蒸発ガスを継続的に処理して貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210a対比で低く保持し、燃料タンク210aから貯蔵タンク110に蒸発ガスが圧縮なしに伝達されるようにすることで、バンカリング時の蒸発ガスのリターンのためにガス推進船舶GFSに設けられていた高負荷圧縮機(High-Duty Compressor)が省略されるようにすることができる。勿論、そのために貯蔵タンク110と燃料タンク210aのそれぞれには、内圧を測定するための圧力計(不図示)が備えられる。
【0048】
このような効果を具現するためのバンカリング管理部120は、蒸発ガスを液化する再液化装置122を利用し、再液化装置122の上流には並列に複数個の蒸発ガス圧縮機121が互いにバックアップできるように設けられ、再液化装置122の下流には圧力調整弁123と気液分離器124が設けられる。
【0049】
蒸発ガス圧縮機121と再液化装置122、圧力調整弁123、及び気液分離器124は、貯蔵タンク110を基準として循環流路を形成する圧力調整ラインL3上に順に設けられてもよく、これにより、バンカリング管理部120は貯蔵タンク110の蒸発ガスを圧縮、液化し貯蔵タンク110にリターンさせて貯蔵タンク110の内圧を下げることができるようになる。
【0050】
また、本発明は、貯蔵タンク110の内圧を低く保持するために、蒸発ガスリターンラインL2を介してバンカリング船舶BVに伝達される蒸発ガスが再液化装置122に伝達されて再液化後に貯蔵タンク110に復帰するようにするか、再液化装置122を迂回して貯蔵タンク110に伝達されるようにすることができる。または、ガス推進船舶GFSから伝達される蒸発ガスはバンカリング船舶BV内の電力消費のための発電エンジン130の稼動に使用されてもよい。
【0051】
貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210aの内圧以下になるようにするために、即ち、燃料タンク210aの内圧が貯蔵タンク110対比で高くなるようにするために、バンカリング管理部120は、蒸発ガスリターンラインL2を介して伝達される蒸発ガスが貯蔵タンク110にすぐ流入されて貯蔵タンク110の内圧上昇を引き起こさないように再液化装置122を活用することができる。
【0052】
即ち、バンカリング管理部120は、バンカリング時にリターンされる蒸発ガスを再液化して貯蔵タンク110に復帰させることで、貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210aの内圧未満に保持することができる。このとき、蒸発ガスリターンラインL2は、再液化装置122の上流である蒸発ガス圧縮機121の流入端に合流するか、再液化装置122に直接連結されるように設けられることができるが、燃料タンク210aの内圧が蒸発ガス圧縮機121の下流の圧力に対応する場合には蒸発ガスリターンラインL2から再液化装置122に直接蒸発ガスが伝達されてもよい。
【0053】
貯蔵タンク110の内圧が低いほど移送ポンプ111の負荷が大きくなるため、バンカリング管理部120は、貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210aの内圧以下のレベルで、リターンされる蒸発ガスが再液化なしに貯蔵タンク110に供給されるようにして貯蔵タンク110の内圧を上昇させることもできる。
【0054】
バンカリング船舶BVは、バンカリングするための停泊状態において再液化装置122、蒸発ガス圧縮機121、移送ポンプ111などを稼動するために比較的大きな電力を確保する必要があり、停泊時に発電エンジン130が稼動されなければならない。このとき、発電エンジン130は、圧力調整ラインL3の蒸発ガス圧縮機121の下流から分岐される蒸発ガス消費ラインL4を介して蒸発ガスの供給を受けて消費することができ、そのために蒸発ガス圧縮機121の吐出圧力は発電エンジン130の要求圧力に対応することができる。
【0055】
発電エンジン130は、貯蔵タンク110から液化ガス消費ラインL5を介して燃料供給ポンプ112、気化器113を経た液化ガスの供給を受けて消費することができるが、発電エンジン130が稼動できない場合などの状況において貯蔵タンク110の蒸発ガスを消費するために、蒸発ガス消費ラインL4はガス燃焼装置140(またはボイラーなど)にさらに連結されてもよい。
【0056】
蒸発ガスリターンラインL2を介してリターンされる蒸発ガスも発電エンジン130などの燃料として使用されることができ、このとき、蒸発ガスリターンラインL2は蒸発ガス圧縮機121の上流に連結されてもよいが、これに限定しない。
【0057】
以下では、図3を参照してバンカリング過程について説明する。参考までに、図3において、実線は初期内圧が互いに異なる燃料タンク210aのバンカリング時の内圧変化を示し、傾斜点線はバンカリングされる液化ガスの量を示し、水平点線は貯蔵タンク110の内圧を意味する。
【0058】
まず、バンカリング前に、ガス処理システムは再液化装置122を利用してバンカリング船舶BVの貯蔵タンク110の内圧を既設定圧以下に下げておくことができる。このとき、既設定圧は、図3の(A)では0.2barG前後で、図3の(B)では0.04barG前後である。
【0059】
貯蔵タンク110の内圧が十分に低くなったら、貯蔵タンク110と燃料タンク210aの間にバンカリングラインL1を連結してバンカリングを開始する。燃料タンク210aは、極低温の液化ガスを受けるために内部が冷却された状態(cool-down)であってもよいが、バンカリング中に熱が燃料タンク210a内に浸透するなどの要因によって燃料タンク210aでは蒸発ガスが大量に発生するようになる。
【0060】
このとき、燃料タンク210aを保護するために蒸発ガスをバンカリング船舶BVにリターンさせなければならないが、本発明は図3に示したようにバンカリングが行われる時間ずっと貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210aの内圧以下になるようにし、リターンされる蒸発ガスが圧縮なしに伝達されるようにすることができる。
【0061】
バンカリングが行われる燃料タンク210aは、バンカリング前の内圧が、例えば、0.2/3.0/6.5barGであってもよいが、図3の(A)に示したように燃料タンク210aの初期圧力が3.0barGまたは6.5barGの場合、液化ガスが供給されることによって燃料タンク210aの内圧は徐々に減少するようになる。従って、バンカリングが完了したガス推進船舶GFSは、燃料タンク210aの蒸発ガスに対する処理なしにすぐ推進可能な状態になる。これは貯蔵タンク110がバンカリング前に内圧を下げてからバンカリングを行うからである。
【0062】
但し、図3の(A)において、燃料タンク210aの初期内圧が0.2barGであってもよいが、これは貯蔵タンク110の既設定圧と同じであり、この場合、燃料タンク210aは内圧が同じ貯蔵タンク110の液化ガスの伝達を受けて蒸発ガスが生成されることによってバンカリング過程で内圧が多少上昇することがある。
【0063】
一方、図3の(B)の場合は、燃料タンク210aの初期内圧が0.2barGの場合も貯蔵タンク110のバンカリング前の内圧がそれより小さい0.04barGで用意されるため、3つの初期内圧を有する燃料タンク210aはバンカリング過程で全て内圧が減少することが確認できる。
【0064】
上記のような事例の全てにおいて依然として蒸発ガスは圧縮なしにガス推進船舶GFSからバンカリング船舶BVにリターンされるように、バンカリング管理部120は貯蔵タンク110と燃料タンク210aの間の圧力差を保持することができる。
【0065】
具体的には、バンカリング前の内圧が第1圧力で、バンカリング時に液化ガスの流入によって内圧が下降する燃料タンク210aにバンカリングする場合(図3の(A)で燃料タンク210aの内圧が3.0/6.5barGの場合と図3(B)の全ての場合)、バンカリング管理部120は、バンカリング前及びバンカリング時の貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210aのバンカリング完了時の内圧(約0.5bar前後)以下にすることができる。
【0066】
一方、バンカリング前の内圧が第2圧力であり、バンカリング時の蒸発ガスの発生によって内圧が上昇する燃料タンク210aにバンカリングする場合(図3の(A)で燃料タンク210aの内圧が0.2barGの場合)、バンカリング管理部120は、バンカリング前及びバンカリング時の貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210aのバンカリング開始時の内圧(0.2barG)以下にすることができる。
【0067】
このとき、第1圧力は既設定圧対比で0.05barG~0.1barG大きい値以上の圧力で、0.5barG~8barGであってもよく、第2圧力は既設定圧対比で0.05barG~0.1barG大きい値未満の圧力で、0.5barG以下であってもよいが、数値をこれに限定するものではない。
【0068】
以上のように、本実施例は、バンカリング前に貯蔵タンク110の内圧を予め下げておくことで、バンカリング時に燃料タンク210aで発生する蒸発ガスを低減することができ、また、貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210aの内圧以下になるように保持して、燃料タンク210aの蒸発ガスが圧縮なしにバンカリング船舶BVにリターンされるようにすることで、ガス推進船舶GFSのH/D圧縮機を省略することができる。
【0069】
図4は本発明の第2実施例によるガス処理システムの概念図であり、図5は本発明の第2実施例によるガス処理システムにおける内圧変化のグラフである。
【0070】
図1とともに図4及び図5を参照すると、本発明の第2実施例は、上述した実施例と比較して、燃料タンク210bがメンブレン型で設けられる点において差がある。以下では、本実施例が上述した実施例と比べて変わる点を中心として説明し、以下において説明を省略する部分は上述した内容に代える。これは後述する他の実施例でも同様である。
【0071】
本実施例のガス推進船舶GFSは、図4に示したようにコンテナ運搬船などで、船内に燃料タンク210bを搭載することができ、このとき、燃料タンク210bはメンブレン型であってもよい。または、メンブレン型の設計圧力と同じ/類似する設計圧力を有する独立型タンクで、B型(自立角型であるSPBなど)であってもよい。
【0072】
以下では、図5を参照して本実施例のバンカリング過程について説明する。参考までに、図3と同様に、図5において、実線は初期内圧が異なる燃料タンク210bのバンカリング時の内圧変化を示し、傾斜点線はバンカリングされる液化ガスの量を示し、水平点線は貯蔵タンク110の内圧を意味する。
【0073】
ガス処理システムはバンカリング前に既設定圧以下に貯蔵タンク110の内圧を下げ、このとき、既設定圧は、図5の(A)では0.2barG前後で、図5の(B)では0.04barG前後である。
【0074】
貯蔵タンク110の内圧を予め下げてからバンカリングを開始するが、第2実施例の場合、上述した第1実施例と同様にバンカリングが行われる時間ずっと貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210bの内圧以下になるようにすることで、HD圧縮機による圧縮なしに燃料タンク210bからバンカリング船舶BVに蒸発ガスがリターンされる。
【0075】
ここで、燃料タンク210bの内圧は、バンカリング前の内圧が0.63/0.2/0.05barGであってもよいが、貯蔵タンク110のバンカリング前の内圧が0.2barGである図5の(A)において燃料タンク210bの内圧が0.63barGの場合と貯蔵タンク110のバンカリング前の内圧が0.04barGである図5の(B)において燃料タンク210bの内圧が0.63/0.2barGの場合、液化ガスが供給されることによって燃料タンク210bの内圧は次第に減少するようになる。
【0076】
この場合は、バンカリング前の内圧が第1圧力(既設定圧対比で0.05barG~0.1barG大きい値以上の圧力で0.5barG~1barG)で、バンカリング時に液化ガスの流入によって内圧が下降する燃料タンク210bにバンカリングする場合であり、バンカリング管理部120は、バンカリング前及びバンカリング時の貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210bのバンカリング完了時の内圧(約0.5bar前後)以下にすることができる。
【0077】
一方、貯蔵タンク110のバンカリング前の内圧が0.2barGである図5の(A)において燃料タンク210bの内圧が0.2barGである場合と貯蔵タンク110のバンカリング前の内圧が0.04barGである図5の(B)において燃料タンク210bの内圧が0.05barGの場合、燃料タンク210bは、内圧が同じ/類似する貯蔵タンク110の液化ガスの伝達を受けながら蒸発ガスが生成されることによってバンカリング過程で内圧が多少上昇することができる。
【0078】
この場合は、バンカリング前の内圧が第2圧力(既設定圧対比で0.05barG~0.1barG大きい値未満の圧力で0.5barG以下)で、バンカリング時に蒸発ガスの発生によって内圧が上昇する燃料タンク210bにバンカリングする場合であり、バンカリング管理部120は、バンカリング前及びバンカリング時の貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210bのバンカリング開始時の内圧(0.2barG)以下にすることができる。
【0079】
但し、本実施例は、貯蔵タンク110のバンカリング前の内圧が0.2barGである図5の(A)において燃料タンク210bのバンカリング前の内圧が0.05barG以下の場合が存在し、この場合には、バンカリング前に内圧が既設定圧以下に低くなった貯蔵タンク110の圧力がバンカリング前の燃料タンク210bの内圧より大きい圧力の場合であり、第1実施例とは異なる処理が行われる。
【0080】
このとき、バンカリングの初期には貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210bの内圧より高く形成されるため、蒸発ガスのfreeflowリターンが行われない。従って、本実施例は、バンカリング開始時点から一定時点まで蒸発ガスリターンラインL2を介した蒸発ガスの伝達を遮断して燃料タンク210bが蓄圧されるようにする。
【0081】
蒸発ガスのリターンが遮断されると、燃料タンク210bの内圧は蒸発ガスの発生により次第に上昇するようになり、燃料タンク210bの内圧が貯蔵タンク110の内圧を超える時点である一定時点からバンカリング完了時点までは、上述した実施例と同様に、バンカリング管理部120を通じて貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210bの内圧未満に保持することで、蒸発ガスリターンラインL2を介して蒸発ガスを圧縮なしに伝達することができる。
【0082】
即ち、本実施例は、設計圧力が大気圧水準である燃料タンク210bにバンカリングする場合、貯蔵タンク110の内圧を予め下げても燃料タンク210bのバンカリング前の内圧より高い状況でバンカリングが開始される場合が発生することに備えて、バンカリング開始から一定時間の間、燃料タンク210bの内圧が蓄圧によって上昇して貯蔵タンク110の内圧を超えるように制御することができる。
【0083】
具体的に、バンカリング管理部120は、バンカリング開始時点から一定時点までは蒸発ガスのリターンを遮断し、一定時点からバンカリング完了時点の間にはリターンされる蒸発ガスを再液化して貯蔵タンク110に復帰させることで貯蔵タンク110の内圧を燃料タンク210bの内圧未満に保持することができる。
【0084】
このように、本実施例は、メンブレン型の燃料タンク210bに対するバンカリングを具現するためのものであり、バンカリング開始時に貯蔵タンク110の内圧が燃料タンク210bの内圧より高い場合に備えて燃料タンク210bの部分的蓄圧制御を具現し、蒸発ガスのリターンに圧縮機が使用される必要がないようにすることができる。
【0085】
参考までに、以下で図6及び図7を通じて説明する第3、第4実施例は、圧縮/熱交換/減圧で蒸発ガスを部分的に再液化してバンカリング船舶BVのタンク内圧を下げることでバンカリング時の蒸発ガスの発生を低減させる思想を基盤としたものである。
【0086】
以下では、各実施例について詳細に説明する。
【0087】
図6は、本発明の第3実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0088】
図6を参照すると、本発明の第3実施例によるガス処理システムは、蒸発ガスを冷媒で液化してリターンさせる再液化装置122を備えるバンカリング管理部120に代わって(または加えて)、冷媒との熱交換なしに貯蔵タンク110の蒸発ガスを圧縮、冷却、減圧してリターンさせることで貯蔵タンク110の内圧を調整するバンカリング管理部120を備えてもよい。
【0089】
但し、本実施例を含む以下の実施例において、バンカリング管理部120がバンカリング前に貯蔵タンク110の内圧を既設定圧(0.04/0.2barG前後)以下に下げバンカリング時の蒸発ガスリターンを遮断することで燃料タンク210a、210bが蓄圧されるようにするか、バンカリング時に蒸発ガスが圧縮なしに伝達されるように貯蔵タンク110内圧<燃料タンク210a、210bの内圧を保持する制御は、上述した実施例と同様である。
【0090】
バンカリング管理部120は、低圧圧縮機121a、ブースト圧縮機121b、蒸発ガス熱交換器125、減圧弁123、気液分離器124を含み、圧力調整ラインL3は貯蔵タンク110を基準として循環流路を形成し、上記構成を順に直列に連結することができる。
【0091】
低圧圧縮機121aは、複数個が並列に設けられて貯蔵タンク110の蒸発ガスを圧縮して発電エンジン130に供給する。そのために低圧圧縮機121aの下流において蒸発ガス消費ラインL4が分岐されて発電エンジン130などに連結され、低圧圧縮機121aは発電エンジン130の要求圧力に適した吐出圧力を具備することができる。
【0092】
ブースト圧縮機121bは多段に設けられ、低圧圧縮機121aと発電エンジン130の間で分岐された位置(圧力調整ラインL3を基準として低圧圧縮機121aの下流)に設けられ、余剰の蒸発ガスを150barG以上に圧縮する。
【0093】
本実施例は、蒸発ガスを冷媒熱交換なしに圧縮してから減圧するものであり、液化するためにジュール・トムソン効果を活用し、そのために蒸発ガスの減圧前の圧力を150barG以上にしなければならない。従って、本実施例は、発電エンジン130への蒸発ガスの供給のために低圧圧縮機121aを備えながらも、減圧を利用した蒸発ガスの液化のためにブースト圧縮機121bをさらに設ける。
【0094】
蒸発ガス熱交換器125は、ブースト圧縮機121bで圧縮された蒸発ガスを貯蔵タンク110から排出される蒸発ガスと熱交換して、圧縮された高圧の蒸発ガスを冷却することができる。一方、貯蔵タンク110から排出された蒸発ガスは、蒸発ガス熱交換器125で熱交換によって多少加熱されるため、低圧圧縮機121aの流入温度が上昇し、低圧圧縮機121aが耐えなければならない温度を上げることができる。
【0095】
蒸発ガス熱交換器125は、貯蔵タンク110から低圧圧縮機121aに伝達される蒸発ガスのストリームと、ブースト圧縮機121bから減圧弁123に伝達される高圧蒸発ガスのストリームとを互いに熱交換させるように少なくとも2つのストリームを備える構造を有する。
【0096】
このとき、蒸発ガスリターンラインL2が貯蔵タンク110と蒸発ガス熱交換器125の間に蒸発ガスを伝達するように設けられることによって、貯蔵タンク110から低圧圧縮機121aに伝達されるストリームは、貯蔵タンク110の蒸発ガスに燃料タンク210a、210bの蒸発ガスが混合されたものであることができる。
【0097】
さらに、蒸発ガス熱交換器125は、蒸発ガスリターンラインL2を介して伝達される燃料タンク210a、210bの蒸発ガスを熱交換することができるように、蒸発ガスリターンラインL2が経由するストリームをさらに備えてもよい。即ち、蒸発ガスリターンラインL2は、蒸発ガス熱交換器125を経由した後、貯蔵タンク110と低圧圧縮機121aの間の圧力調整ラインL3に合流することができる。
【0098】
但し、蒸発ガスリターンラインL2は蒸発ガス熱交換器125を迂回するように設けられてもよいため、蒸発ガスリターンラインL2は蒸発ガス熱交換器125を経由または迂回して貯蔵タンク110と蒸発ガス熱交換器125の間に蒸発ガスを伝達するように設けられる。
【0099】
このとき、蒸発ガスリターンラインL2が蒸発ガス熱交換器125を迂回するようにするのは、ガス推進船舶GFSから回収される蒸発ガスの冷熱を活用する必要がない場合であり、発電エンジン130に供給されずに残る余剰の蒸発ガスが少ないか、ない場合などであることができる。
【0100】
減圧弁123は、ブースト圧縮機121bで圧縮され蒸発ガス熱交換器125で冷却された蒸発ガスを減圧して液化する。減圧弁123は、150barG以上に圧縮された後、冷却された蒸発ガスを1~10barGに減圧して蒸発ガスの少なくとも一部を液化させることができる。
【0101】
気液分離器124は液化された蒸発ガスを気液分離し、液相(LBOG)は貯蔵タンク110にリターンさせ、気相(flash gas)は貯蔵タンク110から蒸発ガス熱交換器125に伝達される蒸発ガスに混合することができる。
【0102】
また、気液分離器124で分離された気相は蒸発ガスと合流せずに蒸発ガス熱交換器125で別のストリームを介して流動しながら熱交換した後、低圧圧縮機121aの上流で蒸発ガスと合流するか、または発電エンジン130やボイラーなどによって消費されるようにすることもできる。
【0103】
このような本実施例のバンカリング管理部120は、複数個が並列配置された低圧圧縮機121a+ブースト圧縮機121bを含む蒸発ガス圧縮機121を構成して、バンカリング前に貯蔵タンク110の内圧を既設定圧以下に下げるために複数個の低圧圧縮機121aを並列運転し貯蔵タンク110の蒸発ガスを十分に吸引することで、貯蔵タンク110の内圧下降を迅速に具現することができる。
【0104】
従って、本実施例は、バンカリング前に貯蔵タンク110の内圧を迅速、且つ十分に下げることで、バンカリング時に貯蔵タンク110で発生する蒸発ガスの量を低減させてバンカリング効率を向上させることができる。
【0105】
図7は、本発明の第4実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0106】
図7を参照すると、本発明の第4実施例によるガス処理システムは、上述した第3実施例に比べてバンカリング管理部120の蒸発ガス圧縮機121が異なるように構成されることができる。
【0107】
本実施例のバンカリング管理部120は、発電エンジン130に蒸発ガスを供給するための低圧圧縮機121aと、ジュール・トムソン効果を通じて蒸発ガスを液化するための高圧圧縮機121cを設けるが、低圧圧縮機121aと高圧圧縮機121cを並列に設けることができる。
【0108】
このとき、高圧圧縮機121cは中間段に蒸発ガス消費ラインL4が連結され、中間段で圧縮された蒸発ガスを発電エンジン130に供給することで、低圧圧縮機121aが多段に設けられた高圧圧縮機121cの一部によってバックアップされることができる。
【0109】
本実施例のバンカリング管理部120は、高圧圧縮機121cを利用して蒸発ガスを150barG以上に加圧した後、蒸発ガス熱交換器125で貯蔵タンク110から排出された蒸発ガスを利用して冷却し、減圧弁123、気液分離器124を経て貯蔵タンク110にリターンさせることができる。
【0110】
このとき、バンカリング管理部120は、貯蔵タンク110の液化ガス貯蔵量に応じて低圧圧縮機121aと高圧圧縮機121cを独立的に択一して運転することができる。例えば、貯蔵タンク110の液化ガスの貯蔵量が多い場合(蒸発ガス量の多いLaden voyageなど)には、高圧圧縮機121cを利用して中間段の蒸発ガスの一部を発電エンジン130に供給しながら最終段の蒸発ガスを再液化して貯蔵タンク110にリターンさせることができ、一方、貯蔵タンク110の液化ガスの貯蔵量が少ない場合(蒸発ガス量の少ないBallast voyageなど)には、低圧圧縮機121aを利用して蒸発ガスが発電エンジン130などによって消費され、貯蔵タンク110にリターンされないようにすることができる。
【0111】
このように本実施例は、減圧を利用した蒸発ガスの液化を具現するための高圧圧縮機121cが発電エンジン130への蒸発ガスの供給のための低圧圧縮機121aと並列に備えられるようにして、運航状態に応じて高圧圧縮機121cと低圧圧縮機121aを択一稼動して蒸発ガス圧縮機121の稼動効率を向上させることができる。
【0112】
参考までに、以下で図8図10を参照して説明する第5~第7実施例は、冷媒で液化ガスを過冷却してリターンし、バンカリング船舶BVのタンク内圧を下げてバンカリング時に蒸発ガスの発生を低減させる思想を基盤としたものである。
【0113】
以下では、各実施例について詳細に説明する。
【0114】
図8は、本発明の第5実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0115】
図8を参照すると、本発明の第5実施例によるガス処理システムは、バンカリング管理部120が蒸発ガスを冷媒で完全に再液化するか、圧縮/冷却/減圧して部分的に再液化する代わりに、液化ガスを冷媒で過冷却してリターンし、貯蔵タンク110の内圧を調整することができる。
【0116】
そのためにバンカリング管理部120は、過冷却装置126、冷媒供給部127を備える。過冷却装置126は液化ガスを冷媒で過冷却させることができ、過冷却される液化ガスの温度は大気圧で液化ガスの沸点(-163℃)より低い温度(例えば-170℃前後)であってもよい。
【0117】
冷媒供給部127は、窒素や混合冷媒などの限定されない物質である冷媒を過冷却装置126に供給して液化ガスの過冷却を具現する。冷媒供給部127は、冷媒圧縮機1271、冷媒クーラー1272、冷媒膨張機1273、冷媒熱交換器1274、冷媒間熱交換器1275を備え、冷媒循環ラインL7が上記構成を順に連結して冷媒が循環する流路を形成する。
【0118】
冷媒圧縮機1271は冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒の圧力は10barG前後であってもよいが、これに限定されず、過冷却効率を上げるために多様な数値の圧力が使用されてもよい。
【0119】
冷媒クーラー1272は、冷媒圧縮機1271によって圧縮されながら加熱された冷媒を様々な冷エネルギーで冷却させることができる。冷媒クーラー1272は冷媒圧縮機1271の下流に設けられ、冷媒圧縮機1271が多段で設けられる場合は冷媒圧縮機1271の各段に設けられてもよい。
【0120】
冷媒膨張機1273は圧縮された冷媒を膨張させる。圧縮後に膨張によって減圧される冷媒は、上述した減圧弁123の場合と類似して冷媒の温度を十分に下げることができ、膨張された冷媒は過冷却装置126に伝達されて液化ガスを過冷却させるのに用いられる。
【0121】
冷媒熱交換器1274は、冷媒圧縮機1271で圧縮された冷媒を貯蔵タンク110から発電エンジン130に供給される蒸発ガスで冷却する。このとき、冷媒熱交換器1274は、図面に示したように冷媒圧縮機1271と過冷却装置126の間に設けられてもよいが、これとは異なり、冷媒熱交換器1274は、冷媒圧縮機1271と過冷却装置126の間の如何なる地点にも設置が可能であり、冷媒クーラー1272に代わることもできる。
【0122】
冷媒間熱交換器1275は、圧縮された冷媒と過冷却装置126で加熱された冷媒を熱交換することができる。具体的には、冷媒間熱交換器1275は、圧縮後膨張前の冷媒を過冷却装置126で加熱され圧縮前の冷媒と熱交換することができる。
【0123】
本実施例は、冷媒供給部127がN2 Bryton cycleで設けられ、冷媒間熱交換器1275を備えることができるが、冷媒間熱交換器1275はいくらでも省略可能である。
【0124】
このように、本実施例は、バンカリング前に貯蔵タンク110の内圧を下げるために液化ガスの過冷却リターンを利用するが、過冷却のための冷媒が発電エンジン130に供給される蒸発ガスの冷熱を利用するようにすることで、エネルギーの使用効率を改善することができる。
【0125】
図9は、本発明の第6実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0126】
図9を参照すると、本発明の第6実施例によるガス処理システムは、上述した第5実施例と比べて、冷媒供給部127が冷媒を貯蔵タンク110から発電エンジン130に供給される液化ガスで冷却することができる。
【0127】
貯蔵タンク110の液化ガスは気化器113を経て発電エンジン130に供給されるが、本実施例は、気化されるべき液化ガスが冷媒の冷却に使用されるようにして、バンカリング前の液化ガスの過冷却効果を上げるとともに、気化器113の負荷を下げるか、気化器113を省略することができる。
【0128】
本実施例の冷媒熱交換器1274は、冷媒循環ラインL7と蒸発ガス消費ラインL4が経由する上述した実施例とは異なり、冷媒循環ラインL7と液化ガス消費ラインL5が経由するように設けられることは言うまでもない。また、上述した実施例において液化ガスを過冷却するためのポンプは移送ポンプ111または別のポンプであることができるが、本実施例では液化ガスを過冷却するためのポンプとして燃料供給ポンプ112を使用することができる。
【0129】
また、本発明は、本実施例と上述した実施例を組み合わせて、冷媒を発電エンジン130に供給される蒸発ガス及び液化ガスのうち少なくとも何れか1つで冷却する実施例を含んでもよく、この場合、冷媒/液化ガス/蒸発ガスストリームを備えた冷媒熱交換器1274を単独で備えるか、冷媒/液化ガスストリームの冷媒熱交換器1274と冷媒/蒸発ガスストリームの冷媒熱交換器1274を備えることが可能である。
【0130】
図10は、本発明の第7実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0131】
図10を参照すると、本発明の第7実施例によるガス処理システムは、冷媒熱交換器1274が冷媒間熱交換器1275を代替するように設けられることができる。
【0132】
即ち、冷媒熱交換器1274は、圧縮された冷媒と過冷却装置126で加熱された冷媒及び発電エンジン130に供給される液化ガスまたは蒸発ガスを熱交換する少なくとも3つのストリームからなり、冷媒間熱交換を含む構造で設けられてもよい。
【0133】
従って、本実施例は、冷媒間熱交換器1275を別に備えないため、冷媒供給部127の構成をコンパクトに減らすことができる。
【0134】
参考までに、以下、図11図13を参照して説明する第8~第10実施例は、バンカリング船舶BVの場合、バンカリング時に移送ポンプ111の作動のために発電エンジン130を十分に稼動しなければならず、ガス推進船舶GFSとは異なって停泊状態で燃料消費量が多いことを考慮し、全体のシステムを効率的に最適化したものである。
【0135】
以下で各実施例について詳細に説明する。
【0136】
図11は、本発明の第8実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0137】
図11を参照すると、本発明の第8実施例によるガス処理システムは、上述した実施例に開示された内容と類似して、貯蔵タンク110の液化ガスまたは蒸発ガスを冷媒で冷却してリターンする冷却装置122、126を利用して貯蔵タンク110の内圧を調整するバンカリング管理部120を備える。
【0138】
本実施例は、液化ガスを過冷却してリターンし貯蔵タンク110が蒸発ガスをさらにもらえるようにする冷却装置122、126の稼動を前提にするか、または燃料タンク210a、210bからリターンされる蒸発ガスを液化してリターンする冷却装置122、126の稼動を前提にして、貯蔵タンク110がガス推進船舶GFSから伝達を受けることができる蒸発ガスの最大リターン量を直接または間接的に導出することができるが、このような蒸発ガスの最大リターン量を、バンカリング時に蒸発ガスリターンラインL2を介して伝達される蒸発ガスの流量未満に設定することができる。
【0139】
即ち、本実施例は、冷却装置122、126を稼動するだけではガス推進船舶GFSからバンカリング船舶BVにリターンされる蒸発ガスを全て消化できないようにすることができる。但し、上述したように、バンカリング船舶BVはガス推進船舶GFSに比べて停泊時の必要電力が大きいという点を考慮して、本実施例は、貯蔵タンク110の蒸発ガスを圧縮して発電エンジン130に供給する蒸発ガス圧縮機121の蒸発ガス処理量と、冷却装置122、126を考慮した貯蔵タンク110の蒸発ガスの最大リターン量の和が、バンカリング時にリターンされる蒸発ガスの流量以上になるようにすることができる。
【0140】
これを纏めると、以下の通りである。
【0141】
冷却装置122、126を考慮した最大リターン量<バンカリング時のリターン量<冷却装置122、126を考慮した最大リターン量+圧縮機の処理量
【0142】
即ち、本実施例は、バンカリング中に蒸発ガス圧縮機121によって十分な蒸発ガスが発電エンジン130に供給されることを考慮し、冷却装置122、126の諸元を縮小してCAPEXの節減が可能である。但し、蒸発ガス圧縮機121は複数個が並列に設けられて並列運転が可能であってもよく、上記式において圧縮機の処理量は並列の蒸発ガス圧縮機121を全て稼動する場合の処理量であってもよい。
【0143】
図12は、本発明の第9実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0144】
図12を参照すると、本発明の第9実施例によるガス処理システムは、上述した実施例とは異なる方向で全体のシステムを最適化する。
【0145】
具体的には、本実施例は、冷却装置122、126を考慮した貯蔵タンク110の蒸発ガスの最大リターン量がバンカリング時の蒸発ガスのリターン流量以上になるようにする。即ち、以下の通りである。
【0146】
バンカリング時のリターン量<冷却装置122、126を考慮した最大リターン量
【0147】
この場合、本実施例は、貯蔵タンク110の蒸発ガスを圧縮して発電エンジン130に供給する蒸発ガス圧縮機121が省略されることができ、その代わりに貯蔵タンク110の液化ガスがポンピング、気化されて発電エンジン130に供給されることができる。
【0148】
即ち、本実施例は、冷却装置122、126の諸元をバンカリング時にリターンされる蒸発ガスの流量がカバーできるようにして蒸発ガス圧縮機121を省略し、全体のシステムを簡単に構成することができる。
【0149】
図13は、本発明の第10実施例によるガス処理システムの工程フローチャートである。
【0150】
図13を参照すると、本発明の第10実施例によるガス処理システムは、上述した第8、第9実施例とは異なる方向でシステムを最適化した。
【0151】
具体的には、本実施例は、第9実施例と類似して、冷却装置122、126を考慮した貯蔵タンク110の蒸発ガスの最大リターン量がバンカリング時の蒸発ガスのリターン流量以上になるようにしながら、貯蔵タンク110の蒸発ガスが発電エンジン130に供給されるようにすることができ、以下のようにまとめられる。
【0152】
バンカリング時のリターン量<冷却装置122、126を考慮した最大リターン量<冷却装置122、126を考慮した最大リターン量+圧縮機の処理量
【0153】
但し、本実施例は、貯蔵タンク110の蒸発ガスを圧縮して発電エンジン130に供給する蒸発ガス圧縮機121が単独で設けられるようにすることができる。即ち、蒸発ガス圧縮機121が互いにバックアップ可能な第8実施例とは異なり、本実施例は蒸発ガス圧縮機121間のバックアップは不可能である。
【0154】
しかし、本実施例は、既に冷却装置122、126を考慮した蒸発ガスの最大リターン量がバンカリング時の蒸発ガスのリターン流量を超えるように構成されるため、蒸発ガス圧縮機121間のバックアップを保障する必要がない。
【0155】
但し、発電エンジン130への燃料供給をバックアップするために、本実施例は蒸発ガスまたは液化ガスのうち少なくとも何れか1つが発電エンジン130に供給できるように設けて、蒸発ガスの供給が液化ガスの供給でバックアップされるようにすることができる。
【0156】
このように、本実施例は、バンカリング時にリターンされる蒸発ガスは十分に処理できるようにしながら、蒸発ガス圧縮機121を単独で構成するが、液化ガスで燃料供給をバックアップするように構成することで、設置及び運用費用を節減することができる。
【0157】
本発明は、上述した実施例の他にも上記実施例のうち少なくとも2以上の組み合わせまたは少なくとも1つ以上の上記実施例と公知技術の組み合わせによって発生する実施例を全て包括する。
【0158】
以上、本発明を具体的な実施例を通じて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのもので、本発明はこれに限定されず、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者によってその変形や改良が可能であることは明らかである。
【0159】
本発明の単純な変形ないし変更は全て本発明の範囲に属し、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になるだろう。
【符号の説明】
【0160】
BV バンカリング船舶
GFS ガス推進船舶
110 貯蔵タンク
111 移送ポンプ
112 燃料供給ポンプ
113 気化器
120 バンカリング管理部
121 蒸発ガス圧縮機
121a 低圧圧縮機
121b ブースト圧縮機
121c 高圧圧縮機
122 再液化装置、冷却装置
123 圧力調整弁、減圧弁
124 気液分離器
125 蒸発ガス熱交換器
126 過冷却装置、冷却装置
127 冷媒供給部
130 発電エンジン
140 ガス燃焼装置
210a、210b 燃料タンク
220 燃料処理部
230 推進エンジン
L1 バンカリングライン
L2 蒸発ガスリターンライン
L3 圧力調整ライン
L4 蒸発ガス消費ライン
L5 液化ガス消費ライン
L6 ガス供給ライン
L7 冷媒循環ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13