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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20240903BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20240903BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C1/034
H01C1/14 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021509476
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013184
(87)【国際公開番号】W WO2020196571
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019063944
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森谷 公亮
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-119500(JP,A)
【文献】特開2008-117873(JP,A)
【文献】特開2017-022257(JP,A)
【文献】特開平03-066101(JP,A)
【文献】特開平04-372101(JP,A)
【文献】特開2000-188203(JP,A)
【文献】特開2005-057285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 1/034
H01C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において互いに反対側を向く上面及び裏面と、前記厚さ方向と直交する第1方向において互いに反対側を向く第1側面及び第2側面と、前記上面と前記裏面との間を貫通する第1貫通孔及び第2貫通孔とを有する基板と、
前記上面に配置された抵抗体と、
前記抵抗体を覆い、周端部の全体が前記上面と接する上面保護膜と、
前記裏面に配置され、前記第1方向において離れた第1裏面電極及び第2裏面電極と、
前記第1貫通孔に配設され、前記抵抗体と前記第1裏面電極とを接続する第1内部電極と、
前記第2貫通孔に配設され、前記抵抗体と前記第2裏面電極とを接続する第2内部電極と、
前記第1側面に配置された第1側面保護膜と、
前記第2側面に配置された第2側面保護膜と、
を備えた
チップ抵抗器。
【請求項2】
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記上面において円形状の開口を有する、請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記上面において四角形状の開口を有する、請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記第1内部電極及び前記第2内部電極の少なくとも一方は、複数設けられている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記第1裏面電極及び前記第2裏面電極は、銀を含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
前記第1内部電極及び前記第2内部電極は、銀を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記基板はアルミナからなる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記上面に配置され、前記抵抗体と重なる内側端部をそれぞれ有する第1上面電極及び第2上面電極を備え、
前記第1内部電極は前記第1裏面電極と前記第1上面電極とを接続し、
前記第2内部電極は前記第2裏面電極と前記第2上面電極とを接続し、
前記上面保護膜は前記第1上面電極及び前記第2上面電極を覆い、周端部が前記上面に接する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項9】
前記第1裏面電極及び前記第2裏面電極は、前記第1上面電極及び前記第2上面電極より薄い、請求項8に記載のチップ抵抗器。
【請求項10】
前記第1内部電極は前記第1裏面電極を前記抵抗体に直接接続し、
前記第2内部電極は前記第2裏面電極を前記抵抗体に直接接続する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項11】
前記第1側面保護膜は、前記第1側面を覆う側面部を有し、
前記第2側面保護膜は前記第2側面を覆う側面部を有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
前記第1側面保護膜は、前記基板の裏面を覆う裏面部を有し、
前記第2側面保護膜は、前記基板の裏面を覆う裏面部を有する、
請求項11に記載のチップ抵抗器。
【請求項13】
前記第1側面保護膜の前記裏面部は前記第1裏面電極と接し、前記第2側面保護膜の前記裏面部は前記第2裏面電極と接する、請求項12に記載のチップ抵抗器。
【請求項14】
前記第1側面保護膜は、前記基板の上面を覆う上面部を有し、
前記第2側面保護膜は、前記基板の上面を覆う上面部を有する、
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項15】
前記上面部は、前記第1方向における前記上面保護膜の周縁部と接する、請求項14に記載のチップ抵抗器。
【請求項16】
前記第1側面保護膜及び前記第2側面保護膜は、金属膜である、請求項から請求項15のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項17】
前記金属膜は、前記基板と接する第1金属膜と、前記第1金属膜の表面と接する第2金属膜とを含む、請求項16に記載のチップ抵抗器。
【請求項18】
前記第1金属膜は、ニッケルを含み、前記第2金属膜は、錫を含む、請求項17に記載のチップ抵抗器。
【請求項19】
前記上面保護膜は、前記抵抗体の上面と接する第1保護膜と、前記第1保護膜の上面の少なくとも一部と接する第2保護膜と、を有する、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項20】
前記第1保護膜は、前記抵抗体の上面を覆うとともに周縁部の全体が前記基板の上面と接し、
前記第2保護膜は、前記抵抗体の上方における前記第1保護膜の上面と接する、
請求項19に記載のチップ抵抗器。
【請求項21】
前記第1保護膜は、前記抵抗体の上面を覆い、
前記第2保護膜は、前記第1保護膜の上面全体を覆うとともに、周縁部の全体が前記基板の上面と接する、
請求項19に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップ抵抗器としては、下記の特許文献1に記載されたものがある。このチップ抵抗器は、基板の上面に一対の上面電極を設け、基板の裏面に一対の裏面電極を設け、基板の側面に上面電極と裏面電極とを接続する側面電極を設けたものである。一対の上面電極の間には、抵抗体が設けられており、この抵抗体から上面電極まで覆うように保護膜が設けられている。保護膜の端部は、側面電極の端部に接しており、側面電極の表面には、メッキが施されている。上面電極や側面電極は、たとえば銀を主成分として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-156303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チップ抵抗器の使用環境は、チップ抵抗器が搭載される電子機器等によって様々である。例えば、雰囲気中に硫化水素等の硫化物が含まれる場合、上述のように銀を主成分とする上面電極が硫化作用によって劣化しやすく、上面電極に導通不良が生じるおそれがある。上面電極に例えばパラジウム等の耐硫化性を有する金属を添加することが考えられる。しかしながら、このような方法では、上面電極の抵抗値が高くなり、低抵抗のチップ抵抗器が得られない。
【0005】
本開示の目的は、耐硫化特性を向上したチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様であるチップ抵抗器は、厚さ方向において互いに反対側を向く上面及び裏面と、前記上面と前記裏面との間を貫通する第1貫通孔及び第2貫通孔とを有する基板と、前記上面に配置された抵抗体と、前記抵抗体を覆い、周端部の全体が前記上面と接する上面保護膜と、前記裏面に配置され、前記厚さ方向と直交する第1方向において離れた第1裏面電極及び第2裏面電極と、前記第1貫通孔に配設され、前記抵抗体と前記第1裏面電極とを接続する第1内部電極と、前記第2貫通孔に配設され、前記抵抗体と前記第2裏面電極とを接続する第2内部電極と、を備える。
【0007】
この構成によれば、抵抗体を覆う上面保護膜は、周縁部の全体が基板の上面と接しているため、導通不良を抑制でき、耐硫化特性を向上したチップ抵抗器を提供できる。また、耐硫化性を有する金属を添加する必要がなく、低抵抗のチップ抵抗器を提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、耐硫化特性を向上したチップ抵抗器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態のチップ抵抗器の平面図。
図2】第一実施形態のチップ抵抗器の断面図。
図3】第一実施形態のチップ抵抗器において保護膜を二点鎖線にて示した平面図。
図4】第一実施形態のチップ抵抗器の実装状態を示す断面図。
図5】変更例のチップ抵抗器において上面保護膜を二点鎖線にて示した平面図。
図6】変更例のチップ抵抗器において上面保護膜を二点鎖線にて示した平面図。
図7】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図8】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図9】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図10】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図11】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図12】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図13】変更例のチップ抵抗器の断面図。
図14】変更例のチップ抵抗器において上面保護膜を二点鎖線にて示した平面図。
図15】変更例のチップ抵抗器において上面保護膜を二点鎖線にて示した平面図。
図16】変更例のチップ抵抗器の平面図。
図17】変更例のチップ抵抗器において上面保護膜を二点鎖線にて示した平面図。
図18】変更例のチップ抵抗器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、チップ抵抗器の実施形態について図面を参照して説明する。
以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに限定するものではない。以下の実施形態は、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本明細書において、「部材Aが部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bとが物理的に直接的に接続される場合、並びに、部材A及び部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合を含む。
【0012】
本明細書における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
図1図2、及び図3に示すように、チップ抵抗器1は、基板10、抵抗体20、第1上面電極31及び第2上面電極32、第1裏面電極41及び第2裏面電極42、上面保護膜50、第1側面保護膜61及び第2側面保護膜62、第1内部電極71及び第2内部電極72を備えている。
【0013】
本明細書において、便宜上、基板10の厚さ方向を「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する一方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。
【0014】
基板10は、厚さ方向zから視て、第1方向xに沿った一対の周縁を長辺とする矩形状である。チップ抵抗器1の使用の際、抵抗体20から熱が発生するため、基板10は、絶縁材料からなる。基板10は、放熱性に優れていることが求められる。このため、基板10の構成材料は、熱伝導率が比較的高いことが望ましい。チップ抵抗器1では、基板10の構成材料は、アルミナ(Al)である。
【0015】
基板10は、上面11、裏面12、側面13,14,15,16を有している。図2に示すように、上面及び裏面12は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。図1に示すように、側面13,14は、第1方向xにおいて互いに反対側を向き、側面15,16は、第2方向yにおいて互いに反対側を向く。上面11は、図2の上方を向く。裏面12は、図2の下方を向く。チップ抵抗器1を回路基板に実装した際、裏面12は、回路基板に対向する。上面11及び裏面12は、ともに平坦である。
【0016】
基板10は、基板10を厚さ方向zに貫通する第1貫通孔17及び第2貫通孔18を有している。第1貫通孔17及び第2貫通孔18は、第1方向xにおいて、離れている。第1貫通孔17は、基板10の上面11及び裏面12における開口形状が四角形状である。なお、本明細書において、四角形状は、角部が丸められたものを含む。第2貫通孔18は、基板10の上面11及び裏面12における開口形状が四角形状である。
【0017】
第1貫通孔17には第1内部電極71が配置されている。第1内部電極71の上面71aは基板10の上面11と略面一であり、第1内部電極71の裏面71bは基板10の裏面12と略面一である。なお、第1内部電極71の上面71aと裏面71bの少なくとも一方は、第1内部電極71の内部に向かって窪むように形成されることもある。
【0018】
第2貫通孔18には第2内部電極72が配置されている。第2内部電極72の上面72aは基板10の上面11と略面一であり、第2内部電極72の裏面72bは基板10の裏面12と略面一である。なお、第2内部電極72の上面72aと裏面72bの少なくとも一方は、第2内部電極72の内部に向かって窪むように形成されることもある。第1内部電極71及び第2内部電極72の構成材料は、銀及びダラスを含む。
【0019】
基板10の上面11には、第1上面電極31及び第2上面電極32と抵抗体20とが配置されている。
抵抗体20は、厚さ方向zから視て、第1方向xに伸びる帯状である。本実施形態のチップ抵抗器1において、抵抗体20は、基板10の第1貫通孔17と第2貫通孔18との間に配置されている。抵抗体20の構成材料は、金属粒子及びガラスを含む。当該金属粒子は、酸化ルテニウム(RuO)、または銀(Ag)-パラジウム(Pd)合金などである。
【0020】
図1及び図3に示すように、抵抗体20には、トリミング溝23が形成されている。トリミング溝23は、抵抗体20を厚さ方向zに貫通している。トリミング溝23は、厚さ方向zから視てL字状である。第2方向yにおいて、抵抗体20の端部の一部は、トリミング溝23により開口している。
【0021】
第1上面電極31及び第2上面電極32は、第1方向xにおいて、互いに離れた状態で基板10の上面11に接している。第1上面電極31及び第2上面電極32は、第2方向yに伸びる帯状である。第1上面電極31及び第2上面電極32の構成材料は、銀及びガラスを含む。
【0022】
抵抗体20は、第1方向xにおける基板10の中央部分で上面11と接している。また抵抗体20は、第1方向xの両端部において第1上面電極31と第2上面電極32とに重なり接している。抵抗体20は、第1上面電極31の一部を覆う第1被覆部21と、第2上面電極32の一部を覆う第2被覆部22とを有している。これにより、第1上面電極31と第2上面電極32は、抵抗体20に導通している。
【0023】
第1上面電極31は、基板10の上面11における第1貫通孔17の開口17aを覆うように形成され、第1貫通孔17の第1内部電極71と導通している。第2上面電極32は、基板10の上面11における第2貫通孔18の開口18aを覆うように形成され、第2貫通孔18の第2内部電極72と導通している。
【0024】
上面保護膜50は、抵抗体20の表面全体と、第1上面電極31及び第2上面電極32の表面全体とを覆っている。上面保護膜50の周縁部51は、基板10の上面11に接している。周縁部51は、第1方向xにおける縁部52,53と、第2方向yにおける縁部54,55を有している。各縁部52,53,54,55は、基板10の上面11に接している。上面保護膜50の構成材料としては、基板10との密着性のよいものが用いられる。上面保護膜50の構成材料は樹脂であり、例えば着色されたエポキシ樹脂である。なお、上面保護膜50の構成材料として、ガラスや炭素粒子(カーボンブラック)を含む樹脂を用いることもできる。
【0025】
基板10の裏面12には、第1裏面電極41及び第2裏面電極42が配置されている。
第1裏面電極41及び第2裏面電極42は、第1方向xにおいて、互いに離れた状態で基板10の裏面12に接している。第1裏面電極41及び第2裏面電極42は、第2方向yに伸びる帯状である。第1裏面電極41及び第2裏面電極42の構成材料は、銀及びガラスを含む。
【0026】
図2に示すように、第1裏面電極41は、基板10の裏面12における第1貫通孔17の開口17bを覆うように形成され、第1貫通孔17の第1内部電極71と導通している。第2裏面電極42は、基板10の裏面12における第2貫通孔18の開口18bを覆うように形成され、第2貫通孔18の第2内部電極72と導通している。
【0027】
第1側面保護膜61は、側面部61a、上面部61b、及び裏面部61cを有している。側面部61aは、基板10の側面13の全体を覆う。上面部61bは、基板10の上面11の端部11aと上面保護膜50との間における基板10の上面11を覆い、上面保護膜50の縁部52と接している。裏面部61cは、基板10の裏面12の端部12aと第1裏面電極41との間における基板10の裏面12を覆い、第1裏面電極41と接している。
【0028】
第2側面保護膜62は、側面部62a、上面部62b、及び裏面部62cを有している。側面部62aは、基板10の側面13の全体を覆う。上面部62bは、基板10の上面11の端部11bと上面保護膜50との間における基板10の上面11を覆い、上面保護膜50の縁部53と接している。裏面部62cは、基板10の裏面12の端部12bと第1裏面電極41との間における基板10の裏面12を覆い、第2裏面電極42と接している。
【0029】
本実施形態のチップ抵抗器1において、第1側面保護膜61及び第2側面保護膜62は、金属膜である。
第1側面保護膜61は、第1金属膜63a及び第2金属膜63bを含む。第1金属膜63aの構成材料は、ニッケル(Ni)を含む。第2金属膜63bの構成材料は、錫(Sn)を含む。本実施形態において、第1側面保護膜61は、第1裏面電極41と導通し、第1上面電極31と非導通である。
【0030】
第2側面保護膜62は、第1金属膜64a及び第2金属膜64bを含む。第1金属膜64aの構成材料は、ニッケルを含む。第2金属膜64bの構成材料は、錫を含む。本実施形態において、第2側面保護膜62は、第2裏面電極42と導通し、第2上面電極32と非導通である。
【0031】
(作用)
次に、上記のチップ抵抗器1の作用を説明する。
本実施形態のチップ抵抗器1は、基板10の上面11に、抵抗体20、第1上面電極31及び第2上面電極32、上面保護膜50を有している。上面保護膜50は、抵抗体20の表面全体と、第1上面電極31及び第2上面電極32の表面全体とを覆っている。上面保護膜50の周縁部51は、基板10の上面11に接している。樹脂からなる上面保護膜50の周縁部51は、基板10の上面11と密着し、上面保護膜50と基板10との間から、チップ抵抗器1が使用される空間における雰囲気が入り込むのを抑制する。従って、雰囲気中に例えば硫化水素等といった硫化物が多く含まれる場合であっても、第1上面電極31及び第2上面電極32における硫化作用による劣化を抑制する、つまり耐硫化特性を向上できる。
【0032】
図4に示すように、チップ抵抗器1は、回路基板100に実装される。
第1裏面電極41及び第2裏面電極42は、パッド101,102と対向して配置され、はんだ111,112により接合される。はんだ111,112は、第1側面保護膜61,第2側面保護膜62によりはんだフィレット111a,112aを形成する。これらのはんだフィレット111a,112aにより、チップ抵抗器1の実装状態を確認できる。また、第1裏面電極41及び第2裏面電極42により十分な接合強度が得られるとともに、はんだフィレット111a,112aによりチップ抵抗器1の実装強度をより向上できる。
【0033】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)チップ抵抗器1は、基板10の上面11に、抵抗体20、第1上面電極31及び第2上面電極32、上面保護膜50を有している。上面保護膜50は、抵抗体20の表面全体と、第1上面電極31及び第2上面電極32の表面全体とを覆っている。上面保護膜50の周縁部51は、基板10の上面11に接している。これにより、耐硫化特性を向上できる。
【0034】
(2)チップ抵抗器1において、第1裏面電極41は第1内部電極71と第1上面電極とを介して抵抗体20に導通し、第2裏面電極42は、第2内部電極72と第2上面電極32とにより抵抗体20に導通する。従って、第1上面電極31及び第2上面電極32の表面全体を上面保護膜50により覆うことができ、第1上面電極31及び第2上面電極32の硫化を抑制できる。
【0035】
(3)第1裏面電極41及び第2裏面電極42は、パッド101,102と対向して配置され、はんだ111,112により接合される。はんだ111,112に形成されるはんだフィレット111a,112aにより、チップ抵抗器1の実装状態を確認できる。また、チップ抵抗器1の実装強度を向上できる。
【0036】
<変更例>
図5図18は、本開示の変更例を示している。
なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0037】
図5に示すチップ抵抗器201は、基板10に2つの第1貫通孔17及び第2貫通孔18を有している。第1貫通孔17及び第2貫通孔18は、基板10の上面11における開口形状が四角形状である。2つの第1貫通孔17と2つの第2貫通孔18はそれぞれ、第2方向yに沿って配列されている。このようなチップ抵抗器201においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
なお、第1貫通孔17及び第2貫通孔18のを3つ以上としてもよい。また、第1貫通孔17の数と第2貫通孔18の数が相違していてもよい。例えば、1つの第1貫通孔17と2つの第2貫通孔18が形成された基板としてもよい。また、第1貫通孔17が第2方向yから視て異なる位置に設けられてもよく、第2貫通孔18が第2方向yから視て異なる位置に設けられてもよい。
【0039】
図6に示すチップ抵抗器202において、基板10は、3つの第1貫通孔17及び3つの第2貫通孔18を有している。第1貫通孔17及び第2貫通孔18は、基板10の上面11における開口形状が円形状である。3つの第1貫通孔17と3つの第2貫通孔18はそれぞれ、第2方向yに沿って配列されている。このようなチップ抵抗器202においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、このチップ抵抗器202において、図5に示すチップ抵抗器201について説明したように、第1貫通孔17及び第2貫通孔18の数、配置位置を適宜変更してもよい。
【0040】
図7に示すチップ抵抗器203において、第1側面保護膜61、第2側面保護膜62は、上記実施形態と同様に、側面部61a、側面部62aと、裏面部61c、裏面部62cを有し、基板10の上面11と接する上面部を備えていない。このようなチップ抵抗器203においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
図8に示すチップ抵抗器204において、第1側面保護膜61、第2側面保護膜62は、上記実施形態と同様に、側面部61a、側面部62aを有し、基板10の上面11と接する上面部、裏面12と接する裏面部を備えていない。このようなチップ抵抗器204においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
図9に示すチップ抵抗器205は、上記実施形態の第1側面保護膜61及び第2側面保護膜62を備えていない。第1裏面電極41及び第2裏面電極42により十分な実装強度が得られるとともに、チップ抵抗器205のコストを低減できる。
【0043】
図10に示すチップ抵抗器206は、第1裏面電極41及び第2裏面電極42と第1上面電極31及び第2上面電極32の大きさが異なる。図10では、第1裏面電極41及び第2裏面電極42は、第1方向xにおいて、基板10の端部まで延びている。これにより、第1裏面電極41及び第2裏面電極42による回路基板等との実装接合を向上できる。
【0044】
図11に示すチップ抵抗器207は、第1裏面電極41及び第2裏面電極42と第1上面電極31及び第2上面電極32の厚さが異なる。図11では、第1上面電極31及び第2上面電極32と比べ、第1裏面電極41及び第2裏面電極42の厚さが薄い。このようなチップ抵抗器207においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0045】
図12に示すチップ抵抗器208において、上面保護膜50は、第1保護膜501と第2保護膜502とを有している。第1保護膜501は、抵抗体20の表面全体と第1上面電極31及び第2上面電極32の一部を覆う。第2保護膜502は、第1保護膜501と第1上面電極31及び第2上面電極32の表面を覆い、第2保護膜502の周縁部503の全体が基板10の上面11に接している。第1保護膜501は基板10の上面11に対して密着性の高い構成材料を用いることが好ましい。このチップ抵抗器208では、抵抗体20を覆う部分の膜厚を調整できる。なお、第1保護膜501と第2保護膜502の構成材料は互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0046】
図13に示すチップ抵抗器209において、上面保護膜50は、第1保護膜501と第2保護膜502とを有している。第1保護膜501は、抵抗体20と第1上面電極31及び第2上面電極32の表面を覆い、周縁部504の全体が基板10の上面11に接している。第2保護膜502は、抵抗体20の上方における第1保護膜501の表面を覆っている。このチップ抵抗器209では、抵抗体20を覆う部分の膜厚を調整できる。なお、第1保護膜501と第2保護膜502の構成材料は互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0047】
図14に示すチップ抵抗器210は、抵抗体300の形状が上記実施形態と異なる。このチップ抵抗器210では、抵抗体300の導通経路を延長することにより、サージ電流が流れた場合の損傷等を抑制できる。
【0048】
抵抗体300は、第1方向xに延びる延出部301,302を有している。延出部301の一部は第1上面電極31と重なり、延出部302の一部は第2上面電極32と重なる。
【0049】
抵抗体300は、複数の溝303を有している。溝303は、抵抗体20の内方に向かって入り込む形状とされた細長い切り欠き部分である。複数の溝303は、第2方向yに延びて図中上側において開口する溝と、第2方向yに延びて図中下側において開口する溝と、第1方向xにおいて交互に配置されている。このような複数の溝303が設けられることにより、抵抗体300は、蛇行形状とされている。なお、溝303は、第1方向xに延びるように形成されてもよい。
【0050】
図15に示すチップ抵抗器211において、抵抗体20の第2方向yの幅寸法が、第1上面電極31及び第1上面電極31の第2方向yの幅寸法より大きい。このようなチップ抵抗器211においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
図16に示すチップ抵抗器212において、上面保護膜50は、基板10の第2方向yにおいて互いに反対側を向く側面15,16まで、その基板10の上面11を覆っている。このようなチップ抵抗器212においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
図17及び図18に示すチップ抵抗器213において、抵抗体20は、基板10の第1貫通孔17と第2貫通孔18とを覆っている。これにより、第1内部電極71及び第2内部電極72と抵抗体20とが直接接触する。上面保護膜50は、抵抗体20の表面全体を覆い、周縁部51が基板10の上面11に接している。このチップ抵抗器213では、上記実施形態の第1上面電極及び第2上面電極が省略されている。なお、図17及び図18に示すチップ抵抗器において、第1側面保護膜61、第2側面保護膜62は、側面部61a、側面部62aと裏面部61c、裏面部62cを有し、上面部を有していない。第1側面保護膜61及び第2側面保護膜62は、上面部を有する側面保護膜としてもよく、裏面部を有していない側面保護膜としてもよい。また、側面保護膜が省略されてもよい。
【0053】
本開示に係るチップ抵抗器は、上述の実施形態及び各変更例に限定されるものではない。本開示に係るチップ抵抗器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
<付記>
[付記1]
厚さ方向において互いに反対側を向く上面及び裏面と、前記上面と前記裏面との間を貫通する第1貫通孔及び第2貫通孔とを有する基板と、
前記上面に配置された抵抗体と、
前記抵抗体を覆い、周端部の全体が前記上面と接する上面保護膜と、
前記裏面に配置され、前記厚さ方向と直交する第1方向において離れた第1裏面電極及び第2裏面電極と、
前記第1貫通孔に配設され、前記抵抗体と前記第1裏面電極とを接続する第1内部電極と、
前記第2貫通孔に配設され、前記抵抗体と前記第2裏面電極とを接続する第2内部電極と、
を備えたチップ抵抗器。
[付記2]
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記上面において円形状の開口を有する、付記1に記載のチップ抵抗器。
[付記3]
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔は、前記上面において四角形状の開口を有する、付記1に記載のチップ抵抗器。
[付記4]
前記第1内部電極及び前記第2内部電極の少なくとも一方は、複数設けられている、付記1から付記3のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記5]
前記第1裏面電極及び前記第2裏面電極は、銀を含む、付記1から付記4のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記6]
前記第1内部電極及び前記第2内部電極は、銀を含む、付記1から付記5のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記7]
前記基板はアルミナからなる、付記1から付記6のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記8]
前記上面に配置され、前記抵抗体と重なる内側端部をそれぞれ有する第1上面電極及び第2上面電極を備え、
前記第1内部電極は前記第1裏面電極と前記第1上面電極とを接続し、
前記第2内部電極は前記第2裏面電極と前記第2上面電極とを接続し、
前記上面保護膜は前記第1上面電極及び前記第2上面電極を覆い、周端部が前記上面に接する、
付記1から付記7のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記9]
前記第1裏面電極及び前記第2裏面電極は、前記第1上面電極及び前記第2上面電極より薄い、付記8に記載のチップ抵抗器。
[付記10]
前記第1内部電極は前記第1裏面電極を前記抵抗体に直接接続し、
前記第2内部電極は前記第2裏面電極を前記抵抗体に直接接続する、
付記1から付記7のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記11]
前記基板は、前記第1方向において互いに反対側を向く第1側面及び第2側面を有し、
前記第1側面に配置された第1側面保護膜と、
前記第2側面に配置された第2側面保護膜と、
をさらに備える、付記1から付記10のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記12]
前記第1側面保護膜は、前記第1側面を覆う側面部を有し、
前記第2側面保護膜は前記第2側面を覆う側面部を有する、付記11に記載のチップ抵抗器。
[付記13]
前記第1側面保護膜は、前記基板の裏面を覆う裏面部を有し、
前記第2側面保護膜は、前記基板の裏面を覆う裏面部を有する、
付記12に記載のチップ抵抗器。
[付記14]
前記第1側面保護膜の前記裏面部は前記第1裏面電極と接し、前記第2側面保護膜の前記裏面部は前記第2裏面電極と接する、付記13に記載のチップ抵抗器。
[付記15]
前記第1側面保護膜は、前記基板の上面を覆う上面部を有し、
前記第2側面保護膜は、前記基板の上面を覆う上面部を有する、
付記12から付記14のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記16]
前記上面部は、前記第1の方向における前記上面保護膜の周縁部と接する、付記15に記載のチップ抵抗器。
[付記17]
前記第1側面保護膜及び前記第2側面保護膜は、金属膜である、付記11から付記16のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記18]
前記金属膜は、前記基板と接する第1金属膜と、前記第1金属膜の表面と接する第2金属膜とを含む、付記17に記載のチップ抵抗器。
[付記19]
前記第1金属膜は、ニッケルを含み、前記第2金属膜は、錫を含む、付記18に記載のチップ抵抗器。
[付記20]
前記上面保護膜は、前記抵抗体の上面と接する第1保護膜と、前記第1保護膜の上面の少なくとも一部と接する第2保護膜と、を有する、付記1から付記19のいずれか一つに記載のチップ抵抗器。
[付記21]
前記第1保護膜は、前記抵抗体の上面を覆うとともに周縁部の全体が前記基板の上面と接し、
前記第2保護膜は、前記抵抗体の上方における前記第1保護膜の上面と接する、
付記20に記載のチップ抵抗器。
[付記22]
前記第1保護膜は、前記抵抗体の上面を覆い、
前記第2保護膜は、前記第1保護膜の上面全体を覆うとともに、周縁部の全体が前記基板の上面と接する、
付記20に記載のチップ抵抗器。
【符号の説明】
【0054】
1,201~213…チップ抵抗器
10…基板
11…上面
12…裏面
17…第1貫通孔
18…第2貫通孔
20…抵抗体
31…第1上面電極
32…第2上面電極
41…第1裏面電極
42…第2裏面電極
50…上面保護膜
51…周縁部
61…第1側面保護膜
61a…側面部
61b…上面部
61c…裏面部
62…第2側面保護膜
62a…側面部
62b…上面部
62c…裏面部
71…第1内部電極
72…第2内部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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