(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】状態監視を有するピンリフティング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2021535173
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2019085063
(87)【国際公開番号】W WO2020126901
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102018009871.1
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】エッシェンモーザー,アードリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥア,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ホーファー,アンドレアス
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539598(JP,A)
【文献】特開2016-146416(JP,A)
【文献】特開2004-281783(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147183(WO,A1)
【文献】特開2010-278271(JP,A)
【文献】特開2017-050534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空プロセスチャンバ(4)によって提供され得るプロセス雰囲気領域(P)内で処理される、
特に、ウェーハである
、基板(1)を移動させ位置決めするように設計される、
特に、ピンリフターである
、ピンリフティング装置(10、50)であって、
前記基板(1)と接触し支持するように適応された支持ピン(7、59)を受けるように設計された連結部材(32、58)と、
前記連結部材(32、58)と相互作用するように設計されたドライブユニット(6、12)であって、
前記連結部材(32、58)が、
特に、前記支持ピン(7、59)に、その意図した効果に関して実質的に作用していない状態を提供する
ための、下げられた基準位置から、
特に、
前記支持ピン(7、59)
により、前記基板(1)を受け取る
及び/又は供給する、という意図した効果を提供するための
、伸ばされた支持位置へ
、
調節軸(A)に沿って直線的に調整可能であり、そして
、再び戻る
、
ように設計された
前記ドライブユニット(6、12)と、
を有し、
前記ピンリフティング装置(10、50)は、少なくとも一つのセンサユニット(41~48)を有し、前記センサユニット(41~48
)によって
、前記ピンリフティング装置(10、50)の少なくとも一部
に関する加速度依存の状態情報が生成され得るように
、前記センサユニット(41~48)が設計され、配置される
、ことを特徴とする、ピンリフティング装置(10、50)。
【請求項2】
前記センサユニット(41~48)が、
前記加速度依存の状態情報を生成するため
の、
所定
の方式で
調整された
、少なくとも一つの軸に沿った加速度
、を検出する加速度センサ(41~44、47、48)
、及び/又は、
所定
の方式で
調整された
、少なくとも一つの軸を中心とした回転速度
又は回転加速度
、を検出する回転速度センサ
、
である慣性センサ
、を少なくとも一つ含む
、ことを特徴とする、請求項1に記載のピンリフティング装置(10、50)。
【請求項3】
前記センサユニット(41~48)が、
前記連結部材(32、58)上、
特に、
前記支持ピンのためのレセプタクル上、
前記ドライブユニット(6、12)上、
特に、
前記ドライブユニットの心棒
上又はモータ上、
前記連結部材と
前記ドライブユニット
との協働を提供する連結部要素
上、
特に、ねじ山付きロッド(13、53)上、
前記支持ピン(7、59)上
、及び/又は、
前記ピンリフティング装置(10、50)のハウジング上、
特に、下面上、もしくは、
前記ハウジングの内壁上
、
に配置される
、ことを特徴とする、請求項
1又は2に記載のピンリフティング装置(10、50)。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のピンリフティング装置(10、50)と、処理・制御ユニットとを含むシステムであって、
前記処理・制御ユニットが
前記センサユニット(41~48)の
前記状態情報を取得する
及び/又は処理するように
、及び、
前記状態情報に依存して出力を生成するように
、配置され、設計される
、システム。
【請求項5】
前記処理・制御ユニットが、
前記状態情報を処理するこ
とによって、
前記ドライブユニット(6、12)
及び/又は前記連結部材(32、58)の現在の状態
又は現在の平常状態逸脱
、に関する出力を、
特に、視覚的に
又は聴覚的に
、提供するように設計され、
前記出力が、特に、検出された
前記状態情報に対する実際-目標比
較によって
、生成される
、ことを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記出力が、
前記ドライブユニット(6、12)
及び/又は前記連結部材(32、58)の機械的
及び/又は構造的
な完全性に関して提供され、
特に、
前記出力が、
前記ピンリフティング装置(10、50)の構成要素の増大した摩耗の警告
、及び、
前記ピンリフティング装置(10、50)の構成要素の耐久性の予測
、
のいずれか一つ
又は双方を含む、ことを特徴とする、請求項
4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理・制御ユニットが
、前記状態情報に基づいて
、周波数スペクトルを提供するように設計される、ことを特徴とする、請求項
4~
6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理・制御ユニットが
、一つ
又は複数の測定値周波数に関する
前記状態情報の分析に基づいて、それぞれの測定値周波数を
引き起こす発振の位置に関する
前記出力
、を提供するように設計される、ことを特徴とする、請求項
4~
7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理・制御ユニットが、
所定の基準値との
前記状態情報の比較に基づいて、
前記ピンリフティング装置で実行されたプロセスの評価に関する信号
、を提供するように設計される、ことを特徴とする、請求項
4~
8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理・制御ユニットが
、前記状態情報の複数入手に基づいて、システム状態
及び/又はシステム状態の変化の状態トレンド、
特に、長期トレンド
、を導き出すように設計され、
特に、
前記状態情報が特定の時間期間中、周期的に、
特に、連続的に
、入手され、周波数スペクトル
及び/又は力変位比
、が導き出される
、ことを特徴とする、請求項
4~
9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理・制御ユニットが
、さらなるセンサユニットに
独自の状態情報、
特に、
前記ドライブユニットのモータ電流と
、現状検出された状態情報、の比較に基づいて、
前記センサユニットの較正
及び/又は前記センサユニットに
独自の状態情報の監視
、を提供するように設計される、ことを特徴とする、請求項
4~
10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理・制御ユニットが、センサユニッ
トによって、
前記支持ピン(7、59)を備えた
前記連結部材(32、58)の
前記支持位置への伸長
の移動中
に、状態の変化、
特に、前記支持ピン(7、59)上の加速コース
、を検出し、それを、
特に、伸長
の位置に
、リンクさせる
、ように設計される
、ことを特徴とする、請求項
4~
11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサユニット(41~48)が、
前記ドライブユニット(6、12)で発生する
か及び/又は外側から
前記ピンリフティング装置(10、50)
に作用する加速度が
、状態情報として検出され得る
、ように設計され、配置される
、ことを特徴とする、請求項
4~
12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記センサユニット(41~48)が、
前記連結部材(32、58)の少なくとも一部と、
前記連結部材(32、58)の
ガイド部
及び/又はベアリングとの間、
前記連結部材(32、58)の少なくとも一部と、ドライブユニット(6、12)の少なくとも一部との間、
及び、
前記ドライブユニット(6、12)の少なくとも一部と、
前記ドライブユニット(6、12)の
ガイド部
及び/又はベアリングとの間
、
の少なくとも一つの場所における摩擦振動によって生み出される加速度が
、状態情報として検出され得るように設計され、配置される
、ことを特徴とする、請求項
4~
13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記状態情報
が、
前記連結部材(32、58)
及び/又は前記支持ピン(7、59)上で
発生された加速度、
前記ドライブユニット(6、12)において
発生された加速度、
前記ピンリフティング装置の加速度状態
又は加速度の変化
、
のいずれかの情報項目を少なくとも一つ含む
、ことを特徴とする、請求項
4~
14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理・制御ユニットが
、前記状態情報に基づいて制御信号を出力として生成するように設計され、
前記ドライブユニット(6、12)が
、
前記制御信号を取得し、
及び、
前記制御信号に
より、前記連結部材(32、58)を
、前記基準位置と
前記支持位置の間で調
整する
ように配置され、設計される
、ことを特徴とする、請求項
4~
15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記処理・制御ユニットが、
前記制御信号が
、現在の状態情報の
作用として自動的に設定され得る
、ように
設定される
、ことを特徴とする、請求項
16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスチャンバ内で基板を移動させ位置決めするためのピンリフティング装置に関し、ピンリフティング装置が動作状態を検知するためのセンサを含む。
【0002】
ピンリフターとも知られるピンリフティング装置は、通常、プロセスチャンバ内で処理されるべき基板の受け取り及び所定の位置決めのために設計され、提供される。これらは、特に、汚染パーティクルが存在しない保護された雰囲気中で行われなければならない、IC、半導体、フラットパネル又は基板生産の分野における真空チャンバシステムのために使用される。
【0003】
そのような真空チャンバシステムは、特に、処理又は生産されるべき半導体素子又は基板を受け取るために提供され、それを通して半導体素子又は他の基板が真空チャンバへ及びその外へガイドされ得る少なくとも一つの真空チャンバ開口部を有する、少なくとも一つの真空排気可能な真空チャンバを含む。例として、半導体ウェーハ又は液晶基板のための生産工場では、繊細な半導体素子又は液晶素子は、プロセス真空チャンバ内に位置する部品が各々処理装置によって処理されるいくつかのプロセス真空チャンバを順次通過する。
【0004】
そのようなプロセスチャンバは、多くの場合、その断面が基板及びロボットに適応され且つそれを通して基板が真空チャンバに導入され、必要な場合、意図した処理後に取り出され得る、少なくとも一つのトランスファーバルブを有する。あるいは、処理された基板がそれを通してチャンバから取り出される、第二のトランスファーバルブが提供され得る。
【0005】
基板、たとえば、ウェーハは、例として、トランスファーバルブによって提供されたプロセスチャンバの開口部を通してガイドされ得る好適に設計され制御されたロボットアームによってガイドされる。プロセスチャンバは、次に、ロボットアームで基板をつかみ、基板をプロセスチャンバに導入し、チャンバ内で基板を所定の方式で載置することによって装填される。プロセスチャンバは、それに応じて空にされる。
【0006】
チャンバ内での基板の設置のため及び基板の正しい位置決めのために、基板の比較的高い精度と移動性とが確保されなければならない。この目的のために、基板に対する複数の支持点を提供し、それにより基板全体にわたる(基板の自重に起因する)荷重分散を提供するピンリフティングシステムが使用される。
【0007】
ピンは、好ましくは、受け取り位置にあり、ロボットは、この位置のピン上に基板を置く。あるいは、基板は、ロボットによって、リフティング装置の支持ピンの上の位置に置かれ、それらのピンによって持ち上げられ得る。ロボットが遠ざかった後、基板は、ピンを下げることによって、たとえば電位板であるキャリア上へ載置され、通常、基板を運ぶロボットアームは、たとえば、基板が載置されると同時に、チャンバの外へ移動される。ピンは、基板を載置した後、さらに下げられてもよく、その場合、それから分離されて存在する、すなわちピンと基板との間には接触がなくなる。ロボットアームを取り出し、チャンバを閉じた(及びプロセスガスを導入又は真空排気した)後、処理工程が実行される。
【0008】
例として、処理工程がチャンバ内で実行された後、そして基板が続いて上げられるとき、基板がキャリアに付着可能であるためには、基板への低い力の効果が特に重要である。キャリアからの基板の押し出しが速すぎる場合、少なくともある接触点において付着力が克服又は解消され得ないと、基板は破損し得る。加えて、支持ピンと基板との間に接触が確立されている場合でさえも、基板へのいかなる衝撃も望ましくない応力(又は破損)をもたらし得る。
【0009】
同時に、処理されるべき基板の可能な限り最も丁寧且つ注意深い取り扱いに加えて、可能な限り最も短い処理時間も可能にされる。これは、基板が可能な限り速くチャンバ内で、規定の状態、搬入及び搬出位置ならびに処理位置に持ち込まれ得ることを意味する。
【0010】
半導体ウェーハの処理中の望まれない衝撃を回避するために、例として、米国特許第6,481,723 B1号は、ピンリフターにおいて、硬い動作止め具の代わりに特別な止め装置の使用を推奨している。任意の硬いプラスチック止め具は、ここでは、より柔軟な設計された止め具部分と硬い止め具の組み合わせに置き換えられ、移動の制限のためにまず柔軟な止め具部分との接触がなされ、次に、硬い止め具が柔軟な止め具部分と接触しそれに応じて減衰される。
【0011】
米国特許第6,646,857 B2号は、記録された発生している力による、リフティング移動の調整を提案している。リフティングピンは、受け取った力信号に応じて動かされ得、リフティングピン上のリフティング力が常に制御され投与された態様でウェーハに加えられるようにする。
【0012】
各機械加工サイクルのたびに、支持ピンは、受け取られるべき基板と接触し、それから解放される。これは、当然、ピン及びドライブへの対応する機械的応力(たとえば、衝撃)を結果として生じさせる。機械加工サイクルは、多くの場合、タイミングが比較的タイトであり、比較的短いプロセス時間を必要とする。比較的短い時間内の多数の繰り返しがこのプロセス実施の結果であり得る。通常、支持ピンは、それ故に、摩耗材料とみなされ、定期的な交換を必要とする、すなわち、それらは、通例、一定数のサイクル又は一定の動作時間後、交換される必要がある。
【0013】
それゆえに、メカトロニクス的に設計されたピンリフター、すなわち、ピンを調整するための電気モータを持つピンリフターのモータは、ますます増大していく応力を受ける。
【0014】
当然、そのようなピンリフティング装置の一部は、プロセス容積(プロセスチャンバ)に接続され、たとえば、ピンリフティング装置は、プロセスチャンバにフランジされる。通常、そのような接続は、ピンリフティング装置の状態によってチャンバの様々な状態(たとえば、温度、電位)に影響を与える。
【0015】
ピンリフティング装置への上述の外的な影響は、装置の故障に至る動作の障害をもたらし得る。これを回避するために、ピンリフティング装置は、予防措置として、定期的な間隔で又は一定数の動作サイクル後もしくは一定期間の動作後、保守される又は交換される。
【0016】
しかしながら、ピンリフターが定期的な間隔で交換される又は補修される場合でさえも、保守前の一定の時間の期間その平常機能から逸脱し、それにより無効な生産サイクルをもたらし得ることが依然として残る不都合である。さらに、前記保守手法は、例として、ピンリフターが技術的に必要とされるよりもより早期に交換され得ることを意味する定期的な保守時間のみを可能にさせるのであって、最適な保守時間が決定されることを可能にするものではない。そのような要素の保守又は更新は、通例、生産プロセスの停止又は中断及び全体のシステムへのおおむね大規模な介入を必要とする。これは、多くの場合、比較的長いダウンタイムをもたらす。
【0017】
それ故に、上述の不都合が低減又は回避される、改善されたピンリフティング装置を提供することが本発明の目的である。
【0018】
特に、最適化された、すなわち、特に、装置の予測的且つ高度に正確な保守を可能にする、改善されたピンリフティング装置を提供することが本発明の目的である。
【0019】
自身の機能及び/又は優れたプロセス機能の監視を可能にする、ピンリフティング装置を提供することが本発明のもう一つの特別な目的である。
【0020】
これらの目的は、独立請求項の特徴的な機能の具現化によって解決される。本発明を代替する又は有利であるようにさらに発展させる機能は、従属請求項で見つけられ得る。
【0021】
本発明は、真空プロセスチャンバによって提供され得るプロセス雰囲気領域内で処理される、特に(半導体)ウェーハである基板を移動させ位置決めするように設計される、特にピンリフターであるピンリフティング装置に関する。ピンリフティング装置は、基板と接触し支持するように適応された支持ピンを受けるように適応された連結部材を含み、連結部材と協働するように適応されたドライブユニットをさらに含み、連結部材が調整軸に沿って直線的に調整可能であるようにする。連結部材の調整性能は、特に、その意図した効果(たとえば、ワークピース又は基板を移動させる、運ぶ及び位置決めする)に関して実質的に有効でない(基板と接触していない)状態の支持ピンを提供するために規定の下げられた基準位置から、特に、支持ピンによって基板を受け取る及び/又は提供するという意図した効果を提供するために適応される伸ばされた支持位置へ、そして戻りとシフトされ得る。
【0022】
支持ピンの意図した効果は、本質的にワークピース又は基板を受け取る、接触させる、移動させる、運ぶ及び/又は位置決めすることなどであると理解される。この文脈では、支持ピンの有効でない状態は、ピンが意図したように接触されるべき基板と非接触であり(まだ接触していない、又はもはや接触していない)、特に、意図した目的を一時的に提供していない、たとえば、下げられた待機位置にある状態として理解されるべきである。これは、特に、機械加工プロセスが基板上で実行されている間の場合である。しかしながら、意図した効果の提供は、ただ支持ピンと基板との間に接触があることだけを意味するのではなく、むしろ、ピンが伸ばされた状態でこの状態にあり、すぐにでもウェーハの受け取り(ピン上へのウェーハの設置)ができるように保持され得ることを意味する。接触の結果として発生するプロセス又は移動(ウェーハの輸送)も意図した効果を提供するものとして理解されるべきである。
【0023】
非装填の待ち受け状態は、ピックアップされるべき支持ピンが、連結部材に対して保持された目標位置(連結部材内)にない状態を表す。装填状態は、支持ピンが連結部材によって受け取られた目標位置に保持される状態として理解されるべきである。本発明が連結された支持ピンを伴わないピンリフティング装置にも及ぶことが理解される。
【0024】
ピンリフティング装置は、センサユニットによってピンリフティング装置の少なくとも一部に関する及び/又は加速度依存の状態情報が生成され得るように設計され、配置される、少なくとも一つのセンサユニットも有する。
【0025】
センサユニットによって、ピンリフティング装置の部分又は全体の慣性効果、加速度及び/又は外的な影響、例えば、連結部材に作用する(重さの)力が検出され得る。そのような効果、たとえば、ドライブユニットからの振動もしくは(固有)振動は、装置それ自体の動作によって生まれ得、又は外的な性質、たとえば、接続された構成要素又は装置、例えば、プロセスチャンバからの機械的効果(衝撃、周辺機器構成要素の動的効果など)であり得る。
【0026】
一つの態様では、ピンリフティング装置は、外部雰囲気領域からプロセス雰囲気領域を分離するための分離装置を有し、ドライブユニットが少なくとも部分的に、特に、全体的に外部雰囲気領域と関連し、連結部材が特に、少なくとも部分的にプロセス雰囲気領域と関連する。分離装置は、特に、少なくとも部分的に下げられた状態の連結部材を取り囲む連結部分の内部容積に配置されるベローズとして設計される。ピンリフティング装置の分離装置は、ドライブユニットのハウジングによっても形成され得る。
【0027】
ドライブユニットは、電気モータ、特に、ステッピングモータとして設計され得、メカトロニクスピンリフティング装置を提供する。
【0028】
ドライブユニットは、代替的に、空気圧駆動シリンダとして設計され得る。
【0029】
一つの態様では、センサユニットは、加速度依存の状態情報を生成するため、
所定の方式で調整された少なくとも一つの軸に沿った加速度、特に、多軸加速度を検出する加速度センサ、
所定の方式で調整された少なくとも一つの軸を中心とした回転速度又は回転加速度、特に、多軸のものを検出する回転速度センサ、
振動計及び/又は
MEMS(微小電気機械システム)技術に基づくセンサ
である慣性センサを少なくとも一つ含み得る又はそのようなものとして設計され得る。
【0030】
慣性センサ、特に、加速度センサは、直線的な方向を持った及び/又は低周波加速度イベントの検出のみならず、高周波加速度、例えば、システム構成要素の振動及び動的固有発振の検出も可能にする。そのような測定データから、ピンリフティング装置の状態又は動作中のこの装置の挙動に関するさらなる情報が取得され得る。これは、今度は所望のプロセス安全性に関する知見又はプロセスが指定の条件の枠内で稼働しているかどうかについての一般的言明を導き出すために使用され得る。
【0031】
特定の態様では、センサユニットは、力依存の状態情報を生成するため、
圧力センサ、
変形感知要素、特に、ひずみゲージ、
圧電セラミック素子を持つ圧電力変換器、
動電力変換器、
抵抗型力変換器、
振動力変換器及び/又は
バネ型力変換器
である力センサを少なくとも一つ含み得る又はそのようなものとして設計され得る。
【0032】
力センサは、ピンリフティング装置への対応する影響、たとえば、ウェーハの載置から起こる圧力の検出を提供する。力測定及び、特に、現状記録された力信号を基礎としたピン移動の調整は、例として、ウェーハへの過剰な力を回避するために具現化され得る。例として、これは、力の継続的な増大を制御するために使用され得る。
【0033】
センサユニットは、本発明によるピンリフティング装置のさらなる態様によって
連結部材上、特に、支持ピンのためのレセプタクル上において、
ドライブユニット上、特に、ドライブユニットの心棒又はモータ上において、
連結部材とのドライブユニットの相互作用を提供する連結部要素、特に、ねじ山付きロッド上において、
支持ピン上において及び/又は、
ピンリフティング装置のハウジング上、特に、下面上にもしくはハウジングの内壁上において配置され得る。
【0034】
本発明は、上記の、
又は図2a~3bに記載したようなピンリフティング装置
及び処理・制御ユニットからなるシステムにも関する。処理・制御ユニットは、センサユニットの状態情報を受け取る
及び/又は処理するために
、及び状態情報依存出力を生成する
及び/又は出力するために
、配置され、設計される。
【0035】
これにより、処理・制御ユニットは、センサユニットで収集され得る測定データの処理及び分析機能を提供する。処理・制御ユニットは、この目的のためのデータ交換のために、有線又は無線の方式でピンリフティング装置に接続され得る。
【0036】
さらに、処理・制御ユニットは、記録された、処理された及び/又は分析された測定データを基礎としたピンリフティング移動の閉ループ制御(調整)のために使用され得る。例として、一定の力の継続的な印加は、一定の移動距離にわたって調整され得る。
【0037】
一つの態様では、処理・制御ユニットは、状態情報の処理によって、現在の状態に関する又はドライブユニット及び/又は連結部材の現在の平常状態逸脱に関する出力を、特に、視覚的に又は聴覚的に提供するように配置され得る。特に、出力は、入手された状態情報に対する実際-目標比較によって生成され得る。
【0038】
出力は、ユーザ、例として、生産工場への情報の生成のために意図され、構成され得る。それは、代替的に又は追加的に、調整回路(調整器)のための入力変数も提供し得る。加えて、出力は、制御変数としての役割も果たし、現在の状態に依存してドライブユニットの直接作動を提供し得る。
【0039】
特に、出力は、出力信号として生成され得る。
【0040】
特に、出力は、処理された状態情報を提供する。特に、センサによって発生され得る生の測定データは、状態情報として理解され得る。それ故、これらの測定データは、測定時の装置の状態を表す。例として、この情報が基準値に関する場合、この比較は、相対的な変化を特定し、定量化し得る。
【0041】
出力は、ドライブユニット及び/又は連結部材の機械的及び/又は構造的完全性に関して提供され得る。状態情報(たとえば、閾値との比較又は状態曲線による)を基礎として、システムの障害の可能性が判定され得、システム完全性又はシステム機能に関する出力がそれに応じて生成され得る。
【0042】
特に、出力は、
ピンリフティング装置の構成要素の増大した摩耗の警告及び/又は、
ピンリフティング装置の構成要素の耐久性の予測
のどちらか一つ又は双方を包含し得る。
【0043】
特に、処理・制御ユニットは、状態情報に基づいて周波数スペクトルを(出力として)提供するように適応され得る。特に加速度情報の入手については、測定データのそのような評価は、データのさらなる処理又はさらなる使用のための好適な基礎であり得る。一定の周波数又は周波数範囲が一定の加速度イベント又は関連したシステム構成要素に割り当てられ得る。
【0044】
したがって、処理・制御ユニットは、一つの態様では、一つ又は複数の測定値周波数に関する状態情報の分析に基づいて、それぞれの測定値周波数を引き起こす発振の位置推定に関する出力を提供するように設計され得る。
【0045】
処理・制御ユニットは、所定の基準値との状態情報の比較に基づいて、ピンリフティング装置で実行されたプロセスの評価に関する出力を提供するように適応され得る。センサユニットによって入手された情報を評価することによって、生産工程(たとえば、コーティングプロセス)は、監視され得る。測定された加速度又は力情報が目標値(特に、許容誤差を包含する)から逸脱する場合、これは、過剰な力下での支持からのウェーハのリフティング(デチャッキング)不良の示唆であり得、例として、ウェーハに損傷を及ぼし得る。
【0046】
具体的な態様によると、処理・制御ユニットは、状態情報の複数入手に基づいて、システム状態及び/又はシステム状態の変化の状態トレンド(特に、出力として)、特に、長期トレンドを導き出すように設計され得、特に、状態情報が特定の時間の期間中、周期的に、特に、連続的に入手され、周波数スペクトル及び/又は力変位比が導き出される。
【0047】
センサデータのそのような評価の結果として、ピンリフティング装置の機能の変化は、監視され、検出され得る。したがって、長期観察は、システムのスナップショットの入手のみならずトレンドの導出及びさらなる状態変化の予測も可能にさせる。
【0048】
一つの態様では、処理・制御ユニットは、さらなるセンサユニットに独自の状態情報、特に、ドライブユニットのモータ電流と現状検出された状態情報との比較に基づいて、センサユニットの較正及び/又はセンサユニットに独自の状態情報の監視を提供するように設計され得る。
【0049】
二つの異なる測定源、すなわち、センサユニットとさらなる源からの特定の測定イベントの状態情報を生成することによって、この情報の比較は、実行され得、測定システムは、相互に較正又は監視され得る。
【0050】
処理・制御ユニットは、特に、センサユニットによって、支持ピンを備えた連結部材の支持位置への伸長移動中、状態の変化、特に、基板の接触に起因した力の増大及び/又は支持ピン上の加速コースを検出し、それを、特に、伸長位置にリンクさせるように設計され得る。
【0051】
例として、力変位図は、特定のプロセスのために記録され、保存され得る。逸脱は、ここでは、カバーされた距離及び/又は測定された力に関して判定され得る。代替的に又は追加的に、接触点が力又は加速度曲線、すなわち、基板との接触が発生するピンの伸長位置を基礎として導き出され得る。
【0052】
特に、センサユニットは、ドライブユニットで発生している及び/又は外側からピンリフティング装置に作用する加速度が状態情報として検出され得るように設計され、配置され得る。それぞれの場所に関する検出のために、センサユニットは、好ましくは、ピンリフティング装置の好適な位置に、たとえば、ハウジング又はドライブユニットに配置される。
【0053】
具体的な態様では、センサユニットは、加速度が状態情報として検出され得るように設計され、配置され得、加速度が、
連結部材の少なくとも一部と、連結部材のガイド部及び/又はベアリングとの間、
連結部材の少なくとも一部と、ドライブユニットの少なくとも一部との間、及び/又は
ドライブユニットの少なくとも一部と、ドライブユニットのガイド部及び/又はベアリングとの間
の少なくとも一つの場所における摩擦振動によって生み出される。
【0054】
摩擦によって生まれた振動を検出することによって、状態、例えば、互いに対して動きあう二つの要素間のベアリングの摩耗又は潤滑が検出され得る。それ故に、考えられる振動源を識別し、前記源の位置推定を達成するために、信号分析も使用され得る。
【0055】
状態情報は、特に、以下にリストアップした情報の少なくとも一つを包含し得る。
連結部材及び/又は支持ピンに作用する、特に、支持ピン上にある基板の重さによって発生された力、
ドライブユニット、特に、ドライブユニットのドライブシャフト又はモータに作用する力、
連結部材及び/又はピンにおいて発生された加速度、
ドライブユニットにおいて発生された加速度及び/又は
ピンリフティング装置の加速度状態又は加速度の変化。
【0056】
一つの態様では、処理・制御ユニットは、状態情報に基づいて制御信号を生成し、出力するように適応され得る。ドライブユニットは、制御信号を受け取り、制御信号に依存して連結部材を基準位置と支持位置の間で調整するようにも配置され、設計され得る。換言すると、システムは、ドライブの制御が記録された測定値に基づくように装備され得る(開ループ又は閉ループ)。
【0057】
特に、処理・制御ユニットは、制御信号が現在の状態情報に応じて自動的に設定され得るように装備され得る。制御信号を連続的に調整することによって、ピンリフティング動作の調整は、装備され得、例として、調整速度は、測定された接触力に応じて設定され得る。
【0058】
そのような機器構成は、ピンリフターが現状入手された力又は加速度情報を基礎として制御される及び/又は調整されることを可能にする。これは、例として、機械加工プロセスに影響を与え得る効果、例えば、強い振動が補償され得るように、ドライブユニットの制御が特に、連続的に又はリアルタイムで調整されることを可能にさせる。そのような補償は、それ故に、システムへの構造的介入もなく制御システムを調整することのみによって具現化され得る。
【0059】
もう一つの態様例は、以下のとおりであり得る。例として、動的発振に対する所定の目標振幅の有意な、周期的な又は選択的な超過がドライブユニットで検出される場合、これは、ドライブの早期の保守の必要性を示唆し得る。この情報は、一方でピンリフティング装置の制御を調整して、それがより低い負荷で(及び場合によってはより遅く)動作されるために、他方で保守のための対応する情報を出力するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明による装置は、例として、図面に概略的に示された具体的な態様
例によって、以下により詳細に記載され、本発明のさらなる利点も論じられる。
【
図1】本発明によるリフティング装置と共にウェーハのための真空処理装置の一つの態様の模式図を示す。
【
図2a】本発明のピンリフティング装置の一つの態様を示す。
【
図2b】本発明のピンリフティング装置の一つの態様をさらに示す。
【
図3a】本発明のピンリフティング装置のさらなる態様を示す。
【
図3b】本発明のピンリフティング装置のさらなる態様をさらに示す。
【0061】
図1は、半導体ウェーハ1を真空条件下で処理するためのプロセス装備を概略的に示す。ウェーハ1は、第一の真空トランスファーバルブ5aを通して第一のロボットアーム
2によって真空チャンバ4(プロセス雰囲気領域P)に挿入され、本発明によるピンリフティング装置の支持ピン7(ここでは、三つのピンが図示される
)によって適切な位置に置かれる。ウェーハ1は、次に、ピン7によってピックアップされ
又はその上に置かれ、ロボットアーム2は、遠ざかる。ウェーハ1は、通常、ロボットアーム上もしくはロボットアーム2、3上に提供された支持装置上にある
又は具体的な支持によって保持される。ウェーハ1がピン7によってピックアップされた後、ロボットアームはチャンバ4の外へ
ガイドされ、トランスファーバルブ5aは閉じられ、ピン7は下げられる。これは、それぞれのピン7に連結されるピンリフティング装置のドライブ
6によって行われる。ウェーハ1は、それによって、示された四つの支持要素8上に置かれる。あるいは、ウェーハ1は、静電締結装置(図示せず)、いわゆる静電チャック上に置かれ、チャック電極間に電圧を印加することによって保持され、任意で、それによって作用している力によって水平にされる。
現状、静電チャックは、通常、真空条件下で半導体ウェーハの生産のために使用される。
【0062】
この堅く保持された状態では、ウェーハ1の計画された処理(たとえば、コーティング)は、真空条件下で且つ、特に、規定の雰囲気で(すなわち、一定のプロセスガスで且つ所定の圧力下で)行われる。チャンバ4は、プロセスガス源、真空ポンプ及び、好ましくは、チャンバ圧力を調整するための真空調整弁に連結される(図示せず)。
【0063】
処理後、ウェーハ1は、ピンリフティング装置によって、再び取り出し位置に持ち上げられる。第二のロボットアーム3で、ウェーハ1は、続いて第二のトランスファーバルブ5bを通して取り出される。あるいは、プロセスは、一つのロボットアームのみで設計され得、その場合、搬入及び搬出は、単一のトランスファーバルブを介して行われる。
【0064】
ピンリフター配置は、代替的に(図示せず)、すなわち、リング状の態様で形成又は設計されるリングリフターとして設計され得る。
【0065】
図2aは、本発明によるピンリフティング装置10の一つの態様を示す。ピンリフティング装置10は、装置10の下側ドライブ部分に割り当てられる、電気モータとして設計されたドライブユニット12を有する。モータ12は、ねじ山付き心棒13に連結される。ねじ山付きロッド13は、モータ12をそれに応じて作動させることによって回転し得る。
【0066】
加えて、示された態様ではスライド14として設計され、ねじ山付きロッド13と相互作用し、ロッド13の回転によって中心調整軸Aに沿って直線的に動かされ得る調整要素14が提供される。スライド14は、ねじ山付きロッド13のねじと合致する雌ねじを有する。加えて、スライド14は、それがピンリフティング装置10それ自体に対して回転し得ないが、調整軸Aと平行する動きの方向にのみ動かされ得るように取り付けられる。
【0067】
示された態様では、ピンリフティング装置10は、絶縁部20を有するが、本発明がそのような絶縁部20を持つピンリフティング装置に限定されず、むしろそのような絶縁を伴わないピンリフティング装置を包含することが理解される。スライド14は、ここでは、ドライブユニット12に対して可動である絶縁部20の第一の部分に連結される。上述と同様に、スライド14が代替的に(図示せず)、連結部材32に直接連結され得、連結部要素21が省略されることが理解される。連結部要素21は、スライドによって直線的に動かされ、位置決めされ得る。絶縁部20は、第二の部分22、ドライブ部分11に固定して接続された固定要素22も有する。これも任意であり、代替態様では、なしにすることもできる。連結部要素21及び固定要素22の双方は、それらが電気伝導性を提供することができないように製造される。特に、連結部要素21及び/又は固定要素22は、電気的に非導電性の材料、たとえば、プラスチック(たとえば、PEEK)によって作成される又は非導電性の材料でコーティングされる。
【0068】
固定要素22は、今度はピンリフティング装置10の上側の連結部分のハウジングにしっかり接続される。連結部分の内部容積VIは、ハウジングによって画定される。連結部分は、可動の連結部材32を有し、その第一の端が支持ピン(支持ピンは図示せず)を収容するように設計される。示された例では、連結部材は、本質的に軸Aに沿って伸びる。連結部材32は、(第一の端の反対側のその下側部分において)絶縁部20の連結部要素21に接続される。この例では、連結部材32は、この目的のために、連結部要素21が収容され、たとえば、接着又はねじ込み継ぎ手によって固定される、内部凹部を有する。
【0069】
スライド14、連結部要素21及び連結部材32の間を接続する手段によって、連結部材32及び連結部材32に収容された支持ピンの制御可能な動きが、モータ12によって提供され得る。絶縁部20の連結部要素21に起因して、支持ピンとドライブ12との間の熱分離及びガルバニック分離も提供される。
【0070】
図2aは、任意で提供される支持ピンがその意図した効果に関して本質的に有効でない状態で存在するであろう、下げられた基準位置のピンリフティング装置10の連結部材32を示す。真空機械加工プロセスにピンリフター10を提供する場合では、支持ピンは、通常、機械加工されるべき基板と接触していない。
【0071】
図2bは、連結されたピンが基板をピックアップする、移動させる
及び/又は提供するというその意図した効果を提供する、伸ばされた支持位置のピンリフティング装置10の連結部材32を示す。
【0072】
伸ばされた支持位置に到達するために、モータ12は、それに応じて作動され得る。この目的のために、例として、モータの稼働時間又はねじ山付きロッド13のために実行されるべき回転の数は、スライド14の所望の位置を設定するために、保存され得る。特に、エンコーダは、モータ軸の動きが監視され、調整され得るように、ドライブユニット12に連結される。
【0073】
ピンリフター10の直線的可動部分、すなわち、スライド14、連結部要素21及び連結部材32は、上側の連結部分の領域で主に動かされる。スライド14及び連結部要素21は、少なくとも本質的に内部容積VI内で動く。示された態様では、連結部要素21は、スリーブ状であり、要素21の形状によって画定された凹部21´を提供する。この凹部21´は、連結部要素21へのねじ山付きロッド13の可変伸長を許容し、それにより、ねじ山付きロッド13に対する連結部要素21の並進移動性を可能にさせる。
【0074】
それにより、絶縁部20の二つの要素21、22は、ドライブユニット12を持つドライブ部分11と、それとの関係で固定された位置に配置された連結部分のハウジングとの間の熱分離を提供する。第二に、下側ドライブ部分及び上側連結部分の可動部分、すなわち、連結部材32とスライド14との間のために恒久的な熱分離も提供される。
【0075】
ドライブ部分の個々の構成要素と連結部分のそれぞれの構成要素との間の電気的に伝導性の接触も、ピンリフターの状態とは無関係に、絶縁部20によって妨げられ得る。
【0076】
下げられた基準位置では、連結部要素21と固定要素22とは、好ましくは、接触している。
【0077】
ピンリフティング装置10は、示された態様では四つのセンサユニット41~44を有する。しかしながら、本発明が四つのセンサユニットを持つ態様に限定されず、むしろそのようなセンサユニットを少なくとも一つ持つ態様も本発明によって包含されることが理解される。
【0078】
センサユニット41~44は、各々、状態情報としての加速度情報の入手のために設計される。センサユニット41~44の少なくとも一つは、好ましくは、多軸加速度センサとして設計される。代替態様では、センサユニット41~44の一つ又は複数は、力センサとして設計され得る。特に、以下の測定オプション及び評価手法は、力センサの使用に部分的に転用され得る。
【0079】
センサユニット41~44は、たとえば、WLAN又はBluetooth(登録商標)を介して無線で処理・制御ユニット(図示せず)と連通接続しており、すなわち、センサ41~44で入手された測定データは、この処理・制御ユニットに送信され、必要に応じてさらに処理される。処理・制御ユニットは、ピンリフティング装置と供に、対応するシステムを形成する。特に、処理・制御ユニットは、構造的に単独のユニットとして設計又はピンリフティング装置と統合された形態で設置され得る。
【0080】
第一のセンサユニット41は、内部容積VI内の上側の連結部分のハウジングの内壁上に配置され、それにより、例として、ピンリフティング装置10に外部から作用する加速度イベントの記録を提供する。このようにして、特に、ピンリフター10への機械的衝撃は、記録され得る。さらに、そこにリンクされている信号振幅を監視することによって、衝撃の大きさは判定され得、これによって生まれたピンリフターへの損傷の可能性が評価され得る。そのような手法は、例として、輸送監視を実行するためにも使用され得る。外的な影響に加えて、センサ41は、例として、連結部材32の動きによって生まれたピンリフター10の振動も検出し、それらをさらなる評価のために利用可能にし得る。
【0081】
第二のセンサユニット42は、連結部材32上に配置され、それにより、連結部材32の加速度、すなわち、一方で軸Aに沿った連結部材32の所望の動き及び/又は他方で連結部材32で発生している振動の直接検出を可能にする。そのような振動は、特に、一つ又は複数のシステム構成要素の励起により、それらの固有周波数スペクトルによって生まれ得る。発振の励起又は伝達は、モータ12の動作によって生まれ得る。
【0082】
代替的に又は追加的に、連結部材32の振動は、連結部材が動くとき、連結部材32と、たとえば、連結部材32のためのハウジング又はガイド部(ベアリング)との間で発生している摩擦に起因して発生し得る。
【0083】
処理・制御ユニットは、それぞれの周波数スペクトルが入手された加速度データから導き出され得るように構成され得る。そのようなスペクトルは、個々の加速度イベントを識別するためにも使用され得る。摩擦に割り当てられ得る周波数スペクトルは、例として、別の励起によって発生されるスペクトルとは異なる。したがって、検出された発振が二つの構成要素間の摩擦によって生まれるか又は他のアクティブな励起によるものかを判定するためにアルゴリズム的な評価が使用され得る。これは、ピンリフティング装置の目標とされた保守を可能にし、すなわち、影響を受けた構成要素が特定され、交換され得る。例として、プロセス雰囲気P(真空)と周囲雰囲気(たとえば、室内空気)との間の雰囲気分離を提供する、好ましくは、ピンリフティング装置10に提供されたベローズ(図示せず)の機能が監視され得る。公知の基準振動プロファイルとの比較によって、真空がベローズの内側に存在する(=公称条件)か否かを発生する振動及び発振を比較することによって判定することも可能である。
【0084】
さらに、発生している加速度の質、すなわち、特に、その大きさは分類され得、加速度の特定のタイプに関連して、ピンリフティング装置の状態へのその影響が評価され得る。
【0085】
ピンリフティング装置への考えられる影響に依存して、ユーザへの出力も成され得る。あるいは、出力又は出力信号はドライブユニットに送信され得、それによりドライブ制御が適応され得る。適切な措置は、発生するいかなる振動も減衰又は、例として、固有周波数の励起を妨げる好適なカウンタ信号を生成することによってそれらを大幅に回避し得る。
【0086】
センサユニット42は、支持ピン上にある基板(ウェーハ)のいかなる相対的な移動も検出し得る。ウェーハが調整軸Aに直角の横方向に移動される場合、摩擦によって生まれたこの方向の加速度は、センサ42で(又は他のセンサ41、43、44の一つで)測定され得る。そのような望まれない移動が発生する場合、たとえば、摩滅を通じたパーティクルの形成が結果であり得る。真空領域でのコーティングプロセス中のパーティクル形成は常に重大な問題であり、プロセス容器の汚染と、それによる生産プロセスの甚だ芳しくない障害をもたらし得る。本発明による加速度計の提供は、記載したように、そのような場合のための監視システムを提供し、それにより、例として、そのようなイベントに対する警告信号を発し得る。
【0087】
さらなるセンサユニット43は、スライド14上に配置され、特に、連結部材32が調整軸Aに沿って動かされるとき、直接状態情報を提供する。心棒13の回転によって生まれた振動及びスライド14の結果として生じる動きが直接ピックアップされ得る。このようにして検出され得る振動の特性は、ドライブシステムの機能的状態を評価することを可能にさせる。例として、記録された振動は、ねじ山付きロッド13とスライド14との間の滑り性又は潤滑の状態についての結論を出すために使用され得る。この結論は、例として、スライドの目標動作特性を表す基準周波数スペクトルを現状入手された周波数スペクトルと比較することによって出され得る。代替的に又は追加的に、基準値に対して増大した振幅は、ギアユニットの不十分な潤滑を示唆し得る。
【0088】
第四のセンサ44は、モータ12上に配置される。これは、モータ12それ自体の振動及び発振が検出されることを可能にさせる。例として、モータ12の稼働特性が監視され得、モータの誤動作又は瑕疵の可能性が検出され得る。モータ上で検出され得る振動が増大する場合、これは、モータ12の増大する摩耗及びモータ12の差し迫った故障の示唆であり得る。
【0089】
個々のセンサ41~44で、特に、センサ42~44で入手され得る情報を基礎として、ピンリフター10又はそれの少なくとも部分の長期監視も実行され得る。この目的のために、加速度情報、特に、周波数スペクトル及び/又は加速度振幅は、一定の時間の期間にわたり記録され、評価され得る。記録された情報の総合的な(アルゴリズム的に基づいた)検討の結果として、具体的な加速度特性の変化が認められ得、その変化からシステムのある変化の長期トレンド又は傾向が導き出され得る。
【0090】
上記のシステムの長期的な視点のおかげで、ピンリフティング装置10の保守は、個々の負荷に依存して事前に計画され得る。例として、状態情報の長期監視は、特に先行公知システム特性を考慮して、目標状態からの加速度挙動の逸脱の増大を基礎として、考えられる機能的故障の時点を推定するために使用され得る。保守時間は、それに応じて経済的に最適化された態様で設定され得、すなわち、保守は、必要よりも遅れることなく、すなわち、考えられる誤動作の前に、且つ信頼できるピンリフティング機能を確保するために必要よりも早期すぎずに実行される。
【0091】
センサユニット41~44、特に、ユニット42及び43は、デチャッキングプロセスを監視するためにも個々に又は供に使用され得る。デチャッキングは、静電締結装置(チャック)上にある基板が一つ又は複数のピンリフティング装置によって持ち上げられるプロセスである。ウェーハを所定位置に保持することに関与しているチャック電極間の電圧は、スイッチを切られ、ピンは、それらを伸ばすことによってウェーハと接触する。
【0092】
その後のリフティング工程では、ウェーハを持ち上げるためにピンによってウェーハに与えられる圧力は、ウェーハがチャックから解放され、ピンのみによって運ばれるまで増大する、すなわち、ピンリフティング装置10の連結部材32は、挿入されたピンとともに、それを運び位置まで伸ばすことによって動かされる。記録され得る加速度プロファイルに基づいて、デチャッキングプロセスの評価又は監視が提供され得る。ウェーハに接触するとき伸長移動の減速がウェーハがチャックから取り外されるとき加速度値のその後の増大が予想される。加速度の測定可能な度合い(たとえば、減速効果の振幅偏差又は持続時間)は、デチャッキングが指定の条件下で行われたかどうかの指標としての役割を果たす。測定された加速度プロファイルが指定の許容誤差を超えて基準プロファイルから逸脱する場合、これは、取り外し不良を又はウェーハへの損傷すら示唆する。
【0093】
支持ピン上へのウェーハの設置のために、適切な監視が具現化され得る。スタイラスにおける加速度がスタイラスを載置することによって測定され得る。これは、あらかじめ公知の基準と比較され、所与のプロセス信頼性に関する情報を導き出すために使用され得る。
【0094】
具体的な態様では、センサ41~44の情報は、概要において評価又は同時に処理され得る。ここでは、例として、下側のドライブ部分と上側の連結部分との間の振動及び固有発振の伝播が判定され得る。
【0095】
そのような評価によって、対応する絶縁要素21、22の構造的完全性、すなわち、部分間の絶縁効果が、二つの部分間の振動差を基礎として監視され得る。
【0096】
図3a
及び3bは、本発明によるピンリフティング装置50のもう一つの態様を示す。
図3aは、このピンリフティング装置50の断面を、
図3bは、外観図を示す。
【0097】
支持ピン59は、連結部材58内に係止される。支持ピン59は、好ましくは、金属製、ポリマー系又はセラミック材料を有し、特に、ピン59は、全体的にそのような材料によって作成される。連結部材58内の係止装置は、例として、磁気的に又は締結によって具現化され得る。
【0098】
連結部材58は、スライド54によってZ方向に動かされ得る。スライド54は、この目的のために、今度はモータ12によって駆動され得るねじ山付き心棒53に連結される。
【0099】
上側の連結部分と下側ドライブ部分との間の任意の絶縁は、一つの変形態様においては、下側ハウジング部分から上側ハウジング部分を熱的に及び電気的に分離する第一の絶縁要素52によって実現される。好ましくは、スライド54によって具体化され得る第二の絶縁要素が提供され得る。ピンリフティング装置50のこの変形態様では、ねじ山付き心棒53は、相対移動中でさえも心棒53と連結部材58との間に(電気的に又は熱的に伝導性の)接触が発生しないように、正確に且つしっかりと設計され、取り付けられる。あるいは、心棒53は、非導電性又は断熱材料によって作成される又はそれでコーティングされる。これにより、上側部分と下側部分との間の完全なガルバニック分離及び熱分離が装置50のあらゆる状態において提供される。
【0100】
さらなる変形態様では、ねじ山付き心棒53及び心棒53上に位置するスライド54の双方は、伝導性(たとえば、金属製)として製造され得る。絶縁は、その場合、特に、例として、心棒/スライドと連結部材との間の中間スリーブによって、達成され得る。
【0101】
ピンリフター50は、連結部分の内側にベローズ55も有する。ベローズ55は、支持ピン59(ピン)が存在し、機械加工プロセスが通例行われるプロセス雰囲気領域と、たとえば、ドライブ12及びさらなる周辺機器構成要素が存在し得る外部雰囲気領域との雰囲気分離が提供されるように配置され、形成される。ベローズ55は、ピン59が伸ばされるとき圧縮され、雰囲気分離が維持される。
【0102】
ピンリフティング装置50は、二つのセンサユニット45及び46を有し、その各々が力センサとして設計される。
【0103】
二つのセンサのうちの一つ45は、ピン59に、示された例では、ピンを連結するために意図されるその下側端に位置する。あるいは、センサ45は、ピンリフティング装置50のもう一つの構成要素、たとえば、ベローズ55、連結部材58に又は連結部材58とピン59もしくはスライド54との間に、又はもう一つの可動要素及び/又は動作中外的な力にさらされる要素に装着され得る。センサ45は、代替的に、ピン59の反対側の端に配置され得る。ピン59上への配置は、持ち上げる、下げる又は保持する間に持ち上げられるべき基板によってピン59及びピンリフティング装置50に加えられた力の直接測定を可能にさせる。そのような直接力測定は、好ましくは連結部材58に割り当てられピン59の交換の影響を受けない、ピン59と連結部材58との間のセンサでも実現され得る。
【0104】
ピン59上に提供されたセンサ45の利点は、それが非常に容易に且つピンリフティング装置50へのいかなる介入もなく交換され得ることにある。センサの電気供給は、例として、連結部材及び連結部材58内の対応する接点によって又はピン59内のエネルギー貯蔵装置(たとえば、電池又は再充電可能電池)によって提供され得る。センサの測定データは、無線によって又は対応する電気接点によっても送信され得る。
【0105】
連結部材58上に提供されたセンサの一つの利点は、エネルギー及びデータ伝達の双方のために、センサの接触が比較的シンプルなことであり得る。
【0106】
ピン及び/又は連結部材58へのセンサ45の上述の配置の結果として、ピンリフティング装置の他の構成要素による力測定の影響を排除することができ、すなわち例えば、ベローズ55又はスライド54によって与えられた力は測定されず、それにより、ピン59と基板との間に作用する力に関する測定精度が増大する。例として、仮にベローズ55が摩耗の兆候を示す場合、これは力測定に相当な影響を与え、不正確なプロセス評価をもたらし得る。
【0107】
追加的な力センサ46は、モータ12からねじ山付きロッド53への移行部に位置し、それ故に、ねじ山付きロッド53に沿ってモータ12に作用する全ての力を検出し得る。これにより、モータ12の負荷又は必要とされる電力消費が判定され得る。
【0108】
力センサ45、46は、加えられた力の選択的な検出を、一定の時間の期間にわたる力の進行の検出と同様に可能にさせる。
【0109】
保存された基準値(たとえば、許容最大力)との加えられた力レベルの(継続的な)比較によって、プロセス監視及びピンリフティング装置50の状態の記録は、実行され得る。許容最大力を超過した場合、適切な信号が生成され、出力され得、許容できないシステム負荷を示唆し、必要な場合、システムの点検を推奨し得る。
【0110】
許容可能な最大力は、静電締結装置からの基板の持ち上げにも規定され得、その超過は基板への損傷の可能性を示唆し得る。
【0111】
力曲線は、ピンリフティング装置の一つ又は複数の構成要素の摩耗現象及びプロセス品質の双方を判定するために使用され得る。加速度計(前記を参照)の使用のための評価手法は、この目的のために、力センサの使用に転用され得る。
【0112】
この目的のために規定された基準からの力曲線の測定された逸脱の場合には、警告信号が出力され得る。逸脱のタイプが考えられる原因のために評価され、分析され得る。例として、一定パターンの逸脱は、逸脱の源及び/又はシステムもしくはピンリフティング装置50への影響についての結論が出されることを可能にさせる。繰り返される類似のプロセス工程(プロセスサイクル)中の力進行の長期観察によって、プロセス内の変化のトレンドも検出され得る。トレンド監視は、将来のシステムステータスの見通し及びそれに対応して最適化された保守サイクルの計画も可能にさせる。
【0113】
力センサ45又は46の測定データは、モータ電流の測定値との比較、すなわち、加えられた力とのモータ12によって提供されたトルクの比較も可能にさせる。これは、双方の測定原理の相互較正及び監視を提供する。
【0114】
図3bは、ピンリフター50の外観図を示す。ピン59は、リフター50のハウジングの上側から突き出ている。絶縁部の固定要素52は、励起された振動
及び発振の伝達を妨げるために、上側の連結部分
又はそのそれぞれのハウジング部分
及び並進に移動不可能な部分から下側ドライブ部分をガルバニックに且つ熱的に分離する。
【0115】
ピンリフター50は、その外側ハウジング側に二つの追加的な加速度計47、48を有する。一方のセンサ47は、上側の連結部分上に、他方のセンサ48は、下側ドライブ部分上に位置する。例として、二つのハウジング部分間の振動及び発振の伝達は、ピンリフター50のドライブから接続されたプロセスチャンバへの考えられる伝達と同様に、検出され得る.
【0116】
上述の機能に加えて、例として、絶縁要素52の所望の絶縁効果を、例として、監視するような配置も使用され得る。
【0117】
示された図が可能な態様例を概略的にのみ表すことが理解される。本発明によると、異なる手法が先行技術の真空プロセスチャンバ内の基板移動のための装置、特に、ピンリフターと同様に、互いに組み合わされ得る。