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特許7548909混成物の順応する眼球内レンズ及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】混成物の順応する眼球内レンズ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021536118
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CA2019051206
(87)【国際公開番号】W WO2020041890
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】3016143
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】521084862
【氏名又は名称】オキュメティックス テクノロジー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】OCUMETICS TECHNOLOGY CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ、ガース ティ.
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-044938(JP,B2)
【文献】特表2015-511723(JP,A)
【文献】特開2014-134797(JP,A)
【文献】特表2012-515019(JP,A)
【文献】特表2009-516570(JP,A)
【文献】特開2007-089810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0060878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順応する眼球内レンズ(10)であって、第1の変形不可能な光学素子(32)と前記第1の変形不可能な光学素子(32)の周囲がシールされている第2の変形可能な光学素子(30)とを含み、前記第1の変形不可能な光学素子(32)と前記第2の変形可能な光学素子(30)との各々が、中心の透明な光学領域と、前記第1の変形不可能な光学素子(32)および前記第2の変形可能な光学素子(30)のそれぞれに関連付けられた第1の触覚領域(22)及び第2の触覚領域(20)であって前記周囲で互いに対してシールするように接続されている前記第1の触覚領域(22)及び前記第2の触覚領域(20)とを有、前記第1の変形不可能な光学素子(32)が、前記第2の変形可能な光学素子(30)の第2の接触表面(33)に接触する凸状の接触領域を含む第1の接触表面(35)を有し、前記第1の変形不可能な光学素子(32)と前記第2の変形可能な光学素子(30)との間の前記中心の透明な光学領域と前記第1の触覚領域(22)及び前記第2の触覚領域(20)との間の位置に、シールされ空気が充填された区画(18)が画定され、前記空気が充填された区画(18)は、光学領域部分(17)及び触覚領域部分(28)を含み、近位の対象に目の焦点を合わせている休止状態にあるとき、前記光学領域部分(17)は前記第1の変形不可能な光学素子(32)及び前記第2の変形可能な光学素子(30)の前記中心の透明な光学領域の周辺部の間に空気のインターフェースを形成し、遠位の対象に目の焦点を合わせている非休止状態にあるとき、空気は前記光学領域部分(17)から外側の前記触覚領域部分(28)に移送されることにより、前記空気のインターフェースを除去するとともに前記中心の透明な光学領域のそれぞれの内側表面が互いに接触して固体光学レンズ素子を形成することを可能にし、前記非休止状態にあるとき、前記第1の変形不可能な光学素子(32)の前記第1の接触表面(35)の、前記第2の変形可能な光学素子(30)の前記第2の接触表面(33)に対する圧縮が、前記第2の変形可能な光学素子(30)の湾曲の程度を変更し、前記眼球内レンズ(10)は、前記中心の透明な光学領域の前記周辺部に十分な対向する力が送達されると、前記休止状態から前記非休止状態へと調整可能であり、前記眼球内レンズ(10)は、前記対向する力が低減されると、前記非休止状態から前記休止状態へと調整可能である、眼球内レンズ。
【請求項2】
前記眼球内レンズ(10)が前記目に埋め込まれると、前記眼球内レンズは前記目の毛様体筋/提靱帯/小帯/水晶体包複合体に結合され、前記対向する力は、毛様体筋の作用によって引き起こされる小帯の張力によって発揮される、請求項1に記載の眼球内レンズ。
【請求項3】
毛様体筋の張力の低下によって前記対向する力が減少すると、前記第2の変形可能な光学素子(30)の弾性が、前記眼球内レンズ(10)の前記休止状態への移動をもたらす、請求項2に記載の眼球内レンズ。
【請求項4】
前記空気が充填された区画(18)は、前記光学領域部分(17)と前記触覚領域部分(28)との間を連通する少なくとも1つのチャンネルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼球内レンズ。
【請求項5】
前記第2の変形可能な光学素子(30)前記第2の接触表面(33)と接触する前記第1の変形不可能な光学素子(32)の前第1の接触表面(35)、前記凸状の接触領域の頂点である、請求項1に記載の眼球内レンズ。
【請求項6】
前記空気が充填された区画(18)の前記光学領域部分(17)と前記触覚領域部分(28)との間を連通する前記少なくとも1つのチャンネルが、前記第2の変形可能な光学素子(30)の表面に形成され、前記第2の変形可能な光学素子(30)の前記表面に形成された複数の径方向チャンネル(14)と相互接続された円形チャンネル(12)含む、請求項に記載の眼球内レンズ。
【請求項7】
前記光学領域部分(17)と前記触覚領域部分(28)との間を連通する前記少なくとも1つのチャンネルが、前記第1の変形不可能な光学素子(32)の表面に形成され、前記第1の変形不可能な光学素子(32)の前記表面に形成された複数の径方向チャンネルと相互接続された円形チャンネルを含む、請求項に記載の眼球内レンズ。
【請求項8】
前記第1の変形不可能な光学素子(32)の前記凸の接触領域を含む第1の接触表面(35)と、前記第2の変形可能な光学素子(30)の前記第2の接触表面(33)とが、短い曲率半径で形成されている、請求項に記載の眼球内レンズ。
【請求項9】
目の水晶体包内における置き換えのための、順応する眼球内レンズ(10)を提供するための請求項1から請求項のいずれか一項に記載の眼球内レンズであって、使用時に、前記眼球内レンズ(10)は毛様体筋の張力を前記眼球内レンズに伝達するための眼球内構造と組み合わせて提供される、前記眼球内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2009年2月19日に公表された、INFLATABLE INTRA-OCULAR LENS/LENS RETAINERと題する国際出願公開第WO2009/021327号、ならびに、2014年8月14日に公表された、EXPANDABLE SUSPENSION SYSTEMS FOR INTRA-OCULAR LENSESと題する国際出願公開第WO2014/021391号、及び2009年2月19日に公表された、PNEUMATIC INTRA-OCULAR LENSと題する国際出願公開第WO2009/021326号に開示された、本出願人の膨張可能なレンズ/レンズ保持器に関する。
【0002】
本発明は、目の中の生来の水晶体スペースに、毛様体筋/小帯/水晶体包複合体によって加えられる張力に応じて湾曲の程度を変化させることができる眼球内レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
水晶体摘出の後に、毛様体筋/提靱帯/水晶体包複合体の自然の運動をふたたび関わらせる能力を有し、老眼が、遠位から近位に焦点をシフトさせるその能力を回復することを可能にする眼球内レンズが、出てきている。この競合する分野では、これら新たなレンズタイプを、小さな角膜切開を通して眼内に挿入する能力が非常に注目されている。
【0004】
現在、Power Vision Corporationによって製造された、Fluid Lens(商標)と呼ばれる研究装置などの、液体が充填された眼球内レンズが、様々な制約を示している。これらレンズタイプの内側に留められた液体は、近位から遠位への目の焦点のシフトの日々の手順の間、圧縮され、デバイスの様々な領域に送られる。この繰り返しの動作により、デバイスをともに保持するシールされた縁部が傷つきやすくなり、経時的に破裂する。この性質は、デバイスのシールされた縁部をともに保持する接着剤の接着部を、液体が溶融し、弱める傾向によって高められる。このことに加え、液体で充填された眼球内レンズは、扱いにくく、挿入が面倒である傾向にあり、これら眼球内レンズが、挿入プロセスの間に特に損傷を受けやすくなる。このことは、目の生来の水晶体スペース内に放出される前に、眼球内レンズが圧縮され、狭い小管を通して押し退けられることを伴う。
【0005】
空気が充填された眼球内レンズは、流体が充填された眼球内レンズより薄く、結果として、概して挿入が容易である。空気が充填された眼球内レンズは、その構造的構成要素をともに保持する接着剤の接着部の完全性を妨げる液体を有していない。しかし、これら空気が充填された眼球内レンズは、内部反射及びグレアに本来的に悩まされる。この煩わしい事象に加え、空気が充填された眼球内レンズの屈折特性は、気圧のわずかな変化によってさえ、潜在的に変化され得る。現在の順応する眼球内レンズの設計のオプションに直面する限定に鑑み、向上が必要である。
【0006】
関連技術の前述の実施例は、例示的であり、排他的ではないことが意図されている。関連技術の他の限定は、本明細書を読み、図面を研究することで、当業者には明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【0007】
以下の実施形態、及びその態様は、例示的かつ説明的であり、範囲を制限しないものと意図されている、システム、ツール、及び方法に関連して、記載及び説明される。様々な実施形態では、上述の問題の1つまたは複数が低減されるか除去され、一方、他の実施形態は、他の向上のためのものである。
【0008】
一実施形態によれば、混成物の眼球内レンズが提供される。この混成物の眼球内レンズは、固体の光学素子と、空気で充填された光学素子など、流体で充填された光学素子との両方を含み、順応の間、固形光学素子から、部分的に液体または空気が充填された光学素子に変換される。一実施形態によれば、部分的に空気が充填された眼球内レンズは、比較的変形不可能な光学素子によって一方側で包まれた、中空の空気が充填されたレンズの区画を備え、この変形不可能な光学素子は、比較的変形可能である、第2の光学素子により、その凸状の頂点で接触する。変形不可能な光学素子の頂点に接触する変形可能な光学素子の表面の形状の輪郭は、様々な構成にすることができる。この形状の輪郭は、平坦、凸状、凹状、多焦点、または非球面であるが、ただし、デバイスがその慣習的な休止状態にある場合、光学素子の残りの部分の間にエアスペースが残される。2つの光学素子の触覚部は、互いに接触するように集まり、それらの外辺部の周りでともに接着され、それにより、中空の、空気が充填された区画のサイズ及び形状を規定する。2つの光学素子を有するものとちょうど同じように、空気が充填された区画は、それにより、光学領域と触覚領域とを備えている。
【0009】
2つの光学素子の光学領域の周囲の領域が、対向する外力によってともに圧縮された場合、変形可能な光学素子は、変形不可能な光学素子の形状に対応するように曲がる。このプロセスの間、通常は2つの光学領域間の空間を占める空気が、触覚部間のエアスペースに向けて排出される。十分な対向する力が2つの光学素子の光学領域に伝えられると、その内側表面が整列するとともに接続し、ここで、粘着作用を伴わず、後に分離することができる。この瞬間、本発明の2つの態様が達成される。第1に、一対のレンズの光学領域が、もはや、内部反射及びグレアを生成する空気のインターフェースを有していない。第2に、目は、大気圧の変化によって影響されることなく、遠位の対象に焦点を合わせたままにすることができる。このプロセスは、変形可能な特性を有する光学素子の一方または両方で達成することができる。
【0010】
径方向のスロットは、変形可能な光学素子の下側表面に設けられている場合があり、変形可能な光学素子の光学領域の外辺部を囲み、変形可能な光学素子の周囲のチャンネルに接続され、光学領域と、空気が充填された区画の触覚領域との間を空気が自在に循環できるようにされる場合がある。このチャンネル、及び径方向のスロットのネットワークは、設計上の任意選択的特徴である。この設計により、球状のシェルが、その形状を変形させられた場合に生じ得る材料の歪曲を制御するための手段も提供される。径方向のスロットの幅は、必要に応じて空気の流れを変化させるように選択することができる。
【0011】
より詳細には、一実施形態によれば、第1の変形不可能な光学素子であって、第2の変形可能な光学素子に対し、その周囲がシールされて、シールされ、空気が充填された折りたたみ式キャビティを形成し、第1の変形不可能な光学素子と第2の変形可能な光学素子との各々が、中心の光学領域と、第1の変形不可能な光学素子と第2の変形可能な光学素子とのそれぞれに関連付けられた第1の触覚領域及び第2の触覚領域とを有し、かつ、各々が互いに対してシールするように接続されてシールされた外辺部を形成する、第1の変形不可能な光学素子を備えた、部分的に空気が充填された眼球内レンズが提供される。第1の光学素子は、その内側表面に凸形状を有し、凸状の内側表面の頂点が、変形可能な光学素子の中心領域を押圧し、第1の光学素子の光学領域と第2の光学素子の光学領域との間の残りのエリアに、シールされた折りたたみ式のエアスペースを残す。
【0012】
さらなる態様によれば、シールされ、空気が充填された折りたたみ式キャビティは、第1の光学素子の光学領域と第2の光学素子の光学領域との間に位置する光学領域と、触覚領域であって、光学領域と、触覚領域のシールされた外辺部との間に位置する触覚領域とを含む場合があり、空気で充填された折りたたみ式キャビティが、光学領域と触覚領域との間を連通している少なくとも1つの開口を有し、それにより、毛様体筋の張力によって生成された外力が、光学素子の光学領域の外辺部に向けられた場合、空気で充填されたキャビティの光学領域が圧縮され、それにより、キャビティ内の空気を、連通するチャネル、ならびに、第1の光学素子の光学表面及び第2の光学素子の光学表面を通して空気で充填されたキャビティの触覚領域に向けて排出し、第1の光学素子の光学表面と第2の光学素子の光学表面とが、これにより、互いに対して圧縮され、それにより、目の焦点を遠位の対象に合わせ、また、それにより、変形可能な光学素子の弾性により、毛様体筋の張力が低減された際に、圧縮力が低減される。さらなる態様によれば、光学領域と触覚領域との間を連通する少なくとも1つの開口は、複数の径方向のチャンネルと相互接続する円形チャンネルを備えている場合がある。
【0013】
さらなる態様によれば、毛様体筋の張力をレンズに伝達するための眼球内構造と組み合わせて、前述の特徴を有する眼球内レンズを提供することにより、目の水晶体包内における置き換えのための、順応する眼球内レンズの提供方法が提供される。
【0014】
本発明のこの光学的構成により、それによってこのレンズ設計が内部反射及びグレアにさらされるのは、空気が2つの光学素子間の空間に戻る際のみである。このグレアの可能性は、2つの光学素子の内部の光学表面が、比較的小さい曲率半径で形成される際に、低減され得る。この可能性は、目の中に向けられた光学素子によってさらに低減され得、それにより、変形不可能な光学素子が、変形可能な光学素子の前方に配置されるようになっている。
【0015】
上述の例示的態様及び実施形態に加え、さらなる態様及び実施形態が、図面を参照すること、及び、以下の詳細な説明を研究することにより、明らかとなるであろう。混成物のレンズの区画に包含される気体として空気が記載されているが、集合的に流体と称される、他の透過性の気体または液体を、結果としての屈折率の変化を伴って、代替させることができる。
【0016】
例示的実施形態を、参照する図面で説明する。本明細書に開示の実施形態及び図面は、限定的というよりはむしろ、例示的と考えられることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る、空気が充填された眼球内レンズの平面図である。
図2】近位の対象に目の焦点を合わせている、休止状態にあるか低エネルギ構成の眼球内レンズを示す、図1の線A-Aに沿って取られた詳細な断面図である。
図3】遠位の対象に目の焦点を合わせている、圧縮されているか高エネルギ構成の眼球内レンズを示す、図1の線A-Aに沿って取られた詳細な断面図である。
図4】近位の対象に目の焦点を合わせている、休止状態にあるか低エネルギ構成の眼球内レンズを示す、図1の線B-Bに沿って取られた詳細な断面図である。
図5】遠位の対象に目の焦点を合わせている、圧縮されているか高エネルギ構成の眼球内レンズを示す、図1の線B-Bに沿って取られた詳細な断面図である。
図6図1に示す空気が充填された眼球内レンズの頂部左側の斜視図である。
図7図1に示す空気が充填された眼球内レンズの底部左側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明を通して、特定の詳細が、本発明を当業者がより完全に理解するために説明される。しかし、よく知られている要素は、本開示を不要に不明瞭にすることを避けるために、示されないか、詳細に記載されない場合がある。したがって、詳細な説明及び図面は、限定的意味というよりはむしろ、説明的ものとして解釈されるものとする。この詳細な説明及び特許請求の範囲では、「流体」との用語が使用された場合、この用語は、空気及び他の気体、ならびに液体を含んでいる。
【0019】
図1は、空気が充填された眼球内レンズ10の平面図である。眼球内レンズ10は、中心の円形である透明な光学領域を有する変形可能な光学素子30と、中心の円形である透明な光学領域を有する変形不可能な光学素子32とで形成されている場合がある。眼球内レンズ10は、実質的または完全に透明な材料で形成されている場合がある。眼球内レンズ10の変形可能な光学素子30は、円形の溝またはチャンネル12により、その下側表面33に境界が定められている。円形の溝またはチャンネル12は、光学素子30の下側表面31に形成された径方向のスロット14のネットワークに接続されている。眼球内レンズ10の外辺部は、触覚部20及び触覚部22の外側縁部をシールするシール16によって境界が定められている。眼球内レンズ10の変形可能な光学素子30及び変形不可能な光学素子32のそれぞれの触覚部20、22は、シール16とチャンネル12との間に延びている。
【0020】
図2は、近位の対象に目の焦点を合わせている、順応されているか休止状態の空気が充填された眼球内レンズ10を示す、図1の線A-Aに沿って取られた断面図である。この状態では、変形可能な光学素子30と変形不可能な光学素子32とは、変形不可能な光学素子32の頂点40のみで接触する。同様に、このことは図4に示されている。図4は、順応されているか休止状態の空気が充填された眼球内レンズ10を示す、図1の線B-Bに沿って取られた詳細な断面図である。
【0021】
図3は、空気が充填された眼球内レンズ10を示す、図1の線A-Aに沿って取られた断面図である。ここでは、(「INFLATABLE INTRA-OCULAR LENS/LENS RETAINER」と題する、参照される国際出願公開第WO2009/021327号に記載のように)力のベクトルXが毛様体筋によって眼球内レンズ10に加えられて、遠位または近位の対象に焦点を合わせるようにレンズを順応させている。
【0022】
動作時には、図2に示される順応された構成は、眼球内レンズ10の慣習的な低エネルギ状態を示している。環状の空気が充填された区画18の光学領域内に存在する空気は、「空気レンズ」の役割を果たす。図3に力のベクトルXによって示すような外力に応じて、変形不可能な光学素子32の上側表面35の形状に対応するように、変形可能な光学素子30が曲がった場合、変形可能な光学素子30の内側表面33は、より凹状になるが、同じ瞬間に、外側表面31はより凸状になる。これら対応する湾曲の程度の変化は、互いの屈折の影響を無効にする。しかし、変形可能な光学素子30の形状が変化するのと同時に、光学素子30、32間に閉じ込められた空気レンズ18の形状は、それに応じてより凹状になり、液体の水を含むインターフェースの形状は、変形可能な光学素子30の外側表面31と同様に、同じようにより凸状になる。空気レンズ/光学素子のインターフェースの屈折率の差異は、水/光学素子のインターフェースの屈折率の差異より、2.5倍大きい。したがって、(図3及び図5に示す光学素子30の高エネルギ状態のように)変形可能な光学素子30の外側表面31の凸状が増大すると、全体の光屈折レンズ出力が著しく低減される結果となる。このため、明らかな矛盾が示される。眼球内レンズの中心の厚さが増大する場合、遠位の対象に目の焦点が合わせられることになる。
【0023】
図2から図5の断面図に示すように、空気が充填された区画18の光学領域17から吸引された空気は、変形可能な光学素子30の光学領域が、力のベクトルXによって図3及び図5に示される外力によって圧縮された場合、空気が充填された区画18の触覚領域28に移送される。このプロセスの間、光学領域30の下側表面33と光学領域32の上側表面35との間の空間17を通常は占める空気が、触覚部20、22間のエアスペース28に向けて排出される。十分な対向する力が2つの光学素子30、32の光学領域に伝えられると、その内側表面33、35が整列するとともに接続し、空間17を収縮させ、ここで、空間17をふたたび形成するように、粘着作用を伴わず、後に分離することができる。この瞬間、本発明の2つの態様が達成される。第1に、一対のレンズの光学領域が、もはや、内部反射及びグレアを生成する空気のインターフェースを有していない。このグレアの可能性は、2つの光学素子30、32の対向する光学表面33、35が、比較的小さい曲率半径で形成される際に、低減され得る。この可能性は、目の中に向けられた光学素子によってさらに低減させることができ、それにより、変形不可能な光学素子が、変形可能な光学素子の前方に配置されるようになっている。第2に、目は、大気圧の変化によって影響されることなく、遠位の対象に焦点を合わせたままにすることができる。このプロセスは、変形可能な特性を有する光学素子30、32の両方で達成することもできる。変形可能な光学素子30の弾性により、前述の毛様体筋の張力が低減された際に、圧縮力が低減され、表面33及び35を、休んだ状態に戻し、目の焦点を近位の対象に合わせる。
【0024】
表面33の近位の変形可能な光学素子30の光学領域の周囲からの、空気の迅速かつ均一な移送は、径方向のスロット14によって可能になる。この径方向のスロット14は、空気をチャンネル12に搬送し、その後に、空気が充填された区画18の環状の触覚領域28の周りの円形のチャンネル12を介して均一に分配される。周囲のチャンネル12に接続された径方向のスロット14は、こうして、光学素子30の光学領域の外辺部を囲んで、光学領域17と、空気が充填された区画18の触覚領域28との間を空気が自在に循環できるようにされる場合がある。代替的または追加的に、径方向のスロット14または周囲のチャンネル12、またはその両方は、変形不可能な光学素子32の光学領域の外辺部の上側表面に形成されて、同様に、光学領域17と、空気が充填された区画18の触覚領域28との間を空気が自在に循環できるようにされる場合がある。このチャンネル、及び径方向のスロットのネットワークは、設計上の任意選択的特徴である。この設計により、球状のシェルが、その形状を変形させられた場合に生じ得る材料の歪曲を制御するための手段も提供される。径方向のスロット14及びチャンネル12の幅は、必要に応じて空気の流れを変化させるように選択することができる。
【0025】
中空キャビティに沿った光学表面の様々な形状は、目の内で焦点が合わせられたイメージの光学的解像度を調整するため、または、目の焦点の範囲を広げるために、任意の個別の目の特定の光学的要請にマッチするように選択され得る。
【0026】
変形可能な光学素子30の断面形状の輪郭は、その形状の回復の時間を加速するために、カスタマイズされ得る。たとえば、変形不可能な光学素子32の上側表面33にその頂点で接触する変形可能な光学素子30の下側表面33の形状の輪郭は、様々な構成にすることができる。この形状の輪郭は、平坦、凸状、凹状、多焦点、または非球面であるが、ただし、デバイスがその慣習的な休止状態にある場合、光学素子の残りの部分の間にエアスペースが残される。
【0027】
柔軟に支える構造は、2つの光学インターフェースのいずれかの光学領域の外辺部に設けられ、これらの間の吸引または粘着のリスクを低減させることができる。この吸引または粘着は、それらの光学表面を潜在的にともに束縛し、変形可能な光学素子30を動かなくし得る。
【0028】
図2及び図4に示す実施形態では、変形可能な光学素子30と変形不可能な光学素子32とは、休んだ状態の間、変形不可能な光学素子32の頂点40のみで接触するが、他の実施形態では、休んだ状態の接触ポイントは、光学素子の中心の頂点とは別の場所、たとえば外周に配置することができる。たとえば、「Method and Apparatus for Modulating Prism and Curvature Change of Refractive Interfaces」と題する、本出願人の国際出願公開第WO2013/126986A1号に示される構造を参照されたい。この文献は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0029】
光学素子の構築に必要な材料は、弾性で、強い記憶特性を有し、圧縮されるか、伸ばされるか、別様に変形された後に、そのもとのサイズ及び形状に容易に戻る。良好な形状記憶特性を有する、眼球内レンズの形成に一般的に使用される材料には、シリコーン、シリコーンハイドロゲル、疎水性及び親水性のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ならびにこれらのブロック共重合体が含まれるが、これらには限定されない。
【0030】
本発明に関して何よりも重要な意図は、眼球内レンズの光学領域内の空気の光学的インターフェースを必要に応じて除去及び置換して、人間の目が、焦点を遠位から近位に、及びその間のすべての点に、効率的かつ予想通りにシフトさせる、その本来の能力を回復することを可能にすることである。
【0031】
複数の例示的態様及び実施形態を上述してきたが、当業者は、特定の変更、置換、追加、及びこれらのサブの組合せを認識することになる。たとえば、区画18に包含される流体として空気が記載されているが、他の透過性の気体または液体を、結果としての屈折率の変化を伴って、代替させることができる。したがって、添付の特許請求の範囲、及び後に導入される特許請求の範囲が、すべてのそのような変更、置換、追加、及びこれらのサブの組合せを、全体として、本明細書のもっとも広い解釈に一貫するものとして含むものと解釈されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7