IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

特許7548910固体電解質、固体電解質層および固体電解質電池
<>
  • 特許-固体電解質、固体電解質層および固体電解質電池 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】固体電解質、固体電解質層および固体電解質電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240903BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240903BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240903BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240903BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01B1/06 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021537679
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028153
(87)【国際公開番号】W WO2021024783
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2019145664
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 長
(72)【発明者】
【氏名】上野 哲也
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/135321(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 4/62
H01M 4/13
H01B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物からなる、固体電解質。
2+a1-b+α・・・(1)
(式(1)中において、AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。GはMg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。aはGが価数6価の元素である場合-2bであり、Gが価数5価の元素である場合-bであり、Gが4価の元素である場合またはGを含まない場合0であり、Gが3価の元素である場合bであり、Gが2価の元素である場合2bであり、Gが1価の元素である場合3bである。0≦b≦0.5、-0.3≦α≦0.3、5.0<d<6.0である。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物において、5.3≦d≦5.95である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物において、Gが1価の元素である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物において、Gが2価の元素である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物において、Gが3価の元素である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記式(1)で表される化合物において、Gが4価の元素である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物において、Gが5価の元素である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物において、Gが6価の元素である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記式(1)で表される化合物において、XがFである、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項10】
前記式(1)で表される化合物において、XがClである、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項11】
前記式(1)で表される化合物において、XがBrである、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項12】
前記式(1)で表される化合物において、XがIである、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項13】
前記式(1)で表される化合物において、AがLiであり、EがZrであり、GがAlであり、XがClである、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
【請求項14】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、請求項1または請求項2に記載の固体電解質。
LiZrCld-e・・・(2)
(式(2)中において、5.3≦d<6.0、0<d-e<6.0、0<e<6.0である。)
【請求項15】
O(AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。)と、
AX(AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)と、
EO(EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。)と、
EX(EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)と、
GO(GはMg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。nはGが1価の元素である場合0.5であり、Gが2価の元素である場合1であり、Gが3価の元素である場合1.5であり、Gが4価の元素である場合2であり、Gが5価の元素である場合2.5であり、Gが6価の元素である場合3である。)とからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を、0.05~1.0質量%含む、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の固体電解質を含む固体電解質層。
【請求項17】
固体電解質層と、正極と、負極と、を備え、
前記固体電解質層と前記正極と前記負極から選択される少なくとも1つが請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の固体電解質を含む固体電解質電池。
【請求項18】
固体電解質層と正極と負極とを備え、前記固体電解質層が請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の固体電解質を含む固体電解質電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、固体電解質層および固体電解質電池に関する。
本願は、2019年8月7日に、日本に出願された特願2019-145664号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス技術の発達はめざましく、携帯電子機器の小型軽量化、薄型化、多機能化が図られている。それに伴って、電子機器の電源となる電池に対して、小型軽量化、薄型化、信頼性の向上が強く望まれている。このため、電解質として固体電解質を用いる固体電解質電池が注目されている。固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、錯体水素化物系固体電解質(LiBHなど)などが知られている。
【0003】
特許文献1には、Li元素を含む正極活物質を含有する正極層および正極集電体を備えた正極と、負極活物質を含有する負極層および負極集電体を備えた負極と、前記正極層および前記負極層の間に挟持され、下記一般式で表される化合物からなる固体電解質と、を有する固体電解質二次電池が開示されている。
Li3-2XIn1-YM´6-ZL´
(式中、MおよびM´は金属元素であり、LおよびL´はハロゲン元素である。また、X、YおよびZは独立に0≦X<1.5、0≦Y<1、0≦Z≦6を満たす。)
【0004】
特許文献2には、下記の組成式(1)により表される、固体電解質材料が開示されている。
Li6-3Z・・・式(1)
ここで、0<Z<2、を満たし、Xは、ClまたはBrである。
また、特許文献2には、負極と正極のうちの少なくとも1つは、前記固体電解質材料を含む電池が記載されている。
【0005】
特許文献3には、活物質と、前記活物質に接触し、前記活物質のアニオン成分とは異なるアニオン成分を有し、単相の電子-イオン混合伝導体である第一固体電解質材料と、前記第一固体電解質材料に接触し、前記第一固体電解質材料と同じアニオン成分を有し、電子伝導性を有しないイオン伝導体である第二固体電解質材料と、を有する電極活物質層を備える固体電解質電池が開示されている。また、特許文献3には、第一固体電解質材料がLiZrSであり、前記第一固体電解質材料が、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=34.2°±0.5°の位置にLiZrSのピークを有し、前記2θ=34.2°±0.5°におけるLiZrSのピークの回折強度をIとし、2θ=31.4°±0.5°におけるZrOのピークの回折強度をIとした場合に、I/Iの値が0.1以下であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-244734号公報
【文献】国際公開第2018/025582号
【文献】特開2013-257992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の固体電解質電池では、固体電解質層に用いられる固体電解質のイオン伝導度が不十分であった。このため、従来の固体電解質電池では、十分な放電容量が得られなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、イオン伝導度の高い固体電解質を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記固体電解質を有する固体電解質層、およびそれを備える放電容量の大きい固体電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。
その結果、固体電解質として、アルカリ金属と、特定の金属元素と、周期表第17族の元素と、から構成される化合物を用いればよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わる。
【0009】
[1]下記式(1)で表される化合物からなる、固体電解質。
2+a1-b+α・・・(1)
(式(1)中において、AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。GはMg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。aはGが価数6価の元素である場合-2bであり、Gが価数5価の元素である場合-bであり、Gが4価の元素である場合またはGを含まない場合0であり、Gが3価の元素である場合bであり、Gが2価の元素である場合2bであり、Gが1価の元素である場合3bである。0≦b≦0.5、-0.3≦α≦0.3、5.0<d<6.0である。)
【0010】
[2]前記式(1)で表される化合物において、5.3≦d≦5.95である、[1]に記載の固体電解質。
【0011】
[3]前記式(1)で表される化合物において、Gが1価の元素である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
[4]前記式(1)で表される化合物において、Gが2価の元素である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
[5]前記式(1)で表される化合物において、Gが3価の元素である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
【0012】
[6]前記式(1)で表される化合物において、Gが4価の元素である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
[7]前記式(1)で表される化合物において、Gが5価の元素である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
[8]前記式(1)で表される化合物において、Gが6価の元素である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
【0013】
[9]前記式(1)で表される化合物において、XがFである、[1]~[8]のいずれかに記載の固体電解質。
[10]前記式(1)で表される化合物において、XがClである、[1]~[8]のいずれかに記載の固体電解質。
[11]前記式(1)で表される化合物において、XがBrである、[1]~[8]のいずれかに記載の固体電解質。
[12]前記式(1)で表される化合物において、XがIである、[1]~[8]のいずれかに記載の固体電解質。
【0014】
[13]前記式(1)で表される化合物において、AがLiであり、EがZrであり、GがYであり、XがClである、[1]または[2]に記載の固体電解質。
【0015】
[14]前記式(1)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、[1]または[2]に記載の固体電解質。
LiZrCld-e・・・(2)
(式(2)中において、5.3≦d<6.0、0<d-e<6.0、0<e<6.0である。)
【0016】
[15]AO(AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。)と、
AX(AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)と、
EO(EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。)と、
EX(EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)と、
GO(GはMg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。nはGが1価の元素である場合0.5であり、Gが2価の元素である場合1であり、Gが3価の元素である場合1.5であり、Gが4価の元素である場合2であり、Gが5価の元素である場合2.5であり、Gが6価の元素である場合3である。)とからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を、0.05~1.0質量%含む、[1]~[14]のいずれかに記載の固体電解質。
【0017】
[16][1]~[15]のいずれかに記載の固体電解質を含む固体電解質層。
[17]固体電解質層と、正極と、負極と、を備え、
前記固体電解質層と前記正極と前記負極から選択される少なくとも1つが[1]~[15]のいずれかに記載の固体電解質を含む固体電解質電池。
[18]固体電解質層と正極と負極とを備え、前記固体電解質層が[1]~[15]のいずれかに記載の固体電解質を含む固体電解質電池。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、イオン伝導度の高い固体電解質を提供できる。また、本発明の固体電解質層は、イオン伝導度の高い本発明の固体電解質を含む。このため、本発明の固体電解質層を備える固体電解質電池は、内部抵抗が小さく放電容量の大きいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態にかかる固体電解質電池の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の固体電解質、固体電解質層および固体電解質電池について、詳細に説明する。
[固体電解質]
本実施形態の固体電解質は、アルカリ金属と、Zr、Hf、Ti、Sn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Al、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wから選択される少なくとも1種の金属元素と、周期表第17族の元素と、から構成される化合物からなる。
【0021】
本実施形態の固体電解質は、上記化合物からなる粉末(粒子)の状態であってもよいし、上記化合物からなる粉末を焼結した焼結体の状態とされていてもよい。また、本実施形態の固体電解質は、粉末を圧縮して成形した成形体、粉末とバインダーとの混合物を成形した成形体、粉末とバインダーと溶媒とを含む塗料を塗布した後、加熱して溶媒を除去することにより形成した塗膜の状態とされていてもよい。
【0022】
本実施形態の固体電解質は、下記式(1)で表される化合物からなる。
2+a1-b+α・・・(1)
(式(1)中において、AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。GはMg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。aはGが価数6価の元素である場合-2bであり、Gが価数5価の元素である場合-bであり、Gが4価の元素である場合またはGを含まない場合0であり、Gが3価の元素である場合bであり、Gが2価の元素である場合2bであり、Gが1価の元素である場合3bである。0≦b≦0.5、-0.3≦α≦0.3、5.0<d<6.0である。)
【0023】
式(1)で表される化合物において、AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。Aは、Liであることが好ましい。
【0024】
式(1)で表される化合物において、aはGが価数6価の元素である場合-2bであり、Gが価数5価の元素である場合-bであり、Gが4価の元素である場合またはGを含まない場合0であり、Gが3価の元素である場合bであり、Gが2価の元素である場合2bであり、Gが1価の元素である場合3bである。式(1)で表される化合物においては、aがGの価数によって決定される上記の数値であるので、Aの含有量が適正となり、イオン伝導度の高い固体電解質となる。
【0025】
式(1)で表される化合物において、Eは、Zr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。Eは、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、Zrおよび/またはHfを含むことが好ましく、特にZrであることが好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物において、Gは、Mg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。
【0027】
式(1)で表される化合物において、Gは上記のうち、Cs、Ag、Auから選ばれる1価の元素であってもよい。
式(1)で表される化合物において、Gは上記のうち、Mg、Ca、Ba、Cu、Sn、Pb、Srから選ばれる2価の元素であってもよい。
【0028】
式(1)で表される化合物において、Gは上記のうち、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、In、Sbから選ばれる3価であってもよい。Gが3価である場合、Gはイオン伝導度の高い固体電解質となるため、Yであることが好ましい。
【0029】
式(1)で表される化合物において、Gは上記のうち、4価の元素であるSnであってもよい。
式(1)で表される化合物において、Gは上記のうち、Nb、Taから選ばれる5価の元素であってもよい。
式(1)で表される化合物において、Gは、上記のうち、6価の元素であるWであってもよい。Gが6価である場合、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、Wであることが好ましい。
【0030】
式(1)で表される化合物において、0≦b≦0.5であり、Gは含まれていなくてもよいが、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、Gが含まれていることが好ましく、0.02≦bであることがより好ましい。式(1)で表される化合物にGが含まれている場合、bはGの含有量が多すぎることがなく、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、b≦0.5とする。式(1)で表される化合物において、b≦0.3であることが好ましく、b≦0.2であることがより好ましい。
【0031】
式(1)で表される化合物において、XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。Xとしては、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、Brおよび/またはIを含むことが好ましく、特にIを含むことが好ましい。XがFを含む場合、Xはイオン伝導度の高い固体電解質となるため、Fと、Cl、Br、Iからなる群から選択される2種以上とを含むことが好ましい。
【0032】
式(1)で表される化合物において、XがFであると、イオン伝導度が十分に高く、かつ耐酸化性に優れる固体電解質となるため、好ましい。
式(1)で表される化合物において、XがClであると、イオン伝導度が高く、かつ耐酸化性および耐還元性のバランスが良い固体電解質となるため、好ましい。
式(1)で表される化合物において、XがBrであると、イオン伝導度が十分に高く、かつ耐酸化性および耐還元性のバランスが良い固体電解質となるため、好ましい。
式(1)で表される化合物において、XがIであると、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、好ましい。
【0033】
式(1)で表される化合物において、Xは必須元素であり、5.0<d<6.0であり、5.3≦d≦5.95であることが好ましく、5.4≦d≦5.9であることがより好ましい。式(1)で表される化合物は、d<6.0であるので、以下に示す理由により、イオン伝導度の高い固体電解質になると推定される。
【0034】
d<6.0である化合物では、Eの一部が価数+3のカチオンになっているものと推定される。より詳細には、Eは、Zr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、Eの価数は通常+4である。しかし、式(1)で表される化合物では、Eの殆どが価数+4のカチオンであるものの、一部が価数+3のカチオンであると考えられ、価数+4のカチオンと価数+3のカチオンとが共存した状態になっていると推定される。そして、価数+4のカチオンであるべきEの一部が価数+3のカチオンとなっていることによって、Eのプラス電荷が少なくなっている。その結果、少なくなったEのプラス電荷に相当するXが無くなり、d<6.0となっている。このことにより、式(1)で表される化合物では、無くなったXの位置が原子の無い空孔となり、Aのカチオン(Li、K、Na)が動きやすく、イオン伝導度の高いものになると推定される。
【0035】
5.0<dであると、少なくとも一部のEは価数+4となっている。その結果、式(1)で表される化合物は、Eの全てが価数+4のカチオンである場合の構造が保たれている。よって、価数+3と価数+4のEが共存しており、無くなったXの位置が原子の無い空孔となり、Aのカチオン(Li、K、Na)が動きやすく、イオン伝導度の高いものになると推定される。
【0036】
式(1)で表される化合物においては、Aに対するEの割合が適正な範囲内となることによってイオン伝導度の高い固体電解質となるため、-0.3≦α≦0.3であり、-0.2≦α≦0.2であることが好ましく、-0.1≦α≦0.1であることがより好ましい。
【0037】
式(1)で表される化合物においては、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、AがLiであり、EがZrであり、GがYであり、XがCl、またはClおよびIである化合物であることが好ましい。
【0038】
式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
LiZrCld-e・・・(2)
(式(2)中において、5.3≦d<6.0、0<d-e<6.0、0<e<6.0である。)
【0039】
式(2)で表される化合物は、イオン伝導度の高い固体電解質となるため、好ましい。
式(2)で表される化合物は、ClおよびIを必須元素として含む。式(2)で表される化合物において、dは5.3≦d<6.0であり、5.4≦d≦5.9であることがより好ましい。dが5.3以上であると、電荷中性の法則より、Zrの30%以上が価数+4のカチオン(Zr4+)となり、価数+3のカチオン(Zr3+)がZrの70%未満となる。したがって、Zr4+であるべきZrの一部がZr3+となっている。このことによって、Zrのプラス電荷が少なくなっている。また、Zrの30%以上がZr4+であるので、式(2)で表される化合物はZrの全てがZr4+であるときの構造を有する。その結果、少なくなったZrのプラス電荷の分だけ、ClおよびIが無くなる。そして、無くなったClおよびIの位置が原子の無い空孔となり、Aのカチオン(Li、K、Na)が動きやすく、イオン伝導度の高いものになると推定される。
【0040】
式(2)で表される化合物では、d<6.0であるので、電荷中性の法則より、Zrの殆どがZr4+であるものの、一部がZr3+となっていることによって、Zr4+とZr3+とが共存した状態になっていると推定される。そして、Zr4+であるべきZrの一部がZr3+となっていることにより、Zrのプラス電荷が少なくなっている。その結果、少なくなったZrのプラス電荷の分だけ、ClおよびIが無くなり、d<6.0となる。このことにより、式(2)で表される化合物では、無くなったClおよびIの位置が原子の無い空孔となり、Aのカチオン(Li、K、Na)が動きやすく、イオン伝導度の高いものになると推定される。
【0041】
式(2)で表される化合物は、ClとともにIを含む。式(2)で表される化合物では、Iの原子数がClの原子数未満であるため、よりイオン伝導度の高い固体電解質となる。
【0042】
式(1)で表される化合物においては、Xのイオン半径とEの価数当たりのイオン半径との比が、7.0~15.0であるものが好ましく、8.0~13.0であるものがより好ましい。Eの価数当たりのイオン半径とは、Eのイオン半径を価数で割った値である。Xのイオン半径とEの価数当たりのイオン半径との比が7.0以上であると、式(1)におけるAのイオンが移動しやすく、イオン伝導度の高い固体電解質が得られる。Xのイオン半径とEの価数当たりのイオン半径との比が15.0以下であると、熱安定性が向上するため好ましい。
【0043】
本実施形態の固体電解質は、上記化合物とともに、AO(AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。)と、AX(AはLi、K、Naからなる群から選択される一つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)と、EO(EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。)と、EX(EはZr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)と、GO(GはMg、Ca、Sr、Cs、Ba、Y、Al、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Ag、Au、Pb、Bi、In、Sn、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。nはGが1価の元素である場合0.5であり、Gが2価の元素である場合1であり、Gが3価の元素である場合1.5であり、Gが4価の元素である場合2であり、Gが5価の元素である場合2.5であり、Gが6価の元素である場合3である。)とからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を、0.05~1.0質量%含む、ことが好ましい。
【0044】
上記化合物とともに、上記AO、AX、EO、EX、GOからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を、0.05~1.0質量%含む固体電解質は、より一層高いイオン伝導度を有する。その理由は、詳細は不明であるが、次のように考えられる。
このような固体電解質において、AO、AX、EO、EX、GOは、上記化合物からなる粒子間におけるイオン的な接続を助ける機能を有する。このことにより、上記化合物からなる粒子間における粒界抵抗が小さくなり、固体電解質全体として高いイオン伝導度が得られるものと推定される。
【0045】
固体電解質中に含まれるAO、AX、EO、EX、GOからなる群から選択される少なくとも一つの化合物の含有量が0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であると、AO、AX、EO、EX、GOを含むことによる上記化合物からなる粒子間の粒界抵抗を小さくする効果が顕著となる。また、AO、AX、EO、EX、GOからなる群から選択される少なくとも一つの化合物の含有量が1.0質量%以下であると、AO、AX、EO、EX、GOが多すぎるために固体電解質を含む固体電解質層が硬くなって、上記化合物からなる粒子間にイオン的な接続を助ける良好な界面が形成されにくくなることがない。
【0046】
(固体電解質の製造方法)
本実施形態の固体電解質が粉末状態である場合、例えば、所定のモル比で所定の元素を含む原材料を混合し、反応させる方法により製造できる。
本実施形態の固体電解質が粉体である場合、例えば、メカノケミカル法により製造できる。メカノケミカル反応を起こすために、例えば、遊星型ボールミル装置を用いる。遊星型ボールミル装置は、密閉容器にメディア(粉砕またはメカノケミカル反応を促進するためのボール)と材料を投入し、自転および公転を行い、材料に運動エネルギーを加えて、粉砕またはメカノケミカル反応を起こす装置である。一般的に、遊星型ボールミル装置は、冷却装置または加熱機構を付属していない。しかし、運動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、密閉容器(ひいては密閉容器内の材料)が加熱される場合がある。そのため、材料が加熱されないように、冷却装置が付属している遊星型ボールミル装置もある。また、メカノケミカル反応を促進できるように、密閉容器(ひいては密閉容器内の材料)を加熱する加熱機構を有する遊星型ボールミル装置もある。
【0047】
遊星型ボールミル装置では、材料の反応する場所が密閉容器内であるので、投入した材料は基本的に逃げる場所がない(反応により気体が発生する場合は、その気体が密閉容器外に逃げる可能性はある)。また、遊星型ボールミル装置を用いて材料を反応させる場合、反応中の材料が高温になりにくいので、相分離が起こりにくい(加熱する場合はその限りではない)。これに対して、例えば、焼成プロセスにより材料を反応させる場合、高温で化学反応させた後、常温に戻るときに相分離が発生し、狙った化合物が得られない場合がある。
【0048】
遊星型ボールミル装置では、密閉容器として、例えばジルコニア製のものを使用する。
この密閉容器に、所定の割合で所定の原材料を含む原料と、ジルコニア製のボールとを投入する。原材料が水分で加水分解するおそれがある場合、例えばアルゴンガスを循環している露点-99℃、酸素濃度1ppmのグローブボックス内で原料を取り扱う。原材料は、粉末であってもよいし、液体であっても良い。例えば、塩化チタン(TiCl)および塩化すず(SnCl)は、常温で液体である。原材料を密閉容器に投入した後は、ジルコニア製の蓋をネジで閉めて密閉する。その後、所定の自転速度および公転速度で所定時間運転する。この方法により、メカノケミカル反応が発生し、所定の組成を有する化合物からなる粉体状の固体電解質が得られる。
【0049】
このようにして得られた粉体状の固体電解質は、例えば、ホットプレス法を用いて圧縮して成形体としてもよいし、熱間静水圧焼結技術(HIP)を用いて焼結した焼結体の状態としてもよい。
また、上記の粉末状の固体電解質とバインダーと溶媒とを混合して塗料を作製し、これをフィルムなどに塗布した後、溶媒を除去し、必要に応じてプレスすることにより、塗膜の状態としてもよい。
【0050】
また、本実施形態の固体電解質が焼結体の状態である場合、例えば、以下に示す方法により製造できる。まず、所定の割合で所定の原材料を混合する。次いで、混合した原材料を所定の形状に成形し、真空中または不活性ガス雰囲気中で焼結する。原材料中に含まれるハロゲン化物原料は、温度を上げると蒸発しやすい。このため、焼結する際の雰囲気中にハロゲンガスを共存させて、ハロゲンを補ってもよい。また、密閉性の高い型を用いてホットプレス法により焼結しても良い。この場合、型の密閉性が高いため、焼結によるハロゲン化物原料の蒸発を抑制できる。このようにして焼結することにより、所定の組成を有する化合物からなる焼結体の状態の固体電解質が得られる。
【0051】
本実施形態の固体電解質は、アルカリ金属と、上記の特定の金属元素と、周期表第17族の元素と、から構成される化合物からなる。このため、本実施形態の固体電解質は、高いイオン伝導度を有する。
【0052】
また、本実施形態の固体電解質における化合物は、式(1)で表される化合物であるので、高いイオン伝導度を有するものとなる。その理由は、詳細は不明であるが、次のように考えられる。
式(1)で表される化合物において、Eは、Zr、Hf、Ti、Snからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。Zr4+(6配位)、Hf4+(6配位)、Ti4+(6配位)、Sn4+(6配位)のイオン半径は、それぞれ0.72Å、0.71Å、0.605Åおよび0.690Åである。各元素におけるイオン半径を価数で割った値は、例えばZr4+の場合0.72Å÷4=0.18Åとなり、Hf4+では0.18Åとなり、Ti4+では0.15Åとなり、Sn4+では0.17Åとなる。この値を「価数当たりのイオン半径」と呼ぶことにする。また、式(1)で表される化合物において、XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上である。XとなるF、Cl、Br、Iのイオン半径はそれぞれ、1.33Å、1.81Å、1.96Å、2.20Åである。
【0053】
したがって、例えば、Clのイオン半径と、式(1)におけるEの価数当たりのイオン半径との比は、ClとZr4+の場合1.81÷0.18=10.1となる。同様にClとHf4+の場合は10.2、ClとTi4+の場合は12.0、ClとSn4+の場合は10.5となる。このように、Clのイオン半径と、Eの4価のカチオン(Zr4+、Hf4+、Ti4+、Sn4+)の価数当たりのイオン半径との比は、十分に大きいものである。
このため、式(1)で表される化合物は、Clと式(1)におけるEの4価のカチオン(Zr4+、Hf4+、Ti4+、Sn4+)との間の自由空間が大きく、化合物中の原子間の隙間をLiが移動(伝導)しやすい。その結果、式(1)で表される化合物は、高いイオン伝導度を有するものと推定される。
【0054】
これに対し、例えば、特許文献2には、組成式Li6-3Z(ここで、0<Z<2、を満たし、Xは、ClまたはBrである。)により表される固体電解質材料が記載されている。特許文献2に記載されている固体電解質材料の構成元素であるY3+のイオン半径(6配位)は、0.9Åである。したがって、Clのイオン半径と、Y3+の価数当たりのイオン半径との比は6.0となる。この値は、Clのイオン半径と、Eの4価のカチオン(Zr4+、Hf4+、Ti4+、Sn4+)の価数当たりのイオン半径との比よりも小さい。
この差異により、式(1)で表される化合物では、特許文献2に記載されている固体電解質材料よりも、Liが移動しやすく、高いイオン伝導度が得られるものと推定される。
【0055】
また、式(1)で表される化合物は、周期表第17族の元素を含む少なくとも一部が結晶質のものであるため、CuKα線を用いてX線回折測定を行った際に回折ピークが確認される。式(1)で表される化合物と、特許文献2に記載されている固体電解質材料とでは、CuKα線を用いたX線回折測定における2θのピーク位置が、上述したイオン半径比の差によって異なるものと推定される。
【0056】
[固体電解質電池]
図1は、本実施形態にかかる固体電解質電池の断面模式図である。
図1に示す固体電解質電池10は、正極1と負極2と固体電解質層3とを備える。
固体電解質層3は、正極1と負極2とに挟まれている。固体電解質層3は、上述した固体電解質を含む。
正極1および負極2には、外部端子(不図示)が接続されており、外部と電気的に接続されている。
【0057】
固体電解質電池10は、正極1と負極2の間での固体電解質層3を介したイオンの授受により充電又は放電する。固体電解質電池10は、正極1と負極2と固体電解質層3が積層された積層体であってもよいし、積層体を巻回した巻回体であってもよい。固体電解質電池は、例えば、ラミネート電池、角型電池、円筒型電池、コイン型電池、ボタン型電池等に用いられる。
【0058】
「正極および負極」
図1に示すように、正極1は、例えば、正極集電体1Aと、正極活物質を含む正極活物質層1Bとを有する。負極2は、例えば、負極集電体2Aと、負極活物質を含む負極活物質層2Bとを有する。
【0059】
(正極)
図1に示すように、正極1は、板状(箔状)の正極集電体1A上に、正極合剤層1Bが設けられたものである。
(正極集電体)
正極集電体1Aは、充電時の酸化に耐え腐食しにくい電子伝導性の材料であれば良く、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、チタンなどの金属、または、伝導性樹脂を用いることができる。正極集電体1Aは、粉体、箔、パンチング、エクスパンドの各形態であっても良い。
(正極合剤層)
正極合剤層1Bは、正極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、バインダーおよび導電助剤を含む。
【0060】
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出、挿入・脱離(インターカレーション・デインターカレーション)を可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている正極活物質を使用できる。正極活物質としては、例えば、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有金属リン酸化物などが挙げられる。
リチウム含有金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMn(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiVOPO、Li(PO)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Feから選択される少なくとも1種を示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)などが挙げられる。
【0061】
また、リチウムを含有していない正極活物質も使用できる。このような正極活物質としては、リチウム非含有金属酸化物(MnO、Vなど)、リチウム非含有金属硫化物(MoSなど)、リチウム非含有フッ化物(FeF、VFなど)などが挙げられる。
これらのリチウムを含有していない正極活物質を用いる場合、あらかじめ負極にリチウムイオンをドープしておく、またはリチウムイオンを含有する負極を用いればよい。
【0062】
(バインダー)
正極合剤層1Bを構成する正極活物質と固体電解質と導電助剤とを相互に結合するとともに、正極合剤層1Bと正極集電体1Aとを接着するために、正極合剤層1Bにはバインダーが含まれていることが好ましい。バインダーに要求される特性としては、耐酸化性があること、接着性が良いことが挙げられる。
【0063】
正極合剤層1Bに用いられるバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはそのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリル酸(PA)及びその共重合体、ポリアクリル酸(PA)及びその共重合体の金属イオン架橋体、無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)、無水マレイン酸をグラフト化したポリエチレン(PE)、または、これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、バインダーとしては、特にPVDFを用いることが好ましい。
【0064】
正極合剤層1Bにおける固体電解質の含有率は、特に限定されないが、正極活物質、固体電解質、導電助剤及びバインダーの質量の総和を基準にして、1体積%~50体積%であることが好ましく、5体積%~30体積%であることがより好ましい。
【0065】
正極合剤層1Bにおけるバインダーの含有率は、特に限定されないが、正極活物質、固体電解質、導電助剤及びバインダーの質量の総和を基準にして、1質量%~15質量%であることが好ましく、3質量%~5質量%であることがより好ましい。バインダー量が少な過ぎると、十分な接着強度の正極1を形成できなくなる傾向がある。逆にバインダー量が多過ぎると、一般的なバインダーは電気化学的に不活性なので放電容量に寄与せず、十分な体積または質量エネルギー密度を得ることが困難となる傾向がある。
【0066】
(導電助剤)
導電助剤は、正極合剤層1Bの電子伝導性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、鉄、アモルファス金属などの金属、ITOなどの伝導性酸化物、またはこれらの混合物が挙げられる。
前記導電助剤は、粉体、繊維の各形態であっても良い。
【0067】
正極合剤層1Bにおける導電助剤の含有率は、特に限定されないが、導電助剤を添加する場合には通常、正極活物質、固体電解質、導電助剤及びバインダーの質量の総和を基準にして、0.5質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%とすることがより好ましい。
【0068】
(負極)
図1に示すように、負極2は、負極集電体2A上に、負極合剤層2Bが設けられたものである。
(負極集電体)
負極集電体2Aは、伝導性であれば良く、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄などの金属、または、伝導性樹脂箔を用いることができる。負極集電体2Aは、粉体、箔、パンチング、エクスパンドの各形態であっても良い。
(負極合剤層)
負極合剤層2Bは、負極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、バインダーおよび導電助剤を含む。
【0069】
(負極活物質)
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの挿入及び脱離を可逆的に進行させることができれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている負極活物質を使用することができる。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンファイバー(MCF)、コークス類、ガラス状炭素、有機化合物焼成体などの炭素材料、Si、SiO、Sn、アルミニウムなどのリチウムと化合できる金属、これらの合金、これら金属と炭素材料との複合材料、チタン酸リチウム(LiTi12)、SnOなどの酸化物、金属リチウムなどが挙げられる。
【0070】
(バインダー)
負極合剤層2Bを構成する負極活物質と固体電解質と導電助剤とを相互に結合するとともに、負極合剤層2Bと負極集電体2Aとを接着するために、負極合剤層2Bには、バインダーが含まれていることが好ましい。バインダーに要求される特性としては、耐還元性があること、接着性が良いことが挙げられる。
負極合剤層2Bに用いられるバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはそのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PA)及び共重合体、ポリアクリル酸(PA)及び共重合体の金属イオン架橋体、無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)、無水マレイン酸をグラフト化したポリエチレン(PE)、またはこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でもバインダーとしては、SBR、CMC、PVDFから選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0071】
負極合剤層2Bにおける固体電解質の含有率は、特に限定されないが、負極活物質、固体電解質、導電助剤およびバインダーの質量の総和を基準にして、1体積%~50体積%であることが好ましく、5体積%~30体積%であることがより好ましい。
【0072】
負極合剤層2Bにおけるバインダーの含有率は、特に限定されないが、負極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の総和を基準にして、1質量%~15質量%であることが好ましく、1.5質量%~10質量%であることがより好ましい。バインダー量が少な過ぎると、十分な接着強度を有する負極2を形成できなくなる傾向がある。逆にバインダー量が多過ぎると、バインダーは一般には電気化学的に不活性なので放電容量に寄与せず、十分な体積または質量エネルギー密度を得ることが困難となる傾向がある。
【0073】
(導電助剤)
負極合剤層2Bに含まれてもよい導電助剤としては、炭素材料など、正極合剤層1Bに含まれてもよい上述した導電助剤と同様のものを用いることができる。
【0074】
負極合剤層2Bにおける導電助剤の含有率は、特に限定されないが、導電助剤を添加する場合には通常、負極活物質に対して0.5質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~12質量%とすることがより好ましい。
【0075】
(外装体)
本実施形態の固体電解質電池10では、正極1と固体電解質層3と負極2とからなる電池要素は、外装体に収納され、密封されている。外装体は、外部から内部への水分などの侵入を抑止できるものであればよく、特に限定されない。
例えば、外装体として、金属箔の両面を高分子フィルムでコーティングしてなる金属ラミネートフィルムを、袋状に形成したものを用いることができる。このような外装体は、開口部をヒートシールすることにより密閉される。
金属ラミネートフィルムを形成している金属箔としては、例えばアルミニウム箔、ステンレス箔などを用いることができる。外装体の外側に配置される高分子フィルムとしては、融点の高い高分子を用いることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドなどを用いることが好ましい。外装体の内側に配置される高分子フィルムとしては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などを用いることが好ましい。
【0076】
(外部端子)
電池要素の正極1には正極端子が電気的に接続され、負極2には、負極端子が電気的に接続されている。本実施形態では、正極集電体1Aに正極端子が電気的に接続され、負極集電体2Aに負極端子が電気的に接続されている。正極集電体または負極集電体と、外部端子(正極端子および負極端子)との接続部分は、外装体の内部に配置されている。
外部端子としては、例えば、アルミニウム、ニッケルなどの導電材料で形成されたものを用いることができる。
【0077】
外装体と外部端子との間には、無水マレイン酸をグラフト化したPE(以降、「酸変性PE」という場合がある。)、または無水マレイン酸をグラフト化したPP(以降、「酸変性PP」という場合がある。)からなるフィルムが配置されていることが好ましい。酸変性PEまたは酸変性PPからなるフィルムの配置されている部分が、ヒートシールされていることにより、外装体と外部端子との密着性が良好な固体電解質電池となる。
【0078】
[固体電解質電池の製造方法]
次いで、本実施形態にかかる固体電解質電池の製造方法について説明する。
まず、本実施形態の固体電解質電池10に備えられている固体電解質層3となる上述した固体電解質を準備する。本実施形態では、固体電解質層3の材料として、粉末の状態の固体電解質を用いる。固体電解質層3は、粉末形成法を用いて作製できる。
また、例えば、正極集電体1A上に、正極活物質を含むペーストを塗布し、乾燥させて正極合剤層1Bを形成することにより、正極1を製造する。また、例えば、負極集電体2A上に、負極活物質を含むペーストを塗布し、乾燥させて負極合剤層2Bを形成することにより、負極2を製造する。
【0079】
次いで、例えば、正極1の上に、穴部を有するガイドを設置し、ガイド内に固体電解質を充填する。その後、固体電解質の表面をならし、固体電解質の上に負極2を重ねる。このことにより、正極1と負極2との間に固体電解質が挟まれる。その後、正極1および負極2に圧力を加えることで、固体電解質を加圧成形する。加圧成形されることにより、正極1と固体電解質層3と負極2が、この順に積層された積層体が得られる。
次に、積層体を形成している正極1の正極集電体および負極2の負極集電体に、それぞれ公知の方法により外部端子を溶接し、正極集電体または負極集電体と外部端子とを電気的に接続する。その後、外部端子と接続された積層体を外装体に収納し、外装体の開口部をヒートシールすることにより密封する。
以上の工程により、本実施形態の固体電解質電池10が得られる。
【0080】
上述した固体電解質電池10の製造方法では、粉末の状態の固体電解質を用いる場合を例に挙げて説明したが、固体電解質として、焼結体の状態の固体電解質を用いてもよい。
この場合、焼結体の状態の固体電解質を、正極1と負極2との間に挟んで、加圧成形する方法により、固体電解質層3を有する固体電解質電池10が得られる。
【0081】
本実施形態の固体電解質層3は、イオン伝導度の高い本実施形態の固体電解質を含む。
このため、本実施形態の固体電解質層3を備える本実施形態の固体電解質電池10は、内部抵抗が小さく放電容量の大きいものとなる。
【0082】
なお、本実施形態の固体電解質電池は、正極とセパレータと負極からなる電池素体の空孔に、固体電解質が充填されたものであってもよい。
このような固体電解質電池は、例えば、以下に示す方法により製造できる。まず、粉末の状態の固体電解質と溶剤とを含む固体電解質塗料を作製する。また、正極とセパレータと負極からなる電池素体を作製する。そして、電池素体に固体電解質塗料を含浸させた後、溶剤を除去する。このことにより、電池素体の空孔に固体電解質が充填された固体電解質電池が得られる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述した。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例
【0084】
(実施例1~実施例88)
実施例1~実施例88においては、原材料として用意したZr、Hf、Ti、Snのハロゲン化物(ZrCl、ZrBr、ZrI、ZrF、HfCl、TiCl、SnCl)を、100℃でそれぞれ所定時間熱処理し、ハロゲン化物中のハロゲン量を制御してから使用した。
【0085】
(比較例1~比較例5)
比較例1~比較例5においては、原材料として用意したZrCl及びYClを、熱処理せずにそのまま使用した。
【0086】
(実施例1~実施例83及び比較例1~比較例5)
表1~表4に示すモル比で所定の原材料を含む原料粉末を、遊星型ボールミル装置を用いて、自転回転数500rpm、公転回転数500rpmとし、自転の回転方向と公転の回転方向とを逆方向として、24時間混合して反応させた。このことにより、表5~表10に示す組成を有する化合物からなる粉末状態の実施例1~実施例83及び比較例1~比較例5の固体電解質を製造した。
【0087】
各固体電解質の組成は、各元素をICP(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析)装置(株式会社島津製作所製)を用いて分析する方法により求めた。なお、フッ素を含む固体電解質については、固体電解質中に含まれるフッ素の含有量をイオンクロマトグラフィー装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて分析した。
【0088】
なお、遊星型ボールミル用の密閉容器およびボールとして、ジルコニア製のものを用いた。そのため、製造した化合物中には、密閉容器およびボールに由来するジルコニウムがコンタミネーションとして混入している。密閉容器およびボールに由来するジルコニウムのコンタミネーション量は、ある一定量であることが分かっている。表5~表10には、化合物中のジルコニウム含有量の実測値を記載した。
【0089】
(実施例84~実施例88)
実施例1で作製した固体電解質(LiZrCl5.9)に、添加剤としてLiO、LiCl、ZrO、ZrClおよびCaOをそれぞれ0.1質量%添加して混合したものを、固体電解質とした。
【0090】
表1~表4には、各固体電解質に使用した原材料および原材料配合比(モル比)、各固体電解質の組成を式(1)に当てはめた時の「X」のイオン半径、「X」のイオン半径と「E」の価数当たりのイオン半径との比をそれぞれ示した。
また、表5~表10には、各固体電解質の組成について、上述した式(1)を満たす場合を「〇」満たさない場合を「-」と記載した。さらに、表5~表10には、各固体電解質の組成を式(1)に当てはめた時の「A」「E」「G」「Gの価数」「X」「a」「b」「α」「d」をそれぞれ示した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
【表7】
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
【表10】
【0101】
(イオン伝導度の測定)
実施例1~実施例88及び比較例1~比較例5の固体電解質を、それぞれ加圧成形用ダイスに充填し、圧力373MPaで加圧成形することにより試験体を得た。
より詳細には、直径10mmの樹脂ホルダーと、直径9.99mmの上パンチおよび下パンチとを準備した。上下パンチの材質はダイス鋼(SKD材)である。樹脂ホルダーに下パンチを挿入し、上から実施例1~実施例88及び比較例1~比較例5の固体電解質を110mg投入した。固体電解質の上に上パンチを挿入した。樹脂ホルダーに上下パンチを挿入したものを、ここではセットと呼ぶ。プレス機にセットを載置し、圧力373MPaで成形した。このセットをプレス機から取り出した。
【0102】
直径50mm、厚み5mmのステンレス製円板およびテフロン(登録商標)製円板をそれぞれ2枚ずつ準備した。ステンレス製円板およびテフロン(登録商標)製円板には、ネジ穴が4か所ある。前記セットの上下に前記ステンレス製円板およびテフロン(登録商標)製円板を載置し、4か所のネジ穴にネジを通しネジを締めることで、前記セットを加圧した。
具体的には、ステンレス製円板/テフロン(登録商標)製円板/セット/テフロン(登録商標)製円板/ステンレス製円板の順序で積層したものを、ネジで加締めてイオン伝導度測定用の治具とした。上下パンチの側面にはネジを差し込むネジ穴がある。上下パンチにネジを差し込み、イオン伝導度測定用の端子とした。
【0103】
その後、イオン伝導度測定用の治具のセットに収容された各試験体のイオン伝導度を測定した。イオン伝導度は、電気化学的インピーダンス測定法により、周波数応答アナライザを搭載したポテンシオスタットを用いて測定した。測定は、周波数範囲を7MHz~0.1Hzとし、振幅10mV、温度30℃の条件で行った。その結果を、表5~表10に示す。
【0104】
[固体電解質電池の作製]
以下に示す方法により、実施例1~実施例88及び比較例1~比較例5の固体電解質からなる固体電解質層を備える固体電解質電池をそれぞれ作製した。固体電解質電池の作製は、露点-70℃以下のアルゴン雰囲気としたグローブボックス内で行った。また、以下に示す方法により充放電試験を行い、放電容量を測定した。
まず、コバルト酸リチウム(LiCoO):実施例1~実施例88及び比較例1~比較例5の各固体電解質:カーボンブラック=81:16:3重量部になるように秤量し、めのう乳鉢で混合して、正極合剤とした。次に、黒鉛:実施例1~実施例88及び比較例1~比較例5の各固体電解質:カーボンブラック=67:30:3重量部になるように秤量し、めのう乳鉢で混合して、負極合剤とした。
【0105】
前記樹脂ホルダーに下パンチを挿入し、樹脂ホルダーの上から実施例1~実施例88及び比較例1~比較例5の固体電解質を110mg投入した。固体電解質の上に上パンチを挿入した。このセットをプレス機に載置し、圧力373MPaで成形した。前記セットをプレス機から取り出し、上パンチを取り外した。
樹脂ホルダー内の固体電解質(ペレット状)の上に正極合剤を39mg投入し、その上に上パンチを挿入し、プレス機にセットを静置し、圧力373MPaで成形した。次にセットを取り出し、上下を逆にして下パンチを取り外した。固体電解質(ペレット)の上に負極合剤を20mg投入し、その上に下パンチを挿入し、プレス機にセットを静置し、圧力373MPaで成形した。
このように、樹脂ホルダーの中に、正極と固体電解質と負極とからなる電池要素を作製した。上下パンチの側面のネジ穴には、充放電用の端子としてネジを差し込んだ。
【0106】
前記電池要素を封入する外装体として、アルミニウムラミネート材料を準備した。これは、PET(12)/Al(40)/PP(50)からなるラミネート材料である。PETはポリエチレンテレフタレート、PPはポリプロピレンである。かっこ内は各層の厚み(単位はμm)を表す。このアルミラミネート材料をA4サイズにカットし、PPが内面となるように、長辺の真ん中で折り返した。
【0107】
正極端子として、アルミニウム箔(幅4mm、長さ40mm、厚み100μm)を準備した。また、負極端子として、ニッケル箔(幅4mm、長さ40mm、厚み100μm)とを準備した。これらの外部端子(正極端子および負極端子)にそれぞれ酸変性PPを巻き付け、外装体に熱接着した。これは外部端子と外装体とのシール性を向上させるためである。
【0108】
前記折り返したアルミラミネート材料の対向している2辺のそれぞれ中程に、正極端子および負極端子をアルミラミネート材料で挟むように載置し、ヒートシールした。その後、外装体の中に前記セットを挿入し、上パンチの側面のネジと外装体内の正極端子とをリード線で接続することにより、正極と正極端子とを電気的に接続した。また、下パンチの側面のネジと外装体内の負極端子とをリード線で接続することにより、負極と負極端子とを電気的に接続した。その後、外装体の開口部をヒートシールして固体電解質電池とした。
【0109】
充放電試験は、25℃の恒温槽内にて行った。充放電電流の表記は、以降C(シー)レート表記を使う。nC(mA)は、公称容量(mAh)を1/n(h)で充放電できる電流である。例えば、公称容量70mAhの電池の場合、0.05Cの電流は3.5mA(計算式70×0.05=3.5)である。同様に、0.2Cの電流は14mA、2Cの電流は140mAである。充電は0.2Cで4.2Vまで定電流定電圧(CCCVと言う)で行った。充電終了は、電流が1/20Cになるまで行った。放電は、0.2Cで3.0Vまで放電した。その結果を、表5~表10に示す。
【0110】
表5~表10に示すように、実施例1~実施例88の固体電解質は、比較例1~比較例5と比較して、いずれも十分にイオン伝導度の高いものであった。また、実施例1~実施例88の固体電解質からなる固体電解質層を有する固体電解質電池は、比較例1~比較例5と比較して、いずれも十分に放電容量の大きいものであった。
【符号の説明】
【0111】
1…正極、1A…正極集電体、1B…正極合剤層、2…負極、2A…負極集電体、2B…負極合剤層、3…固体電解質層、10…固体電解質電池。
図1