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▶ ナノモザイク インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ナノセンサーおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240903BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240903BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20240903BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N33/53 D
G01N33/53 V
G01N33/53 M
G01N33/53 W
G01N21/41 101
G01N21/27 A
【請求項の数】 59
(21)【出願番号】P 2021550089
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2020020204
(87)【国際公開番号】W WO2020176793
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】62/811,041
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/811,559
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/811,579
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/811,543
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521377579
【氏名又は名称】ナノモザイク インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】クアン,チーミン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リッチー,ヨシュア,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボイス,ジョン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521499(JP,A)
【文献】特表2015-523100(JP,A)
【文献】特表2015-514225(JP,A)
【文献】特表2010-526316(JP,A)
【文献】特表2013-521500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357529(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0053794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域および第2の領域を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、
第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、
第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、
(i)該センサーは、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり試料中の分析物の量を定量化し得、(ii)ナノ構造は、平坦な支持体または可撓性の基板の少なくとも1つと一体化される、センサー。
【請求項2】
析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定され、
試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され
請求項1記載のセンサー。
【請求項3】
第1の濃度範囲が、第2の濃度範囲のものよりも低い検出可能な値を有する、請求項1または2記載のセンサー。
【請求項4】
第2の濃度範囲が、第1の濃度範囲のものよりも高い検出可能な値を有する、請求項1~3いずれか記載のセンサー。
【請求項5】
第1の濃度範囲が第2の濃度範囲と重複する、請求項1~4いずれか記載のセンサー。
【請求項6】
目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、該センサーが:
分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、
(i)分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定され、(ii)ナノ構造は、平坦な支持体または可撓性の基板の少なくとも1つと一体化される、センサー。
【請求項7】
第1の領域が:
(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;
(ii)少なくとも10nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;
(iii)200nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または
(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さ
の1つ以上を含む、請求項1~6いずれか記載のセンサー。
【請求項8】
目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、該センサーが:
分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、
ここで試料中の分析物の濃度が、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第1の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され、ここで(a)ナノ構造は、平坦な支持体または可撓性の基板の少なくとも1つと一体化され、
(b)第1の領域が:
(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;
(ii)少なくとも100nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;
(iii)300nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または
(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さ
の1つ以上を含む、センサー。
【請求項9】
第2の領域が、
(i)基準マーカー;または
(ii)ナノ構造製作対照特徴
の1つ以上を含む、請求項1~7いずれか記載のセンサー。
【請求項10】
(i)基準マーカー;または
(ii)ナノ構造製作対照特徴
の1つ以上を含む第2の領域をさらに含む、請求項8記載のセンサー。
【請求項11】
分析物に結合し得、第3の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るさらに異なるナノ構造の第3のシリーズを含む第3の領域をさらに含むセンサーであって、
第1、第2および/または第3の濃度範囲にわたる試料中の分析物の量を定量化し得る、請求項1~5、9および10いずれか一項記載のセンサー。
【請求項12】
任意の第2のシリーズ中のナノ構造が、第1のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含む、請求項1~11いずれか記載のセンサー。
【請求項13】
3のシリーズ中のナノ構造が、任意の第2のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含む、請求項11記載のセンサー。
【請求項14】
第1および任意の第2のナノ構造が、分析物に結合する結合剤により機能化される、請求項1~12いずれか記載のセンサー。
【請求項15】
第3のナノ構造が、分析物に結合する結合剤により機能化される、請求項11または13記載のセンサー。
【請求項16】
結合剤が生物学的結合剤である、請求項14または15記載のセンサー。
【請求項17】
生物学的結合剤が、抗体、アプタマー、受容体、酵素または核酸である、請求項16記載のセンサー。
【請求項18】
第1のシリーズ中の結合剤が、分析物について、任意の第2のシリーズ中の結合剤よりも高い結合親和性を有する、請求項1517いずれか記載のセンサー。
【請求項19】
分析物が生物学的分子である、請求項1~18いずれか記載のセンサー。
【請求項20】
生物学的分子が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖蛋白、グリコペプチド、脂質、リポ蛋白、核酸または核蛋白である、請求項19記載のセンサー。
【請求項21】
少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12桁に及ぶ範囲にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得る、請求項1~20いずれか記載のセンサー。
【請求項22】
少なくとも5、6、7、8または9桁に及ぶ範囲にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得る、請求項21記載のセンサー。
【請求項23】
1pg/mL未満~100ng/mLより高い、0.1pg/mL未満~1μg/mLより高いまたは0.01pg/mL未満~100μg/mLより高い、または1fg/mL未満~1mg/mLより高い範囲の分析物の濃度を測定し得る、請求項21または22記載のセンサー。
【請求項24】
試料が、センサーへの適用前に希釈される必要がない、請求項2122または23記載のセンサー。
【請求項25】
試料が、体液、組織抽出物および/または細胞上清である、請求項1~24いずれか記載のセンサー。
【請求項26】
体液試料が、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液もしくは間質液を含み、および/または組織試料が生検試料を含む、請求項25記載のセンサー。
【請求項27】
分析物の結合が、ナノ構造の少なくとも1つのシリーズの光学的に検出可能な特性の変化により検出される、請求項1~26いずれか記載のセンサー。
【請求項28】
光学的に検出可能な特性が、色、光散乱、屈折または共鳴である、請求項27記載のセンサー。
【請求項29】
ナノ構造の第1のシリーズにおいて、分析物に結合する個々のナノ構造が、分析物の単一の分子または所定の数未満の分析物の分子のいずれかに結合する際に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度が、第1の濃度範囲内に存在する場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される、請求項1~5および1127いずれか一項記載のセンサー。
【請求項30】
試料中の分析物の濃度が、(i)分析物に結合しなかった個々のナノ構造の残りの数または(ii)第1のシリーズにおけるナノ構造の総数のいずれかに対して、分析物に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数のデジタル計数により決定される、請求項6、7または29記載のセンサー。
【請求項31】
分析物の濃度が、第2の濃度範囲または第3の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域および/または第3の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される、請求項1~5および9~30いずれか一項記載のセンサー。
【請求項32】
光学的に検出可能な特性の変化が、分析物の濃度の関数としての、第2のシリーズおよび/または第3のシリーズにより生じる色変化である、請求項8または31記載のセンサー。
【請求項33】
ナノ構造が、平坦な面および/または屈曲した面のナノ構造である、請求項1~32いずれか記載のセンサー。
【請求項34】
ナノ構造が、半導電性材料または金属で製作される、請求項1~33いずれか記載のセンサー。
【請求項35】
半導電性材料がケイ素を含む、請求項34記載のセンサー。
【請求項36】
基準マーカーをさらに含む、請求項1~35いずれか記載のセンサー。
【請求項37】
基準マーカーが、明視野顕微鏡検査および/または暗視野顕微鏡検査により光学的に検出可能である、請求項36記載のセンサー。
【請求項38】
料中の対応する複数の異なる分析物を検出するために複数の異なる結合剤を含む、請求項1~37いずれか記載のセンサー。
【請求項39】
ナノ構造の第1、第2または第3のシリーズの少なくとも1つがアレイを含む、請求項1~38いずれか記載のセンサー。
【請求項40】
ナノ構造の第1、第2および第3のシリーズのそれぞれがアレイを含む、請求項1~39いずれか記載のセンサー。
【請求項41】
第1の濃度範囲および任意の第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度が、分析物の分子に結合した第1のシリーズおよび/または第2のシリーズのそれぞれ中の個々のナノ構造の数から決定される、請求項1、3~7および9~40いずれか一項記載のセンサー。
【請求項42】
第1の濃度範囲および任意の第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度が、第1の領域および/または第2の領域のそれぞれ中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される、請求項1、3~5および8~40いずれか一項記載のセンサー。
【請求項43】
請求項1~42いずれか記載のセンサーを含む少なくとも1つのウェルを画定するハウジングを含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのカートリッジ。
【請求項44】
ハウジングが複数のウェルを画定し、それぞれのウェルが請求項1~42いずれか記載のセンサーを含む、請求項43記載のカートリッジ。
【請求項45】
目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのシステムであって:
(a)請求項1~42いずれか記載のセンサーまたは請求項43もしくは44記載のカートリッジを受容するための受容チャンバ;
(b)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズを照射するための光源;ならびに
(c)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズにおける光学的特性の変化を検出するための検出
含む、システム。
【請求項46】
(d)第1の濃度範囲と任意の第2の濃度範囲の間の中間面を同定するコンピューターアルゴリズムを実行するコンピュータープロセッサをさらに含む、請求項45記載のシステム。
【請求項47】
コンピューターアルゴリズムが、任意の第2の濃度範囲と任意の第3の濃度範囲の間の中間面を同定する、請求項46記載のシステム。
【請求項48】
コンピューターアルゴリズムが、(a)試験される溶液の適用の際に、第1のシリーズ中のナノ構造の数に対して、1つの状態から別のものに変化したナノ構造の数を測定する工程;(b)試験される溶液の適用の際に、ナノ構造の第2のシリーズ中のナノ構造の色空間変化を測定する工程;ならびに(c)第2のシリーズの色空間変化が予め選択された閾値よりも大きい場合に工程(b)において回収されたアナログ測定値を使用して、第2のシリーズの色空間変化が予め選択された閾値よりも小さい場合に工程(a)で回収されたデジタル測定値を使用する工程を含む、請求項46または47記載のシステム。
【請求項49】
(a)試料の一部を、請求項1~42いずれか記載のセンサーに適用する工程;ならびに
(b)ナノ構造の第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズの特性の変化を検出して、それにより試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化する工程
を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法。
【請求項50】
工程(b)において、該特性が光学的特性である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12対数の濃度範囲の分析物を検出し得る、請求項49または50記載の方法。
【請求項52】
少なくとも5、6、7、8または9対数の濃度範囲の分析物を検出し得る、請求項51記載の方法。
【請求項53】
ナノセンサーが、1fg/mL未満~1mg/mLより高い濃度範囲の分析物を検出し得る、請求項4952いずれか記載の方法。
【請求項54】
該試料が、センサーへの適用前に希釈されない、請求項4953いずれか記載の方法。
【請求項55】
該試料が、体液、組織抽出物または細胞上清である、請求項4954いずれか記載の方法。
【請求項56】
試料が同じウェルに配置されるナノ構造の両方のシリーズに同時に適用される場合に、分析物が、ナノ構造の第1のシリーズおよびナノ構造の第2のシリーズの濃度範囲にわたり同時に検出され得る、請求項4955いずれか記載の方法。
【請求項57】
(a)試料の一部を、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに適用する工程、
ここで(i)第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、
(ii)第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含む;
(b)ナノ構造の第1および第2のシリーズから検出可能なシグナルを検出する工程;ならびに
(c)検出可能なシグナルから、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度を決定する工程
を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法であって、ナノ構造が、平坦な支持体または可撓性の基板の少なくとも1つと一体化される、方法
【請求項58】
析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定され、
料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される、
請求項57記載の方法。
【請求項59】
第2のシリーズ中のナノ構造が、第1のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含む、請求項57または58記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2019年2月28日に出願された米国仮出願第62/811,543号、2019年2月28日に出願された米国仮出願第62/811,559号、2019年2月28日に出願された米国仮出願第62/811,579号および2019年2月27日に出願された米国仮出願第62/811,041号の利益およびそれらに対する優先権を主張し、それらの全開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は一般的に、ナノ構造系の分析物検出および/または定量化システムに関し、より具体的には大きなダイナミックレンジにわたり高感度で分析物の定量化を容易にするナノ構造系の分析物検出および/または定量化システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
数年にわたり、分析物の検出および定量化は、多くの疾患または障害の診断および治療、ならびに新規の療法および治療モダリティの開発に重大であった。固体または液体系アッセイ、例えばウエスタンブロット、酵素標識イムノアッセイ(ELISA)、デジタルELISA、マイクロ流体系ELISA技術などのブロッティング系技術および自動ビーズ系アッセイを含む分析物検出および定量化システムの開発において有意な進歩がなされてきた。しかしながら課題が残っている。
【0004】
例えば、特定の分析物は、特定の疾患または障害のバイオマーカーとして働くが、それらの濃度は、被験体の間またはさらには同じ被験体から採取された異なる試料、例えば組織または液体試料の間で大きく異なり得る。さらに、特定の体液中の超低濃度の特定の分析物を測定するための定量化システムの存在は、バイオマーカーを発見および検証する努力を特に妨げた。例えば、ELISAなどの商業的アッセイの定量化範囲は典型的に、100pg/mL以上である。しかしながら、アルツハイマー病において、例えば該疾患について認識されたバイオマーカーであるアミロイドβ(Aβ)タンパク質およびタウタンパク質などの種々のタンパク質は、典型的に血液脳関門のために1pg/mL以下のレベルで(脳脊髄液に対して)末梢血中に存在する。その結果、これらのレベルは、標準的なELISAの検出限界よりも1または2桁低い。デジタルELISAアッセイは、pg/mLより下(sub-pg/mL)のレベルの種々のバイオマーカーの定量化を容易にし得るが、これらのアッセイは典型的に、低濃度測定に対して最適化され、大きなダイナミックレンジは有さない。すなわち、デジタルELISAは典型的に、約3~4桁のダイナミックレンジを表す0.01~0.1pg/mLから10~100pg/mLまでの濃度を測定し得る。
【0005】
同様に、モノクローナル抗体系療法および養子T細胞治療(例えばCAR-T療法)により観察される全身性炎症応答であるサイトカイン放出症候群(CRS)が大きな問題になっている。CRSは、治療を受けている被験体の死をもたらす可能性のある重度の全身性応答までの最小侵襲性支持療法(supportive care)を必要とする中度の反応として現れ得る。これらの治療の間にCRS応答をモニタリングすることは、広範囲のバイオマーカー濃度、小さい試料体積および長いアッセイ時間を考慮して、難題であり得る。現在の分析方法は、これらの必要性に対処できず、CAR-T療法の精度およびその副作用の有効な管理を制限する。新興の試験により、投与養生法を管理し、早期介入のための必要性を同定するために使用され得る予測的バイオマーカー(C反応性タンパク質(CRP)およびフェリチン、ならびに種々のサイトカイン、例えばIFNγ、IL-6およびTNFαを含む)のパネルが同定されている。しかしながら、CRPおよびフェリチンは、10ng/mLから10mg/mLまで(6桁)濃度が異なり得、一方IL-6およびIFNγは、1pg/mLから0.1μg/mLまで(7桁)濃度が異なり得る。漸増的に、これらの分析物は、10桁(10対数)のダイナミックレンジを表す濃度範囲(1pg/mL~10mg/mL)にわたり得る。現在、公知の検出および定量化システムは、迅速な単一試験において異なる分析物を測定するために必要なより低い検出限界および高い多重化能力(multiplexability)を有し、低い、中度または高い等級の応答を区別することができる6桁以上のダイナミックレンジを提供できない。
【0006】
したがって、必要な感度を有し、大きなダイナミックレンジにわたる1つ以上(one of more)の分析物の定量化を容易にする検出および定量化システムについての継続中の必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、大きなダイナミックレンジにわたり高感度で、目的の試料中の分析物の存在を検出しおよび/またはその量を定量化するためのセンサー、1つ以上のかかるセンサーを組み込むカートリッジ、検出システム、ならびにかかるセンサー、カートリッジおよびシステムを使用して、試料中の分析物の量を定量化するための方法を提供する。
【0008】
一局面において、本発明は、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化するためのセンサーを提供する。センサーは第1の領域および第2の領域を含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで該センサーは、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の量を定量化し得る。
【0009】
別の局面において、本発明は、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化するためのセンサーを提供する。センサーは第1の領域および第2の領域を含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲にある場合に、分析物の1つ以上の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで、試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲にある場合に、分析物の濃度の関数として第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化の検出により決定され、ここで該センサーは、第1の濃度範囲と第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の量を定量化し得る。
【0010】
前述の局面のそれぞれにおいて、第1の濃度範囲は、第2の濃度範囲のものより低い検出可能な値を有し、および/または第2の濃度範囲は第1の濃度範囲のものよりも高い検出可能な値を有する。第1の濃度範囲は第2の濃度範囲と重複し得ることが企図される。
【0011】
別の局面において、本発明は、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化するためのセンサーを提供する。該センサーは、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、ここで、分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。
【0012】
前述の局面のそれぞれにおいて、センサーの第1の領域は、(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;(ii)少なくとも10nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;(iii)200nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さの1つ以上を含む。該センサーは任意に、(i)基準マーカーまたは(ii)ナノ構造製作対照特徴の1つ以上をさらに含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーを提供する。該センサーは、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第1の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性の実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される。第1の領域はさらに、(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;(ii)少なくとも100nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;(iii)300nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または(iv)50nm~1,000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さの1つ以上を含む。該センサーは任意に、(i)基準マーカーまたは(ii)ナノ構造製作対照特徴の1つ以上を含む第2の領域をさらに含む。
【0014】
本発明の前述の局面のいずれかのセンサーは、以下の特徴の1つ以上を含み得ることが企図される。例えば、該センサーは、分析物に結合し得、第3の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るさらに異なるナノ構造の第3のシリーズを含む第3の領域をさらに含み得ることが企図され、ここで該センサーは、第1、第2および/または第3の濃度範囲にわたり試料中の分析物の量を定量化し得る。該センサーは、さらなる濃度範囲内の分析物を検出および/または定量化するために適切に作用するナノ構造のさらなるシリーズも含み得ることも企図される。
【0015】
同様に、任意の第2のシリーズにおけるナノ構造は、第1のシリーズにおけるナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含み得る。
【0016】
さらに、センサーが第3のシリーズを含む場合はいつでも、第3のシリーズのナノ構造は、任意の第2のシリーズにおけるナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含み得る。
【0017】
第1のシリーズならびに適用可能な場合は第2および第3のシリーズ(および他のさらなるシリーズ)におけるナノ構造は、分析物に結合する結合剤、例えば分析物に結合する生物学的結合剤により機能化される。生物学的結合剤は、例えば抗体、アプタマー、リガンド-受容体ペアのメンバー、酵素または核酸であり得る。特定の情況下で、分析物に対して、第2の、第3またはその後のシリーズにおける結合剤よりも高い結合親和性を有する第1のシリーズにおける結合剤を使用することが有利であり得る。
【0018】
該センサーは、試料中の任意の目的の分析物を検出および/または定量化するように設計され得る。例えば該分析物は、生物学的分子、例えばタンパク質、ペプチド、炭水化物、糖蛋白、グリコペプチド、脂質、リポ蛋白、核酸または核蛋白であり得る。さらに、所定のセンサーにおけるナノ構造またはナノ構造のシリーズは、同時にまたは連続的に、複数の異なる分析物に結合、それを検出および/または定量化するように構成され得る。例えば、センサーは、センサー上の同じウェル中で同時に、複数の分析物のマルチプレックス分析を容易にするために、試験試料中の対応する複数の異なる分析物を検出するための複数の異なる結合剤を含み得る。
【0019】
前述のセンサーのいずれかは、目的の試料中の分析物を希釈または濃縮する必要性を回避して、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12桁(または3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12対数)に及ぶ濃度範囲(ダイナミックレンジとも称される)にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得ることが理解される。特定の態様において、センサーは、少なくとも5、6、7、8または9桁(または5、6、7、8もしくは9対数)に及ぶ範囲にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得る。センサーは、1pg/mL未満~100ng/mLより大きい、0.1pg/mL未満~1μg/mLより大きい、0.01pg/mL未満~100μg/mLより大きい、1fg/mL未満~0.1mg/mLより大きいまたは0.1fg/mL未満~1mg/mLより大きい範囲の所定の分析物の濃度を測定するように構成され得、ここで例えば、該試料は、センサーへの適用前に希釈される必要はない。
【0020】
センサーは、種々の試料、例えば体液、組織抽出物および/または細胞上清中の分析物を検出し得る。例示的な体液としては、例えば血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液または間質液が挙げられる。
【0021】
センサーは、ナノ構造の少なくとも1つのシリーズの光学的に検出可能な特性(例えば色、光散乱、屈折または共鳴(例えば表面プラスモン共鳴、電気的共鳴、電磁的共鳴および磁気的共鳴))における変化により分析物の結合を検出するように構成され得る。
【0022】
センサーは、種々の異なる方法で構成され得ることが企図される。例えば、ナノ構造の第1、第2または第3のシリーズの少なくとも1つは、アレイを含み得る。代替的に、ナノ構造の第1、第2および第3のシリーズのそれぞれは、アレイを含み得る。センサーは、ナノ構造の単一のシリーズまたはナノ構造の複数のシリーズ、例えば異なる濃度範囲内の分析物を検出するのに適切に作用するナノ構造の複数のシリーズを含み得ることが企図される。センサーがナノ構造の複数のシリーズを含む場合、ナノ構造の異なるシリーズは、(i)同じ様式で(例えば単一のナノ構造が検出および/または定量化されるデジタル検出により、または濃度の関数として所定のシリーズ内のナノ構造の光学的特性の実質的に均一な変化が検出されるアナログ検出により)または(ii)異なる様式で、例えばデジタル検出とアナログ検出の組合せにより作動し得る。さらに、センサーは、デジタル検出および/またはアナログ検出により作動する複数の異なるシリーズを含み得ることが企図される。例えば、センサーは、同じ濃度範囲内でデジタル検出により分析物を検出するように作動する複数のシリーズおよび/または異なる濃度範囲にわたりアナログ検出により分析物を検出するように作動する複数のシリーズを含み得る。
【0023】
例えば、デジタル検出の間に、ナノ構造の第1のシリーズにおいて、分析物に結合する個々のナノ構造は、分析物の単一の分子または分析物の所定の数未満の分子のいずれかへの結合の際に検出され、その際に試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内に存在する場合、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。例えば、試料中の分析物の濃度は、例えば(i)分析物に結合しなかった個々のナノ構造の残りの数または(ii)第1のシリーズにおけるナノ構造の総数のいずれかに対して、分析物に結合した第1のシリーズにおける個々のナノ構造の数のデジタル計数により決定される。
【0024】
同様に、分析物の濃度は、第2の範囲または第3の範囲内にある場合に、例えば(i)分析物に結合しなかった適切なシリーズにおける個々のナノ構造の残りの数または(ii)対応する第2および/または第3のシリーズにおけるナノ構造の総数のいずれかに対して、分析物に結合した第2および/または第3のシリーズにおける個々のナノ構造の数のデジタル計数により決定され得る。すなわち、第1の濃度範囲、第2の濃度範囲および任意の第3(またはそれ以上)の濃度範囲の全てにわたる試料中の分析物の濃度は、分析物の分子に結合した第1のシリーズ、第2のシリーズおよび/または任意の第3(またはそれ以上)のシリーズのそれぞれにおける個々のナノ構造の数から決定される。センサーはまた、所定のアッセイに対して望まれるダイナミックレンジおよび/または感度に応じてナノ構造のさらなるシリーズ(例えば4、5、6個のシリーズ等)をさらに含むことが企図される。
【0025】
代替的または付加的に、分析物の濃度は、第2の濃度範囲または任意の第3の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域および/または第3の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性の実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され得る。例えば、光学的に検出可能な特性の変化は、分析物の濃度の関数として、第2の領域中の第2のシリーズおよび/または第3の領域中の任意の第3のシリーズにより生じる色変化であり得る。すなわち、第2の濃度範囲および任意の第3(またはそれ以上)の濃度範囲(1つまたは複数)の両方にわたる試料中の分析物の濃度は、第2の領域および/または第3の領域のそれぞれにおけるナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される。センサーはまた、所定のアッセイに対して所望されるダイナミックレンジおよび/または感度に応じてナノ構造のさらなるシリーズ(例えば4、5、6個のシリーズ等)をさらに含むことが企図される。
【0026】
所定のシリーズにおけるナノ構造は、平坦な面および/または湾曲した面のナノ構造であり得ることが企図される。ナノ構造は、平坦な支持体および/または可撓性の基板上に配置され得、ここでナノ構造は、平坦な支持体および/または可撓性の基板と一体化し得る。ナノ構造は、半導電性材料(例えばケイ素)または金属で作製され得る。
【0027】
センサーは、基準マーカー、例えば明視野顕微鏡検査および/または暗視野顕微鏡検査により光学的に検出可能である基準マーカーをさらに含み得ることが企図される。基準マーカーは、検出システムによる検出の視野内のセンサーの位置を較正するために使用され得る。
【0028】
別の局面において、本発明は、目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのカートリッジを提供し、該カートリッジは、前述のセンサーのいずれか1つ以上を含む少なくとも1つのウェルを画定するハウジングを含む。該ハウジングは、複数のウェルを画定し得、それぞれのウェルは、前述のセンサーのいずれか1つ以上を含む。
【0029】
別の局面において、本発明は、目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのシステムを提供する。該システムは、(a)前述のセンサーのいずれか1つ以上、前述のカートリッジのいずれか1つ以上を受けるための受容チャンバ;(b)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズに信号を送る(interrogating)ためのエネルギー源(例えば照明のための光源);(c)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズにおいて特性(例えば光学特性)の変化を検出するための検出器;ならびに任意に(d)第1の濃度範囲と任意の第2の濃度範囲の間の中間面および任意に任意の第2の濃度範囲と任意に任意の第3の濃度範囲の間の中間面を同定するコンピューターアルゴリズムを実行するコンピュータープロセッサを含む。
【0030】
光学的検出システムの場合において、アルゴリズムが、濃度曲線をデジタル検出とアナログ検出の間で移行させるべきかどうかを決定する場合、アルゴリズムは、(a)試験される溶液の適用の際に、第1のシリーズにおけるナノ構造に対して、1つの状態から別の状態へと変化した(裏返った(flip))ナノ構造を測定する工程;(b)試験される溶液の適用の際に、第2のシリーズにおいてナノ構造の色空間変化を測定する工程;および(c)第2のシリーズの色空間変化が予め選択された閾値よりも大きい場合に工程(b)で同定されたアナログ測定を使用して、第2のシリーズの色空間変化が予め選択された閾値よりも小さい場合に工程(a)で同定されたデジタル測定を使用する工程を含むことが企図される。
【0031】
別の局面において、本発明は、目的の試料、例えば体液、組織抽出物または細胞上清中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法を提供する。該方法は、(a)試料の少なくとも一部を、前述のセンサーのいずれか1つ以上に適用する工程;ならびに(b)ナノ構造の第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズの特性(例えば光学的特性)の変化を検出して、それにより試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する工程を含む。
【0032】
該方法は以下の特徴の(or)1つ以上を含み得ることが企図される。例えば、該方法は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12対数の濃度範囲、例えば少なくとも5、6、7、8または9対数の濃度範囲を有する分析物を検出でき得る。該センサーは、1fg/mL未満~1mg/mLより大きい濃度範囲の分析物を検出でき得る。結果的に、試料は、センサーへの適用前に希釈される必要はなくなり得る。
【0033】
別の局面において、本発明は、目的の試料、例えば体液、組織抽出物または細胞上清中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法を提供する。該方法は、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに該試料の一部を適用する工程を含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含む。該領域は、ナノ構造の第1および第2のシリーズからの検出可能なシグナルを検出するために、例えば電磁放射線を使用して信号を送られ、該シグナルは、試料中の分析物の存在および/または量を示す。次いで、分析物の存在および/または量は、検出可能なシグナルから決定されて、それにより第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化し得る。
【0034】
別の局面において、本発明は、目的の試料、例えば体液、組織抽出物または細胞上清中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法を提供する。該方法は、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに、試料の一部を適用する工程を含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される。該領域は、ナノ構造の第1および第2のシリーズから検出可能なシグナルを検出するために、例えば電磁放射線を使用して信号を送られ、該シグナルは、試料中の分析物の存在および/または量を示す。次いで、分析物の存在および/または量は、検出可能なシグナルから決定されて、それにより、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化し得る。
【0035】
前述の方法のぞれぞれにおいて、任意の第2のシリーズにおけるナノ構造は、第1のシリーズにおけるナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含むことが企図される。
【0036】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付の図面に関して考慮される場合、本発明の種々の非限定的な態様の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面の説明
図1図1は、先行技術アッセイとの比較における本発明の態様による、センサーのダイナミックレンジを示す概略図である。
図2A図2Aは、目的のセンサーにおけるナノ構造のシリーズの異なる形式の概略的表示である。
図2B図2Bは、超低、低、中および高濃度の分析物を測定するための例示的センサーのシリーズを示す概略図である。
図3A図3A~3Cは、大きなダイナミックレンジにわたる分析物の測定における本発明の例示的なセンサーの操作可能性を示す。図3Aは、本発明の態様による、デジタルおよびアナログ(色シフト(color shifting))ナノ構造アレイの両方を含むセンサーを示す概略図である。
図3B図3Bは、デジタル単一分子定量化(左手パネル)およびアナログ定量化(右手パネル)の組合せによる、6対数ダイナミックレンジにわたるタウタンパク質の定量化を示す写真による表示である。
図3C図3Cは、分析物濃度の関数としてのデジタルセンサーの操作可能性を示す画像である。
図4図4は、図3Bに例示されるセンサーにより作成される例示的なデータのデジタルおよびアナログ測定値を示すグラフである。
図5図5は、本発明の態様による、デジタルナノ構造のシリーズ(25,600)およびアナログナノ構造の3つのシリーズ(1シリーズ当たり1,000)の両方を含む例示的なケイ素ウェーハー系センサーの写真による表示である。
図6図6は、本発明の態様による、デジタルナノ構造の複数のシリーズおよびアナログナノ構造の3つのシリーズを含む、別の例示的なケイ素ウェーハー系センサーの写真による表示である。
図7図7は、本発明の態様による、例示的なナノ構造の断面図を示す概略図である。
図8図8は、本発明の態様による、2つの異なる材料で構成される例示的なナノ構造の断面図を示す概略図である。
図9図9A~9Dは、本発明の態様による、フォトレジストパターン形成、現像およびエッチングプロセスによる例示的なナノ構造のシリーズの製作を示す一連の断面概略図である。
図10図10A~10Gは、本発明の態様による、基板上の層の蒸着、蒸着された層上のフォトレジストのスピンコーティング、レジストのパターン形成および現像、レジスト上の金属蒸着(evaporating)、溶液中のレジストの除去、基板のエッチング、ならびにフォトレジストの除去による例示的なナノ構造のシリーズの製作を示す一連の断面概略図である。
図11図11A~11Fは、本発明の態様による、基板上の2つの層のコーティング、上部層レジストのパターン形成、レジストの現像、パターン形成されたレジスト上の材料の蒸着、特定の表面条件を達成するためのさらなる低粘度材料のリフトオフおよびスピンによる例示的なナノ構造のシリーズの製作を示す一連の断面概略図である。
図12図12A~12Fは、本発明の態様による、酸化物基板上のフォトレジストのパターン形成、レジストの現像、レジスト上のケイ素の蒸着、リフトオフ、パターン形成された基板上にさらなる構造を成長させるためのケイ素の成長による例示的なナノ構造のシリーズの製作を示す一連の断面概略図である。
図13図13A~13Dは、本発明の態様による、モールドによるフォトレジストのパターン形成を図示する一連の断面概略図である。
図14図14Aは、本発明の態様による、ナノ構造の複数のシリーズを有するケイ素ウェーハーを示す概略図であり、図14Bは、本発明の態様による、ナノ構造の単一のシリーズの拡大された画像を示す概略図である。
図15図15Aおよび15Bは、本発明の態様による、ナノ構造のシリーズを組み込んだナノセンサーアセンブリ(消耗品)の斜視図である。
図16図16Aおよび16Bは、ウェーハー基板、ガスケットおよび保持ベースを含むカートリッジアセンブリの概略的表示(図16A)ならびにカートリッジアセンブリの構成要素を示す分解斜視図(図16B)である。
図17図17は、本発明の態様による、シングルプレックスカートリッジおよび1,000プレックスカートリッジの概略的表示である。
図18図18は、本発明の態様による、センサーによる使用のための検出システムの斜視図である。
図19図19は、本発明の態様による、例示的なセンサーを画像化するための例示的な光学的検出システムを示す概略図である。
図20図20は、本発明の態様による、センサーの信号の送信(interrogation)を示す概略図である。読出しシグナルは、光学的(例えば画像化)、電気的または機械的であり得る。
図21図21は、デジタルナノ構造を含む例示的センサーの出力のデータ分析を示す概略的表示である。
図22図22は、本発明の態様による、アルゴリズムを示すフローチャートである。
図23図23Aおよび23Bは、本発明の態様による、複数の分析物を同時に検出および/または定量化するように構成されるナノ構造のシリーズを示す概略図である。
図24図24は、本発明の態様による、分析物とナノ構造の間の相互作用を示す概略図である。
図25図25は、本発明の態様による、左から右に、1、2および5個の分析物を捕捉することによる、ナノ構造の結合能力を示す概略的表示である。
図26図26は、本発明の態様による、分析物を捕捉し得るナノ構造の数よりも少ない分析物がある非飽和アッセイを示す概略図である。
図27図27は、本発明の態様による、分析物がアレイにおけるナノ構造の小部分(fraction)により結合される非飽和アッセイ条件下でのアレイにおけるナノ構造のシリーズを示す概略図である。
図28図28は、例示的な非標識(label-free)イムノアッセイを示す概略的表示である。
図29図29は、例示的な標識系イムノアッセイを示す概略的表示である。
図30図30は、本発明の態様による、抗原に結合する抗体(Ab1およびAb2)のペアを使用した分析物(抗原)の存在および/または量を決定するための例示的な粒子系アッセイの概略図であり、ここで結合は、活性化されたナノ構造による(Ab2)抗体捕捉を介する検出の前に溶液中で起こる。
図31図31は、本発明の態様による、抗原に結合する抗体(Ab1およびAb2)のペアを使用した分析物(抗原)の存在および/または量を決定するための例示的な粒子系アッセイの概略図であり、ここで結合は、活性化されたナノ構造による(Ab2)抗体捕捉を介する検出の前に溶液中で起こる。
図32図32は、本発明の態様による、抗原に結合する抗体(Ab1およびAb2)のペアを使用した分析物(抗原)の存在および/または量を決定するための例示的な粒子系アッセイの概略図であり、ここで結合は、活性化されたナノ構造による酵素(HRP)捕捉を介する検出の前に溶液中で起こる。
図33図33は、本発明の態様による、抗原に結合する抗体(Ab1およびAb2)のペアを使用した分析物(抗原)の存在および/または量を決定するための例示的な粒子系アッセイの概略図であり、ここで結合は、相補的なオリゴヌクレオチドにより機能化されたナノ構造によるオリゴヌクレオチド捕捉を介する検出の前に溶液中で起こる。
図34図34A~34Cは、例示的なマルチプレックスアッセイにおける使用のための試薬を示す概略図である。
図35図35は、タウタンパク質の種々の濃度でのデジタルアレイ内のナノ構造の暗視野画像の写真による表示である。
図36図36は、図35のセンサーにおける陽性割合 対 タウタンパク質の濃度を示すグラフであり、ここでセンサーのデジタルアレイは、1ng/mLより高い濃度で飽和される。
図37図37は、タウタンパク質の種々の濃度でのセンサーのアナログアレイにおけるナノ構造のアレイにより生成されたΔ色相のヒストグラムである。
図38図38は、図35に示されるセンサーのアナログ対応物のタウ濃度の関数としての平均Δ色相のグラフであり、ここでセンサーは、1ng/mL未満の濃度変化を検出しない。
図39図39は、本発明の例示的なセンサーを使用した、IL-6の検出および定量化を示すグラフである。
図40図40A、40Bおよび40Cは、本発明の例示的なセンサーを使用した、血漿中のIL-6(図40A)、血漿中のTNF(図40B)および細胞培養培地中のC反応性タンパク質(図40C)の検出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
本発明は部分的に、大きなダイナミックレンジにわたり高感度で目的の試料中の分析物の存在を検出するためおよび/またはその量を定量化するためのセンサー、かかるセンサーを組み込むカートリッジ、検出システム、ならびに試料中の分析物の量を検出および/または定量化するためにかかるセンサー、カートリッジおよびシステムを使用する方法を創作することが可能であるという発見に基づく。
【0039】
図1は、0.01pg/mL(10fg/mL)未満と1μg/mL以上(少なくとも8対数)の間の濃度範囲内の試料中の分析物を検出し得る本発明のセンサーにより達成可能なダイナミックレンジ10を示す。一般的に、他の市販のアッセイシステム(例えば、典型的な手動ELISA、特殊な手動ELISA、ミクロ流体系ELISAアッセイ、ブロッティング系技術(例えばウエスタンブロッティングおよびドットブロッティング技術)および自動化されたビーズ系技術)は、目的の試料中の分析物を測定し得るが、本明細書に開示されるセンサーにより達成可能な全ダイナミックレンジにわたっては、分析物を測定できない。結果的に、本発明のセンサーの使用は、以前は先行技術アッセイシステムの組合せを使用してのみ達成し得た濃度範囲にわたる分析物の濃度の測定を容易にし得る。
【0040】
I. センサー考察
(A) センサー構成
センサーは種々の構成のナノ構造を含み得ることが企図される。例えば、図2Aに示されるように、センサーは、ナノ構造20dの第1のシリーズ、例えばデジタル定量化のために構成されるナノ構造のシリーズ(図2A(i));ナノ構造20aの第2のシリーズ、例えばアナログ定量化のために構成されるナノ構造のシリーズ(図2A(ii));ナノ構造20dの2つのシリーズ(図2A(iii));ナノ構造20aの2つのシリーズ(図2A(iv));20dの1つおよび20aの1つのナノ構造の2つのシリーズ(図2A(v));ならびに20dの1つおよび20aの2つのナノ構造の3つのシリーズ(図2A(vi))を含み得る。センサーは、検出される分析物および望まれるダイナミックレンジに応じて、異なる構成のナノ構造の他のシリーズを含み得ることが企図される。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「ナノ構造」は、少なくとも1nm~1,000nm未満の範囲の長さを有する少なくとも1つの寸法を有する任意の構造、例えばナノセンサーを意味することが理解される。本明細書で使用する場合、用語「デジタル定量化」は、1つ以上の分析物への結合の際に1つの状態から別のものに裏返る、ナノ構造のシリーズ中の個々のナノ構造が検出される(例えば光学的に検出される)定量化プロセスを意味することが理解される。「デジタルシリーズ」または「デジタルアレイ」は、デジタル定量化を可能にするように構成されるナノ構造のそれぞれのシリーズまたはアレイを意味することが理解される。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「アナログ定量化」は、ナノ構造が複数の分析物に結合する場合に、ナノ構造のシリーズ中のナノ構造の検出可能な特性(例えば光学的に検出可能な特性、例えば色)の実質的に均一な変化が検出される、定量化プロセスを意味することが理解される。ある態様において、検出可能な特性の変化(例えば色変化)は、検出される分析物の前もって較正された濃度範囲にわたる目的の試料中の分析物の濃度の関数として起こる。用語「実質的に均一」は、ナノ構造の少なくとも60%、70%、80%、90%または95%が、同じ検出可能な特性、例えば色を共有することを意味することが理解される。「アナログシリーズ」または「アナログアレイ」は、アナログ検出を可能にするように構成されるナノ構造のそれぞれのシリーズまたはアレイを意味することが理解される。
【0043】
目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するための1つの例示的なセンサーにおいて、センサーは第1の領域および第2の領域を含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで該センサーは、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の量を定量化し得る。第1の濃度範囲は、第2の濃度範囲のものよりも低い検出可能な値を有し得、および/または第2の濃度範囲は、第1の濃度範囲のものよりも高い検出可能な値を有し得る。第1の濃度範囲は第2の濃度範囲と重複し得ることが企図される。
【0044】
本明細書に記載されるセンサーは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12桁(または3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12対数)に及ぶ範囲(ダイナミックレンジとも称される)にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得ることが理解される。ある態様において、センサーは、少なくとも5、6、7、8または9桁(または5、6、7、8もしくは9対数)に及ぶ濃度範囲にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得る。センサーは、1pg/mL未満~100ng/mLより高い、0.1pg/mL未満~1μg/mLより高い、または0.01pg/mL未満~100μg/mLより高い、または1fg/mL未満~1mg/mLより高い範囲の所定の分析物の濃度を測定するように構成され得、ここで例えば、試料は、センサーへの適用の前に希釈される必要はない。
【0045】
1つの例示的なセンサーにおいて、第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物への結合の際に検出され(例えば光学的に検出され)、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の検出可能な特性(例えば光学的に検出可能な特性、例えば色)における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され、ここでセンサーは、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の量を定量化し得る。
【0046】
第1の濃度範囲は、第2の濃度範囲のものよりも低い検出可能な値を有し、および/または第2の濃度範囲は第1の濃度範囲のものよりも高い検出可能な値を有する。第1の濃度範囲は第2の濃度範囲と重複し得ることが企図される。
【0047】
前述のシナリオのそれぞれにおいて、センサーの第1の領域は任意に、(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;(ii)少なくとも10nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;(iii)200nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さの1つ以上を含む。該センサーは任意に、(i)基準マーカーまたは(ii)ナノ構造製作対照特徴の1つ以上をさらに含む。
【0048】
センサーのいずれかは、以下の特徴の1つ以上を含み得ることが企図される。例えば、センサーは、分析物に結合し得、第3の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るさらに異なるナノ構造の第3のシリーズを含む第3の領域をさらに含み得、ここで該センサーは、第1、第2および/または第3の濃度範囲にわたり試料中の分析物の量を定量化し得ることが企図される。
【0049】
同様に、任意の第2のシリーズ中のナノ構造は、第1のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含み得る。
【0050】
さらに、センサーが第3のシリーズを含む時はいつでも、第3のシリーズのナノ構造は、任意の第2のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含み得る。
【0051】
第1のシリーズ、ならびに適用可能な場合は第2および第3のシリーズ中のナノ構造は、分析物に結合する結合剤、例えば結合剤、例えば分析物に結合する生物学的結合剤により機能化される。生物学的結合剤は、例えば抗体、アプタマー、リガンド-受容体ペアのメンバー、酵素または核酸であり得る。特定の情況下で、分析物について、第2、第3またはそれ以降のシリーズにおける結合剤よりも高い結合親和性を有する第1のシリーズにおける結合剤を使用することが有利であり得る。
【0052】
センサーは、試料中の任意の目的の分析物を検出および/または定量化するように設計され得る。例えば、分析物は、生物学的分子、例えばタンパク質、ペプチド、炭水化物、糖蛋白、グリコペプチド、脂質、リポ蛋白、核酸または核蛋白であり得る。さらに、所定のセンサー中のナノ構造またはナノ構造のシリーズは、同時にまたは連続的に、複数の異なる分析物に結合、それを検出および/または定量化するように構成され得る。例えばセンサーは、試験試料中の対応する複数の異なる分析物を検出するための複数の異なる結合剤を含み得る。
【0053】
センサーは、光学的特性、電気的特性または機械的特性における変化により分析物の結合を検出するように構成され得る。例えば、センサーは、ナノ構造の少なくとも1つのシリーズの光学的に検出可能な特性(例えば色、光散乱、屈折または共鳴(例えば表面プラスモン共鳴、電気的共鳴、電磁的共鳴および磁気的共鳴))における変化により分析物の結合を検出するように構成され得る。
【0054】
センサーは、種々の異なる方法で構成され得ることが企図される。例えば、ナノ構造の第1、第2または第3のシリーズの少なくとも1つは、ナノ構造のアレイを含み得る。代替的に、ナノ構造の第1、第2および第3のシリーズのそれぞれは、ナノ構造のアレイを含み得る。センサーは、ナノ構造の単一のシリーズまたはナノ構造の複数のシリーズ、例えば異なる濃度範囲内の分析物を検出するように適切に作用するナノ構造の複数のシリーズを含み得ることが企図される。センサーがナノ構造の複数のシリーズを含む場合、ナノ構造の異なるシリーズは、(i)同じ様式で(例えば単一のナノ構造が検出もしくは定量化されるデジタル検出を介して、または所定のシリーズ中のナノ構造の光学的特性における累積変化が濃度の関数として検出されるアナログ検出を介して)または(ii)異なる様式で、例えばデジタル検出とアナログ検出の組合せにより作動し得る。さらに、センサーは、デジタル検出および/またはアナログ検出により作動する複数の異なるシリーズを含み得ることが企図される。例えば、センサーは、同じ濃度範囲内のデジタル検出により分析物を検出するように作動する複数のシリーズおよび/または異なる濃度範囲にわたるアナログ検出により分析物を検出するように作動する複数のシリーズを含み得る。
【0055】
例えば、デジタル検出の間、ナノ構造の第1のシリーズにおいて、分析物に結合する個々のナノ構造は、分析物の単一の分子または分析物の所定の数未満の分子のいずれかに結合する際に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内に存在する場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。例えば、試料中の分析物の濃度は、(i)分析物に結合しなかった個々のナノ構造の残りの数または(ii)第1のシリーズ中のナノ構造の総数のいずれかに対して、分析物に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数のデジタル計数により決定される。
【0056】
このアプローチにおいて、多くのナノ構造は典型的に、センサーの領域において高密度にパターン形成される。ナノ構造の数が、検出される分析物の数よりも大きい場合、それぞれのナノ構造は典型的に、例えば物質移動およびポワゾン分布効果に基づいて、多くとも1つの分析物を捕捉する。それぞれのナノ構造は、分析物が結合するかまたはしないかに応じて、2つの状態(例えば1または0と示される)の1つを有し得る。したがって、分析物を有する試料への暴露後に、状態1を有するナノ構造の数は、分析物の数と等しくあり得る。ある態様において、それぞれの個々のナノ構造は、1つまたはいくつか(例えば10未満)の分析物、例えばタンパク質を捕捉するための限定された数の結合部位のみを有し得る。それぞれのナノ構造は、1~いくつか(<10)の対応するシグナルスケールを有し、したがって分子の数の計数は、それぞれのナノ構造の別個のシグナルの計数と同等であり得る。ナノ構造のシリーズの異なるシグナルレベルは、検出され得るナノモザイクパターンを形成する。
【0057】
同様に、分析物の濃度は、図2A(iii)に示されるように第2の範囲内、または第3の範囲内にある場合に、(i)分析物に結合していない適切なシリーズ中の個々のナノ構造の残りの数または(ii)対応する第2および/または第3のシリーズ中のナノ構造の総数のいずれかに対して、分析物に結合した第2および/または第3のシリーズ中の個々のナノ構造の数のデジタル計数により決定され得る。すなわち、第1の濃度範囲、第2の濃度範囲および任意の第3(またはそれ以上)の濃度範囲の全てにわたる試料中の分析物の濃度は、分析物の分子に結合した第1のシリーズ、第2のシリーズおよび/または任意の第3(またはそれ以上)のシリーズのそれぞれ中の個々のナノ構造の数から決定される。
【0058】
代替的または付加的に、分析物の濃度は、第2の濃度範囲または任意の第3の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域および/または第3の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され得る。例えば、光学的に検出可能な特性の変化は、分析物の濃度の関数として、第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズにより生成される実質的に均一な色変化であり得る。すなわち、第2の濃度範囲および任意の第3(またはそれ以上)の濃度範囲(1つまたは複数)の全てにわたる試料中の分析物の濃度は、第2の領域および/または第3の領域のそれぞれ中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される。
【0059】
ナノ構造のそれぞれの個々のシリーズ(または領域)は、目的の分析物の10,000分子までの結合部位を含み得る。それぞれの領域は、領域により捕捉されるタンパク質の数に関連する予め較正された連続シグナルスケール(アナログスケール)を有する。それぞれの領域についてのアナログスケールは、読出しのための物理的シグナルの漸進的な変化に対応する。異なるスケールは、例えば検出器(例えば光学的検出器)下のそれぞれの領域由来の異なる色に対応し得る。該領域は、分析物濃度の関数としての特性変化(例えば色変化)の連続体(continuum)を有するナノモザイクを画定する。光学的検出の場合、例えば異なるスケールは、(i)濃度の関数としての強度変化の連続体を有する顕微鏡下の領域の光強度または(ii)濃度の関数としての電流もしくは電圧シグナルの連続体を有するそれぞれの領域の電子的測定値、例えば電流もしくは電圧シグナルの1つ以上に関連し得る。
【0060】
所定のシリーズ中のナノ構造は、平坦な面および/または湾曲した面のナノ構造であり得ることが企図される。ナノ構造は、平坦な支持体および/または可撓性の基板上に配置され得、ここでナノ構造は、平坦な支持体および/または可撓性の基板と一体化し得る。ナノ構造は、半導電性材料(例えばケイ素)または金属で作製され得る。
【0061】
センサーはさらに、基準マーカー、例えば明視野顕微鏡検査および/または暗視野顕微鏡検査により光学的に検出可能な基準マーカーを含み得ることが企図される。基準マーカーは、検出システムによる検出の視野内のセンサーの位置を較正するために使用され得る。センサーはまた、例えば作製されたナノ構造がナノ構造の直径の関数として色の変化を示すことを示す、1つ以上のナノ構造製作対照を含み得る。
【0062】
図2A(i)に示される別の例示的なセンサーにおいて、センサーは、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。センサーの第1の領域は任意に、(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;(ii)少なくとも10nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;(iii)200nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さの1つ以上を含む。センサーは任意に、(i)基準マーカーまたは(ii)ナノ構造製作対照特徴の1つ以上を含む第2の領域をさらに含む。
【0063】
図2A(ii)に示される別の例示的なセンサーにおいて、センサーは、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として第1の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される。第1の領域はさらに、(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;(ii)少なくとも100nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;(iii)300nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さの1つ以上を含む。センサーは任意に、(i)基準マーカーまたは(ii)ナノ構造製作対照特徴の1つ以上を含む第2の領域をさらに含む。
【0064】
開示されるセンサーの検知領域は、生物学的分析物と相互作用する物理的スポットである。ある態様において、検知領域は異なる部分に分割され、それぞれの部分は特定の濃度範囲を標的化する。非常に低い濃度では、単一分子ナノ構造のアレイが使用され得る。分析物が単一分子センサーにより捕捉される場合、センサーは、デジタルの「はい」の信号を生じるので、分子の濃度は、デジタルセンサーの計数に関連し得る。低~中の濃度範囲で、アナログシグナルを生じるために特定のダイナミックレンジを有するより大きいナノ構造を使用して、分析物の濃度を測定する。読出しシグナルは、ナノ構造に関連する共鳴スペクトル、または散乱強度等であり得る。検出精度を向上するために、これらのセンサーのアレイを使用して、統計学的な平均を達成し得る。
【0065】
非限定的な例として、センサーの検知領域は、複数の領域に分割され得る。例として、図2Bは、4つのセンサー領域32、34、36、38を有するセンサー30の概略図である。それぞれの領域は、ナノ構造20のシリーズを含む。一態様において、超低濃度センサー領域32のナノ構造20dのシリーズは、単一分子感度を画定する。結果的に、分析物の濃度は、検出可能なシグナル、例えば「はい」のデジタルシグナルを生じるように裏返る単一分子ナノ構造20dの数に相関する。低、中および高濃度センサー領域34、36、38のナノ構造20aは、増加するサイズ、およびそのためにより低い感度であるがだんだん大きくなるダイナミックレンジを有する。領域32、34 36、38のそれぞれは、特定のダイナミックレンジについて最適化される。合わせると、それぞれの領域から得られた結果は集合されて、領域32、34、36、38により達成可能なダイナミックレンジの集合から生じるダイナミックレンジを提供し得る。
【0066】
図3Aは、例示的なセンサーおよびかかるセンサーを使用して達成される目的の分析物の定量化の概略的表示を示す。このセンサー30は、デジタル定量化のために構成されるナノ構造20dのシリーズを有する第1の領域50およびアナログ定量化のために構成されるナノ構造20aのシリーズを有する第2の領域60を含み、ここで色のシフトは異なる濃度を示す。この例において、デジタル定量化70は、pg/mLからng/mLまでの範囲の分析物濃度について実施され、アナログ定量化80は、ng/mLからμg/mLまでの範囲の分析物濃度について実施される。分析物の濃度がpg/mL~ng/mLの範囲にある場合、分析物濃度は、状態を変化する(例えば1つの状態から別のものに裏返る)領域50中のシリーズにおけるナノ構造の数に基づいて測定され得る。しかしながら、分析物の濃度は検出可能な範囲の上限に達するので、領域50中のセンサーは飽和され、センサーはより高濃度の分析物を定量化できない。第1のシリーズの飽和は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の結合部位が分析物に結合した場合に起こり得る。結果的に、このセンサー30はまた、試料中の分析物の濃度がナノ構造の所定のシリーズにより検出可能である分析物濃度の範囲内に含まれる場合に、その光学的特性を変化する(例えば色変化として検出される)ナノ構造の複数のシリーズを含む。この態様において、領域60中のナノ構造のシリーズは、隣接または重複する濃度範囲においてそれらの光学的特性(例えば色)を変化するように較正される。
【0067】
図3Bにおいて、センサー40は、デジタル検出/定量化70のためのナノ構造のシリーズおよびアナログ検出/定量化80のためのナノ構造のシリーズを含む。特に、デジタル検出70のためのナノ構造のシリーズは、アレイの形態のナノ構造20dを含む。分析物(例えばタウタンパク質)の濃度が1.2pg/mLから10ng/mLへと増加する場合、1つの状態から別のものに裏返ったナノ構造の数は、それぞれのパネル90下の割合(ration)により示されるように増加する。10ng/mL以上の分析物濃度で、ナノ構造のシリーズは、ナノ構造の全てまたは実質的に全て(例えば結合部位の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%が分析物に結合した)が1つの状態から他のものへと裏返る場合に飽和する。右手側のボックスは、アナログ検出80について構成されるナノ構造20aのシリーズにおける光学的特性の変化(例えば比色定量的変化)を示す。例えば、分析物の濃度が10ng/mLまで増加する場合、ナノ構造のシリーズの光学的特性(例えば色相(color hue))の変化はシフトしない。しかしながら、分析物の濃度が10ng/mLより大きい場合、ナノ構造のシリーズの光学的特性の変化は、例えば分析物濃度の関数としての色の変化として検出可能になる。センサー中に、他の濃度範囲の分析物を検出および定量化するように較正されるナノ構造のさらなるシリーズ(例えばデジタルアレイおよび/またはアナログアレイ)を含むことにより、より大きなダイナミックレンジが達成され得る。
【0068】
図3Cは、本発明の態様による、センサー100により実施されるデジタル定量化を図示する。図示されるように、センサーは、濃度50fg/mLで分析物分子(タウタンパク質の分子)を検出し得、2046のデジタルナノ構造(20d)中96が、1つの光学的特性から検出器により検出可能である別のものに裏返る。この特定の態様において、ナノ構造の全てまたは実質的に全てが1つの光学的状態から他のものに裏返る場合、センサー100は約50pg/mLの分子濃度で飽和される。
【0069】
図4は、図3Bの例示的センサー40により得られた測定値からコンパイルされたデータを示すグラフである。1pg/mL~1ng/mLの分析物濃度範囲において、デジタル定量化モード70は、高い感度および3対数のダイナミックレンジを提供する。1ng/mL~1μg/mLの分析物濃度範囲において、アナログ比色定量測定値80は、さらに3対数だけ検出可能な濃度範囲を広げる。全ダイナミックレンジにわたる連続曲線を形成するデジタル定量化測定値とアナログ定量化測定値の間の移行は、本明細書に記載される種類のアルゴリズムを使用して自動化され得る。この例において、デジタル定量化のために構成されたナノ構造のシリーズとアナログ定量化のために構成されたナノ構造のシリーズの組合せを使用して、6対数ダイナミックレンジが達成される。本発明の態様のセンサーは、小さい体積の試料(例えば100μL、50μL、25μL、10μLまたは5μL未満)を使用して、高い感度で(例えば50fg/mL)、大きなダイナミックレンジ(例えば6対数以上)を達成し得ることが発見された。
【0070】
ナノ構造は、任意の適切な形状および/またはサイズを有し得る。いくつかの場合、例えばナノ構造はナノニードル、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノコーン等であり得る。例えばナノリボン、ナノフィラメント、ナノチューブ等の他の形状も可能である。ある態様において、ナノ構造は、垂直に整列されるが、他の角度または整列も可能である。例えばナノニードル、ナノドット、ナノディスク、ナノピラー等のナノ構造は、表面ポラリトンへのカップリングを介して電磁エネルギーを閉じ込めるそれらの能力のために単一分子レベル感度を有する。
【0071】
センサーの物理的形態は、ボトムアップおよび/またはトップダウン法により表面上に作製されるナノ構造のアレイまたはマトリックス、例えばナノニードル、ナノワイヤ、ナノピラー、ナノドット等であり得る。表面は、ウェーハーの上部表面などの平坦な表面であり得る。代替的に、表面はまた、湾曲もしくは可撓性であり得るか、または例えば線維もしくはワイヤ等の三次元構造の一部であり得る。
【0072】
センサーの機能的形態は、ナノ光学構造、ナノ機械構造またはナノ電気構造を含み得る。したがって、読出しシグナルとしては、限定されないが、光学的シグナル、電気的シグナル、および機械的シグナルが挙げられる。したがって、分析物の濃度は、ナノ構造の光学的、電気的またはナノ機械的特性の変化により決定され得る。光学的特性としては、例えば表面プラスモン共鳴、ナノ光子共鳴、電気的共鳴、磁気的共鳴、散乱、吸収、蛍光、色変化等が挙げられる。電気的特徴としては、例えば、抵抗、キャパシタンス、電流、電圧等が挙げられる。ナノ機械的特徴としては、例えば振動共鳴、振動大きさ、機械的質量等が挙げられる。
【0073】
前述の構造はまた、それらの光学的特性、例えば表面プラスモン共鳴、散乱強度または吸収の変化を観察することにより高い分析物の濃度を検出するために使用され得る。これらの構造の感度および検出範囲は、構造のサイズと密接に関連する。平面製作技術は、1つのデバイス中の異なるサイズおよび形状のナノ構造の測定可能かつ柔軟な組み込みを可能にする。本発明の態様は、異なるナノ構造を使用して、生物学的試料中の分子および分析物の決定のための高感度および高いダイナミックレンジを達成することに関する。
【0074】
ある態様において、異なる構造の表面特性は、ナノ構造の第1のシリーズ中のナノ構造が、分析物の結合について、ナノ構造の第2および/または第3のシリーズのものよりも高い結合親和性を有し得るように設計され得る。これは、所定の分析物に対して異なる結合親和性を有する結合剤を使用することにより達成され得る。結果的に、低濃度で、分析物は、単一分子ナノ構造により優先的に捕捉および検出される。濃度が増加するにつれて、第1のシリーズのナノ構造は飽和して、ダイナミックレンジを広げるためにナノ構造の他のシリーズからのシグナルが使用され得る。
【0075】
図5は、ナノ構造の複数のシリーズを含む例示的なセンサー(例えばナノモザイクチップ)150の写真による表示である。センサー150の左手側の列において、分かれた領域は、ナノ構造の直径が増加するにつれてナノ構造が色を変えすることを示す、製作対照構造155を示す。中央の領域160は、複数の別々のアレイ(すなわち16アレイ)を示し、それぞれは、超低濃度レベルの分析物を測定するための、デジタル定量化について構成されたナノ構造の対応するシリーズ(集合的に、25,600のナノ構造を含み、それぞれが単一分子ナノ構造を画定する)を画定する。右手側の領域は、アナログ定量化のための、領域165、170、175と示されるナノ構造の3つのシリーズ(例えばナノ構造の第2、第3および第4のシリーズ)を含む。領域165、170、175のそれぞれは、3つの別々の隣接するまたは重複する濃度範囲内の分析物濃度を測定するように較正される。ある態様において、3つの領域はそれぞれ、1,000のナノ構造を含み得る。
【0076】
図6において写真により示される代替的な態様において、別の例示的なセンサー(例えばナノモザイクチップ)150は、ナノ構造の多くのシリーズ(領域)を含む。中心に、センサーと光学的検出システムの整列を補助するための基準マーカー200が配置される。基準マーカーは、任意の望ましい設計であり得る。例えば、図6に示されるように、基準マーカー200は、回転対称を有さない方法で配列されるひし形パターンおよび3つの三角形パターンを含み、位置および回転方向の情報を提供する。結果的に、基準マーカーは、(i)センサーの位置を示し、(ii)ナノ構造の水平および垂直面を整列させるために使用され得る。作製制御構造155は、基準の周囲に配置される。デジタル単一分子ナノ構造20dのアレイは、センサーの左および右の領域に配置され、アナログ分子ナノ構造20aのアレイは、基準および製作対照構造の周囲の中心の列に配置される。図6に示される製作対照は、その直径が80nm~150nmの範囲であるナノ構造(例えばナノニードル)の8つのブロックを含む。暗視野画像下でのナノ構造(ナノニードル)の色は、直径が増加するにつれて変化する。
【0077】
上述のものは本発明のある態様の種々の非限定的な例を示す。しかしながら、他の態様も可能である。
【0078】
ある態様において、ナノ構造は、約500nm、450nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、50nm、30nm、20nm、10nm、5nm、3nmまたは2nm未満の基板との結合の末端または点から決定される長さを有する。ある態様において、ナノ構造の長さは、少なくとも約2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nmまたは500nmであり得る。
【0079】
ナノ構造は、任意の適切な断面形状、例えば正方形、円形、三角形、長円、多角形、星形、不規則な形状等を有し得る。ナノ構造は、その長さを通じて同じ断面形状を維持し得るか、またはナノ構造の異なる部分で異なる断面形状を有し得る。また、ナノ構造は、任意の適切な断面直径を有し得る。断面直径は一定であり得る(例えばナノニードルまたはナノロッドにおいてと同様)か、または異なり得る(例えばナノコーンにおいてと同様)。平均断面直径は、例えば約1,000nm、750nm、500nm、400nm、300nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm、40nm、30nm、20nmまたは10nm未満であり得る。ある態様において、断面直径は、少なくとも約10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、125nm 150nm、175nm、200nm、300nm、400nm、500nm、750nmまたは1,000nmであり得る。種々の態様において組合せも可能である。例えば、ナノ構造の平均直径は、50nm~300nm、75nm~250nmまたは100nm~200nmであり得る。
【0080】
(B)製作考察
ナノ構造は、任意の適切な材料で形成され得、それが配置される基板と同じまたは異なり得る。ある態様において、ナノ構造は、ケイ素および/または他の適切な半導電性材料(例えばゲルマニウム)で形成され得る。材料のさらなる非限定的な例としては、金属(例えばニッケルまたは銅)、シリカ、ガラス等が挙げられる。ある態様において、(基板上に配置され得る)ナノ構造は、一元の材料で形成され得る。
【0081】
本発明のセンサーは、いくつかの異なるアプローチにより、例えば半導体製造アプローチを使用して作製され得ることが企図される。上述のようにおよび以下により詳細に記載されるように、本明細書に記載されるセンサーの作製に有用なナノ構造のシリーズを形成するために、任意の適切な方法が使用され得る。例としては、限定されないが、例えばeビームリトグラフィー、フォトリトグラフィー、X線リトグラフィー、極端紫外線リトグラフィー、イオンプロジェクションリトグラフィー等のリトグラフィー技術が挙げられる。代替的にまたは付加的に、ナノ構造は、適切な腐食液によりエッチングされやすい1つ以上の材料により形成され得る。
【0082】
例えば、ある態様において、ナノ構造は、適切な腐食液によりエッチングされやすい1つ以上の材料から形成され得る。例えば、ナノ構造は、HF(フッ化水素酸)またはBOE(緩衝化酸化物腐食液)を使用してエッチングされ得るシリカまたはガラスなどの材料を含み得る。別の例として、ナノ構造は、HCl(塩酸)、HNO3(硝酸)、硫酸(H2SO4)などの酸を使用してエッチングされ得る銅、鉄、ニッケルおよび/または鋼鉄などの金属および/または塩化鉄(FeCl3)もしくは硫酸銅(CuSO4)などの他のエッチング化合物を含み得る。さらに別の例として、ナノ構造は、EDP(エチレンジアミンおよびピロカテコールの溶液)、KOH(水酸化カリウム)および/またはTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)などの腐食液を使用してエッチングされ得るケイ素または他の半導体材料を含み得る。ナノ構造はまた、いくつかの場合において、KOH(水酸化カリウム)および/または本明細書に記載されるものなどの他の酸を使用してエッチングされ得るプラスチックまたはポリマー、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリパーフルオロブテニルビニルエーテル等を含み得る。
【0083】
(i) ナノ構造製作
本発明のセンサーは、従来の半導体製造技術、例えば経済的な様式でハイスループットおよび高い収率で高い製造容量をもたらすCMOS技術により製作され得ることが企図される。かかるアプローチを使用して、基板上に配置されるかまたは基板と一体化されるナノ構造、例えばナノニードル、ナノドット、ナノディスク、ナノワイヤおよびナノピラーの1つ以上のシリーズを含むセンサーを作製することが可能である。例示的なナノ構造は図7および8に概略的に示される。非限定的な例として、図7は、現在のナノ作製技術、例えば電子ビームリトグラフィー、フォトリトグラフィー、ナノインプリンティング等により基板上に直接形成され得るいくつかのナノ構造20を示す。例えば、ナノ構造20は、ナノピラー、ナノディスク、ナノニードルまたはナノドットであり得る。また、図8は、2つ以上の材料、例えば第1および第2の材料300および305それぞれで製作されるナノ構造20を示す。それぞれの材料の組成物は、以下に議論されるように、分析物に結合するためのナノ構造の結合容量を制御するため、または特定の光学的、電気的もしくは磁気的特性を達成するために使用され得る。
【0084】
ナノ構造の製作は、同等の大規模化能力によりウェーハースケールまたはチップスケールのいずれかで実施され得る。この種類のアプローチにおいて、設計されるナノ構造についてマスクが最初に作製される。ある態様において、マスク上のパターンとして設計構造と逆のものが使用される。例えば、フォトレジストは、例えばスピンコーティングまたはディップコーティングプロセスを使用して、ウェーハーまたはチップ上にコーティングされる。次いでフォトレジストはマスクを通してフォトレジストまで電磁放射線に暴露され得る。その後、暴露されたフォトレジストが現像される。ある態様において、フォトレジスト上のパターンはまた、レーザービームまたは電子ビームにより直接書かれ得る。次いでフォトレジスト上のパターンは、所望の材料の熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタもしくは化学蒸着、または原子層堆積などの物理的気相成長法により基板に転写され得る。
【0085】
ある態様において、フォトレジスト上のパターンは、反応性イオンエッチング、スパッタエッチングおよび/または気相エッチングなどのウェットエッチング、ドライエッチングを含むトップダウンエッチングプロセスを使用して、基板に転写され得る。パターン形成、蒸着、エッチングおよび機能化プロセスは、複数サイクルの間に反復され得る。ある態様において、ナノニードル、ナノドット、ナノピラーおよび/またはナノワイヤのアレイは、半導体製造プロセスを使用して作製され得る。他の態様において、ナノニードル、ナノドット、ナノピラーおよび/またはナノワイヤのアレイは、モールドスタンピング(mold-stamping)プロセスを使用して作製され得る。
【0086】
図9A~9Dに示される断面図に例示的な製作アプローチを示す。図9Aを参照すると、より具体的に、eビームレジストまたはフォトレジスト310の層は、ケイ素基板などの半導体基板320上にコーティングされる。図9Bを参照すると、次いでレジスト層は電子ビーム暴露または電磁放射線暴露によりパターン形成され、例えばElionixまたはRaithの電子ビームリトグラフィーシステムを使用して、レジスト層特徴325が形成される。図9Cを参照すると、レジストは、レジスト現像剤中で現像され、その部分が除去され、レジスト特徴325のみが残される。図9Dを参照すると、次いでマスクとして働くパターン形成されたレジストによりエッチングプロセスが実施される。エッチングプロセスは、例えばウェットまたはドライ腐食液であり得る。適切なウェット腐食液は、例えばエチレンジアミンピロカテコール(EDP)、水酸化カリウム(KOH)またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の溶液であり得る。結果的に、ケイ素ナノニードル330は、ナノニードルの上部表面上に配置されたレジスト325により作製される。ナノニードルの高さは2nm~1000nmの範囲であり得る。ナノニードルの直径は10nm~1000nmの範囲であり得る。レジスト特徴325は、従来のウェットエッチングバッファ(示さず)を使用して除去され得る。
【0087】
エッチングされた構造の表面は、化学蒸着法もしくは原子層堆積または両方のハイブリッドを使用して化学的に活性化され得る。この活性化プロセスは、ウェット溶液中でも実施され得る。次いで、化学的に活性化された構造は、例えば化学吸着(例えば共有結合)または物理吸着を介して生物学的材料、本明細書に記載される結合剤に結合する準備がされる。
【0088】
適切なケイ素基板は、例えば丸い12"ケイ素ウェーハーであり得る。Society of Biomolecular Screening (SBS)に推奨されるマイクロプレート仕様を満たすために、丸いウェーハーを四角形にさいの目に切る。さいの目に切る工程は、上述の製作プロセスの終了時に実施し得る。代替的に、ウェーハーの半分の深さにさいの目に切ることを製作プロセスの開始時に実施し得;次いで全ての製作工程(スピンコーティング、パターン形成、蒸着およびエッチングを含む)の完了後、ウェーハーはSBS形式に容易に切断され得る。
【0089】
図10A~10Gに示される断面図に別の製作アプローチを示す。図10Aを参照すると、二酸化ケイ素層335を、化学蒸着法、原子層堆積または両方の組合せを使用してケイ素基板320の上部表面に形成する。層の厚さは2nm~100nmの範囲であり得る。例えばポリメチルメタクリレートを含むレジスト層310は、二酸化ケイ素層335にスピンコーティングされる。図10Bおよび10Cを参照すると、レジスト層310は、電子ビームまたは電磁放射線によりパターン形成され、次いでレジスト現像液中で現像されて、レジスト特徴325を形成する。図10Dを参照すると、アルミニウム層340は、例えば熱蒸着(または電子蒸着)により、例えばSharon熱エバポレーターまたはDenton eビームエバポレーターを用いてパターン形成されたレジスト層特徴325上に蒸着される。アルミニウム層340は好ましくは20nm~100nmの厚さである。図10Eを参照すると、リフトオフプロセスを実行して、レジスト層特徴325を除去し、二酸化ケイ素層335の上にアルミニウムマスクが残される。図10Fを参照すると、STS ICP RIEシステムまたはOxfordプラズマRIEシステムを用いた反応性イオンエッチングなどのエッチングプロセスを実施して、酸化ケイ素ナノニードル335をエッチングする。RIEエッチングはさらに、ケイ素層320まで進行して、二層のSiO2-Siナノ構造を生じ得る。図10Gを参照すると、アルミニウムマスク340は、アルミニウム腐食液バッファ、例えば1~5% HNO3、H3PO4およびCH3COOHの混合物中でケイ素ナノニードル342の上部からエッチング除去され得る。
【0090】
図11A~11Fに示される断面図にさらに別の製作アプローチを示す。図11Aを参照すると、二酸化ケイ素層335は、ケイ素基板320の上部表面上で成長される。レジスト層310は、二酸化ケイ素層335上にスピンコーティングされる。図11Bおよび11Cを参照すると、レジスト層310は、電子ビームまたは電磁放射線によりパターン形成され、次いでレジスト現像液中で現像され、レジスト特徴325を形成する。図11Dを参照すると、アルミニウム層340などの金属層が、例えば熱蒸着(または電子蒸着)プロセスにより、パターン形成されたレジスト層310上に蒸着される。図11Eを参照すると、次いでリフトオフプロセスが実施されて、レジスト層310が除去され、基板上の酸化物層上に配置されるアルミニウムナノニードルが残される。図11Fを参照すると、コーティング層345は、スピンコーティングされて、基板の表面特性を改変し得る。コーティング層は、TEFLONまたはポリエチレングリコール分子の層などの疎水性材料であり得る。コーティング層の厚さは、アルミニウムナノニードルの高さより小さい。
【0091】
図12A~12Fに示される断面図に別の製作アプローチを示す。図12Aを参照すると、レジスト層310は、酸化物基板350上にスピンコーティングされる。酸化物層は、熱により成長される酸化ケイ素であり得るかまたは化学蒸着法により形成され得る。いくつかの態様において、基板350は、ガラススライドであり得る。図12Bおよび12Cを参照すると、電磁放射線を使用して、レジスト層310中の特徴をパターン形成し得、次いでこれはレジスト現像液中で現像されて、レジスト特徴325を形成する。図12Dを参照すると、ケイ素層355は、例えば化学蒸着法を使用して、パターン形成されたレジスト層310上に蒸着される。図12Eを参照すると、リフトオフプロセスが実施され、パターン形成されたレジスト層310が除去され、酸化物基板上にケイ素ナノドット構造360が生じる。図12Fを参照すると、例えばVLS(蒸着-液体-固体)法により、種(seed)としてケイ素ナノドット360を使用して、ケイ素ナノニードル構造365がエピタキシャルに成長され得る。
【0092】
フォトレジスト層がモールドを使用してパターン形成され得る図13A~13Dに示される断面図に別の製作アプローチを示す。図13Aを参照すると、モールド370は、例えばSiまたは石英で作製される。モールドは、eビームリトグラフィーなどの高分解能パターン形成技術により作製され得る。モールドは、複製される標的ナノ構造のものと同様の特徴サイズを有する。図13Bを参照すると、レジスト層310は、ケイ素基板320上にスピンコーティングされる。図13Cを参照すると、次いでモールド370中の特徴は、ナノインプリンティングまたはナノスタンピングによりレジスト中にスタンプされ、次いで例えばUVまたは熱により架橋される。図13Dを参照すると、インプリンティングされたフォトレジストは、その後のエッチングプロセスのためのマスクとして使用され、ケイ素ナノ構造が得られ得る。
【0093】
図14Aおよび14Bを参照すると、上述の製作工程を反復することにより、ウェーハー320上に製作される複数のセンサーを作製して、例えばそれぞれのウェーハー320上に配置されるセンサーの10x10アレイが作製されることが可能である。図14Bに示されるように、それぞれのセンサーは、ナノ構造、例えばケイ素基板上に配置されるナノニードル330のアレイを含む。
【0094】
図10~14に示されるナノ構造は、1~999nm、1~750nm、1~500nm、1~400nm、1~300nm、1~200nm、1~100nm、10~999nm、10~750nm、10~500nm、10~400nm、10~300nm、10~200nm、10~100nm、20~999nm、20~750nm、20~500nm、20~400nm、20~300nm、20~200nm、20~100nm、30~999nm、30~750nm、30~500nm、30~400nm、30~300nm、30~200nm、30~100nm、40~999nm、40~750nm、40~500nm、40~400nm、40~300nm、40~200nm、40~100nm、50~999nm、50~750nm、50~500nm、50~400nm、50~300nm、50~200nmまたは50~100nmの範囲の少なくとも1つの寸法を有することが注意されるべきである。例えば図14B中のナノ構造の間のピッチ、すなわち中心-対-中心の距離は、典型的に1~100μm、例えば少なくとも1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μmまたは90μmである。構造のピッチについて他の寸法が使用され得る。図14Bにおけるナノ構造のアレイは、その全体において、図14Aに示されるようにアレイ形式でも配列され得る。例えば、図14Aに示されるナノ構造の2つのアレイの間のピッチは、100μm未満から数センチメートルより大きい範囲であり得る。さらに、ナノ構造のピッチおよびサイズは、チップの異なる部分またはナノ構造のそれぞれのシリーズ内で異なり得ることが企図される。これらのいずれかの組合せも、種々の態様において可能である。
【0095】
さらに、周期的構造におけるナノ構造の間の距離またはピッチは、例えばナノ構造がメタサーフェスを形成するように制御され得る。例えば、ピッチは、入射光の波長よりも小さく設定され得る。例えば、ピッチは、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、50nm、25nm、10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm 3nmもしくは2nm未満、および/または1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm 10nm、25nm、50nm、100nm 200nm、300nm、400nm、500nm、600nmもしくは700nmより大きくあり得る。例えば、特定の情況下で、ピッチは400nm~500nmであり得る。ナノ構造は、本明細書において提供される寸法のいずれかを有し得る。特定の情況下で、ナノ構造の平均断面直径または最小もしくは最大断面寸法は、入射光の波長より小さい。特定の情況下で、個々のナノ構造は、光学的に解像可能であるように構成され、ここで、例えばピッチは、100μm未満、10μm未満、5μm未満および/または1μmより大きくもしくは5μmより大きくあり得る。
【0096】
表1は、光学的読出しについての本明細書に記載されるナノ構造の例示的パラメータを記載する。
【表1】
【0097】
表2は、機械的読出しについての本明細書に記載されるナノ構造の例示的パラメータを記載する。
【表2】
【0098】
表3は、電気的読出しについての本明細書に記載されるナノ構造の例示的パラメータを記載する。
【表3】
【0099】
(ii) ナノ構造機能化
第1のシリーズおよび適用可能な場合は第2および第3のシリーズにおけるナノ構造は、分析物に結合する結合剤、例えば結合剤、例えば分析物に結合する生物学的結合剤で機能化される。生物学的結合剤は、例えば抗体、アプタマー、リガンド-受容体ペアのメンバー、酵素または核酸であり得る。特定の情況下、例えば第1のシリーズを使用して、非常に低い濃度の分析物を測定する場合、分析物について、第2、第3またはそれ以降のシリーズにおける結合剤よりも高い結合親和性を有する第1のシリーズにおける結合剤を使用することが有利であり得る。
【0100】
所定のナノ構造に適用される結合剤の数は、所望のアッセイ、例えば必要とされるダイナミックレンジ、検出される分析物の数等に応じて変化し得る。例えば、特定の情況下で、ナノ構造は、1、5、10、20、25、50、75、100またはそれ以上の結合剤により機能化され得る。これらの値はナノ構造当たり、1~1,000、1~500、1~250、1~100、1~50、1~25、1~10または1~5の結合剤の範囲であり得る。
【0101】
センサーは、試料中の任意の目的の分析物を検出および/または定量化するように設計され得る。さらに、所定のセンサー中のナノ構造またはナノ構造のシリーズは、同時または連続的に、複数の異なる分析物に結合、それを検出および/または定量化するように構成され得る。例えば、センサーは、試験試料中の対応する複数の異なる分析物を検出するために、複数の異なる結合剤を含み得る。
【0102】
分析物は、種々の試料中で検出および/または定量化され得る。試料は、分析物の測定を可能にする任意の形態であり得る。すなわち、試料は、薄い切片の調製物などの、分析物の検出を可能にするために分析物の抽出または処理が許容されなければならない。したがって、試料は、新鮮であり得るか、適切な極低温技術により保存され得るか、または非極低温技術により保存され得る。ある態様において、試料は、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液または間質液試料などの体液試料である。ある態様において、試料は、例えば従来の生検機器および手順を使用して得られる生検試料から得られる組織抽出物である。内視鏡的生検、切除生検、切開生検、微細針生検、パンチ生検、薄片生検および皮膚生検は、組織試料を得るために当業者が使用し得る、認識される医学的手順の例である。その後の分析のための組織調製のための適切な技術は、当業者に周知である。ある態様において、試料は細胞試料または細胞上清試料である。
【0103】
分析物は、生物学的分子、例えばタンパク質、ペプチド、炭水化物、糖蛋白、グリコペプチド、脂質、リポ蛋白、核酸または核蛋白を含む。例示的な分析物としては、例えば細胞、抗体、抗原、ウイルス粒子、病原性細菌、イオン、芽胞、酵母、糸状菌、細胞代謝物、酵素、酵素阻害剤、受容体リガンド、ペプチド、タンパク質、脂肪酸、ステロイド、ホルモン、酵素および核酸が挙げられる。検出され得る他の非生物学的分析物としては、例えば有機化合物、合成分子、金属、金属錯体、薬物、神経剤および麻酔剤が挙げられ得る。
【0104】
ある態様において、分析物は、サイトカイン、例えばインターフェロン(例えばIFNα、IFNβおよびIFNγ)、インターロイキン(例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-17およびIL-20)、腫瘍壊死因子(例えばTNFαおよびTNFβ)、エリスロポイエチン(EPO)、FLT-3リガンド、gIp10、TCA-3、MCP-1、MIF、MIP-1α、MIP-1β、ランテス、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびに前述のいずれかの機能性断片である。
【0105】
ある態様において、分析物はホルモンである。ホルモンの例としては、限定されないが、エピネフリン、メラトニン、ノルエピネフリン、トリヨードサイロニン、チロキシン、ドーパミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、アミリン(または島アミロイドポリペプチド)、抗ミュラー管ホルモン(またはミュラー管阻害因子またはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(またはコルチコトロピン)、アンギオテンシノゲンおよびアンギオテンシン、抗利尿ホルモン(またはバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、脳ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、コルチスタチン、エンケファリン、エンドセリン、エリスロポイエチン、濾胞刺激ホルモン、ガラニン、胃抑制性ポリペプチド、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(またはソマトメジン)、レプチン、リポトロピン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オステオカルシン、オキシトシン、膵臓ポリペプチド、副甲状腺ホルモン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド、プロラクチン、プロラクチン放出ホルモン、レラキシン、レニン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポイエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはサイロトロピン)、サイロトロピン放出ホルモン、血管作動性腸管ペプチド、グアニリン、ウログアニリン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、アルドステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、コルチゾール、プロゲステロン、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)およびカルシジオール(25-ヒドロキシビタミンD3)が挙げられる。
【0106】
ナノ構造は、当該技術分野で公知の標準化学を使用して機能化され得る。最初の事項として、ナノ構造の表面は、標準リンカー化学などの標準化学を使用して、結合剤への結合について活性化され得る。
【0107】
結合剤は、直接または化学リンカーを介してのいずれかで、(例えばナノ構造の表面上またはその表面に存在するシラノール基を介して)ナノ構造の表面と反応し得る官能基を含み得るかまたはそれを含むように作り変えられ得る。
【0108】
一アプローチにおいて、ナノ構造の表面シラノール基は、反応性基(例えば第1級アミン)を有するアルコキシシラン、クロロシランまたは代替的なシランモダリティなどの1つ以上の活性化剤により活性化され得る。反応性基を有する例示的なアルコキシシランとしては、例えばアミノシラン(例えば(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン(APTMS)、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン(APTES)、(3-アミノプロピル)-ジエトキシ-メチルシラン(APDEMS)、3-(2-アミノエチルアミノプロピル(aminoethyaminopropyl))トリメトキシシラン(AEAPTM))、グリシドキシシラン(例えば(3-グリシドキシプロピル)-ジメチル-エトキシシラン(GPMES))またはメルカプトシラン(例えば(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン(MPTMS)もしくは(3-メルカプトプロピル)-メチル-ジメトキシシラン(MPDMS)が挙げられ得る。反応性基を有する例示的なクロロシランとしては、3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(TPM)および10-イソシアナトデシルトリクロロシラン(isocyanatodecyltrichlorosilane)が挙げられる。
【0109】
その後、結合剤上の官能基、例えばリジン残基上の側鎖上の第1級アミンは、種々の架橋剤を使用して、ナノ構造の表面に付加された反応性基に結合され得る。例示的な架橋剤としては、例えばホモ二官能性架橋剤(例えばグルタルアルデヒド、ビスマレイミドヘキサン、ビス(2-[スクシンイミドオキシカルボニルオキシ]エチル)スルホン(BSOCOES)、[ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート](BS3)、(1,4-ジ-(3'-[2ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ブタン)(DPDPB)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ジスクシンイミジルタートレート(DST)、スルホジスクシンイミジルタートレート(スルホDST)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート(DSP)、3,3'-ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、ビス(β-[4-アジドサリチルアミド]-エチル)ジスルフィドヨード化可能(iodinatable) (BASED)、ホモ二官能性NHS架橋試薬(例えばビスN-スクシンイミジル-[ペンタエチレングリコール]エステル(ビス(NHS)PEO-5)およびPEGまたはデキストランポリマーのホモ二官能性イソチオシアネート誘導体)およびヘテロ二官能性架橋剤(例えばスクシンイミジル4-(Nマレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル-4-(Nマレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、Nマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スクシンイミド4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、N-ヒドロキシ-スクシンイミドおよびN-エチル-'(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(NHS/EDC)、(N-ε-マレイミド-カプロン酸)ヒドラジド(スルホEMCS)、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)、モノフルオロシクロオクチン(MFCO)、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオプロピオネート(SATP)、マレイミドおよびジベンゾシクロオクチンエステル(DBCOエステル)、ならびに1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロライド(EDC))が挙げられ得る。
【0110】
例により、本明細書に記載されるナノ構造は、表面シラノール基の遊離ヒドロキシル基を改変して反応性基(例えば第1級アミン)を生成するように、アルコキシシラン(例えばAPTMS)を介して活性化され得る。次いで、ナノ構造上で生成された反応性基(例えば第1級アミン)は、例えばタンパク質、例えば目的の抗体中のリジンアミノ酸の側鎖中で、存在する遊離アミン基と共有結合を形成する架橋剤、例えばグルタルアルデヒドと反応し得る。
【0111】
当該技術分野で公知の他の活性化およびコンジュゲーションケミストリーを使用して、1つ以上の結合剤を本明細書に記載されるナノ構造の表面に共有結合し得ることが企図される。
【0112】
所定のナノ構造またはナノ構造のシリーズは、目的の分析物に結合する結合剤により機能化され得ることが企図される。用語「結合剤」は、本明細書で使用する場合、目的の分析物に特異的に結合する剤をいう。用語「優先的に結合する」または「特異的に結合する」は、結合剤に関して使用する場合、標的分析物以外の分子と結合するよりも(i)より安定に、(ii)より迅速に、(iii)より強い親和性で、(iv)より大きな持続時間でまたは(v) (i)~(iv)のいずれか2つ以上の組合せで、特定の標的分析物と結合および/または会合する剤をいう。例えば、標的分析物に特異的または優先的に結合する結合剤は、異なる分析物に結合するよりも、例えばより強い親和性で、アビディティで、より容易におよび/またはより大きい持続時間で標的分析物に結合する結合ドメインである。表面プラスモン共鳴により決定される場合、結合剤は、分析物について、約100nM、50nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nMもしくは0.01nM、またはより強い親和性であり得る。例えば、結合剤は、分析物について、約0.01nM~約100nM、約0.1nM~約100nMまたは約1nM~約100nMの範囲内の親和性を有し得る。第1の標的分析物に優先的に結合する結合剤は、第2の標的分析物に優先的に結合してもしなくてもよいことが理解される。このように「優先的な結合」は、排他的な結合を(含み得るが)必ずしも必要としない。
【0113】
例示的な結合剤としては、(例えば基質および阻害剤に結合する)酵素、(例えば抗原に結合する)抗体、(例えば標的抗体に結合する)抗原、(例えばリガンドに結合する)受容体、(例えば受容体に結合する)リガンド、(例えば核酸分子に結合して、例えばDNA-DNA、RNA-RNAまたはDNA-RNA二本鎖を形成する)核酸一本鎖ポリマー、および標的分析物と結合する合成分子が挙げられる。天然、合成、半合成および遺伝子的に改変されたマクロ分子が結合剤として使用され得る。結合剤としては、生物学的結合剤、例えば抗体、アプタマー、受容体、酵素または核酸が挙げられる。
【0114】
本明細書で使用する場合、そうではないと示されない限り、用語「抗体」は、改変された、遺伝子工学で作り変えられたまたは化学的にコンジュゲートされたインタクトな抗体または抗原結合断片を含む、インタクトな抗体(例えばインタクトなモノクローナル抗体)または抗体の抗原結合断片(例えばモノクローナル抗体の抗原結合断片)を意味することが理解される。改変または遺伝子工学で作り変えられた抗体の例としては、キメラ抗体、ヒト化抗体および多重特異性抗体(例えば二重特性抗体)が挙げられる。抗原結合断片の例としては、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、単鎖抗体(例えばscFv)、ミニボディおよびダイアボディが挙げられる。
【0115】
ある態様において、抗体は、約300pM、250pM、200pM、190pM、180pM、170pM、160pM、150pM、140pM、130pM、120pM、110pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pMもしくは10pMまたはそれ未満のKDでその標的に結合する。抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgEアイソタイプを有し得る。
【0116】
抗体および他のタンパク質結合剤を作製するための方法は当該技術分野で公知である。例えば、タンパク質結合剤は、天然の供給源から精製され得るか、または組み換えDNA技術を使用して作製され得る。例えば、タンパク質結合剤をコードするDNA分子は、例えば化学的にまたは組み換えDNA法により合成され得る。所望のタンパク質系結合剤をコードする得られた核酸は発現ベクターに組み込まれ(ライゲーションされ)得、これは従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入され得る。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞が、目的のタンパク質をコードする遺伝子を発現する条件下で増殖され得る。特定の発現および精製の条件は、使用される発現系に応じて変化する。例えば、遺伝子が大腸菌で発現される場合、遺伝子は、最初に、遺伝子工学で作り変えられた遺伝子を適切な細菌性プロモーター、例えばTrpまたはTacおよび原核生物シグナル配列の下流に配置することにより、発現ベクターにクローニングされる。発現された分泌タンパク質は、屈折体または封入体に蓄積し、フレンチプレスまたは超音波処理による細胞の破壊の後に採取され得る。次いで、屈折体を可溶化して、当該技術分野で公知の方法によりタンパク質をリフォールドおよび切断する。遺伝子工学で作り変えられた遺伝子が、真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞中で発現される場合、遺伝子は最初に、適切な真核生物プロモーター、分泌シグナル、ポリA配列および停止コドンを含む発現ベクターに挿入される。遺伝子構築物は、従来技術を使用して、真核宿主細胞に導入され得る。その後、宿主細胞を、タンパク質系結合剤の発現を可能にする条件下で培養する。発現後、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグなどのアフィニティタグを含む当該技術分野で公知の技術を使用して、ポリペプチドを採取および精製または単離し得る。
【0117】
例示的な核酸系結合剤は、アプタマーおよびシュピーゲルマー(spiegelmer)を含む。アプタマーは、特定の標的分子に対して強力な結合活性を有する核酸系配列である。シュピーゲルマーは、結合親和性および機能に関してはアプタマーと同様であるが、天然に存在するヌクレアーゼ感受性D-オリゴヌクレオチドではなくヌクレアーゼ耐性L-オリゴヌクレオチドを使用することにより達成される、酵素的分解を防ぐ構造を有する。
【0118】
アプタマーは、高い親和性および特異性で標的分子に結合する特異的核酸配列であり、例えば米国特許第5,475,096号および同5,270,163号に記載されるようにSelective Evolution of Ligands by Evolution (SELEX)として一般的に公知である方法により同定される。それぞれのSELEXで同定された核酸リガンドは、所定の標的化合物または分子の特異的なリガンドである。SELEXプロセスは、核酸が、種々の二次元および三次元構造を形成するのに十分な能力、ならびにモノマー性またはポリマー性のいずれかにせよ実際に任意の化合物と共にリガンドとして働く(特異的結合ペアを形成する)ためにそれらのモノマー内で利用可能な十分な化学的多用途性(versatility)を有するという観察に基づく。任意のサイズの分子または組成物が標的として働き得る。
【0119】
高親和性結合の用途に適用されるSELEX法は、同じ一般的な選択スキームを使用して結合親和性および選択性の実際に任意の所望の基準を達成するための、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択ならびに結合、分割および増幅の段階的な反復を含む。好ましくはランダム化された配列の部分を含む核酸の混合物から開始して、SELEX法は、該混合物と標的を、結合に好ましい条件下で接触させる工程、標的分子に特異的に結合した核酸から未結合核酸を分割させる工程、核酸標的複合体を解離させる工程、核酸-標的複合体から解離された核酸を増幅して核酸のリガンド富化混合物を得る工程、次いで結合、分割、解離および増幅の工程を、標的分子に対して高度に特異的な高親和性核酸リガンドを生じるのに望ましいだけ多くのサイクルを通じて反復する工程を含む。したがって、この方法は、所定の標的分子への結合などの特定の機能性について、核酸分子の大きなランダムプールのスクリーニングを可能にする。
【0120】
SELEX法はまた、向上されたインビボ安定性およびプロテアーゼ耐性などの、リガンドに向上された特性を付与する改変されたヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンドの同定を含む。かかる改変の例としては、リボースおよび/またはリン酸および/または塩基の位置での化学的置換が挙げられる。改変されたヌクレオチドを含むSELEXプロセスにより同定された核酸リガンドは、米国特許第5,660,985号および同5,580,737号に記載され、2'位で、例えば2'-アミノ、2'-フルオロおよび/または2'-O-メチル部分により改変された1つ以上のヌクレオチドを含む高度に特異的な核酸リガンドを含む。
【0121】
ヌクレアーゼ活性に対してより抵抗性になるためのさらなる改変を必要とし得るアプタマーを使用する代わりに、L-リボースまたはL-2'デオキシリボース単位で構成される鏡像アプタマーであるシュピーゲルマー(米国特許第8,841,431号、同8,691,784号、同8367,629号、同8,193,159号および同8,314,223号参照)を本発明の実施に使用し得ることが企図される。シュピーゲルマーにおけるキラル反転(chiral inversion)は、天然のD-オリゴヌクレオチドアプタマーと比較して向上された血漿安定性を生じる。L-核酸は、ヌクレアーゼの広範囲の存在のために水溶液中および生物学的試料中で非常に安定でない天然に存在するD-核酸のエナンチオマーである。天然に存在するヌクレアーゼ、特に動物細胞由来のヌクレアーゼは、L-核酸を分解し得ない。
【0122】
インビトロ選択を使用して、標的分子の合成エナンチオマー、例えばD-ペプチドに結合するオリゴヌクレオチドを選択し得る。次いで、得られたアプタマーを、L-配置で再合成して、鏡像標的に対して元のアプタマーと同じ親和性および特異性で生理学的標的に結合するシュピーゲルマー(鏡についてのドイツ語の「シュピーゲル(spiegel)」に由来する)を作製する。このアプローチは、例えばヘプシジン(米国特許第8,841,431号参照)、MCP-1(米国特許第8,691,784号、同8367,629号および同8,193,159号参照)およびSDF-1(米国特許第8,314,223号参照)に結合するシュピーゲルマーを合成するために使用されている。
【0123】
(III) カートリッジ
本明細書に記載されるセンサーは、一旦製作されると、検出システムにおける使用のためのカートリッジに含まれ得るかまたはそうでなければカートリッジに集合され得る。本発明はまた、目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのカートリッジを提供する。カートリッジは、前述のセンサーの任意の1つ以上を含む少なくとも1つのウェルを画定するハウジングを含む。ハウジングは複数のウェルを画定し得、それぞれのウェルは、前述のセンサーの任意の1つ以上を含む。ウェルは、基板により画定(例えば一体化)され得るか、または基板上に配置されるガスケット中に形成されるホールにより画定され得る。
【0124】
図15A、15B、16Aおよび16Bを参照すると、本明細書に記載されるセンサーは、カートリッジアセンブリ(消耗品アセンブリ)400に一体化され得る。カートリッジアセンブリは、ハウジングまたはベース410、ナノ構造のシリーズが配置されるウェーハー基板420およびガスケット430を含み得る。ガスケット430は、ウェーハー基板420上に配置される場合、ウェルを画定し得、ここでそれぞれのウェルのベースは、1つ以上のセンサーを含み得る。ウェーハー基板は、ハウジングまたはベース410相互に適合し(interfit)、基板を保持し、検出システムに容易に挿入可能であるように構成される。ハウジングまたはベースは、種々の異なる材料、例えばアルミニウムなどの金属、およびプラスチックまたはゴムで作製され得る。ハウジングまたはベースは、それの、センサーシステムへの配置を容易にするためおよび/または方向づけを確認するために角度がつけられた角などの特徴を有し得る。
【0125】
ガスケット430は、例えばウェーハー基板上またはその内に配置されるセンサーを含むウェーハー基板を有するウェルを生成するような寸法の開口440を有するウェーハー基板上に配置されるようなサイズおよび形状のシリコーンまたはプラスチックで製作され得る。ウェルを画定する開口440は、分析される試料の少なくとも一部、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、20または50μLを含むような寸法であり得る。典型的に、ウェルは、ガスケット430により画定される壁およびウェーハー基板420により画定される底部部分を含み、センサーは、ウェル中の基板上に配置される。ウェルの直径は、600μm~90mm(例えば1mm~80mm)の範囲であり得、1mmの厚さを有し得る。いくつかの態様において、ウェルは、製作プロセスの間に、基板と一体化して形成され得る。
【0126】
図17は、本発明の態様による、シングルプレックス消耗品カートリッジ400および1,000プレックス消耗品カートリッジ400'の斜視図を示す。これらの態様において、単一プレックスカートリッジのためのセンサーは、単一の分析物を検出および/または定量化するように構成され、一方で1,000プレックスカートリッジは、1,000までの異なる分析物を同時に検出および/または定量化するように構成される。また、ガスケット430中のウェル440の寸法および配置は、単一のウェルに含まれるセンサーの数を収容するように調整される。本明細書に記載される技術は大規模化可能であり、カートリッジは、広範囲の形状およびサイズで作製され得ることが理解される。ある態様において、カートリッジは、マイクロプレート、例えば標準96ウェルマイクロプレートについてのSociety for Biomolecular Screening (SBS)の寸法標準を満たすように構成される。したがって、ウェーハー基板とベースの両方は、長方形の形状であり得、ベースは、128mmの長さおよび86mmの幅を有し、種々の液体処理系との交流(interface)および種々の液体処理プラットフォームの移動性の容易さを容易にする。
【0127】
III. システム考察
本発明はまた、目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのシステムを提供する。システムは、(a)前述のセンサーのいずれか1つ以上、前述のカートリッジのいずれか1つ以上を受けるための受容チャンバ;(b)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズを照射するための光源;ならびに(c)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズにおける光学的特性における変化を検出するための検出器;ならびに任意に(d)第1の濃度範囲と選択的に任意の第2の濃度範囲の間の中間面(interface)および選択的に任意の第2の濃度範囲と任意の第3の濃度範囲の間の中間面を同定するコンピューターアルゴリズムを実行するコンピュータープロセッサを含む。
【0128】
図18および19を参照すると、例示的なセンサーシステム500は、目的の試料中の分析物の検出またはその量の定量化を容易にするように構成される。センサーシステム500は、タッチスクリーンインターフェース520および例えばデータポート530を有するシステムハウジング510を含み得る。ハウジング中のロード/アンロードドア540は、カートリッジ400を、光学的検出システム570に対してカートリッジを保持および配置するための例えばX-Yステージ560を含むセンサーシステムの受容チャンバ550に導入することを可能にするサイズであり得そのように構成され得る。光源580は、カメラ/検出器590を通じて光を伝達するように構成される。カメラは、使用の間にカートリッジ上に配置されるように、ならびにカートリッジ中に配置される基板420上のナノ構造の少なくとも第1、第2および/または第3のシリーズにおける光学的特性の変化を検出するように構成される。光源580は、ナノ構造、例えばカートリッジのウェーハー基板上に配置されるナノ構造を照射するように構成される。システムは、第1の濃度範囲および/または第2の濃度範囲および/または第3の濃度範囲の間の中間面を同定するため、ならびに試料中の分析物を定量化するためのアルゴリズムを実行するためのコンピュータープロセッサを含むコンピューター600を含み得る。センサーシステムはまた該システムを制御するための制御プラットフォーム610を含み得る。したがって、該システムは、3つの主要なサブアセンブリ:制御システム、画像化システムおよびカートリッジ処理システムを含む。これらのサブアセンブリは、サプライチェーン複雑さを最小化するためおよび集合時間を低減するために市販の構成要素を使用し得る。
【0129】
画像化システムは、光源580が、光を、照射アセンブリ620および対物レンズ630を通して方向づけ、センサーの基板上に配置される複数のナノ構造上に衝突させるように構成される光学的検出システム570を含む。センサーと相互作用した後、反射した光は、対物レンズ630を通過して、検出器590に捕捉される。対物レンズ630の上に絞り640が配置される。絞りは、照射が基板にどのように到達するかおよび画像が検出器にどのように伝達されるかを含む照射を制御する暗視野光絞りである。顕微鏡システムの機械管の長さはL1で示され、10mm~300mmの範囲であり得る。対物レンズの作動距離は、L2で指定され、約2mm~約5mmの範囲であり得る。ある態様において、L1はL2より大きい。
【0130】
図20に示されるように、測定は、光学的測定であり得る。例えば光源580は、ナノ構造20およびその上に配置される分析物650を有する基板320を照射するために使用され得、1つ以上の検出器590は、基板に衝突する光を検出するように配置される。基板から偏向される光は、光源の同じ方向に、光源に対して反対の方向で直交する方向またはある角度で、あり得る。光学的検出システムの使用により得られる画像に存在するデータは、試料中に存在する分析物の濃度を提供するように処理され得る。
【0131】
図21は、センサーおよび関連のあるシステムの種々の態様に関連するインフォマティクスについての一アプローチを示す。概して、所定の領域中のナノ構造の全ては、実質的に同じ構成のものであり、実質的に同様の量または数の分析物結合部位を統計学的に有する。したがって、試料中の分析物の所定の濃度について、該領域中のそれぞれのナノ構造は同じ数の分子に結合することが予想され得る。センサーが広いダイナミックレンジを有するようにするために、種々の構成のナノ構造を有する複数のデジタルおよびアナログ領域が提供され得る。
【0132】
センサーのデジタル領域において試料中の分析物の濃度は最低の検出可能な濃度~最高の検出可能な濃度の範囲にあるので、該システムは、(例えば1つの状態から別のものに裏返すことにより)閾値より高い分析物の結合に対応する単離された色変化を明示するナノ構造の量または数を検出するように構成される。検出可能な色変化を示すかまたは裏返った別個のナノ構造のパーセンテージが高いほど、結合した分析物の数は多くなり、したがって試料中の分析物の濃度は高くなる。図21に示されるように、この裏返る挙動は、データクラスタリングを示す散布図、データ分布を示すヒストグラム等を含む種々の形式で視覚的に表示され得る。試料への暴露前および暴露後のセンサーの特定の領域を示すそれぞれの領域の比較上の画像も提供され得る。より高い明確性を伴って裏返りの決定の結果を示す第3の注釈がつけられた画像が提供され得る。有利なことに、裏返ったナノ構造および正当な(valid)ナノ構造の絶対数、および正当なナノ構造に対する裏返ったナノ構造の関連のある割合の値を示す、数的データも示される。特に、「裏返った指針(flipped needle)」は、閾値を超えて陽性として計数されるセンサーの数を示す。「合計の正当な指針」は、全集団の一部として計数されるセンサーの数を示す。予想されるパラメータの外側でふるまうセンサーは廃棄され、その後の分析には含まれない。残ったセンサーのみが「正当」とみなされる。裏返った割合は、裏返った指針を合計の正当な指針で割った計算値である。拒絶割合、すなわちプレ画像から廃棄される指針のパーセンテージも示され得る。これは、センサーの質/健常さ(health)の基準として使用される。約10%以上の拒絶割合値を有するセンサーは、質が不十分とみなされ、一般的に信頼できるデータを提供しない。
【0133】
しかしながらいくつかのより高い閾値濃度で、デジタル領域ナノ構造の全ては分析物に結合している。センサーのデジタル領域は有効に飽和されている。全てのナノ構造は裏返っており、局所的な色変化は容易には明らかにならない。この点で、注意はより多くの結合部位を有するより大きなナノ構造を一般的に有するアナログ領域にシフトする。
【0134】
所定のナノ構造の色変化の程度は、ナノ構造の総質量に対する結合した分子の総質量の割合に関連し得る。100未満の分子のみに結合し得るより小さなアナログ領域ナノ構造は、最初に寒色の色相(例えば青色/緑色の範囲内)を明示し得る。数百の分子に結合でき得るより大きなアナログ領域ナノ構造は、最初により暖色の色相(例えば黄色/橙色の範囲内)を明示し得る。アナログ領域中のより高い検出可能な濃度では、より多くの分析物が所定のナノ構造に結合するので、検出可能な色相はより暖かくシフトする。したがって、暴露されない青色のナノ構造は、試料中の特定の分析物濃度に結合した後に、より緑がかった色相を示す。試料中のより高い分析物濃度では、色相はより黄色がかった色へとシフトし得る。同様に、より高い濃度を検出するように構成されたより大きなナノ構造およびより多くの結合部位を有するアナログ領域において、初期の暴露されない黄色のナノ構造は、試料中の特定の分析物濃度に結合した後に、より橙色の色相を示す。試料中のより高い分析物濃度では、色相はより赤味がかった色へとシフトし得る。
【0135】
色シフトは、ただ、単一のアナログナノ構造により検出可能であるが、同様のサイズのナノ構造のシリーズまたはアレイの領域が有利に使用される。同様のサイズのナノ構造の大きな分布を提供することにより、アナログ領域色シフトおよびしたがって検出された分析物濃度をより信頼性高く検出するための平均読出しが提供され得る。
【0136】
より具体的に、図22は、システムレベルで、センサーの一態様の種々のデジタルおよびアナログ領域の検出された出力を集めて、センサーの全ダイナミックレンジにわたり分析物濃度を信頼性高く検出するための一アプローチのフローチャートを示す。ハイブリッドインフォマティックエンジンアルゴリズムのこの形態の使用により、デジタル領域からの不正確なより高い濃度データおよびアナログ領域から不正確なより低い濃度データを信頼性高く拒絶するための別個のデジタルおよびアナログ領域の使用が可能になる。
【0137】
図22の工程1において、クリーンセンサーの種々のデジタルおよびアナログ領域は、センサーの全体的な画像の一部として光学的に画像化され、特定のセンサーについてのそれぞれの領域およびその関連のあるナノ構造の画像状態の信頼性のあるベースライン記録(例えば存在または非存在、初期色相等)を提供する。工程2において、センサーを試料に暴露して、試料中の任意の分析物は、ナノ構造上の関連のある部位に結合し、続いてセンサーはその後の画像化のために従来のように調製される。工程3において、システムは、センサーの暴露後の画像を捕捉し、これは、工程1の画像と比較して、デジタル領域における裏返りおよびアナログ領域における任意の色相変化を検出するために使用される。工程4において、アルゴリズムは、センサーの異なる検出領域(すなわち1つ以上のデジタル領域および1つ以上のアナログ領域)およびセンサーの基準マーカーに対するそれらの配置を同定する。これは、系が、前および後の画像を関連付けて割り当て、それぞれの画像中の対応するナノ構造を同定することを可能にする。工程5および6は、それぞれの対応する領域におけるナノ構造ごとの基準に対する前および後の画像データの個々の別々の分析を伴う。デジタル領域について、工程7Aは、閾値を超える局所的な画像中の十分に大きいシフトを確認して、分析物に結合したそれぞれのナノ構造を同定することにより、分析物と結合したナノ構造を定量化およびその数を計数する。アナログ領域について、工程7Bは、局所的におよびアナログ領域にわたり色相変化を検出し、ナノ構造が局所的および集合的に分析物に結合したと思われる前の画像の色を超える局所的な画像中の十分に大きいシフトを明示する。工程8において、アナログ領域中の色変化が所定の閾値を超えると推定すると、アナログ領域は、その検出可能な範囲内の分析物の濃度を検出したと思われる。色変化に対応する実際の分析物の濃度は、既知の濃度の対照試料により作成されたシステムメモリ中に記憶される標準曲線に対する検出された色変化の比較により決定される。しかしながら、アナログ領域中の色変化が所定の閾値を超えない場合、分析物の濃度は、アナログ領域により信頼性高く検出可能であるもの未満であると思われる。より低い濃度で構成されたアナログ領域が利用可能である場合、同様の分析が実施され得る。そうでなければ、システムはセンサーのデジタル領域中の裏返ったナノ構造のデジタル計数に頼る。裏返ったナノ構造の量または数に対応する分析物の実際の濃度は、既知の濃度の対照試料により作成されたシステムメモリ中に記憶される標準曲線に対する裏返ったデジタルナノ構造の数の比較により決定される。
【0138】
別の態様において、デジタル定量化測定とアナログの間の移行を決定するための例示的なアルゴリズムは、(a)試験される溶液の適用の際に第1のシリーズ中のナノ構造に対して1つの状態から別のものに変化した(裏返った)ナノ構造を測定する工程;(b)試験される溶液の適用の際に第2のシリーズ中のナノ構造の色空間変化を測定する工程;および(c)第2のシリーズの色空間変化が前もって選択された閾値よりも大きい場合に、工程(b)において同定されたアナログ測定値を使用し、第2のシリーズの色空間変化が前もって選択された閾値よりも小さい場合に、工程(a)で同定されたデジタル測定を使用する工程を含む。
【0139】
ナノ構造および結合剤および他の試薬の選択に基づいて、複数の分析物を同時に検出および/または定量化することが可能であることが企図される。例えば図23Aに示されるように、センサーは、その上に配置された、2つの別々の異なる分析物に結合し得るナノ構造700の第1のシリーズおよびナノ構造710の第2のシリーズを有する基板420を含み得る。基板は、検出される分析物の数に応じて、ナノ構造のいくつかのシリーズを含み得ることが企図される。同様に、図23Bに示されるように、センサーは、その上に配置された、2つの別々の異なる分析物に結合する2つの異なるナノ構造700、710のシリーズを有する基板を含み得る。ナノ構造のシリーズはさらなる分析物に結合するナノ構造を含み得ることが企図される。
【0140】
IV. アッセイ
本発明はまた、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法を提供する。該方法は、(a)試料の少なくとも一部を、前述のセンサーのいずれか1つ以上に適用する工程;および(b)ナノ構造の第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズの光学的特性の変化を検出して、それにより試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化する工程を含む。
【0141】
該センサーは、種々の試料、例えば体液、組織抽出物および/または細胞上清である分析物を検出し得る。例示的な体液としては、例えば血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液または間質液が挙げられる。
【0142】
該方法は、少なくとも一部の試料と、本明細書に記載される構造、センサー、カートリッジまたはシステムを合わせる工程、ならびに該構造、センサー、カートリッジまたはシステムへの分析物の結合の存在を検出および/またはその量を定量化する工程を含む。例えば、分析物の、本明細書に記載されるナノ構造またはナノ構造のシリーズへの結合後、分析物の結合は、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化により検出され得る。ある態様において、光学的に検出可能な特性は、色、光散乱、屈折または共鳴(例えば表面プラスモン共鳴、電気的共鳴、電磁的共鳴および磁気的共鳴)である。ある態様において、電磁放射線がナノ構造またはナノ構造のシリーズに適用され得、適用される電磁放射線は、ナノ構造またはナノ構造のシリーズが、分析物を含むことが疑われる試料と相互作用する場合に変化し得る。例えば、分析物の存在は、強度、色または蛍光の変化を生じ得る。
【0143】
別の態様において、該方法は、試料の一部を、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに適用することを含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含む。該領域は、例えば電磁放射線を使用して信号を送られて、ナノ構造の第1および第2のシリーズから検出可能なシグナルを検出し、該シグナルは、試料中の分析物の存在および/または量を示す。次いで、分析物の存在および/または量は、検出可能なシグナルから決定され得、それにより第1の濃度範囲と第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化し得る。
【0144】
別の態様において、方法は、試料の一部を、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに適用することを含む。第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される。第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される。該領域は、例えば電磁放射線を使用することにより信号を送られ、ナノ構造の第1および第2のシリーズから検出可能なシグナルを検出し、該シグナルは、試料中の分析物の存在および/または量を示す。次いで、分析物の存在および/または量は、検出可能なシグナルから決定されて、それにより第1の濃度範囲と第2の濃度範囲の両方にわたり、試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化し得る。
【0145】
例示的なアッセイにおいて、ナノ構造またはナノ構造のシリーズは、目的の分析物に結合する結合剤(例えば抗体)により機能化される。機能化後、標的分析物を含む試料(例えば流体試料)は、試料中に分析物が存在する場合に結合剤が、結合剤-分析物複合体を形成することを許容する条件下で、ナノ構造またはナノ構造のシリーズに添加される。抗体への分析物の結合により、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化が生じる。特定のアッセイ、例えば非標識アッセイについて、結合剤-分析物複合体の形成は単独で、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化を生じることが企図される。他のアッセイ、例えば標識系アッセイについて、分析物と複合体を形成する第2の結合剤も、該複合体において直接または間接的に、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化を生じ得るかまたは変化を増加させる標識を含み得る。ナノ構造は、粒子もしくはビーズをナノ構造に結合させるかまたはそうでなければ会合させることなく、分析物の存在および/または量を検出し得ることが企図される。
【0146】
例示的なサンドイッチ免疫アッセイにおいて、ナノ構造またはナノ構造のシリーズは、目的の分析物に結合する第1の結合剤(例えば第1の抗体)で機能化される。機能化後、標的分析物の存在および/または量について分析される試料(例えば流体試料)は、試料中に分析物が存在する場合に第1の結合剤が第1の結合剤-分析物複合体を形成することを許容する条件下で、ナノ構造またはナノ構造のシリーズに添加される。次いで、目的の分析物に結合する第2の結合剤(例えば第2の抗体)は、第2の結合剤が第2の結合剤-分析物複合体を形成することを許容する条件下で、ナノ構造またはナノ構造のシリーズに添加される。分析物の第1および第2の結合剤への結合により、「サンドイッチ」配置の複合体が生じる。サンドイッチ複合体の形成は、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化を生じ得る。しかしながら、特定のアッセイ、例えば非標識アッセイについて、サンドイッチ複合体の形成は単独で、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化を生じることが企図される。他のアッセイ、例えば標識系アッセイについて、サンドイッチ複合体中の第2の結合剤は、直接または間接的のいずれかでナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化を生じるかまたは増加させる標識を含み得る。
【0147】
図24は、分析物650が、ナノ構造20上に固定された結合剤750と相互作用する例示的なアッセイを示す。ナノ構造の捕捉容量は、ナノ構造と利用可能な捕捉剤の間の寸法の関係の両方により決定される。図25は、ナノ構造20と結合した分析物650の間に1:1の比(左のパネル)、ナノ構造と結合した分析物の間に1:2の比(真ん中のパネル)およびナノ構造と結合した分析物の間に1:5の比(右のパネル)がある例示的なアッセイを示す。図26は、ナノ構造20が分析物650に数で勝る例示的なアッセイを示し、この場合、それぞれのナノ構造は、多くとも1つの分析物を捕捉する可能性がある。ナノ構造20は、上述のように、ナノ製作技術により基板上に直接製作され得る。図27は、ケイ素基板320上に配置されるナノ製作されたナノ構造20を示し、分析物650はナノ構造の一部に結合される。分析物とナノ構造の間の結合は固体中間面上で起こる。ナノ構造を測定して、その表面上の結合した分析物の数を決定し得る。図24~27は、単一の結合剤(例えば抗体またはアプタマー)を使用して標的分析物を結合する非標識免疫アッセイの例を示す。この方法を使用して、結合親和性、結合動力学(オン速度およびオフ速度(on and off rate))等を測定またはそうでなければ定量化し得る。
【0148】
図28は、例示的な非標識免疫アッセイを示し、ここで複数の第1の抗体(Ab1)はナノ構造20の流体暴露された表面に固定される。その後、検出および/または定量化される分析物(0)を含む試料を、単独で、または好ましくは第2の異なるエピトープを介して分析物に結合する第2の抗体(Ab1)と組み合わせてのいずれかで、ナノ構造と接触させる。第2の抗体(Ab2)は、分析物の後に添加され得る。2つの抗体(Ab1およびAb2)および存在する場合には分析物(0)は、ナノ構造20の表面上に固定される複合体を形成する。複合体のナノ構造への結合は、検出システムにより検出され得るナノ構造の特性の変化を引き起こし得る。図29は、この態様において第2の抗体が標識されること以外は、本質的に、図28に関して上述されるように実施される例示的な標識系免疫アッセイを示す。複合体のナノ構造20への結合は、直接(例えば金標識を介して)または間接的に(例えばさらなる生成物を生じる酵素を介して)のいずれかで、検出システムにより検出され得るナノ構造の特性の変化を生じるように、標識760を介して検出され得る。
【0149】
代替的なアッセイにおいて、標的分析物の存在および/または量について分析される試料(例えば流体試料)を、(i)試料中に分析物が存在する場合に第1の結合剤が第1の結合剤-分析物複合体を形成することを許容する条件下で第1の結合剤(例えば抗体)、および(ii)第2の結合剤が第2の結合剤-分析物複合体を形成することを許容する条件下で、目的の分析物に結合する第2の結合剤(例えば第2の抗体)とインキュベートする。分析物の第1および第2の結合剤への結合により、溶液中で自由に生じる「サンドイッチ」配置の複合体が生じる。次いで、該アッセイに応じて、複合体化するかまたは複合体化しないかいずれかの第1の結合剤、第2の結合剤および/または分析物は、複合体またはその構成要素がナノ構造またはナノ構造のシリーズにより結合されて、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの特性(例えば光学的に検出可能な特性)の変化を生じるような条件下で、ナノ構造またはナノ構造のシリーズに添加される。ある態様において、抗体の1つまたは両方は、ビオチンにより標識され、サンドイッチ複合体は、例えばアビジンまたはビオチンで機能化された任意のナノ構造またはナノ構造のシリーズの表面上に固定され得る。
【0150】
典型的に、結合剤が抗体である場合、次いでそれぞれのアッセイ工程の間で、分析物に結合したナノ構造を、穏やかな界面活性剤溶液で洗浄し得る。典型的なプロトコルはまた、タンパク質試薬のナノ構造への望ましくない非特異的な結合を阻害または低減するようなウシ血清アルブミンまたはカゼインなどの非特異的に結合するタンパク質の使用を含む、1つ以上のブロッキング工程を含む。
【0151】
標識系アッセイにおける使用のための例示的な標識としては、放射性標識、蛍光標識、視覚的標識、酵素標識または診断もしくは予後アッセイにおいて有用な他の従来の検出可能な標識、例えばラテックスもしくは金粒子などまたはラテックスもしくは金ゾル粒子などの粒子が挙げられる。例示的な酵素標識としては、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)およびグルコースオキシダーゼ(GO)が挙げられる。標識が酵素である場合、アッセイは、ナノ構造またはナノ構造のシリーズの光学的に検出可能な特性の変化を生じるシグナルを生じる適切な酵素基質の添加を含む。該基質は、例えば色原体基質または蛍光発生性基質であり得る。HRPについての例示的な基質としては、OPD(HRPとの反応後に琥珀色に変わるo-フェニレンジアミンジヒドロクロライド)、TMB(HRPとの反応後に青色に変わる3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)、ABTS(HRPとの反応後に緑色に変わる2,2'-アジノ-ビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS);3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC);3,3'ジアミノベンジジン(DAB);StayYellow (AbCam TM製品);および4-クロロ-1-ナフトール(4-CNまたはCN)が挙げられる。アルカリホスファターゼについての例示的な基質としては、PNPP(アルカリホスファターゼとの反応後に黄色に変わるp-ニトロフェニルホスフェート、二ナトリウム塩)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)およびp-ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT);Stay Green (AbCam TM製品);および4-クロロ-2-メチルベンゼンジアゾニウム(Fast Redとして公知)が挙げられる。β-Galについての例示的な基質としては、o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-B-D-ガラクトピラノシド(X-Gal)が挙げられる。GOについての例示的な基質としては、2,2',5-5'-テトラ-p-ニトロフェニル-3,3'-(3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレン)-ジテトラゾリウムクロライド(t-NBT)が挙げられる。好ましい酵素は、速く安定な代謝回転速度を有する。
【0152】
望ましい場合、標識および結合剤は、リンカー、例えば切断可能リンカー、例えば光切断可能リンカー、酵素切断可能リンカーにより結合、例えば共有結合され得る。光切断可能リンカーは、電磁放射線(例えば可視光、UV光または赤外光)への暴露により切断され得るリンカーである。リンカーを光切断するために必要な光の波長は、使用される光切断可能リンカーの構造に依存する。例示的な光切断可能リンカーとしては、限定されないが、o-ニトロベンジル部分、p-ニトロベンジル部分、m-ニトロベンジル部分、ニトインドリン(nitoindoline)部分、ブロモヒドロキシクマリン部分、ブロモヒドロキシキノリン部分、ヒドロキシフェナシル部分、ジメトジベンゾイン(dimethozybenzoin)部分またはそれらの任意の組合せを含む化学分子が挙げられる。例示的な酵素切断可能リンカーとしては、限定されないが、DNA、RNA、ペプチドリンカー、β-グルクロニドリンカーまたはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0153】
図30は、ビオチンで標識される第1の抗体(Ab1)およびHRPで標識される第2の抗体(Ab2)を含む例示的な分析物定量化アッセイを示す。いずれの抗体も、この段階ではナノ構造上に固定されない。それぞれの抗体は、例えば分析物上の別のエピトーブを介して標的分析物に結合する。第1の抗体、第2の抗体および分析物のインキュベーションは、サンドイッチ複合体(工程1参照)の形成を生じる。次いでサンドイッチ複合体は、Ab1にコンジュゲートしたビオチンに結合するアビジンまたはストレプトアビジンコーティング表面(例えばストレプトアビジンコーティングビーズ)により捕捉される(工程2参照)。この捕捉戦略は、そうでなければ固体表面上に予め固定された(例えばコーティングされた)抗体により分析物を直接捕捉することにより捕捉されるものよりも多くの分析物を捕捉することが企図される。洗浄工程後、所望の場合は、Ab2は、溶液条件を変えることにより(例えばpH、塩濃度または温度を変えることにより)ストレプトアビジン表面から溶出され(工程3参照)、次いで活性化された(機能化はされない)ナノ構造または活性化されたナノ構造のシリーズに適用され(工程4参照)、その際に、溶出されたAb2分子は、活性化されたナノ構造により捕捉される。HRP基質(例えばTMB)は次いで、ナノ構造またはナノ構造のシリーズに適用され、これは次いでナノ構造またはナノ構造のシリーズ上で形成される生成物(例えば沈殿)に触媒的に変換され、検出可能なシグナルを生じ(工程5参照)、次いでシステムにより検出され得る(工程6参照)。
【0154】
図31は、ビオチンで標識される第1の抗体(Ab1)およびHRPで標識される第2の抗体(Ab2)を含む別の例示的な分析物定量化アッセイを示す。Ab1は、光切断可能リンカーを介してビオチンに共有結合する。それぞれの抗体は、標的分析物に結合する。第1の抗体、第2の抗体および分析物のインキュベーションは、サンドイッチ複合体の形成を生じる(工程1参照)。次いでサンドイッチ複合体は、Ab1上のビオチンに結合するアビジンまたはストレプトアビジンコーティング表面(例えばストレプトアビジンコーティングビーズ)により捕捉される(工程2参照)。富化および洗浄後、所望の場合は、次いで光切断可能リンカーを切断し、ストレプトアビジン表面からサンドイッチ複合体を除去し(工程3参照)、複合体を活性化されたナノ構造または活性化されたナノ構造のシリーズに適用し(工程4参照)、その際に、Ab2またはAb2含有複合体は、活性化されたナノ構造(1つまたは複数)により捕捉される。次いでHRP基質(例えばTMB)をナノ構造またはナノ構造のシリーズに適用し、次いでナノ構造またはナノ構造のシリーズ上で形成される生成物(例えば沈殿)に触媒的に変換され、検出可能なシグナルを生じ(工程5参照)、次いでシステムにより検出され得る(工程6参照)。
【0155】
図32は、ビオチンで標識される第1の抗体(Ab1)およびビオチンで標識される第2の抗体(Ab2)を含む別の例示的な分析物定量化アッセイを示す。それぞれの抗体は、標的分析物に結合する。第1の抗体、第2の抗体および分析物のインキュベーションは、サンドイッチ複合体の形成を生じる(工程1参照)。次いでサンドイッチ複合体は、Ab1またはAb2上のビオチンに結合するアビジンまたはストレプトアビジンコーティング表面(例えばストレプトアビジンコーティングビーズ)により捕捉される(工程2参照)。次いで光切断可能リンカーを介してストレプトアビジンに共有結合したHRPを添加し(工程3)、これはAb1またはAb2上の遊離ビオチンに結合する。富化および洗浄の後、適切な場合は、光切断可能リンカーは切断されてHRPを放出し、次いで活性化されたナノ構造または活性化されたナノ構造のシリーズに適用され、それにより捕捉される(工程4参照)。HRP基質の添加によりナノ構造またはナノ構造のシリーズの表面上で生成物(例えば沈殿)が生じ、検出可能なシグナルを生じ(工程5参照)、次いでシステムにより検出され得る(工程6参照)。
【0156】
図33は、ビオチンで標識される(例えば共有結合される)第1の抗体およびオリゴヌクレオチドで標識される(例えば共有結合される)第2の抗体を含む別の例示的な分析物定量化アッセイを示す。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの1つの末端に配置される切断可能リンカーにより抗体に結合され、他の末端で任意に検出可能な標識(例えばフルオロフォアまたは酵素)を含む。切断可能リンカーは、オリゴヌクレオチドの1つの末端で挿入されるウラシルまたは複数のウラシルであり得る。オリゴヌクレオチドは、工程1における標的分析物についてのバーコードとして働き得る。これは、マルチプレックス反応を容易にするために異なる分析物に結合する抗体を用いて実施され得る。それぞれの抗体は、試料中に存在する場合は標的分析物に結合する。第1の抗体、第2の抗体および分析物のインキュベーションは、サンドイッチ複合体の形成を生じる(工程1参照)。並行して、ナノ構造またはナノ構造のシリーズは、検出されるそれぞれの分析物についてのバーコードとして働くオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドで機能化され得る(工程1'参照)。次いで、サンドイッチ複合体は、第1の抗体上のビオチンに結合するストレプトアビジンコーティング表面(例えばストレプトアビジンコーティングビーズ)により捕捉される(工程2参照)。富化および洗浄の後、適切な場合は、それぞれの複合体中のオリゴヌクレオチドは、切断可能リンカーの切断により放出され得(工程3参照)、これはナノ構造またはナノ構造のシリーズに結合された相補的なオリゴヌクレオチドに適用され、それにより捕捉され(工程4参照)、次いでシステムにより検出される(工程5)。分析物の同一性および/または濃度は、ナノ構造の表面上に配置された相補的なオリゴヌクレオチドにより捕捉されるバーコードオリゴヌクレオチドから決定され得る。
【0157】
図34は、例示的なマルチプレックス検出アッセイについての試薬を示す。例えば、複数の個々のビーズは、対応する複数の標的分析物に結合する対応する複数の捕捉抗体Ab1、Ab2、Ab3等でコーティングされる(図34A)。対応する複数の検出抗体は、切断可能(例えば光切断可能)リンカーを介して、オリゴヌクレオチド(分析物についてのバーコード)で標識され(図34B参照)、次いで粒子と合わされる。図34Cは、2x5ナノ構造アレイを有するセンサーを示し、ここで異なる領域は、対応するバーコードオリゴヌクレオチドに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドを含む。ビーズは、試料と合わされて混合される。サンドイッチ複合体を形成させる後、ビーズは洗浄され、オリゴヌクレオチドは、切断可能リンカーの切断により放出される。放出されたバーコードオリゴヌクレオチド(標識有りまたなしのいずれか)は、次いで捕捉オリゴヌクレオチドの領域を有するセンサーに適用され(図34D参照)、捕捉され、適切な場合は検出される。抗体コーティングビーズの数、オリゴヌクレオチド標識抗体の数およびオリゴヌクレオチドがプリントされた領域の数は、実施される所望のアッセイに応じて、大規模化され得る。
【0158】
構成物(例えばセンサー、カートリッジまたはシステム)が、特定の構成要素を有する(having)、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載される、またはプロセスおよび方法が、特定の工程を有する、含むもしくは含むと記載される記載を通じて、さらに、記載される構成要素から本質的になるかまたはそれからなる本発明の構成物があること、ならびに記載される処理工程から本質的になるかまたはそれからなる本発明のプロセスおよび方法があることが企図される。
【0159】
本願において、要素または構成要素が記載される要素もしくは構成要素のリストに含まれるおよび/またはそれから選択されるといわれる場合、要素もしくは構成要素は、記載される要素もしくは構成要素のいずれか1つであり得るか、または要素もしくは構成要素は、記載される要素もしくは構成要素の2つ以上からなる群より選択され得ることが理解されるべきである。
【0160】
さらに、本明細書に記載される構成物(例えばセンサー、カートリッジまたはシステム)または方法の要素および/または特徴は、本明細書において明示的であるか黙示的であるかのいずれにせよ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の方法で組み合され得ることが理解されるべきである。例えば、特定の特徴について参照がなされる場合、特徴は、文脈からそうではないと理解されない限り、本発明の構成物および/または本発明の方法の種々の態様において使用され得る。すなわち、本願において、態様は、明確および簡潔な適用を記載および図示し得る方法で記載されて示されているが、態様は、本教示および発明(1つまたは複数)から逸脱することなく種々に組み合され得るかまたは分離され得ることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載および示される全ての特徴は、本明細書に記載および示される発明(1つまたは複数)の全ての局面に適用可能であり得ることが理解される。
【0161】
表現「少なくとも1つの」は、文脈および用途からそうではないと理解されない限り、該表現の後に記載されるもののそれぞれを個々におよび記載されるものの2つ以上の種々の組合せを含むことが理解されるべきである。3つ以上の記載されるものに関して、表現「および/または」は、文脈からそうではないと理解されない限り、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0162】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」または「含む(containing)」の使用は、その文法的な同等物を含めて、文脈にそうではないと具体的に記されないかまたは文脈からそうではないと具体的に理解されない限り、例えば記載されていないさらなる要素または工程を排除することなく、一般的に、開放型および非限定として理解されるべきである。
【0163】
用語「約」の使用が量的値の前にある場合、本発明は、そうではないと具体的に記載されない限り、具体的な量的値自体も含む。本明細書で使用する場合、用語「約」は、そうではないと示されないかまたは推測されない限り、名目上の値から±10%の変動をいう。
【0164】
工程の順序または特定の行為を実行するための順序は、本発明が実施可能なままである限りは重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または行為は同時に実施されてもよい。
【0165】
本明細書における任意および全ての例または例示的な用語、例えば「など(such as)」または「含む(including)」の使用は、単に本発明をよりよく説明するために意図され、特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を与えない。明細書における用語は、本発明の実施に必須のものとして、任意の特許請求されない要素を示すように解釈されるべきではない。
【実施例
【0166】
実施例
以下の実施例は単なる説明であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することは意図しない。
【0167】
実施例1-タウタンパク質に結合するための例示的なセンサーの作製および試験
この実施例には、濃度の約6対数のダイナミックレンジにわたる、試料中のタウタンパク質を定量化するのに有用なセンサーの作製が記載される。
【0168】
ケイ素ウェーハーを洗浄して脱水した。SiO2の厚い層(25nm)を、化学蒸着法を使用して、ケイ素ウェーハー上に蒸着した。ポリメチルメタクリレート950 A2 (PMMA 950 A2)を、3,000rpmで45秒間、SiO2層にスピンコーティングした。ウェーハーを180℃で90秒間加熱した。電子ビームリトグラフィーを使用して、PMMA層上にナノ構造断面を書き込んだ。PMMAを、メチルイソブチルケトン/イソプロピルアルコール(MIBK/IPA)で現像させた。熱蒸着器を使用して、PMMA上にアルミニウムの薄層(30nm)をコーティングした。次いで、アルミニウム層のリフトオフのためにウェーハーをアセトン中に一晩浸漬した。ハードマスクとしてアルミニウムを使用して、反応性イオンエッチングを使用して最初にSiO2層(25nm)をエッチングし、次いでケイ素を、約150nmにエッチングして、ナノ構造を形成した。それぞれのナノ構造間のピッチは約2μmであった。デジタルナノ構造の直径は約95nmであった。3つのサイズにグループ分けされたアナログナノ構造の直径は、約110nm、120nm、および130nmであった。
【0169】
ナノ構造を抗体で機能化するために、ナノ構造を、ロッキングプラットフォーム上で、エタノール中5%の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTMS)に30分間浸漬した。さらなるエタノールを使用して、チップを完全にすすぎ、チップ上の過剰なATPMSを洗浄した。チップをホットプレート上で6時間硬化させた。光学顕微鏡を使用して、ナノ構造の暗視野光学画像を捕捉して、これらの画像をプレ画像として割り当てた。
【0170】
APTMS改変センサー表面を活性化するために、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中5%グルタルアルデヒドを1時間添加した。脱イオン水中ですすいだ後、PBS中5μg/mLのタウ抗体をセンサー表面に、2時間コーティングした。次いで、PBS中3%のウシ血清アルブミンおよび1%カゼインを1時間適用して、表面への非特異的結合をブロックした。次いで、異なる濃度の組換えタウタンパク質をセンサーに2時間適用した。1μg/mLのビオチニル化タウ抗体をセンサーに1時間適用して、組換えタウタンパク質によりサンドイッチを形成した。次いで、0.5μg/mLのストレプトアビジン-HRPを添加して、タウ抗体上のビオチン基と30分間結合させた。テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して、サンドイッチ上に非可溶性塊を形成した。塊の変化は、それに結合したタウタンパク質を有するナノ構造の色変化を誘導した。
【0171】
チップをすすいだ後、ナノ構造の暗視野画像を撮り、ポスト画像として割り当てた。得られたセンサーの画像(およびデータ出力)を図3B、35および37に示す。
【0172】
異なるタウ濃度で、デジタルセクション中のナノ構造の一連のポスト画像を図35に示す。陽性割合は、1つの状態から別のものに裏返ったナノ構造のパーセンテージにより規定する。濃度が増加するにつれて、陽性割合も増加した(図36参照)。濃度が約1ng/mLに達した場合、ナノ構造のほとんどは、色の裏返りを経験したので、(図36に示されるように)分析物の濃度の増加により、陽性割合はもはや変化しなかった。
【0173】
アナログセクション中のナノ構造の色相値を、プレ画像とポスト画像の間で比較した。Δ色相のヒストグラムを図37に示す。分析物の濃度が低い場合(例えば1ng/mL未満)、Δ色相は0に近づいた。これらの濃度範囲において、図36からの陽性裏返りを分析物濃度の指標として使用した。図36において濃度が1ng/mLよりも増加したので、Δ色相は、図38に示されるように増加を開始した。そのため、デジタルおよびアナログの両方の分析を合わせると、タウタンパク質濃度は、1pg/mL~1μg/mL(約6桁)の大きなダイナミックレンジで測定できた。このアッセイにおいて、タウタンパク質は1pg/mLまで検出された。
【0174】
実施例2-IL-6に結合するための例示的なセンサーの作製および試験
この実施例にはIL-6に結合するナノ構造の作製および試験が記載される。
【0175】
本質的に実施例1に記載されるとおりにセンサーを作製した。しかしながら、ナノ構造は、タウ抗体ではなくIL-6抗体で機能化した。HRPで標識した第2のIL-6抗体(第1の抗体とは異なるエピトープを標的化する)を使用してサンドイッチを形成した。本質的に実施例1に記載されるとおりに反応を行い、結果を図39に示す。
【0176】
図39に示されるように、デジタルおよびアナログの検出法の組合せは、7pg/mL~1μg/mLの範囲のIL-6タンパク質の定量化を可能にする。
【0177】
回収分析について、7pg/mL、25pg/mL、50pg/mL、75pg/mLおよび125pg/mLのIL-6濃度を調製し、バッファ溶液にスパイクした。図39に示される標準曲線を使用して、検出されたIL-6の分子を定量化した。スパイク回収率は、少なくとも95%であると見出された。
【0178】
実施例3-異なる培体においてIL-6、TNFおよびC反応性タンパク質(CRP)を検出するための例示的なセンサーの使用
この実施例には、例示的なナノ構造を使用して、血漿中のIL-6およびTNFならびに細胞培養培地中のCRPを検出し得ることが示される。
【0179】
機能化されたナノ構造を有するセンサーを作製して、捕捉および検出抗体は所定の標的分析物について選択した以外は、本質的に実施例1および2に記載されるとおりに試験した。結果を図40A、40Bおよび40Cに示し、これはナノ構造が、分析物濃度の関数としてそれぞれの標準曲線の良好な線形性を伴って、IL-6(血漿中)、TNF(血漿中)およびCRP(細胞培養培地中)を検出し得ることを示す。
【0180】
参照による援用
本明細書で言及される特許文献および科学文書のそれぞれの全開示は、全ての目的で参照により援用される。
【0181】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で実現され得る。そのため、前述の態様は、全ての点において、本明細書に記載される発明の限定ではなく、例示としてみなされる。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の同等物の意味および範囲に入る全ての変更が本発明に包含されることが意図される。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
第1の領域および第2の領域を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、
第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、
第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、
該センサーは、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり試料中の分析物の量を定量化し得る、センサー。
項2
第1の領域および第2の領域を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、
第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のいくつかのナノ構造から決定され、
第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され、
該センサーは、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたり試料中の分析物の量を定量化し得る、センサー。
項3
第1の濃度範囲が、第2の濃度範囲のものよりも低い検出可能な値を有する、項1または2記載のセンサー。
項4
第2の濃度範囲が、第1の濃度範囲のものよりも高い検出可能な値を有する、項1~3いずれか記載のセンサー。
項5
第1の濃度範囲が第2の濃度範囲と重複する、項1~4いずれか記載のセンサー。
項6
目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、該センサーが:
分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、
分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される、センサー。
項7
第1の領域が:
(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;
(ii)少なくとも10nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;
(iii)200nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または
(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さ
の1つ以上を含み;
任意に、該センサーがさらに:
(v)基準マーカー;または
(vi)ナノ構造製作対照特徴
の1つ以上を含む第2の領域を含む、項1~6いずれか記載のセンサー。
項8
目的の試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化するためのセンサーであって、該センサーが:
分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含む第1の領域を含み、
ここで試料中の分析物の濃度が、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第1の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定され、
第1の領域が:
(i)少なくとも1μmの隣接するナノ構造の中心-対-中心の間隔;
(ii)少なくとも100nmのそれぞれのナノ構造の最小断面寸法もしくは直径;
(iii)300nm以下のそれぞれのナノ構造の最大断面寸法もしくは直径;または
(iv)50nm~1000nmの範囲のそれぞれのナノ構造の高さ
の1つ以上を含み;
任意に、該センサーがさらに:
(v)基準マーカー;または
(vi)ナノ構造製作対照特徴
の1つ以上を含む第2の領域を含む、センサー。
項9
分析物に結合し得、第3の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るさらに異なるナノ構造の第3のシリーズを含む第3の領域をさらに含むセンサーであって、
第1、第2および/または第3の濃度範囲にわたる試料中の分析物の量を定量化し得る、項1~8いずれか記載のセンサー。
項10
任意の第2のシリーズ中のナノ構造が、第1のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含む、項1~9いずれか記載のセンサー。
項11
任意の第3のシリーズ中のナノ構造が、任意の第2のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含む、項1~10いずれか記載のセンサー。
項12
第1および任意の第2のナノ構造が、分析物に結合する結合剤により機能化される、項1~10いずれか記載のセンサー。
項13
第3のナノ構造が、分析物に結合する結合剤により機能化される、項9または11記載のセンサー。
項14
結合剤が生物学的結合剤である、項12または13記載のセンサー。
項15
生物学的結合剤が、抗体、アプタマー、受容体、酵素または核酸である、項14記載のセンサー。
項16
第1のシリーズ中の結合剤が、分析物について、任意の第2のシリーズ中の結合剤よりも高い結合親和性を有する、項13~15いずれか記載のセンサー。
項17
分析物が生物学的分子である、項1~16いずれか記載のセンサー。
項18
生物学的分子が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖蛋白、グリコペプチド、脂質、リポ蛋白、核酸または核蛋白である、項17記載のセンサー。
項19
少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12桁に及ぶ範囲にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得る、項1~18いずれか記載のセンサー。
項20
少なくとも5、6、7、8または9桁に及ぶ範囲にわたる試料中の分析物の濃度を検出し得る、項19記載のセンサー。
項21
1pg/mL未満~100ng/mLより高い、0.1pg/mL未満~1μg/mLより高いまたは0.01pg/mL未満~100μg/mLより高い、または1fg/mL未満~1mg/mLより高い範囲の分析物の濃度を測定し得る、項19または20記載のセンサー。
項22
試料が、センサーへの適用前に希釈される必要がない、項19、20または21記載のセンサー。
項23
試料が、体液、組織抽出物および/または細胞上清である、項1~22いずれか記載のセンサー。
項24
体液試料が、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液もしくは間質液を含み、および/または組織試料が生検試料を含む、項23記載のセンサー。
項25
分析物の結合が、ナノ構造の少なくとも1つのシリーズの光学的に検出可能な特性の変化により検出される、項1~24いずれか記載のセンサー。
項26
光学的に検出可能な特性が、色、光散乱、屈折または共鳴(例えば表面プラスモン共鳴、電気的共鳴、電磁的共鳴および磁気的共鳴)である、項25記載のセンサー。
項27
ナノ構造の第1のシリーズにおいて、分析物に結合する個々のナノ構造が、分析物の単一の分子または所定の数未満の分析物の分子のいずれかに結合する際に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度が、第1の濃度範囲内に存在する場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される、項1~5および9~25いずれか一項記載のセンサー。
項28
試料中の分析物の濃度が、(i)分析物に結合しなかった個々のナノ構造の残りの数または(ii)第1のシリーズにおけるナノ構造の総数のいずれかに対して、分析物に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数のデジタル計数により決定される、項6、7または27記載のセンサー。
項29
分析物の濃度が、第2の濃度範囲または第3の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域および/または第3の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される、項1~5および9~28いずれか一項記載のセンサー。
項30
光学的に検出可能な特性の変化が、分析物の濃度の関数としての、第2のシリーズおよび/または第3のシリーズにより生じる色変化である、項8または29記載のセンサー。
項31
ナノ構造が、平坦な面および/または屈曲した面のナノ構造である、項1~30いずれか記載のセンサー。
項32
ナノ構造が、平坦な支持体および/または可撓性の基板上に配置される、項1~31いずれか記載のセンサー。
項33
ナノ構造が、平坦な支持体および/または可撓性の基板と一体化される、項32記載のセンサー。
項34
ナノ構造が、半導電性材料または金属で製作される、項1~33いずれか記載のセンサー。
項35
半導電性材料がケイ素を含む、項34記載のセンサー。
項36
基準マーカーをさらに含む、項1~35いずれか記載のセンサー。
項37
基準マーカーが、明視野顕微鏡検査および/または暗視野顕微鏡検査により光学的に検出可能である、項36記載のセンサー。
項38
試験試料中の対応する複数の異なる分析物を検出するために複数の異なる結合剤を含む、項1~37いずれか記載のセンサー。
項39
ナノ構造の第1、第2または第3のシリーズの少なくとも1つがアレイを含む、項1~38いずれか記載のセンサー。
項40
ナノ構造の第1、第2および第3のシリーズのそれぞれがアレイを含む、項1~39いずれか記載のセンサー。
項41
第1の濃度範囲および任意の第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度が、分析物の分子に結合した第1のシリーズおよび/または第2のシリーズのそれぞれ中の個々のナノ構造の数から決定される、項1、3~7および9~40いずれか一項記載のセンサー。
項42
第1の濃度範囲および任意の第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度が、第1の領域および/または第2の領域のそれぞれ中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される、項1、3~5および8~40いずれか一項記載のセンサー。
項43
項1~42いずれか記載のセンサーを含む少なくとも1つのウェルを画定するハウジングを含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのカートリッジ。
項44
ハウジングが複数のウェルを画定し、それぞれのウェルが項1~42いずれか記載のセンサーを含む、項43記載のカートリッジ。
項45
目的の試料中の分析物の存在を検出するためまたはその量を定量化するためのシステムであって:
(a)項1~42いずれか記載のセンサーまたは項43もしくは44記載のカートリッジを受容するための受容チャンバ;
(b)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズを照射するための光源;
(c)ナノ構造の少なくとも第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズにおける光学的特性の変化を検出するための検出器;ならびに
(d)第1の濃度範囲と選択的に任意の第2の濃度範囲の間の中間面および選択的に任意の第2の濃度範囲と選択的に任意の第3の濃度範囲の間の中間面を同定するコンピューターアルゴリズムを実行する、任意のコンピュータープロセッサ
を含む、システム。
項46
アルゴリズムが、(a)試験される溶液の適用の際に、第1のシリーズ中のナノ構造の数に対して、1つの状態から別のものに変化したナノ構造の数を測定する工程;(b)試験される溶液の適用の際に、ナノ構造の第2のシリーズ中のナノ構造の色空間変化を測定する工程;ならびに(c)第2のシリーズの色空間変化が予め選択された閾値よりも大きい場合に工程(b)において回収されたアナログ測定値を使用して、第2のシリーズの色空間変化が予め選択された閾値よりも小さい場合に工程(a)で回収されたデジタル測定値を使用する工程を含む、項45記載のシステム。
項47
(a)試料の一部を、項1~42いずれか記載のセンサーに適用する工程;ならびに
(b)ナノ構造の第1のシリーズおよび/または任意の第2のシリーズおよび/または任意の第3のシリーズの特性の変化を検出して、それにより試料中の分析物の存在を検出またはその量を定量化する工程
を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法。
項48
工程(b)において、該特性が光学的特性である、項47記載の方法。
項49
少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11または12対数の濃度範囲の分析物を検出し得る、項47または48記載の方法。
項50
少なくとも5、6、7、8または9対数の濃度範囲の分析物を検出し得る、項49記載の方法。
項51
ナノセンサーが、1fg/mL未満~1mg/mLより高い濃度範囲の分析物を検出し得る、項47~50いずれか記載の方法。
項52
該試料が、センサーへの適用前に希釈されない、項47~51いずれか記載の方法。
項53
該試料が、体液、組織抽出物または細胞上清である、項47~52いずれか記載の方法。
項54
試料が同じウェルに配置されるナノ構造の両方のシリーズに同時に適用される場合に、分析物が、ナノ構造の第1のシリーズおよびナノ構造の第2のシリーズの濃度範囲にわたり同時に検出され得る、項47~53いずれか記載の方法。
項55
(a)試料の一部を、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに適用する工程、
(i)第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、
(ii)第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含む;
(b)ナノ構造の第1および第2のシリーズから検出可能なシグナルを検出する工程;ならびに
(c)検出可能なシグナルから、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度を決定する工程
を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法。
項56
(a)試料の一部を、第1の領域および第2の領域を含むセンサーに適用する工程、
(i)第1の領域は、分析物に結合し得、第1の濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得るナノ構造の第1のシリーズを含み、ここで分析物に結合する第1のシリーズの個々のナノ構造は、分析物に結合する際に光学的に検出され、その際に、試料中の分析物の濃度は、第1の濃度範囲内にある場合に、分析物の分子に結合した第1のシリーズ中の個々のナノ構造の数から決定される、および
(ii)第2の領域は、分析物に結合し得、第2の異なる濃度範囲内の試料中の分析物の濃度を示す検出可能なシグナルを生じ得る異なるナノ構造の第2のシリーズを含み、ここで試料中の分析物の濃度は、第2の濃度範囲内にある場合に、分析物の濃度の関数として、第2の領域中のナノ構造の光学的に検出可能な特性における実質的に均一な変化のアナログ検出により決定される;
(b)ナノ構造の第1および第2のシリーズから検出可能なシグナルを検出する工程;ならびに
(c)検出可能なシグナルから、第1の濃度範囲および第2の濃度範囲の両方にわたる試料中の分析物の濃度を決定する工程
を含む、目的の試料中の分析物の存在を検出するまたはその量を定量化する方法。
項57
第2のシリーズ中のナノ構造が、第1のシリーズ中のナノ構造のものよりも大きい(i)平均高さ、(ii)平均体積、(iii)平均表面積、(iv)平均質量および(v)分析物結合部位の平均数の1つ以上を含む、項55または56記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40