(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ニードルパンチされた吸収性層複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20240903BHJP
B32B 7/09 20190101ALI20240903BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240903BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240903BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B32B5/24 101
B32B7/09
B32B27/34
B32B27/36
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2021562987
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020061093
(87)【国際公開番号】W WO2020216745
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102019110494.7
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513044337
【氏名又は名称】アドラー ペルツァー ホルディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Adler Pelzer Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ、フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】シン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】キアシュ、フォルカー
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161918(JP,A)
【文献】特開2002-345624(JP,A)
【文献】特開昭61-132334(JP,A)
【文献】特開2009-150138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0050514(US,A1)
【文献】特表2017-536272(JP,A)
【文献】特開平09-248872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60R 13/01-13/04
G10K 11/00-13/00
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PURフォームの上面及び/又は下面に配置された、目付が80g/m
2~300g/m
2の少なくとも1つのPET不織布を含む、吸収性不織布/PURフォーム層複合体であり、
前記PURフォームは、
(a)45g/l~120g/lの密度;又は
(b)9g/l~40g/lの密度、を有し、
前記PURフォームの厚さが
8mm~20mmであり、
前記層複合体がニードルパンチされていることを特徴とする、吸収性不織布/PURフォーム層複合体。
【請求項2】
フォームの上面及び/又は下面に配置された不織布が、PET繊維又はPA繊維、及び繊維混合物(混合繊維)で構
成されていることを特徴とする、請求項1に記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項3】
フォームが、片面のみが不織布とともにニードルパンチされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項4】
前記PET不織布は、100g/m2~200g/m
2の目付を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項5】
前記PURフォームは、60g/l~85g/lの密度を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項6】
前記PURフォームは、12g/l~32g/lの密度を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項7】
前記PURフォームは、8mm~15mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項8】
2枚のPET不織布を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体の製造方法であって、
フォームをロールから供給する又はブランクとして第1の(下)被覆不織布上に供給し、その上に第2の(上)被覆不織布を通過させ、複合体全体を圧縮してニードルパンチすることを特徴とする、ニードルパンチされた吸収性層複合体の製造方法。
【請求項10】
フォームをロールから供給する又はブランクとして(下)被覆不織布上に供給し、複合体全体を圧縮してニードルパンチすることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のニードルパンチされた吸収性層複合体の製造方法。
【請求項11】
フォーク/フォーク針、リース/リース針、フォーク/リース針、又はフェルト針を用いてニードリングを行うことを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、PURフォーム層を少なくとも1層の不織布とともにニードルパンチした層複合体、サンドイッチ構造体である。
【背景技術】
【0002】
自動車では、熱成形可能な音響及び/又は補強用不織布が、特に客室や荷物室に使用されている。これらの不織布は、通常、緩く圧縮された熱硬化性又は熱可塑性繊維不織布や、同じか又は異なる流動抵抗を持つフォーム及び/又は不織布層の組み合わせである。さらに、いわゆるフロー不織布(flow nonwovens)は、対象となる方法で音響を調整するためにも使用される。
【0003】
段差硬度と関連して吸音性能に影響を与えるために、多孔質で、エアーオープン、従ってサウンドオープンの層を、実際の上部材料とプロセスに関連したシール層や重層、絶縁材の間に挿入する。多孔質で、エアー、サウンドオープン層としては、ポリエステルや混合繊維のフリース、微小孔あきフォイルなどが使用される。耐衝撃性は、不織布に含まれる二成分系繊維(BiCo)の割合にも影響される。
【0004】
ヘッドボードの材料構造には、単層不織布、多層不織布、背面発泡不織布がよく使われる。また、荷物室では、主にサイドトリムパネル、テールゲートトリムパネル、スペアホイールウェルに不織布及び/又は不織布の組み合わせが使用される。
【0005】
音響効果の高い自動車構成要素や部品は、常に
図1に示すような構造と類似する材料構造を有する。
【0006】
トルコ国特許出願公開第200803410号明細書は、比較的粗い廃棄物、例えば、自動車部品製造時に発生する繊維屑などを再利用するためのプロセスと、それを利用した製品に関する。この方法は、廃棄物を比較的小さな断片に粉砕することを特徴とする。この粉砕された材料は、次に基材に適用される。次いで、他の原材料の上層を廃材表面に付し、互いの層が接着される。トルコ国特許出願公開第200906997号明細書では、熱の効果を利用して、さらに硬い層を追加的に導入する類似のプロセスが記載されている。
【0007】
ドイツ特許出願公開第102015115458号明細書(国際公開第2017/046164号明細書)は、自動車の構造部品、特にホイールアーチライナー又はエンジンコンパートメントシールドを開示しており、構造部品は、少なくとも部分的に、少なくとも2つの重ね合わせた不織布層がプレスされた複合材料から構成されている。ここでは、複合材料を補強するために、不織布層の少なくとも1つに、少なくとも1つの補強フィラメントを含む補強層を配置することが提案されている。
【0008】
米国特許出願公開第2018/0251924号明細書では、一方では2つの不織布、他方では中間フィルムを有する2つの不織布が配置された不織布複合システムが提案されている。不織布には、特別に改質された繊維が使用されている。
【0009】
さらに、いわゆるリサイクルされたサンドイッチ不織布又は部品を製造する方法が先行技術に記載されており、そこでは、一方ではプレス技術(ドイツ特許出願公開第102016202290号明細書)が、他方ではニードリング(ドイツ特許出願公開第102013222403号明細書、ドイツ特許出願公開第102016203348号明細書)が使用されている。
【0010】
国際公開第2012/052535号明細書は、連続したプロセスシーケンスで複合不織布を製造する方法と、その方法を実施するための装置に関する。このプロセスでは、カーディング装置によって繊維ストリームから繊維ウェブが形成され、その後、合成繊維の不織布層が繊維ウェブの表面に配置される。この目的のために、繊維ウェブは送出ベルトの吸引ゾーン内にのせてメルトブロー装置に導かれ、そこで、合成繊維を繊維ウェブの表面にメルトブローして配置される。次に、不織布で覆われた繊維ウェブを、不織布敷設装置によって複数の層に敷設して複合不織布を形成する。
【0011】
ドイツ特許出願公開第102016203348号明細書では、2つの外装被覆不織布を備えた多層ニードルパンチ吸音及び/又は補強不織布が記載されている。
a)目付が30g/m2~200g/m2、好ましくは50g/m2~150g/m2のPE粘着不織布からなる第1の被覆不織布と、目付が50g/m2~250g/m2、好ましくは80g/m2~200g/m2のPP/PET不織布からなる第2の被覆不織布、又は、
b)両方の被覆不織布がそれぞれ、目付が200g/m2~800g/m2、好ましくは300g/m2~600g/m2のPP/PET被覆不織布であること、
被覆不織布の間には、PE、PET、PP、二成分系繊維、多成分系繊維材料からなる、目付が250g/m2~700g/m2の粉砕材料層がそれぞれ配置されており、以下の特徴を有している。
粉砕材料は、粉砕材料を基準にして、綿、PET及び2成分繊維を細断した屑廃棄物を5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~40重量%含んでいる。
【0012】
未公開のDE102019104847には、特に繊維のホイールアーチライナーを製造するためのニードルパンチ不織布が記載されている。この不織布は、5~14の個別のパイル層からなり、不織布の目付は650g/m2~1900g/m2の範囲であり、ベースとなる不織布は、PP/PET、PP/BiCo/PET、PP/BiCo、又はPET/BiCo繊維からなり、以下の特徴を有する。
個々の層は、特に繊維製ホイールアーチライナーの音響的及び機械的要件に対応しており、それぞれが、同一又は異なる量で、層に散在する、粉砕物及び/又は繊維及び/又はフレーク及び/又は粉体の、同一又は異なる材料を含む。
【0013】
先行技術に見られる音響効果の高い部品や個々の部品の場合、層状の複合体「フリース/フォーム」を互いに接着したり、発泡させたりしている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、前述の先行技術と比較した本発明の目的は、フォーム層が、その上に、また任意にその下に配置された不織布層とともにニードルパンチされたサンドイッチ構造の吸収性層複合体を提供することにある。ここでの焦点は、一方では面積当たりの重量がほぼ同じで音響効果が大幅に改善されていること、他方では音響効果が改善されているだけでなく重量面でも有利であることである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2はニードルパンチされた複合体(不織布/フォーム/不織布)の写真を示す。
【
図3】
図3は本発明による材料構造の音響性能を、先行技術の構造と比較して示す図である。
【
図4】
図4は本発明による材料構造の音響性能を、先行技術の構造と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の前述の課題は、第1の実施形態において、80g/m2~300g/m2、好ましくは100g/m2~200g/m2の範囲の目付を有する少なくとも1つのPET不織布をPURフォームの上面、及び/又は下面に配置してなる不織布/PURフォーム層複合体によって解決される。前記PURフォームは、密度が45g/l~120g/l、特に60g/l~85g/lの範囲にあり、厚さが4mm~20mm、好ましくは8mm~15mmの範囲にあり、前記層複合体はニードルパンチされていることを特徴とする。
【0017】
フォーム、フォーム層を、1つ以上の不織布層(被覆不織布)とニードルパンチした音響効果のある部材や個々の部材は、先行技術では知られていない。
【0018】
さらに別の実施形態では、密度が45g/l~120g/lのPURフォームの代わりに、密度が9g/l~40g/lのいわゆる軽量フォームが使用される。
【0019】
特にフォームの上面及び/又は下面に配置された不織布(少なくとも1つの不織布)は、PET繊維やPA繊維、及び繊維混合物(混合繊維)で構成することができ、ここでは特にPET/PP繊維及びPP/PET/綿繊維で構成することができる。
【0020】
図2は、ニードルパンチされた複合体(不織布/フォーム/不織布)の写真を示す。
図3及び
図4では、本発明による材料構造の音響性能を、先行技術の構造と比較して示している。
【0021】
図3は、軽量フォーム(Leve-Cell(登録商標)及びLeveSoft(登録商標))を使用した場合の本発明の解決手段が、現在使用されている混合不織布と比較して、重量及び音響的に優れていることを特に示す。
【0022】
図4は、ニードルパンチングされたコールドフォームを備えた本発明による複合体を、従来のリサイクルサンドイッチ不織布と比較したもので、面積当たりの重量がほぼ同じであることから、本発明による複合体の音響的なメリットが非常に大きいことがわかる。
【0023】
本発明のさらなる実施形態は、上述の層複合体の製造方法であって、フォームをロールから供給し又はブランクとして第1(下)被覆不織布上に供給し;続いて第2(上)被覆不織布をその上に通過させ、複合体全体を圧縮し、ニードルパンチすることを特徴とする。必要に応じて、第2(上)カバー不織布を省略する。
【0024】
本発明の観点から特に好ましくは、フォーク/フォーク針、リース/リース針、フォーク/リース針、又はフェルト針を用いてニードリングを行う。
【0025】
このように、本発明の核心は、ニードルパンチされた不織布/フォーム複合体からなる層複合体を提供することであり、それによってこのサンドイッチ構造の音響効率が向上する。
【0026】
ニードリングの際には、フォームのセルに穴を開ける。さらに、ニードリングの際には、個々の繊維が外側の不織布からフォーム構造の中に引き出される。また、フォーム自体も柔らかくなる。
【0027】
本発明の利点は、まさに、両面又は片面に不織布を配置したフォームをニードリングすることで、従来の複合体や不織布に比べて、複合体の音響効率が大幅に向上し、重量も軽減されることである。
【0028】
また、不織布とともにニードルパンチした複合体は、純粋なフォームに比べて機械的特性が向上している。
【0029】
実施形態の例:
(a)第1の例では、軽量のPURフォーム(Le-veSoft(登録商標)、24g/l、厚さ10mm)の両面を、100g/m2及び150g/m2のPETフリースとともに、ニードルパンチした。
(b)第2の例では、PUR軽量フォーム(Le-veCell(登録商標)、12g/l、厚さ8mm)の両面を、100g/m2及び150g/m2の市販のPETフリースとともにニードルパンチした。
(c)第3の例では、市販のPURコールドフォーム(65g/l、厚さ10mm)の両面を、100g/m2及び150g/m2の市販のPET不織布とともにニードルパンチした。
【0030】
ニードルパンチは、標準的なFehrer社製の機械で行い、ニードリング密度は20ステッチ/cm2、貫入深さは14mm、速度は4m/分であった。ニードルは市販のフェルト針を使用した。
【0031】
ニードルパンチしたフォームの音響性能を
図3と
図4に示す。