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  • 特許-埋め込み型電気接点装置 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】埋め込み型電気接点装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61N1/05
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021564933
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020062018
(87)【国際公開番号】W WO2020225090
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102019206388.8
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517119556
【氏名又は名称】ニューロループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キミヒ,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ボレティウス,ティム
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0150940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への埋め込み用に構成された電気接点装置であって、
対向面を有する生体適合性の電気絶縁材料のシートであって、前記シートの前記対向面のうち1つによって保持されるが、前記絶縁材料に完全には収容されず、埋め込まれたときに前記患者の神経束に沿う体内組織表面に係合し、前記体内組織表面の周りには前記シートが多重に巻き付けられる、少なくとも1つのアクセス可能な電極表面を有する、前記シートと、
前記シート内に位置し、埋め込まれたときに前記少なくとも1つのアクセス可能な電極表面と前記神経束に沿う前記体内組織表面との間局所的な接触圧力を印加する手段であって、前記神経束の前記体内組織表面に沿って延在する前記シート内の少なくとも1つの空間を有し、前記少なくとも1つの空間は、前記生体適合性の電気絶縁材料の弾性率より大きい弾性率を有する少なくとも1つの材料を含む、前記手段と、を備え
前記接触圧力が前記電気接点装置の寸法を変化させないように、前記少なくとも1つの空間は寸法決めされ、前記少なくとも1つの空間に含まれる前記材料は選択されることを特徴とする、電気接点装置。
【請求項2】
前記シートは、埋め込まれたときに、前記シートに沿った長手方向に延在し、
前記少なくとも1つの空間は、各空間とともに前記長手方向に延在し、前記長手方向における長さが、前記シートの前記長手方向における長さより短いことを特徴とする、請求項1に記載の電気接点装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電極から前記少なくとも1つの空間を分離する前記シートの領域に位置する、前記シート内の中立面をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電気接点装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの空間が、前記電極表面に少なくとも部分的に重なるように、前記電極表面に向かって垂直に投影され、前記神経束の前記体内組織表面に前記電極表面を押圧することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気接点装置。
【請求項5】
前記生体適合性の電気絶縁材料が、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、パリレン、またはPDMSのうちの1つのポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の電気接点装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの材料が気体、液体または固体であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気接点装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの空間内に、異なる弾性率を有する少なくとも2つの材料が含まれることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気接点装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの材料が、バイメタル、形状記憶合金、ピエゾセラミック、電歪セラミック、磁歪合金、電気若しくは磁気レオロジー流体からなる群から選択される材料であることを特徴とする、請求項1~7に記載の電気接点装置。
【請求項9】
前記空間の寸法が前記シートの前記長手方向の寸法より小さいことを特徴とする、請求項2に記載の電気接点装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの空間が、最大17mmの空間体積を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の電気接点装置。
【請求項11】
それぞれが少なくとも1つの材料で充填された第1の複数の空間をさらに備え、
前記第1の複数の空間が、第1の直線に沿って、または第1の平面に沿って延在するアレイに、それぞれが前記電気絶縁材料内で互いに距離を置いて配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気接点装置。
【請求項12】
それぞれが少なくとも1つの材料で充填された第2の複数の空間が、前記第1の直線と異なり前記第1の直線と離間した第2の直線に沿って、または前記第1の平面と異なり前記第1の平面と離間した第2の平面に沿って、それぞれが前記シート内で互いに距離を置いて分散されていることを特徴とする、請求項11に記載の電気接点装置。
【請求項13】
前記第1および第2の直線は互いに平行に配向され、前記第1および第2の平面は互いに平行に配向されることを特徴とする、請求項12に記載の電気接点装置。
【請求項14】
それぞれが少なくとも1つの材料で充填されたさらなる複数の空間をさらに備え、
前記さらなる複数の空間が、前記第1及び第2の直線と離間したさらなる直線に沿って、または前記第1及び第2の平面と離間したさらなる平面に沿って、それぞれが前記電気絶縁材料内で分散され
前記さらなる直線は、前記第1および第2の直線とは異なり、前記さらなる平面は、前記第1および第2の平面と異なることを特徴とする、請求項12又は13に記載の電気接点装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性の電気絶縁材料から形成されたキャリア基板に完全に一体化された少なくとも1つの電極要素装置(electrode element arrangement)と、生体適合性の電気絶縁キャリア基板によって直接または間接的に取り囲まれた少なくとも1つの自由にアクセス可能な電極表面と、を備える埋め込み型電気接点装置(implantable electrical contact arrangement)に関する。
【背景技術】
【0002】
当該タイプの埋め込み型電気接点装置は、体内組織表面、特に血管、筋肉または神経線維の表面に電気信号を印加するため、および/または体内組織表面から電気信号をタッピングするために使用される。このような埋め込み型電気接点装置の体内での位置決めにおける特有の課題は、長期間にわたり、体内表面を損傷することなく、または刺激することなく、体内表面上にできるだけ動かないように接点装置を穏やかに適用することにある。しかしながら、特に、体内の温度および圧力変化により組織表面が運動および形状変化を受けるが、組織表面の運動および形状変化は医療用インプラントによって妨害されるべきではないか、または可能な限り妨害されるべきではないので、上記の課題に取り組むに当たり、それぞれの組織表面上に電気接点装置のインプラント側を固定するという大きな要求を満たす必要がある。同時に、インプラント側に適用される電極要素の電極表面間の局所的な表面接触は、できるだけ一定の電気伝達特性を保証するために、できるだけ変化しない規定された表面接触圧力で形成されるべきである。
【0003】
埋め込み型電極装置の複数の異なる形態の実施形態に加えて、神経線維束の周りに環状に適用される、神経外の、カフのように構成された、いわゆるカフ電極によって、神経線維束に沿った電気神経信号の局所タッピング、及び、電気神経刺激が実行できるようになる。カフ電極の円形に開放して形成された巻き付け(wrapping)により、カフ電極はそれ自体を外側から神経繊維束上に放射状に成形することができ、同時に、神経繊維束の形状の放射状の変化に追従することができる。
【0004】
神経線維束と接触するカフ電極として設計された埋め込み型電気接点装置の電極要素は、生体適合性で電気絶縁性のシート状キャリア基板に適用され、このキャリア基板は、平面状態から、表面巻き付けおよび/または表面湾曲により、直線状の中空円筒形の形状をとることができる。この状態のカフ電極においては、電極要素の自由にアクセス可能な電極表面が中空円筒形に成形されたキャリア基板の内側に位置し、埋め込まれた(implanted)状態では神経線維束の神経上膜上に直接載る。
【0005】
公知のカフ電極が欧州特許第0843574号明細書に記載されており、本文献のシート状キャリア基板は、櫛型フィンガー構造(interdigital finger structure)の形態で構成されている。シートの曲げにより、可撓性フィンガー部は直線状の中空円筒形の形状をとり、その円筒径は、自由かつ可変的にインターロックするそれぞれのフィンガー部により柔軟に変更することができる。中空円筒形を形成し支持するために、シート状キャリア基板物質としては、形状記憶材料または機械的にプレストレストされた材料(pre-stressed material)の層の少なくとも1つの層が想定されている。
【0006】
埋め込み型カフ電極装置を製造するための代替的な設計が、欧州特許第3204105号明細書に記載されている。本文献の場合、ラップ電極(wrap electrode)として構成されたカフ電極は、好ましくはポリイミドフィルムの形態の、シート状の可撓性の生体適合性キャリア基板を有し、そのキャリア基板の上側には、複数の個別電極要素から構成される電極装置が適用される。電極装置の個別電極要素は、特に、フィルムに機械的なプレストレスを適切に組み込むことによって、キャリア基板が単独で直線状の円筒形の巻き形状に巻き上げられるにつれて、神経繊維束の神経上膜と直接表面接触する。一方の端部が開放されている巻線によって、互いに緩く摺動するシート状キャリア基板のラップ層が、少なくとも部分的に形成され、それによって、神経繊維束の周りに接触する中空円筒形カフ電極装置の個々の直径変化が可能である。
【0007】
電極表面がそれぞれ神経線維束の神経上膜と接触する接触圧力は、本質的に、シート状キャリア基板全体の弾性材料特性によって決定される。
【0008】
ドイツ実用新案出願公開第202010015346号明細書には、ストランド形状の基板内の電極の中で、成形目的のために基板全体に亘って一体のニチノールストリップが突出する電極装置が記載されている。ニチノールバンドは、キャリア基板の弾性率とは異なる弾性率を有し、棘(spine)の形態の電極アセンブリの形状を支持する機能を有する。
【0009】
米国特許出願公開第2008/0004673号明細書は、成形目的のためにカフ材料に形状記憶材料、例えばニチノールが組み込まれている、弾性変形可能な電極カフを開示している。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、少なくとも1つの電極要素装置を有する埋め込み型電気接点装置をさらに発展させることであり、この電極要素装置は、生体適合性の電気絶縁材料から形成されたキャリア基板に完全に一体化され、少なくとも1つの電極表面が体内組織表面上に位置する接触圧力が、キャリア基板の空間寸法、特にキャリア基板の厚さに関してキャリア基板を変化させることなく、または本質的に変化させることなく、個別に調整可能であるように、少なくとも1つの自由にアクセス可能な電極表面は、生体適合性の電気絶縁キャリア基板によって直接または間接的に取り囲まれる。キャリア基板が体内組織表面に接触する表面における接触圧力を個別に設計すること、すなわち、接触するキャリア基板表面に沿って位置依存的に調整することが可能なはずである。
【0011】
本発明の根幹をなす、当該目的に対する解決手段が、請求項1に記載されている。本発明のアイデアの有利なさらなる展開は、従属請求項の主題を形成し、特に例示された実施形態の例を参照して、さらなる説明から抽出することができる。
【0012】
明らかな変形手段から離れて、とりわけ、より大きな局所的な材料剛性および表面接触力の関連する増加をもたらすためにシート状キャリア基板の材料厚さを拡大することに着目すると、本解決手段による埋め込み型電気接点装置は、少なくとも1つの電極要素装置を含まないサブ空間内で、キャリア基板が、キャリア基板の材料の弾性率とは異なる弾性率を有する少なくとも1つの材料を含む少なくとも1つの空間を直接的または間接的に包囲することを特徴とする。
【0013】
本解決手段による方策は基本的に、シート状キャリア基板の厚さを変化させることなく、または本質的に変化させることなく、シート状キャリア基板の表面弾性または表面剛性の個別の設定または仕様を可能にする。特に、このようにして、電極表面が、残りのシート状キャリア基板と比較してより高い押圧力で体内組織表面上に押圧される、埋め込み型電気接点装置を製造することができる。
【0014】
このようにして、電気接点が持続的に、安定的に、かつ一定の電気的特性で起こることが保証される一方で、残りの領域では、固定の目的のために、シート状キャリア基板は組織に対して穏やかな方法で、十分に低い接触力で神経繊維束と接触する。この目的のために、空間を充填するために、キャリア基板を構成する材料の弾性率と比較して高い弾性率を有する少なくとも1つの材料が選択される。空間を充填するために、キャリア基板を構成する材料の弾性率と比較してより低い弾性率を有する少なくとも1つの材料が選択されるという点で、対応する方法で、表面剛性は、キャリア基板の領域において局所的に低減されてもよい。材料の選択、及び、シート状キャリア基板内の空間の提供に応じて、任意の所望の剛性勾配をキャリア基板内に生成することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、シート状キャリア基板は、少なくとも1つの電極要素装置を含むキャリア基板のサブ空間を、少なくとも1つの空間を含むキャリア基板のサブ空間から分離する中立面を有する。
【0016】
少なくとも1つの空間は、キャリア基板の生体適合性の電気絶縁材料によって完全に包囲され、その寸法に関して、シートの長手方向に配向され、シート状キャリア基板よりもはるかに小さい寸法である。これにより、特に、キャリア基板に実装された少なくとも1つの材料が体内環境と接触しないので、本発明に係る埋め込み型電気接点装置の問題のない体内使用が可能となる。
【0017】
好ましくは、電極表面上への正射影において、少なくとも1つの空間は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、電極表面に重なる。このようにして、電極表面を含む少なくともキャリア基板領域が、増大されたまたは個別に適合された接触力で、体内組織表面に対して局所的に押圧されることが保証される。
【0018】
典型的には、シート状キャリア基板は、ポリマー、例えば、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、パリレン、またはPDMSから形成される。典型的には、このような材料は1~2GPaの弾性率を有する。少なくとも1つの空間を充填するために金属材料を使用する場合、シート状キャリア基板内に大きな剛性勾配を設けることができる。以下の表は、個々の金属材料の弾性率を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
上記の固体物質に加えて、ポリマー製のキャリア基板の局所的な剛性に寄与し、キャリア基板の弾性率よりも低い弾性率を有し、キャリア基板内の少なくとも1つの空間に挿入または封入され得る、表に網羅的に挙げられていない物質も考えられる。例えば、キャリア基板内に挿入することができるゲル、液体またはガスもまた、上記物質に適している。さらに、気体または液体を使用する場合、それらの弾性率は、それぞれの気体または液体材料がシート状キャリア基板内の少なくとも1つの空間を満たす充填圧力と同時に決定することができる。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの空間内に、異なる弾性率を有する少なくとも2つの材料が、好ましくは2つの固体材料の層状配列の形態で、好ましくは2つの異なる金属層の形態で組み込まれる。互いに異なる弾性率を有するいくつかの物質の組み合わせによって、キャリアモジュール内の段階的な弾性率プロファイルを任意に大きく設定することが可能である。
【0022】
さらなる実施形態では、好ましくはキャリア基板の局所的な剛性のために、少なくとも1つの空間を充填する材料として、トランスデューサ材料が使用され、トランスデューサ材料はその形状および/または弾性を変化させる目的のために、外部効果によって、例えば、外部エネルギー場によって変更され得る。適切なトランスデューサ材料は、バイメタル、形状記憶合金、ピエゾセラミック、電歪セラミック、磁歪合金、電気若しくは磁気レオロジー流体、または同様の材料などの材料である。
【0023】
埋め込み型電気接点装置は、典型的には、形状およびサイズの点で、体内組織または神経線維束領域に適用するために適切に寸法決めされた平坦なキャリア基板を有する。キャリア基板の典型的な面積サイズは、用途に応じて、単独で若しくは多重に折り畳んだり、および/または巻き付けたりすることができ、数mm~数cmであり、例えば、4mm~20cmであり、好ましくは、10mm~6cmである。ほとんどのシート状キャリア基板は、数μm~数百μm、例えば2μm~650μm、好ましくは10μm~100μmの基板厚さを有する。
【0024】
キャリア基板材料によって完全に、すなわち気密に包囲され、好ましくは立方体または立方体の形状を有する少なくとも1つの空間は、その長手方向におけるキャリア基板の寸法よりもはるかに小さい寸法である。最大で、少なくとも1つの空間は、17mmの体積を有する。キャリア基板の弾性率とは異なる弾性率を有する材料が充填された空間は、空間の周囲の領域において、キャリア基板の特性に局所的にしか影響を及ぼさない。キャリア基板のサイズに対して少なくとも1つの空間の寸法が小さいため、空間に含まれる材料は、キャリア基板の空間形状全体に影響を及ぼす支持力を発揮しない。キャリア基板内に分散され、少なくとも1つの材料で充填され、各々が互いに離れて島状に配置された複数の空間の場合であっても、部分的にキャリア基板の弾性率とは異なる弾性率を有する空間領域は、補強または軟化するように作用するが、空間がコヒーレントな支持効果を発揮することができないので、空間形状を画定するようには作用しない。
【0025】
したがって、例示的な実施形態は、それぞれが少なくとも1つの材料で充填された第1の複数の空間を想定し、これらの空間は、キャリア基板内で互いに距離を置いて、それぞれ第1の直線に沿って、または第1の平面に沿ってアレイ状に分散される。
【0026】
さらなる例示的な実施形態では、上記の第1の複数の空間に加えて、それぞれが少なくとも1つの材料で満たされた第2の複数の空間が、キャリア基板内で互いに距離を置いて、それぞれ第2の直線に沿って、または第2の平面に沿って分散される。好ましくは、第1および第2の直線、または第1および第2の平面は、互いに平行に配向される。
【0027】
少なくとも1つの材料で充填された第1および第2の複数の空間に加えて、さらなる例示的な実施形態は、それぞれが少なくとも1つの材料で充填され、キャリア基板内で互いに距離を置いて、それぞれさらなる直線に沿って、またはさらなる平面に沿って分散される、さらなる複数の空間を想定する。
【0028】
材料が充填された複数のこのような空間により、個別に規定された硬度および/または剛性を有するシート状キャリア基板領域を特定することができる。
【0029】
特に、神経線維束の周りに巻き付けることができるカフ電極装置の場合、神経線維束に直接接触するキャリア基板領域、および/または神経線維束に近いキャリア基板の巻き付け(wrappings)は、キャリア基板のこの領域に材料で満たされた空間がないか、または、キャリア基板材料の弾性率よりも著しく低い弾性率を有する材料で満たされた空間のみがあるという点で、可能な限り低い領域剛性を有するように設計することができる。カフ電極装置の放射状に隣接するキャリア基板領域には、材料で満たされた空間が組み込まれ、その弾性率はキャリア基板材料の弾性率よりも大きくなるように選択される。このようにして、増加した放射状に作用する外部接触圧力が、内側に横たわるキャリア基板層に働くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、図面を参照して、例示的な実施形態により、本発明の一般的な概念を限定せずに本発明を説明する。
図1a】電極装置および少なくとも1つの空間を有するキャリア基板の長手方向断面図である。
図1b】電極装置および少なくとも1つの空間を有するキャリア基板の長手方向断面図である。
図1c】電極装置および少なくとも1つの空間を有するキャリア基板の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1aは、好ましくはポリイミドフィルムの形態のシート状キャリア基板1の長手方向断面図であり、シート状キャリア基板1は、キャリア基板上面2と、キャリア基板上面2の反対側のキャリア基板下面3とを有する。キャリア基板1内には、キャリア基板1内に延在する給電および放電リード5を介して接触する少なくとも1つの電極要素4を備える電極装置が埋め込まれている。電極要素4は、自由にアクセス可能な電極表面6を備える。必須ではないが、あると有益なことは、電極要素4は、キャリア基板上面2から突出し、埋め込まれた状態では、電極表面6が体内組織表面に接触するように、不図示の体内組織表面に対向することである。
【0032】
シート状キャリア基板1は、キャリア基板1を上部サブ空間8と下部サブ空間9とに分離する中立面7を有する。上部サブ空間8は電極装置を含む。一方、キャリア基板1の下部サブ空間は、少なくとも1つの空間10を含み、少なくとも1つの空間10は、キャリア基板1の材料によって完全に取り囲まれ、キャリア基板1の弾性率Etとは異なる弾性率E1を有する少なくとも1つの材料11を含む。
【0033】
図1aに示す例示的な実施形態では、キャリア基板上面2への正射影において、空間10は、電極素子4の下方に完全に重なるように局所的に配置されている。
【0034】
好ましい材料の選択は、空間10内の金属物質11の使用に関連し、好ましくは、一体の金属層の形態であり、この金属層は、キャリア基板1の生体適合性の電気絶縁材料によって完全に包囲されている。金属物質11は、キャリア基板1を局所的に強固にすることができ、それによって、キャリア基板がカフ電極装置として設計される場合、好ましくは神経繊維束の形態で、体内組織表面上の電極要素4の領域において、接触圧力の局所的な増加が達成される。空間10内への材料11の追加の埋め込みまたは一体化は、キャリア基板の厚さdの増加に関連していない。
【0035】
キャリア基板内の空間10の配置、寸法決めおよび空間構成は、多様に選択することができる。
【0036】
図1bは、キャリア基板1内の複数の個別の空間10’を想定する実施形態の代替例を示し、少なくとも1つの電極要素4の領域におけるキャリア基板1の剛性の所望の設定に応じて、空間10’のすべてが1つの材料11で均一に充填されるか、またはそれぞれが異なる材料で充填される。図1bにおいて、複数の部屋10’は、中立面7に平行な平面e1に沿って配置されている。また、例えば互いに平行な2つ以上の平面e1及びe2等に配置された、複数の個々の空間10’の代替的な配置パターンも考えられる。
【0037】
図1cは、少なくとも2つの空間10’’を有する、さらなる例示的な実施形態を示しており、各空間は、キャリア基板上面2への正射影において電極要素4の横方向に設けられる。この場合、空間10’がキャリア基板1の弾性率よりも高い弾性率を有する材料で充填されていると、キャリア基板1は、電極装置の領域において、電極装置の領域に横方向に隣接するキャリア基板の領域よりも低い剛性を有する。
【0038】
考えられる全ての例示的な実施形態に共通するのは、シート状キャリア基板の厚さを増加させることなく、キャリア基板1内に、それぞれが少なくとも1つの材料で充填された1つの空間又は複数の空間を設けることによって、ランダムに生成可能な剛性勾配をキャリア基板1内に画定することができるという事実である。とりわけ、固体に加えて、気体、または、特に液体若しくはゲル状物質を含みうる、個々の空間を充填するための材料の自由な選択によって、キャリア基板全体の表面剛性の挙動は個々に、かつ微細に制御された様式で仕上げることができる。
【0039】
また、布状または繊維状材料の使用も考えられ、これらは、個別にまたは層状に、キャリア基板内に局所的に限定された方法で一体化することができる。例えば、布層(fabric layer)の場合、マトリックスのように、キャリア基板の生体適合性の非導電性材料によって包囲することができる。
【0040】
本解決手段によれば、キャリア基板内に、弾性率がキャリア基板の弾性率とは異なる材料で充填された少なくとも1つの空間を設けることは、キャリア基板内の電極装置の一体化の結果としてキャリア基板内に生じる機械的応力を補償する役割も果たす。このような機械的応力はキャリア基板内に過剰な材料応力をもたらし、埋め込み型電気接点装置の寿命を最終的に制限する可能性がある。より具体的には、埋め込み型電気接点装置をそれ自体公知のカフ電極の形態で設計すると、材料固有の機械的応力が生じ、これによりキャリア基板内の少なくとも1つの材料充填空間によって、完全に、または少なくとも大部分を補償することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…キャリア基板
2…キャリア基板の上面
3…キャリア基板の下面
4…電極要素
5…給電および放電リード
6…電極表面
7…中立面
8…電極要素装置を含むサブ空間
9…少なくとも1つの空間を含むサブ空間
10、10’、10’’…空間
11…材料
e1、e2…空間の配置面
d…キャリア基板のシート厚
E1…材料の弾性率
ET…キャリア基板の弾性率
図1a
図1b
図1c