(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】有機発光表示基板およびその製造方法、有機発光表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/822 20230101AFI20240903BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240903BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240903BHJP
H10K 50/813 20230101ALI20240903BHJP
H10K 50/824 20230101ALI20240903BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240903BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240903BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20240903BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20240903BHJP
H10K 59/173 20230101ALI20240903BHJP
H10K 59/179 20230101ALI20240903BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20240903BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20240903BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240903BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20240903BHJP
【FI】
H10K50/822
G09F9/00 338
G09F9/30 309
G09F9/30 338
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
H10K50/813
H10K50/824
H10K50/86
H10K59/12
H10K59/124
H10K59/131
H10K59/173
H10K59/179
H10K59/95
H10K71/20
H10K71/60
H10K77/10
(21)【出願番号】P 2021569944
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 CN2020087912
(87)【国際公開番号】W WO2021217526
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】511121702
【氏名又は名称】成都京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1188,Hezuo Rd.,(West Zone),Hi-tech Development Zone,Chengdu,Sichuan,611731,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼ 立
(72)【発明者】
【氏名】高 涛
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-307240(JP,A)
【文献】特開2017-174811(JP,A)
【文献】特開2006-126817(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110690261(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-33/28
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブマトリックス有機発光表示領域を含む有機発光表示基板であって、
ベースと、
ベースの片側に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の溝を含む有機層と、
有機層のベースから離れた表面に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置されたアレイ状に配列された複数の第1アノードと、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の遮蔽部と、を含み、複数の遮蔽部のベース上への正射影および複数の溝のベース上への正射影は、複数の第1アノードのベース上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布し、各遮蔽部のベース上への正射影は、仕切り溝を形成するために、1つの溝のベース上への正射影と部分的に重なっているアノード層と、
アノード層のベースから離れた側に形成された有機機能層と、
有機機能層のベースから離れた側に形成され、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って交互に配列された複数のカソードストリップおよび複数のカソード材料部を含み、各カソードストリップは、アノード層よりもベースから離れ、各カソード材料部は、1つの仕切り溝内に配置され且つ隣接するカソードストリップに接続されていないカソード層と、
を含
み、
前記複数の遮蔽部は、前記有機機能層と前記カソード層の材料が前記溝の側壁に膜を形成することを阻止するものであり、
前記アノード層の第1アノードと遮蔽部とが、同じ材料で、同一工程により形成され、
前記カソード層のカソードストリップとカソード材料部が、同じ材料で、同一工程により形成され、
前記ベースは、第1有機フレキシブル層、第2有機フレキシブル層、および第1有機フレキシブル層と第2有機フレキシブル層との間に配置された第1無機バリア層を含む、
有機発光表示基板。
【請求項2】
有機機能層は、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された複数の第1部分および複数の第2部分を含み、各第1部分は、アノード層よりもベースから離れ、各第2部分は、1つの仕切り溝内に配置され且つ隣接する第1部分に接続されていない、請求項1に記載の有機発光表示基板。
【請求項3】
各遮蔽部は、溝の2つの縁に配置され且つ間隔を空けて設けられた2つの遮蔽ストリップを含み、2つの遮蔽ストリップのベース上への正射影は、それぞれ、溝のベース上への正射影と部分的に重なっている、請求項1に記載の有機発光表示基板。
【請求項4】
有機層は、第1有機層および第2有機層を含み、有機発光表示基板は、前記ベースの片側に第1データ金属層、第1無機層、第2データ金属層、画素定義層、およびスペーサー層をさらに含み、
第1データ金属層、第1無機層、第1有機層、第2データ金属層、第2有機層、アノード層、画素定義層、スペーサー層、有機機能層、およびカソード層は、ベースから離れた方向に沿って順次に設けられ、
パッシブマトリックス有機発光表示領域において、第2データ金属層は、複数の第1ビアホールを介して第1データ金属層に接続され、複数の第2ビアホールを介してアノード層に接続され、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード間は、第1データ金属層または第2データ金属層によって接続されている、
請求項3に記載の有機発光表示基板。
【請求項5】
各溝は、第2有機層を貫通し且つ第1有機層内まで延在している、請求項4に記載の有機発光表示基板。
【請求項6】
各溝のベース上への正射影の第1方向に沿った幅は、5マイクロメートル~10マイクロメートルである、請求項4に記載の有機発光表示基板。
【請求項7】
ベースに垂直な方向における各溝の深さは、2マイクロメートル~2.5マイクロメートルである、請求項4に記載の有機発光表示基板。
【請求項8】
各溝の2つの側壁と底壁との間の角度は、それぞれ、120°~140°である、請求項4に記載の有機発光表示基板。
【請求項9】
各遮蔽ストリップのベース上への正射影と対応する溝のベース上への正射影との重なり部分の第1方向に沿った幅は、0.8マイクロメートル~1マイクロメートルである、請求項4に記載の有機発光表示基板。
【請求項10】
アクティブマトリックス有機発光表示領域をさらに含む有機発光表示基板であって、
ベースと第1データ金属層との間に配置され、且つベースから離れた方向に沿って順次に設けられた半導体層、第1絶縁層、第1ゲート金属層、第2絶縁層、第2ゲート金属層、及び第3絶縁層をさらに含み、
アクティブマトリックス有機発光表示領域において、第1データ金属層は、複数の第3ビアホールを介して半導体層に接続され、複数の第4ビアホールを介して第2データ金属層に接続され、アノード層は、複数の第5ビアホールを介して第2データ金属層に接続されている、
請求項4に記載の有機発光表示基板。
【請求項11】
アクティブマトリックス有機発光表示領域は、パッシブマトリックス有機発光表示領域のエッジの一部を囲み、または、アクティブマトリックス有機発光表示領域は、パッシブマトリックス有機発光表示領域を囲む、請求項10に記載の有機発光表示基板。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の有機発光表示基板を含む有機発光表示装置。
【請求項13】
有機発光表示基板は、アクティブマトリックス有機発光表示領域をさらに含み、
有機発光表示装置は、有機発光表示基板上への正射影がパッシブマトリックス有機発光表示領域にある少なくとも1つの機能デバイスをさらに含む、
請求項
12に記載の有機発光表示装置。
【請求項14】
パッシブマトリックス有機発光表示領域を含む有機発光表示基板の製造方法であって、
ベースの片側に有機層を形成することと、
有機層のベースから離れた表面にアノード層を形成し、アノード層は、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置されたアレイ状に配列された複数の第1アノードと、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の遮蔽部と、を含み、複数の遮蔽部のベース上への正射影は、複数の第1アノードのベース上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布することと、
アノード層のベースから離れた側に画素定義層およびスペーサー層を順次に形成することと、
有機層をエッチングすることにより、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第2方向に沿って延在した複数の溝を形成し、複数の溝のベース上への正射影は、複数の第1アノードのベース上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布し、各溝のベース上への正射影は、仕切り溝を形成するために、1つの遮蔽部のベース上への正射影と部分的に重なっていることと、
スペーサー層のベースから離れた側に有機機能層およびカソード層を順次に形成することであって、カソード層は、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って交互に配列された複数のカソードストリップおよび複数のカソード材料部を含み、各カソードストリップは、アノード層よりもベースから離れ、各カソード材料部は、1つの仕切り溝内に配置され且つ隣接するカソードストリップに接続されていないことと、
を含
み、
有機層をエッチングすることは、
スペーサー層のベースから離れた側にハードマスクを形成し、ハードマスクの仕切り溝のノッチに対応する領域は、透かし彫り領域であることと、
ハードマスクを通して有機層をドライエッチングすることにより、溝を形成することと、
ハードマスクを剥離することと、
を含み、
前記複数の遮蔽部は、前記有機機能層と前記カソード層の材料が前記溝の側壁に膜を形成することを阻止するものであり、
前記アノード層の第1アノードと遮蔽部とが、同じ材料で、同一工程により形成され、
前記カソード層のカソードストリップとカソード材料部が、同じ材料で、同一工程により形成される、
有機発光表示基板の製造方法。
【請求項15】
ハードマスクを形成することは、
スペーサー層のベースから離れた側にハードマスク被覆層およびフォトレジスト被覆層を順次に形成することと、
フォトレジスト被覆層に対して露光及び現像を順次に行うことにより、フォトレジスト保護マスクを得て、フォトレジスト保護マスクの仕切り溝のノッチに対応する領域は、透かし彫り領域であることと、
フォトレジスト保護マスクを通してハードマスク被覆層をウェットエッチングすることにより、ハードマスクを得ることと、
を含む、
請求項
14に記載の製造方法。
【請求項16】
ハードマスクの材料は、金属酸化物を含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項17】
ハードマスクの材料は、インジウムガリウム亜鉛酸化物を含む、請求項
14に記載の製造方法。
【請求項18】
有機層を形成することは、ベースの片側に第1有機層および第2有機層を順次に形成することを含み、
第1有機層を形成する前に、ベースの片側に第1データ金属層および第1無機層を順次に形成することと、
第1有機層を形成した後、第2有機層を形成する前に、第1有機層のベースから離れた側に第2データ金属層を形成することと、
をさらに含み、
パッシブマトリックス有機発光表示領域において、第2データ金属層は、複数の第1ビアホールを介して第1データ金属層に接続され、複数の第2ビアホールを介してアノード層に接続され、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード間は、第1データ金属層または第2データ金属層によって接続されている、
請求項
14から
17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
各溝は、第2有機層を貫通し且つ第1有機層内まで延在している、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項20】
アクティブマトリックス有機発光表示領域をさらに含む有機発光表示基板の製造方法であって、
第1データ金属層を形成する前に、ベースの片側に半導体層、第1絶縁層、第1ゲート金属層、第2絶縁層、第2ゲート金属層、および第3絶縁層を順次に形成し、アクティブマトリックス有機発光表示領域において、第1データ金属層は、複数の第3ビアホールを介して半導体層に接続され、複数の第4ビアホールを介して第2データ金属層に接続され、アノード層は、複数の第5ビアホールを介して第2データ金属層に接続されていることをさらに含む、
請求項
18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示技術の分野に関し、特に有機発光表示基板およびその製造方法、有機発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自発光、高コントラスト、広視野角、低消費電力、高速応答、低製造コストなどの優れた特性を持つことから、有機発光デバイスが、次世代表示装置の基盤としてますます注目を集めている。
【0003】
有機発光表示基板の製造歩留まりは、有機発光表示装置の大規模利用を制約する重要な課題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施例の一側面によると、パッシブマトリックス有機発光表示領域を含む有機発光表示基板を提供し、有機発光表示基板は、
ベースと、
ベースの片側に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の溝を含む有機層と、
有機層のベースから離れた表面に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置されたアレイ状に配列された複数の第1アノードと、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の遮蔽部と、を含み、複数の遮蔽部のベース上への正射影および複数の溝のベース上への正射影は、複数の第1アノードのベース上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布し、各遮蔽部のベース上への正射影は、仕切り溝を形成するために、1つの溝のベース上への正射影と部分的に重なっているアノード層と、
アノード層のベースから離れた側に形成された有機機能層と、
有機機能層のベースから離れた側に形成され、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って交互に配列された複数のカソードストリップおよび複数のカソード材料部を含み、各カソードストリップは、アノード層よりもベースから離れ、各カソード材料部は、1つの仕切り溝内に配置され且つ隣接するカソードストリップに接続されていないカソード層と
を含む。
【0005】
いくつかの実施例において、有機機能層は、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された複数の第1部分および複数の第2部分を含み、各第1部分は、アノード層よりもベースから離れ、各第2部分は、1つの仕切り溝内に配置され且つ隣接する第1部分に接続されていない。
【0006】
いくつかの実施例において、各遮蔽部は、溝の2つの縁に配置され且つ間隔を空けて設けられた2つの遮蔽ストリップを含み、2つの遮蔽ストリップのベース上への正射影は、それぞれ、溝のベース上への正射影と部分的に重なっている。
【0007】
いくつかの実施例において、有機層は、第1有機層および第2有機層を含み、有機発光表示基板は、前記ベースの片側に第1データ金属層、第1無機層、第2データ金属層、画素定義層、およびスペーサー層をさらに含み、
第1データ金属層、第1無機層、第1有機層、第2データ金属層、第2有機層、アノード層、画素定義層、スペーサー層、有機機能層、およびカソード層は、ベースから離れた方向に沿って順次に設けられ、
パッシブマトリックス有機発光表示領域において、第2データ金属層は、複数の第1ビアホールを介して第1データ金属層に接続され、複数の第2ビアホールを介してアノード層に接続され、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード間は、第1データ金属層または第2データ金属層によって接続されている。
【0008】
いくつかの実施例において、溝は、第2有機層を貫通し且つ第1有機層内まで延在している。
【0009】
いくつかの実施例において、各溝のベース上への正射影の第1方向に沿った幅は、5マイクロメートル~10マイクロメートルである。
【0010】
いくつかの実施例において、ベースに垂直な方向における各溝の深さは、2マイクロメートル~2.5マイクロメートルである。
【0011】
いくつかの実施例において、各溝の2つの側壁と底壁との間の角度は、それぞれ、120°~140°である。
【0012】
いくつかの実施例において、各遮蔽ストリップのベース上への正射影と対応する溝のベース上への正射影との重なり部分の第1方向に沿った幅は、0.8マイクロメートル~1マイクロメートルである。
【0013】
いくつかの実施例において、前記有機発光表示基板は、アクティブマトリックス有機発光表示領域をさらに含み、有機発光表示基板は、ベースと第1データ金属層との間に配置され、且つベースから離れた方向に沿って順次に設けられた半導体層、第1絶縁層、第1ゲート金属層、第2絶縁層、第2ゲート金属層、及び第3絶縁層をさらに含み、
アクティブマトリックス有機発光表示領域において、第1データ金属層は、複数の第3ビアホールを介して半導体層に接続され、複数の第4ビアホールを介して第2データ金属層に接続され、アノード層は、複数の第5ビアホールを介して第2データ金属層に接続されている。
【0014】
いくつかの実施例において、アクティブマトリックス有機発光表示領域は、パッシブマトリックス有機発光表示領域のエッジの一部を囲み、または、アクティブマトリックス有機発光表示領域は、パッシブマトリックス有機発光表示領域を囲む。
【0015】
いくつかの実施例において、ベースは、第1有機フレキシブル層、第2有機フレキシブル層、および第1有機フレキシブル層と第2有機フレキシブル層との間に配置された第1無機バリア層を含む。
【0016】
本開示の実施例の別の側面によると、前述のいずれかの実施例に記載の有機発光表示基板を含む有機発光表示装置を提供する。
【0017】
いくつかの実施例において、有機発光表示基板は、アクティブマトリックス有機発光表示領域をさらに含み、有機発光表示装置は、有機発光表示基板上への正射影がパッシブマトリックス有機発光表示領域にある少なくとも1つの機能デバイスをさらに含む。
【0018】
本開示の実施例のさらに別の側面によると、パッシブマトリックス有機発光表示領域を含む有機発光表示基板の製造方法を提供し、製造方法は、
ベースの片側に有機層を形成することと、
有機層のベースから離れた表面にアノード層を形成し、アノード層は、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置されたアレイ状に配列された複数の第1アノードと、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の遮蔽部と、を含み、複数の遮蔽部のベース上への正射影は、複数の第1アノードのベース上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布することと、
アノード層のベースから離れた側に画素定義層およびスペーサー層を順次に形成することと、
有機層をエッチングすることにより、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第2方向に沿って延在した複数の溝を形成し、複数の溝のベース上への正射影は、複数の第1アノードのベース上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布し、各溝のベース上への正射影は、仕切り溝を形成するために、1つの遮蔽部のベース上への正射影と部分的に重なっていることと、
スペーサー層のベースから離れた側に有機機能層およびカソード層を順次に形成することであって、カソード層は、パッシブマトリックス有機発光表示領域に配置された第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って交互に配列された複数のカソードストリップおよび複数のカソード材料部を含み、各カソードストリップは、アノード層よりもベースから離れ、各カソード材料部は、1つの仕切り溝内に配置され且つ隣接するカソードストリップに接続されていないことと、
を含む。
【0019】
いくつかの実施例において、有機層をエッチングすることは、
スペーサー層のベースから離れた側にハードマスクを形成し、ハードマスクの仕切り溝のノッチに対応する領域は、透かし彫り領域であることと、
ハードマスクを通して有機層をドライエッチングすることにより、溝を形成することと、
ハードマスクを剥離することと、
を含む。
【0020】
いくつかの実施例において、ハードマスクを形成することは、
スペーサー層のベースから離れた側にハードマスク被覆層およびフォトレジスト被覆層を順次に形成することと、
フォトレジスト被覆層に対して露光及び現像を順次に行うことにより、フォトレジスト保護マスクを得て、フォトレジスト保護マスクの仕切り溝のノッチに対応する領域は、透かし彫り領域であることと、
フォトレジスト保護マスクを通してハードマスク被覆層をウェットエッチングすることにより、ハードマスクを得ることと、
を含む。
【0021】
いくつかの実施例において、ハードマスクの材料は、金属酸化物を含む。
【0022】
いくつかの実施例において、ハードマスクの材料は、インジウムガリウム亜鉛酸化物を含む。
【0023】
いくつかの実施例において、有機層を形成することは、ベースの片側に第1有機層および第2有機層を順次に形成することを含み、製造方法は、
第1有機層を形成する前に、ベースの片側に第1データ金属層および第1無機層を順次に形成することと、
第1有機層を形成した後、第2有機層を形成する前に、第1有機層のベースから離れた側に第2データ金属層を形成することと、
をさらに含み、
パッシブマトリックス有機発光表示領域において、第2データ金属層は、複数の第1ビアホールを介して第1データ金属層に接続され、複数の第2ビアホールを介してアノード層に接続され、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード間は、第1データ金属層または第2データ金属層によって接続されている。
【0024】
いくつかの実施例において、各溝は、第2有機層を貫通し且つ第1有機層内まで延在している。
【0025】
いくつかの実施例において、有機発光表示基板は、アクティブマトリックス有機発光表示領域をさらに含み、製造方法は、
第1データ金属層を形成する前に、ベースの片側に半導体層、第1絶縁層、第1ゲート金属層、第2絶縁層、第2ゲート金属層、および第3絶縁層を順次に形成し、アクティブマトリックス有機発光表示領域において、第1データ金属層は、複数の第3ビアホールを介して半導体層に接続され、複数の第4ビアホールを介して第2データ金属層に接続され、アノード層は、複数の第5ビアホールを介して第2データ金属層に接続されていることをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
明細書の一部を構成する図面は、本開示の実施例を説明し、明細書とともに本開示の原理を説明するためのものである。
【0027】
図面を参照して、以下の詳細な説明により、本開示をより明確に理解することができる。
【0028】
【
図1a】本開示の一実施例に係る有機発光表示基板の正面図である。
【
図1b】
図1aのAにおける本開示の一実施例に係る有機発光表示基板の概略拡大図である。
【
図1c】
図1bのB-Bにおける本開示の一実施例に係る有機発光表示基板の概略断面図である。
【
図1d】本開示の一実施例における仕切り溝の概略断面拡大図である。
【
図2】本開示の別の実施例に係る有機発光表示基板の正面図である。
【
図3a】関連技術においてパッシブマトリックス有機発光表示領域における有機発光表示基板の概略断面図である。
【
図3b】関連技術において製造プロセスにおける有機発光表示基板のいくつかの概略断面図である。
【
図4a】本開示の一実施例に係る有機発光表示基板の製造方法のフローチャートである。
【
図4b】製造プロセスにおける本開示の一実施例に係る有機発光表示基板のいくつかの概略断面図である。
【
図5a】本開示の一実施例において仕切り溝を製造するフローチャートである。
【
図5b】製造プロセスにおける本開示の一実施例に係る有機発光表示基板のいくつかの概略断面図である。
【
図6】本開示の一実施例に係る有機発光表示装置の正面図である。図面に示した各部の寸法は、実際の比例関係に基づいて描かれていないことを理解すべきである。また、同一又は類似の符号は、同一又は類似の構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照して、本開示の様々な例示的な実施例を詳細に説明する。例示的な実施例に対する説明は、単に例示的なものであり、本開示およびその適用または使用を限定するものではない。本開示は、本明細書に記載の実施例に限定されず、多くの異なる形態で実施することができる。これらの実施例は、本開示を徹底的かつ完全にし、本開示の範囲を当業者に十分に表現するために提供される。特に明記しない限り、これらの実施例に記載された部品およびステップの相対的な配置、材料成分、数式、および数値は、限定的なものではなく、単なる例示的なものとして解釈されるべきであることに留意されたい。
【0030】
本開示で使用される「第1」、「第2」および類似語は、順序、数、または重要度を表すものではなく、単に異なる部分を区別するために使用される。「含む」または「含有する」などの類似語は、この用語の前の要素がこの用語の後に列挙された要素をカバーすることを意味し、他の要素もカバーする可能性を排除するものではない。「上」、「下」等は、相対的な位置関係のみを表すものであり、説明されたオブジェクトの絶対位置が変更されると、相対的な位置関係もそれに応じて変更される可能性がある。
【0031】
本開示において、特定の部品が第1部品と第2部品との間に配置されることが記載された場合、当該特定の部品と第1部品または第2部品との間には、中間部品が存在してもよいし、存在しなくてもよい。特定の部品が他の部品に接続されることが記載された場合、当該特定の部品は、中間部品なしで前記他の部品に直接接続されてもよいし、中間部品ありで前記他の部品に直接接続されなくてもよい。
【0032】
本開示で使用されるすべての用語(技術用語または科学用語を含む)は、特に定義されない限り、本開示の属する分野の当業者が理解するものと同じ意味である。汎用辞書で定義された用語は、本明細書で明示的に定義されない限り、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化または極端に形式化された意味で解釈されるべきではないことも理解されたい。
【0033】
関連分野の当業者に知られた技術、方法、および装置については詳細に説明しない場合があるが、適切な場合には、前記技術、方法、および装置が明細書の一部と見なされるべきである。
【0034】
有機発光表示基板が、軽薄で屈曲性などの特徴から、フレキシブル表示装置に広く使われている。有機発光表示基板の製造歩留まりを向上させるために、本開示の実施例では、有機発光表示基板およびその製造方法、有機発光表示装置を提供する。
【0035】
図1aに示されたように、本開示の一実施例による有機発光表示基板1は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20を含む。
図1bは、
図1aのAにおける本開示の一実施例に係る有機発光表示基板の概略拡大図であり、図面では、遮光マトリクスの構成については省略して図示しない。
図1cは、
図1bのB-Bにおける本開示の一実施例に係る有機発光表示基板の概略断面図である。
【0036】
図1bと
図1cに示されたように、本開示の実施例による有機発光表示基板1は、
ベース101と、
ベース101の片側に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の溝1020を含む有機層102と、
有機層102のベース101から離れた表面に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置されたアレイ状に配列された複数の第1アノード1041と、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の遮蔽部1042と、を含み、複数の遮蔽部1042のベース101上への正射影および複数の溝1020のベース101上への正射影は、複数の第1アノード1041のベース101上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布し、各遮蔽部1042のベース101上への正射影は、仕切り溝103を形成するために、1つの溝1020のベース101上への正射影と部分的に重なっているアノード層104と、
アノード層104のベース101から離れた側に形成された有機機能層105と、
有機機能層105のベース101から離れた側に形成され、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って交互に配列された複数のカソードストリップ1061および複数のカソード材料部1062を含み、各カソードストリップ1061は、アノード層104よりもベース101から離れ、各カソード材料部1062は、1つの仕切り溝103内に配置され且つ隣接するカソードストリップ1061に接続されていないカソード層106と、
を含む。
【0037】
本開示の実施例において、有機機能層105がアノード層104のベース101から離れた側に形成されたことについて、局所構造の絶対的な位置関係として理解すべきではなく、有機機能層105のパターン層全体がアノード層104のパターン層全体のベース101から離れた側に配置されたものとして理解すべきである。他のパターン層の間の位置関係は、同様であり、ここでは説明を省略する。
【0038】
図1cに示されたように、本開示のいくつかの実施例において、有機機能層105は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された複数の第1部分1051および複数の第2部分1052を含み、各第1部分1051は、アノード層104よりもベース101から離れ、各第2部分1052は、1つの仕切り溝103内に配置され且つ隣接する第1部分1051に接続されていない。
【0039】
本開示の実施例において、第1方向と第2方向を具体的に限定しない。例えば、いくつかの実施例において、第1方向は、行方向であり、第2方向は、列方向である。別のいくつかの実施例において、第1方向は、列方向であり、第2方向は、行方向である。
【0040】
有機発光表示基板1のパッシブマトリックス有機発光表示領域20は、アレイ状に配列された複数のパッシブマトリックス型の有機発光デバイス5a(Passive matrix organic light-emitting diode、PMOLED)を含み、これらの有機発光デバイス5aは、スキャンにより点灯され、各有機発光デバイス5aは、短パルスで瞬時発光する。
図1aに示された実施例において、有機発光表示基板1は、アクティブマトリックス有機発光表示領域50をさらに含む。
図1cに示されたように、アクティブマトリックス有機発光表示領域50は、アレイ状に配列された複数のアクティブマトリックス型の有機発光デバイス5b(Active-matrix organic light-emitting diode、AMOLED)を含み、各有機発光デバイス5bは、薄膜トランジスタデバイス3によって制御されるので、独立した連続的な発光を実現することができる。
【0041】
パッシブマトリックス有機発光表示領域20の形状は、限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形又は多角形などであってもよい。パッシブマトリックス有機発光表示領域20について、薄膜トランジスタデバイスを設ける必要がないので、透過率が高い。有機発光表示装置において、例えば、カメラや距離センサなどの機能デバイスが有機発光表示基板1の背面側に配置され、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に対向し、このようにすると、光がパッシブマトリックス有機発光表示領域20を透過して機能デバイスに入射することができる。このような設計は、有機発光表示装置の画面比率を高め、狭額縁、超狭額縁に適した設計となる。
図1aに示された実施例において、アクティブマトリックス有機発光表示領域50は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20のエッジの一部を囲むように設けられる。
図2に示された実施例において、アクティブマトリックス有機発光表示領域50は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20を囲んでもよい。
【0042】
本開示のいくつかの実施例において、有機発光表示基板は、パッシブマトリックス有機発光表示基板であってもよく、その表示領域は、パッシブマトリックス有機発光表示領域のみを含む。
【0043】
図1cに示されたように、当該実施例において、有機層102は、それぞれ平坦層として機能する第1有機層1021および第2有機層1022を含み、溝1020は、第2有機層1022を貫通し且つ第1有機層1021内まで延在している。有機発光表示基板1の構造は、ベース101の片側に配置され且つベース101から離れた方向に沿って順次に設けられた第2無機バリア層131、バッファ層132、半導体層109、第1絶縁層110、第1ゲート金属層111、第2絶縁層112、第2ゲート金属層113、第3絶縁層114、第1データ金属層115、第1無機層116、第2データ金属層117、画素定義層107、およびスペーサー層108をさらに含む。第1有機層1021は、第1無機層116と第2データ金属層117との間に配置され、第2有機層1022は、第2データ金属層117とアノード層104との間に配置される。有機機能層105は、スペーサー層108のベース101から離れた側に配置される。パッシブマトリックス有機発光表示領域20において、第2データ金属層117は、複数の第1ビアホール6aを介して第1データ金属層115に接続され、複数の第2ビアホール6bを介してアノード層104に接続される。
【0044】
パッシブマトリックス有機発光表示領域20において、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード1041間は、第1データ金属層115によって接続され、即ち、第1方向に沿って配列された複数の第1アノード1041は、第1データ金属層115によって電気的に接続され、この結果、アレイ状に配列された有機発光デバイス5aは、スキャンにより点灯される。本開示の別の実施例において、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード間も第2データ金属層によって接続される。
【0045】
アクティブマトリックス有機発光表示領域50において、第1データ金属層115は、複数の第3ビアホール6cを介して半導体層109に接続され、複数の第4ビアホール6dを介して第2データ金属層117に接続される。基板の内部構造に対するパッケージ保護を実現するために、有機発光表示基板1が薄膜パッケージ層7をさらに含む。
【0046】
半導体層109は、薄膜トランジスタデバイス3のアクティブ層を含み、第1ゲート金属層111は、薄膜トランジスタデバイス3のゲートおよびキャパシタデバイス4の第1極板を含み、第2ゲート金属層113は、キャパシタデバイス4の第2極板を含み、第1データ金属層115は、第1層の配線と、薄膜トランジスタデバイス3のソースおよびドレインと、を含み、第2データ金属層117は、第2層の配線を含む。二層配線の設計は、抵抗を並列に接続することに相当し、配線の抵抗を低減し、ひいては基板の電力消費を低減する効果がある。
【0047】
アクティブマトリックス有機発光表示領域50において、アノード層104は、アレイ状に配列された複数の第2アノード1043を含み、第2アノード1043は、複数の第5ビアホール6eを介して第2データ金属層117に接続される。パッシブマトリックス有機発光表示領域20において、第1アノード1041、有機発光層105と第1アノード1041との真向かいの部分、カソードストリップ1061と第1アノード1041との真向かいの部分は、1つの有機発光デバイス5aを構成する。アクティブマトリックス有機発光表示領域50において、第2アノード1043、有機発光層105と第2アノード1043との真向かいの部分、カソード層106と第2アノード1043との真向かいの部分は、1つの有機発光デバイス5bを構成する。
【0048】
有機発光表示基板1の有機機能層105およびカソード層106は、通常に蒸着プロセスで成膜される。蒸着プロセスにおいて、蒸着材料ガスは、基本的にベース101の法線方向に沿って膜を形成し、したがって、仕切り溝103のアンダーカット構造は、蒸着材料ガスが溝1020の側壁に膜を形成するのを阻止でき、この結果、膜層の仕切り溝103内にある部分は、膜層の仕切り溝103外にある部分に接続されず、つまり、膜層は、仕切り溝103の両側で連続できない。本開示の実施例において、パッシブマトリックス有機発光表示領域20において、仕切り溝103の仕切り作用により、カソード層106的複数のカソードストリップ1061が、第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って間隔を空けて配列され、アクティブマトリックス有機発光表示領域50において、カソード層106は、連続的に延在することができる。有機機能層105は、大面積にわたる蒸着が可能であり、マスクを用いたパターン蒸着が可能である。
【0049】
本開示のいくつかの実施例において、
図1bと
図1cに示されたように、遮蔽部1042は、溝1020の2つの縁に配置され且つ間隔を空けて設けられた2つの遮蔽ストリップ1042a、1042bを含み、2つの遮蔽ストリップ1042a、1042bのベース101上への正射影は、それぞれ、溝1020のベース101上への正射影と部分的に重なっている。このようにすると、2つの遮蔽ストリップ1042a、1042bは、いずれもカソード材料が溝1020の2つの側壁に膜を形成するのを阻止でき、この結果、隣接するカソードストリップ1061の間が仕切り溝103によって仕切りされることがさらに保証される。
【0050】
アノード層104の具体的な材料は、限定されない。いくつかの実施例において、アノード層104は、第1酸化インジウムスズ層、第2酸化インジウムスズ層、および第1酸化インジウムスズ層と第2酸化インジウムスズ層との間に挟まれた銀層を含み、第1酸化インジウムスズ層の厚さおよび第2酸化インジウムスズ層の厚さは、60オングストローム~80オングストロームであり、例えば70オングストロームであり、銀層の厚さは、800オングストローム~1200オングストロームであり、例えば1000オングストロームである。アノード層104を製造する場合、まずスパッタリングプロセスを使用して膜を形成し、次にマスクパターニングプロセスを使用してウェットエッチングによってパターンを形成する。
【0051】
有機層102のパターンは、一般に、マスクパターニングプロセスを使用して、ドライエッチングによって形成される。アノード層104が無機材料であり、有機層102の材料とは大きく異なるので、適切な選択比を選択して有機層102をドライエッチングすることにより、2つの遮蔽ストリップ1042a、1042bのベース101に近い側にアンダーカット構造を形成することができ、即ち、2つの遮蔽ストリップ1042a、1042bのベース101上への正射影は、それぞれ、溝1020のベース101上への正射影と部分的に重なっている。
図1cに示されたように、2つの遮蔽ストリップ1042a、1042bのベース101上への正射影と画素定義層107のベース101上への正射影との間に間隔はない。本開示の他の実施例において、2つの遮蔽ストリップのベース上への正射影と画素定義層のベース上への正射影との間に、特定の距離だけ離れているか、または部分的に重なっている。
【0052】
図1dに示されたように、本開示のいくつかの実施例において、溝1020のベース101上への正射影の第1方向に沿った幅cは、5マイクロメートル~10マイクロメートルである。ベース101に垂直な方向における溝1020の深さdは、2マイクロメートル~2.5マイクロメートルである。溝1020の2つの側壁1020aと底壁1020bとの間の角度αは、それぞれ、120°~140°である。遮蔽ストリップ1042a、1042bのベース101上への正射影と対応する溝1020のベース101上への正射影との重なり部分の第1方向に沿った幅sは、0.8マイクロメートル~1マイクロメートルであり、当該重なり幅Sの存在により、仕切り溝103がアンダーカット構造を有する。
【0053】
関連技術において、
図3aに示されたように、パッシブマトリックス有機発光表示領域における有機発光表示基板の構造は、ベースから離れた方向に沿って順次に設けられたデータ金属層001、有機層002、無機層003、アノード層004、画素定義層005、スペーサー層006、有機機能層007、およびカソード層008を含み、アノード層004は、ビアホールを介してデータ金属層001に接続され、複数の仕切り溝009の構造は、有機層002と無機層003とによって共同に形成され、複数の仕切り溝009がカソード層008を仕切りするために使用されることにより、行方向に沿って間隔を空けて配列され且つ列方向に沿って延在した複数のカソードストリップを得る。当該有機発光表示基板を製造する場合、まず仕切り溝009を形成し、次にアノード層004を形成し、この後、画素定義層005、スペーサー層006、有機機能層007、およびカソード層008を順次に形成する。当該関連技術には以下の技術的欠陥がある。
【0054】
1.有機層002が高温プロセスの環境において気体を放出し、無機層003が有機層002を大面積にわたって覆うため、有機層002と無機層003との間に気泡が発生するおそれがある。
【0055】
2.無機層003が有機層002の表面に形成され、無機層003をエッチングすると、有機層002に損傷しやすい。
【0056】
3.有機層002が一般に平坦層として機能し、無機層003が有機層002の表面に作製され且つアノード層004を作製する基底面として用いられ、その表面の平坦性には劣る。
【0057】
4.
図3bに示されたように、仕切り溝009の作製プロセスが完了した後に画素定義層005及びスペーサー層006の作製プロセスが行われるので、仕切り溝009内に画素定義層および/またはスペーサー層の作製材料010が残留しやすく、この結果、仕切り溝009の仕切り作用が無効となり、カソードストリップ間の仕切りが効果的に行われなくなる。
【0058】
5.仕切り溝009の作製プロセスの後にアノード層004の作製プロセスが行われ、マスクパターニングプロセスを使用してアノード層004を形成する過程において、フォトレジスト層と仕切り溝009内壁との間に気泡が発生するおそれがあり、気泡が破裂すると、後続の工程に不具合が生じてしまう。
【0059】
上記技術的欠陥は、有機発光表示基板の製造歩留まりに深刻な影響を与えている。
【0060】
本開示の実施例において、
図1cに示されたように、一方で、アノード層104が有機層102のベース101から離れた表面に形成され、仕切り溝103の構造がアノード層104と有機層102とによって共同に形成され、アノード層104と有機層102との間に無機層を設けないので、前述の関連技術と比較して、本開示の実施例を採用すると、関連技術における無機層による一連の不良問題を克服することができる。他方で、本開示の実施例を採用すると、アノード層104、画素定義層107、およびスペーサー層108を形成した後に、仕切り溝103の構造を形成することができ、このようにすると、仕切り溝内に画素定義層および/またはスペーサー層の作製材料が残留することによる仕切り溝の無効、及び気泡の残留による後続の工程の不具合の発生を回避することができる。したがって、本開示の実施例の有機発光表示基板の構造設計は、製造の歩留まりの向上に有利である。
【0061】
図1cに示されたように、当該実施例において、ベース101は、フレキシブルベースであり、第1有機フレキシブル層101a、第2有機フレキシブル層101c、および第1有機フレキシブル層101aと第2有機フレキシブル層101cとの間に配置された第1無機バリア層101bを含み、第1有機フレキシブル層101aおよび第2有機フレキシブル層101cの材料は、ポリアミドを含み、第1無機バリア層101bの材料は、窒化ケイ素を含む。このように設計すると、ベースの靭性を高めるだけでなく、有機発光表示基板のパッケージ性能の向上にも有利である。本開示の別のいくつかの実施例において、ベースは、硬質ベースであってもよい。
【0062】
本開示の実施例では、有機発光表示基板の製造方法をさらに提供し、当該製造方法は、前述したパッシブマトリックス有機発光表示領域20を含む有機発光表示基板1を製造するために使用されてもよい。
図4aと
図4bに示されたように、製造方法は、以下のステップS101~ステップS105を含む。
【0063】
ステップS1において、ベース101の片側に有機層102を形成する。
【0064】
ステップS2において、有機層102のベース101から離れた表面にアノード層104を形成し、アノード層104は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置されたアレイ状に配列された複数の第1アノード1041と、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された第1方向に沿って間隔を空けて配列され且つ第2方向に沿って延在した複数の遮蔽部1042と、を含み、複数の遮蔽部1042のベース101上への正射影は、複数の第1アノード1041のベース101上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布する。
【0065】
ステップS3において、アノード層104のベース101から離れた側に画素定義層107およびスペーサー層108を順次に形成する。
【0066】
ステップS4において、有機層102をエッチングすることにより、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された第2方向に沿って延在した複数の溝1020を形成し、複数の溝1020のベース101上への正射影は、複数の第1アノード1041のベース101上への正射影の第2方向に沿って延在した各隙間に分布し、各溝1020のベース101上への正射影は、仕切り溝103を形成するために、1つの遮蔽部1042のベース101上への正射影と部分的に重なっている。
【0067】
ステップS5において、スペーサー層108のベース101から離れた側に有機機能層105およびカソード層106を順次に形成することであって、カソード層106は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された第2方向に沿って延在し且つ第1方向に沿って交互に配列された複数のカソードストリップ1061および複数のカソード材料部1062を含み、各カソードストリップ1061は、アノード層104よりもベース101から離れ、各カソード材料部1062は、1つの仕切り溝103内に配置され且つ隣接するカソードストリップ1061に接続されていない。
【0068】
本開示のいくつかの実施例において、ステップS5において有機機能層105を形成した後、有機機能層105も仕切り溝によって仕切りされて不連続である。
図4bに示されたように、有機機能層105は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に配置された複数の第1部分1051および複数の第2部分1052を含み、各第1部分1051は、アノード層104よりもベース101から離れ、各第2部分1052は、1つの仕切り溝103内に配置され且つ隣接する第1部分1051に接続されていない。
【0069】
本開示の一実施例において、ベース101は、フレキシブルベースであり、ガラス基板(図示せず)に予め形成されている。例えば、ガラス基板の片側に第1有機フレキシブル層、第1無機バリア層、および第2有機フレキシブル層を順次に形成し、第1有機フレキシブル層、第1無機バリア層、および第2有機フレキシブル層は、全体が有機発光表示基板のベースとして機能する。ガラス基板は、有機発光表示基板の製造プロセスにおいて支持する役割を果し、有機発光表示基板のフレキシブルな特性をサポートするために、有機発光表示基板の構造の製造が完了した後、ガラス基板をベースから剥離する必要がある。
【0070】
図4bに示されたように、上記有機層102を形成することは、ベース101の片側に第1有機層1021および第2有機層1022を順次に形成することを含む。いくつかの実施例において、溝1020は、第2有機層1022を貫通し且つ第1有機層1021内まで延在している。別のいくつかの実施例において、溝1020は、第2有機層1022を貫通しなくてもよく、つまり、第2有機層1022内で止まられる。これに加えて、有機発光表示基板の製造方法は、
第1有機層1021を形成する前に、ベース101の片側に第1データ金属層115および第1無機層116を順次に形成することと、
第1有機層1021を形成した後、第2有機層1022を形成する前に、第1有機層1021のベース101から離れた側に第2データ金属層117を形成し、パッシブマトリックス有機発光表示領域20において、第2データ金属層117は、複数の第1ビアホール6aを介して第1データ金属層115に接続され、複数の第2ビアホール6bを介してアノード層104に接続され、第1方向に沿って隣接する任意の2つの第1アノード1041との間は、第1データ金属層115または第2データ金属層117によって接続されていることと、
をさらに含む。
【0071】
図4bに示されたように、製造された有機発光表示基板は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20に加えて、アクティブマトリックス有機発光表示領域50をさらに含み、当該有機発光表示基板の製造方法は、
第1データ金属層115を形成する前に、ベース101の片側に半導体層、半導体層109、第1絶縁層110、第1ゲート金属層111、第2絶縁層112、第2ゲート金属層113、および第3絶縁層114を順次に形成し、アクティブマトリックス有機発光表示領域50において、第1データ金属層115は、複数の第3ビアホール6cを介して半導体層109に接続され、第2データ金属層117は、複数の第4ビアホール6dを介して第1データ金属層115に接続され、アノード層104は、複数の第5ビアホール6eを介して第2データ金属層117に接続されることをさらに含む。
【0072】
図5aと
図5bに示されたように、本開示のいくつかの実施例において、有機層をエッチングすることは、以下のステップS41~ステップS43を含む。
【0073】
ステップS41において、スペーサー層のベースから離れた側にハードマスクを形成し、ハードマスクの仕切り溝のノッチに対応する領域は、透かし彫り領域である。ハードマスクの材料のタイプは、限定されず、いくつかの実施例において、ハードマスクの材料は、例えばインジウムガリウム亜鉛酸化物などの金属酸化物を含む。
【0074】
図5bに示されたように、一実施例において、当該ステップS41は、具体的に、以下のサブステップを含む。
【0075】
サブステップ1:スペーサー層108のベース101から離れた側にハードマスク被覆層3010およびフォトレジスト被覆層302を順次に形成する。
【0076】
サブステップ2:フォトレジスト被覆層302に対して露光及び現像を順次に行うことにより、フォトレジスト保護マスクを得て、フォトレジスト保護マスクの仕切り溝のノッチに対応する領域は、透かし彫り領域である。
【0077】
サブステップ3:フォトレジスト保護マスクを通してハードマスク被覆層3010をウェットエッチングすることにより、ハードマスクを得る。
【0078】
ステップS42において、ハードマスクを通して有機層102をドライエッチングすることにより、溝1020を形成する。
【0079】
ステップS43において、ハードマスクを剥離する。
【0080】
前述したように、アノード層が有機層のベースから離れた表面に形成され、仕切り溝の構造がアノード層と有機層とによって共同に形成され、アノード層と有機層との間に無機層を設けないので、前述の関連技術と比較して、本開示の実施例の有機発光表示基板の製造方法を採用すると、関連技術における無機層による一連の製造不良問題を克服することができる。また、アノード層、画素定義層、およびスペーサー層を形成した後に仕切り溝を形成するためのエッチングが行われ、前述の関連技術と比較して、仕切り溝内に画素定義層および/またはスペーサー層の作製材料が残留することによる仕切り溝の無効、及び気泡の残留による後続の工程の不具合の発生を回避することができる。したがって、本開示の実施例の有機発光表示基板の製造方法を採用すると、製造の歩留まりの向上に有利である。
【0081】
図6に示されたように、本開示の実施例では、前述のいずれかの実施例に記載の有機発光表示基板1を含む有機発光表示装置100をさらに提供する。
【0082】
いくつかの実施例において、有機発光表示基板1は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20とアクティブマトリックス有機発光表示領域50とを含み、有機発光表示装置100は、少なくとも1つの機能デバイス30をさらに含み、当該少なくとも1つの機能デバイス30の有機発光表示基板1上への正射影は、パッシブマトリックス有機発光表示領域20にある。機能デバイス30の具体的なタイプは、限定されず、例えばカメラまたは距離センサなどである。
【0083】
上記有機発光表示装置の具体的な製品タイプは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン、ウェアラブルデバイス、電子ペーパー、またはディスプレイなどを含むが、これらに限定されない。
【0084】
有機発光表示基板が上記の有益な効果を有するので、有機発光表示装置も上記の有益な効果を有し、その製造歩留まりが比較的高い。
【0085】
これまで、本開示の各実施例を詳細に説明した。本開示の構想を隠すことを避けるために、当該技術分野で知られているいくつかの詳細を記載しない。本明細書で開示される技術案がどのように実現されるかは、上記の説明から当業者には十分に理解できる。
【0086】
本開示のいくつかの特定の実施例は、例によって詳細に説明されたが、上記の例が単に説明のためのものであり、本開示の範囲を限定するためのものではないことを当業者は理解すべきである。上記の実施例が本開示の範囲および精神から逸脱することなく修正され、または技術的特徴の一部が等効に置換され得ることを当業者は理解すべきである。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0087】
1 有機発光表示基板
3 薄膜トランジスタデバイス
5a 有機発光デバイス
5b 有機発光デバイス
6a 第1ビアホール
6b 第2ビアホール
6c 第3ビアホール
6d 第4ビアホール
6e 第5ビアホール
7 薄膜パッケージ層
20 パッシブマトリックス有機発光表示領域
30 機能デバイス
50 アクティブマトリックス有機発光表示領域
100 有機発光表示装置
101 ベース
101a 第1有機フレキシブル層
101b 第1無機バリア層
101c 第2有機フレキシブル層
102 有機層
103 仕切り溝
104 アノード層
105 有機機能層
107 画素定義層
109 半導体層
110 第1絶縁層
111 第1ゲート金属層
112 第2絶縁層
113 第2ゲート金属層
114 第3絶縁層
115 第1データ金属層
116 第1無機層
117 第2データ金属層
131 第2無機バリア層
132 バッファ層
302 フォトレジスト被覆層
1020 溝
1021 第1有機層
1022 第2有機層
1041 第1アノード
1042 遮蔽部
1042a 遮蔽ストリップ
1042b 遮蔽ストリップ
1043 第2アノード
1051 第1部分
1052 第2部分
1061 カソードストリップ
1062 カソード材料部
3010 ハードマスク被覆層
001 データ金属層
002 有機層
003 無機層
004 アノード層
005 画素定義層
006 スペーサー層
007 有機機能層
008 カソード層
009 仕切り溝
010 スペーサー層の作製材料