(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドのイオンペアリングが存在しないLC-MS生体分析
(51)【国際特許分類】
G01N 30/00 20060101AFI20240903BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240903BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20240903BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N30/00 E ZNA
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/72 C
G01N30/88 D
(21)【出願番号】P 2021573880
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 US2020037473
(87)【国際公開番号】W WO2020252292
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-08
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マクニール, ロバート
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235904(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0153297(US,A1)
【文献】特開2019-211217(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00
G01N 27/62
G01N 30/72
G01N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LC-MSを介してオリゴヌクレオチドを分析する工程を含む方法であって、前記方法は、
少なくとも1種の目的の構成要素を含むと考えられるサンプルを提供する工程;
イオンペアリングが存在しない条件下で、前記少なくとも1種の目的の構成要素の抽出を行う工程であって、ここで前記抽出は、固相抽出であり、前記少なくとも1種の目的の構成要素は、オリゴヌクレオチドである工程;
イオンペアリングが存在しない条件下で、液体クロマトグラフィーを介して前記構成要素を分離する工程;および
イオンペアリングが存在しない条件下で、質量スペクトル分析を介して前記構成要素を分析する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記サンプルは、生物学的サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的サンプルは、血漿である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドは、治療用ヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月14日出願の米国仮特許出願第62/861,572号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
歴史的には、質量分析法とインターフェースで接続された液体クロマトグラフィーによる治療用オリゴヌクレオチドの生体分析は、イオンペアリング試薬の使用と強く関連付けられてきた。これらは、旧来から、LC-MS分析エンドポイントに存在するのみならず、その先行するサンプル調製においても存在し、イオンペアリングは、全ての報告されたオリゴヌクレオチドLC-MS法においてある点では有効であった。イオンペアリングは、シグナル抑制および不十分なシグナル安定性のような関連する現象がついてまわり、不十分な再現性、カラム寿命の低減およびイオンペアリングの存在を除去するための機器ダウンタイムの増大をもたらす。
【0003】
全てのステージでイオンペアリングから解放された手順を伴うオリゴヌクレオチド分析のための定量的LC-MS法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
イオンペアリングが存在しない条件下でのオリゴヌクレオチドのLC-MS分析の方法の実施形態が、本明細書で開示される。
【0005】
いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1種の目的の構成要素を含むと考えられるサンプルを提供する工程;イオンペアリングが存在しない条件下で、上記少なくとも1種の目的の構成要素の抽出を行う工程であって、ここで上記抽出は、固相抽出であり、上記少なくとも1種の目的の構成要素は、オリゴヌクレオチドである工程;イオンペアリングが存在しない条件下で、液体クロマトグラフィーを介して上記構成要素を分離する工程;およびイオンペアリングが存在しない条件下で、質量スペクトル分析を介して上記構成要素を分析する工程を包含する。
【0006】
イオンペアリングが存在しない条件下でのオリゴヌクレオチドのLC-MS分析のためのシステムの実施形態がまた、本明細書で開示される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
LC-MSを介してオリゴヌクレオチドを分析する工程を含む方法であって、前記方法は、
少なくとも1種の目的の構成要素を含むと考えられるサンプルを提供する工程;
イオンペアリングが存在しない条件下で、前記少なくとも1種の目的の構成要素の抽出を行う工程であって、ここで前記抽出は、固相抽出であり、前記少なくとも1種の目的の構成要素は、オリゴヌクレオチドである工程;
イオンペアリングが存在しない条件下で、液体クロマトグラフィーを介して前記構成要素を分離する工程;および
イオンペアリングが存在しない条件下で、質量スペクトル分析を介して前記構成要素を分析する工程、
を包含する方法。
(項目2)
前記サンプルは、生物学的サンプルである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記生物学的サンプルは、血漿である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記オリゴヌクレオチドは、治療用ヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目5)
サンプル中のオリゴヌクレオチドのイオンペアリングが存在しない分析のためのシステムであって、前記システムは、
非イオンペアリング試薬;
固相抽出システム;
液体クロマトグラフィーシステム;および
質量分析検出システム、
を含むシステム。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、オリゴヌクレオチドRM1および内部標準物質VA1の配列を示す。
【0008】
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に従うサンプル調製および抽出の図式を示す。
【0009】
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に従って行われた異なる水性:有機性組成の固相抽出(SPE)溶離スクリーンの相対的回収を示す。
【0010】
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に従う、いかなる工程においてもイオンペアリングなしで生成されるWaters’ MassPREP OST
TM Standard オリゴヌクレオチド試験混合物の200nM希釈物の親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)のクロマトグラムである。
【0011】
【
図5】
図5は、本明細書で示される方法の一実施形態を使用して生成される分析物RM1の定量下限(5A)および付随する内部標準物質VA1(5B)と関連する代表的なクロマトグラムを示す。
【0012】
【
図6】
図6は、本明細書で示される方法の一実施形態を使用して生成されるRM1の定量上限(6A)および付随する内部標準物質VA1(6B)と関連する代表的なクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明は、本発明の方法およびシステムの種々の局面および実施形態を記載する。特定の実施形態は、上記方法およびシステムの範囲を限定すると意図されない。むしろ、上記実施形態は、上記方法およびシステムの範囲内に少なくとも含まれる種々の方法およびシステムの非限定的な例を提供するに過ぎない。詳細な説明は、当業者の観点から読んで理解されるべきである;従って、当業者に周知の情報は、必ずしも含められない。
【0014】
定義
本開示はここで、本明細書中以降より十分に記載される。本開示は、多くの異なる形態において具現化され得、本明細書で示される局面に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの局面は、本開示が適用可能な法的要件をみたすように提供される。別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての特許、特許出願、公開された特許出願および他の刊行物は、それらの全体において参考として援用される。この節に示される定義が、本明細書に参考として援用される上記特許、特許出願、公開された特許出願および他の刊行物に示される定義に反するかまたはそうでなければ矛盾する場合、この節に示される定義は、本明細書に参考として援用される定義に優先する。
【0015】
本開示またはその実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つの、ある(a)」「1つの、ある(an)」、「上記、この、その(the)」および「前記、上記(said)」とは、その要素の1またはこれより多くが存在することを意味することが意図される。用語「含む、包含する(comprising)」、「含む、包含する、が挙げられる(including)」および「有する(having)」は、包括的でありかつその列挙された要素以外のさらなる要素が存在し得ることを意味することが意図される。本明細書で記載される開示の局面および実施形態が、局面および実施形態から「なる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」ことを含むことが理解される。
【0016】
2またはこれより多くの項目のリストにおいて使用される場合の用語「および/または(and/or)」は、その列挙された項目のうちのいずれか1つが、単独でまたはその列挙された項目のうちのいずれか1もしくはこれより多くと組み合わせて使用され得ることを意味する。例えば、表現「Aおよび/またはB(A and/or B)」とは、AおよびBのうちのいずれかまたは両方、すなわち、Aのみ、Bのみ、またはAとBとの組み合わせを意味することが意図される。表現「A、Bおよび/またはC(A, B and/or C)」とは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、またはAとBとCとの組み合わせを意味することが意図される。
【0017】
本開示の種々の局面は、範囲の形式で示される。範囲形式での記載が、便宜および簡潔さのために過ぎないことは理解されるべきであり、本開示の範囲に対する変更の余地のない限定として解釈されるべきではない。よって、範囲の記載は、具体的に開示される全ての考えられる部分範囲、およびその範囲内の個々の数値を有すると見做されるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような具体的に開示される部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、および6を有すると見做されるべきである。これは、その範囲の幅にかかわらずあてはまる。
【0018】
本発明の実施形態は、サンプルまたは生物学的サンプルを分析するために使用され得る。上記サンプルは、液体、固体、および/または半固体の形態にあり得る。上記生物学的サンプルとしては、組織、血液、生物流体、生物固形物など、ならびにこれらの組み合わせが挙げられ得る。従って、用語「生物学的サンプル(biological sample)」は、例示であって限定ではなく、全血、血漿もしくは血清、尿、脳脊髄液(CSF)、リンパサンプル、唾液、喀痰、糞便サンプル、洗浄物、精液、組織、および/または生物流体、ならびに未加工形態のおよび/もしくは調製物中のこれらの化学的成分が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「目的の構成要素(component of interest)」または「目的の生体マーカー(biomarker of interest)」とは、生物の生理学的状態についての生物学的情報を提供し得る任意のマーカーである。ある特定の実施形態において、上記生体マーカーの存在または非存在は、有益であり得る。他の実施形態において、上記生体マーカーのレベルは、有益であり得る。一実施形態において、上記目的の構成要素は、ペプチド、ホルモン、核酸、脂質、またはタンパク質を含み得る。あるいは、他の目的の構成要素が測定され得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」および「個体」とは、交換可能に使用され得る。被験体は、動物を含み得る。従って、いくつかの実施形態において、上記サンプルは、哺乳動物(イヌ、ネコ、ウマ、ラット、サルなどが挙げられるが、これらに限定されない)から得られる。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、ヒト被験体から得られる。いくつかの実施形態において、上記被験体は、患者、すなわち、彼ら自身が疾患または状態の診断、予後、または処置に関する臨床状況にある生きている個人である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「精製する(purify)」または「分離する(separate)」またはこれらの派生語は必ずしも、サンプルマトリクスからの目的の分析物以外の全ての物質の除去に言及しない。代わりに、いくつかの実施形態において、用語「精製する」または「分離する」は、上記サンプルマトリクスに存在する1またはこれより多くの他の構成要素に対して、1またはこれより多くの目的の分析物の量を富化する手順に言及する。いくつかの実施形態において、「精製(purification)」または「分離(separation)」手順は、上記目的の生体マーカーに検出に干渉し得るサンプルの1またはこれより多くの構成要素(例えば、質量分析法による分析物の検出に干渉し得る1またはこれより多くの構成要素)を除去するために使用され得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「クロマトグラフィー(chromatography)」とは、液体またはガスによって運ばれる化学物質の混合物が、定常的な液体または固相の周りをまたはその上を投げれるにつれて、その化学的実体の差次的な分布の結果として構成要素へと分離されるプロセスに言及する。
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィー(liquid chromatography)」(LC)は、流体が、微細に分割された物質のカラムを通って、またはキャピラリー経路を通って浸透するにつれて、流動性の溶液の1またはこれより多くの構成要素の選択的遅れのプロセスを意味する。その遅れは、1またはこれより多くの定常相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物のうちの構成要素の分布から生じる。なぜならこの流体は、定常相に対して相対的に動くからである。「液体クロマトグラフィー」としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)が挙げられる。HILICは、静電的相互作用の組み合わせが関与し、極性の定常相に吸着した水が豊富な層と抗アセトニトリル移動相との間で分配し、保持が分析物の極性に伴って概して増大する強力なクロマトグラフィー様式である。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「分析用カラム(analytical column)」とは、試験サンプルマトリクスの構成要素の分離をもたらすために、十分なクロマトグラフィープレートを有するクロマトグラフィーカラムに言及する。好ましくは、上記分析用カラムから溶離した構成要素は、目的の分析物の存在または量が決定されることを可能にするような方法で分離される。いくつかの実施形態において、上記分析用カラムは、平均直径 約5μmを有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、上記分析用カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシックシリカ定常相(例えば、フェニル-ヘキシル官能化分析用カラム)である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「イオンペアリング試薬(ion-pairing reagent)」とは、クロマトグラフィーにかけられるかまたはイオンペア複合体のわずかな化学現象に従って他の分析プロセスに供され、そのようにして、ある特定のクロマトグラフィー様式の出現を可能にする、溶離液または分析物に静電的に結合する化学的添加剤である塩である。イオンペアリング試薬の例としては、アルキルスルホネートおよびアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0025】
分析用カラムは、保持された物質を、保持されない物質から分離または抽出して、さらなる精製または分析のために「精製された(purified)」を得るために代表的には使用される「抽出カラム(extraction column)から区別され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド治療剤(oligonucleotide therapeutics)」とは、疾患関連タンパク質の発現に干渉するように設計された短い鎖のDNAまたはRNAオリゴマーであり得る。上記オリゴマーの配列は、およそ15~50ヌクレオチド単位であり得る。
【0027】
方法
イオンペアリングが存在しない条件下でのオリゴヌクレオチドのLC-MS分析の方法の実施形態が、本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1種の目的の構成要素を含むと考えられるサンプルを提供する工程;イオンペアリングが存在しない条件下で、上記少なくとも1種の目的の構成要素の抽出を行う工程であって、ここで上記抽出は、固相抽出であり、上記少なくとも1種の目的の構成要素は、オリゴヌクレオチドである工程;イオンペアリングが存在しない条件下で、液体クロマトグラフィーを介して上記構成要素を分離する工程;およびイオンペアリングが存在しない条件下で、質量スペクトル分析を介して上記構成要素を分析する工程を包含する。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、生物学的サンプルである。いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルは、血漿である。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、治療用オリゴヌクレオチドである。
【0030】
システム
本明細書で開示される方法を行うためのシステムがまた、記載される。いくつかの実施形態において、上記システムは、非イオンペアリング試薬、固相抽出システム、液体クロマトグラフィーシステム、および質量分析検出システムを含む。
【0031】
本開示の種々の実施形態は、本明細書で記載されている。これらの実施形態が本開示の例示に過ぎないことは、理解されるべきである。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の説明を読んで理解した際に、当業者に明らかになり得る。当業者は、適切な場合、このようなバリエーションを使用することができ、本開示は、本明細書で具体的に記載されるものとは別の方法で行われることが意図されることが予測される。従って、本開示は、適用可能な法によって許容される場合、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変および均等物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記の要素の任意の組み合わせは、別段示されなければ、または別段文脈によって明らかに否定されなければ、本開示によって包含される。
【実施例】
【0032】
実施例1 - ヒト血漿中の5,436Da 18マーオリゴヌクレオチドに関するイオンペアリングが存在しない定量的LC-SRM法
化学物質および材料
分析物に関する参照物質であるRM1、および類似の内部標準物質VA1を、Integrated DNA Technologies(Skokie, IL, USA)から得た。オリゴヌクレオチドRM1および内部標準物質VA1の配列は、
図1に示される。アセトニトリル、濃リン酸(85%)、濃水酸化アンモニウム(25%)、濃ギ酸およびギ酸アンモニウムは全て、Sigma Aldrichから得、リン酸がACSグレードであったことを除いて、LC-MSグレードであった。水を、逆浸透フィルターおよびその後の抵抗率18.2 MΩ cmへの脱イオン化によって、Thermo Scientific Barnstead Nanopure精製システムで、社内で精製した。K
2EDTA抗凝固剤を含むコントロールヒト血漿を、差次的試験および選択性のために6名の個々のドナー、ならびに適切な相関試験のために2名の高脂血症個体に由来するものを含め、BioIVT(Hicksville, NY, USA)から得た。
【0033】
初期HILIC実現可能性試験
オリゴヌクレオチドに関してイオンペアリングなしのHILICの実現可能性を調査するために、初期作業を、Waters’ MassPREP OS(商標) Standard オリゴヌクレオチド試験混合物(種々のチミジン(T-)配列(15マー、20マー、25マー、30マーおよび35マー)を含む)の200nM 希釈物および調査用のHILIC勾配で行った。試験混合物の希釈は、1:1 アセトニトリル:10mM ギ酸アンモニウム(水性)中0.02% 水酸化アンモニウムであった。勾配を遅滞なく開始し、90% アセトニトリルから50%へと直線的に4.0分間かけて進めた。上記分析用カラムは、Waters XBridge Amide、3.5μm 50×2.1mm、温度 30℃;流速 0.6mL/分であり、移動相の水性構成要素は、10mM ギ酸アンモニウム(水性)中の0.02% 水酸化アンモニウムであった。質量分析計は、単一イオンモニタリング(SIM)モードのSciex 4000であり、m/z 1510、m/z 1505、およびm/z 1499において特に強いイオンクラスターをモニターした。これらは、それぞれ、6個の電荷を有する30マー、4個の電荷を有する20マー、および三重電荷の15マーに相当する。
【0034】
Waters’ MassPREP OST
TM Standard オリゴヌクレオチド試験混合物の200nM 希釈の注入を使用する予備試験から、
図4のクロマトグラフィー結果の証拠が示された。上記混合物の3種の異なるチミジン配列構成要素は、使用したSIM実験において容易に追跡できた。上記クロマトグラフィーは、保持、ピーク対称性、最小のバンドの拡がり、および応答安定性の観点で明らかな完全性を有した。
【0035】
洗浄および溶離レジメンを最適化し、軽度に塩基性および高有機性の第2の洗浄後に、高度に水性の酸性条件から高塩基性溶離へと進んだ。溶離は、溶離条件のスクリーニングの結果として70% 水性において行い、これは、
図3に示されるように、最低30% 水性レベルに達するまでゼロ回収を明らかにした。
【0036】
較正用標準物質および品質管理サンプル
上記RM1 主要溶液および内部標準物質VA1 主要溶液を、それぞれ、1:1 v:v 水:アセトニトリル中で200μMおよび100μMにおいて調製した。これらの主要溶液を、それぞれ、各化合物の250ナノモルおよび100ナノモルを含む供給されたバイアルの中に、適用可能な738μLおよび1000μLの希釈液の添加を介して再構成し、続いて、30秒間ボルテックスにかけることによって調製した。較正およびQCサンプルスパイク溶液(spiking solution)、および内部標準物質スパイク溶液を、ポリプロピレンチューブの中に、1:1 v:v 水:アセトニトリル中で調製した。血漿を、較正用サンプルに関しては10nM、20nM、50nM、200nM、500nM、1000nM、2500nMおよび5000 nMの濃度において、ならびにQCサンプルに関しては10nM、20nM、250nMおよび5000 nMにおいて、類似のポリプロピレンチューブの中に調製した。スパイク溶液の容積は、スパイクされる血漿の容積のうちの2%以下であった。以前に瞬間凍結したヒト全血を、通常のブランクヒト血漿と主要ストックからのK2EDTAとに、溶血レベル 2%が得られるように添加することによって、ブランク溶血血漿をスパイク用に調製した。
【0037】
サンプル調製の最適化
ヒト血漿からのRM1および類似の内部標準物質VA1の固相抽出を、以下のように行った。SPE吸着剤は、96ウェルフォーマットにおいて、陽イオン交換および逆相部分を有する混合モード相のWaters(Milford, MA, USA) Oasis(登録商標) WAX、10mgであった。その96ウェルの1mL収集プレートは、Porvair(Wrexham, UK)の通常の不活性ポリプロピレンであった。液体を適用する各工程を、最小限の陽圧の助けを借りて行って、液体サンプルの吸着剤ベッド全体への浸透および通過を助けた。その陽圧マニフォールドは、Agilent Technologies(Wilmington, DE, USA)製であった。
【0038】
類似の内部標準物質VA1(1:1 v:v アセトニトリル:水中、2500nM)を、1.5mL 通常ポリプロピレンチューブ内の100μL 血漿に、20μL アリコートにおいて添加した。これは、マトリクスにおいて内部標準物質濃度 500nMを生じた。次いで、各チューブを2秒間のボルテックスにかけた。これに続いて、225μL 4.5% H3PO4(水性)を各サンプルに添加し、さらにボルテックス工程を行った。
【0039】
図2は、本開示の一実施形態に従うサンプル調製および抽出の図式を示す。そのプロトコールは、300μL アセトニトリルの適用での上記吸着剤の調整で始まり、その後の平衡化は、300μL 0.2% ギ酸(水性)の適用を包含した。その調製したサンプル(340μL)を、その平衡化した吸着剤ビーズに載せ、これに続いて、0.2% ギ酸(水性)での300μL 洗浄を適用した。次の洗浄は、[1:1 v:v アセトニトリル:水]中の300μL 0.1% 水酸化アンモニウムで行った。上記分析物および内部標準物質の溶離を、1mL ラウンドウェルの通常のポリプロピレン96ウェル収集プレートへと、[3:7 アセトニトリル:水]中の125μL 2% 水酸化アンモニウムを2回適用することによって行った。最後に、その溶離液を、酸素非含有窒素下で40℃においてエバポレートし、次いで、200μL 1:1 アセトニトリル:[10mM ギ酸アンモニウム(水性)中0.02% 水酸化アンモニウム]の中で再構成した。次いで、ブロックをシールし、500rpmで20分間、プレート振盪機上に置き、その後、10℃においてオートサンプラー区画に置き、注入を待った。分析を開始する前に1時間の待機時間を設けて、温度平衡化を確実にした。
【0040】
LC-SRM分析の最適化
RM1定量のための分析用カラムは、寸法2.1×50mmおよび1.7μm 粒径を有するWaters(Milford, MA, USA) Acquity UPLC BEH Amideであった。LC-MSの前端は、ポンプ、脱ガス装置、オートサンプラー、カラムヒーターおよび移動相プレヒーターを含む旧来からのWaters Acquity UPLCシステムであった。そのオートサンプラー区画は、10℃で維持した。勾配溶離を使用し(移動相構成要素は、10mM ギ酸アンモニウム(水性)中の0.02% 水酸化アンモニウムおよびアセトニトリル)、0.35mL/分で送達した(移動相および定常相は、ともに30℃)。各勾配サイクルの間に、最初に、上記移動相組成は、20% 水性で始まり、上記移動相組成は、次の3.5分間にわたって50% 水性へと直線的に移動した。この組成を0.5分間保持し、次いで、再平衡化を、全体で5分間の実行時間のうちの残りの1.0分間かけて行った。注入容積は10.0μLであり、パーシャルループニードルオーバーフィル(partial loop with needle overfill)(PLNO)モードを、10mM ギ酸アンモニウム(水性)中の0.02% 水酸化アンモニウムの強洗浄組成および1:1 v:v アセトニトリル:[10mM ギ酸アンモニウム(水性)中の0.02% 水酸化アンモニウム]の弱洗浄組成とともに使用した。トリプル四重極質量分析計は、Turbo Ionspray源条件および550℃に加熱した補助ガスでのSciex(Concord, ON, Canada) API 6500+であった。IonDrive源に対して、プローブ配置は、垂直方向に0mmおよび水平方向に7mmであった。上記機器を、高マスモード(high mass mode)で作動させた。イオン源へのLCフローの分割はなかった。
【0041】
陰イオン選択反応モニタリング(SRM)モードでは、使用した遷移は、RM1に関しては1358→914および1358→1059の合計であり、VA1に関しては1522→634および1217→1074の合計であった(全ての値は、m/zを示す)。全てのこれらのピークを、受け入れざるを得ない強度および検証可能性に基づいて選択した。m/z 1358での分析物前駆イオンおよびm/z 1522での内部標準物質前駆イオンの両方が、[M-4H]
4-の電荷状態に相当し、およびm/z 1217での内部標準物質前駆イオンが、[M-5H]
5-に相当した。上記初期定性的HILIC試験およびRM1完全定量的方法論において使用した分析条件の比較を、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0042】
方法の性能: アッセイ間およびアッセイ内
本明細書で記載される方法は、10nM~5000nMの較正範囲にわたって、それぞれ、97.9%~111%および2.75%~9.66%の範囲に及ぶアッセイ間およびアッセイ内の正確度および精度を生じた。この性能データを、以下の表2にまとめる。クロマトグラムを、
図5および
図6に示す。
図5は、本明細書で示される方法の一実施形態を使用して生成される、分析物RM1の定量下限(5A)および付随する内部標準物質 VA1(5B)と関連する代表的クロマトグラムを示す。
図6は、本明細書で示される方法の一実施形態を使用して生成される、RM1の定量上限(6A)および付随する内部標準物質 VA1(6B)と関連する代表的クロマトグラムを示す。
表2: アッセイ間およびアッセイ内の方法の性能
【表2】
【0043】
方法の性能: 選択性、差次的マトリクス効果、マトリクス因子および回収
マトリクス効果の有意な出現は存在せず、選択性にも問題はなく、50%での回収は、許容可能とみなされた。
【0044】
差次的マトリクス効果サンプルは、完全に、許容可能な精度を示し、試験の性質および目的に関して許容可能性を示した。さらに、その6つの各々のバイアスは、許容可能であり、方法の強さをさらに示した。マトリクス因子結果は、比による全体の値が1.05であり、ピーク面積のみによるものでRM1に関しては0.92およびVA1に関しては0.88であることを示した。これらは全て、マトリクスベースのシグナル変化が効果的にない方法を示す。これらのデータを表3に示す。
表3: 方法の性能測定規準、見かけ上の濃度20nM(LQC)
【表3】
【0045】
実施例2 - ある特定の実施形態の例
本技術のある特定の実施形態の非限定的な例が、本明細書中以降に列挙される。
【0046】
A1. LC-MSを介してオリゴヌクレオチドを分析する工程を含む方法であって、前記方法は、
少なくとも1種の目的の構成要素を含むと考えられるサンプルを提供する工程;
イオンペアリングが存在しない条件下で、前記少なくとも1種の目的の構成要素の抽出を行う工程であって、ここで前記抽出は、固相抽出であり、前記少なくとも1種の目的の構成要素は、オリゴヌクレオチドである工程;
イオンペアリングが存在しない条件下で、液体クロマトグラフィーを介して前記構成要素を分離する工程;および
イオンペアリングが存在しない条件下で、質量スペクトル分析を介して前記構成要素を分析する工程、
を包含する方法。
【0047】
A2. 前記サンプルは、生物学的サンプルである、実施形態A1に記載の方法。
【0048】
A3. 前記生物学的サンプルは、血漿である、実施形態A2に記載の方法。
【0049】
A4. 前記オリゴヌクレオチドは、治療用オリゴヌクレオチドである、実施形態A1に記載の方法。
【0050】
B1. 前述の実施形態のうちのいずれかに記載の方法を行うためのシステム。
【0051】
C1. オリゴヌクレオチドのイオンペアリングが存在しない分析のタメのシステムであって、前記システムは、
非イオンペアリング試薬;
固相抽出システム;
液体クロマトグラフィーシステム;および
質量分析検出システム、
を含むシステム。