(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240903BHJP
【FI】
B23K26/21 G
(21)【出願番号】P 2022086012
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森次 宣文
(72)【発明者】
【氏名】宇野 貴昭
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-123326(JP,U)
【文献】特開昭61-130793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0230364(US,A1)
【文献】特開昭56-080698(JP,A)
【文献】特開昭63-017393(JP,A)
【文献】特開平07-075888(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10023351(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミを主成分とする金属により構成された板状の部位である2つの板状部を備える接合体の製造方法であって、
それぞれの前記板状部における少なくとも一部を有し、2つの前記板状部を接合する接合部を形成することと、
前記接合部にビームを照射することで、レーザ溶接を行うことと、を備え、
前記接合部は、
複数の折り返し部を有し、前記折り返し部とは、
それぞれの前記板状部における折り返すように曲がった部分であり、
それぞれの板状部には、前記折り返し部の両側に、
当該板状部とは別の前記板状部の少なくとも一部を間に挟んで
対面方向に沿って対面する2つのベース部が形成さ
れ、
一方の前記板状部における前記接合部に含まれる部分には、少なくとも2つの前記折り返し部が形成されていると共に、他方の前記板状部における前記接合部に含まれる部分には、少なくとも1つの前記折り返し部が形成されており、
前記接合部は、一方の前記板状部から前記対面方向に沿って頂部側に突出するように設けられ、
前記接合体は、前記接合部に隣接する本体部をさらに備え、
前記接合体は、一方の前記板状部を有する第1部材と、他方の前記板状部を有する第2部材とを備え、
前記第1及び第2部材の間に、流体の流路が形成され、
前記接合部は、予め定められた方向に延び、
前記レーザ溶接に用いられる前記ビームは、前記頂部側から前記対面方向に沿って、前記接合部における幅方向の中央よりも前記本体部側の位置に照射され、これにより、前記接合部における前記頂部側の面から前記対面方向に沿って延びる溶接部が形成され、前記溶接部は、前記接合部に含まれる全ての前記ベース部に形成され、隣接するベース部同士を接合すると共に、前記接合部における前記対面方向に沿った前記頂部側の面の反対側の面までは到達せず、
前記幅方向とは、前記接合部の延びる方向と、前記対面方向とに直交する方向である
接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ溶接による接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接によりワークを接合する際には、割れやブローホール等の溶接不良を抑制するため、溶接箇所の隙間を抑制しつつワークを配置する必要がある。一例として、特許文献1には、レーザ溶接を行う2枚のアルミ製のワークを治具により侠持し、これらのワークの溶接箇所が隙間無く当接するようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術では、ワークにおける治具が取り付けられた箇所にはビームを照射できず、レーザ溶接を行う箇所に制限が生じる。
本開示の一態様では、レーザ溶接による溶接不良を好適に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、板状の部位である2つの板状部を備える接合体の製造方法であって、それぞれの板状部における少なくとも一部を有し、2つの板状部を接合する接合部を形成することと、接合部にビームを照射することで、レーザ溶接を行うことと、を備える。接合部は、少なくとも1つの折り返し部を有し、折り返し部とは、一方の板状部における折り返すように曲がった部分であり、該板状部には、折り返し部の両側に、他方の板状部の少なくとも一部を間に挟んで対面する2つのベース部が形成される。
【0006】
上記構成によれば、接合部に含まれる2つの板状部の間に隙間が生じるのを抑制できる。このため、接合部にビームを照射することで、2つの板状部における隙間が抑制された部分をレーザ溶接により溶融できる。したがって、レーザ溶接による溶接不良を好適に抑制できる。
【0007】
本開示の一態様では、接合部は、一方の板状部から突出するように設けられてもよい。ビームは、接合部における突出する部分が位置する側から接合部に照射されてもよい。
上記構成によれば、レーザ溶接による溶け落ちを抑制できる。
【0008】
本開示の一態様では、接合体は、一方の板状部を有する第1部材と、他方の板状部を有する第2部材とを備えてもよい。第1及び第2部材の間に、流体の流路が形成されてもよい。
【0009】
上記構成によれば、流路を流下する流体が接合部を通過して流出するのを抑制できる。
本開示の一態様では、一方の板状部における接合部に含まれる部分には、2つの折り返し部が形成されていると共に、他方の板状部における接合部に含まれる部分には、1つの折り返し部が形成されていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、接合部におけるシール性及び接合強度を向上できる。
本開示の一態様では、レーザ溶接の際、2つのベース部が対面する方向に沿って接合部にビームを照射してもよい。
【0011】
上記構成によれば、2つの板状部を好適に溶接できる。
本開示の一態様では、2つの板状部は、アルミを主成分とする金属により構成されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、溶接不良を好適に抑制できる。
本開示の一態様は、接合体は、接合部に隣接する本体部をさらに備えてもよい。一方のベース部は、本体部に隣接してもよい。レーザ溶接により、本体部に隣接するベース部と、該ベース部に隣接する板状部とが溶接されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、板状部同士の離間を好適に抑制できる。
本開示の一態様は、接合体は、接合部に隣接する本体部をさらに備えてもよい。接合部は、予め定められた方向に延びてもよい。レーザ溶接において、接合部における幅方向の中央よりも本体部側の部分にビームが照射されてもよい。幅方向とは、接合部の延びる方向と、2つのベース部が対面する方向とに直交する方向であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、板状部同士の離間を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】第1実施形態の配置工程における、第1及び第2板状部の延在方向に直交する断面図である。
【
図4】第1実施形態の接合工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図5】第1実施形態のレーザ溶接工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例のレーザ溶接工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例のレーザ溶接工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図8】第2実施形態の変形例のレーザ溶接工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図9】第3実施形態の変形例のレーザ溶接工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図10】第4実施形態の変形例のレーザ溶接工程における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【
図11】第1実施形態の変形例の接合体における、接合部の延在方向に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0017】
[第1実施形態]
[1.概要]
第1実施形態の接合体1は、四角形の扁平な部材であり、車両に搭載される冷却器として構成されている(
図1参照)。接合体1は、重なるように配置された四角形の板状の部材である第1及び第2部材2、3を有する。第1及び第2部材2、3は、例えば鉄やステンレスを含む様々な金属で構成され得る。しかし、第1及び第2部材2、3は、後述するレーザ溶接工程にて溶接不良(例えば、割れやブローホール)が生じやすい金属や、後述する接合工程において塑性変形し易い金属で構成されていても良い。具体的には、第1及び第2部材2、3は、例えば、アルミを主成分とする金属(換言すれば、アルミ又はアルミ合金)や、銅により構成されていても良い。
【0018】
第1部材2は、第1板状部20と陥没部22とを有する。第1板状部20は、第1部材2の端部に位置し、第1部材2を周回するように延びる平板状の部位である。また、陥没部22は、第1板状部20に囲まれる四角形状の部位である。なお、陥没部22の形状は、四角形状に限らず、適宜定められ得る。第1板状部20と陥没部22との間には段差があり、陥没部22は第1板状部20から陥没するように設けられる。
【0019】
第2部材3は、第2板状部30と中央部32とを有する。第2板状部30は、第2部材3の端部に位置し、第2部材3を周回するように延びる平板状の部位である。また、中央部32は、第2板状部30に囲まれる四角形状の部位である。
【0020】
そして、第1及び第2部材2、3は、第1及び第2板状部20、30の内面20A、30A同士が、対面方向14に沿って対面するように配置されている(
図2参照)。また、第1及び第2板状部20、30には、接合体1(換言すれば、第1及び第2部材2、3)の端部に位置する接合部11が設けられている。接合部11は、接合体1の端部を周回するように延びており、第1及び第2板状部20、30を接合する。
【0021】
また、第1及び第2板状部20、30の内側では、扁平な隙間を空けて陥没部22と中央部32とが対面方向14に対面し、該隙間は、冷媒となる流体(例えば、冷却水)の流路10を形成する。また、接合体1は、図示しない複数の開口部を有しており、これらの開口部を介して、冷却水が流路10に対し流入又は流出する。
【0022】
以後、接合部11が延びる方向を延在方向15と記載する。また、対面方向14及び延在方向15に直交する方向を、幅方向16と記載する。また、接合体1における接合部11以外の部分を、本体部13と記載する。本体部13は、接合部11の内側に隣接し、第1板状部20の一部と、第2板状部30の一部と、陥没部22、中央部32とを有する。
【0023】
[2.接合部]
接合部11は、第2板状部30から対面方向14に沿って突出するように設けられる(
図1、2参照)。また、詳細は後述するが、接合部11は、第1板状部20の少なくとも一部と、第2板状部30の少なくとも一部とを巻締めすることで形成される。
【0024】
接合部11では、第1板状部20は、第1A及び第1B折り返し部23、24と、第1A~第1Cベース部26~28とを有する。第1A折り返し部23は、接合体1の外縁を形成し、第1Aベース部26と第1Bベース部27との間に位置する。また、第1B折り返し部24は、第1A折り返し部23の本体部13側に位置すると共に、第1Bベース部27と第1Cベース部28との間に位置する。また、第1Aベース部26は本体部13に隣接し、第1板状部20の端面21は、第1Cベース部28に含まれる。
【0025】
また、第2板状部30は、第2A折り返し部33と、第2A及び第2Bベース部35、36とを有する。第2A折り返し部33は、第1A折り返し部23の本体部13側に隣接し、第2Aベース部35と第2Bベース部36との間に位置する。また、第2Aベース部35は本体部13に隣接し、第2板状部30の端面31は、第2Bベース部36に含まれる。
【0026】
そして、各折り返し部23、24、33は、両側に位置するベース部が対面方向14に沿って対面するよう、折り返すように曲がっている。なお、折り返し部23、24、33は、湾曲した形状であるが、これに限らず、屈曲した形状であっても良い。また、ベース部26~28、35、36は、対面方向14に沿って重なっている。そして、第2Bベース部36は、第1B及び第1Cベース部27、28に挟まれ、第1Cベース部28は、第2A及び第2Bベース部35、36に挟まれる。また、第1C、第2A、及び第2Bベース部28、35、36は、第1A及び第1Bベース部26、27に挟まれる。
【0027】
また、接合部11は、レーザ溶接により溶融した部分が固まって形成された溶接部12を有する。溶接部12は、第1及び第2板状部20、30に跨って形成され、第1及び第2板状部20、30の間の隙間を封止する。
【0028】
[3.接合体の製造方法]
接合体1の製造工程は、配置工程と、接合工程と、レーザ溶接工程とを含む。
[(1)配置工程]
配置工程では、接合部11の形成前の第1及び第2部材2、3が、第1及び第2板状部20、30の内面20A、30A同士が当接するように、対面方向14に沿って重ねて配置される(
図3参照)。この時、第2部材3の端面31は、第1板状部20に隣接する。また、この時、陥没部22と中央部32との間に、流路10が形成される。
【0029】
[(2)接合工程]
続く接合工程では、重なるように配置された第1及び第2板状部20、30を変形させることで、接合部11が形成される(
図4参照)。一例として、まず、第1板状部20を折り返すように曲げることで第1B折り返し部24を形成し、第1B折り返し部24の両側の第1B及び第1Cベース部27、28により、第2Bベース部36を挟んでも良い。その後、第1及び第2板状部20、30を折り返すように曲げることで、第1A及び第2A折り返し部23、33を形成しても良い。そして、これにより、第2A及び第2Bベース部35、36により、第1Cベース部28を挟んでも良い。また、これにより、第1A及び第1Bベース部26、27にて、第1C、第2A、及び第2Bベース部28、35、36を挟んでも良い。無論、接合部11は、これに限らず、様々な方法で形成され得る。
【0030】
[(3)レーザ溶接工程]
続くレーザ溶接工程では、接合部11に対しビーム4を照射することで、接合部11のレーザ溶接が行われる(
図5参照)。なお、ビーム4は、接合体1の端部に沿って延びる接合部11の全区間にわたって照射される。つまり、溶接部12は、接合部11の全区間に形成される。また、レーザ溶接により、接合部11における第1及び第2板状部20、30が隣接している部分が溶接される。一例として、ビーム4の光源は、第1及び第2板状部20、30に対し、接合部11における突出する部分が位置する側(換言すれば、第2板状部30側)に位置し、対面方向14に沿って接合部11にビーム4が照射される。なお、ビーム4は、対面方向14に対し傾斜した方向に沿って照射されても良い。また、仮に、接合部11が第1板状部20側に突出するように設けられている場合には、ビーム4の光源は、第1板状部20側に設けられても良い。
【0031】
また、ビーム4は、接合部11における幅方向16の中央11Aよりも本体部13側の部分に照射される。この時、ビーム4は、第1Bベース部27に照射されるが、第1B折り返し部24に照射されても良い。
【0032】
また、一例として、レーザ溶接により、第1Bベース部27から、第1C、第2A、及び第2Bベース部28、35、36を通過して第1Aベース部26に至るように、溶融した部分(以後、溶融部12A)が形成される。この時、溶融部12Aは、第1Aベース部26における内面20Aの反対側の外面20Bまで到達しない。これにより、溶け落ちを抑制でき、溶接部12に割れやブローホール等の溶接不良が生じるのを抑制できる。
【0033】
[(4)レーザ溶接の変形例]
レーザ溶接の際、溶融部12Aは、第1Aベース部26の外面20Bまで到達しても良い。また、溶融部12Aは、第1Aベース部26まで到達しなくても良く、少なくとも第2Bベース部36まで到達していれば、接合部11における第1及び第2板状部20、30が隣接している部分が溶接される。
【0034】
また、ビーム4は、接合部11における幅方向16の中央11Aよりも本体部13の反対側(以後、外側)の部分に照射されても良い。この時、ビーム4は、第1Bベース部27に照射されても良いし、第1A折り返し部23に照射されても良い。
【0035】
この外にも、ビーム4は、第1板状部20側から接合部11に照射されても良い。この場合においても、ビーム4は、第1Aベース部26における上記中央11Aよりも本体部13側又は外側の部分に照射されても良いし、第1A折り返し部23に照射されても良い。
【0036】
また、ビーム4は、対面方向14とは異なる様々な方向に沿って照射され得る。一例として、ビーム4は、幅方向16に沿って第1A折り返し部23に照射されても良い。この場合、第1及び第2板状部20、30の各々のベース部同士の境界、例えば、第1Aベース部26と第2Aベース部35との境界に沿って溶融部12Aが形成されるよう、ビーム4が照射されても良い(
図6参照)。これにより、溶接部12における第1及び第2板状部20、30の境界に跨る部分を大きくすることができ、接合強度が向上する。
【0037】
また、ビーム4は、ベース部における折り返し部の付近の部分に照射されても良い。一例として、第1Aベース部26における第1A折り返し部23の付近の部分や(
図7参照)、第1Bベース部27における第1A折り返し部23の付近の部分に、ビーム4が照射されても良い。また、ビーム4は、折り返し部に照射されても良い。これにより、接合部11における第1及び第2板状部20、30の隙間が抑制された部分を溶接できる。また、第1及び第2板状部20、30の端面21、31の位置にバラつきがあり、接合部11の内部における端面21、31の付近に空洞が生じている場合であっても、該隙間が抑制された部分を溶接できる。
【0038】
[第2実施形態]
[4.概要]
第2実施形態の接合体1は、第1実施形態と同様の構成を有しているが、接合部11の構成が第1実施形態と相違する(
図8参照)。第1実施形態の接合部11は、巻締めにより形成されるが、第2実施形態の接合部11は、巻締めを行った後、第1及び第2板状部20、30をさらに折り曲げることで接合部11形成される(詳細は後述する)。このようにして接合部11を形成することで、シール性及び接合強度が向上する。以下では、第2実施形態の接合体1における第1実施形態との相違点について説明する。
【0039】
[5.接合部]
第2実施形態では、第1板状部20は、第1A~第1C折り返し部23~25と、第1A~第1Dベース部26~29とを有する(
図8参照)。第1A折り返し部23は、接合体1の外縁を形成し、第1Aベース部26と第1Bベース部27との間に位置する。また、第1B折り返し部24は、第1A折り返し部23の本体部13側に位置すると共に、第1Bベース部27と第1Cベース部28との間に位置する。また、第1C折り返し部25は、第1A折り返し部23と第1B折り返し部24との間に位置すると共に、第1Cベース部28と第1Dベース部29との間に位置する。また、第1Aベース部26は本体部13に隣接し、第1板状部20の端面21は、第1Dベース部29に含まれる。
【0040】
また、第2板状部30は、第2A及び第2B折り返し部33、34と、第2A~第2Cベース部35~37と有する。第2A折り返し部33は、第1A折り返し部23の本体部13側に隣接し、第2Aベース部35と第2Bベース部36との間に位置する。また、第2B折り返し部34は、第2A折り返し部33の本体部13側に位置し、第2Bベース部36と第2Cベース部37との間に位置する。また、第2Aベース部35は本体部13に隣接し、第2板状部30の端面31は、第2Cベース部37に含まれる。
【0041】
そして、第1実施形態と同様、ベース部26~29、35~37は、対面方向14に沿って重なっている。また、接合部11は、第1実施形態と同様の溶接部12を有する。
[6.接合体の製造方法]
第2実施形態においても、接合体1は、第1実施形態と同様、配置工程と、接合工程と、レーザ溶接工程と経て製造される。しかし、第2実施形態は、接合工程及びレーザ溶接工程において第1実施形態と相違しており、以下ではこれらの工程について説明する。
【0042】
[(1)接合工程]
接合工程では、配置工程で重なるように配置された第1及び第2板状部20、30を変形させることで、接合部11が形成される(
図8参照)。一例として、まず、第1実施形態と同様にして巻締めを行うことで、第1実施形態と同様の接合部(以後、巻締め部)を形成しても良い。その後、巻締め部を折り返すように、重ねて配置された第1及び第2板状部20、30を曲げ、折り返し部を形成することで、接合部11が形成されても良い。無論、接合部11は、これに限らず、様々な方法で形成され得る。
【0043】
[(2)レーザ溶接工程]
続くレーザ溶接工程では、第1実施形態と同様にして、接合部11に対しビーム4を照射することで、接合部11のレーザ溶接が行われる(
図8参照)。第2実施形態においても、第1実施形態と同様、第2板状部30側から、接合部11における幅方向16の中央11Aよりも本体部13側の部分にビーム4が照射される。そして、溶融部12Aは、第1Bベース部27から、第1C、第1D、第2A~2Cベース部を通過して第1Aベース部26に至るように形成され、第1Aベース部26の外面20Bまでは到達しない。
【0044】
無論、これに限らず、第2実施形態においても、第1実施形態で述べたのと同様にして、ビーム4の向きや、ビーム4が照射される部分や、溶融部12Aが形成される位置等が適宜定められ得る。
【0045】
[第3実施形態]
[7.概要]
第3実施形態の接合体1は、第1実施形態と同様の構成を有しているが、接合部11がヘミング構造を有しており、この点において第1実施形態と相違する(
図9参照)。ヘミング構造を採用することで、接合工程を簡略化できる。以下では、第3実施形態の接合体1における第1実施形態との相違点について説明する。
【0046】
[8.接合部]
第3実施形態では、第1板状部20は、第1A折り返し部23と、第1A及び第1Bベース部26、27とを有する(
図9参照)。第1A折り返し部23は、接合体1の外縁を形成し、第1Aベース部26と第1Bベース部27との間に位置する。また、第1Aベース部26は本体部13に隣接し、第1板状部20の端面21は、第1Bベース部27に含まれる。
【0047】
また、第2板状部30は、折り返し部及びベース部を有さない。
そして、第1A及び第1Bベース部26、27と、第2板状部30における端面31付近の部分とは、対面方向14に沿って重なり、該部分は、第1A及び第1Bベース部2627に挟まれる。
【0048】
また、接合部11は、第1実施形態と同様の溶接部12を有する。
[9.接合体の製造方法]
第3実施形態においても、接合体1は、第1実施形態と同様、配置工程と、接合工程と、レーザ溶接工程と経て製造される。しかし、第3実施形態は、接合工程及びレーザ溶接工程において第1実施形態と相違しており、以下ではこれらの工程について説明する。
【0049】
[(1)接合工程]
接合工程では、配置工程で重なるように配置された第1及び第2板状部20、30を変形させることで、接合部11が形成される(
図9参照)。一例として、第1板状部20を折り返すように曲げることで第1A折り返し部23を形成し、第1A折り返し部23の両側の第1A及び第1Bベース部26、27により、第2板状部30を挟んでも良い。無論、接合部11は、これに限らず、様々な方法で形成され得る。
【0050】
[(2)レーザ溶接工程]
続くレーザ溶接工程では、第1実施形態と同様にして、接合部11に対しビーム4を照射することで、接合部11のレーザ溶接が行われる(
図9参照)。第3実施形態では、第2板状部30側から、第1Bベース部27における第1A折り返し部23の付近の部分にビーム4が照射される。また、レーザ溶接により、第1Bベース部27から、第2板状部30を通過して第1Aベース部26に至るように、溶融部12Aが形成されるが、溶融部12Aは、第1Aベース部26の外面20Bまで到達しない。この外にも、例えば、第1板状部20側から、第1Aベース部26における第1A折り返し部23の付近の部分にビーム4が照射されても良い。
【0051】
無論、これに限らず、第3実施形態においても、第1及び第2実施形態で述べたのと同様にして、ビーム4の向きや、ビーム4が照射される部分や、溶融部12Aが形成される位置等が定められ得る。
【0052】
[第4実施形態]
[10.概要]
第4実施形態の接合体1は、第3実施形態と同様の構成を有しているが、接合部11に含まれる第2板状部30の構成が第1実施形態と相違する(
図10参照)。以下では、第4実施形態の接合体1における第3実施形態との相違点について説明する。
【0053】
[11.接合部]
第4実施形態では、第1板状部20は、第3実施形態と同様の第1A折り返し部23と、第1A及び第1Bベース部26、27とを有する(
図10参照)。
【0054】
一方、第2板状部30は、第2A折り返し部33と、第1A及び第1Bベース部35、36とを有する。第2Aベース部35は本体部13に隣接し、第2板状部30の端面31は、第2Bベース部36に含まれる。また、第2A及び第2Bベース部35、36は、当接した状態、又は、若干の隙間を空けた状態で、対面方向14に沿って対面する。
【0055】
そして、第1A及び第1Bベース部26、27と、第2A及び第2Bベース部35、36とは、対面方向14に沿って重なる。また、第2A及び第2Bベース部35、36は、第1A及び第1Bベース部26、27に挟まれ、第1A折り返し部23と第2A折り返し部33とは、隣接して配置される。
【0056】
また、接合部11は、第3実施形態と同様の溶接部12を有する。
[12.接合体の製造方法]
第4実施形態においても、接合体1は、第3実施形態と同様、配置工程と、接合工程と、レーザ溶接工程と経て製造される。しかし、第4実施形態は、接合工程及びレーザ溶接工程において第3実施形態と相違しており、以下ではこれらの工程について説明する。
【0057】
[(1)接合工程]
接合工程では、配置工程で重なるように配置された第1及び第2板状部20、30を変形させることで、接合部11が形成される(
図10参照)。一例として、まず、第2板状部30を折り返すように曲げることで第2A折り返し部33を形成しても良い。その後、第1板状部20を折り返すように曲げることで第1A折り返し部23を形成し、第1A及び第1Bベース部26、27により、第2板状部30の第2A折り返し部33と、第2A及び第2Bベース部35、36を挟んでも良い。無論、接合部11は、これに限らず、様々な方法で形成され得る。
【0058】
[(2)レーザ溶接工程]
続くレーザ溶接工程では、第3実施形態と同様にして、接合部11に対しビーム4を照射することで、接合部11のレーザ溶接が行われる(
図10参照)。しかし、第4実施形態では、第1板状部20側から、第1Aベース部26における第1A折り返し部23の付近の部分にビーム4が照射される。また、レーザ溶接により、第1Aベース部26から第2Aベース部35に至るように、溶融部12Aが形成される。この外にも、例えば、第2板状部30側から、第1Bベース部27における第1A折り返し部23の付近の部分にビーム4が照射されても良い。
【0059】
無論、これに限らず、第4実施形態においても、第1~第3実施形態で述べたのと同様にして、ビーム4の向きや、ビーム4が照射される部分や、溶融部12Aが形成される位置等が定められ得る。
【0060】
[13.効果]
(1)第1~第4実施形態によれば、接合部11に含まれる第1板状部20と第2板状部30との間に隙間が生じるのを抑制できる。このため、レーザ溶接工程において接合部11にビーム4を照射することで、第1板状部20と第2板状部30との間の隙間が抑制された部分を溶融できる。したがって、例えば、治具を用いて第1板状部20と第2板状部30とを密着させ、これらの部位の隙間を抑制しなくても、レーザ溶接による溶接不良を抑制できる。また、接合部11により第1板状部20と第2板状部30とが接合されているため、シール性及び接合強度が向上する。
【0061】
(2)また、レーザ溶接工程では、ビーム4は、突出する接合部11が位置する第2板状部30側から照射される。このため、溶融部12Aが第1Aベース部26の外面20Bまで到達し、溶け落ちが生じるのを抑制できる。
【0062】
(3)また、接合部11の付近には流路10が存在しており、レーザ溶接により接合部11のシール性が向上している。このため、流路10を流下する冷却水が、接合部11を通過して流出するのを抑制できる。
【0063】
(4)また、第1実施形態においては、接合部11は巻締めにより形成される。このため、接合部11における第1板状部20と第2板状部30との間の隙間を抑制しつつ、シール性及び接合強度を向上できる。
【0064】
(5)また、レーザ溶接工程において、対面方向14に沿ってビーム4を照射することで、対面方向14に沿って重なるベース部を好適に溶接できる。
(6)また、第1及び第2板状部20、30をアルミ又はアルミ合金で構成することで、溶接不良が好適に抑制される。
【0065】
(7)また、レーザ溶接工程により、本体部13に隣接する第1Aベース部26と第2Aベース部35とが溶接されると共に、接合部11における本体部13の幅方向16の中央11Aよりも本体部13側の部分が溶接される。これにより、接合部11における第1及び第2板状部20、30は、本体部13の付近で溶接され得る。このため、例えば、流路10を流下する冷却水の影響等で、第1及び第2部材2、3同士を離間させる力が加えられたとしても、第1及び第2板状部20、30同士の離間を好適に抑制できる。
【0066】
[14.他の実施形態]
(1)第1~第4実施形態の接合体1は、車載用の冷却器として構成されている。しかし、接合体1は、冷却器以外の機器であっても良く、例えば、車載用の熱交換器や、車両の排ガスを流下させる排気管等として構成されていても良い。このような装置においても、第1~第4実施形態と同様にして、熱媒体である流体や排ガスの流路を形成する部材の接合部を設けることで、同様の効果が得られる。また、接合体1は、車載用ではない機器として構成されていても良いし、流体の流路を有さない機器として構成されていても良い。このような場合であっても、接合部を設けることで、同様の効果が得られる。
【0067】
(2)また、接合部11は、第2板状部30から突出するように形成されるが、これに限らず、第1板状部20から突出するように形成されても良い。また、接合部11は、接合体1を周回するように設けられていなくても良いし、接合体1の端部に形成されていなくても良い。また、第1及び第2板状部20、30は、平板状に限らず、例えば、湾曲した形状であっても良い。
【0068】
(3)また、第1~第4実施形態において、本体部13における流路10よりも接合部11側の位置に、傾斜部13Aが設けられていても良い(
図11参照)。ここで、第1部材2が位置する側を第1側、第2部材3が位置する側を第2側と記載する。傾斜部13Aは、接合部11に向かうに従い第1側に向かうように曲がる部位である。一例として、
図11に示すように、傾斜部13Aは、接合部11が、本体部13に位置する第2板状部3の第2側の面よりも第1側に位置するように屈曲していても良い。無論、傾斜部13Aは、湾曲した形状を有していても良い。これにより、接合部11が接合体1の取付を妨げるのを抑制できる。
【0069】
また、接合体1の製造工程において、傾斜部13Aを形成する工程が行われる時期は、適宜定められる。具体的には、例えば、配置工程の前に、第1及び第2部材2、3の各々に傾斜部13Aに相当する部位が形成されても良い。また、例えば、配置工程と接合工程との間や、接合工程とレーザ溶接工程との間や、レーザ溶接工程の後に、傾斜部13Aが形成されても良い。
【0070】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0071】
[15.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
板状の部位である2つの板状部を備える接合体の製造方法であって、
それぞれの前記板状部における少なくとも一部を有し、2つの前記板状部を接合する接合部を形成することと、
前記接合部にビームを照射することで、レーザ溶接を行うことと、を備え、
前記接合部は、少なくとも1つの折り返し部を有し、前記折り返し部とは、一方の前記板状部における折り返すように曲がった部分であり、該板状部には、前記折り返し部の両側に、他方の前記板状部の少なくとも一部を間に挟んで対面する2つのベース部が形成される
接合体の製造方法。
[項目2]
項目1に記載の接合体の製造方法であって、
前記接合部は、一方の前記板状部から突出するように設けられ、
前記ビームは、前記接合部における突出する部分が位置する側から前記接合部に照射される
接合体の製造方法。
[項目3]
項目1又は項目2に記載の接合体の製造方法であって、
前記接合体は、一方の前記板状部を有する第1部材と、他方の前記板状部を有する第2部材とを備え、
前記第1及び第2部材の間に、流体の流路が形成される
接合体の製造方法。
[項目4]
項目1から項目3のうちのいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
一方の前記板状部における前記接合部に含まれる部分には、2つの前記折り返し部が形成されていると共に、他方の前記板状部における前記接合部に含まれる部分には、1つの前記折り返し部が形成されている
接合体の製造方法。
[項目5]
項目1から項目4のうちのいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
前記レーザ溶接の際、2つの前記ベース部が対面する方向に沿って前記接合部に前記ビームを照射する
接合体の製造方法。
[項目6]
項目1から項目5のうちのいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
2つの前記板状部は、アルミを主成分とする金属により構成される
接合体の製造方法。
[項目7]
項目1から項目6のうちのいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
前記接合体は、前記接合部に隣接する本体部をさらに備え、
一方の前記ベース部は、前記本体部に隣接し、
前記レーザ溶接により、前記本体部に隣接する前記ベース部と、該ベース部に隣接する前記板状部とが溶接される
接合体の製造方法。
[項目8]
項目1から項目7のうちのいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
前記接合体は、前記接合部に隣接する本体部をさらに備え、
前記接合部は、予め定められた方向に延び、
前記レーザ溶接において、前記接合部における幅方向の中央よりも前記本体部側の部分に前記ビームが照射され、
前記幅方向とは、前記接合部の延びる方向と、2つの前記ベース部が対面する方向とに直交する方向である
接合体の製造方法。
【符号の説明】
【0072】
1…接合体、10…流路、11…接合部、11A…中央、12…溶接部、12A…溶融部、13…本体部、14…対面方向、15…延在方向、16…幅方向、2…第1部材、20…第1板状部、23~25…折り返し部、26~29…ベース部、3…第2部材、30…第2板状部、33、34…折り返し部、35~37…ベース部、4…ビーム。