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特許7548994セリウム及びジルコニウムをベースとする混合酸化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】セリウム及びジルコニウムをベースとする混合酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20240903BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20240903BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J23/10 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2022503561
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2020102176
(87)【国際公開番号】W WO2021013016
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/096864
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イフラー, シモン
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ コエーリョ マルケス, ルイ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チュー, リン
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第03050451(FR,B1)
【文献】特表2019-518693(JP,A)
【文献】特開2009-273961(JP,A)
【文献】特表2019-521937(JP,A)
【文献】特開2008-150264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0207027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00 -47/00
49/10 -99/00
C01G 49/00 -49/08
B01J 21/00 -38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムと、セリウムと、ランタンと、任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE)との混合酸化物であって、以下の組成:
・8.0重量%~45.0重量%のセリウム;
・1.0重量%~15.0重量%のランタン;
・15.0重量%までのセリウム以外及びランタン以外の希土類元素;
・25.0%以下のランタン、並びにセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の全割合;
・ジルコニウムとしての残部
を有し;
前記元素(Ce、Zr、La、RE)の割合は、全体としての混合酸化物に対する酸化物の重量によって与えられ、
前記混合酸化物は、1100℃の空気中で4時間焼成した後に、以下の特性:
・25~50mgの比表面積(S1100℃/4h);
・0.50cm/g~0.90cmgの、300nm未満の直径を有する細孔に関する水銀ポロシメトリーによって決定した細孔体積(PV0-300nm
を示し;
前記混合酸化物は粒子の形態であり、以下の特性:
・1.0μm~2.5μmのd50;
・2.0μm~9.0μmのd90
を有し、上記の元素は、合酸化物中に酸化物として存在する、混合酸化物。
【請求項2】
ジルコニウムと、セリウムと、ランタンと、任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE)と、任意選択的にハフニウムとの酸化物の組み合わせからなる混合酸化物であって、以下の組成:
・8.0重量%~45.0重量%のセリウム;
・1.0重量%~15.0重量%のランタン;
・15.0重量%までのセリウム以外及びランタン以外の希土類元素;
・25.0%以下のランタン、並びにセリウム及びランタン以外の希土類元素の全割合;
・2.5%以下のハフニウムの割合;
・ジルコニウムとしての残部
を有し;
前記元素(Ce、Zr、Hf、La、RE)の割合は、全体としての混合酸化物に対する酸化物の重量によって与えられ、
1100℃の空気中で4時間焼成した後に、以下の特性:
・25~50mgの比表面積(S1100℃/4h);
・0.50cm/g~0.90cmgの、300nm未満の直径を有する細孔に関する水銀ポロシメトリーによって決定した細孔体積
を示し;
前記混合酸化物は粒子の形態であり、以下の特性:
・1.0μm~2.5μmのd50;
・2.0μm~9.0μmのd90
を有する、混合酸化物。
【請求項3】
以下の割合:
・18.0重量%~37.0重量%のセリウム;
・3.0重量%~9.0重量%のランタン;
・ジルコニウムとしての残部;
又は
・30.0重量%~45.0重量%のセリウム;
・3.0重量%~9.0重量%のランタン;
・3.0重量%~9.0重量%のセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE);
・ジルコニウムとしての残部;
又は
・20.0重量%~35.0重量%のセリウム;
・3.0重量%~9.0重量%のランタン;
・3.0重量%~15.0重量%のセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE);
・ジルコニウムとしての残部
を特徴とする、請求項1又は2に記載の混合酸化物。
【請求項4】
ハフニウムも含、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項5】
セリウムの割合が、8.0%~45.0%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項6】
セリウムの割合が、18.0%~37.0%又は18.0%~22.0%又は20.0%~35.0%又は22.0%~26.0%又は28.0%~32.0%又は33.0%~37.0%又は30%~45%又は38.0%~42.0%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項7】
ランタンの割合が、1.0%~15.0%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項8】
セリウム以外及びランタン以外の希土類元素の割合が、0%~15.0%に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項9】
ジルコニウムの割合が、45%より高い、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項10】
重量比ZrO/CeO>1.0であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項11】
d50が2.5μm未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項12】
前記粒子が、1.0μm以下のd10を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項13】
前記粒子が、0.2μm以上のd10を示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項14】
前記粒子が、20.0μm以下のd99を示す、請求項1~13のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項15】
前記粒子が、5.0μm以上のd99を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項16】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、50~70mgに含まれる比表面積を示す、請求項1~15のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項17】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、1.40cm/g~3.00cmgの水銀ポロシメトリーによって決定した全細孔体積を示す、請求項1~16のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項18】
水中に43.0%の前記混合酸化物の粒子を含有し、及び4.0±0.1のpHを示す分散体の粘度が20.0cP以下であり、前記粘度が、20±1℃において、5.0~10.0秒-1の適用された剪断速度で測定される、請求項1~17のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項19】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、28~50m/gの比表面積(S1100℃/4h)を示す、請求項1~18のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項20】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、30~50m/gの比表面積(S1100℃/4h)を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項21】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、55~70m/gの比表面積(S1100℃/4h)を示す、請求項1~20のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項22】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、0.50cm/g~0.70cm/gの、300nm未満の直径を有する細孔に関する水銀ポロシメトリーによって決定した細孔体積(PV0-300nm)を示す、請求項1~21のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項23】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、1.50cm/g~2.50cm/g又は1.50cm/g~2.20cm/gの、水銀ポロシメトリーによって決定した全細孔体積を示す、請求項1~22のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項24】
1100℃の空気中で4時間焼成した後、少なくとも1.60cm/gの、水銀ポロシメトリーによって決定した全細孔体積を示す、請求項1~23のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項25】
REがY若しくはNd又はY及びNdの組合せである、請求項1~24のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項26】
d50が1.0μm~2.2μmである、請求項1~25のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項27】
d50が1.0μm~2.0μmである、請求項1~26のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項28】
d50が1.5μm~2.0μmである、請求項1~27のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項29】
d90が2.0μm~8.0μmである、請求項1~28のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項30】
d90が2.0μm~7.0μmである、請求項1~29のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項31】
d90が3.0μm~8.0μmである、請求項1~29のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項32】
d90が3.0μm~7.0μmである、請求項1~29のいずれか一項に記載の混合酸化物。
【請求項33】
(i)アルミナ;
(ii)1つ以上の白金族金属;及び
(iii)請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物
を含む触媒組成物。
【請求項34】
多孔性の支持体と、前記支持体の表面上の請求項33に記載の触媒組成物とを含む、触媒ウォール-フローモノリス。
【請求項35】
触媒コンバーター又は触媒ウォール-フローモノリスの調製のための、請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物の使用。
【請求項36】
請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物の調製方法であって、
(a1)硫酸アニオン(SO 2-)、塩化ジルコニウム塩、セリウム塩、並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の少なくとも1つの塩を含む水溶液を水性塩基溶液と反応させ、沈殿物を形成するステップと;
(b1)ステップ(a1)の終了時に得られる沈殿物を液体媒体から分離するステップと;
(c1)ステップ(b1)の終了時に得られる沈殿物を、水性媒体中で、及び任意選択的に塩基性化合物と一緒にランタン塩の存在下で加熱するステップと;
(d1)ステップ(c1)の終了時に得られる混合物に、任意選択的に塩基性化合物と一緒に、ランタン塩を添加するステップと;
(e1)ステップ(d1)の終了時に得られる混合物に、有機テクスチャリング剤を添加するステップであって、有機テクスチャリング剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びそれらの塩、並びに、鎖の末端に-CH -COOH基を含むエトキシル化又はプロポキシル化脂肪アルコールからなる界面活性剤、からなる群の中で選択されるステップと;
(f1)ステップ(e1)の終了時に得られる固体材料を液体媒体から分離し、空気中で焼成するステップと;
(g1)ステップ(f1)の終了時に得られる固体材料を、請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物を得るためにジェットミル加工するステップと;
を含む、方法。
【請求項37】
前記塩化ジルコニウム塩がZrOClである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(a1)の前記水溶液のモル比SO 2-/(Zr+Ce)が、0.5~1.0の範囲である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物と同一組成の混合酸化物を、請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物を得るためにジェットミル加工することからなる、請求項1~32のいずれか一項に記載の混合酸化物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月19日出願の国際特許出願第PCT/CN2019/096864号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に完全に援用される。本出願とこのPCT出願との間に用語又は表現の明確さに影響を与えるいずれかの矛盾がある場合には、本出願のみが参照されるものとする。
【0002】
本発明は、セリウム、ジルコニウム、ランタン、並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の、水性スラリーの粘度、多孔性及び高温での熱抵抗の間の妥協を示す少なくとも1つの希土類元素をベースとする混合酸化物に関する。また本発明は、前記混合酸化物の粒子を含む触媒組成物、及びフィルター上でのコーティングの調製における前記組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ガソリンエンジンは、微粒子と一緒に炭化水素、一酸化炭素及び窒素の酸化物を含有する燃焼排ガス流を生じる。ガスをスリーウェイ触媒組成物によって処理することが知られており、煤フィルターなどの微粒子トラップで微粒子を回収することは知られている。
【0004】
歴史的に、主に化学量論的に作動するガソリンエンジンは、低レベルの微粒子が形成するように設計されてきた。しかしながら、それらの燃料効率のために応用の増加が見られるガソリン直噴(GDI)エンジンは、微粒子の発生をもたらす、リーンバーン条件及び成層燃焼がある可能性がある。ガソリン燃料を燃料とするエンジン、例えばガソリン直噴エンジンの微粒子排出は規定対象であり、そしてガソリンエンジンの既存の後処理システムは、提案された粒子状物質基準を達成するために適切ではない。
【0005】
ディーゼルリーンバーンエンジンによって生じる微粒子とは対照的に、ガソリンエンジンによって生じる微粒子は、より微細であり、より低レベルになる傾向がある。これは、ガソリンエンジンと比較して、ディーゼルエンジンの異なる燃焼条件による。例えば、ガソリンエンジンはディーゼルエンジンより高温で作動する。また、結果として生じる炭化水素成分は、ディーゼルエンジンと比較して、ガソリンエンジンの排出では異なる。
【0006】
未燃焼炭化水素、一酸化炭素及び酸化窒素汚染物質に関する排出基準は、より厳しくなり続けている。そのような基準を満たすために、ガソリン燃料内部燃焼機関の排ガスラインには、スリーウェイ触媒(TWC)を含有する触媒コンバーターがある。そのような触媒は、未焼成炭化水素及び一酸化炭素の排ガス流中の酸素及び窒素の酸化物による酸化、並びに酸化窒素の窒素への付随する還元を促進する。
【0007】
新たなユーロ6(ユーロ6及びユーロ6c)排出基準は、ガソリン排出基準を満たすための多数の難しい設計問題を示す。特に、全て、例えばEUドライビングサイクルでの最大オンサイクル背圧によって測定される許容可能な背圧で、窒素の酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)及び未燃焼炭化水素(HC)の1つ以上などの非PM汚染物質の排出基準を満たすと同時に、粒子状物質(PM)ガソリン(火花点火)排出の数を減少するために、フィルター、又はフィルターを含む排ガスシステムをどのように設計するのか。
【0008】
ガソリンシステムで、フロー-スルーモノリスなどの基材キャリア上に配置してスリーウェイ触媒(TWC)を提供することが知られている。ウォール-フローモノリス(微粒子フィルター)上にTWCをコーティングすることによって、単一デバイス中にTWC及び微粒子除去機能を組み合わせることも知られている。
【0009】
[発明が解決しようとする課題]
混合酸化物はスラリーの形態で他の無機材料と混合され、そしてこのスラリーは、フロー-スルーモノリス又はフィルターなどの基材キャリア上にコーティングされる。問題点は、スラリーが、それを容易に処理することができるように高すぎず、そしてそれがコーティングの性能に影響を及ぼさない粘度を維持するということである。本発明は、高い比表面積及び高い細孔体積を示しながら、基材キャリア上、より詳しくはウォール-フローモノリス又はフィルター上に容易にコーティングすることが可能である混合酸化物を提供することを目的とする。本発明の混合酸化物は、水性スラリーの形態である場合、高い比表面積S1100℃/4h及び高い細孔体積(TPV及びPV0-300nm)を維持しながら、較正されたサイズと低粘度との間の妥協である。
【0010】
背景技術
米国特許第8,640,440号明細書は、2層を有し、層の1つが酸素貯蔵セリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有するフィルターを開示する。
【0011】
国際公開第2017/060694号パンフレットは、NOx吸収剤を開示する。d50又はd90の特徴を有する混合酸化物は記載されていない。
【0012】
米国特許出願公開第2019/168188号明細書は、ジルコニウム、セリウム、ランタン並びに任意選択的にセリウム及びランタン以外の少なくとも1つの希土類金属の混合酸化物を開示するが、全細孔体積d50及びd90は開示されていない。
【0013】
[課題を解決するための手段]
したがって、本発明は、請求項1~32に記載の混合酸化物に関する。混合酸化物は、ジルコニウム、セリウム、ランタン、並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE)を含み、以下の組成:
・8.0重量%~45.0重量%のセリウム;
・1.0重量%~15.0重量%のランタン;
・15.0重量%までのセリウム以外及びランタン以外の希土類元素;
・25.0%以下、より特に20.0%以下、さらにより特に18.0%以下のランタン並びにセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の全割合;
・ジルコニウムとしての残部
を有し;
1100℃の空気中で4時間焼成した後、以下の特性:
・25~50m/g、より特に28~50m/g、さらにより特に30~50m/gの比表面積(S1100℃/4h);
・0.50cm/g~0.90cm/g、より特に0.50cm/g~0.80cm/g、さらにより特に0.50cm/g~0.70cm/gの、300nm未満の直径を有する細孔に関する水銀ポロシメトリーによって決定した細孔体積(PV0-300nm
を示し;
混合酸化物は粒子の形態であり、以下の特性:
・1.0μm~2.5μm、より特に1.0μm~2.2μm、さらにより特に1.0μm~2.0μm又は1.5μm~2.0μmのd50;
・2.0μm~9.0μm、より特に2.0μm~8.0μm、さらにより特に2.0μm~7.0μm又は3.0μm~8.0μm又は3.0μm~7.0μmのd90
を有する。
【0014】
また本発明は、請求項33において開示される触媒組成物、及び請求項34において開示される触媒ウォール-フローモノリスにも関する。また本発明は、請求項35において開示される混合酸化物の使用、及び請求項36~39において開示される混合酸化物の調製プロセスにも関する。
【0015】
以下、これらの本発明についてのより多くの詳細が与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
焼成、より特に、後に比表面積値がある焼成は、別段の記載がない限り、空気中での焼成である。本説明の継続のためには、特に明記しない限り、与えられる全ての範囲の値において、限界値は含められることがまた明記される。これは、「少なくとも」、「最大で」又は「まで」を含む表現にも当てはまる。加えて、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素は、REと記載される。
【0017】
上記の元素(Ce、Zr、La、RE)は、一般的に混合酸化物中に酸化物として存在する。とはいえ、これらは、水酸化物又はオキシ水酸化物の形態で部分的に存在していてもよい。
【0018】
上記元素に加えて、本発明の混合酸化物は、ハフニウム元素も含み得る。この元素は、通常、天然の状態で存在する鉱石中にジルコニウムとの組み合わせで存在する。ジルコニウムに対するハフニウムの相対的割合は、ジルコニウムが抽出される鉱石に依存する。一部の鉱石におけるZr/Hfの重量基準の相対的割合は、約50/1であり得る。したがって、バデレアイトは概ね98%のZrO及び2%のHfOを含有する。ジルコニウムの場合、ハフニウムは一般に酸化物として存在する。しかしながら、ハフニウムが部分的に水酸化物又はオキシ水酸化物の形態でも存在することは除外されない。混合酸化物中のハフニウムの割合は、2.5%以下(≦2.5%)、さらには2.0%以下(≦2.0%)である。
【0019】
混合酸化物の分野で一般的なように、元素の割合は、全体としての混合酸化物に対する酸化物の重量基準で与えられる。これらの割合の計算では、以下の酸化物が考慮される:CeO、ZrO、HfO、La、Pr11が考慮されるPrを除いた全てのREに関するRE。一例として、実施例1の混合酸化物(Zr-Ce-La 60%-35%-5%)の割合は、60%のZrO、35%のCeO及び5%のLaに相当する。元素の割合は、蛍光X線分析又は誘導結合プラズマ質量分析のような一般的な分析方法によって決定される。
【0020】
本発明は、より特に、ジルコニウムと、セリウムと、ランタンと、任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE)と、任意選択的にハフニウムとの酸化物の組み合わせからなる混合酸化物であって、以下の組成:
・8.0重量%~45.0重量%のセリウム;
・1.0重量%~15.0重量%のランタン;
・15.0重量%までのセリウム以外及びランタン以外の希土類元素;
・25.0%以下、より特に20.0%以下、さらにより特に18.0%以下のランタン、並びにセリウム及びランタン以外の希土類元素の全割合;
・2.5%以下、さらに2.0%以下のハフニウムの割合;
・ジルコニウムとしての残部
を有し;
1100℃の空気中で4時間焼成した後に、以下の特性:
・25~50m/g、より特に28~50m/g、さらにより特に30~50m/gの比表面積(S1100℃/4h);
・0.50cm/g~0.90cm/g、より特に0.50cm/g~0.80cm/g、さらにより特に0.50cm/g~0.70cm/gの、300nm未満の直径を有する細孔に関する水銀ポロシメトリーによって決定した細孔体積
を示し;
混合酸化物は粒子の形態であり、以下の特性:
・1.0μm~2.5μm、より特に1.0μm~2.2μm、さらにより特に1.0μm~2.0μm又は1.5μm~2.0μmのd50;
・2.0μm~9.0μm、より特に2.0μm~8.0μm、さらにより特に2.0μm~7.0μmのd90
を有する、混合酸化物に関する。
【0021】
本発明の混合酸化物は、上記の元素(Ce、Zr、存在する場合、Hf、La、存在する場合、RE)を上記の割合で含むが、不純物などのその他の元素を追加的に含んでもよい。不純物は、混合酸化物の調製プロセスで使用される原材料又は出発物質に由来し得る。不純物の合計割合は、通常、混合酸化物に対して0.2重量%未満であり得る。
【0022】
混合酸化物はセリウムを含む。セリウムの割合は、8.0%~45.0%、より特に18.0%~44.0%、さらにより特に18.0%~42.0%である。この割合は、18.0%~37.0%又は18.0%~22.0%又は20.0%~35.0%又は22.0%~26.0%又は28.0%~32.0%又は33.0%~37.0%又は30%~45%又は38.0%~42.0%でもあり得る。
【0023】
混合酸化物はランタンも含む。ランタンの割合は、1.0%~15.0%である。この割合は、1.0%~13.0%、より特に1.0%~8.0%、さらにより特に2.0%~8.0%又は3.0%~9.0%又は3.0~7.0%に含まれ得る。
【0024】
混合酸化物は、15.0重量%までのセリウム以外及びランタン(RE)以外の少なくとも1つの希土類元素を含んでもよい。IUPACによって定義される希土類元素は、周期表中の1組の17種の化学元素、特に15種のランタニド並びにスカンジウム及びイットリウムである。希土類元素としては、限定されないが、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びイットリウム(Y)が挙げられる。より詳しくは、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素は、Y又はNd、或いはYとNdとの組み合わせであり得る。したがって、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素の割合は0%~15.0%である。この割合は、1.0%~13.0%、より特に1.0%~8.0%、さらにより特に2.0%~8.0%又は3.0%~7.0%であり得る。それは10.0%~13.0%でもあり得る。
【0025】
ランタン、並びにセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の全割合は、25.0%以下、より特に20.0%以下、さらにより特に18.0%以下である。
【0026】
ジルコニウムの割合に関する限り、ジルコニウムは混合酸化物の残部として存在する。全ての元素の合計は100%であり、したがって、ジルコニウムの割合は、混合酸化物の他の元素の100%を補うように相当する。ジルコニウムの割合は、45.0%より高いか、より特に48.0%より高いか、さらにより特に50.0%以上である。ジルコニウムの割合は、48.0%~80.0%であり得る。本発明の混合酸化物は、重量比ZrO/CeO>1.0、より特に重量比ZrO/CeO≧1.25を有する、Zrがリッチな混合酸化物として記載され得る。
【0027】
本発明による、より特定の組成が以下に与えられる:
- 組成物C1:
・18.0重量%~37.0重量%のセリウム;
・3.0重量%~9.0重量%のランタン;
・ジルコニウムとしての残部。
【0028】
この組成物C1に関して、セリウムの割合は、より特に18.0%~22.0%又は33.0%~37.0%であり得る。ランタンの割合は、より特に3.0%~7.0%であり得る。
【0029】
- 組成物C2:
・30.0重量%~45.0重量%のセリウム;
・3.0重量%~9.0重量%のランタン;
・3.0重量%~9.0重量%のセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE);
・ジルコニウムとしての残部。
【0030】
この組成物C2に関して、セリウムの割合は、より特に38.0%~42.0%又は33.0%~37.0%であり得る。ランタンの割合は、より特に3.0%~7.0%であり得る。セリウム以外及びランタン以外の希土類元素の割合は、より特に3.0%~7.0%である。
【0031】
- 組成物C3:
・20.0重量%~35.0重量%のセリウム;
・3.0重量%~9.0重量%のランタン;
・3.0重量%~15.0重量%のセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1つの希土類元素(RE);
・ジルコニウムとしての残部。
【0032】
この組成物C3に関して、セリウムの割合は、より特に22.0%~26.0%又は28.0%~32.0%であり得る。ランタンの割合は、より特に3.0%~7.0%であり得る。セリウム以外及びランタン以外の希土類元素の割合は、より特に3.0%~7.0%である。
【0033】
本発明の混合酸化物の粒子は、以下のパラメーターによって特徴付けられる。粒子は、1.0μm~2.5μm、より特に1.0μm~2.2μm、さらにより特に1.0μm~2.0μm又は1.5μm~2.0μmのd50を示す。一実施形態において、d50<2.5μm(厳密に2.5μm未満)である。
【0034】
混合酸化物の粒子は、2.0μm~9.0μm、より特に2.0μm~8.0μm、さらにより特に2.0μm~7.0μm又は3.0μm~8.0μm又は3.0μm~7.0μmであるd90を示す。
【0035】
粒子は、1.0μm以下(≦1.0μm)、より特に0.8μm以下(≦0.8μm)、さらにより特に0.7μm以下(≦0.7μm)のd10を示し得る。d10は、0.2μm以上(≦0.2μm)、より特に0.3μm以上(≦0.3μm)であり得る。d10は、0.2μm~1.0μm、より特に0.2μm~0.8μm、さらにより特に0.3μm~0.8μmであり得る。
【0036】
粒子は、20.0μm以下、より特に15.0μm以下のd99を示し得る。d99は、5.0μm以上、より特に7.0μm以上であり得る。d99は、5.0μm~20.0μm、より特に7.0μm~20.0μm、さらにより特に7.0μm~15.0μmのd99であり得る。
【0037】
d10、d50、d90及びd99(μm)は、統計学で使用される通常の意味を有する。したがって、dn(n=10、50、90又は99)は、粒子のn%が前記径以下であるような粒径を表す。したがって、d50は中央値を表す。それらは、レーザー回折粒径分析器によって得られる(体積での)粒径分布から決定される。実施例で示される分布の測定条件が適用され得る。
【0038】
混合酸化物は、高い熱抵抗によっても特徴付けられる。コーティングは高温に耐える必要があるため、この抵抗は必要である。この観点において、排ガスが通常、リーンバーンエンジンに関するよりも有意に高い温度を示すように、ガソリンエンジンが主に化学量論的空気/燃料混合物によって作動されることを留意しなければならない。したがって、ガソリンエンジン用のフィルターが作動する温度は、従来のディーゼル微粒子フィルターに関するよりも高いことが知られている。1100℃で4時間の空気中での焼成(S1100℃/4h)後の混合酸化物の比表面積は、25~50m/g、より特に28~50m/g、さらにより特に30~50m/gである。この比表面は、25~40m/g又は25~35m/g又は30~35m/gであり得る。
【0039】
1000℃で4時間の空気中での焼成(S1000℃/4h)後の混合酸化物の比表面積は、50~70m/g、より特に55~70m/gである。
【0040】
「比表面積(BET)」という用語は、窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味すると理解される。比表面積は当業者に周知であり、Brunauer-Emmett-Teller法に従って測定される。この方法の理論は、最初に定期刊行の“The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)”に記載された。この理論に関するより詳細な情報は、“Powder surface area and porosity”、第2版、ISBN 978-94-015-7955-1の第4章に見られ得る。窒素吸着法は、規格ASTM D 3663-03(2008年再承認)に開示されている。
【0041】
本発明の混合酸化物は、0.50cm/g~0.90cm/g、より特に0.50cm/g~0.80cm/g、さらにより特に0.50cm/g~0.70cm/gの、300nm未満の直径を有する細孔に関する水銀ポロシメトリーによって決定された細孔体積によっても特徴付けられる。この細孔体積は、1100℃で4時間の空気中での焼成後、混合酸化物において決定されて、本出願において、PV0-300nmとして示される。
【0042】
混合酸化物は、1.40cm/g~3.00cm/g、より特に1.50cm/g~3.00cm/g、さらにより特に1.50cm/g~2.50cm/g又は1.50cm/g~2.20cm/gの全細孔体積によっても特徴付けられ得る。この全細孔体積は、少なくとも1.60cm/gであり得る。この全細孔体積は、1100℃で4時間の空気中での焼成後、混合酸化物において決定されて、本出願において、TPVとして示される。
【0043】
水銀ポロシメトリーは、多孔性触媒の分野で使用される標準技術であり、制御された圧力下での多孔性構造の細孔中への水銀の進歩的侵入からなる。多孔性は、当該分野において周知の技術によって水銀侵入によって測定される。多孔性は、Micromeritics V 9620 Automatic Mercury Porosimeterを使用して、構成者のガイドラインに従って決定され得る。ポロシメーターは、粉末硬度計を含む。この方法は、細孔径(V=f(d)、Vは細孔体積を意味し、dは細孔直径を意味する)の関数としての細孔体積の決定に基づく。このデータから、微分関数数dV/dlogDを与える曲線(C)を得ることが可能である。曲線(C)から、細孔体積PV0-300nm及び全細孔体積TPVが決定される。
【0044】
好ましくは、ASTM International試験方法D 4284-07で概説される手順に従う。追従された条件下で、試料サイズは約0.5グラムであり、水銀接触角は130°であり、水銀表面張力は485ダイン/cmである。
【0045】
混合酸化物が粉砕又はミル加工される場合、通常、その比表面積及びその全細孔体積が減少する傾向があることは示されなければならない。本発明の混合酸化物の興味深い点は、使用されるプロセスによって、ステップ(g1)における粒径の減少にもかかわらず、比表面積がそれほど減少せず、全細孔体積が高いままであることである。
【0046】
本発明の混合酸化物は、水中の粒子の分散体の低粘度によっても特徴付けられる。実際に、水中で43.0重量%の混合酸化物の粒子を含有し、且つ4.0±0.1のpHを示す分散体の粘度は、20.0cP以下(≦20.0cP)である。粘度は20℃±1℃で測定される。粘度は、5.0~10.0秒-1で適用される剪断速度に関して与えられる。pHは、酢酸によって調整され得る。粘度は、いずれかの種類のレオメーターによって、より特に、低粘度(<50cP)を示す懸濁液/分散体の粘度の測定に採用されるものによって決定され得る。レオメーターは、Brookfield DV2Tであり得る。
【0047】
より特に、分散体の粘度の測定のために、以下の方法を適用してよい。
(1)水中で混合酸化物の粒子を混合することによって、混合酸化物の均一な分散体を調製する。
(2)次いで、経時的にレオメーターを用いて粘度を記録する。粘度が安定した時に、粘度を測定する。
【0048】
ステップ(1)において、撹拌下、例えば約15~20分で混合酸化物の粉末を水に添加する。分散体のpHは、酢酸の添加によって目標pHまで調整されてよい。例えば蠕動ポンプを用いて酢酸を添加してもよい。目標pHに達するまで分散体のpHは制御される。より特に、実施例で用いられる条件が適用されてよい。
【0049】
本発明の混合酸化物の調製プロセス
本発明の混合酸化物は、以下のステップを含む次のプロセスによって調製され得る:
(a1)硫酸アニオン(SO 2-)、塩化ジルコニウム塩、セリウム塩、並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の少なくとも1つの塩(REの塩)を含む水溶液を水性塩基溶液と反応させ、沈殿物を形成する;
(b1)ステップ(a1)の終了時に得られる沈殿物を液体媒体から分離する;
(c1)ステップ(b1)の終了時に得られる沈殿物を、水性媒体中で、そして任意選択的に塩基性化合物と一緒にランタン塩の存在下で加熱する;
(d1)ステップ(c1)の終了時に得られる混合物に、任意選択的に塩基性化合物と一緒に、ランタンを任意選択的に添加し得る;
(e1)ステップ(d1)の終了時に得られる混合物に、有機テクスチャリング剤を添加する;
(f1)ステップ(e1)の終了時に得られる固体材料を液体媒体から分離し、空気中で焼成する;
(g1)ステップ(f1)の終了時に得られる固体材料をジェットミル加工し、本発明の混合酸化物を得る。
【0050】
このプロセスは、混合酸化物の元素の密接な混合に基づく。そのような理由で、本発明による混合酸化物において、酸化物は親密に混合される。これは、固体状態での酸化物の単純な機械的混合物から、本混合酸化物を識別する。
【0051】
ステップ(a1)において、硫酸アニオン(SO 2-)、塩化ジルコニウム塩、セリウム塩、並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の少なくとも1つの塩(REの塩)を含む水溶液(CZR溶液として示される)は、水性塩基溶液と反応し、沈殿物を形成する。セリウム塩は、硝酸セリウム又は塩化セリウム、さらにはこれらの塩の混合物であり得る。セリウム塩は、セリウム(III)塩及び任意選択的にセリウム(IV)塩から構成され得る。セリウム塩は、酸と塩基との中和反応から又は酸での、水酸化セリウムなどの、セリウム化合物の溶解から通常生じるイオン性化合物である。それらは、生成物が電気的に中性であるようにセリウムカチオン及びアニオンから構成される。
【0052】
REの塩は、例えば、硝酸プラセオジム及び硝酸ネオジム、塩化イットリウム(III)(YCl)、又は硝酸イットリウム(Y(NO)などの硝酸塩又は塩化物であってもよい。水溶液は、希土類塩の1種以上を含んでいてもよい。
【0053】
塩化ジルコニウム塩は、好ましくはZrOClである。
【0054】
CZR溶液は、ジルコニウム及びセリウムの元素1モルあたり、0.5~2.0モルの硫酸アニオン(SO 2-)を含有する。このモル比SO 2-/(Zr+Ce)は、好ましくは0.5~1.0の範囲、より特に0.5~0.8の範囲内である。硫酸アニオンは、硫酸の添加によって簡便に供給される。
【0055】
使用される水性塩基性溶液は、アルカリ金属又はアンモニアの水酸化物などの塩基性化合物を含み得る。この塩基性化合物は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくはアンモニア、又はこれらの混合物であってもよい。塩基性化合物は、NaOHであってもよい。塩基性化合物の量は、溶液のpH変化を測定することによって容易に決定され得る。通常、十分な量は、溶液のpHが7以上であるようなものであり、好ましい量は、pHが7.0~11.0であるようなものである。塩基性化合物の量は、通常、Zr、Ce、及びREに対してモル過剰の塩基性化合物が存在するような量である。
【0056】
ステップ(a1)の反応を行うために、試薬を導入するいずれの順番でも接触を実行することができる。しかしながら、CZR溶液を、水性塩基性溶液を含むタンクに導入することが好ましい。反応は不活性雰囲気下で、特に閉鎖反応器又は半閉鎖反応器のいずれかで行われ得る。接触は、通常は撹拌されているタンク反応器の中で行われる。
【0057】
ステップ(a1)は、5℃~50℃の温度で実行されてよい。
【0058】
ステップ(b1)において、ステップ(a1)の終了時に得られる沈殿物が液体媒体から分離され、空気中で焼成される。分離は、例えば、ヌッチェフィルターを用いて、遠心分離により、又はデカンテーションにより行うことができる。沈殿物は、任意選択的に水で洗浄されてもよい。洗浄によって、遊離イオンの量を、特に各イオンに対して500ppm以下、好ましくは300ppm以下の量まで減少させることが可能である。ppmは、各イオンの重量/酸化物として表される固体沈殿物の重量×100を表す。例えば、混合酸化物の調製のために使用される出発材料が、ZrOCl、HSO、CeCl、及び任意選択的にREの少なくとも1つの塩化物又は硝酸塩である場合、洗浄は、沈殿物中に残るSO 2-、Na及びClの量を、特に各イオンに対して500ppm以下、好ましくは300ppm以下の量まで減少させるために使用される。NO の量もこれらの値より低くなければならない。
【0059】
さらに、沈殿物は、特に40℃~80℃に含まれる温度で任意選択的に乾燥されてもよい。
【0060】
ステップ(c1)において、ステップ(b1)の終了時に得られる沈殿物を、水性媒体中で、そして任意選択的に塩基性化合物と一緒にランタン塩の存在下で加熱する。ランタン塩は、好ましくは、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は炭酸塩からなる群から選択される。La(NOは、使用され得るLaの都合のよい供給源である。この熱処理は、媒体を加熱し、通常60℃~200℃、より具体的には95℃~150℃に含まれる温度に維持することからなる。この処理の継続時間は1時間~4時間であってもよい。この処理は、不活性雰囲気下で実行されてよく、ステップ(a)のこの雰囲気に関する説明はここでも同様に適用される。同様に、処理は撹拌されている反応器の中で実行され得る。熱処理後、固体材料は水で洗浄されてもよい。洗浄は、固/液分離あり又はなしで様々な方法で行われ得る。そのため、これは、例えばフロンタル濾過、沈降、又は遠心分離により、固体粒子を液相から分離することによって行われ得る。得られた固体は、次いで、水相に再懸濁される。このプロセスは、タンジェンシャル濾過によっても行うことができる。この洗浄は、必要に応じて、例えば懸濁液の所定の導電率が得られるまで任意選択的に繰り返すことができ、導電率は、この懸濁液に存在する不純物の量を測定する。
【0061】
任意選択的なステップ(d1)において、特に液体又は固体形態のランタン塩が、ステップ(c1)の終了時に得られる混合物に添加され得る。ランタン塩が、(i)ステップ(c1)において、及び/又は(ii)ステップ(d1)において添加されることは留意されなければならない。ランタン塩がステップ(c1)及びステップ(d1)において添加される場合、ランタン塩の一部分はステップ(c1)で添加され、そしてその別の部分はステップ(d1)で添加される。
【0062】
ステップ(e1)において、ステップ(d1)の終了時に得られる混合物に、有機テクスチャリング剤(通常「テンプレート剤」という用語によって示される)を添加する。有機テクスチャリング剤は、混合酸化物の多孔質構造、特にはメソ多孔質構造を制御することができる界面活性剤などの有機化合物を指す。「メソ多孔質構造」という用語は、「メソ細孔」という用語により説明される、2~50nmに含まれる直径を有する細孔を含む無機構造を指す。有機テクスチャリング剤は、溶液又は懸濁液の形態で添加することができる。焼成ステップ(g1)後に得られる混合酸化物の重量に対する添加剤の重量パーセントとして表される有機テクスチャリング剤の量は、通常5~100%、より特に15~60%である。
【0063】
有機テクスチャリング剤は、好ましくは:アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びそれらの塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート型の界面活性剤からなる群の中で選択される。この添加剤に関して、出願国際公開第98/45212号パンフレットの教示が参照されてもよく、この公文書に記載されている界面活性剤が使用されてもよい。アニオン型の界面活性剤として、エトキシカルボキシレート、エトキシル化脂肪酸、サルコシネート、ホスフェートエステル、アルコールサルフェートなどのサルフェート、アルコールエーテルサルフェート及びサルフェート化アルカノールアミドエトキシレート、並びにスルホスクシネート、及びアルキルベンゼン又はアルキルナフタレンスルホネートなどのスルホネートが挙げられてよい。非イオン性界面活性剤として、アセチレン系界面活性剤、アルコールエトキシレート、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシル化アルカノールアミド、長鎖エトキシル化アミン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー、ソルビタン誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセリルエステル及びそれらのエトキシル化誘導体、アルキルアミン、アルキルイミダゾリン、エトキシル化オイル及びアルキルフェノールエトキシレートが挙げられてよい。銘柄Igepal(登録商標)、Dowanol(登録商標)、Rhodamox(登録商標)及びAlkamide(登録商標)の下で販売される製品が特に挙げられてよい。カルボン酸に関しては、特に、脂肪族モノカルボン酸又はジカルボン酸及び、これらの中でも、より特に飽和酸を使用することが可能である。脂肪酸、より特に飽和脂肪酸がまた使用されてもよい。したがって、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸が挙げられてよい。ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸が挙げられてよい。
【0064】
カルボン酸の塩、特にアンモニウム塩も使用されてよい。例として、より特にラウリン酸及びラウリン酸アンモニウムが挙げられてよい。
【0065】
最後に、カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレート型のものから選択される界面活性剤を使用することも可能である。「カルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート型の生成物」という表現は、鎖の末端に-CH-COOH基を含むエトキシル化又はプロポキシル化脂肪アルコールからなる生成物を意味することが意図される。
【0066】
これらの生成物は、式:
-O-(CR-CR-O)-CH-COOH
(式中、Rは、その長さが一般に最大でも22個の炭素原子、好ましくは少なくとも12個の炭素原子である飽和又は不飽和の炭素ベースの鎖を意味し;R、R、R及びRは、同一であってもよく、水素を表してもよく、或いはRは、アルキル基、例えば、CH基を表してもよく、R、R及びRは水素を表し;nは、最大でも50、より特には5~15であってもよいゼロではない整数であり、これらの値は含まれる)に相当し得る。界面活性剤は、Rが、それぞれ、飽和若しくは不飽和であってもよい上式の生成物の混合物、又は代わりに-CH-CH-O-基及び-C(CH)=CH-O-基の両方を含む生成物の混合物からなってもよいことが留意される。
【0067】
ステップ(f1)において、ステップ(e1)の終了時に得られる固体材料が液体媒体から分離され、空気中で焼成される。分離は、ステップ(b1)と同様に実行されてよい。固体材料は、任意選択的には、水溶液、好ましくは塩基性のpHを有する水、例えばアンモニア水溶液で洗浄されてもよい。さらに、沈殿物は、任意選択的に適切な程度まで乾燥されてもよい。焼成の温度は、500℃~1200℃、より特に800℃~900℃であり得る。温度の選択は、比表面積及びかさ密度の必要とされる値に応じて、必要に応じて実行され得る。焼成の継続時間は、温度に応じて適切に決定され得、好ましくは1~20時間であってもよい。例えば、空気中での焼成は、850℃で4時間実行されてもよい。
【0068】
ステップ(g1)において、ステップ(f1)の終了時に得られる固体材料をジェットミル加工し、本発明の混合酸化物を得る。以下、ジェットミル加工についてのより多くの詳細が与えられる。
【0069】
本発明は、前記混合酸化物として同組成物の混合酸化物をジェットミル加工することからなる、本明細書に開示される混合酸化物の調製プロセスにも関する。
【0070】
本発明に関連して、「ジェットミル加工」という用語は、固体材料の粒子が加速された気流に引き入れられて、ジェット気流中での粒子間衝突によって粉砕される操作を指す。粉砕は、本質的にジェット気流の粒子間衝突の結果である。使用される気体は、都合よく空気である。ジェットミルで得られる力は、粒径を変化させ、粒子の粒径分布を変更する。気体は、一般に、極めて高い速度で1つ以上の一連のノズルを通して加速される。
【0071】
使用されてよい特に都合のよい種類のジェットミルは、それが省エネ型であるため、流動層ジェットミルである。粉砕は、材料の流動層中で生じる。使用されてよい流動層ジェットミルの例は、米国特許第5,992,773号明細書に開示される。
【0072】
都合よく使用され得、且つ有効に使用されたジェットミルの一例は、Hosokawaによって販売される流動層空気式ジェットミル100AFGである(https://www.hosokawa-alpine.com/powder-particle-processing/machines/jet-mills/afg-fluidised-bed-opposed-jet-mill/、又はより詳細にはhttps://www.hosokawa-alpine.com/fileadmin/user_upload/content/Mechanische_Verfahrenstechnik/Applikationen/P/API-Inhaler/0007-EN-2013-04_-_Pharmaceutical_Technology_-_GMP.pdfを参照されたい:オンラインで入手可能なこの後者の文献において、以下が開示される:「操作の原理-AFGは2つの構成要素-分級機ヘッド及び粉砕チャンバーから構成され、集積化ノズルを有し、これらの数はミルサイズ次第である。ジェットに入る材料粒子は加速されて、エアジェットが交差する中心部で互いに衝突する。中心部での粒子間衝突によって、そしてエアジェットの端部の剪断フローのため、粉砕が生じる。その結果として、摩耗による汚染のリスクは実質的に存在しない。高性能のTurboplex分級機が、内部粉砕プロセスからセパレーターシステムまで最終製品を放出する。粉末度は、空気流速度、粉砕空気圧及び分級ホイール速度を調整することによって設定することができる」)。
【0073】
この機器は、製品の粉末度を変更するために様々な速度で運転可能な動的そらせ車空気分級機を一般に備えている。変動し得るこの機器のパラメーターは、以下のものである:ミル内部の圧力、ミル上の流体ノズルの数及び配置、並びに所望の径の粒子を除去するが、追加的なミル加工のために他の径の粒子をミル内に残す分級機の存在。本発明の混合酸化物の調製のために選択されたこの機器の使用条件は、実施例、及び以下の表に見られ得る:
【0074】
【表1】
【0075】
ノズルの使用を伴う、分級機周波数、供給圧力及び粉砕圧力の増加、並びに供給周波数の減少によって、本発明の混合酸化物の目標の粒径分布を得ることが可能となる。したがって、微粒子を選択するためには、分級機の周波数を増加させる。加えて、やや多くの材料を粉砕するように、粉砕チャンバー中への圧縮空気の速度を増加させるために、ノズルが取り付けられる。供給周波数及び供給圧力は、ミル加工チャンバー中の粒子の数に対する影響を有する。したがって、供給周波数の減少及び供給圧力の増加は、このチャンバー中での衝突の数に影響する。
【0076】
本発明は、上記に開示した方法によって得られる混合酸化物にも関する。
【0077】
本発明の混合酸化物の使用
本発明の混合酸化物は、排ガス処置の分野で使用されてもよい。本発明の混合酸化物は、車両の内部燃焼機関によって放出される排ガス中に存在する汚染物質の量を減少させるために使用されてもよい。
【0078】
混合酸化物は、車両の内部燃焼機関によって放出される排ガスを処理するために使用される触媒コンバーターの調製において使用されるてもよい。触媒コンバーターは、固体支持体上に触媒組成物を堆積させることによって調製される少なくとも1つの触媒活性層を含む。層の機能は、排ガスのいくつかの汚染物質を、環境に対してより有害ではない生成物へと化学的に変換することである。固体支持体は、セラミック、例えばコーディエライト、炭化ケイ素、チタン酸アルミナ若しくはムライト、又は金属、例えばFecralloyから製造されたモノリスであってもよい。支持体は、通常、大きな比表面積及び低い圧力損失を示すコーディエライト製である。モノリスは、しばしばハニカム型である。
【0079】
触媒組成物は、以下:
(i)アルミナ;
(ii)1つ以上の白金族金属;及び
(iii)少なくとも1つの本発明の混合酸化物
を含む。
【0080】
混合酸化物は、触媒ウォール-フローモノリスの調製のために使用され得る。触媒ウォール-フローモノリスは、多孔性の支持体と、支持体の表面上の触媒組成物とを含む。ウォール-フローモノリスは、粒子フィルターとして周知の技術である。それらは、多孔性支持体から形成される壁を(粒子状物質を含む)排ガスの流れが強制的に通過するように作用する。多孔性が、粒子状物質の保有を補助する。モノリスは、好ましくは、その間で縦方向を画定する第1の表面及び第2の表面を有する。使用時に、第1の表面及び第2の表面の一方は排ガスの入口表面であり、そして他方は処理された排ガスの出口表面である。ウォール-フローモノリスに関しての慣例通りに、それは縦方向に延在する第1及び第2の複数のチャネルを有する。第1の複数のチャネルは、第1の表面において開放し、第2の表面において閉鎖している。第2の複数のチャネルは、第2の表面において開放し、第1の表面において閉鎖している。チャネルは、好ましくは、チャネル間で一定の壁厚を提供するために、互いに平行である。その結果として、複数のチャネルの1つに入る気体は、チャネルの壁を通して他の複数のチャネル中に拡散することなく、モノリスを出ることができない。チャネルは、チャネルの開放端部中へのシーラント材料の導入によって閉鎖される。
【0081】
好ましくは、第1の複数のチャネルの数は第2の複数のチャネルの数に等しく、そしてそれぞれの複数がモノリスを通して均一に分布される。好ましくは、縦方向に対して直角の平面内で、ウォール-フローモノリスは、1平方インチあたり100~500(cpsi)、好ましくは200~400cpsiのチャネルを有する。例えば、第1の表面において、開放した第1のチャネル及び閉鎖した第2のチャネルの密度は、1平方インチあたり200~400のチャネルである。チャネルは、長方形、正方形、円形、卵形、三角形、六角形又は他の多角形の形状である断面を有することができる。
【0082】
チャネルウォールを通しての処理される排ガスの通過を容易にするために、モノリスは多孔性基材から形成される。基材は、触媒組成物を保持するための支持体としても作用する。多孔性基材を形成するために適切な材料としては、セラミック様材料、例えば、菫青石、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、ムライト、黝輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア又はケイ酸ジルコニウム、又は多孔性、耐火性金属が挙げられる。ウォール-フロー基材は、セラミック繊維複合材料からも形成され得る。好ましいウォール-フロー基材は、菫青石及び炭化ケイ素から形成される。そのような材料は、排ガス流を処理する際に発生する環境、特に高温に耐えることができ、そして十分多孔性に製造されることができる。そのような材料及び多孔性モノリス基材の製造におけるそれらの使用は、周知の技術である。
【0083】
触媒組成物は層の形態で多孔性基材上に適用される。因習的に、層の装填は、背圧を避けるために高すぎてはならない。装填は、1.0g/インチ~0.1g/インチ、好ましくは0.7g/インチ~0.25g/インチ、最も好ましくは0.6g/インチ~0.5g/インチであり得る。
【0084】
触媒組成物は、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む。アルミナは、ランタン、プラセオジミウム又は2つの組み合わせも含み得る。アルミナは、好ましくはランタン安定化アルミナである。アルミナは、高い表面積を示し、耐火性金属酸化物であるため、有利なキャリア材料である。これによって、発生する高温条件に関して必要とされる良好な熱性能が導かれる。触媒組成物は、1つ以上の白金族金属(PGM)も含む。PGMは、Pt、Pd、Rh、Re、Irからなる群から選択される。PGMは、排ガスを処理するために必要とされる反応及び煤粒子の燃焼に触媒作用を及ぼすように機能する。好ましくは、PGMはPt、Pd及びRh;Pd及びRh;又はPdのみ;又はRhのみである。
【0085】
触媒ウォール-フローモノリスの調製のために使用され得る方法は、参照によって全内容が組み込まれる、国際公開第2017/109514号パンフレットに開示されている。特に、国際公開第2017/109514号パンフレットの実施例3に開示される方法が使用され得る。
【0086】
本発明の混合酸化物は、排ガス処置システムで使用するための触媒モノリスの調製のために使用されてもよい。モノリスは、通常、ハニカムモノリスの形態である。
【実施例
【0087】
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられる。混合酸化物の割合の元素は、酸化物の重量によって与えられる。
【0088】
粒径分布
粒径分布は、レーザー粒径分析器(Beckman-CoulterのModel LS13320)によって決定された。構成装置のガイドラインに従って、フラウンホーファー(Fraunhofer)モードが使用された。(体積での)径分布は、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)の存在下、水中での粒子の分散から得られた。1.6の相対屈折率が使用された。体積での分布から、d10、d50、d90及びd99の値が得られた。以下の表中、それらはμmで示される。
【0089】
比表面積(BET)
比表面積は、QuantachromeのNOVA 4000eにおいてN吸着によって自動的に決定した。いずれの測定の前にも、試料を脱気して、揮発性の種を脱着させ、表面をクリーニングする。
【0090】
多孔度
多孔度は、構成装置のガイドラインに従って、autopore V 9620 Automatic Mercury Porosimeterによって得られる。TPV及びPV0-300nmは、1100℃において4時間、空気中で混合酸化物を焼成した後に得られる。続いてASTM International 試験方法D 4284-07で概説される手順が行われた;試料サイズは約0.5グラムであり、水銀接触角は130°であり、水銀表面張力は485ダイン/cmであった。
【0091】
粘度:水中の本発明の混合酸化物の分散体の粘度Vの測定
(1)360rpmで回転し、ビーカーの底から2cm上に配置されたアンカー(直径8.7cm)を用いて、1Lのビーカー中の水中の混合酸化物の粒子を混合することによって、本発明の混合酸化物の均一分散体を調製する:
(1a)500mLの水をビーカーに添加する;
(1b)次いで、約15分で粉末の形態の混合酸化物(377.2g)を添加する;
(1c)酢酸によってpHを4.0±0.1まで調整する;
(2)次いで、経時的にレオメーターを用いて粘度を記録する。粘度が一定になったら、粘度を測定する。
【0092】
ステップ(1b)は、振動フィーダーによって混合酸化物を添加することによって実行されてもよい。蠕動ポンプを用いて酢酸を添加することによって、そして分散体のpHを制御することによって、目標のpHに達するまでステップ(1c)は実行されてよい。
【0093】
使用されたレオメーターは、Brookfield DV2Tであった。
【0094】
実施例1:混合酸化物Zr-Ce-La 60%-35%-5%の調製
共塩化物(cochloride)溶液(CZR溶液)を、最初に47LのHO及び16LのCeClの水溶液(1.53モル/L及び密度1.33)を用いて調製し、それにZrOClの水溶液20.2kgを添加した(36.2重量%のZrO;点火損失LOI 63.6%)。次いで、HSO(8.77重量%及び密度1.05)の水溶液を添加した。
【0095】
NaOHの水溶液110L(10.8重量%及び密度1.099)があらかじめ装填された沈殿タンクに、50分かけてCZR溶液を移した。沈殿間の振動速度を220rpmに固定した。全てのSO 2-、Na及びClイオン(各イオンに関して200ppm以下)を除去するために、濾過/リパルプによってスラリーを洗浄した。80g/Lの水中でのリパルプ後、スラリーを1時間125℃で老化させた。老化後、所望の量の酸化ランタン(5重量%のLa)を得るためにLa(NOを導入した。次いで、1時間、撹拌下で4kgのラウリン酸を分散体に添加した。次いで、懸濁液を濾過し、固体を3時間、850℃で焼成した。得られた酸化物材料を、以下に記載の条件下でジェットミル加工した。
【0096】
ミル加工後の混合酸化物の特性:1.9μmのd50及び6.0μmのd90。1100℃において空気中4時間の焼成後の生成物の比表面積は、以下の通りである:S1100℃/4h=28m/g。粘度は20.0cPにおいて測定された。
【0097】
【表2】
【0098】
実施例2~6:他の組成物の混合酸化物の調製
実施例1に記載されたプロセスと同一のプロセスを使用して、種々の他の組成物の混合酸化物を調製した:
・実施例2:Zr-Ce-La-Y 50%-40%-5%-5%
・実施例3:Zr-Ce-La-Y 55%-35%-7.5%-2.5%
・実施例4:Zr-Ce-La-Y 60%-24%-3.5%-12.5%
・実施例5:Zr-Ce-La-Y 60%-30%-5%-5%
・実施例6:Zr-Ce-La 75%-20%-5%
【0099】
Yを含有する混合酸化物に関して、CZR溶液は、必要量のCeCl、ZrOCl及びY(NOを含有した。モル比SO 2-/(Zr+Ce)が0.5~0.8であるように、HSOも添加された。
【0100】
850℃で焼成後に得られた混合酸化物を、実施例1と同一の条件下でジェットミル加工した。得られた粒径の特徴は以下の通りである:1.0μm~2.5μmのd50及び2.0μm~9.0μmのd90(表Iを参照されたい)。
【0101】
【表3】
【0102】
比較例1:「ソフトな」ジェットミル加工による混合酸化物Zr-Ce-La 60%-35%-5%の調製
本比較例は、実施例1の混合酸化物と同一組成の混合酸化物の調製に関する。混合酸化物の調製条件は、ミル加工の条件を除き、実施例1の条件と同一である。以下の表に記載の通り、よりソフトな、より通常の条件下でのジェットミル加工プロセスによってミル加工を実行した:
【0103】
【表4】
【0104】
ミル加工後、混合酸化物は、3.5~4.5μmのd50及び15μm未満のd90を示す。1100℃において空気中4時間の焼成後の生成物の比表面積は、以下の通りである:S1100℃/4h=29m/g。粘度は1000cP以上で測定され、したがって、実施例1の生成物の粘度よりも非常に高かった。
【0105】
比較例2:硝酸塩を伴い、ハンマーミルによってミル加工される、国際公開第2012/072439号パンフレットのプロセスによって調製される混合酸化物Zr-Ce-La 60%-35%-5%の調製
本比較例は、実施例1の混合酸化物と同一組成の混合酸化物の調製に関する。混合酸化物は、硝酸塩を伴う、国際公開第2012/072439号パンフレットに開示されているプロセスに従って調製された。硝酸塩の2つの溶液、硝酸セリウム及び硝酸ジリコニルからなる1つと、硝酸ランタンからなる他のものとをあらかじめ調製した。硝酸ジルコニウムZrO(NOの水溶液([ZrO]=265g/L及びd=1.408)102mL、並びに硝酸セリウムCeIVの水溶液68mL([CeO]=270g/L及びd=1.43)と一緒に、324mLの水を第1のビーカーに導入した。硝酸ランタンの水溶液([La]=454 g/L及びd=1.687)5.5mLを第2のビーカーに導入した。
【0106】
傾斜ブレード撹拌ローターを備えた反応器中に、撹拌しながら、アンモニア水(12モル/L)の溶液と、その後、蒸留水を導入し、0.5リットルの全体積が得られ、これは沈澱させるカチオンに対して40%のアンモニア水の化学量論的過剰であった。
【0107】
500rpmの速度で撹拌させた反応器中に、45分間かけて、硝酸塩の第1の溶液を導入し、硝酸塩の第2の溶液を15分間かけて導入し、そして撹拌を250rpmで固定する。得られた沈澱物の懸濁液を、攪拌ローターを備えたステンレス鋼オートクレーブに入れる。媒体の温度を、攪拌しながら2時間150℃にする。得られた懸濁液に33グラムのラウリン酸を添加した。懸濁液を1時間攪拌し続ける。
【0108】
ブフナー漏斗を通して懸濁液を濾過し、次いでアンモニア水溶液で洗浄した。次いで、得られた生成物を850℃で4時間空気中で焼成する。得られる生成物をハンマーミルで粉砕した。ミル加工後の混合酸化物の特性:d50=2.0μm及びd90=6.0μm。ミル加工後の生成物の比表面積は、S1100℃/4h=22m/gであり、実施例1の生成物より低い(28m/g)。
【0109】
比較例3:「ソフトな」ジェットミル+湿潤ミルによる混合酸化物Zr-Ce-La 60%-35%-5%の調製
本実施例は、実施例1と同一組成、すなわち、それぞれ、35%、60%、5%の酸化物の重量による割合でセリウム、ジルコニウム、ランタンに基づく混合酸化物の調製に関する。最初に、脱イオン水(47L)、塩化セリウムCeClの水溶液(16L、[C]=1.53モル/l及び密度1.33)、5重量%のLaを得るために適切な塩化ランタンLaClの水溶液、及びZrOClの水溶液(20.2kg、36.2重量%のZrO LOI 63.6%)を用いて、共塩化物(cochloride)溶液を調製した。次いで、HSOの水溶液を導入した(65L、8.77重量%及び密度1.05)。NaOHの水溶液110L(10.8重量%及び密度1.099)があらかじめ装填された沈殿タンクに、50分かけて溶液を移した。沈殿間の振動速度を220rpmに固定した。全てのSO 2-、Na及びClイオン(各イオンに関して200ppm未満)を除去するために、濾過/リパルプによってスラリーを洗浄した。80g/Lの水中でのリパルプ後、スラリーを1時間97℃で老化させた。
【0110】
次いで、1時間、撹拌下で4kgのラウリン酸を分散体に添加した。次いで、懸濁液を濾過し、固体を3時間、850℃で焼成した。比較例1のようなソフトな通常の条件で材料をミル加工した。次いで、400gの得られた粉末を1Lの蒸留水中に分散し、そして酢酸によってpHを4まで調整する。0.8~1.0μmのd50及び5μm未満のd90を得るために、湿潤ミル加工装置によって、得られた懸濁液においてさらなるミル加工を実行する。固体をさらに分離し、特徴決定のためにさらに焼成する。1100℃において4時間の焼成後の得られた材料の比表面積は、以下の通りである:S1100℃/4h=18m2/g。
【0111】
【表5】
【0112】
これらの比較例は、本発明の混合酸化物が、S1100℃/4h、TPV、PV0-300nm及び低い粘度Vの間の妥協を示すことを示す。
【0113】
比較例4:「ソフトな」ミル加工による混合酸化物Zr-Ce-La-Y 55%-35%-7.5%-2.5%の調製
実施例3と同一組成の混合酸化物(Zr-Ce-La-Y 55%-35%-7.5%-2.5%)を、ミル加工の条件以外は同一条件で調製した。比較例1の通りの、よりソフトな、より通常の条件下でのジェットミル加工プロセスによってミル加工を実行した。
【0114】
観察される通り、一方では、粒径は、より強い条件のミル加工のため、実施例3において比較例4よりも低いが、他方、TPVはより大きい。300nm未満の細孔(PV0-300nm)で、細孔体積に関して同一の傾向が観察される。
【0115】
比較例5及び6:硝酸塩を伴う、国際公開第2012/072439号パンフレットのプロセスによって調製される混合酸化物Zr-Ce-La-Y 55%-35%-7.5%-2.5%の調製-ミル加工条件の影響
ミル加工の条件を除き、比較例2に記載の通り、硝酸塩を伴う、国際公開第2012/072439号パンフレットのプロセスによって、実施例3と同一の組成(Zr-Ce-La-Y 55%-35%-7.5%-2.5%)の、2つの混合酸化物を調製した。ミル加工は、ジェットミル加工プロセスによって実行された:
- 比較例5:実施例1と同様のより強い条件;
- 比較例6:比較例1と同様のソフトで通常の条件。
【0116】
観察される通り、国際公開第2012/072439号パンフレットのプロセスに基づく混合酸化物の場合、粒径がより強い条件でのミル加工のために、より低い場合、TPVもより低い。300nm未満の細孔(PV0-300nm)で、細孔体積に関して同一の傾向が観察される。
【0117】
【表6】
【0118】
混合酸化物の調製プロセスも影響を有する。実施例3の混合酸化物は、共塩化物溶液(cochloride)によって調製されたが、比較例5の混合酸化物は、共硝酸塩(conitrate)溶液によって調製された。ミル加工が同一であるとしても、比較例5に関して、比表面積、TPV及びPV0-300nmはより低い。