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特許7548995複合材料薄膜、その調製方法及び表示パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】複合材料薄膜、その調製方法及び表示パネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240903BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20240903BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20240903BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20240903BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20240903BHJP
   C09K 11/54 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/88 ZNM
C09K11/70
C09K11/56
C09K11/74
C09K11/54
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022505370
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2022072794
(87)【国際公開番号】W WO2023133910
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】202210037320.9
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519182202
【氏名又は名称】深▲セン▼市▲華▼星光▲電▼半▲導▼体▲顕▼示技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】趙 金陽
(72)【発明者】
【氏名】陳 黎暄
(72)【発明者】
【氏名】石 志清
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142486(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112635642(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108415193(CN,A)
【文献】特表2020-522749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20 - 5/28
C09K 11/88
C09K 11/70
C09K 11/56
C09K 11/74
C09K 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子溶液を調製することと、
多孔質材料ユニット溶液を調製することと、
前記多孔質材料ユニット溶液における多孔質材料ユニットの表面が帯電するように前記多孔質材料ユニット溶液に帯電リガンドを添加することと、
前記ナノ粒子溶液におけるナノ粒子が前記多孔質材料ユニットの細孔に入り込んで複合材料溶液を形成するように前記多孔質材料ユニット溶液と前記ナノ粒子溶液とを混合することと、
電極を前記複合材料溶液に入れることと、
前記ナノ粒子を担持する前記多孔質材料ユニットが前記電極に堆積するように前記電極に通電することと、を含
前記帯電リガンドは、化学結合を介して前記多孔質材料ユニットの表面に接続され、イオン性界面活性剤から選択され、
前記多孔質材料ユニット溶液は、非極性溶媒によって調製され、前記界面活性剤の濃度は臨界濃度よりも大きい、
複合材料薄膜の調製方法。
【請求項2】
前記多孔質材料ユニットは、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ及びメソポーラス金属酸化物の少なくとも一つから選択される、
請求項に記載の複合材料薄膜の調製方法。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料薄膜の調製方法によって製造される複合材料薄膜であって、
ナノ粒子又は有機小分子を担持する細孔を表面に有する多孔質材料ユニットを含む少なくとも一つの膜層を含み、
前記細孔の孔径寸法は、前記ナノ粒子又は前記有機小分子の寸法と対応する、
複合材料薄膜。
【請求項4】
前記多孔質材料ユニットの表面にリガンドがグラフトされる、
請求項3に記載の複合材料薄膜。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、ZnCdSe 、InP、Cd Se、CdSe、Cd SeTe及びInAsの少なくとも一つ並びにCdS、ZnSe、ZnCdSe 、ZnS及びZnOの少なくとも一つを含む量子ドットナノ粒子を含む、
請求項3に記載の複合材料薄膜。
【請求項6】
前記リガンドは、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド及びリンリガンドの少なくとも一つを含む、
請求項4に記載の複合材料薄膜。
【請求項7】
前記界面活性剤は、有機硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、金属石鹸、有機アミン、有機リン酸塩、リン酸エステルの少なくとも一つを含む、
請求項3に記載の複合材料薄膜。
【請求項8】
前記有機硫酸塩は、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジノニルナフタレンスルホン酸バリウムの少なくとも一つを含む、
請求項7に記載の複合材料薄膜。
【請求項9】
前記金属石鹸は、ナフトエ酸金属塩及びステアリン酸塩の少なくとも一つを含む、
請求項7に記載の複合材料薄膜。
【請求項10】
前記イオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル系界面活性剤及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドの少なくとも一つを含む、
請求項3に記載の複合材料薄膜。
【請求項11】
前記多孔質材料ユニットの寸法は、50~1000nmであり、前記孔径寸法は、2~50nmであり、前記ナノ粒子又は前記有機小分子の寸法は、2~50nmである、
請求項3に記載の複合材料薄膜。
【請求項12】
前記ナノ粒子又は前記有機小分子と前記多孔質材料ユニットとの質量比は、10:1~1:100である、
請求項11に記載の複合材料薄膜。
【請求項13】
基板と、
前記基板に設けられる薄膜トランジスタ素子層と、
前記薄膜トランジスタ素子層に設けられる陽極層と、
前記陽極層に設けられる発光機能層と、
前記発光機能層に設けられる陰極層と、
前記陰極層に設けられる封止層と、を含み、
前記発光機能層は、請求項3~12のいずれか一項に記載の複合材料薄膜を含む、
示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示技術分野に関し、特に複合材料薄膜、その調製方法及び表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ寸法材料とは、構造ユニットの寸法が1ナノメートルから100ナノメートルの範囲の材料を指す。ナノ寸法材料の寸法は、電子のコヒーレンス長(coherence length)に近いため、その性質は、強いコヒーレンスによってもたらされる自己組織化によって大きく変化する。また、そのスケールは、光の波長に近いため、体積効果、表面効果、量子寸法効果及びマクロ量子トンネル効果などを有し、融点、磁気、光学、熱伝導、導電特性などの面で独自の特性を有するため、多くの分野で非常に重要な適用価値を有する。
【0003】
量子ドット(quantum dot,QD)材料は、高いエネルギー変換効率特性を具備する典型的なナノ寸法材料である。特に照明、表示技術、太陽電池、センサー及び検出などの技術分野において、量子ドット材料は、非常に重要な適用の見通しを有する。このほか、量子ドット材料は、高輝度、発光スペクトル範囲が狭く、発光色が調整可能であり、安定性が良好であるなどの特性をさらに有し、表示技術分野の超薄型、高輝度、高色域、高彩度のニーズに合致するため、近年、大きな可能性を秘めた表示技術の新素材となっている。
【発明の概要】
【0004】
今日の複合材料薄膜のパターニング技術は、主にフォトリソグラフィプログラム及びインクジェット印刷技術を利用する。フォトリソグラフィプログラムにおける紫外光硬化などの加熱プログラム及び現像プログラムは、いずれも量子ドットの安定性に影響を与えることになる。インクジェット印刷技術は、現在、成熟し安定した量産材料システムを有しておらず、再現性が悪く、かつ、調製時間が長すぎる。これらの問題は、複合材料薄膜のパターニング技術の発展と適用を大幅に制限することになる。量子ドットが有する自己吸収効果により、個々の量子ドット材料薄膜のフォトルミネッセンス効率が低下するため、複合材料薄膜のさらなる適用が制限される。このほか、量子ドット自体の帯電量が低いことも、電着技術により複合材料薄膜を調製することを制限することになる。
【0005】
したがって、複合材料薄膜を調製する従来の技術的問題は、さらに解決する必要がある。
【0006】
上記問題を解決するために、本発明では、複合材料薄膜、その調製方法及び表示パネルが提案される。本発明では、多孔質材料ユニットを担体とし、前記多孔質材料ユニットの細孔にナノ粒子又は有機小分子を担持させ、電極板に電着が行われるようにリガンドにより前記多孔質材料ユニットの表面を化学修飾することでその表面を帯電させることにより、前記複合材料薄膜が調製される。この方法により、例えば、量子ドットナノ粒子などの非帯電ナノ粒子を電着することができるだけではなく、電着に必要な電圧を低下させることができる。また、複合材料薄膜が形成されるように量子ドットナノ粒子を多孔質材料ユニットで担持する場合、多孔質材料ユニットの間隔作用や散乱効果により、量子ドットの自己吸収効果が効果的に低減されるため、調製された複合材料薄膜の発光効率は、量子ドットのみからなる量子ドット薄膜よりも高くなる。このほか、帯電量を向上させるために量子ドットナノ粒子などのナノ材料に特別な修飾を行う必要がないため、量子ドットナノ粒子の良好な光電特性を維持することができる。
【0007】
本発明では、ナノ粒子又は有機小分子を担持する細孔を表面に有する多孔質材料ユニットを含む少なくとも一つの膜層を含み、
前記細孔の孔径寸法は、前記ナノ粒子又は前記有機小分子の寸法と対応する複合材料薄膜が提案される。
【0008】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記多孔質材料ユニットの表面にリガンドがグラフトされる。
【0009】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記多孔質材料ユニットは、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ及びメソポーラス金属酸化物の少なくとも一つを含む。
【0010】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記ナノ粒子は、ZnCdSe、InP、CdSe、CdSe、CdSeTe及びInAsの少なくとも一つ並びにCdS、ZnSe、ZnCdSe、ZnS及びZnOの少なくとも一つを含む量子ドットナノ粒子を含む。
【0011】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記リガンドは、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド及びリンリガンドの少なくとも一つを含む。
【0012】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記リガンドは、界面活性剤を含む。
【0013】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記界面活性剤は、有機硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、金属石鹸、有機アミン、有機リン酸塩、リン酸エステルの少なくとも一つを含む。
【0014】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記有機硫酸塩は、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジノニルナフタレンスルホン酸バリウムの少なくとも一つを含む。
【0015】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記金属石鹸は、ナフトエ酸金属塩及びステアリン酸塩の少なくとも一つを含む。
【0016】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤を含む。
【0017】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記イオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル系界面活性剤及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドの少なくとも一つを含む。
【0018】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記多孔質材料ユニットの寸法は、50~1000nmであり、前記孔径の寸法は、2~50nmであり、前記ナノ粒子又は前記有機小分子の寸法は、2~50nmである。
【0019】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜において、前記ナノ粒子又は前記有機小分子と前記多孔質材料ユニットとの質量比は、10:1~1:100である。
【0020】
本発明では、ナノ粒子溶液を調製することと、
多孔質材料ユニット溶液を調製することと、
前記多孔質材料ユニット溶液における多孔質材料ユニットの表面が帯電するように前記多孔質材料ユニット溶液に帯電リガンドを添加することと、
前記ナノ粒子溶液におけるナノ粒子が前記多孔質材料ユニットの細孔に入り込んで複合材料溶液を形成するように前記多孔質材料ユニット溶液と前記ナノ粒子溶液とを混合することと、
電極を前記複合材料溶液に入れることと、
前記ナノ粒子を担持する前記多孔質材料ユニットが前記電極に堆積するように前記電極に通電することと、を含む複合材料薄膜の調製方法がさらに提案される。
【0021】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜の調製方法において、前記多孔質材料ユニットは、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ及びメソポーラス金属酸化物の少なくとも一つから選択される。
【0022】
本発明の一実施例に記載の複合材料薄膜の調製方法において、前記多孔質材料ユニット溶液は、非極性溶媒によって調製され、前記帯電リガンドは、イオン性界面活性剤から選択される。
【0023】
本発明では、基板と、
前記基板に設けられる薄膜トランジスタ素子層と、
前記薄膜トランジスタ素子層に設けられる陽極層と、
前記陽極層に設けられる発光機能層と、
前記発光機能層に設けられる陰極層と、
前記陰極層に設けられる封止層と、を含み、
前記発光機能層は、複合材料薄膜を含み、
前記複合材料薄膜は、量子ドットナノ粒子を担持する細孔を表面に有する多孔質材料ユニットを含む少なくとも一つの膜層を含み、
前記細孔の孔径寸法は、前記量子ドットナノ粒子の寸法と対応する表示パネルがさらに提案される。
【0024】
本発明の一実施例に記載の表示パネルにおいて、前記多孔質材料ユニットの表面にリガンドがグラフトされる。
【0025】
本発明の一実施例に記載の表示パネルにおいて、前記多孔質材料ユニットは、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ及びメソポーラス金属酸化物の少なくとも一つを含む。
【0026】
本発明の一実施例に記載の表示パネルにおいて、前記リガンドは、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド及びリンリガンドの少なくとも一つを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、多孔質材料を担体として用い、リガンドにより前記多孔質材料ユニットの表面を化学修飾することでその表面を帯電させ、電極板に共通の電着が行われるように前記多孔質材料の細孔により量子ドット又はその他のナノ材料を担持することにより、複合材料薄膜が調製される。この方法により、例えば、量子ドットナノ粒子などの非帯電ナノ粒子を電着することができるだけではなく、電着に必要な電圧を低下させることができる。特に、複合材料薄膜が形成されるように量子ドットナノ粒子を多孔質材料ユニットで担持する場合、多孔質材料ユニットの間隔作用や散乱効果により、量子ドットの自己吸収効果が効果的に低減されるため、調製された複合材料薄膜の発光効率は、量子ドットのみからなる薄膜よりも高くなる。このほか、帯電量を向上させるために量子ドットナノ粒子などのナノ材料に特別な修飾を行う必要がないため、量子ドットナノ粒子の良好な光電特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例に係る複合材料薄膜の構造を示す概略図である。
図2】本発明の実施例に係る多孔質材料ユニット表面にリガンドがグラフトされることを示す概略図である。
図3】本発明の実施例に係る複合材料薄膜の調製方法のフローチャートである。
図4】本発明の第1実施例に係る複合材料薄膜の調製方法を示す概略図である。
図5】本発明の第2実施例に係る複合材料薄膜の調製方法を示す概略図である。
図6】本発明の実施例に係る表示パネルの断面構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例に係る複合材料薄膜、その調製方法及び表示パネルについて詳細に説明する。明らかに、説明する実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者は、創造的な労力を行わなかったことを前提に得られたその他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0030】
以下の各実施例の説明は、図面を参照するものであり、本願を実施するために用いられる特定の実施例を例示するためのものである。例えば、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」、「側面」などの本願に言及される方向用語は、図面の方向のみを参照する。したがって、使用される方向用語は、本願を説明及び理解するためのものであり、本願を制限するためのものではない。図面では、明確な理解及び説明の便宜のために、いくつかの層の厚さ及びいくつかの構成要素の寸法が誇張されている。すなわち、図面に示す各構成要素の寸法及び厚さは、任意に示されるものであるが、本願は、これに限定されるものではない。
【0031】
図1を参照して、図1は、本発明の実施例に係る複合材料薄膜の構造を示す概略図である。図1に示すように、複合材料薄膜205は、電極100に電着される。前記複合材料薄膜205は、第1膜層2051及び第2膜層2052を含み、前記第1膜層2051及び第2膜層2052は、積み重ねられる多孔質材料ユニット10を含む。ここで、前記多孔質材料ユニット10は、表面にナノ粒子102(又は有機小分子)を担持する細孔101を有し、前記細孔101の孔径は、前記ナノ粒子102(又は前記有機小分子)の寸法と対応する。具体的には、前記多孔質材料ユニット10の表面にリガンドがグラフトされる。
【0032】
前記細孔101の孔径が前記ナノ粒子102の寸法と対応するということは、前記細孔101の孔径が前記ナノ粒子102の粒径寸法に近いが前記ナノ粒子102の粒径寸法よりも小さくならないことを意味する。すなわち、前記細孔101の孔径寸法は、前記ナノ粒子102の粒径寸法よりも僅かに大きい。前記細孔101の孔径寸法は、前記ナノ粒子102の粒径寸法の1.01~1.25倍であることが好ましい。
【0033】
前記多孔質材料ユニット10の表面にリガンドがグラフトされるということは、前記リガンドが化学結合を介して前記多孔質材料ユニット10の表面に接続されることを意味する。
【0034】
具体的には、一実施例において、前記多孔質材料ユニット10は、メソポーラスシリカ(SBA-15型)多孔質材料ユニットであり、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ又はメソポーラス金属酸化物であってもよい。具体的には、前記多孔質材料ユニットは、Mobil composition of matter(MCM)シリーズ、Santa Barbara amorphous(SBA)シリーズ、Folded sheets mesoporous(FSM)シリーズ、六方メソポーラスシリカ(HMS)シリーズ及びMichigan state university(MSU)シリーズモレキュラーシーブであってもよい。前記多孔質材料ユニットは、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ又はメソポーラス金属酸化物であってもよい。前記メソポーラス金属酸化物は、例えば、酸化チタンメソポーラス、ジルコニアメソポーラス、酸化タングステンメソポーラス又はチタン酸バリウムメソポーラスである。ここでは、多孔質材料ユニット10がメソポーラスシリカ(SBA-15型)である例のみについて説明する。
【0035】
具体的には、前記細孔101に担持されるナノ粒子102は、CdSe/ZnS量子ドットナノ粒子である。前述のように、前記細孔101には、その他のナノ粒子又は有機小分子が担持されてもよい。ここでは、前記細孔101にCdSe/ZnS量子ドットナノ粒子が担持される例のみについて説明する。
【0036】
図2を参照して、図2は、本発明の実施例に係る多孔質材料ユニットの表面にリガンドがグラフトされることを示す概略図である。図2に示すように、前記多孔質材料ユニット10の表面にリガンド103がグラフトされる。すなわち、前記リガンド103は、化学結合を介して前記多孔質材料ユニット10の表面に接続される。具体的には、前記リガンド103は、界面活性剤であってもよい。前記界面活性剤は、有機硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、金属石鹸、有機アミン、有機リン酸塩又はリン酸エステルであってもよい。前記有機硫酸塩は、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はジベンジルナフタレンスルホン酸バリウムであってもよく、前記金属石鹸は、ナフタレン酸金属塩又はステアリン酸塩であってもよく、前記有機アミンは、N-ビニルピロリドンポリマーであってもよい。
【0037】
別の具体的な実施例において、前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤である。前記イオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル系界面活性剤又はヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(hexadecyl trimethyl ammonium bromide,cetyltrimethylammonium bromide,CTAB)であってもよい。
【0038】
具体的には、本実施例において、前記メソポーラスシリカの寸法は、50~1000nmであり、前記メソポーラスシリカの細孔101の孔径寸法は、2~50nmであり、前記CdSe/ZnS量子ドットナノ粒子の粒径寸法は、2~50nmである。
【0039】
具体的には、本実施例において、前記量子ドットナノ粒子と前記メソポーラスシリカとの質量比は、10:1~1:100である。例えば、前記量子ドットナノ粒子と前記メソポーラスシリカとの質量比は、9:1、6:1、1:1、1:10又は1:99であってもよい。
【0040】
図3を参照して、図3は、本発明の実施例に係る複合材料薄膜の調製方法のフローチャートである。図3に示すように、前記複合材料薄膜の調製方法のフローは、
ナノ粒子溶液を調製するステップS1と、
多孔質材料ユニット溶液を調製するステップS2と、
前記多孔質材料ユニット溶液における多孔質材料ユニットの表面が帯電するように前記多孔質材料ユニット溶液に帯電リガンドを添加するステップS3と、
前記ナノ粒子溶液におけるナノ粒子が前記多孔質材料ユニットの細孔に入り込んで複合材料溶液を形成するように前記多孔質材料ユニット溶液と前記ナノ粒子溶液とを混合するステップS4と、
電極を前記複合材料溶液に入れるステップS5と、
前記ナノ粒子を担持する前記多孔質材料ユニットが前記電極に堆積するように前記電極に通電するステップS6と、を含む。
【0041】
具体的には、前記ステップS1におけるナノ粒子溶液は、量子ドットナノ粒子溶液であってもよい。前記量子ドットナノ粒子の調製材料は、量子ドット発光コアを形成するZnCdSe、InP、CdSe、CdSe、CdSeTe及びInAsの少なくとも一つ並びに量子ドット発光シェルを形成するCdS、ZnSe、ZnCdSe、ZnS及びZnOの少なくとも一つから選択される。本実施例において、前記ナノ粒子は、CdSe/ZnS量子ドットナノ粒子である。
【0042】
具体的には、前記ステップS2における多孔質材料ユニット溶液における多孔質材料ユニットは、Mobil composition of matter(MCM)シリーズ、Santa barbara amorphous (SBA)シリーズ、Folded sheets mesoporous(FSM)シリーズ、六方メソポーラスシリカ(HMS)シリーズ、Michigan state university(MSU)シリーズなどの組成構造のモレキュラーシーブから選択することができる。前記多孔質材料ユニットは、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ又はメソポーラス金属酸化物から選択することができる。前記メソポーラス金属酸化物は、例えば、酸化チタンメソポーラス、ジルコニアメソポーラス、酸化タングステンメソポーラス又はチタン酸バリウムメソポーラスである。本実施例において、前記多孔質材料ユニットは、SBA-15型シリカ(SiO)メソポーラス材料である。前記SBA-15型メソポーラスシリカの合成プロセスは、35~40℃の条件で、三ブロック界面活性剤P123(Aldrich,EO20PO70EO20,Ma=5800)を適量の脱イオン水に溶解し、これにn-酢酸エチル(TEOS)、塩酸(HCl)を添加し、24時間以上継続して攪拌し、ポリテトラフルオロエチレンボトルに入れて24時間以上結晶化し、濾過し、洗浄して乾燥し、最後に、550℃で5時間以上焼成してテンプレートを除去し、次いで濾過し、洗浄して乾燥し、得られた白色粉末は、SBA-15型メソポーラスシリカである。
【0043】
具体的には、前記ステップS3における帯電リガンドの性質は、主にその自由端によって決定され、帯電リガンドの自由端が正に帯電している場合、帯電リガンドは、正電気リガンドであり、リガンドの自由端が負に帯電している場合、帯電リガンドは、負電気リガンドである。前記帯電リガンドは、界面活性剤から選択することができる。前記界面活性剤は、例えば、有機硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、金属石鹸、有機アミン、有機リン酸塩又はリン酸エステルなどの界面活性剤である。前記有機硫酸塩は、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はジベンジルナフタレンスルホン酸バリウムなどであり、前記金属石鹸は、例えば、ナフタレン酸金属塩又はステアリン酸塩であり、前記有機アミンは、例えば、N-ビニルピロリドンポリマーである。前記帯電リガンドは、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド又はリンリガンドであってもよい。
【0044】
具体的には、前記ステップS4において前記多孔質材料ユニット溶液と前記ナノ粒子溶液との混合は、攪拌及び超音波により行うことができる。
【0045】
具体的には、前記ステップS5における電極は、酸化インジウムスズ(indium tin oxide,ITO)電極である。
【0046】
具体的には、前記ステップS6における通電する電圧は、10~100Vであり、通電する時間は、10~300秒であり、通電する電圧及び通電する時間は、前述の界面活性剤又はリガンドの種類、形成しようとする複合材料薄膜の種類及び形成しようとする複合材料薄膜の厚さに基づいて決定される。
【0047】
図4を参照して、図4は、本発明の第1実施例に係る量子ドット複合材料薄膜の調製方法を示す概略図である。図4に示すように、本実施例において、使用される多孔質材料は、SBA-15型メソポーラスシリカである。
【0048】
まず、以下のステップを含むCdSe/ZnS量子ドット溶液20を調製する(詳細なステップは図示せず)。5mlの脱イオン水を準備し、攪拌しながら、0.19mmolのNaOHを添加し、窒素ガス(N)を10分間導入した後、0.035mmolのSe粉末を添加し、10分間反応させた後に0.051mmolのアルミニウム(Al)粉末を添加し、85℃に昇温し、超音波により25分間処理することで、透明なNaSe前駆体溶液が得られ、0.12mmolの過塩素酸カドミウムを50mlの脱イオン水に溶解し、攪拌しながら、0.120mmolのメチオニン、0.125mmolのメルカプトプロピオン酸を添加し、質量分率10%のNaOH溶液でpHを8.5~9.0に調整し、室温で10分間攪拌し、NaSe前駆体溶液を添加し、温度を85℃まで上昇し、超音波により25分間処理することで、CdSeコア量子ドット溶液20が調製され、CdSeコア量子ドット溶液20に、メチオニンを0.110mmol、メルカプトプロピオン酸を0.110mmol添加し、85℃で10分間保温し、0.01mol/lのチオアセトアミド溶液を4.5mlと0.05mol/lの塩化亜鉛溶液を3.0ml同時に滴下し、滴下時間は、5分間であり、85℃で超音波により20分間処理することで、CdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20が調製され、調製されたCdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20を室温まで冷却し、アセトンで沈殿させ、遠心分離し、3回操作を繰り返し、精製された量子ドットを4℃環境に置いて使用に備えるように光照射を避けながら保存する。
【0049】
次に、SBA-15型メソポーラスシリカ10を含むSBA-15型メソポーラスシリカ溶液(図示せず)を調製する。前記SBA-15型メソポーラスシリカ10の合成プロセスは、以下のとおりである。35~40℃の条件で、三ブロック界面活性剤P123(Aldrich,EO20PO70EO20,Ma=5800)を適量の脱イオン水に溶解し、これにn-酢酸エチル(TEOS)、塩酸(HCl)を添加し、24時間以上継続して攪拌し、ポリテトラフルオロエチレンボトルに入れて24時間以上結晶化し、濾過し、洗浄して乾燥し、最後に、550℃で5時間以上焼成してテンプレートを除去し、濾過し、洗浄して乾燥し、得られた白色粉末は、SBA-15型メソポーラスシリカである。次に、SBA-15メソポーラスシリカを非極性溶媒に溶解する。次いで、前記SBA-15型メソポーラスシリカ材料溶液にリガンド(図示せず)を添加することで、前記多孔質材料を表面に帯電させるように修飾する。前記リガンドは、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド又はリンリガンドであってもよい。前記リガンドは、界面活性剤であってもよく、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジベンジルナフタレンスルホン酸バリウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ナフタレン酸塩、ステアリン酸塩、N-ビニルピロリドンポリマー、有機リン酸塩又はリン酸エステルなどの界面活性剤であってもよい。前記リガンドは、調製された溶媒及び、多孔質材料ユニットを正又は負に帯電させようとすることに基づいて決定される。特に、非極性溶媒を用いる場合、一般的なリガンドは、イオン化が困難であるため、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル系界面活性剤、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexadecyl trimethyl ammonium bromide,cetyltrimethylammonium bromide,CTAB)などのイオン性界面活性剤を選択する必要がある。界面活性剤が臨界濃度を超えるとき、界面活性剤分子が凝集して逆ミセルが形成される。界面活性剤の極性部分は、水やその他の不純物を含む可能性が高い極コアを形成するように内側を向いている。非極性界面活性剤の尾部は、非極性溶媒に向けるように外側を向いている。これにより、界面活性剤がイオン化されたイオンは、逆ミセルの極性コア内に存在することができるため、界面活性剤のイオン化が可能となり、イオン化された界面活性剤は、メソポーラス材料の表面に吸着するため、SBA-15型メソポーラスシリカ10全体が帯電することになる。界面活性剤の濃度が高いほど形成できる逆ミセルが多くなり、界面活性剤がイオン化されればされるほど、SBA-15型メソポーラスシリカ10の表面に吸着できる帯電界面活性剤が多くなるため、SBA-15型メソポーラスシリカ10の帯電量が大きくなる。例えば、SBA-15型メソポーラスシリカ10の表面にCTAB、カルボキシル基リガンド、アミノ基リガンドなどを修飾することは、いずれもその帯電量を向上させることができるため、電着の電圧を低下させることができる。
【0050】
次いで、前記CdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20におけるCdSe/ZnSコアシェル量子ドット102が前記SBA-15型メソポーラスシリカ材料10の細孔101に入り込んで複合材料溶液を形成するように前記SBA-15型メソポーラスシリカ材料溶液とCdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20とを攪拌又は超音波により6~9時間混合し、次いで、電極100を前記複合材料溶液に入れる。具体的には、前記電極100は、酸化インジウムスズ(indium tin oxide,ITO)電極である。具体的には、前記CdSe/ZnSコアシェル量子ドット102と前記SBA-15型メソポーラスシリカ材料10との質量比が10:1~100:1となるように調製される。
【0051】
最後に、複合材料薄膜が形成されるまで前記CdSe/ZnSコアシェル量子ドット102を担持する前記SBA-15型メソポーラスシリカ材料10が前記電極100の正極板又は負極板に堆積するように電極100に通電する。具体的には、通電する電圧は、10~100Vであり、通電する時間は、10~300秒であり、通電する電圧及び通電する時間は、使用される前述界面活性剤又はリガンドの種類、形成しようとする複合材料薄膜の種類及び形成しようとする複合材料薄膜の厚さに基づいて決定される。
【0052】
図5を参照して、図5は、本発明の第2実施例に係る量子ドット複合材料薄膜の調製方法を示す概略図である。図5に示すように、本実施例において、使用される多孔質材料は、メソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’である。
【0053】
まず、前述した以下のステップを含むCdSe/ZnS量子ドット溶液20を調製する(詳細なステップは図示せず)。5mlの脱イオン水を準備し、攪拌しながら、0.19mmolのNaOHを添加し、窒素ガス(N)を10分間導入した後、0.035mmolのSe粉末を添加し、10分間反応させた後に0.051mmolのアルミニウム(Al)粉末を添加し、85℃に昇温し、超音波により25分間処理することで、透明なNaSe前駆体溶液が得られ、0.12mmolの過塩素酸カドミウムを50mlの脱イオン水に溶解し、攪拌しながら、0.120mmolのメチオニン、0.125mmolのメルカプトプロピオン酸を添加し、質量分率10%のNaOH溶液でpHを8.5~9.0に調整し、室温で10分間攪拌し、NaSe前駆体溶液を添加し、温度を85℃まで上昇し、超音波により25分間処理することで、CdSeコア量子ドット溶液20が調製され、CdSeコア量子ドット溶液20に、メチオニンを0.110mmol、メルカプトプロピオン酸を0.110mmol添加し、85℃で10分間保温し、0.01mol/lのチオアセトアミド溶液を4.5mlと0.05mol/lの塩化亜鉛溶液を3.0ml同時に滴下し、滴下時間は、5分間であり、85℃で超音波により20分間処理することで、CdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20が調製され、調製されたCdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20を室温まで冷却し、アセトンで沈殿させ、遠心分離し、3回操作を繰り返し、精製された量子ドットを4℃環境に置いて使用に備えるように光照射を避けながら保存する。
【0054】
次に、市販のメソポーラスシリカマイクロスフェア材料から選択されるメソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’を含む多孔質材料溶液(図示せず)を調製する。前記メソポーラスシリカマイクロスフェア材料を溶液に調製し、次いで、前記メソポーラスシリカマイクロスフェア材料溶液にリガンド(図示せず)を添加することで、前記多孔質材料を表面に帯電させるように修飾する。前記リガンドは、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド又はリンリガンドであってもよい。前記リガンドは、界面活性剤であってもよく、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジベンジルナフタレンスルホン酸バリウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ナフタレン酸塩、ステアリン酸塩、N-ビニルピロリドンポリマー、有機リン酸塩又はリン酸エステルなどの界面活性剤であってもよい。前記リガンドは、調製された溶媒及び、多孔質材料ユニットを正又は負に帯電させようとすることに基づいて決定される。特に、非極性溶媒を用いる場合、一般的なリガンドは、イオン化が困難であるため、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル系界面活性剤、CTABなどのイオン性界面活性剤を選択する必要がある。界面活性剤が臨界濃度を超えるとき、界面活性剤分子が凝集して逆ミセルが形成される。界面活性剤の極性部分は、水やその他の不純物を含む可能性が高い極コアを形成するように内側を向いている。非極性界面活性剤の尾部は、非極性溶媒に向けるように外側を向いている。これにより、界面活性剤がイオン化されたイオンは、逆ミセルの極性コア内に存在することができるため、界面活性剤のイオン化が可能となり、イオン化された界面活性剤は、メソポーラス材料の表面に吸着するため、ソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’全体が帯電することになる。界面活性剤の濃度が高いほど形成できる逆ミセルが多くなり、界面活性剤がイオン化されればされるほど、ソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’の表面に吸着できる帯電界面活性剤が多くなるため、ソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’の帯電量が大きくなる。例えば、ソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’の表面にCTAB、カルボキシル基リガンド、アミノ基リガンドなどを修飾することは、いずれもその帯電量を向上させることができるため、電着の電圧を低下させることができる。
【0055】
次いで、前記CdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20におけるCdSe/ZnSコアシェル量子ドット102が前記メソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’の細孔101’に入り込んで複合材料溶液を形成するように前記メソポーラスシリカマイクロスフェア材料溶液とCdSe/ZnSコアシェル量子ドット溶液20とを攪拌又は超音波により6~9時間混合する。
【0056】
次に、電極100を前記複合材料溶液に入れる。具体的には、前記電極100は、酸化インジウムスズ(indium tin oxide,ITO)電極である。前記CdSe/ZnSコアシェル量子ドット102と前記メソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’との質量比が10:1~100:1となるように調製される。
【0057】
最後に、複合材料薄膜が形成されるまで前記CdSe/ZnSコアシェル量子ドット102を担持する前記メソポーラスシリカマイクロスフェア材料10’が前記電極100の正極板又は負極板に堆積するように電極100に通電する。具体的には、通電する電圧は、10~100Vであり、通電する時間は、10~300秒である。
【0058】
図6を参照して、図6は、本発明の実施例に係る表示パネルの断面構造を示す概略図である。図6に示すように、前記表示パネルは、基板200、薄膜トランジスタ素子層201、陽極層202、発光機能層(203,204,205,206)、陰極層207及び封止層208を含む。前記薄膜トランジスタ素子層201は、前記基板200に設けられ、前記陽極層202は、前記薄膜トランジスタ素子層201に設けられ、前記発光機能層(203,204,205,206)は、前記陽極層202に設けられ、前記陰極層307は、前記発光機能層(203,204,205,206)に設けられ、前記封止層208は、前記陰極層207に設けられる。
【0059】
具体的には、前記発光機能層(203,204,205,206)は、正孔注入層203、正孔輸送層204、複合材料薄膜205及び電子輸送層206を含む。図1及び図2を併せて参照して、前記複合材料薄膜205は、第1膜層2051及び第2膜層2052を含み、前記第1膜層2051及び第2膜層2052は、積み重ねられる多孔質材料ユニット10を含み、前記多孔質材料ユニット10は、表面に量子ドットナノ粒子102を担持する細孔101を有し、前記細孔101の孔径は、前記量子ドットナノ粒子102の寸法と対応する。具体的には、前記多孔質材料ユニット10の表面にリガンド103がグラフトされる。具体的には、前記リガンド103は、アミノリガンド、チオールリガンド、カルボン酸リガンド又はリンリガンドであってもよい。
【0060】
表1を参照して、従来の単独量子ドット薄膜、本発明の第1実施例に係るSBA-15型メソポーラスシリカ/CdSe/ZnS量子ドット薄膜及び本発明の第2実施例に係るメソポーラスシリカマイクロスフェア/CdSe/ZnS量子ドット薄膜の性能実験データを表1に示す。
【0061】
表1に示すように、従来の単独量子ドット薄膜の表示パネル、本発明の第1実施例に係るSBA-15型メソポーラスシリカ/CdSe/ZnS量子ドット薄膜及び本発明の第2実施例に係るメソポーラスシリカマイクロスフェア/CdSe/ZnS量子ドット薄膜の三者は、青色光輝度の性能において類似する。
【0062】
【表1】
【0063】
しかし、赤色光の性能においては、顕著な相違があり、上記三者の性能は、それぞれ164.4cd/m、231.1cd/m及び220.8cd/mである。明らかなように、単独で形成されるCdSe/ZnS量子ドット薄膜と比較して、本発明の第1実施例でCdSe/ZnS量子ドットの担体としてSBA-15型メソポーラスシリカを用いるとともに、本発明の第2実施例でCdSe/ZnS量子ドットの担体としてメソポーラスシリカマイクロスフェア材料を用いて形成される複合材料薄膜は、赤色光輝度の性能において、単独で形成されるCdSe/ZnS量子ドット薄膜よりも明らかに優れており、赤色光輝度の性能において30~40%以上向上したことがわかる。
【0064】
これに加えて、本発明の第1及び第2実施例に係る複合材料薄膜の発光効率は、それぞれ47.30%及び47.80%であり、単独で形成されるCdSe/ZnS量子ドット薄膜の発光効率である37.10%よりも明らかに優れている。
【0065】
以上説明したように、本発明によれば、多孔質材料を担体として用い、リガンドにより前記多孔質材料ユニットの表面を化学修飾することでその表面を帯電させ、電極板に共通の電着が行われるように前記多孔質材料の細孔により量子ドット又はその他のナノ材料を担持することにより、複合材料薄膜が調製される。この方法により、例えば、量子ドットナノ粒子などの非帯電ナノ粒子を電着することができるだけではなく、電着に必要な電圧を低下させることができる。特に、複合材料薄膜が形成されるように量子ドットナノ粒子を多孔質材料ユニットで担持する場合、多孔質材料ユニットの間隔作用や散乱効果により、量子ドットの自己吸収効果が効果的に低減されるため、調製された複合材料薄膜の発光効率は、量子ドットのみからなる薄膜よりも高くなる。このほか、帯電量を向上させるために量子ドットナノ粒子などのナノ材料に特別な修飾を行う必要がないため、量子ドットナノ粒子の良好な光電特性を維持することができる。
【0066】
上記は、本発明の好適実施形態にすぎず、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、さらにいくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本発明の保護範囲とみなすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6