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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20240903BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20240903BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20240903BHJP
   H01G 4/00 20060101ALI20240903BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H01G4/40 321A
H01G4/33 102
H01G4/00 A
H01F27/00 S
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022509921
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021009985
(87)【国際公開番号】W WO2021193132
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020053614
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020053615
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 武
(72)【発明者】
【氏名】冨川 満広
(72)【発明者】
【氏名】我喜屋 風太
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 晃靖
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-27982(JP,A)
【文献】特開2017-92121(JP,A)
【文献】特開2009-152489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/01
H01G 4/40
H01G 4/33
H01G 4/00
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に交互に積層された複数の導体層及び複数の絶縁樹脂層と、を備え、
前記複数の絶縁樹脂層は、最下層に位置する第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層上に位置する複数の第2の絶縁樹脂層とを含み、
前記複数の導体層は、前記第1の絶縁樹脂層に埋め込まれた第1の導体層と、前記複数の第2の絶縁樹脂層にそれぞれ埋め込まれた複数の第2の導体層とを含み、
前記第1の導体層は、下部電極と、無機絶縁材料からなる誘電体膜を介して前記下部電極上に積層された上部電極からなるキャパシタを含み、
前記複数の第2の導体層は、コイルパターンを含み、
前記第1の絶縁樹脂層は、前記第2の絶縁樹脂層よりも厚さが薄く、
前記第2の絶縁樹脂層は、前記第1の絶縁樹脂層よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1の絶縁樹脂層は、ポリイミド系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第2の絶縁樹脂層は、エポキシ系樹脂にフィラーが添加された材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記複数の第2の導体層のそれぞれは、前記下部電極と前記上部電極の合計厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、前記第1の導体層と前記第2の導体層を接続する第1のビア導体の平面形状は矩形であり、
前記第2の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、異なる前記第2の導体層同士を接続する第2のビア導体の平面形状は円形であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1の絶縁樹脂層は部分的に除去されており、
前記複数の第2の絶縁樹脂層のうち、前記第1の絶縁樹脂層と接する絶縁樹脂層は、前記第1の絶縁樹脂層が除去された部分に埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第2の導体層は、前記第1の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、前記複数の第2の導体層のうち最下層に位置する導体層と前記第1の導体層を接続する第1のビア導体と、前記第2の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、前記複数の第2の導体層同士を接続する第2のビア導体とを有し、
前記第1のビア導体の底部は平坦であり、
前記複数の第2の導体層の表面は、前記第2のビア導体に接続される部分において凹部を有し、
前記第2のビア導体の底部は、前記凹部に食い込むよう凸部形状を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1のビア導体の平面形状は矩形であり、前記第2のビア導体の平面形状は円形であることを特徴とする請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記複数の第2の導体層は、前記下部電極と前記上部電極の合計厚みよりも厚いことを特徴とする請求項7又は8に記載の電子部品。
【請求項10】
基板上に、下部電極と、無機絶縁材料からなる誘電体膜を介して前記下部電極上に積層された上部電極からなるキャパシタを含む第1の導体層を形成する第1の工程と、
前記第1の導体層を覆う第1の絶縁樹脂層を形成する第2の工程と、
前記第1の絶縁樹脂層上に、コイルパターンを含む第2の導体層と、前記第1の絶縁樹脂層よりも厚さが厚く、且つ、前記第1の絶縁樹脂層よりも熱膨張係数の小さい第2の絶縁樹脂層を交互に形成する第3の工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記第2の工程においては、前記第1の絶縁樹脂層をコート法により形成し、
前記第3の工程においては、前記第2の絶縁樹脂層をラミネート法により形成することを特徴とする請求項10に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記第1の絶縁樹脂層に開口部を形成することによって前記第1の導体層を露出させる第4の工程と、
前記第2の絶縁樹脂層に開口部を形成することによって前記第2の導体層を露出させる第5の工程と、をさらに備え、
前記第4の工程は、フォトリソグラフィー法により行い、
前記第5の工程は、レーザー加工により行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品及びその製造方法に関し、特に、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上にキャパシタとインダクタを形成した構成を有するLCフィルタが開示されている。特許文献1に記載されたLCフィルタにおいては、キャパシタの下部電極とインダクタを構成するコイルパターンを同じ導体層に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-34626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャパシタの下部電極とコイルパターンを同じ導体層に配置した場合、コイルのQ値を高めるためにコイルパターンの導体厚を厚くすると、必然的にキャパシタの下部電極の導体厚も厚くなる。このため、下部電極上に上部電極を高精度に形成することが困難となり、キャパシタンスのばらつきが大きくなるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、キャパシタのように高い加工精度が求められる素子と、インダクタのように十分な導体厚が求められる素子を集積した電子部品において、両素子に要求される特性を満たすことを目的とする。また、本発明は、このような電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面による電子部品は、基板と、基板上に交互に積層された複数の導体層及び複数の絶縁樹脂層とを備え、複数の絶縁樹脂層は、最下層に位置する第1の絶縁樹脂層と、第1の絶縁樹脂層上に位置する複数の第2の絶縁樹脂層とを含み、複数の導体層は、第1の絶縁樹脂層に埋め込まれた第1の導体層と、複数の第2の絶縁樹脂層にそれぞれ埋め込まれた複数の第2の導体層とを含み、第1の導体層は、下部電極と、無機絶縁材料からなる誘電体膜を介して下部電極上に積層された上部電極からなるキャパシタを含み、複数の第2の導体層はコイルパターンを含み、第1の絶縁樹脂層は第2の絶縁樹脂層よりも厚さが薄く、第2の絶縁樹脂層は第1の絶縁樹脂層よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、高い加工精度が求められるキャパシタを最下層に位置する薄い第1の絶縁樹脂層に埋め込み、十分な導体厚が求められるインダクタを厚い第2の絶縁樹脂層に埋め込でいることから、両素子に要求される特性を満たすことができる。しかも、第2の絶縁樹脂層は熱膨張係数が低いことから、反りや剥離の発生を抑えることもできる。ここで、第1の絶縁樹脂層はポリイミド系樹脂からなるものであっても構わない。また、第2の絶縁樹脂層は、エポキシ系樹脂にフィラーが添加された材料からなるものであっても構わない。
【0008】
本発明において、複数の第2の導体層のそれぞれは、下部電極と上部電極の合計厚みよりも厚くても構わない。これによれば、コイルのQ値を高めることが可能となる。
【0009】
本発明において、第1の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、第1の導体層と第2の導体層を接続する第1のビア導体の平面形状は矩形であり、第2の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、異なる第2の導体層同士を接続する第2のビア導体の平面形状は円形であっても構わない。これによれば、第1のビア導体の面積を十分に確保することができるとともに、第2のビア導体の近傍における剥離の発生を防止することが可能となる。
【0010】
本発明において、第1の絶縁樹脂層は部分的に除去されており、複数の第2の絶縁樹脂層のうち第1の絶縁樹脂層と接する絶縁樹脂層は、第1の絶縁樹脂層が除去された部分に埋め込まれていても構わない。これによれば、熱膨張係数の小さい第2の絶縁樹脂層のボリュームがより増大することから、電子部品全体の反りがより生じにくくなる。
【0011】
本発明による電子部品の製造方法は、基板上に、下部電極と、無機絶縁材料からなる誘電体膜を介して下部電極上に積層された上部電極からなるキャパシタを含む第1の導体層を形成する第1の工程と、第1の導体層を覆う第1の絶縁樹脂層を形成する第2の工程と、第1の絶縁樹脂層上に、コイルパターンを含む第2の導体層と、第1の絶縁樹脂層よりも厚さが厚く、且つ、第1の絶縁樹脂層よりも熱膨張係数の小さい第2の絶縁樹脂層を交互に形成する第3の工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、高い加工精度が求められるキャパシタを第1の導体層に形成し、十分な導体厚が求められるインダクタを第2の導体層に形成することができる。しかも、第2の絶縁樹脂層は熱膨張係数が低いことから、反りや剥離の発生を抑えることもできる。
【0013】
本発明において、第2の工程においては第1の絶縁樹脂層をコート法により形成し、第3の工程においては第2の絶縁樹脂層をラミネート法により形成しても構わない。これによれば、厚さの異なる第1及び第2の絶縁樹脂層を容易に形成することができる。
【0014】
本発明において、第2の導体層は、第1の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、複数の第2の導体層のうち最下層に位置する導体層と第1の導体層を接続する第1のビア導体と、第2の絶縁樹脂層を貫通して設けられ、複数の第2の導体層同士を接続する第2のビア導体とを有し、第1のビア導体の底部は平坦であり、複数の第2の導体層の表面は第2のビア導体に接続される部分において凹部を有し、第2のビア導体の底部は凹部に食い込むよう凸部形状を有していても構わない。これによれば、第1のビア導体の底部が平坦であることから、下部電極や上部電極の凹凸に起因するキャパシタンスのばらつきが抑えられる。一方、第2のビア導体の底部は、凹部に食い込むよう凸部形状を有していることから、第2の導体層と第3の導体層の接触面積が増大し、両者の密着性を高めることが可能となる。
【0015】
本発明において、第1のビア導体の平面形状は矩形であり、第2のビア導体の平面形状は円形であっても構わない。これによれば、第1のビア導体の面積を十分に確保することができるとともに、第2のビア導体の近傍における剥離の発生を防止することが可能となる。
【0016】
本発明において、複数の第2の導体層は、下部電極と上部電極の合計厚みよりも厚くても構わない。これによれば、コイルのQ値を高めることが可能となる。
【0017】
本発明の一側面による電子部品の製造方法は、第1の絶縁樹脂層に開口部を形成することによって第1の導体層を露出させる第4の工程と、第2の絶縁樹脂層に開口部を形成することによって第2の導体層を露出させる第5の工程とをさらに備え、第4の工程はフォトリソグラフィー法により行い、第5の工程はレーザー加工により行っても構わない。これによれば、第4の工程において高い加工精度を得ることができるとともに、第1の絶縁樹脂層の開口部を任意の平面形状に加工することが可能となる。また、第5の工程を安価に実施することができるとともに、第2の絶縁樹脂層の材料として非感光性材料を用いることができる。
【0018】
本発明の他の側面による電子部品は、基板と、基板上に形成され、下部電極と、無機絶縁材料からなる誘電体膜を介して下部電極上に積層された上部電極からなるキャパシタを含む第1の導体層と、第1の導体層を覆う第1の絶縁樹脂層と、第1の絶縁樹脂層上に形成された第2の導体層と、第2の導体層を覆う第2の絶縁樹脂層と、第2の絶縁樹脂層上に形成された第3の導体層とを備え、第2及び第3の導体層はコイルパターンを含み、第1の絶縁樹脂層は第1の導体層を露出させる第1の開口部を有し、第2の絶縁樹脂層は第2の導体層を露出させる第2の開口部を有し、第2の導体層は第1の開口部を介して第1の導体層に接続する第1のビア導体を有し、第3の導体層は第2の開口部を介して第2の導体層に接続する第2のビア導体を有し、第1のビア導体の底部は平坦であり、第2の導体層の表面は第2のビア導体に接続される部分において凹部を有し、第2のビア導体の底部は凹部に食い込むよう凸部形状を有していることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、キャパシタのように高い加工精度が求められる素子を最下層に位置する第1の絶縁樹脂層に埋め込み、インダクタのように十分な導体厚が求められる素子を第2及び第3の絶縁樹脂層に埋め込んでいることから、両素子に要求される特性を満たすことができる。しかも、第1のビア導体の底部が平坦であることから、下部電極や上部電極の凹凸に起因するキャパシタンスのばらつきが抑えられる。一方、第2のビア導体の底部は、凹部に食い込むよう凸部形状を有していることから、第2の導体層と第3の導体層の接触面積が増大し、両者の密着性を高めることが可能となる。
【0020】
本発明の他の側面による電子部品の製造方法は、基板上に、下部電極と、無機絶縁材料からなる誘電体膜を介して下部電極上に積層された上部電極からなるキャパシタを含む第1の導体層を形成する第1の工程と、第1の導体層を覆う第1の絶縁樹脂層を形成する第2の工程と、フォトリソグラフィー法により第1の絶縁樹脂層に第1の導体層を露出させる第1の開口部を形成する第3の工程と、第1の開口部を介して第1の導体層に接続されるよう、第1の絶縁樹脂層上にコイルパターンを含む第2の導体層を形成する第4の工程と、第2の導体層を覆う第2の絶縁樹脂層を形成する第5の工程と、レーザー加工により第2の絶縁樹脂層に第2の導体層を露出させる第2の開口部を形成する第6の工程と、第2の開口部から露出する第2の導体層の表面に凹部を形成する第7の工程と、第2の開口部を介して第2の導体層に接続されるよう、第2の絶縁樹脂層上にコイルパターンを含む第3の導体層を形成する第8の工程とを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、高い加工精度が求められるキャパシタを第1の導体層に形成し、十分な導体厚が求められるインダクタを第2の導体層に形成することができる。しかも、レーザー加工により第2の絶縁樹脂層に第2の開口部を形成した後、第2の開口部から露出する第2の導体層の表面に凹部を形成していることから、第2の導体層と第3の導体層の接触面積が増大し、両者の密着性を高めることが可能となる。また、第2の開口部を安価に形成することができるとともに、第2の絶縁樹脂層の材料として非感光性材料を用いることができる。これに対し、第1の開口部についてはフォトリソグラフィー法によって形成していることから、高い加工精度を得ることができるとともに、第1の開口部を任意の平面形状に加工することが可能となる。
【0022】
本発明において、第2の工程においては第1の絶縁樹脂層をコート法により形成し、第5の工程においては第2の絶縁樹脂層をラミネート法により形成しても構わない。これによれば、厚さの異なる第1及び第2の絶縁樹脂層を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明によれば、キャパシタのように高い加工精度が求められる素子と、インダクタのように十分な導体厚が求められる素子を集積した電子部品において、両素子に要求される特性を満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態による電子部品1の構造を説明するための断面図である。
図2図2は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図3図3は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図4図4は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図5図5は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図6図6は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図7図7は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8図8は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図10図10は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図15図15は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図16図16は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図17図17は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図19図19は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図20図20は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図21図21は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図22図22は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図23図23は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図24図24は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図25図25は、第1の変形例による電子部品1Aの構造を説明するための断面図である。
図26図26は、第2の変形例による電子部品1Bの構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による電子部品1の構造を説明するための断面図である。
【0027】
本実施形態による電子部品1はLCフィルタであり、図1に示すように、基板2と、基板2の上面に交互に積層された導体層M1~M4と絶縁樹脂層11~14を備えている。基板2の材料としては、化学的・熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができる材料であればよく、特に限定されるものではないが、シリコン単結晶、アルミナ、サファイア、窒化アルミ、MgO単結晶、SrTiO3単結晶、表面酸化シリコン、ガラス、石英、フェライトなどを用いることができる。基板2の表面は平坦化層3で覆われている。平坦化層3としては、アルミナや酸化シリコンなどを用いることができる。
【0028】
導体層M1は最下層に位置する導体層であり、導体パターン21,22を含んでいる。導体パターン21,22はいずれも平坦化層3と接する薄いシード層Sと、シード層S上に設けられ、シード層Sよりも膜厚の大きいメッキ層Pによって構成されている。他の導体層に位置する導体パターンについても同様であり、シード層Sとメッキ層Pの積層体によって構成されている。ここで、導体パターン21はキャパシタの下部電極を構成し、その上面及び側面は誘電体膜(容量絶縁膜)4で覆われている。電子部品1の外周部では誘電体膜4が除去されており、これによって応力が緩和されている。
【0029】
導体パターン21の上面には、誘電体膜4を介して導体パターン23が形成されている。導体パターン23は、導体層M1と導体層M2の間に位置する導体層MMに属し、キャパシタの上部電極を構成する。これにより、導体パターン21を下部電極とし、導体パターン23を上部電極とするキャパシタが形成される。導体層M1及び導体層MMは、パッシベーション膜5を介して絶縁樹脂層11で覆われる。本実施形態においては、誘電体膜4とパッシベーション膜5がいずれも無機絶縁材料からなる。誘電体膜4を構成する無機絶縁材料とパッシベーション膜5を構成する無機絶縁材料は、同じ材料であっても構わないし、異なる材料であっても構わない。電子部品1の外周部ではパッシベーション膜5が除去されており、これによって応力が緩和されている。
【0030】
導体層M2は、絶縁樹脂層11の表面に設けられた2層目の導体層であり、導体パターン24,25を含んでいる。導体パターン24は、それぞれビア導体24a,24bを介して導体パターン23,22に接続されている。導体パターン25は、ビア導体25aを介して導体パターン21に接続されている。導体層M2は、絶縁樹脂層12によって覆われる。
【0031】
導体層M3は、絶縁樹脂層12の表面に設けられた3層目の導体層であり、導体パターン26,27を含んでいる。導体パターン26は、ビア導体26aを介して導体パターン24に接続されている。導体層M3は、絶縁樹脂層13によって覆われる。
【0032】
導体層M4は、絶縁樹脂層13の表面に設けられた4層目の導体層であり、導体パターン28,29を含んでいる。導体パターン28は、ビア導体28aを介して導体パターン26に接続されている。導体層M4は、絶縁樹脂層14によって覆われる。
【0033】
絶縁樹脂層14の上面には、端子電極E1,E2が設けられている。端子電極E1,E2は、それぞれビア導体E1a,E2aを介して導体パターン28,29に接続されている。導体パターン22,24~29は例えばコイルパターンの一部であり、これにより、基板2上にキャパシタとインダクタが集積される。
【0034】
本実施形態においては、絶縁樹脂層11を構成する材料と絶縁樹脂層12~14を構成する材料が互いに異なっている。具体的には、絶縁樹脂層11の材料としては、ポリイミド系樹脂のようにコート法(例えばスピンコート法)による成膜が容易な感光性材料が用いられる。これに対し、絶縁樹脂層12~14の材料としては、エポキシ系樹脂にフィラーが添加された材料のように、熱膨張係数の調整が容易であり、ラミネート法により形成可能な材料が用いられる。
【0035】
図1に示すように、絶縁樹脂層11~14の厚さをそれぞれH11~H14とした場合、本実施形態においてはH11<H12,H13,H14を満たしている。つまり、絶縁樹脂層11は、絶縁樹脂層12~14のいずれよりも厚さが薄い。このことは、絶縁樹脂層12~14にそれぞれ埋め込まれる導体層M2~M4の厚みよりも、絶縁樹脂層11に埋め込まれる導体層M1,MMの合計厚みの方が薄いことを意味する。一例として、導体層M2~M4の厚みをそれぞれ20μmとし、導体層M1,MMの厚みをそれぞれ5μmとすることができる。このように、導体層M1,MMに形成される導体パターン21~23の導体厚が薄いことから、キャパシタを構成する下部電極及び上部電極を高精度に形成することができる。一方、導体層M2~M4に形成される導体パターン24~29については、導体厚を十分に確保することができるため、コイルのQ値を高めることが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、絶縁樹脂層12~14の熱膨張係数が絶縁樹脂層11の熱膨張係数よりも小さい。これにより、厚さの大きい絶縁樹脂層12~14と導体パターン24~29の界面における剥離を防止することができるとともに、電子部品1全体の反りが生じにくくなる。絶縁樹脂層12~14の熱膨張係数は、絶縁樹脂層12~14に添加するフィラーの量や材料によって調整することが可能である。フィラーの材料としては、熱膨張係数の低い材料、例えばシリカを用いることができる。絶縁樹脂層11は、絶縁樹脂層12~14よりも熱膨張係数が大きいものの、絶縁樹脂層12~14よりも厚さが薄いことから強い応力が発生せず、剥離などは生じにくい。基板2の熱膨張係数については、絶縁樹脂層12~14の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。このように、熱膨張係数の大きい絶縁樹脂層11を熱膨張係数の小さい基板2及び絶縁樹脂層12~14で挟み込むことにより、電子部品1全体の反りを抑えることが可能となる。
【0037】
また、導体層M1,MMの表面は平坦であり、導体層M2と導体層M1,MMを接続するビア導体24a,24b,25aについては、底部が平坦である。これにより、下部電極や上部電極の凹凸に起因するキャパシタンスのばらつきが抑えられる。これに対し、導体層M2~M4の表面は凹部を有し、ビア導体26a,28a,E1a,E2aの底部は、導体層M2~M4の凹部に食い込むよう凸部形状を有している。これにより、ビア導体26a,28a,E1a,E2aとこれらに接続される導体パターン24,26,28,29の接触面積が増大することから、両者の密着性が高められる。
【0038】
本実施形態においては、底部が平坦なビア導体24a,24b,25aの平面形状を矩形とし、底部が凸部形状を有するビア導体26a,28a,E1a,E2aの平面形状を円形としても構わない。これによれば、ビア導体24a,24b,25aの接続面積を拡大することができるとともに、ビア導体26a,28a,E1a,E2aの周囲における剥離の発生を防止することが可能となる。
【0039】
また、ビア導体24a,24b,25aのうち、上部電極である導体パターン23に接続されるビア導体24aについては、絶縁樹脂層11及びパッシベーション膜5を貫通して設けられているのに対し、下部電極又はコイルパターンである導体パターン21,22に接続されるビア導体24b,25aについては、絶縁樹脂層11、パッシベーション膜5及び誘電体膜4を貫通して設けられている。つまり、ビア導体24aは1層の無機絶縁膜を貫通するのに対し、ビア導体24b,25aは2層の無機絶縁膜を貫通する。これは、上部電極である導体パターン23が形成されている領域を除き、導体パターン21,22の上面が誘電体膜4及びパッシベーション膜5からなる2層の無機絶縁膜によって覆われているためである。このように、導体パターン21,22の上面を誘電体膜4及びパッシベーション膜5からなる2層の無機絶縁膜で覆うことにより、導体パターン21,22をより効果的に保護することが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態による電子部品1の製造方法について説明する。
【0041】
図2図24は、本実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。電子部品1の製造プロセスにおいては、集合基板を用いて複数の電子部品1が多数個取りされるが、以下に説明する製造プロセスは、1個の電子部品1の製造プロセスに着目して説明する。
【0042】
まず、図2に示すように、基板(集合基板)2上にスパッタリング法などを用いて平坦化層3を形成し、その表面を研削或いはCMPなどの鏡面化処理を行なって平滑化する。その後、平坦化層3の表面にスパッタリング法などを用いてシード層Sを形成する。次に、図3に示すように、シード層S上にレジスト層R1をスピンコートした後、導体層M1を形成すべき領域のシード層Sが露出するよう、レジスト層R1をパターニングする。この状態で、シード層Sを給電体とする電解メッキを行うことにより、図4に示すように、シード層S上にメッキ層Pを形成する。シード層Sとメッキ層Pの積層体は、導体層M1を構成する。図4に示す断面においては、導体層M1に導体パターン21,22及び犠牲パターン31,32が含まれている。そして、図5に示すようにレジスト層R1を除去し、図6に示すように表面に露出するシード層Sを除去すれば、導体層M1が完成する。シード層Sの除去は、エッチング又はイオンミリングによって行うことができる。
【0043】
次に、図7に示すように、導体層M1の上面及び側面を含む全面に誘電体膜4を成膜する。誘電体膜4としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)や酸化シリコン(SiOx)などの常誘電体材料の他、公知の強誘電体材料などからなる無機絶縁材料を利用することができる。誘電体膜4の成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマCVD法、MOCVD法、ゾルゲル法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。
【0044】
次に、図8に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法を用いることによって、導体パターン21の上面に誘電体膜4を介して導体パターン23を形成する。導体パターン23も、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。これにより、導体層MMが完成し、導体パターン21を下部電極とし、導体パターン23を上部電極とするキャパシタが形成される。次に、図9に示すように、導体層M1,MMの上面及び側面を含む全面にパッシベーション膜5を成膜する。パッシベーション膜5としては、誘電体膜4と同じ無機絶縁材料を用いることができる。
【0045】
次に、図10に示すように、犠牲パターン31,32を覆うことなく、導体パターン21,22を覆うレジスト層R2を形成する。レジスト層R2のエッジは、最終的に電子部品1となる部分よりもやや内側に設定する。この状態でパッシベーション膜5及び誘電体膜4をエッチングすることにより、図11に示すように、最終的に電子部品1の外周部となる部分のパッシベーション膜5及び誘電体膜4を除去する。パッシベーション膜5及び誘電体膜4のエッチングは、イオンミリングなどの異方性の高いエッチング方法を用いることが好ましい。これにより、基板2に対して平行な部分、つまり、平坦化層3の表面や、犠牲パターン31,32の上面を覆うパッシベーション膜5及び誘電体膜4が除去される一方、基板2に対して垂直な部分、つまり、犠牲パターン31,32の側面を覆うパッシベーション膜5及び誘電体膜4は除去されることなく残存する。
【0046】
次に、図12に示すように導体層M1,MMを覆う絶縁樹脂層11を形成する。絶縁樹脂層11の成膜は、コート法(例えばスピンコート法)によって行うことができる。これは、導体層M1,MMの合計膜厚が例えば約10μmと薄いため、ラミネート法によって絶縁樹脂層11を形成するよりも、低コストだからである。絶縁樹脂層11の材料としては、感光性のポリイミド系樹脂を用いることができる。次に、図13に示すように、絶縁樹脂層11をパターニングすることによって、絶縁樹脂層11に開口部41~45を形成する。開口部41~45の形成は、図示しないフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法によって行うことができる。これにより、導体パターン21~23の上面を覆うパッシベーション膜5はそれぞれ開口部41~43を介して露出し、犠牲パターン31,32はそれぞれ開口部44,45を介して露出する。
【0047】
次に、図14に示すように、絶縁樹脂層11上にレジスト層R3を形成した後、レジスト層R3に開口部51~53を形成する。開口部51~53は、それぞれ開口部41~43と重なる位置に設けられる。これにより、導体パターン21~23の上面を覆うパッシベーション膜5は、それぞれ開口部51~53を介して露出する。この状態で、イオンミリングなどを行うことにより、開口部51,52に露出するパッシベーション膜5及び誘電体膜4を除去するとともに、開口部53に露出するパッシベーション膜5を除去する。これにより、開口部51~53と重なる位置において導体パターン21~23の上面が露出する。
【0048】
そして、レジスト層R3を除去した後、図15に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法によって、絶縁樹脂層11上に導体層M2を構成する。図15に示す断面においては、導体層M2に導体パターン24,25及び犠牲パターン33,34が含まれている。導体層M2を構成する各導体パターン及び犠牲パターンも、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。ここで、導体パターン24は、絶縁樹脂層11に設けられた開口部を介して導体パターン22,23に共通に接続され、導体パターン25は、絶縁樹脂層11に設けられた開口部を介して導体パターン21に接続される。導体パターン24,25のうち絶縁樹脂層11の開口部内に位置する部分は、ビア導体24a,24b,25aを構成する。また、犠牲パターン33,34は、絶縁樹脂層11に設けられた開口部を介して犠牲パターン31,32にそれぞれ接続される。
【0049】
次に、図16に示すように導体層M2を覆う絶縁樹脂層12を形成する。絶縁樹脂層12の成膜は、ラミネート法によって行うことができる。これは、導体層M2の厚さが例えば約20μmと厚いため、コート法によって絶縁樹脂層12を形成するよりも、低コストで形成できるからである。絶縁樹脂層12の材料としては、非感光性のエポキシ系樹脂を用いることができる。絶縁樹脂層12には、熱膨張係数を調整するフィラーが添加されており、これにより絶縁樹脂層11よりも低い熱膨張係数を有している。
【0050】
次に、図17に示すように、絶縁樹脂層12に開口部54~56を形成する。開口部54~56の形成は、レーザー加工によって行うことができる。これにより、導体パターン24は開口部54を介して露出し、犠牲パターン33,34はそれぞれ開口部55,56を介して露出する。その後、過マンガン酸塩などを用いたデスミア処理を行うことによって、開口部54~56内の残渣を除去する。この時、開口部54に露出する導体パターン24の表面もエッチングされ、凹部24Rが形成される。犠牲パターン33,34の表面にも同様の凹部が形成される。凹部24Rの形状は、デスミア処理の時間や、使用する溶液の種類などによって調整することができる。また、デスミア処理に加えて、導体パターン24に凹部24Rを形成するためのエッチングプロセスを追加しても構わない。
【0051】
次に、図18に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法によって、絶縁樹脂層12上に導体層M3を構成する。図18に示す断面においては、導体層M3に導体パターン26,27及び犠牲パターン35,36が含まれている。導体層M3を構成する各導体パターン及び犠牲パターンも、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。ここで、導体パターン26は、絶縁樹脂層12に設けられた開口部を介して導体パターン24に接続される。導体パターン26のうち絶縁樹脂層12の開口部内に位置する部分は、ビア導体26aを構成し、その底部は凹部24Rに食い込むよう凸部形状を有している。また、犠牲パターン35,36は、絶縁樹脂層12に設けられた開口部を介して犠牲パターン33,34にそれぞれ接続される。
【0052】
その後、同様の工程を繰り返すことにより、図19に示すように絶縁樹脂層13、導体層M4及び絶縁樹脂層14をこの順に形成する。絶縁樹脂層13,14についても、ラミネート法によって形成することができる。図19に示す断面においては、導体層M4に導体パターン28,29及び犠牲パターン37,38が含まれている。ここで、導体パターン28は、絶縁樹脂層13に設けられた開口部を介して導体パターン26に接続され、犠牲パターン37,38は、絶縁樹脂層13に設けられた開口部を介してそれぞれ犠牲パターン35,36に接続される。導体パターン28のうち絶縁樹脂層13の開口部内に位置する部分は、ビア導体28aを構成し、その底部は導体パターン26に設けられた凹部に食い込むよう凸部形状を有している。
【0053】
次に、図20に示すように、絶縁樹脂層14をレーザー加工することによって、開口部61,62を形成する。これにより、導体パターン28,29の上面はそれぞれ開口部61,62を介して露出する。その後、デスミア処理を行うことによって、開口部61,62内の残渣を除去するとともに、導体パターン28,29の表面に凹部28R,29Rを形成する。そして、図21に示すように、絶縁樹脂層14上に端子電極E1,E2を形成する。端子電極E1は絶縁樹脂層14に設けられた開口部を介して導体パターン28に接続され、端子電極E2は絶縁樹脂層14に設けられた開口部を介して導体パターン29に接続される。端子電極E1,E2のうち絶縁樹脂層14の開口部内に位置する部分は、それぞれビア導体E1a,E2aを構成し、その底部は凹部28R,29Rに食い込むよう凸部形状を有している。
【0054】
次に、図22に示すように、絶縁樹脂層14をパターニングすることによって、開口部63,64を形成する。これにより、犠牲パターン37,38の上面はそれぞれ開口部63,64を介して露出する。そして、図23に示すように、端子電極E1,E2を含む絶縁樹脂層14の全面にレジスト層R4を形成した後、犠牲パターン37,38を露出させる開口部73,74をレジスト層R4に形成する。この状態で、酸などを用いたエッチングを行うことにより、図24に示すように犠牲パターン31~38を除去する。これにより、犠牲パターン31~38が除去された領域に空間Aが形成される。
【0055】
そして、レジスト層R4を除去した後、空間Aに沿って基板2を切断することによって電子部品1を個片化する。これにより、本実施形態による電子部品1が完成する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態による電子部品1においては、最下層に位置する絶縁樹脂層11の材料及び厚さと、絶縁樹脂層11上に位置する絶縁樹脂層12~14の材料及び厚さが異なっている。具体的には、絶縁樹脂層11は絶縁樹脂層12~14よりも厚さが薄く、絶縁樹脂層12~14は絶縁樹脂層11よりも熱膨張係数が小さい。これにより、高い加工精度が求められるキャパシタを薄い絶縁樹脂層11に埋め込み、十分な導体厚が求められるインダクタを厚い絶縁樹脂層12~14に埋め込むことができる。しかも、絶縁樹脂層12~14は熱膨張係数が低いことから、反りや剥離の発生を抑えることもできる。
【0057】
しかも、本実施形態による電子部品1においては、導体層M1,MMの表面が平坦であることから、下部電極や上部電極の凹凸に起因するキャパシタンスのばらつきを抑えることができる。一方、導体層M2~M4の表面は凹部を有しており、ビア導体26a,28a,E1a,E2aの底部は、導体層M2~M4の凹部に食い込むよう凸部形状を有している。これにより、ビア導体26a,28a,E1a,E2aとこれらに接続される導体パターン24,26,28,29の接触面積が増大することから、両者の密着性が高められる。
【0058】
さらに、ビア導体24a,24b,25aのうち、上部電極である導体パターン23に接続されるビア導体24aについては、絶縁樹脂層11及びパッシベーション膜5を貫通して設けられているのに対し、下部電極又はコイルパターンである導体パターン21,22に接続されるビア導体25a,24bについては、絶縁樹脂層11、パッシベーション膜5及び誘電体膜4を貫通して設けられている。これにより、導体パターン21,22をより効果的に保護することが可能となる。
【0059】
図25は、第1の変形例による電子部品1Aの構造を説明するための断面図である。
【0060】
第1の変形例による電子部品1Aは、コイルパターンと重ならない領域において絶縁樹脂層11が部分的に除去されており、絶縁樹脂層11が除去された部分に絶縁樹脂層12が埋め込まれている点において、上記実施形態による電子部品1と相違している。埋め込まれた絶縁樹脂層12は、平坦化層3又はパッシベーション膜5と接しており、この部分において厚みが局所的に厚くなっている。その他の基本的な構成は、上記実施形態による電子部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第1の変形例による電子部品1Aによれば、熱膨張係数の小さい絶縁樹脂層12のボリュームがより増大することから、電子部品1全体の反りがより生じにくくなる。
【0061】
図26は、第2の変形例による電子部品1Bの構造を説明するための断面図である。
【0062】
第2の変形例による電子部品1Bは、絶縁樹脂層11の除去部分において誘電体膜4及びパッシベーション膜5が除去されている点において、第1の変形例による電子部品1Aと相違している。埋め込まれた絶縁樹脂層12は、平坦化層3又は導体パターン21と接している。その他の基本的な構成は、第1の変形例による電子部品1Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2の変形例による電子部品1Bによれば、熱膨張係数の小さい絶縁樹脂層12のボリュームがよりいっそう増大することから、電子部品1全体の反りがよりいっそう生じにくくなる。また、誘電体膜4及びパッシベーション膜5が部分的に除去されることにより、誘電体膜4及びパッシベーション膜5による応力も緩和される。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、本発明をLCフィルタに応用した場合を例に説明したが、本発明の対象となる電子部品がLCフィルタに限定されるものではなく、他の種類の電子部品に応用しても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B 電子部品
2 基板
3 平坦化層
4 誘電体膜
5 パッシベーション膜
11~14 絶縁樹脂層
21~29 導体パターン
24a,24b,25a,26a,28a,E1a,E2a ビア導体
24R,28R,29R 凹部
31~38 犠牲パターン
41~45,51~56,61~64,73,74 開口部
A 空間
E1,E2 端子電極
M1~M4,MM 導体層
P メッキ層
R1~R4 レジスト層
S シード層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図26