(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ドライバ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 8/12 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H02P8/12
(21)【出願番号】P 2022510030
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011016
(87)【国際公開番号】W WO2021193335
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020058197
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮城 亮太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩樹
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208727(JP,A)
【文献】特開2011-117974(JP,A)
【文献】特開平10-285995(JP,A)
【文献】特開平11-262295(JP,A)
【文献】特開昭60-46798(JP,A)
【文献】特開2008-22639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルへの出力電流の供給による発生磁力を用いて可動部を運動させるドライバ装置であって、前記コイルへの電圧印加により前記コイルに前記出力電流を供給する出力段回路と、前記出力段回路を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記出力段回路の制御を通じ前記可動部の運動を停止させて前記可動部の状態を不変に保持する保持制御を実行可能であり、
当該ドライバ装置は、
前記制御回路にて前記保持制御が行われているとき、前記出力段回路による前記コイルへの電力供給状態、前記出力電流、又は、前記出力段回路に流れる電流に基づき、前記保持制御を抗して前記可動部の状態を変化させる外力の付与有無を検出する外力検出部を更に備えた
、ドライバ装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記コイルに供給されるべき前記出力電流の目標を設定する電流設定信号及び前記出力電流の検出結果を示す電流検出信号に基づいて前記出力段回路を制御し、
前記制御回路は、前記保持制御において、前記出力電流の大きさを前記電流設定信号にて設定される目標大きさに近似させるために、給電モード動作と減衰モード動作との組である単位動作を繰り返し実行し、
前記出力段回路は、前記給電モード動作において、前記出力電流の大きさを増大させるための電力供給を前記コイルに向けて行う給電状態とされ、前記減衰モード動作において、前記出力電流の大きさを減衰させるべく前記電力供給を停止する減衰状態とされる
、請求項1に記載のドライバ装置。
【請求項3】
各単位動作において、前記制御回路は、少なくとも所定の強制給電時間、前記給電モード動作を実行し、前記給電モード動作を開始してから前記強制給電時間が経過した後に前記出力電流の大きさが前記目標大きさ以上であることが検出されると前記給電モード動作を終了して、所定の減衰時間分、前記減衰モード動作を実行する
、請求項2に記載のドライバ装置。
【請求項4】
前記外力検出部は、各単位動作において前記出力段回路が前記給電状態となる時間を出力オン時間として検出し、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、前記出力オン時間の変化に基づき前記外力の付与有無を検出する
、請求項2又は3に記載のドライバ装置。
【請求項5】
前記検出対象期間は、第1期間と前記第1期間よりも後の第2期間を含み、
前記外力検出部は、前記第1期間において検出された1以上の出力オン時間に基づき参照オン時間を設定した後、前記参照オン時間と前記第2期間中の前記出力オン時間との比較に基づき、前記第2期間中における前記外力の付与有無を検出する
、請求項4に記載のドライバ装置。
【請求項6】
前記外力検出部は、前記参照オン時間よりも前記第2期間中の前記出力オン時間である評価オン時間の方が短い場合において、前記参照オン時間と前記評価オン時間との差分絶対値が所定の差分閾値以上であるとき、又は、前記参照オン時間に対する前記評価オン時間の比が所定の比閾値以下であるとき、前記第2期間にて前記外力の付与が有ると判断する
、請求項5に記載のドライバ装置。
【請求項7】
前記外力検出部は、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、前記目標大きさよりも大きな電流閾値を用い、前記電流閾値と前記出力電流の大ききとの比較に基づき、前記外力の付与有無を検出する
、請求項2又は3に記載のドライバ装置。
【請求項8】
前記外力検出部は、前記検出対象期間において、前記電流閾値以上の大きさを持つ前記出力電流が検出されたとき、前記外力の付与が有ると判断する
、請求項7に記載のドライバ装置。
【請求項9】
前記外力検出部は、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、前記出力段回路が前記給電状態にあるときの前記出力電流の大きさの増加の傾きに基づき、前記外力の付与有無を検出する
、請求項2又は3に記載のドライバ装置。
【請求項10】
前記外力検出部は、前記検出対象期間において、前記出力段回路が前記給電状態にあるときの前記出力電流の大きさの増加の傾きを前記単位動作ごとに検出し、所定の傾き閾値以上の前記傾きが検出されたとき、前記外力の付与が有ると判断する
、請求項9に記載のドライバ装置。
【請求項11】
前記検出対象期間は、第1期間と前記第1期間よりも後の第2期間を含み、
前記外力検出部は、前記第1期間において検出された1以上の前記傾きに基づき参照傾きを設定した後、前記参照傾きと前記第2期間中の前記傾きとの比較に基づき、前記第2期間中における前記外力の付与有無を検出する
、請求項9に記載のドライバ装置。
【請求項12】
前記外力検出部は、前記参照傾きよりも前記第2期間中の前記傾きである評価傾きの方が大きい場合において、前記参照傾きと前記評価傾きとの差分絶対値が所定の差分閾値以上であるとき、又は、前記参照傾きに対する前記評価傾きの比が所定の比閾値以上であるとき、前記第2期間にて前記外力の付与が有ると判断する
、請求項11に記載のドライバ装置。
【請求項13】
前記出力段回路は、4つの出力トランジスタにて構成されるフルブリッジ回路を有し、
前記出力電流に応じた電流が各出力トランジスタに流れ、
前記外力検出部は、各出力トランジスタに流れる電流の検出結果から各出力トランジスタの電流波形を取得し、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、各出力トランジスタの電流波形と所定電流波形との比較に基づき、前記外力の付与有無を検出する
、請求項1~3の何れかに記載のドライバ装置。
【請求項14】
前記外力検出部は、前記外力の付与が検出されたとき、所定の検知信号を当該ドライバ装置の外部装置に向けて送信する
、請求項1~13の何れかに記載のドライバ装置。
【請求項15】
当該ドライバ装置はステッピングモータ用のドライバ装置であって、
前記コイルはステッピングモータに設けられ、
前記可動部は前記ステッピングモータのロータであって、前記可動部の運動は前記ロータの回転であり、
前記保持制御では前記ロータの角度が不変に保持され、
前記外力は、前記保持制御を抗して前記ロータを回転させる外力である
、請求項1~14の何れかに記載のドライバ装置。
【請求項16】
前記コイルとして複数のコイルが前記ステッピングモータに設けられ、当該ドライバ装置において前記複数のコイルに対し複数のチャネル回路が割り当てられて前記チャネル回路ごとに前記出力段回路及び前記制御回路が設けられ、各チャネル回路において前記出力電流が制御されることで前記ロータが回転する
、請求項15に記載のドライバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、コピー機又はプリンタの紙送り部やスキャナの読み取り部など、様々な用途で用いられる。ステッピングモータに対する一種のドライバ装置(モータドライバ)には、ステッピングモータの各相のモータコイルごとに、出力電流(コイル電流)を供給するためのフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)が設けられる。そして、各相のモータコイルへの出力電流の極性や大きさをステップ的に変えてゆくことでロータをステップ的に回転させる。
【0003】
ステッピングモータ用のドライバ装置では、出力電流の制御のために、PWM定電流制御が一般に利用される。PWM定電流制御により、所望の期間中、各相のモータコイルへの出力電流値が目標電流値の近辺に保たれる。目標電流値を固定すればロータの角度が不変に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータの角度を不変に保持する保持制御が行われているとき、ロータに外力が加わると保持制御に抗してロータが回転することがある。例えば、上記紙送り部の駆動にステッピングモータが用いられる場合において、コピー機又はプリンタのユーザが、紙送り部に挟まった紙を手で引っ張る力は、外力の一種である。外力の付与によりロータが回転した場合、システム側にて認識されるロータの電気角とロータの実際の機械角との間に不整合が生じ、以後の制御が不安定になることがある。また、外力の付与により機構的な故障又は劣化が発生することもあり得る。
【0006】
仮に、このような外力の付与有無を検出することができたならば、必要な対応を行うことが可能になるため利便性が高まると考えられる。エンコーダを別途に設けておけば外力の付与有無を検出することが可能であるが、エンコーダの別途設置はコスト増に繋がる。尚、ステッピングモータに注目してドライバ装置に関わる事情を説明したが、ソレノイドアクチュエータなどを駆動制御するドライバ装置においても同様の事情が当てはまり得る。
【0007】
本開示は、可動部への外力の付与有無を検出可能とするドライバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るドライバ装置は、コイルへの出力電流の供給による発生磁力を用いて可動部を運動させるドライバ装置であって、前記コイルへの電圧印加により前記コイルに前記出力電流を供給する出力段回路と、前記出力段回路を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記出力段回路の制御を通じ前記可動部の運動を停止させて前記可動部の状態を不変に保持する保持制御を実行可能であり、当該ドライバ装置は、前記制御回路にて前記保持制御が行われているとき、前記出力段回路による前記コイルへの電力供給状態、前記出力電流、又は、前記出力段回路に流れる電流に基づき、前記保持制御を抗して前記可動部の状態を変化させる外力の付与有無を検出する外力検出部を更に備えた構成である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、可動部への外力の付与有無を検出可能とするドライバ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るモータ駆動システムの全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るモータドライバの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係り、フルステップ励磁モードの説明図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係り、フルステップ励磁モードに関するトルクベクトル図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係るPWM定電流制御の説明図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、給電モードからスロー給電モードへの遷移図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、給電モードからファスト給電モードへの遷移図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、モータコイルへの出力電流波形において外力付与に基づき電流の盛り上がりが生じる現象を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係り、出力電流が目標電流値を超えて上昇する様子を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電流盛り上がり現象に対応する特定電流波形の第1検出方法を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、検出対象期間、基準期間及び評価期間の関係を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電流盛り上がり現象に対応する特定電流波形の第2検出方法を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、電流盛り上がり現象に対応する特定電流波形の第3検出方法を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、各出力トランジスタに流れる電流を検出するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“160”によって参照される外力検出部は(
図1参照)、外力検出部160と表記されることもあるし、検出部160と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0012】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体にて形成される。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
【0013】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0014】
図1に、本開示の実施形態に係るモータ駆動システムSYSの全体構成図を示す。モータ駆動システムSYSは、ドライブ装置としてのモータドライバ100と、ステッピングモータ200と、MPU(Micro Processing Unit)300と、電流検出用抵抗R[1]及びR[2]と、を備える。
【0015】
図2はモータドライバ100の外観斜視図である。モータドライバ100は、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)である。モータドライバ100の筐体に複数の外部端子が露出して設けられている。
図1の構成例において、モータドライバ100に設けられる上記複数の外部端子には、電源端子VCC[1]及びVCC[2]と、出力端子A
OUT[1]、B
OUT[1]、A
OUT[2]及びB
OUT[2]と、抵抗接続端子RNF[1]及びRNF[2]と、グランド端子GNDとが含まれると共に、基準電圧入力端子TM
REF及び制御端子群TM
CNTを構成する各端子が含まれる。これら以外の端子も上記複数の外部端子に含まれうる。尚、
図2に示されるモータドライバ100の外部端子の数及びモータドライバ100の外観は例示に過ぎない。
【0016】
ステッピングモータ200は複数相分のモータコイル(電機子巻線)と、ロータ210と、を備える。本実施形態では、ステッピングモータ200が2相のステッピングモータであることが想定されており、2相分のモータコイルとしてモータコイルL[1]及びL[2]がステッピングモータ200に設けられる。但し、ステッピングモータ200として、3つのモータコイルを有する3相のステッピングモータや、5つのモータコイルを有する5相のステッピングモータを採用することもできる。
【0017】
MPU300は、モータドライバ100に制御信号CNTを送信することを通じてモータドライバ100の動作を制御する。モータドライバ100は、制御信号CNTに基づいてステッピングモータ200を駆動制御する。つまり、MPU300は、モータドライバ100を制御することを通じてロータ210の回転を制御する処理装置の例である。制御信号CNTは制御端子群TMCNTに供給される。制御信号CNTは複数の制御信号から成り、複数の制御信号の内、1以上の制御信号はMPU300から供給されないものであっても良い。即ち例えば、制御信号CNTを構成する複数の制御信号の内、1以上の制御信号は、プルダウン又はプルアップによりローレベル又はハイレベルに固定されるものであって良い。
【0018】
モータドライバ100は、入力バッファ111と、トランスレータ112と、デジタル/アナログ変換器であるDAC113と、複数のチャネル回路と、外力検出部160と、を備える。モータドライバ100は、ステッピングモータ200に設けられるモータコイルの個数分のチャネル回路を備える。即ち、ステッピングモータ200にN個のモータコイルが設けられるのであれば、各モータコイルに対応付けて、計N個のチャネル回路がモータドライバ100に設けられる(Nは2以上の任意の整数)。ここでは、ステッピングモータ200に2つのモータコイルL[1]及びL[2]が設けられていることを想定しているため、モータコイルL[1]に対応するチャネル回路CH[1]とモータコイルL[2]に対応するチャネル回路CH[2]とがモータドライバ100に設けられる。この他、特に図示しないが、発振部及びレギュレータや各種の保護回路などがモータドライバ100に設けられる。
【0019】
モータドライバ100において、各チャネル回路には制御回路及び出力段回路が設けられる。チャネル回路CH[i]に設けられる制御回路及び出力段回路を、夫々、制御回路120[i]及び出力段回路130[i]と称する。iは任意の整数であり、制御回路120[i]は、“i=1”であれば制御回路120[1]を表し、“i=2”であれば制御回路120[2]を表す。出力段回路130[i]等も同様である。各チャネル回路において、制御回路120[i]にはコンパレータ121[i]及び制御ロジック122[i]が設けられる。各チャネル回路において、出力段回路130[i]にはプリドライバ131[i]及びフルブリッジ回路132[i](Hブリッジ回路)が設けられる。
【0020】
各チャネル回路に対してモータコイル及び電流検出用抵抗が接続される。チャネル回路CH[i]に対応するモータコイル及び電流検出用抵抗はモータコイルL[i]及び電流検出用抵抗R[i]である。以下、或るチャネル回路と、当該チャネル回路に対応するモータコイル及び電流検出用抵抗とを含む回路を、チャネルと称することがある。チャネル回路CH[1]、モータコイルL[1]及び電流検出用抵抗R[1]にて構成されるチャネルを第1チャネルと称し、チャネル回路CH[2]、モータコイルL[2]及び電流検出用抵抗R[2]にて構成されるチャネルを第2チャネルと称する。端子AOUT[i]、BOUT[i]、RNF[i]及びVCC[i]は第iチャネルに属する端子(第iチャネルに対応する端子)である。モータドライバ100の外部に設けられた電源回路(不図示)から電源端子VCC[1]及びVCC[2]に対して共通の電源電圧VCCが供給される。電源電圧VCCは正の直流電圧(例えば24V)である。モータドライバ100内の各回路は電源電圧VCCに基づいて駆動する。グランド端子GNDはグランドに接続される。
【0021】
チャネル回路CH[1]及びCH[2]の回路構成は互いに同じであり、チャネル回路、モータコイル及び電流検出用抵抗間の接続関係は複数のチャネル間で共通である。故に、本実施形態では、適宜、任意の整数を表す記号iを用いて、第iチャネルの構成や第iチャネルにおける電圧及び電流などを説明する。
【0022】
出力端子AOUT[i]はモータコイルL[i]の一端に接続され、出力端子BOUT[i]はモータコイルL[i]の他端に接続される。出力端子AOUT[i]及びBOUT[i]間に流れる電流(従ってモータコイルL[i]に流れる電流)を出力電流IOUT[i]と称する。出力電流IOUT[i]が出力端子AOUT[i]からコイルL[i]を介し出力端子BOUT[i]に向けて流れるとき、出力電流IOUT[i]の極性は正であるとし、それと逆向きの出力電流IOUT[i]の極性は負であるとする。出力電流IOUT[1]及びIOUT[2]の極性を変えてゆくことにより、又は、出力電流IOUT[1]及びIOUT[2]の大きさ及び極性を変えてゆくことにより、コイルL[1]及びL[2]に発生した磁力に基づきロータ210がステップ的に回転する。
【0023】
電流検出用抵抗R[i]はモータドライバ100の外部に設けられる。抵抗接続端子RNF[i]とグランドとの間に電流検出用抵抗R[i]が接続される。電流検出用抵抗R[i]はモータコイル[i]に流れる電流を検出し、検出した電流を電圧に変換する。抵抗接続端子RNF[i]における電圧を検出電圧VRNF[i]と称する。抵抗R[1]及びR[2]は同じ抵抗値(例えば0.1Ω~0.3Ω)を有する(但し誤差は有り得る)。電流検出用抵抗R[i]により電流検出部が構成される。電流検出部は出力電流IOUT[i]を検出して出力電流IOUT[i]の検出結果を示す電流検出信号を生成する。出力電流IOUT[i]が抵抗R[i]を流れている期間において、検出電圧VRNF[i]は出力電流IOUT[i]に比例した電圧値を持つため、電流検出信号として機能する。尚、電流検出用抵抗R[i]はモータドライバ100に内蔵されていても良い。この場合、電流検出部がモータドライバ100に内蔵されることになる。
【0024】
入力バッファ111、トランスレータ112及びDAC113は、第1及び第2チャネルに兼用される回路である。
【0025】
入力バッファ111は、オペアンプによるボルテージフォロアであり、基準電圧入力端子TMREFに対して供給される基準電圧Vrefを、低インピーダンスでDAC113に出力する。基準電圧Vrefは正の直流電圧である。後述の説明から明らかとなるが、基準電圧Vrefにより出力電流IOUT[1]及びIOUT[2]の大きさの最大値が定まる。
【0026】
トランスレータ112は制御端子群TMCNTに接続されて制御信号CNTの入力を受ける。制御信号CNTによりモータ200の駆動方式及び励磁モードやロータ210の回転方向が定められ、トランスレータ112は、制御信号CNTに基づいて内部制御信号CNTV[1]、CNTV[2]、CNTP[1]及びCNTP[2]を生成及び出力する。各チャネルにおいて、内部制御信号CNTV[i]に応じて出力電流IOUT[i]の大きさが制御され、内部制御信号CNTP[i]に応じて出力電流IOUT[i]の極性(出力論理)が制御される。
【0027】
DAC113は、入力バッファ111を通じて供給された基準電圧Vrefに基づき、“VREF[1]=kDAC[1]×Vref”及び“VREF[2]=kDAC[2]×Vref”にて表される基準電圧VREF[1]及びVREF[2]を生成する。ここで、係数kDAC[i]は内部制御信号CNTV[i]にて定まる。例えば、内部制御信号CNTV[i]は2ビットのデジタル信号であり、係数kDAC[i]は、内部制御信号CNTV[i]に応じて、“0”、“1/3”、“2/3”、“1”の何れかの値を選択的にとる。この際、2ビットのデジタル/アナログ変換器によりDAC113を構成できる。但し、DAC113のビット数は、これに限定されない。
【0028】
制御回路120[1]に対し、第1チャネル用の信号として、基準電圧VREF[1]、検出電圧VRNF[1]及び内部制御信号CNTP[i]が入力される。制御回路120[2]に対し、第2チャネル用の信号として、基準電圧VREF[2]、検出電圧VRNF[2]及び内部制御信号CNTP[2]が入力される。
【0029】
制御回路120[i]は、基準電圧VREF[i]、検出電圧VRNF[i]及び内部制御信号CNTP[i]に基づき、出力電流IOUT[i]が基準電圧VREF[i]に応じた大きさを有し且つ出力電流IOUT[i]の極性が内部制御信号CNTP[i]に応じた極性を有するように、出力段回路130[i]を制御する。
【0030】
具体的には、制御回路120[i]において、コンパレータ121[i]の非反転入力端子に基準電圧VREF[i]が入力され、コンパレータ121[i]の反転入力端子に検出電圧VRNF[i]が入力される。コンパレータ121[i]は電圧VREF[i]及びVRNF[i]を比較し、比較結果を表す比較結果信号SCMP[i]を制御ロジック122[i]に出力する。比較結果信号SCMP[i]は、基準電圧VREF[i]が検出電圧VRNF[i]より高ければハイレベルとなり、基準電圧VREF[i]が検出電圧VRNF[i]より低ければローレベルとなる。“VREF[i]=VRNF[1]”のとき、比較結果信号SCMP[i]はハイレベル又はローレベルとなる。
【0031】
制御ロジック122[i]は、比較結果信号SCMP[i]及び内部制御信号CNTP[i]に基づいてフルブリッジ回路132[i]の各出力トランジスタのオン/オフ状態を指定するモータ駆動信号を生成し、生成したモータ駆動信号をプリドライバ131[i]に出力する。プリドライバ131[i]はモータ駆動信号に従ってフルブリッジ回路132[i]を形成する複数の出力トランジスタを個別にオン又はオフする。この際、制御ロジック122[i]は、出力電流IOUT[i]が端子RNF[i]から抵抗R[i]を通じてグランドへと流れている期間における比較結果信号SCMP[i]に基づいて、当該期間中の検出電圧VRNF[i]が基準電圧VREF[i]に近づくように(理想的には実質的に一致するように)、且つ、出力電流IOUT[i]の極性が内部制御信号CNTP[i]にて指定された極性と一致するように、モータ駆動信号を生成する。
【0032】
このように、基準電圧VREF[i]及び内部制御信号CNTP[i]により、モータコイルL[i]に供給されるべき出力電流IOUT[i]の目標を設定する電流設定信号(換言すれば電流指令信号)が形成される。検出電圧VRNF[i]が基準電圧VREF[i]に近づくように(理想的には実質的に一致するように)制御されるため、出力電流IOUT[i]は基準電圧VREF[i]に比例した大きさを持つ(但し、何らかの事情により当該制御に反した大きさを出力電流IOUT[i]が持つこともある;詳細は後述)。つまり、基準電圧VREF[i]により出力電流IOUT[i]の大きさの目標が設定される。加えて、内部制御信号CNTP[i]により出力電流IOUT[i]の極性の目標が設定される。
【0033】
フルブリッジ回路132[1]は、Pチャネル型のMOSFETとして構成された出力トランジスタM1[1]及びM2[1]と、Nチャネル型のMOSFETとして構成された出力トランジスタM3[1]及びM4[1]と、から成る。フルブリッジ回路132[2]は、Pチャネル型のMOSFETとして構成された出力トランジスタM1[2]及びM2[2]と、Nチャネル型のMOSFETとして構成された出力トランジスタM3[2]及びM4[2]と、から成る。Pチャネル型のMOSFETにはドレインからソースに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが付加され、Nチャネル型のMOSFETにはソースからドレインに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが付加されるが、
図1では、各寄生ダイオードの図示を省略している。
【0034】
フルブリッジ回路132[i]において、出力トランジスタM1[i]及びM2[i]の各ソースは電源端子VCC[i]に共通接続され、出力トランジスタM1[i]及びM2[i]の各ソースに電源電圧VCCが加わる。フルブリッジ回路132[i]において、出力トランジスタM1[i]及びM3[i]の各ドレインは出力端子AOUT[i]に共通接続され、出力トランジスタM2[i]及びM4[i]の各ドレインは出力端子BOUT[i]に共通接続され、出力トランジスタM3[i]及びM4[i]の各ソースは抵抗接続端子RNF[i]に共通接続される。プリドライバ131[i]は、制御ロジック122[i]からのモータ駆動信号に従って出力トランジスタM1[i]~M4[i]の各ゲート電位を制御することで、出力トランジスタM1[i]~M4[i]を個別にオン又はオフとする。
【0035】
尚、ここでは、Pチャネル型のMOSFETとNチャネル型のMOSFETを用いてフルブリッジ回路132[i]を構成する例を挙げたが、フルブリッジ回路132[i]を構成する出力トランジスタを全てNチャネル型のMOSFETにしても良い。この際、必要な回路変更が実施される。また、MOSFETではなく、バイポーラトランジスタを用いてフルブリッジ回路132[i]を構成するようにしても良い。
【0036】
モータドライバ100は、制御信号CNTに応じて複数の励磁モードの何れかにてステッピングモータ200を駆動させることができる。上記複数の励磁モードには、ロータ210を電気角90°ずつステップ的に回転させるフルステップ励磁モード、ロータ210を電気角45°ずつステップ的に回転させるハーフステップ励磁モード、及び、ロータ210を電気角22.5°ずつステップ的に回転させるクォータステップ励磁モードが含まれる。
【0037】
図3を参照し、フルステップ励磁モードを説明する。フルステップ励磁モードの一態様では、
図3に示す如く、状態ST
1、ST
2、ST
3及びST
4が、この順番で実現される。更に、状態ST
1、ST
2、ST
3及びST
4の組が繰り返し実現される。従って、状態ST
1を起点にして考えると、状態ST
1、ST
2、ST
3及びST
4が、この順番で実現され、状態ST
4の後、状態ST
1が実現されて、再び、状態ST
1、ST
2、ST
3及びST
4が、この順番で実現される。
【0038】
出力電流IOUT[i]の値の目標を目標電流値と称する。出力電流IOUT[1]に対する目標電流値を記号“ITG[1]”で表し、出力電流IOUT[2]に対する目標電流値を記号“ITG[2]”で表す。目標電流値ITG[i]の大きさ(絶対値)は出力電流IOUT[i]の大きさの目標(以下、目標大きさと称する)に相当し、基準電圧VREF[i]で定まる。目標電流値ITG[i]の極性は出力電流IOUT[i]の極性の目標(以下、目標極性と称する)に相当し、内部制御信号CNTP[i]で定まる。出力電流IOUT[i]と同様に、目標電流値ITG[i]は極性を有する。抵抗R[i]の抵抗値を記号“R[i]”で表せば“|ITG[i]|=VREF[i]/R[i]”である。フルステップ励磁モードにおいて、目標電流値ITG[1]及びITG[2]の大きさ(絶対値)は共に所定の電流値IREFであり、一定である(IREF>0)。故に、フルステップ励磁モードにおいて、基準電圧VREF[1]及びVREF[2]は一定電圧に固定される(例えば基準電圧Vrefと同じ電圧に固定される)。電流値IREFは基準電圧Vrefに比例した正の値を持つ。
【0039】
具体的には、
状態ST1において(ITG[1],ITG[2])=(IREF,IREF)、
状態ST2において(ITG[1],ITG[2])=(-IREF,IREF)、
状態ST3において(ITG[1],ITG[2])=(-IREF,-IREF)、且つ、
状態ST4において(ITG[1],ITG[2])=(IREF,-IREF)、である。
故に、制御回路120[1]及び120[2]は、
状態ST1において(IOUT[1],IOUT[2])=(IREF,IREF)、
状態ST2において(IOUT[1],IOUT[2])=(-IREF,IREF)、
状態ST3において(IOUT[1],IOUT[2])=(-IREF,-IREF)、且つ、
状態ST4において(IOUT[1],IOUT[2])=(IREF,-IREF)となるように、基準電圧VREF[1]及びVREF[2]、検出電圧VRNF[1]及びVRNF[2]並びに内部制御信号CNTP[1]及びCNTP[2]に基づき、出力段回路130[1]及び130[2]を制御する。
【0040】
図4は、フルステップ励磁モードにおける、電気角を単位としたステッピングモータ200のトルクベクトル図である。ベクトルVEC
1、VEC
2、VEC
3、VEC
4は、夫々、状態ST
1、ST
2、ST
3、ST
4におけるトルクベクトルである。
図3に示す如く状態ST
1、ST
2、ST
3、ST
4の組を繰り返し実現することによりロータ210は第1回転方向に電気角で90°ずつステップ的に回転し、この際、電気角の変化量に応じた角度ずつロータ210の機械角がステップ的に第1回転方向に回転する。
図3とは逆に、状態ST
4、ST
3、ST
2、ST
1の順番で各状態を実現することもでき、その場合、ロータ210は第1回転方向とは逆の第2回転方向に電気角で90°ずつステップ的に回転し、この際、電気角の変化量に応じた角度ずつロータ210の機械角がステップ的に第2回転方向に回転する。
【0041】
フルステップ励磁モードでは、上述したように、各チャネルの目標電流値ITG[i]が“IREF”及び“-IREF”の2つの電流値間で切り替わる。ハーフステップ励磁モードやクォータステップ励磁モードにおける出力電流IOUT[1]及びIOUT[2]の制御方法は、フルステップ励磁モードにおけるそれと同様に公知であるため詳細な説明を割愛するが、ハーフステップ励磁モードでは各チャネルの目標電流値ITG[i]が“IREF”、“0”及び“-IREF”の計3つの電流値間で切り替わり、クォータステップ励磁モードでは各チャネルの目標電流値ITG[i]が“IREF”、“(2/3)IREF”、“(1/3)IREF”、“0” “-(1/3)IREF”、“-(2/3)IREF”及び“-IREF”の計7つの電流値間で切り替わる。
【0042】
モータドライバ100は、PWM定電流制御により出力電流IOUT[i]の値を目標電流値ITG[i]の近辺に保つ。PWMは“pulse width modulation”の略称である。
【0043】
図5を参照してPWM定電流制御を説明する。説明の具体化のため、今、“I
TG[i]>0”であって、正の出力電流I
OUT[i]が流れていることを想定する。
【0044】
PWM定電流制御において、制御回路120[i]は、出力電流IOUT[i]が抵抗R[i]に流れているときの検出電圧VRNF[i]を参照し、“VREF[i]>VRNF[i]”であれば検出電圧VRNF[i]が基準電圧VREF[i]に達するまで(即ち、出力電流IOUT[i]の値が目標電流値ITG[i]に達するまで)、第iチャネルの動作モードを給電モードとし、検出電圧VRNF[i]が基準電圧VREF[i]に達すると(即ち、出力電流IOUT[i]の値が目標電流値ITG[i]に達すると)第iチャネルの動作モードを給電モードから減衰モードに切り替える。減衰モードへの切り替え後、予め定められた減衰時間TDECAYが経過すると、第iチャネルの動作モードが減衰モードから給電モードに戻される。
【0045】
制御回路120[i]は、第iチャネルの動作モードが給電モードとなっている期間において、出力段回路130[i]を給電状態にして給電モード動作を実行し、第iチャネルの動作モードが減衰モードとなっている期間において、出力段回路130[i]を減衰状態にして減衰モード動作を実行する。給電状態及び給電モード動作は出力電流IOUT[i]の大きさを増大させるための状態及び動作であり、減衰状態及び減衰モード動作は出力電流IOUT[i]の大きさを減衰させるための状態及び動作である。互いに隣接して実行される1つの給電モード動作と1つの減衰モード動作との組を単位動作と称する。PWM定電流制御では、単位動作が繰り返されることで、出力電流IOUT[i]の大きさが絶対値|ITG[i]|以下で(即ち目標電流値|ITG[i]|の大きさ以下で)目標電流値ITG[i]近辺に保たれる。
【0046】
減衰モードとしてスロー減衰モードとファスト減衰モードとがある。
図6に給電モードからスロー減衰モードへの切り替わりの様子を示す。
図7に給電モードからファスト減衰モードへの切り替わりの様子を示す。但し、
図6及び
図7では、“I
TG[i]>0”であることが想定されている。
図6及び
図7を参照し、“I
TG[i]>0”であるときの給電モード、スロー減衰モード及びファスト減衰モードを説明する。
【0047】
第iチャネルにおいて、給電モードでは出力段回路130[i]が給電状態とされる。出力段回路130[i]が給電状態であるとはフルブリッジ回路132[i]が給電状態にあることを意味する。
図6及び
図7において破線による矢印付き折れ線621は給電状態における出力電流I
OUT[i]の流れを表している。出力段回路130[i]の給電状態では、出力トランジスタM1[i]及びM4[i]がオン状態とされ且つ出力トランジスタM2[i]及びM3[i]がオフ状態とされる。このため、第iチャネルの給電モードでは、電源電圧VCCが加わる端子から出力トランジスタM1[i]、モータコイルL[i]、出力トランジスタM4[i]及び抵抗R[i]を経由してグランドに向かう正の出力電流I
OUT[i]が流れ、出力電流I
OUT[i]の大きさは時間経過と共に増大してゆく。出力段回路130[i]を給電状態にすることで実現される動作が給電モード動作に相当する。
【0048】
第iチャネルにおいて、スロー減衰モードでは出力段回路130[i]が減衰状態の一種であるスロー減衰状態とされる。出力段回路130[i]がスロー減衰状態であるとはフルブリッジ回路132[i]がスロー減衰状態にあることを意味する。
図6において破線による矢印付き折れ線622はスロー減衰状態における出力電流I
OUT[i]の流れを表している。出力段回路130[i]のスロー減衰状態では、出力トランジスタM3[i]及びM4[i]がオン状態とされ且つ出力トランジスタM1[i]及びM2[i]がオフ状態とされる。このため、第iチャネルのスロー減衰モードでは、出力トランジスタM3[i]、モータコイルL[i]及び出力トランジスタM4[i]を循環する経路にて正の出力電流I
OUT[i]が流れ、出力電流I
OUT[i]の大きさは時間経過と共に減少してゆく。出力段回路130[i]をスロー減衰状態にすることで実現される動作は減衰モード動作の一種である。尚、第iチャネルのスロー減衰モードにおいて出力トランジスタM3[i]がオフ状態とされていても良い。
【0049】
第iチャネルにおいて、ファスト減衰モードでは出力段回路130[i]が減衰状態の一種であるファスト減衰状態とされる。出力段回路130[i]がファスト減衰状態であるとはフルブリッジ回路132[i]がファスト減衰状態にあることを意味する。
図7において破線による矢印付き折れ線623はファスト減衰状態における出力電流I
OUT[i]の流れを表している。出力段回路130[i]のファスト減衰状態では、出力トランジスタM3[i]がオン状態とされ且つ出力トランジスタM1[i]、M2[i]及びM4[i]がオフ状態とされる。このため、第iチャネルのファスト減衰モードでは、グランドから抵抗R[i]、出力トランジスタM3[i]、モータコイルL[i]及び出力トランジスタM2[i](出力トランジスタM2[i]の寄生ダイオード)を経由して電源電圧VCCが加わる端子に向かう正の出力電流I
OUT[i]が流れ、出力電流I
OUT[i]の大きさは時間経過と共に減少してゆく。出力段回路130[i]をファスト減衰状態にすることで実現される動作は減衰モード動作の一種である。尚、第iチャネルのファスト減衰モードにおいて出力トランジスタM2[i]がオン状態とされても良いし、出力トランジスタM3[i]がオフ状態とされていても良い。第iチャネルのファスト減衰モードにおいて、出力トランジスタM1[i]~M4[i]が全てオフ状態とされていても良い。また、特に図示しないが、給電状態からスロー減衰状態又はファスト減衰状態へ遷移させる際において、及び、その逆の遷移において、直列接続された出力トランジスタが同時にオンとなることを確実に防止するためのデッドタイムが適宜挿入される。
【0050】
スロー減衰モードとファスト減衰モードとを比較したとき、スロー減衰モードにおける出力電流IOUT[i]の減衰率は、ファスト減衰モードにおける出力電流IOUT[i]の減衰率よりも小さい。周知の如く、スロー減衰モード及びファスト減衰モードには夫々にメリット及びデメリットがある。各単位動作の減衰モード動作において、出力段回路130[i]の状態をスロー減衰状態とする期間と出力段回路130[i]の状態をファスト減衰状態とする期間とを混在させたミックス減衰モード動作が行われるようにしても良い。制御信号CNTに含まれる減衰モード設定信号に基づき、減衰モード動作として、スロー減衰状態のみによるスロー減衰モード動作、ファスト減衰状態のみによるファスト減衰モード動作、及び、ミックス減衰モード動作の何れを用いるのかが設定される。“ITG[i]>0”であるときの各モード動作を説明したが、“ITG[i]<0”であるときも同様である。
【0051】
何れにせよ、第iチャネルの給電モード動作において、出力段回路130[i]は、出力電流IOUT[i]の大きさを増大させるための電力供給をモータコイルL[i]に向けて行う給電状態とされ、第iチャネルの減衰モード動作において、出力段回路130[i]は、出力電流IOUT[i]の大きさを減衰させるべく上記電力供給(出力電流IOUT[i]の大きさを増大させるための電力供給)を停止する減衰状態とされる。
【0052】
ステッピングモータ200では、ロータ210の回転を停止させてロータ210の角度を不変に保持する制御(以下、保持制御と称する)を行うことができる。ロータ210の角度とは、所定の固定軸から見たロータ210の電気角又は機械角を指す。ロータ210の電気角が不変に保持されるとき、当然、ロータ210の機械角も不変に保持される。保持制御は、目標電流値ITG[1]及びITG[2]の夫々を一定に保ったまま各チャネルでPWM定電流制御を行うことに相当し、保持制御の実行主体は制御回路120[1]及び120[2]である。但し、保持制御が行われていても、ロータ210に対し一定の大きさ以上の外力が付与されると、ロータ210が回転する。本実施形態において、外力とは、制御回路120[1]及び120[2]により保持制御が行われているときに保持制御に抗してロータ210を回転させる(即ちロータ210の電気角及び機械角を変化させる)力であって、ステッピングモータ200の外部(モータ駆動システムSYSの外部)から与えられる力を指す。例えば、コピー機又はプリンタにおける紙送り部の駆動にステッピングモータ200が用いられる場合において、コピー機又はプリンタのユーザが、紙送り部に挟まった紙を手で引っ張る力は、外力の一種である。
【0053】
外力の付与によりロータ210が回転した場合、モータ駆動システムSYSにて認識されるロータ210の電気角とロータ210の実際の機械角との間に不整合が生じ、以後の制御が不安定になることがある。また、外力の付与により機構的な故障又は劣化が発生することもあり得る。仮に、このような外力の付与有無を検出することができたならば、必要な対応を行うことが可能になるため利便性が高まると考えられる。これを考慮し、モータドライバ100には、上記外力の付与有無を検出するための外力検出部160が設けられている。
【0054】
図8を参照し、外力が付与されたときの出力電流の挙動について説明する。
図8では、第1チャネルが注目され、出力電流I
OUT[1]の波形が示されている。時間の進行につれて、タイミングt
A1、t
A2、t
A3が、この順番で訪れる。少なくともタイミングt
A1及びt
A3間において、“I
TG[1]=I
REF”及び“I
TG[2]=I
CONST”にて保持制御が行われている。I
CONSTは一定の電流値(例えばI
REF又は(-I
REF))を表す。即ち、少なくともタイミングt
A1及びt
A3間において、目標電流値I
TG[1]を電流値I
REFに保ち且つ目標電流値I
TG[2]を電流値I
CONSTに保つことでロータ210の角度を不変に保持する保持制御が行われている。
図8の例では、タイミングt
A1及びt
A3間において原則は外力が付与されておらず、タイミングt
A2を中心とする微小な外力付与期間中においてのみ外力がロータ210に付与されて外力によりロータ210が回転する。
【0055】
保持制御を実現するためのPWM定電流制御により、外力が付与されていない期間では、出力電流I
OUT[1]が目標電流値I
TG[1]近辺に保たれる。但し、上記外力付与期間では、外力に基づくロータ210の回転によりステッピングモータ200が発電機として機能してステッピングモータ200にてエネルギが発生し、発生したエネルギにより出力電流I
OUT[1]が増大する。尚、
図8では、外力付与に応答して出力電流I
OUT[1]が1つのピークを持つような波形例が示されているが、外力付与によるロータ210の回転に仕方によっては複数のピークが発生することもある。
【0056】
図9に上記外力付与期間の一部の期間(t
A21から3単位動作分の期間)における出力電流I
OUT[1]の波形を示す。一般に、フルブリッジ回路を構成する各出力トランジスタの状態がオン及びオフ間で切り替わるとき、スパイクノイズが生じる。このスパイクノイズの影響をPWM定電流制御において抑制すべく、各チャネルにおいて、減衰状態から給電状態に切り替わった後、所定の強制給電時間T
FORCE(最小オン時間)分は、出力段回路が強制的に給電状態とされる。強制的に給電状態とされることを強制給電と称する。
【0057】
第iチャネルに注目して強制給電に関わる動作を説明する。第iチャネルにおいて、強制給電では、検出電圧V
RNF[i]に依らず(即ち基準電圧V
REF[i]及び検出電圧V
RNF[i]間の高低関係に依らず)出力段回路130[i]が給電状態とされて上述の給電モード動作が実行される。そして、第iチャネルにおいて、給電モード動作を開始してから強制給電時間T
FORCEが経過した後に、出力電流I
OUT[i]の大きさが目標電流値I
TG[i]の大きさ以上となっていることがコンパレータ121[i]により検出されると(即ち比較結果信号S
CMP[i]がローレベルであると)給電モードから減衰モードに切り替えられて、所定の減衰時間T
DECAY分、減衰モード動作を実行する。減衰時間T
DECAY分だけ減衰モード動作が実行されると、再び給電モード動作が開始され、少なくとも強制給電時間T
FORCEは給電モード動作が実行される。
図9では、タイミングt
A22及びt
A23間の期間と、タイミングt
A24及びt
A25間の期間とにおいて強制給電が行われている。本来、強制給電中に出力電流I
OUT[i]の大きさが目標電流値I
TG[i]の大きさを超えることが無い程度に、強制給電時間T
FORCEは微小な時間に設定されている。
【0058】
但し、“I
TG[1]=I
REF”であるときの第1チャネルに注目した
図9では、タイミングt
A22以降において外力の付与により出力電流I
OUT[1]が嵩上げされて目標電流値I
TG[1](ここではI
REF)を超えて上昇している。
図9の例では、タイミングt
A22以降の減衰モード中に出力電流I
OUT[1]が減少しているが、外力に基づくロータ210の回転の状態によっては、減衰モードにおいてさえも、出力電流I
OUT[1]が上昇することもある。このように、出力電流I
OUT[1]の大きさが目標電流値I
TG[1]の大きさ(ここではI
REF)を上回る現象を、電流盛り上がり現象と称する。本実施形態で注目する電流盛り上がり現象は、保持制御が行われているときに外力の付与に基づき生じるものである。外力に基づく電流盛り上がり現象は、減衰モードとして、スロー減衰モード、ファスト減衰モード及びミックス減衰モードの何れが用いられた場合でも発生しうる。
【0059】
目標電流値ITG[1]が正である時に注目したが、電流盛り上がり現象は、目標電流値ITG[1]が負である時にも同様に発生しうる。つまり、電流盛り上がり現象は、出力電流IOUT[1]の大きさが、保持制御に抗し、目標電流値ITG[1]の大きさ(目標大きさである|IREF|)を超えて上昇する現象である。第1チャネルに注目したが、電流盛り上がり現象は、第1及び第2チャネルの夫々において発生しうる。
【0060】
図1に示される外力検出部160は、出力電流I
OUT[i]の波形において所定の電流盛り上がり判定条件を満たす電流波形である特定電流波形の発生有無を検出できる。この際、外力検出部160は、保持制御が行われているときに、保持制御に抗して出力電流I
OUT[i]の大きさが目標大きさ(例えばI
REF)を超えて上昇する波形(
図8のタイミングt
A2近辺の波形に対応)を、上記特定電流波形として検出する。ここでの特定電流波形は、外力に基づく電流盛り上がり現象による電流波形であり、外力検出部160は、特定電流波形の発生が検出されたとき、外力の付与有りと判断する。つまり、外力検出部160は、特定電流波形の発生有無の検出を通じて外力の付与有無を検出できる。特定電流波形の発生が検出されることと、外力の付与が有ると検出されること(換言すれば外力の付与有りと判断される)ことは、等価であると考えて良い。微小な盛り上がりによる電流波形を特定電流波形として検出することを防止すべく、電流盛り上がり判定条件が設定される。後述の任意の実施例において、特定電流波形と判断される電流波形(即ち外力の付与有りと判断される電流波形)は電流盛り上がり判定条件を満たしている。外力検出部160は、出力電流I
OUT[1]及びI
OUT[2]の少なくとも一方の波形において特定電流波形の発生が検出されたとき、外力の付与有りと判断し、自身が管理するフラグFLG(不図示)に“1”を代入する。フラグFLGの初期値は“0”であり、特定電流波形が発生していると判断されない限り(即ち外力が付与されていると判断されない限り)、フラグFLGの値は“0”に維持される。
【0061】
フラグFLGに“1”が代入されると、外力検出部160は、外力付与が検出されたことを示す所定の検知信号をMPU300に送信することができる。外力検出部160は、フラグFLGに“1”が代入されているときMPU300から所定の要求信号を受信したことに応答して上記検知信号を送信しても良いし、要求信号の受信等を必要とすることなくフラグFLGに“1”が代入されたことを契機に上記検知信号を送信しても良い。検知信号の送信後、フラグFLGに“0”が代入されても良いし、フラグFLGの値が“1”にラッチされても良い。
【0062】
外力検出部160を設けておくことにより、システム側で意図していない外力によるロータ210の回転をモータドライバ100及びモータ駆動システムSYS内で認知することが可能となり、必要な対応をとることが可能となる。例えば、上述したような紙送り部に関する外力の付与に対してはユーザへ警告を出したり、所定のエラー処理を行うといったことが可能となる。これは、モータ駆動システムSYSを組み込んだ装置の安定性につながる。
【0063】
また、外力の付与が検出されたとき、その後の任意のタイミングにおいて、制御回路120[1]及び120[2]が所定の初期化処理を実行する、といったことも可能である。これにより外力が付与された後のステッピングモータ200の安定駆動が担保される。初期化処理はロータ210の電気角を所定の初期角度に設定するための処理であり、モータドライバ100の起動時に実行されるものと同じであって良い。
【0064】
以下、複数の実施例の中で、モータドライバ100(特に外力検出部160)の具体的な動作例、応用技術及び変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用され、各実施例において、上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0065】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。第1実施例に係る外力検出部160は、第1検出方法を用いて外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。
図10は第1検出方法を説明するための模式図である。
【0066】
説明の具体化のため、“ITG[1]=IREF”及び“ITG[2]=ICONST”にて保持制御が行われていることを想定し、第1チャネルに注目して第1検出方法を説明する。外力検出部160は、保持制御が行われる期間中の任意の期間を検出対象期間に設定することができる(後述の他の任意の実施例でも同様)。検出対象期間では、保持制御におけるPWM定電流制御により、“IOUT[1]=IREF”及び“IOUT[2]=ICONST”の達成を目標として、上述の単位動作が繰り返し実行される。
【0067】
外力検出部160は、検出対象期間において、単位動作ごとに、出力段回路130[1]が給電状態とされる時間を出力オン時間として検出する。検出対象期間に属する複数の単位動作の内、第j番目の単位動作における出力オン時間を記号“TON[j]”で表す。jは任意の整数を表す。
【0068】
例えば、外力検出部160は、出力トランジスタM1[1]~M4[1]のゲート電圧に基づいて出力オン時間TON[j]を検出して良い。この場合、外力検出部160は、各単位動作において、出力トランジスタM1[1]のゲート電圧がローレベルであって且つ出力トランジスタM4[1]のゲート電圧がハイレベルとなる期間の時間長さを出力オン時間として検出する。Pチャネル型MOSFETとして構成された出力トランジスタM1[1]及びM2[1]の夫々については、出力トランジスタのゲート電圧がローレベルであるときに当該出力トランジスタがオン状態となり、出力トランジスタのゲート電圧がハイレベルであるときに当該出力トランジスタがオフ状態となる。Nチャネル型MOSFETとして構成された出力トランジスタM3[1]及びM4[1]の夫々については、出力トランジスタのゲート電圧がハイレベルであるときに当該出力トランジスタがオン状態となり、出力トランジスタのゲート電圧がローレベルであるときに当該出力トランジスタがオフ状態となる。
【0069】
或いは例えば、外力検出部160は、出力トランジスタM1[1]~M4[1]のオン/オフ状態を指定するために制御ロジック122[1]からプリドライバ131[1]に供給されるモータ駆動信号に基づいて、出力オン時間TON[j]を検出しても良い。更に或いは例えば、外力検出部160は、出力端子AOUT[1]の電圧に基づいて出力オン時間TON[j]を検出しても良い。
【0070】
外力検出部160は、検出対象期間において、検出済みの1以上の出力オン時間に基づいて参照オン時間TONREFを設定する。例えば、最新の出力オン時間として出力オン時間TON[j]が得られたとき、出力オン時間TON[j]そのものを参照オン時間TONREFとして設定する、或いは、計q個の出力オン時間TON[j-q+1]、TON[j-q+2]・・・、TON[j-1]及びTON[j]の単純移動平均又は加重移動平均を参照オン時間TONREFとして設定する。ここで、qは2以上の任意の整数である。
【0071】
図11に示す如く、検出対象期間は、基準期間(第1期間)と基準期間よりも後の評価期間(第2期間)とを含む。外力検出部160は、検出対象期間に属する基準期間中の1以上の出力オン時間に基づいて参照オン時間T
ONREFを設定する。その後、評価期間において外力の付与有無が検出される。外力検出部160は、保持制御が行われている期間内において、任意の期間を基準期間に設定できると共に、基準期間後の任意の期間を評価期間に設定できる。ここで、基準期間において外力の付与は無いと仮定する。
【0072】
第1検出方法に係る外力検出部160は、検出対象期間において、出力段回路130[1]によるモータコイルL[1]への電力供給状態に基づき外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。この際、モータコイルL[1]への電力供給状態を示す指標として、出力段回路130[1]が給電状態となることで出力段回路130[1]からモータコイルL[1]に電力供給が行われる時間、即ち、出力オン時間を利用する。つまり、第1検出方法に係る外力検出部160は、検出対象期間において、出力オン時間の変化に基づき外力の付与有無を検出する。より具体的には、第1検出方法に係る外力検出部160は、評価期間中に順次検出される出力オン時間を参照オン時間TONREFと比較することで、評価期間中における外力の付与有無を検出する。
【0073】
例えば以下のようにすれば良い。今、評価期間中の1つの出力オン時間を評価オン時間と称する。参照オン時間TONREFよりも評価オン時間の方が短いことを前提条件CND1Aとして満たした上で、以下の条件CND1B又は条件CND1Cを満たすとき、外力検出部160は、評価期間中に外力の付与有りと判断する。条件CND1Bは、参照オン時間TONREFと評価オン時間との差分絶対値が所定の差分閾値DIFTH1以上であるという条件である。条件CND1Cは、参照オン時間TONREFに対する評価オン時間の比が所定の比閾値RATIOTH1以下であるという条件である。
【0074】
従って評価オン時間が出力オン時間TON[n]である場合(nは任意の整数)、
“TONREF>TON[n]”ならば前提条件CND1Aが満たされ、
“|TONREF-TON[n]|≧DIFTH1”ならば条件CND1Bが満たされ、
“TON[n]/TONREF≦RATIOTH1” ならば条件CND1Cが満たされる。
差分閾値DIFTH1は時間を単位とした所定の正の値を持つ。比閾値RATIOTH1は無次元量であって、1未満の所定の正の値(例えば0.5)を持つ。
【0075】
外力検出部160は、評価期間中の連続する複数の出力オン時間を複数の評価オン時間として取り扱い、複数の評価オン時間の夫々が前提条件CND1Aを満たし且つ条件CND1B又は条件CND1Cを満たす場合に限って、評価期間中に外力の付与有りと判断するようにしても良い。
【0076】
評価期間中に外力の付与によりロータ210が回転した場合、評価期間中の出力オン時間は基準期間中の出力オン時間よりも短くなると期待される。このため、上述の各条件の成否判定により外力の付与有無を精度良く検出することが可能である。
【0077】
尚、第1チャネルについて“ITG[1]=IREF”とされる保持制御に注目して第1検出方法を説明したが、それ以外の条件の保持制御(例えば“ITG[1]=-IREF” とされる保持制御)においても第1検出方法を同様に適用でき、また第2チャネルに対しても第1検出方法を同様に適用できる。
【0078】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例に係る外力検出部160は、第2検出方法を用いて外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。第2実施例においても、説明の具体化のため、“I
TG[1]=I
REF”及び“I
TG[2]=I
CONST”にて保持制御が行われていることを想定する。そして、第1実施例で述べた検出対象期間(
図10参照)に注目する。
図12は第2検出方法を説明するための模式図である。
【0079】
第2検出方法に係る外力検出部160は、保持制御が実行される検出対象期間において、出力電流IOUT[1]の目標大きさよりも大きな電流閾値ITH2を設定し、電流閾値ITH2と出力電流IOUT[1]の大きさとの比較に基づき、外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。
【0080】
上述したように、出力電流IOUT[1]の目標大きさは、出力電流IOUT[1]の大きさの目標であって、目標電流値ITG[1]の大きさ(絶対値|ITG[1]|)を指す。ここでは“ITG[1]>0”を想定しているため、目標電流値ITG[i]よりも大きな電流閾値ITH2を設定すれば良い。目標電流値ITG[1]が負となりうることをも考慮すれば、電流閾値ITH2を下記式(2A)又は式(2B)に従って設定すれば良い。ここで、Δ2は正の所定値を持つ。k2は1より大きな所定値(例えば1.1)を持つ。
ITH2=|ITG[1]|+Δ2 ・・・(2A)
ITH2=|ITG[1]|×k2 ・・・(2B)
【0081】
第2検出方法に係る外力検出部160は、検出対象期間において、電流閾値ITH2以上の大きさを持つ出力電流IOUT[1]が検出されたとき、外力の付与有りと判断する。外力検出部160は、検出対象期間中の任意のサンプリングタイミングで出力電流IOUT[1]を検出して良い。例えば、検出対象期間中の各単位動作において給電モード動作の終了直前の出力電流IOUT[1]をサンプリングして検出し、検出された出力電流IOUT[1]の大きさが電流閾値ITH2以上であるとき、外力の付与有りと判断することができる。連続する複数の単位動作の夫々にて出力電流IOUT[1]をサンプリングし、その複数の単位動作にてサンプリングされた複数の出力電流IOUT[1]の大きさが全て電流閾値ITH2以上であるときに限って、外力の付与有りと判断するようにしても良い。
【0082】
外力検出部160は出力電流IOUT[1]の検出結果を示す信号を受ける。出力電流IOUT[1]の検出結果を示す信号は、抵抗R[1]を用いて得られる検出電圧VRNF[1]であっても良いし、抵抗R[1]以外の電流センサを用いて得られる信号であっても良い。抵抗R[1]以外の電流センサは、出力電流IOUT[1]が流れる箇所又は出力電流IOUT[1]が比例する流れる箇所に設置され、当該電流センサの検出結果に基づいて、出力電流IOUT[1]が検出(出力電流IOUT[1]の大きさの検出を含む)される。
【0083】
尚、第1チャネルについて“ITG[1]=IREF”とされる保持制御に注目して第2検出方法を説明したが、それ以外の条件の保持制御(例えば“ITG[1]=-IREF” とされる保持制御)においても第2検出方法を同様に適用でき、また第2チャネルに対しても第2検出方法を同様に適用できる。
【0084】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例に係る外力検出部160は、第3検出方法を用いて外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。第3実施例においても、説明の具体化のため、“I
TG[1]=I
REF”及び“I
TG[2]=I
CONST”にて保持制御が行われていることを想定する。そして、第1実施例で述べた検出対象期間(
図10参照)に注目する。
図13は第3検出方法を説明するための模式図である。
【0085】
第3検出方法に係る外力検出部160は、保持制御が実行される検出対象期間において、出力段回路130[1]が給電状態にあるときの出力電流IOUT[1]の大きさの増加の傾きに基づき、外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。“IOUT[1]>0”であるときにおいては、出力電流IOUT[1]の大きさの増加は出力電流IOUT[1]の増加と等価である。以下、出力電流IOUT[1]の大きさの増加の傾きを電流傾きSLPと称する。
【0086】
外力検出部160は、検出対象期間において、単位動作ごとに、出力段回路130[1]が給電状態にあるときの出力電流IOUT[1]の電流傾きSLPを検出する。検出対象期間に属する複数の単位動作の内、第j番目の単位動作における出力電流IOUT[1]の電流傾きSLPを特に記号“SLP[j]”で表す。jは任意の整数を表す。
【0087】
外力検出部160は電流傾きSLPを検出するために出力電流IOUT[1]の検出結果を示す信号を受ける。出力電流IOUT[1]の検出結果を示す信号は、第2実施例で示したように、抵抗R[1]を用いて得られる検出電圧VRNF[1]であっても良いし、抵抗R[1]以外の電流センサを用いて得られる信号であっても良い。第j番目の単位動作に関しては、給電モード動作の開始タイミングにおける出力電流IOUT[1]の検出値と給電モード動作の終了タイミングにおける出力電流IOUT[1]の検出値との差の絶対値を、給電モード動作の実行時間で除することで、電流傾きSLP[j]が求まる。
【0088】
第3検出方法に係る外力検出部160は、検出対象期間において、所定の傾き閾値SLPTH3以上の電流傾きSLP[j]が検出されたとき、外力の付与有りと判断する。つまり、検出対象期間中の第j番目の単位動作について取得された電流傾きSLP[j]が所定の傾き閾値SLPTH3以上であれば外力の付与有りと判断することができる。連続して検出された複数の電流傾き(例えば電流傾きSLP[n]、SLP[n+1]及びSLP[n+2])が全て傾き閾値SLPTH3以上であるときに限って、外力の付与有りと判断するようにしても良い。
【0089】
検出対象期間中に外力の付与にてロータ210が回転した場合、上記電流傾きSLPは大きくなると期待されるため、上述の方法にて外力の付与有無を検出することが可能である。
【0090】
或いは、第3検出方法において、
図11に示す如く基準期間及び評価期間を設定し、基準期間中の電流傾きSLPと評価期間中の電流傾きSLPとの比較を通じて、外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出するようにしても良い。これを、変形された第3検出方法として説明する。基準期間及び評価期間の意義は第1実施例で述べた通りである。
【0091】
外力検出部160は、基準期間にて検出された1以上の電流傾きSLPに基づいて参照傾きSLPREFを設定する。例えば、最新の電流傾きSLPとして電流傾きSLP[j]が得られたとき、電流傾きSLP[j]そのものを参照傾きSLPREFとして設定する、或いは、計q個の電流傾きSLP[j-q+1]、SLP[j-q+2]・・・、SLP[j-1]及びSLP[j]の単純移動平均又は加重移動平均を参照傾きSLPREFとして設定する。ここで、qは2以上の任意の整数である。
【0092】
変形された第3検出方法に係る外力検出部160は、検出対象期間において電流傾きSLPの変化に基づき外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。より具体的には、変形された第3検出方法に係る外力検出部160は、評価期間中に順次検出される電流傾きSLPを参照傾きSLPREFと比較することで、評価期間中における外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出する。
【0093】
例えば以下のようにすれば良い。今、評価期間中の1つの電流傾きSLPを評価傾きと称する。参照傾きSLPREFよりも評価傾きの方が大きいことを前提条件CND3Aとして満たした上で、以下の条件CND3B又は条件CND3Cを満たすとき、外力検出部160は、評価期間中に外力の付与有りと判断する。条件CND3Bは、参照傾きSLPREFと評価傾きとの差分絶対値が所定の差分閾値DIFTH3以上であるという条件である。条件CND3Cは、参照傾きSLPREFに対する評価傾きの比が所定の比閾値RATIOTH3以上であるという条件である。
【0094】
従って評価傾きが電流傾きSLP[n]である場合(nは任意の整数)、
“SLPREF<SLP[n]”ならば前提条件CND3Aが満たされ、
“|SLP[n]-SLPREF|≧DIFTH3”ならば条件CND3Bが満たされ、
“SLP[n]/SLPREF≧RATIOTH3” ならば条件CND3Cが満たされる。
差分閾値DIFTH3は所定の正の値を持つ。比閾値RATIOTH3は1より大きな所定の正の値(例えば2)を持つ。
【0095】
外力検出部160は、評価期間中の連続する複数の電流傾きSLPを複数の評価傾きとして取り扱い、複数の評価傾きの夫々が前提条件CND3Aを満たし且つ条件CND3B又は条件CND3Cを満たす場合に限って、評価期間中に外力の付与有りと判断するようにしても良い。
【0096】
尚、第1チャネルについて“ITG[1]=IREF”とされる保持制御に注目して第3検出方法を説明したが、それ以外の条件の保持制御(例えば“ITG[1]=-IREF” とされる保持制御)においても第3検出方法を同様に適用でき、また第2チャネルに対しても第3検出方法を同様に適用できる。
【0097】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。モータドライバ100には、ハーフブリッジ回路132[1]及び132[2]を構成する複数の出力トランジスタに流れる電流を個別に検出するためのTR電流検出部が設けられている。
図14に、第iチャネルのハーフブリッジ回路132[i]に対して設けられるTR電流検出部をハーフブリッジ回路132[i]と共に示す。尚、
図14では各トランジスタの寄生ダイオードの図示を省略している。
【0098】
ハーフブリッジ回路132[i]に対するTR電流検出部は、出力トランジスタM1[i]に対応するセンストランジスタSM1[i]及びセンス抵抗R1[i]と、出力トランジスタM2[i]に対応するセンストランジスタSM2[i]及びセンス抵抗R2[i]と、出力トランジスタM3[i]に対応するセンストランジスタSM3[i]及びセンス抵抗R3[i]と、出力トランジスタM4[i]に対応するセンストランジスタSM4[i]及びセンス抵抗R4[i]と、を備える。センストランジスタSM1[i]及びSM2[i]は出力トランジスタM1[i]及びM2[i]にあわせてPチャネル型のMOSFETとして構成され、センストランジスタSM3[i]及びSM4[i]は出力トランジスタM3[i]及びM4[i]にあわせてNチャネル型のMOSFETとして構成される。
【0099】
トランジスタSM1[i]及びM1[i]においてソース同士が共通接続され且つゲート同士が共通接続される。同様に、トランジスタSM2[i]及びM2[i]においてソース同士が共通接続され且つゲート同士が共通接続される。同様に、トランジスタSM3[i]及びM3[i]においてソース同士が共通接続され且つゲート同士が共通接続される。同様に、トランジスタSM4[i]及びM4[i]においてソース同士が共通接続され且つゲート同士が共通接続される。
【0100】
センストランジスタSM1[i]のドレインはセンス抵抗R1[i]を介して出力トランジスタM1[i]のドレインに接続される。センストランジスタSM2[i]のドレインはセンス抵抗R2[i]を介して出力トランジスタM2[i]のドレインに接続される。センストランジスタSM3[i]のドレインはセンス抵抗R3[i]を介して出力トランジスタM3[i]のドレインに接続される。センストランジスタSM4[i]のドレインはセンス抵抗R4[i]を介して出力トランジスタM4[i]のドレインに接続される。
【0101】
或る出力トランジスタに流れるドレイン電流と当該出力トランジスタに対応するセンストランジスタに流れるドレイン電流との比が所定の比(例えば100:1)となるように、出力トランジスタ及びセンストランジスタ間のソース面積比が設定されている。このため、TR電流検出部は、センス抵抗R1[i]、R2[i]、R3[i]、R4[i]の電圧降下を検出することで、出力トランジスタM1[i]、M2[i]、M3[i]、M4[i]に流れる電流を検出できる。出力トランジスタM1[i]、M2[i]、M3[i]、M4[i]に流れる電流を、夫々、電流I1[i]、I2[i]、I3[i]、I4[i]で表す。
【0102】
尚、第1チャネルに対するTR電流検出部は、第2実施例及び第3実施例で述べた抵抗R[1]以外の電流センサの例である。第2チャネルについても同様である。
【0103】
出力電流IOUT[i]は、出力トランジスタM1[i]~M4[i]の内の何れか2つを通じて流れるため、外力検出部160は、出力トランジスタM1[i]~M4[i]の各ゲート電圧と(即ち出力トランジスタM1[i]~M4[i]のオン、オフ状態と)、電流I1[i]~I4[i]とに基づき、出力電流IOUT[i]を認識可能である。また、出力トランジスタM1[i]~M4[i]に流れる電流の検出結果(即ちセンス抵抗R1[i]~R4[i]での電圧降下)から、外力検出部160は、出力電流IOUT[i]に応じた出力トランジスタM1[i]~M4[i]の電流波形を取得することができる。出力トランジスタM1[i]~M4[i]の電流波形は電流I1[i]~電流I4[i]の波形に相当する。
【0104】
他方、詳細な波形は図示しないが、外力の付与時には外力の非付与時には見られない特徴的な電流波形が、出力トランジスタM1[i]~M4[i]の電流波形に生じる。このため、第4実施例に係る第4検出方法では、以下のようにして外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出できる。
【0105】
例えば、“I
TG[1]=I
REF”での保持制御の実行中に外力付与によりロータ210が回転したときに観測されるであろう出力トランジスタM1[1]~M4[1]の電流波形を、実験等を適宜介し、モータドライバ100の設計段階において取得する。ここで取得された電流波形を参照電流波形(所定の電流波形)に設定し、参照電流波形を示す波形情報を外力検出部160内の不揮発性メモリ(不図示)に保存しておく。その後、モータドライバ100がモータ駆動システムSYSに組み込まれて実稼働する際、外力検出部160は、上述の対象検出期間において(
図10参照)、出力トランジスタM1[1]~M4[1]の電流波形(電流I1[1]~I4[1]の検出結果)を不揮発性メモリ内の波形情報に基づく参照電流波形と比較し、両波形の類似性に基づき外力の付与有無(特定電流波形の発生有無)を検出できる。波形間の類似性の評価方法として公知の任意の方法を利用できる。対象検出期間に取得される出力トランジスタM1[1]~M4[1]の電流波形と、参照電流波形との間の類似度が所定閾値以上であるとき、外力の付与有りと判断できる。
【0106】
尚、第1チャネルについて“ITG[1]=IREF”とされる保持制御に注目して第4検出方法を説明したが、それ以外の条件の保持制御(例えば“ITG[1]=-IREF” とされる保持制御)においても第4検出方法を同様に適用でき、また第2チャネルに対しても第4検出方法を同様に適用できる。
【0107】
モータドライバ100には過電流保護回路(不図示)が設けられている。過電流保護回路は、所定の過電流保護閾値以上の大きさを持つ出力電流I
OUT[i]が流れていることを検知すると、第iチャネルが過電流状態にあると判断する。第iチャネルが過電流状態にあると判断すると、過電流保護回路は、第iチャネルの全出力トランジスタ(M1[i]~M4[i])をオフ状態とし、それらのオフ状態をラッチ(保持)する、或いは、第1及び第2チャネルの全出力トランジスタ(M1[1]~M4[1]及びM1[2]~M4[2])をオフ状態とし、それらのオフ状態をラッチ(保持)する。過電流保護回路は、上記TR電流検出部による電流I1[i]~I4[i]の検出結果に基づいて、過電流保護閾値と比較すべき出力電流I
OUT[i]の大きさを検知することができる。即ち、過電流保護回路は、センス抵抗R1[i]~R4[i]の電圧降下に基づき検出される電流I1[i]~I4[i]の大きさの何れかを出力電流I
OUT[i]の大きさとして参照して、参照した出力電流I
OUT[i]の大きさを過電流保護閾値と比較することができる。この過電流保護閾値は第2実施例で述べた電流閾値I
TH2(
図12参照)よりも大きい。即ち、外力検出部160は、過電流保護の対象には至らない程度の出力電流I
OUT[i]の盛り上がりを検知することで外力の付与を検知する。
【0108】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。
【0109】
本実施形態に係るモータ駆動システムSYS及びモータドライバ100は、例えば、コピー機若しくはプリンタにおける紙送り部、又は、スキャナの読み取り部に適用可能である他、ステッピングモータを利用する任意の装置に適用できる。
【0110】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0111】
本開示に係るドライバ装置は、コイルへの電圧印加により前記コイルに出力電流を供給する出力段回路と、前記出力段回路を制御する制御回路と、を備え、前記出力電流の供給による発生磁力を用いて可動部を運動させるドライバ装置であって、前記制御回路は前記出力段回路の制御を通じ前記可動部の運動を停止させて前記可動部の状態を不変に保持する保持制御を実行可能とする構成を持つ。コイル及び可動部としてモータコイル及びロータを有するステッピングモータに対し本開示を適用する例を上述したが、上記構成を適用可能な装置はステッピングモータに限られない。例えば、本開示をソレノイドアクチュエータに適用しても良い。ソレノイドアクチュエータの一種はコイル及び可動磁極を有する。ソレノイドアクチュエータにおいて、コイルへの電圧印加によりコイルに電流(出力電流)が供給されることで磁界が発生し、この発生磁界により可動磁極が運動(直線運動又は回転運動)する。本開示に係るドライバ装置がソレノイドアクチュエータに適用される場合、本開示に係るドライバ装置のコイル及び可動部は、ソレノイドアクチュエータのコイル及び可動磁極に相当する。
【0112】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0113】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体例が示された本開示について付記を設ける。
【0114】
本開示の一側面に係るドライバ装置は、コイル(L[i])への出力電流(I
OUT[i])の供給による発生磁力を用いて可動部を運動させる(例えばロータを回転させる)ドライバ装置であって、前記コイルへの電圧印加により前記コイルに前記出力電流を供給する出力段回路(130[i])と、前記出力段回路を制御する制御回路(120[i])と、を備え、前記制御回路は、前記出力段回路の制御を通じ前記可動部の運動を停止させて前記可動部の状態を不変に保持する(例えばロータの角度を不変に保持する)保持制御を実行可能であり、当該ドライバ装置は、前記制御回路にて前記保持制御が行われているとき、前記出力段回路による前記コイルへの電力供給状態に基づき(第1実施例参照;
図10)、前記出力電流に基づき(第2及び第3実施例参照;
図12及び
図13)、又は、前記出力段回路に流れる電流に基づき(第4実施例参照;
図14)、前記保持制御を抗して前記可動部の状態を変化させる外力の付与有無を検出する外力検出部(160)を更に備えた構成(第1の構成)である。
【0115】
第1の構成に係るドライバ装置に関し(
図5~
図7参照)、前記制御回路は、前記コイルに供給されるべき前記出力電流の目標を設定する電流設定信号(CNT
P[i]、V
REF[i])及び前記出力電流の検出結果を示す電流検出信号(V
RNF[i])に基づいて前記出力段回路を制御し、前記制御回路は、前記保持制御において、前記出力電流の大きさを前記電流設定信号にて設定される目標大きさ(I
TG[i])に近似させるために、給電モード動作と減衰モード動作との組である単位動作を繰り返し実行し、前記出力段回路は、前記給電モード動作において、前記出力電流の大きさを増大させるための電力供給を前記コイルに向けて行う給電状態とされ、前記減衰モード動作において、前記出力電流の大きさを減衰させるべく前記電力供給を停止する減衰状態とされる(第2の構成)であっても良い。
【0116】
上記第2の構成に係るドライバ装置において、各単位動作において、前記制御回路は、少なくとも所定の強制給電時間、前記給電モード動作を実行し、前記給電モード動作を開始してから前記強制給電時間が経過した後に前記出力電流の大きさが前記目標大きさ以上であることが検出されると前記給電モード動作を終了して、所定の減衰時間分、前記減衰モード動作を実行する構成(第3の構成)であっても良い。
【0117】
上記第2又は第3の構成に係るドライバ装置において(第1実施例、
図10参照)、前記外力検出部は、各単位動作において前記出力段回路が前記給電状態となる時間を出力オン時間(T
ON[j])として検出し、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、前記出力オン時間の変化に基づき前記外力の付与有無を検出する(第4の構成)であっても良い。
【0118】
上記第4の構成に係るドライバ装置において、前記検出対象期間は、第1期間と前記第1期間よりも後の第2期間を含み、前記外力検出部は、前記第1期間において検出された1以上の出力オン時間に基づき参照オン時間を設定した後、前記参照オン時間と前記第2期間中の前記出力オン時間との比較に基づき、前記第2期間中における前記外力の付与有無を検出する構成(第5の構成)であっても良い。
【0119】
上記第5の構成に係るドライバ装置において、前記外力検出部は、前記参照オン時間よりも前記第2期間中の前記出力オン時間である評価オン時間の方が短い場合において、前記参照オン時間と前記評価オン時間との差分絶対値が所定の差分閾値以上であるとき、又は、前記参照オン時間に対する前記評価オン時間の比が所定の比閾値以下であるとき、前記第2期間にて前記外力の付与が有ると判断する構成(第6の構成)であっても良い。
【0120】
上記第2又は第3の構成に係るドライバ装置において(第2実施例、
図12参照)、前記外力検出部は、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、前記目標大きさ(I
REF)よりも大きな電流閾値(I
TH2)を用い、前記電流閾値と前記出力電流の大ききとの比較に基づき、前記外力の付与有無を検出する構成(第7の構成)であっても良い。
【0121】
上記第7の構成に係るドライバ装置において、前記外力検出部は、前記検出対象期間において、前記電流閾値以上の大きさを持つ前記出力電流が検出されたとき、前記外力の付与が有ると判断する構成(第8の構成)であっても良い。
【0122】
上記第2又は第3の構成に係るドライバ装置において(第3実施例、
図13参照)、前記外力検出部は、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、前記出力段回路が前記給電状態にあるときの前記出力電流の大きさの増加の傾き(SLP[j])に基づき、前記外力の付与有無を検出する構成(第9の構成)であっても良い。
【0123】
上記第9の構成に係るドライバ装置において、前記外力検出部は、前記検出対象期間において、前記出力段回路が前記給電状態にあるときの前記出力電流の大きさの増加の傾きを前記単位動作ごとに検出し、所定の傾き閾値以上の前記傾きが検出されたとき、前記外力の付与が有ると判断する構成(第10の構成)であっても良い。
【0124】
上記第9の構成に係るドライバ装置において、前記検出対象期間は、第1期間と前記第1期間よりも後の第2期間を含み、前記外力検出部は、前記第1期間において検出された1以上の前記傾きに基づき参照傾きを設定した後、前記参照傾きと前記第2期間中の前記傾きとの比較に基づき、前記第2期間中における前記外力の付与有無を検出する構成(第11の構成)であっても良い。
【0125】
上記第11の構成に係るドライバ装置において、前記外力検出部は、前記参照傾きよりも前記第2期間中の前記傾きである評価傾きの方が大きい場合において、前記参照傾きと前記評価傾きとの差分絶対値が所定の差分閾値以上であるとき、又は、前記参照傾きに対する前記評価傾きの比が所定の比閾値以上であるとき、前記第2期間にて前記外力の付与が有ると判断する構成(第12の構成)であっても良い。
【0126】
上記第1~第3の構成の何れかに係るドライバ装置において(第4実施例、
図14参照)、前記出力段回路は、4つの出力トランジスタにて構成されるフルブリッジ回路を有し、前記出力電流に応じた電流が各出力トランジスタに流れ、前記外力検出部は、各出力トランジスタに流れる電流の検出結果(R1[i]~R4[i]での電圧降下に対応)から各出力トランジスタの電流波形を取得し、前記制御回路にて前記保持制御が行われる検出対象期間において、各出力トランジスタの電流波形と所定電流波形(参照電流波形)との比較に基づき、前記外力の付与有無を検出する構成(第13の構成)であっても良い。
【0127】
上記第1~第13の構成の何れかに係るドライバ装置において、前記外力検出部は、前記外力の付与が検出されたとき、所定の検知信号を当該ドライバ装置の外部装置に向けて送信する構成(第14の構成)であっても良い。
【0128】
上記第1~第14の構成の何れかに係るドライバ装置に関し、当該ドライバ装置はステッピングモータ用のドライバ装置であって、前記コイルはステッピングモータに設けられ、前記可動部は前記ステッピングモータのロータであって、前記可動部の運動は前記ロータの回転であり、前記保持制御では前記ロータの角度が不変に保持され、前記外力は、前記保持制御を抗して前記ロータを回転させる外力である構成(第15の構成)であっても良い。
【0129】
上記第15の構成に係るドライバ装置において、前記コイルとして複数のコイルが前記ステッピングモータに設けられ、当該ドライバ装置において前記複数のコイルに対し複数のチャネル回路が割り当てられて前記チャネル回路ごとに前記出力段回路及び前記制御回路が設けられ、各チャネル回路において前記出力電流が制御されることで前記ロータが回転する構成(第16の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0130】
SYS モータ駆動システム
100 モータドライバ
CH[1]、CH[2] チャネル回路
120[1]、120[2] 制御回路
130[1]、130[2] 出力段回路
160 外力検出部
200 ステッピングモータ
210 ロータ
L[1]、L[2] モータコイル
300 MPU