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特許7549004二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20240903BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240903BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240903BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240903BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240903BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240903BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240903BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240903BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/443 E
H01M50/443 B
H01M50/443 C
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/42
H01M50/443 M
C08F265/06
C08K3/013
B32B27/30 A
H01M50/451
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022515346
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021014980
(87)【国際公開番号】W WO2021210499
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2020074278
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】富田 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】香川 靖之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 寿洋
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072117(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018887(WO,A1)
【文献】特開2019-179698(JP,A)
【文献】特開2016-107642(JP,A)
【文献】特開2015-088253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0006733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
C08F 265/06
C08K 3/013
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマーを含むコア層と、前記第1ポリマーを被覆し、第2ポリマーを含むシェル層とを備えるコアシェル粒子を含み、
前記第1ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位を有し、
前記第2ポリマーが、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有し、
前記第2ポリマーの総量に対して、前記(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率が、40質量%以上97質量%以下であり、前記カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、3質量%以上60質量%以下であり、
前記第1ポリマーの質量に対する、前記第2ポリマーの質量の比率(第2ポリマー/第1ポリマー)が、4以上20以下である
ことを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項2】
前記コアシェル粒子の体積平均粒子径(D50)が、0.4μm以上2.0μm以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項3】
請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含むことを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材。
【請求項4】
さらに、無機充填剤と分散剤とを含む
ことを特徴とする、請求項3に記載の二次電池セパレータ用コート材。
【請求項5】
多孔膜と、
前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項3に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜と
を備えることを特徴とする、二次電池セパレータ。
【請求項6】
多孔膜を準備する工程、および、
前記多孔膜の少なくとも片面に、請求項3に記載の二次電池セパレータ用コート材を塗布する工程を備える
ことを特徴とする、二次電池セパレータの製造方法。
【請求項7】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される請求項5に記載される二次電池セパレータとを備えることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池内には、正極と負極とを隔離し、電解液中のイオンを通過させるためのセパレータが備えられている。
【0003】
このようなセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン多孔膜が知られており、また、セパレータの表面に、種々の機能層を設けることが知られている。
【0004】
セパレータに形成される機能層としては、例えば、アルミナおよび樹脂を含む機能層用組成物を、ポリエチレン製セパレータ基材に塗布および乾燥させて得られるコート層が知られており、そのような機能層用組成物として、アクリルアミド、メタクリル酸およびジメチルアクリルアミドを重合させて得られる水溶性重合体と、n-ブチルアクリレート、メタクリル酸、アクリロニトリル、N-メチロールアクリルアミドおよびアリルグリシジルエーテルを重合させて得られる粒子状重合体と、アルミナと、分散剤と、界面活性剤との混合物が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2017/026095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、セパレータが、熱による収縮で形状が変化すると、正極と負極との間でショートする可能性があるため、耐熱性が要求される。しかし、上記の機能層は、耐熱性が十分ではないという不具合がある。
【0007】
さらに、二次電池のセパレータは、発電のためにイオンを通過させる必要があるため、透気性が要求される。しかし、上記した機能層は、セパレータの透気性を低下させるという不具合がある。
【0008】
加えて、機能層には、さらに、セパレータに対する密着性の向上が要求されており、さらに、二次電池の発火を抑制する観点から、優れた耐電解液性が要求されている。
【0009】
本発明は、優れた耐熱性および透気性を兼ね備え、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得られる、二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、その二次電池セパレータの製造方法、および、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、第1ポリマーを含むコア層と、前記第1ポリマーを被覆し、第2ポリマーを含むシェル層とを備えるコアシェル粒子を含み、前記第1ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位を有し、前記第2ポリマーが、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有し、前記第2ポリマーの総量に対して、前記(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率が、40質量%以上97質量%以下であり、前記カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、3質量%以上60質量%以下であり、前記第1ポリマーの質量に対する、前記第2ポリマーの質量の比率(第2ポリマー/第1ポリマー)が、4以上250以下である、二次電池セパレータ用コート材原料を含む。
【0011】
本発明[2]は、前記コアシェル粒子の体積平均粒子径(D50)が、0.4μm以上2.0μm以下である、上記[1]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含む。
【0012】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含む、二次電池セパレータ用コート材を含む。
【0013】
本発明[4]は、さらに、無機充填剤と分散剤とを含む、上記[3]に記載の二次電池セパレータ用コート材を含む。
【0014】
本発明[5]は、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも片面に配置される上記[3]または[4]に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータを含む。
【0015】
本発明[6]は、多孔膜を準備する工程、および、前記多孔膜の少なくとも片面に、上記[3]または[4]に記載の二次電池セパレータ用コート材を塗布する工程を備える、二次電池セパレータの製造方法を含む。
【0016】
本発明[7]は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される上記[5]に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマーを含むコア層と、前記第1ポリマーを被覆し、第2ポリマーを含むシェル層とを備えるコアシェル粒子を含み、第1ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位を有する。また、第2ポリマーが、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを、所定割合で有している。そして、第1ポリマーの質量に対する、第2ポリマーの質量の比率(第2ポリマー/第1ポリマー)が、所定範囲に調整されている。
【0018】
そのため、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料によれば、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得られる。
【0019】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含むため、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得られる。
【0020】
本発明の二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えるため、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる。
【0021】
本発明の二次電池セパレータの製造方法によれば、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを、効率よく製造できる。
【0022】
本発明の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる。その結果、本発明の二次電池は、耐久性および発電効率に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマーを含むコア層と、前記第1ポリマーを被覆し、第2ポリマーを含むシェル層とを備えるコアシェル粒子を含んでいる。好ましくは、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマーからなるコア層と、第1ポリマーを被覆する第2ポリマーからなるシェル層とを備えるコアシェル粒子を含んでいる。
【0024】
第1ポリマーは、第1ポリマー原料(モノマー組成物)を重合してなる重合体である。
【0025】
第1ポリマー原料は、必須成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルを含む(以下同様)。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数5~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは、n-ブチルアクリレートが挙げられる。
【0027】
また、第1ポリマー原料は、任意成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマー(以下、第1共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0028】
第1共重合性モノマーとしては、例えば、官能基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0029】
官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマーおよびその塩、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマー、リン酸基含有化合物などが挙げられる。
【0030】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などのジカルボン酸、または、これらの塩などが挙げられる。
【0031】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルなどが挙げられる。
【0033】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0034】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0035】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸などが挙げられる。また、上記スルホン酸基含有ビニルモノマーの塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、例えば、アンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0036】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルなどが挙げられる。
【0037】
リン酸基含有化合物としては、例えば、2-メタクロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが挙げられる。
【0038】
これら官能基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
官能基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、カルボキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0040】
また、第1共重合性モノマーとして、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、不飽和カルボン酸アミド、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、ジエン類、架橋性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0041】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0042】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどが挙げられる。
【0043】
不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0044】
複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0045】
ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0046】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0047】
ジエン類としては、例えば、ブタジエンなどが挙げられる。
【0048】
架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートなど、2つ以上のビニル基を含有するビニルモノマーなどが挙げられる。
【0049】
これら第1共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0050】
第1共重合性モノマーは、好ましくは、第1ポリマーのガラス転移温度が後述する範囲に調整されるように、選択される。
【0051】
第1共重合性モノマーとして、好ましくは、官能基含有ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマー、より好ましくは、カルボキシ基含有ビニルモノマー、不飽和カルボン酸アミド、芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
【0052】
また、第1ポリマー原料は、好ましくは、実質的に、シアノ基含有ビニルモノマー(具体的には、(メタ)アクリロニトリル)を含まない。
【0053】
実質的に、シアノ基含有ビニルモノマーを含まないとは、第1ポリマー原料に対して、シアノ基含有ビニルモノマーが、例えば、2.0質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下であることを意味する。
【0054】
シアノ基含有ビニルモノマーを配合すると、二次電池セパレータ用コート材(後述)の耐電解液性が低下する場合がある。そのため、第1ポリマー原料は、好ましくは、シアノ基含有ビニルモノマーを含まない。
【0055】
第1ポリマー原料において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、密着性および耐電解液性に優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、80質量部以下、さらに好ましくは、70質量部以下である。
【0056】
また、第1共重合性モノマーの含有割合(総量)は、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上であり、例えば、70質量部以下である。
【0057】
すなわち、第1ポリマー原料は、第1共重合性モノマーを含有することなく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる組成物であってもよく、また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと第1共重合性モノマーとからなる組成物であってもよい。
【0058】
好ましくは、第1ポリマー原料は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと第1共重合性モノマーとからなる組成物であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、芳香族ビニルモノマーと、官能基含有ビニルモノマーとからなる組成物であり、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、芳香族ビニルモノマーと、カルボキシ基含有ビニルモノマーおよび/または不飽和カルボン酸アミドとからなる組成物であり、とりわけ好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、芳香族ビニルモノマーと、カルボキシ基含有ビニルモノマーと、不飽和カルボン酸アミドとからなる組成物である。
【0059】
また、第1共重合性モノマーがカルボキシ基含有ビニルモノマーを含む場合には、カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有割合は、透気性に優れ、さらに、密着性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.2質量部以上、さらに好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、1.0質量部以下である。
【0060】
また、第1共重合性モノマーが不飽和カルボン酸アミドを含む場合には、不飽和カルボン酸アミドの含有割合は、耐熱性および透気性に優れ、さらに、耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下である。
【0061】
また、第1共重合性モノマーが芳香族ビニルモノマーを含む場合には、芳香族ビニルモノマーの含有割合は、密着性および耐電解液性に優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上であり、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、45質量部以下である。
【0062】
そして、第1ポリマーは、上記した第1ポリマー原料を、後述する方法で、重合してなる重合体である。
【0063】
このようにして得られる第1ポリマーは、第2ポリマーに対して、相対的に、疎水性を有する。
【0064】
第1ポリマーにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の含有率は、第1ポリマー原料中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率と、同一である。
【0065】
すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の含有率は、第1ポリマーの総量に対して、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
【0066】
また、第1ポリマーにおける第1共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、第1ポリマー原料中の第1共重合性モノマーの含有率と、同一である。
【0067】
すなわち、第1共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、第1ポリマーの総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、例えば、70質量%以下である。
【0068】
また、第1共重合性モノマーがカルボキシ基含有ビニルモノマーを含む場合には、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、透気性に優れ、さらに、密着性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマーの総量に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.2質量%以上、さらに好ましくは、0.3質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1.0質量%以下である。
【0069】
また、第1共重合性モノマーが不飽和カルボン酸アミドを含む場合には、不飽和カルボン酸アミドに由来する繰り返し単位の含有率は、耐熱性および透気性に優れ、さらに、耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマーの総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下である。
【0070】
また、第1共重合性モノマーが芳香族ビニルモノマーを含む場合には、芳香族ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、密着性および耐電解液性に優れる二次電池セパレータを得る観点から、第1ポリマーの総量に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0071】
また、第1ポリマーのガラス転移温度は、透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、例えば、-30℃以上、好ましくは、-20℃以上、より好ましくは、-10℃以上であり、例えば、40℃以下、好ましくは、20℃以下、より好ましくは、15℃以下である。
【0072】
第1ポリマーのガラス転移温度が、過度に低い場合、セパレータの透気度の低下を惹起し、さらに、表面タックが生じ、取扱性が低下する場合がある。また、第1ポリマーのガラス転移温度が、過度に高い場合には、コアシェル粒子のセパレータに対する密着力が低下する場合がある。
【0073】
なお、ガラス転移温度は、FOXの式により算出される(以下同様)。
【0074】
第2ポリマーは、第2ポリマー原料(モノマー組成物)を重合してなる重合体である。
【0075】
第2ポリマー原料は、必須成分として、(メタ)アクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーを含有する。好ましくは、第2ポリマー原料は、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有せず、(メタ)アクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーを含有する。
【0076】
(メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミドおよびメタクリルアミドが挙げられ、好ましくは、メタクリルアミドが挙げられる。
【0077】
カルボキシ基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリルアミドと共重合可能であり、カルボキシ基を含有する共重合性モノマーである。
【0078】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、上記したモノカルボン酸、上記したジカルボン酸、または、これらの塩などが挙げられる。
【0079】
これらカルボキシ基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0080】
第2ポリマー原料が、カルボキシ基含有ビニルモノマーを含有すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐熱性および密着性に優れる。
【0081】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、モノカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられ、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0082】
第2ポリマー原料が、これらを含有すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、より一層耐熱性および密着性に優れる。
【0083】
また、第2ポリマー原料は、任意成分として、(メタ)アクリルアミドおよび/またはカルボキシ基含有ビニルモノマーと共重合可能な共重合性モノマー(以下、第2共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0084】
第2共重合性モノマーとしては、例えば、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル、上記した官能基含有ビニルモノマー(カルボキシ基含有ビニルモノマーを除く。)、上記したビニルエステル類、上記した芳香族ビニルモノマー、上記した不飽和カルボン酸アミド((メタ)アクリルアミドを除く。)、上記した複素環式ビニル化合物、上記したハロゲン化ビニリデン化合物、上記したα-オレフィン類、上記したジエン類、上記した架橋性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0085】
これら第2共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0086】
第2共重合性モノマーとして、好ましくは、親水基を含有する共重合性モノマーが挙げられ、より具体的には、水酸基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマーが挙げられ、さらに好ましくは、水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0087】
第2ポリマー原料において、(メタ)アクリルアミドの含有割合は、第2ポリマー原料の総量100質量部に対して、優れた耐熱性を得る観点から、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、60質量部以上、さらに好ましくは、70質量部以上であり、また、優れた耐熱性を得る観点から、例えば、97質量部以下、好ましくは、96質量部以下、より好ましくは、95質量部以下である。
【0088】
また、第2ポリマー原料において、カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有割合は、第2ポリマー原料の総量100質量部に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点からの観点から、例えば、3質量部以上、好ましくは、4質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、後述する無機充填剤に対する過剰な吸着を抑制し、優れた耐熱性を得る観点からの観点から、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。
【0089】
また、第2ポリマー原料において、第2共重合性モノマーの含有割合は、例えば、後述の方法でコアシェル粒子を形成可能な範囲であり、第2ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、27質量部以下、好ましくは、15質量部以下であり、0質量部以上であり、とりわけ好ましくは、0質量部である。
【0090】
すなわち、第2ポリマー原料は、第2共重合性モノマーを含有することなく、(メタ)アクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーからなる組成物であってもよく、また、(メタ)アクリルアミドとカルボキシ基含有ビニルモノマーと第2共重合性モノマーとからなる組成物であってもよい。
【0091】
好ましくは、第2ポリマー原料は、(メタ)アクリルアミドとカルボキシ基含有ビニルモノマーとからなる組成物である。
【0092】
そして、第2ポリマーは、上記した第2ポリマー原料を、後述する方法で、重合してなる重合体である。
【0093】
このようにして得られる第2ポリマーは、第1ポリマーに対して、相対的に、親水性を有する。
【0094】
第2ポリマーにおける(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率は、第2ポリマー原料中の(メタ)アクリルアミドの含有率と、同一である。
【0095】
すなわち、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率は、第2ポリマーの総量に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上、とりわけ好ましくは、80質量%以上であり、また、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、97質量%以下、好ましくは、96質量%以下、より好ましくは、95質量%以下である。
【0096】
また、第2ポリマーにおけるカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、第2ポリマー原料中のカルボキシ基含有ビニルモノマーの含有率と、同一である。
【0097】
すなわち、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、第2ポリマーの総量に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、3質量%以上、好ましくは、4質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、後述する無機充填剤に対する過剰な吸着を抑制し、優れた耐熱性を得る観点からの観点から、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下である。
【0098】
また、第2ポリマーにおける第2共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、第2ポリマー原料中の第2共重合性モノマーの含有率と、同一である。
【0099】
すなわち、第2共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、第2ポリマーの総量に対して、例えば、27質量%以下、好ましくは、15質量%以下であり、0質量%以上であり、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0100】
また、第2ポリマーのガラス転移温度は、優れた耐熱性を得る観点から、例えば、150℃以上、好ましくは、200℃以上、より好ましくは、210℃以上、さらに好ましくは、220℃以上、とりわけ好ましくは、230℃以上であり、通常、400℃以下、好ましくは、300℃以下、より好ましくは、280℃以下である。
【0101】
第2ポリマーのガラス転移温度が、過度に低い場合には、セパレータの耐熱性が低下する場合がある。
【0102】
次に、二次電池セパレータ用コート材原料を製造する方法について、説明する。
【0103】
具体的には、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法として、例えば、第1ポリマー原料を重合し、第1ポリマーを得た後に、第1ポリマー存在下で、第2ポリマー原料を重合する方法(第1方法)、例えば、第2ポリマー原料を重合し、第2ポリマーを得た後に、第2ポリマー存在下で、第1ポリマー原料を重合する方法(第2方法)が挙げられる。
【0104】
最初に、第1方法について説明する。
【0105】
第1方法は、第1ポリマー原料を重合してなる第1ポリマーを得る工程(第1工程)と、第1ポリマーの存在下で、第2ポリマー原料を重合してなる第2ポリマーを得る工程(第2工程)とを備える。
【0106】
第1工程では、まず、第1ポリマー原料を重合する。
【0107】
具体的には、水に、第1ポリマー原料および重合開始剤を配合し、水中において、第1ポリマー原料を重合する。
【0108】
重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)、過酸化水素、有機ハイドロパーオキサイド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸などの水溶性開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤、さらには、レドックス系開始剤などが挙げられ、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、過硫酸塩、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0109】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0110】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0111】
また、第1ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、乳化剤(界面活性剤)を配合することができる。
【0112】
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸塩など)、脂肪族スルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアニオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型などのノニオン性界面活性剤などが挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤、より好ましくは、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩が挙げられる。
【0113】
乳化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0114】
また、第1ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、例えば、pH調整剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩などの金属イオン封止剤、例えば、メルカプタン類、低分子ハロゲン化合物などの分子量調節剤(連鎖移動剤)など、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0115】
また、第1ポリマーの重合前または第1ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0116】
これにより、第1ポリマー原料が重合され、第1ポリマーが得られる。
【0117】
また、このような第1ポリマーは、水に分散された分散液として得られる。
【0118】
この分散液において、第1ポリマーの固形分濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0119】
次いで、第2工程では、第1ポリマー存在下で、第2ポリマー原料を重合する。
【0120】
具体的には、第1ポリマーを含む水分散液に、第2ポリマー原料および上記した重合開始剤を配合し、その後、好ましくは、熟成する。
【0121】
重合開始剤としては、特に制限されないが、上記した第1ポリマー原料の重合に用いられるものと同様の重合開始剤が挙げられ、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、過硫酸塩、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0122】
なお、重合開始剤を配合するタイミングは、特に制限されず、例えば、第2ポリマー原料を配合する前に重合開始剤を添加してもよく、また、第2ポリマー原料を配合するときに重合開始剤を添加してもよく、また、第2ポリマー原料を配合した後に重合開始剤を添加してもよい。さらには、第2ポリマー原料の重合に使用される重合開始剤を、上記した第1ポリマー原料の重合時に、予め配合してもよい。
【0123】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第2ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、5質量部以下である。
【0124】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0125】
熟成時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0126】
これにより、第2ポリマー原料が重合され、第2ポリマーが得られる。
【0127】
その結果、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)が得られる。
【0128】
また、第1ポリマーの表面において第2ポリマー原料が重合すると、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマー(コア)が、第2ポリマー(シェル)で被覆されているコアシェル粒子として得られる。
【0129】
この分散液において、二次電池セパレータ用コート材原料の含有量(分散液の固形分濃度)は、例えば、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下である。
【0130】
また、分散液のpH値は、例えば、5以上であり、また、例えば、11以下である。
【0131】
上記のpH値が、上記の範囲内であれば、分散安定性が向上し、また、二次電池セパレータ用コート材原料と無機充填剤(後述)との混和安定性が担保される。
【0132】
続いて、第2方法について説明する。
【0133】
第2方法は、第2ポリマー原料を重合してなる第2ポリマーを得る工程(第3工程)と、第2ポリマーの存在下で、第1ポリマー原料を重合してなる第1ポリマーを得る工程(第4工程)とを備える。
【0134】
第3工程では、まず、第2ポリマー原料を重合する。
【0135】
具体的には、水に、第2ポリマー原料および上記した重合開始剤を配合し、水中において、第2ポリマー原料を重合する。
【0136】
重合開始剤としては、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、過硫酸塩、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0137】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0138】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第2ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0139】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0140】
また、第2ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、例えば、pH調整剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩などの金属イオン封止剤、例えば、メルカプタン類、低分子ハロゲン化合物などの分子量調節剤(連鎖移動剤)など、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0141】
これにより、第2ポリマー原料が重合され、第2ポリマーが得られる。
【0142】
また、このような第2ポリマーが水溶液として得られる。
【0143】
第2ポリマーを含む水溶液において、第2ポリマーの固形分濃度は、例えば、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下である。
【0144】
次いで、第4工程では、第2ポリマー存在下で、第1ポリマー原料を重合する。
【0145】
具体的には、第2ポリマーを含む水溶液に、第1ポリマー原料および上記した重合開始剤を配合し、その後、好ましくは、熟成する。
【0146】
重合開始剤としては、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、過硫酸塩、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0147】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0148】
なお、重合開始剤を配合するタイミングは、特に制限されず、例えば、第1ポリマー原料を配合する前に重合開始剤を添加してもよく、また、第1ポリマー原料を配合するときに重合開始剤を添加してもよく、また、第1ポリマー原料を配合した後に重合開始剤を添加してもよい。さらには、第1ポリマー原料の重合に使用される重合開始剤を、上記した第2ポリマー原料の重合時に、予め配合してもよい。
【0149】
また、重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、10質量部以下である。
【0150】
重合条件としては、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0151】
熟成時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、また、例えば、6時間以下である。
【0152】
また、第1ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、上記した乳化剤(界面活性剤)および添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0153】
乳化剤としては、好ましくは、アニオン性界面活性剤、より好ましくは、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩挙げられる。これら乳化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0154】
また、乳化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、第1ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、また、例えば、5質量部以下である。
【0155】
また、第1ポリマーの重合前または第1ポリマーの重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0156】
これにより、第1ポリマー原料が重合され、第1ポリマーが得られる。
【0157】
その結果、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)が得られる。
【0158】
また、水中において先に形成されている第2ポリマー内で、相対的に疎水性の第1ポリマーが重合すると、二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマー(コア)が、第2ポリマー(シェル)で被覆されているコアシェル粒子として得られる。
【0159】
この分散液において、二次電池セパレータ用コート材原料の含有量(分散液の固形分濃度)は、例えば、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下である。
【0160】
また、分散液のpH値は、例えば、5以上であり、また、例えば、11以下である。
【0161】
上記のpH値が、上記の範囲内であれば、分散安定性が向上し、また、二次電池セパレータ用コート材原料と無機充填剤(後述)との混和安定性が担保される。
【0162】
このような二次電池セパレータ用コート材原料において、第1ポリマーの質量に対する、第2ポリマーの質量の比率(第2ポリマー/第1ポリマー)が、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得る観点から、4以上、好ましくは、7以上、より好ましくは、9以上であり、250以下、好ましくは、200以下、より好ましくは、50以下、さらに好ましくは、40以下、とりわけ好ましくは、20以下である。
【0163】
なお、第1ポリマーの質量および第2ポリマーの質量は、第1ポリマー原料および第2ポリマー原料の仕込みの量から算出することができる。すなわち、上記の第2ポリマーの質量とは、第2ポリマー原料の質量を意味し、上記の第1ポリマーの質量とは、第1ポリマー原料の質量を意味する。
【0164】
また、二次電池セパレータ用コート材原料の体積平均粒子径(D50)は、後述する多孔膜の細孔に対するコアシェル粒子の浸透を抑制し、優れた透気性を得る観点から例えば、0.2μm以上、好ましくは、0.4μm以上、より好ましくは、0.6μm以上であり、例えば、5.0μm以下、好ましくは、2.0μm以下である。
【0165】
上記の体積平均粒子径は、粒子径測定装置(大塚電子社製、FPAR1000)にて粒子径を測定することにより求めることができる。
【0166】
上記の二次電池セパレータ用コート材原料は、第1ポリマーを含むコア層と、前記第1ポリマーを被覆し、第2ポリマーを含むシェル層とを備えるコアシェル粒子を含み、第1ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位を有する。また、第2ポリマーが、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを、所定割合で有している。そして、第1ポリマーの質量に対する、第2ポリマーの質量の比率(第2ポリマー/第1ポリマー)が、所定範囲に調整されている。
【0167】
そのため、上記の二次電池セパレータ用コート材原料によれば、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得られる。
【0168】
すなわち、二次電池セパレータ用コート材(後述)では、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含むコアシェル粒子が、無機充填剤(後述)に対して吸着し、無機充填剤(後述)を結着させることによって、耐熱性の向上が図られる。
【0169】
この点、第2ポリマー中の(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位が過度に少ない場合、第2ポリマーの無機充填剤(後述)に対する結着性が十分ではなく、耐熱性を十分に得られない。
【0170】
また、第2ポリマー中の(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位が過度に多い場合、第2ポリマー中のカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位が、少なくなる。
【0171】
そして、例えば、第2ポリマー中のカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位が過度に少ない場合、第2ポリマーの無機充填剤(後述)に対する吸着性が十分ではなく、耐熱性を十分に得られない。
【0172】
また、第2ポリマー中のカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位が過度に多い場合、1つの無機充填剤(後述)に吸着するコアシェル粒子が多くなり、無機充填剤(後述)を均一に結着させることができないため、耐熱性を十分に得られない。
【0173】
これらに対して、コアシェル粒子において、シェル層(第2ポリマー)の、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率、および、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、所定範囲に調整され、さらに、第1ポリマーの質量に対する第2ポリマーの質量の比率(第2ポリマー/第1ポリマー)が、所定範囲に調整されていれば、耐熱性、透気性、密着性および耐電解液性を、バランスよく得られる。
【0174】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料と、必要により、無機充填剤と、分散剤とを含んでいる。
【0175】
二次電池セパレータ用コート材原料の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材原料と、無機充填剤と、分散剤との総量(以下、二次電池セパレータ用コート材成分とする。
【0176】
)100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、10質量部以下(固形分)である。
【0177】
無機充填剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物、例えば、シリコンカーバイド、炭酸カルシウムなどの炭化物、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムなどの水酸化物、例えば、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラスなどのケイ酸物、例えば、チタン酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは、酸化物、水酸化物、より好ましくは、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。
【0178】
無機充填剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、50質量部以上(固形分)であり、また、例えば、99.7質量部以下(固形分)である。
【0179】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0180】
分散剤がポリカルボン酸アンモニウムであれば、上記の二次電池セパレータ用コート材原料および無機充填剤を均一に分散させることができ、厚みが均一な塗布膜(後述)を得ることができる。
【0181】
分散剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、5質量部以下(固形分)である。
【0182】
二次電池セパレータ用コート材を得るには、まず、水に、無機充填剤および分散剤を上記の割合で配合し、無機充填剤分散液を調製する。
【0183】
次いで、その無機充填剤分散液に、二次電池セパレータ用コート材原料(または二次電池セパレータ用コート材原料を含む分散液)を上記の割合で配合し、撹拌する。
【0184】
撹拌方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根などによる機械撹拌などが挙げられる。
【0185】
これにより、二次電池セパレータ用コート材が得られる。
【0186】
また、このような二次電池セパレータ用コート材は、水に分散された分散液として得られる。
【0187】
また、二次電池セパレータ用コート材には、必要により、親水性樹脂、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を、適宜の割合で配合することができる。
【0188】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0189】
上記の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含むため、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを得られる。
【0190】
そして、この二次電池セパレータ用コート材は、二次電池セパレータのコート材として、好適に用いることができる。
【0191】
本発明の二次電池セパレータは、多孔膜を準備する工程、および、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する工程を備える製造方法により製造することができる。
【0192】
多孔膜を準備する工程では、多孔膜を準備する。
【0193】
多孔膜は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン多孔膜、例えば、芳香族ポリアミド多孔膜などが挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン多孔膜が挙げられる。多孔膜は、必要に応じて、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。
【0194】
多孔膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは5μm以上であり、また、例えば、40μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0195】
次いで、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する工程では、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材の分散液を塗布し、その後、必要により、乾燥させ、これにより塗布膜を得る。
【0196】
塗布方法としては、特に制限がなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、マイクログラビアコート法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
【0197】
乾燥条件として、乾燥温度は、例えば、40℃以上であり、また、例えば、80℃以下である。
【0198】
塗布膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0199】
これにより、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備えた二次電池セパレータが製造される。
【0200】
なお、上記した説明では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を配置したが、多孔膜の両面に、上記の塗布膜を配置することもできる。
【0201】
上記の二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えるため、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる。
【0202】
また、上記の二次電池セパレータの製造方法によれば、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる二次電池セパレータを、効率よく製造できる。
【0203】
そして、この二次電池セパレータは、二次電池のセパレータとして、好適に用いることができる。
【0204】
本発明の二次電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に配置される上記の二次電池セパレータと、正極、負極および上記の二次電池セパレータに含浸される電解質とを備える。
【0205】
正極としては、例えば、正極用集電体と、正極用集電体に積層される正極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0206】
正極用集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスの導電材料などが挙げられる。
【0207】
正極活物質としては、特に制限されないが、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩など、公知の正極活物質が挙げられる。
【0208】
これら正極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0209】
負極としては、例えば、負極用集電体と、負極用集電体に積層される負極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0210】
負極用集電体としては、例えば、銅やニッケルの導電材料などが挙げられる。
【0211】
負極活物質としては、特に制限されないが、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの炭素活物質などが挙げられる。
【0212】
これら負極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0213】
電解質として、二次電池として、リチウムイオン電池が採用される場合には、例えば、リチウム塩が、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などのカーボネート化合物に溶解された溶液が挙げられる。
【0214】
そして、二次電池を製造するには、例えば、二次電池のセパレータを、正極と、負極との間に挟み込み、これらを電池筐体(セル)に収容して、電解質を電池筐体に注入する。
【0215】
これにより、二次電池を得ることができる。
【0216】
上記の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、耐熱性および透気性に優れ、さらに、密着性および耐電解液性にも優れる。その結果、上記の二次電池は、耐久性および発電効率に優れる。
【実施例
【0217】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0218】
1.二次電池セパレータ用コート材原料の調製
【0219】
製造実施例1
【0220】
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水を260.0部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、過硫酸アンモニウムを0.5部添加したのち、乳化した下記第1ポリマー原料を20分かけて連続的に添加した。
【0221】
n-ブチルアクリレート5.0部
【0222】
スチレン4.5部
【0223】
アクリルアミド0.47部
【0224】
メタクリル酸0.03部
【0225】
ラウリル硫酸アンモニウム0.1部
【0226】
蒸留水10.0部
【0227】
30分保持した後、更に、以下の第2ポリマー原料および水の混合物を、攪拌しながら3時間かけて連続的に添加した後、同温度で3時間熟成し、重合を完結させた。その後、水を適量加え、セパレータ用コート材原料を得た。分散液の固形分濃度は、10.0質量%であった。
【0228】
メタクリルアミド291.0部
【0229】
メタクリル酸32.3部
【0230】
25%アンモニア水18.1部
【0231】
蒸留水1017.5部
【0232】
また、第1ポリマーおよび第2ポリマーのガラス転移温度(Tg)を、下記のFOX式により算出した。
【0233】
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg(1)
[式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Tg(i=1、2、・・・n)は、単量体iが単独重合体を形成するときのガラス転移温度(単位:K)、W(i=1、2、・・・n)は、単量体iの全単量体中の質量分率を表す。]
また、粒子径測定装置(大塚電子社製、FPAR1000)により、分散液中のコアシェル粒子の体積平均粒子径(D50)を、測定した。
【0234】
製造実施例2~製造実施例、および、製造比較例1~製造比較例4
【0235】
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、製造実施例1と同様に処理して、セパレータ用コート材原料を製造した。また、製造実施例1と同様に、第1ポリマーおよび第2ポリマーのガラス転移温度を算出し、コアシェル粒子の体積平均粒子径(D50)を、測定した。
【0236】
製造比較例5
【0237】
国際公開WO2017/026095号の実施例1に準拠して、セパレータ用コート材原料としての分散液を得た。
【0238】
すなわち、攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、下記水溶性重合体の原料成分を仕込み、窒素ガスで反応系内の酸素を除去した。次いで、撹拌下、重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液7部および5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3部をフラスコに投入した後、室温から80℃まで昇温し、3時間保温して、重合させた。その後、イオン交換水162部を加え、水溶性重合体の水溶液を得た。
【0239】
アクリルアミド90部
【0240】
メタクリル酸9部
【0241】
ジメチルアクリルアミド1部
【0242】
イオン交換水365部
【0243】
イソプロピルアルコール5部
【0244】
別途、撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.15部、および、重合開始剤としてのペルオキソ二硫酸アンモニウム0.5部を供給し、気相部を窒素ガスで置換して、60℃に昇温した。その後、反応器に、以下の粒子状重合体を連続的に添加し、添加中は60℃で重合させ、添加終了後は70℃で3時間撹拌してから反応を終了させた。これにより、粒子状重合体の分散液を得た。
【0245】
イオン交換水50部
【0246】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部
【0247】
n-ブチルアクリレート94.8部
【0248】
メタクリル酸1部
【0249】
アクリロニトリル2部
【0250】
N-メチロールアクリルアミド1.2部
【0251】
アリルグリシジルエーテル1部
【0252】
そして、得られた水溶性重合体の分散液と、粒子状重合体の分散液とを混合し、混合分散液を得た。なお、混合比率は、水溶性重合体1質量部に対して、粒子状重合体が2質量部となる割合とした。
【0253】
また、製造実施例1と同様に、水溶性重合体および粒子状重合体のガラス転移温度を算出した。
【0254】
また、粒子径測定装置(大塚電子社製、FPAR1000)により、分散液中のポリマーの体積平均粒子径(D50)を、測定した。
【0255】
2.二次電池セパレータ用コート材および二次電池セパレータの製造
【0256】
実施例1
【0257】
顔料として、水酸化酸化アルミニウム(大明化学社製、ベーマイトGradeC06、粒子径:0.7μm)100質量部、分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)3.0質量部(固形分換算)を、110質量部の水に均一に分散させて顔料分散液を得た。次いで、この顔料分散液に製造実施例1で製造した分散液を、固形分換算で5質量部となるよう添加し、更に固形分が40%となるよう水を加えて調整し、15分間撹拌して二次電池セパレータ用コート材を調製した。
【0258】
一方、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、コロナ処理した。より具体的には、ポリオレフィン樹脂多孔膜として、品番SW509C+(膜厚9.6μm、空隙率40.6%、透気度158g/100ml、面密度5.5g/m、常州星源新能源材料有限公司)を準備した。次いで、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、A4サイズにカットし、その後、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、スイッチバック自動走行式コロナ表面処理装置(ウェッジ株式会社製)により、出力0.15KW、搬送スピード3.0m/s×2回、および、コロナ放電距離9mmの条件で、コロナ処理した。
【0259】
次いで、ワイヤーバーを用いて、コロナ処理したポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に、上記の二次電池セパレータ用コート材を塗工した。塗工後、50℃で乾燥することにより、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に5μmの塗布膜を形成した。
【0260】
これにより、二次電池セパレータを製造した。
【0261】
実施例2~実施例、および、比較例1~比較例5
【0262】
製造実施例1で製造した分散液に代えて、製造実施例2~製造実施例、および、製造比較例1~製造比較例5で製造した分散液を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、二次電池セパレータを製造した。
【0263】
3.評価
【0264】
(耐熱性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータを5cm×5cmに切り出し、これを試験片とした。この試験片を150℃×1時間オーブン内に放置した後、各辺の長さを測定し、熱収縮率を算出した。また、耐熱性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表2に示す。
【0265】
A:熱収縮率が15%未満であった。
【0266】
B:熱収縮率が15%以上25%未満であった。
【0267】
C:熱収縮率が25%以上60%未満であった。
【0268】
D:熱収縮率が60%以上であった。
【0269】
(イオン透過性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータについて、旭精工社製の王研式透気度平滑度試験機により、JIS-P-8117に準じて測定した透気抵抗度を求めた。透気抵抗度が小さいほど、イオン透過性に優れると評価した。また、イオン透過性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表2に示す。
【0270】
A:透気抵抗度が180s/100mL未満であった。
【0271】
B:透気抵抗度が180s/100mL以上220s/100mL未満であった。
【0272】
C:透気抵抗度が220s/100mL以上300s/100mL未満であった。
【0273】
D:透気抵抗度が300s/100mL以上であった。
【0274】
(密着性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータを5cm×10cmに切り出し、これを試験片とした。JIS Z1522に準ずる方法で180°ピール試験を実施した。その際、セロハン粘着テープの引っ張り速度は10mm/分とした。測定は3回実施し、その平均値を算出した。また、密着性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表2に示す。
【0275】
A:接着強度の平均値が70N/m以上であった。
【0276】
B:接着強度の平均値が50N/m以上70N/m未満であった。
【0277】
C:接着強度の平均値が30N/m以上50N/m未満であった。
【0278】
D:接着強度の平均値が30N/m未満であった。
【0279】
(耐電解液性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材原料を、ポリプロピレン製のトレイに塗布後、室温で一昼夜乾燥し、さらに室温で8時間減圧乾燥することで、500μmのフィルムを得た。得られたフィルムをエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/1(w/w)溶液に90℃で7時間放置し、膨潤したフィルムの重量を測定した。膨潤フィルムの重量/膨潤前の重量比を算出した。また、耐電解液性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表2に示す
【0280】
A:膨潤率が150%未満であった。
【0281】
B:膨潤率が150%以上200%未満であった。
【0282】
C:膨潤率が200%以上300%未満であった。
【0283】
D:膨潤率が300%以上であった。
【0284】
【表1】
【0285】
【表2】
【0286】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0287】
Mam:メタクリルアミド
【0288】
Mac:メタクリル酸
【0289】
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0290】
AM:アクリルアミド
【0291】
DMAM:ジメチルアクリルアミド
【0292】
St:スチレン
【0293】
BA:n-ブチルアクリレート
【0294】
AN:アクリロニトリル
【0295】
N-MAM:N-メチロールアクリルアミド
【0296】
AGE:アリルグリシジルエーテル
【0297】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0298】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池は、二次電池が要求される各種産業分野において、好適に用いられる。