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特許7549005チェビシェフ四節リンクを用いたサスペンションを有する車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】チェビシェフ四節リンクを用いたサスペンションを有する車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/04 20060101AFI20240903BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20240903BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B62K25/04
B62K5/10
B62K5/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022515549
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2020058235
(87)【国際公開番号】W WO2021048716
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】102019000015908
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-080882(JP,A)
【文献】特開2016-175441(JP,A)
【文献】米国特許第04431204(US,A)
【文献】特表2002-526314(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1324309(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/04
B62K 5/10
B62K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの後側駆動輪(5;105;205)及び少なくとも第一前側操舵輪(7;107;207X,207Y)を備え、
前記第一前側操舵輪が、操舵軸(A-A)を中心に回転運動を行う回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続されている鞍乗り型車両(1;107;207)であって、
車輪支持体(37;137)が、サスペンション(17;117;217X,217Y)を介して前記回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続され、
前記サスペンション(17;117;217X,217Y)が、ショックアブソーバ(22;122)を備え、
前記車輪支持体(37;137)が、第一前側操舵輪(7;107;207X、207Y)を支持し、かつ、前記第一前側操舵輪(7;107;207)の回転軸(B-B)を画定する
鞍乗り型車両において、
前記サスペンション(17;117)が、チェビシェフ四節リンクを備えている
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記チェビシェフ四節リンクが、第一クランク(31;131)及び第二クランク(33;133)を備え、
前記第一クランク(31;131)が、第一ヒンジ(31A;131A)によって前記回転可能なアーム(9;109)に、かつ、第二ヒンジ(31B;131B)によってチェビシェフ四節リンクの連結ロッド(35;135)にヒンジ結合され、
前記第二クランク(33;133)が、第一ヒンジ(33A;133A)によって前記回転可能なアーム(9;109)に、かつ、第二ヒンジ(33B;133B)によって前記連結ロッド(35;135)にヒンジ結合され、
前記車輪支持体(37;137)が、第一前側操舵輪(7;107)の回転軸(B-B)が、第一クランク(31;131)の第二ヒンジ(31B;131B)及び第二クランク(33;133)の第二ヒンジ(33B;133B)からほぼ等距離となるように連結ロッド(35;135)の拘束点に拘束されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第一クランク(31;131)及び前記第二クランク(33;133)が、前記サスペンション(17;117)の任意の位置で交差している
ことを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記車輪支持体(37)が、前記第一前側操舵輪(7)の回転軸(B-B)が前記第一クランク(31)及び第二クランク(33)の第一ヒンジ(31A,33A)及び第二ヒンジ(31B,33B)の軸と平行になるように前記連結ロッド(35)に拘束されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
車輪支持体(37)が、連結ロッド(35)に堅固に接続され、かつ、前記第一前側操舵輪(7)を支持するベアリング用のハウジングを形成している
ことを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記第一クランク(131)の前記第一ヒンジ(131A)及び第二ヒンジ(131B)並びに前記第二クランク(133)の前記第一ヒンジ(133A)及び第二ヒンジ(133B)が、互いに実質的に平行で、かつ、前記第一前側操舵輪(107)の回転軸(B-B)を含む平面に対して直交する軸を有している
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両。
【請求項7】
車輪支持体(137)が、前記第一クランク(131)及び第二クランク(133)の前記第一ヒンジ(131A,133A)及び第二ヒンジ(131B,133B)の軸に実質的に平行な軸(C-C)の周りで連結ロッド(135)にヒンジ結合されている
ことを特徴とする請求項6に記載の車両。
【請求項8】
車輪支持体(137)が、前記第一前側操舵輪(107)の回転軸(B-B)が、車輪支持体(137)を連結ロッド(135)にヒンジ結合する軸に直交するような位置で、前記第一前側操舵輪(107)を支持している
ことを特徴とする請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記第一クランク(131)及び第二クランク(133)の第一ヒンジ(131A,133A)が、前記回転可能なアームの第一側に配置され、
前記第一クランク(131)及び第二クランク(133)の第二ヒンジ(131B,133B)が、前記回転可能なアームにおける前記第一側と反対側にある第二側に配置され、
連結ロッド(135)が、前記第二側に配置されている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の車両。
【請求項10】
前記第一前側操舵輪(107)が、前記回転可能なアーム(109)の前記第二側にあ
ことを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記第一前側操舵輪(7;107;207X,207Y)と一体のディスク(23;123)及びキャリパ(25;125)を備えたディスクブレーキを有し、
前記キャリパが、車輪支持体(37;137)に堅固に連結されている
ことを特徴とする請求項2~10の何れか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記第一前側操舵輪(7;107;207X,207Y)と一体のディスク(23;123)及びキャリパ(25;125)を備えたディスクブレーキを有し、
前記キャリパが、前記第一前側操舵輪(107)の回転軸(B-B)を中心に回転可能な連結ロッド(35;135)及び車輪支持体(37;137)に対して遊動的に設けられた支持部材に堅固に連結されている
ことを特徴とする請求項2~10の何れか一項に記載の車両。
【請求項13】
ショックアブソーバ(22;122)が、
その一側で、回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続され、
その他側で、連結ロッド(35;135)又はチェビシェフ四節リンクのクランク(31,33;131,133)の一つに堅固に接続された点に接続されている
ことを特徴とする請求項2~12の何れか一項に記載の車両。
【請求項14】
ショックアブソーバ(22;122)が、
その一側で回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続され、
その他側で車輪支持体(37;137)に堅固に接続された点に接続されている
ことを特徴とする請求項2~13の何れか一項に記載の車両。
【請求項15】
第二前側操舵輪(207X,207Y)であって、第二操舵軸(A-A)を中心に回転運動する第二の回転可能なアーム(209X,209Y)に接続され、第二のサスペンション(217X,217Y)を介在させて、前記第二前側操舵輪の車輪支持体に接続される第二前側操舵輪(207X,207Y)を備え、
前記第二のサスペンションが、車両の中心面に対して、前記第一前側操舵輪のサスペンションのチェビシェフ四節リンクと実質的に対称であるチェビシェフ四節リンクと、ショックアブソーバとを備え、
前記第一前側操舵輪(207X)と、前記第二前側操舵輪(207Y)とが、フレーム(203)にヒンジ結合されたローリング四節リンク(220)によって車両(201)のフレーム(203)に接続されている
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の車両。
【請求項16】
前記第一前側操舵輪(207X)が接続される第一の回転可能なアーム(209X)と、前記第二前側操舵輪(207Y)が連結される第二の回転可能なアーム(209Y)が、それぞれローリング四節リンク(220)の右側直立部(226X)及び左側直立部(226Y)に回転可能に支持され、
前記右側直立部(226X)及び前記左側直立部(226Y)が、車両の中心面に対して左右方向に延び、前記右側直立部(226X)及び前記左側直立部(226Y)にヒンジ結合される第一クロス部材(222)及び第二クロス部材(224)によって相互に連結されている
ことを特徴とする請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記連結ロッド(135)が、前記第一前側操舵輪(107)と回転可能なアーム(109)の間に位置している、請求項10に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪、三輪又は四輪の鞍乗り型車両の改良に関するものである。より具体的には、本発明は、例えば二輪又は三輪のオートバイ、二輪又は三輪のスクータ、クワッドバイク等のような、一つ又は二つの後側駆動輪と一つ又は二つの前側操舵輪を有する傾斜式鞍乗り型車両の前側サスペンションの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪、三輪又は四輪の鞍乗り型車両は、典型的には、それら自身の後側サスペンションを介して車両のフレームに接続された一つ又は二つの後側駆動輪と、ハンドルバーに接続され、それぞれの前側サスペンションを備えた一つ又は二つの前側操舵輪とを備えている。サスペンションは、車両のいわゆるバネ上質量をバネ下質量に連結し、バネ上質量とバネ下質量との間の相対運動を可能にするものである。サスペンションは、通常、ショックアブソーバサスペンションであり、それぞれのショックアブソーバを備え、ショックアブソーバは、弾性部材、典型的にはばね、及びブレーキ又はダンパを順に備えている。また、サスペンションは、ばね上質量をばね下質量に接続し、それらの間の相対運動を可能にする機械部材を備え、それにより、地面の粗さや不規則性によって車輪に伝達される衝撃が車両シャーシに伝達されないように、又は減衰された状態で伝達されるようにする。
【0003】
オートバイ、スクータ、クワッドバイク等の鞍乗り型車両では、前側操舵輪のサスペンションにより、一方でハンドルバーと操舵柱、他方で前側操舵輪又は複数の車輪の間の相対運動が可能になる。鞍乗り型車両の前側操舵輪の幾つかのサスペンションには、前記の相対運動を可能にするために、部材が互いに摺動する入れ子式フォークを用いたものがある。この入れ子式フォークは、相互に摺動関係にある部材を有する円筒対偶を使用するため、これらのフォークは、相対運動の典型的な欠点をいくつか有している。一方、他のタイプのサスペンションは、相互に回転関係にある部材を有する回転対偶を使用する。この場合、バネ上質量とバネ下質量の間に、四節リンク、典型的には、一つの四節リンクが介在され、これが変形することで、バネ上質量(車両シャーシ及びこれに連結される部材)とバネ下質量(車輪、ブレーキ)との間のサスペンション動作が可能になる。回転対偶は、四節リンクの構成要素を互いに結合するヒンジで表される。
【0004】
バネ上質量及びバネ下質量の連結のために回転対偶を備えた運動学的機構を用いたサスペンションは、直進対偶や円筒対偶に対する回転対偶の利点を有するが、前側操舵輪軸の直進運動ができない。サスペンション動作において、実際、例えば凹凸のある地面によりサスペンションが収縮及び伸長する時、又はフレームで発生し、サスペンションを介して車輪に加えられる動的力による制動時に、車輪軸は非直線運動を行い、結果として地面上の車輪の横方向の摺動運動が生じ、例えば、スキップの問題を誘発することがある。
【0005】
従って、入れ子式フォークサスペンションの利点と、回転対偶運動的機構を使用するサスペンションの利点とを組み合わせることを可能した、二つ又はそれ以上の車輪を有する鞍乗り型車両の前側操舵輪用サスペンションを提供することは有益である。
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、本明細書では、少なくとも一つの後側駆動輪と少なくとも第一の前側操舵輪とを備え、前記前側操舵輪が、操舵軸を中心に回転運動するように設けられた回転可能なアームに接続されている鞍乗り型車両が開示される。車輪支持体は、サスペンションを介在させて、回転可能なアームに接続されており、前記サスペンションは、車輪支持体及びそれに取り付けられた車輪を回転可能なアームに接続する。サスペンションは、ショックアブソーバを含む。車輪支持体は、前側操舵輪を支持し、当該車輪の回転軸を画定する。例えば、車輪支持体には、車輪支持軸が固定され得、また、車輪支持体には、車軸を支持するベアリングが設けられ得る。特徴的には、サスペンションは、チェビシェフ四節リンク(チェブイシェフ四節リンク、チェビシェフ機構又はチェブイシェフ機構とも呼ばれる)を備えている。
【0007】
実用的な実施形態では、チェビシェフ四節リンクは、第一ヒンジを用いて回転可能なアームにヒンジ結合され、第二ヒンジを用いてチェビシェフ四節リンクの連結ロッドにヒンジ結合された第一クランクを有する。第二クランクは、回転可能なアームに第一ヒンジを用いて、連結ロッドに第二ヒンジを用いてヒンジ結合されている。車輪支持体は、前側操舵輪の回転軸が、第一クランクの第二ヒンジと第二クランクの第二ヒンジからほぼ等距離になる拘束点で、連結ロッドに拘束されている。
【0008】
実用的な実施形態では、第一クランク及び第二クランクは、サスペンションの任意の位置で交差し、即ち、車両の通常の使用中にサスペンションが取り得る全ての位置において互いに交差したままである。
【0009】
幾つかの実施形態では、前側操舵輪の回転軸が、第一クランク及び第二クランクの第一ヒンジ及び第二ヒンジの軸と平行になるように、車輪支持体が連結ロッドに拘束されている。この場合、チェビシェフ四節リンクのヒンジの軸は、実質的に車両に対して右左方向に配向されている。
【0010】
本明細書に記載された実施形態では、車輪支持体は連結ロッドに堅固に接続され、前側操舵輪の支持ベアリングのための座を形成する。前記座は、車輪と一体の軸を受けるベアリングが挿入されるように構成された座であり得る。逆に、前記座は、車輪支持体と堅固に一体化された軸によって形成され得、そこに車輪を支持するベアリングがキー止めされ得る。
【0011】
他の実施形態では、チェビシェフ四節リンクのヒンジ軸は、互いに平行であり得、前側操舵輪の回転軸を含む平面に対して直交され得る。この場合、チェビシェフ四節リンクのヒンジの軸は、車両の前後方向に延びる平面と実質的に平行である。
【0012】
幾つかの構成では、車輪支持体は、チェビシェフ四節リンクのヒンジの軸に実質的に平行な軸に従って、チェビシェフ四節リンクの連結ロッドにヒンジ結合されている。
【0013】
車輪支持体は、前側操舵輪の回転軸が、チェビシェフ四節リンクの連結ロッドに車輪支持体をヒンジ結合する軸に直交するような位置で前側操舵輪を支持する。
【0014】
幾つかの実施形態では、第一クランク及び第二クランクの第一ヒンジが、回転可能なアームの第一側に配置され、第一クランク及び第二クランクの第二ヒンジが、回転可能なアームの第二側、即ち、第一側の反対側に配置されている。連結ロッドは、前記第二側に配置されている。好ましくは、前側操舵輪は、回転可能なアームの前記第二側に配置され、連結ロッドは、前側操舵輪と回転可能なアームとの間に配置され得る。
【0015】
サスペンションのショックアブソーバは、一般に、サスペンションの動作中に互いに相対的に移動し、それによってショックアブソーバを伸長及び短縮させるサスペンションの二点間に接続される。実用的な実施形態では、ショックアブソーバは、一側で回転可能なアームに接続され、他方で、車輪支持体に堅固に連結された点、又はチェビシェフ四節リンクの残りの要素の一つ、即ち、第一クランク、第二クランク又は連結ロッドに堅固に連結された点に接続されている。
【0016】
本発明の別の態様によれば、
少なくとも一つの後側駆動輪及び少なくとも第一前側操舵輪を備え、 前記前側駆動輪が、操舵軸を中心に回転運動を行う回転可能なアームに接続されている鞍乗り型車両であって、
車輪支持体が、サスペンションを介して前記回転可能なアームに接続され、前記前側操舵輪を支持し、かつ、前記車輪の回転軸を画定し、
前記サスペンションが、第一端部が回転可能なアームにヒンジ結合され、かつ、第二端部が連結ロッドにヒンジ結合された第一クランクと、第一端部が回転可能なアームにヒンジ結合され、第二端部が連結ロッドにヒンジ結合された第二クランクとを有する四節リンクを備え、
車輪支持体が、連結ロッド拘束点に拘束され、前記四節リンクが、サスペンションのサスペンション動作の効果による四節リンクの変形中に、拘束点がほぼ直線的軌道で動くように構成されている
鞍乗り型車両が提供される。
本発明は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を示す説明及び添付図面に従うことによって、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る前側サスペンションを備えた二輪車両の部品を取り除いた不等角投影図である。
図2図1の車両の正面図である。
図3図2のIII-III線に沿った側面図である。
図4A図1図3に示したサスペンションの伸長状態の拡大側面図である。
図4B図1図3に示したサスペンションの収縮伸長状態の拡大側面図である。
図5図4AのV-V線に従った正面図である。
図6A図4A図4B及び図5のサスペンションの不等角投影図である。
図6B図4A図4B及び図5のサスペンションの不等角投影図である。
図7図4A図4B図5図6A及び図6Bのサスペンションの分解図である。
図7A図4図7に示したサスペンションの、二つの異なる位置、即ち、ショックアブソーバの最大収縮位置及び最大伸長位置を示す概略図である。
図8】別の実施形態のサスペンションの、図9のVIII-VIII線に従った側面図である。
図9図8のIX-IX線に従った正面図である。
図10図8及び図9に示したサスペンションの不等角投影図である。
図11図8及び図9に示したサスペンションの不等角投影図である。
図12図9図11に示したサスペンションの分解図である。
図13】前側サスペンションの別の実施形態の図14のXIII-XIII線に沿った側面図である。
図14図13のXIV-XIV線に沿った正面図である。
図15図13及び図14に示したサスペンションの不等角投影図である。
図16図13及び図14に示したサスペンションの不等角投影図である。
図17図13図16に示したサスペンションの分解図である。
図18】二つの前側操舵輪用のダブルチェビシェフ四節リンクを備えた三輪車両の不等角投影図である。
図19図20のXIX-XIX線に従った、図18の車両の正面図である。
図20図19のXX-XX線に従った側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図2図3図4A図4B図5図6図7及び図7Aは、その第一実施形態に係るチェビシェフ四節リンクサスペンション、即ち、チェビシェフ機構を備えた二輪車両を示す図である。
【0019】
図1図2及び図3を参照しいて車両1を簡単に説明する。これらの図において、サスペンションの構造及び動作を理解するのに必要でない車両の部品は、取り除かれるか、又は省略されている。車両1は、フレーム3、後側駆動輪5、前側操舵輪7を備えている。車輪5及び7は、サスペンションによってフレーム3に連結されている。駆動輪5をフレームに連結する後側サスペンションは、図示されておらず、公知の方法で構成することができる。以下、前側操舵輪7をフレーム3に連結する前側サスペンションについて詳細に説明する。
【0020】
前側操舵輪7は、回転可能なアーム9に接続されている。回転可能なアーム9は、操舵管13に回転可能に収容された操舵柱11に堅固に連結され、ハンドルバー15によって操舵軸線A-Aを中心に回転するように操作可能である。軸線A-Aを中心とする回転可能なアーム9の回転により、車両1を操舵することができる。
【0021】
前側操舵輪7は、サスペンション17によって回転可能なアーム9に接続されており、前記サスペンション17は、操舵管13及び操舵柱11を含むフレーム3、ハンドルバー15及び回転可能なアーム9の前側操舵輪7に対するサスペンション動作を可能にする。サスペンション17は、ショックアブソーバ式サスペンションであり、前側操舵輪7と回転可能なアーム9との間のリンク機構と、ショックアブソーバとを備えている。ショックアブソーバは、弾性要素及びブレーキ又はダンパを順に備えている。図示された実施形態では、ショックアブソーバは符号22で、弾性要素は符号21で、ブレーキ又はダンパは符号19で示されている。ブレーキ又はダンパ19は、らせん状ばねの形態の弾性要素21の内部に同軸に収容されている。
【0022】
前側操舵輪7は、サスペンション17によって、自身の回転軸B-Bを中心に回転するように支持されている。
【0023】
符号23は、車両1の前側ブレーキのディスクを示している。このブレーキは、さらに、後述する態様でサスペンション17によって支持され得るキャリパ25を備えている。
【0024】
サスペンション17は、回転対偶によって互いに接続された構成要素、即ち、各ヒンジ軸を中心とする回転運動によって表される単一の自由度に従って互いに相対的に移動する構成要素を備えている。
【0025】
有利には、前側操舵輪7を回転可能なアーム9に接続する回転対偶を有する運動系は、いわゆるチェビシェフ四節リンク、即ち、チェビシェフ機構を備えている。チェビシェフ四節リンクは、回転可能なアーム9に加えて、第一クランク31及び第二クランク33を有する。二つのクランク31及び33は、チェビシェフ四節リンク、即ち、チェビシェフ機構の一部でもある回転可能なアーム9及び連結ロッド35にヒンジ結合されている。第一クランク31及び第二クランク33は、回転可能なアーム9及び連結ロッド37との連結のためのヒンジが配置されている各端部間の中間点で交差している。サスペンション17に挿入されたチェビシェフ四節リンクの構成は、サスペンション17が走行中に取り得る様々な位置、即ち、サスペンション17の最大伸長位置から最大収縮位置までの様々な位置の何れの位置においても、二つのクランク31及び33が交差位置を維持するようにされている。
【0026】
より具体的には、第一クランク31は、第一ヒンジ31Aを介して回転可能なアーム9にヒンジ結合され、第二ヒンジ31Bを介して連結ロッド35にヒンジ結合されている。これに対し、第二クランク33は、第一ヒンジ33Aを介して回転可能なアーム9に、第二ヒンジ33Bを介して連結ロッド35にヒンジ結合されている。ヒンジ31A、31B、33A及び33Bは、チェビシェフ四節リンクの回転対偶を表している。
【0027】
クランク31及び33は、ほぼ同じ長さで、連結ロッド35より短い。構成要素31、33及び35の長さは、各ヒンジの軸間の距離として意図されている。従って、例えば、第一クランク31の長さは、ヒンジ31A及び31Bの軸間距離で与えられ、第二クランク33の長さは、ヒンジ33A及び33Bの軸間距離で与えられ、連結ロッド35の長さは、ヒンジ31B及び33Bの軸間距離で与えられる。
【0028】
より具体的には、各クランクの長さ、ヒンジ31A及び33A間の距離、並びにヒンジ31B及び33B間の距離の比は、5:4:2に等しい。
【0029】
符号37で示される車輪支持体は、特に図7に示すように、ヒンジ31B及び33B間の軸間と実質的に等しい連結ロッド35の拘束点に拘束されている。実際には、車輪支持体37は、車輪の回転軸B-Bを画定し、該軸をヒンジ31B及び33Bの軸間の中間位置で連結ロッド35に直交させた状態を維持する。図1図7の実施形態では、ディスクブレーキ23のキャリパ25は、特に図7の分解図に示すように、車輪支持体37に堅固に固定されている。図示の実施形態では、車輪支持体37は、実際には、前側操舵輪7の回転軸を支持するベアリング座を構成する。
【0030】
図1図7の実施形態では、ショックアブソーバ22も連結ロッド35にヒンジ結合されている。より詳細には、ショックアブソーバ22は、一端22Aで回転可能なアーム9に、他端22Bで連結ロッド35にヒンジ結合されている。ショックアブソーバ22の一側と回転可能なアーム9との拘束、及びショックアブソーバ22の他側と連結ロッド35との間の拘束は、球面ヒンジで構成され得る。
【0031】
サスペンション17及びショックアブソーバ22の伸長位置及び収縮位置を示す図4A及び4Bから容易に理解できるように、前側操舵輪7のサスペンション動作は、チェビシェフ四節リンクの変形運動によって、より詳細には、回転可能なアーム9にヒンジ結合されたクランクを介した、軸31A及び33Aを中心としたクランク31及び33のピボット運動によって可能にされる。このようなピボット運動は、連結ロッド35の回転並進運動及びショックアブソーバ22の圧縮/伸長に対応している。チェビシェフ四節リンクの構成は、図4A及び図4Bの両方の位置において、かつ、二つのクランク31及び33の任意の中間位置において、二つのクランク31及び33が相互に交差するようにされている。前記クランクのピボット運動の範囲において、連結ロッド37の中間点の軌跡はほぼ直線的であり、その結果、前側操舵輪7の回転軸B-Bの軌跡はほぼ直線的である。
【0032】
チェビシェフ四節リンクの特性により、少なくともクランク31及び33の所定の揺動角度内では、前側操舵輪7の回転軸B-B上にある連結ロッド35の中心は、実質的に直線的な軌跡に沿って移動する。チェビシェフ四節リンクを形成する構成要素は、サスペンション17の最大伸長位置から最大収縮位置までの全ストロークにおいて、前側操舵輪7の回転軸B-Bの軌跡がほぼ直線的になるように取り付けられる。
【0033】
上述したサスペンションの動作は、その構成要素を模式的に表し、同じ符号で示した図7Aから容易に理解される。図7Aは、ショックアブソーバ22の最大圧縮位置(位置a)及びショックアブソーバ22の最大伸長位置(位置b)を示している。
【0034】
本明細書において、「ほぼ直線的」、「実質的に直線的」又は「約直線的」という用語は、サスペンションの使用範囲において、即ち車両の通常の使用中にチェビシェフ四節リンクが想定する任意の位置において、完全に直線的な軌道から2mm未満、好ましくは1mm未満の範囲で逸脱する軌跡を意味する。
【0035】
図1図7を参照して説明した実施形態は、様々な変更が可能であり、そのうちの幾つかを以降の図を参照して以下に説明する。さらに、ショックアブソーバ22は、アーム9及び連結ロッド37に関する様々な要素に接続され得る。一般に、ショックアブソーバ22は、端部22A及び22Bで、サスペンション17の懸架動作中に互いに相対移動するサスペンション17の二点に接続される。
【0036】
前述したように、また、特に図7に示すように、ディスクブレーキ23及び25のキャリパ25は、連結ロッド35に堅固に拘束され得る。この場合、キャリパ25は、前側操舵輪7の回転軸B-Bを中心として、連結ロッド35と一体的に回転する。これは、連結ロッド35の瞬間回転中心が、前側操舵輪7の地面との接触点に近づくという事実により、無視できないプロダイブ効果又はアンチダイブ効果を有し得る。この瞬間回転中心は、ヒンジ31A及び31B並びに33A及び33Bをそれぞれ結ぶ二つの直線セグメントの延長線上の交点によって決められる。このプロダイブ又はアンチダイブ効果は好ましくない可能性がある。
【0037】
制動時のサスペンションのプロダイブ又はアンチダイブ効果を防止又は低減するために、幾つかの実施形態では、前側操舵輪7、ひいては連結ロッド35と同軸に取り付けられているが、連結ロッドと一体ではなく、その瞬間回転中心がより離れた位置にある部材にキャリパ25が堅固に連結され得る。
【0038】
この種の実施形態を図8,9,10,11及び12に示す。これらの図面では、同じ符号は、図1図7を参照して既に説明した実施形態と同一又は同等の部品を示しており、これらについては再度の説明を省略する。図12の分解図には、特にディスクブレーキのキャリパ25の支持部材が示されている。前記支持部材は、符号45で示されている。前記支持部材45は、前側操舵輪7の回転軸(図示せず)、又はその軸の延長部が挿入されるベアリング47が収容される孔を有し得る。また、チェビシェフ四節リンクの連結ロッド35は、前側操舵輪7の回転軸に遊動的に支持されている。
【0039】
部材45は、ショックアブソーバ22の一端22Bに堅固に接続され得る。ショックアブソーバ22と部材45との間のインターロック拘束により、制動時の前側操舵輪7の軸線B-Bを中心とする回転に対してキャリパ25が保持される。キャリパ25の支持部材45及び連結ロッド35が互いに空転するので、連結ロッド35及び支持部材45は回転軸B-Bを中心に互いに自由に回転することができる。この場合、キャリパが堅固に連結される部材がショックアブソーバ22から成り、ショックアブソーバ22の瞬間回転中心が、非常に遠く、殆ど、無限遠に位置しているので、プロダイブ効果又はアンチダイブ効果は非常に限定されるか、又は、無視できる程度になる。
【0040】
上述したサスペンションは、図1図2及び図3に模式的に示したようなオートバイの形態の鞍乗り型車両に用いることができるが、また、他のタイプの鞍乗り型車両、例えばスクータに用いることにも適応することが可能である。
【0041】
図1図12に示した全ての実施形態において、クランク31及び33を連結ロッド35及び回転可能なアーム9に連結するヒンジは、それらのヒンジ軸が互いに平行で、かつ、前側操舵輪7の回転軸B-Bと平行になるように配置されている。このようにして、要するに、構成要素9、31、33及び35によって形成されるチェビシェフ四節リンクは、前側操舵輪7の回転軸B-Bと直交する平面上に存在することになる。従って、チェビシェフ四節リンクの回転対偶の回転軸は、右左方向、即ち、車両1の中央平面に対して横方向に向けられている。
【0042】
この構成により、特に効率的なサスペンションが得られるが、この構成は、回転対偶を備え、直進対偶又は円筒対偶を含まない、即ち、相対的な並進運動を提供する部材がない運動機構を用いて、車輪自体のサスペンション動作中に前側操舵輪7の回転軸の実質的に直線状の軌道を得ることができる四節リンクサスペンションの唯一の可能な実施形態であるわけではない。
【0043】
他の実施形態では、チェビシェフ四節リンクを形成する部材を互いに接続するヒンジは、その軸を互いに平行にして、かつ、前側操舵輪7の回転軸B-Bに対して90°になるように、即ち、前側操舵輪7の回転軸B-Bを含む平面に対して直交するように配置される。言い換えれば、チェビシェフ四節リンクの構成要素を互いに連結する回転対偶のヒンジ軸は、車両の中央面に平行な垂直面、即ち、車両の進行方向に延びる垂直面上に位置するように配向される。
【0044】
このタイプの実施形態は、図13図17に示されている。先の図面を参照して既に説明した部材に対応する部材は、「100」増加した同じ符号で示されている。図13図17には、各サスペンション117及び回転可能なアーム109を備えた前側操舵輪107のみが示されており、図1図3において符号1で示したものと同様の車両であり得る車両は示されていない。
【0045】
図13図17は、前側操舵輪107、その操舵軸A-Aを有する回転可能なアーム109、及びその全ての構成要素を有するサスペンション117を備えたアセンブリを示している。より詳細には、この実施形態では、サスペンション117には、回転可能なアーム109、第一クランク131、第二クランク133及び連結ロッド135を備えたチェビシェフ四節リンクが設けられている。実際には、各クランク131,133はダブルクランクである。各クランクの二つの部分は、中央に配置される連結ロッド135の外側に配置されている。連結ロッド135も二重であり、(特に、図17の分解図に図示されている)連結棒135の二つの部材間には、軸C-Cの周りで連結ロッド135にヒンジ結合された車輪支持体137が配置される。車輪支持体137と連結ロッド135とを結合するヒンジ軸C-Cは、前側操舵車輪の回転軸B-Bと交差し、それに直交している。
【0046】
第二クランク131は、第一ヒンジ131Aを介して回転可能なアーム109に、第二ヒンジ131Bを介して連結ロッド135にヒンジ結合されている。同様に、クランク133は、第一ヒンジ133Aを介して回転可能なアーム109に、第二ヒンジ133Bを介して連結ロッド135にヒンジ結合されている。ヒンジ131A、131B、133A及び133Bの軸は、互いに平行であり、前側操舵輪107の回転軸B-Bに対して90°に配向されている。本実施形態におけるチェビシェフ四節リンクのヒンジの軸の向きは、車輪支持体137の連結ロッド135に対する関節軸C-Cと平行である。実際には、チェビシェフ四節リンクのヒンジ軸は、前側操舵輪107の回転軸B-Bを含む平面に対して直交し、サスペンション動作方向と実質的に平行に配向されている。
【0047】
チェビシェフ四節リンクの構成要素間の寸法比は、上述した実施形態と同じである。
【0048】
図示された実施形態では、車輪支持体137は、特に図17に見えるように、連結ロッド135を囲むフォーク形状を有する。また、車輪支持体137は、ショックアブソーバ122に対する連結拘束を有し得る。図13図17に示す実施形態では、車輪支持体137とショックアブソーバ122との間の拘束は、インターロックである。
【0049】
車輪支持体137は、図面では見えないが、前側操舵輪107の軸の回転座を形成している。例えば、車輪支持体137は、前側操舵輪107の軸が回転可能に挿入される軸受用ハウジング138(図17)を有し得る。代わりに、車輪支持体137は、前側操舵輪107が軸受によって取り付けられた回転軸と一体であってもよい。
【0050】
前側操舵輪107のサスペンション動作中、サスペンション117の四節リンクは、回転可能なアーム109に対するクランク131及び133のピボット運動と、それに伴う車輪支持体137に連結されたヒンジ軸を中心とする連結ロッド135のピボット運動とによって変形する。また、構成要素109、131、133及び135によって形成されるチェビシェフ四節リンクの構成は、サスペンション運動の全範囲において、連結ロッド135と車輪支持体137との間の関節、従って関節軸C-Cがほぼ直線状の軌跡に沿って移動するようにされている。車輪支持体137がショックアブソーバ122に堅固に連結されているので、連結ロッド135のピボット運動は前側操舵輪107のキャンバ角に影響を及ぼさない。
【0051】
これまで説明した実施形態では、単一の前側操舵輪7又は107を有する二輪車両について言及してきた。しかしながら、本明細書のサスペンションは、例えば、走行中の車両のローリング運動を確保することができる一つ又は二つの四節リンクを備える、二つの前側操舵輪を有する傾斜式鞍乗り型車両にも使用することができる。図18図19及び図20は、フレーム203、後側駆動輪205及び左右の二つの前側操舵輪207X及び207Yを有する傾斜式鞍乗り型車両201を模式的に示す図である。二つの前側操舵輪207X及び207Yは、車両201の横方向、即ち右左に並設されている。
【0052】
図18図19及び図20に模式的に示された実施形態において、符号209X及び209Yは、単一の前側操舵輪を有する車両の先の実施形態を参照して説明した単一の回転可能アーム9及び109と同じ機能を有する、二つの回転可能アームを示している。各回転可能なアーム209X及び209Yは、操舵軸A-Aを中心に回転するように適合されている。
【0053】
この目的のために、各回転可能なアーム209X及び209Yは、ローリング四節リンク220の一部である支持体、即ち、直立部226X及び226Yに回転可能に収容されている。二つの支持体、即ち、直立部226X及び226Yは、上側クロス部材及び下側クロス部材222及び224によって互いに接続されている。クロス部材222及び224並びに支持体226X及び226Yは、ローリング四節リンク220を形成し、互いに平行で、車両201の前後方向に向けられた平面にあるヒンジ軸を中心にヒンジ結合されている。
【0054】
符号215はハンドルバーを示し、このハンドルバー215を介して、操舵バー230に作用する操舵柱211により、軸A-A周りの操舵運動が支持アーム209X及び209Yに付与される。
【0055】
上述したローリング四節リンクはそれ自体公知であり、より詳細な説明を要しない。
【0056】
各前側操舵輪207X,207Yは、サスペンション217X及び217Yによってそれ自身の回転可能なアーム209X及び209Yに接続されており、前記サスペンションは図1図17を参照して説明した方法のいずれで形成されてもよい。図18図19及び図20において、サスペンション217X及び217Yは、図1図7と同様に構成されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図7A
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20