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  • 特許-親油性ペプチドを用いたスキンケア製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】親油性ペプチドを用いたスキンケア製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20240903BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022523160
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 CA2020051380
(87)【国際公開番号】W WO2021072538
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】62/916,900
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515178340
【氏名又は名称】デシエム ビューティー グループ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロンドーニョ アレハンドロ サルダリアガ
(72)【発明者】
【氏名】テオ ゼベナ プラティウィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー ルース ナオミ リンカンコ
(72)【発明者】
【氏名】カカ プルドヴィ モハン
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-183032(JP,A)
【文献】特表2007-515381(JP,A)
【文献】特開2007-204396(JP,A)
【文献】特開2007-291031(JP,A)
【文献】特表2013-523787(JP,A)
【文献】特表2017-505290(JP,A)
【文献】特許第4323555(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K38/00-38/58
A61K41/00-45/08
A61K48/00
A61K50/00
A61K36/00-36/05
A61K36/07-36/9068
C07K 1/00-19/00
A61K 135/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤の総重量に基づいて1.25~5.00重量%の量の糖脂質を含有する溶液中に1.00重量%Pal-GHK-Cuを含有し、
前記製剤の総重量に基づく重量でさらに以下を含む
(a)15~25%の量の増粘剤
(b)10.0~20.0%のカプリル酸カプリン酸トリグリセリド
(c)スクワラン q.s
(d)0.50%の量のヒドロキシメトキシフェニルプロピルメチルメトキシベンゾフラン
(e)5.00%の量の藻類抽出添加物
(f)3.00%のベチバー抽出添加物
スキンケア製剤。
【請求項2】
前記製剤の総重量に基づく重量でさらに以下を含む、請求項1に記載のスキンケア製剤。
(a)0.1~0.2%の量の鎮静剤
(b)0.1~1.0%の量の防腐剤
【請求項3】
以下で提供される、請求項2に記載のスキンケア製剤。
(a)前記鎮静剤は0.10%の量で提供される。
(b)前記防腐剤は0.50%の量で提供される。
【請求項4】
メタノール、ペンチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、トリクロサン、トルエン、ジメチルイソソルビドおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルを含まない、請求項1に記載のスキンケア製剤。
【請求項5】
水分活性レベル(Aw)が0.65以下である、請求項1に記載のスキンケア製剤。
【請求項6】
糖脂質に17~44%(w/w)Pal-GHK-Cuを溶解させた混合物。
【請求項7】
スキンケア組成物を配合するための請求項6の混合物の使用。
【請求項8】
以下を含むスキンケア組成物の製造方法。
(a)請求項6に記載の混合物を調製して第1の成分を形成する。
(b)増粘剤を攪拌して第2の成分を形成する。
(c)カプリル酸カプリン酸トリグリセリドとスクワランとを混合して第3の成分を形成する。
(d)前記第3の成分を撹拌下で前記第2の成分と組み合わせて第1の組み合わせを形成する。
(e)前記第1の成分を、撹拌下で前記第1の組み合わせと組み合わせて前記スキンケア組成物を形成する。
【請求項9】
更に以下を含む、請求項8に記載のスキンケア組成物の製造方法。
(f)前記スキンケア組成物を防腐剤と組み合わせる。
【請求項10】
請求項1のスキンケア組成物を製剤化するための請求項8に記載の方法の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、皮膚用のパーソナルケア製剤の分野、より具体的には、親油性ペプチドを特に高濃度に有するスキンケア組成物および前記組成物を製剤化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、天然に存在する短いアミノ酸鎖であり、コラーゲン合成の刺激を含む、皮膚の再生に関連する多くの細胞プロセスにおいて重要であることが見出されている。また、多くのペプチドが局所的に適用され、表皮バリアにある程度浸透することが確立されている。過去数年間、ペプチドを配合した多くの外用化粧品が発売され、皮膚のアンチエイジング効果をもたらすものとして宣伝されてきた。
【0003】
銅トリペプチド-1(“GHK-Cu”とも呼ばれる)は、3つのアミノ酸、即ち、グリシン、ヒスチジンおよびリジンからなる小さなペプチドであり、生理学的に有益なミネラルである銅と複合体を形成している。GHK-Cuは体内に自然に存在し、化粧品に配合するために合成されている。GHK-Cuは、マトリカインペプチドファミリーに属し、スキンケア製剤の活性成分として確立されている。このペプチドは、肌の弾力性とハリを改善し、しわを減らし、肌の透明感を高めることが観察されている。GHK-Cuは親水性であるが溶解度が限られており、通常、溶液の形で化粧品製剤に0.02~0.1%の割合で配合されている。
【0004】
脂肪酸の側鎖、通常パルミトイル基を有する他のカテゴリーのペプチドも開発されている。一例として、パルミトイルペンタペプチド-4、パルミトイルヘキサペプチド-12およびパルミトイル-リシル-トレオニル-トレオニル-リシル-セリンがある。パルミトイル鎖を有するペプチドは、親油性および疎水性であり、遊離ペプチドと比較した場合、表皮バリアを通過する際に優れた送達性を示す傾向がある。これは、パルミトイル化により、細胞膜に強い親和性を与えるのに十分な疎水性が生じ、脂質二重層との相互作用と膜表面へのペプチドの局在化が促進されるためである。パルミトイル基は脂質アンカーとして機能するだけでなく、ペプチドを機能的な膜サブドメインに局在化させる役割を果たしていると考えられている。したがって、パルミトイル化は浸透性を高め、対応するペプチドの効果を増大させる。
【0005】
本技術の製剤に使用するための好ましいペプチドは、パルミトイル-GHK-Cu(“Pal-GHK-Cu”)であり、これは、GHK-Cuペプチドの利点をパルミトイル側鎖と組み合わせて、ペプチドを疎水性にさせるものである。Pal-GHK-Cuは数年前から市販されているが、本発明者らは、この成分を用いて販売された薬用化粧品製剤がないことを知っている。
【0006】
疎水性ペプチドを可溶化するための当技術分野における典型的な方法は、メタノールなどの溶媒としてのアルコールの使用を伴うと思われる。しかしながら、アルコールまたはその他の典型的な溶媒は、皮膚を乾燥させ、ペプチドの有益な効果を打ち消すことになるため、一般にスキンケア製剤に多量に含有させることは望ましくない。Pal-GHK-Cuのような親油性ペプチドを可溶化するアルコールフリーの方法がないことが、アンチエイジング用皮膚製剤にまだ商業用に利用されていない理由であると考えられる。
【0007】
同様に、Pal-GHK-Cuを含むほとんどの親油性ペプチドは、最終製剤の約0.02~0.1%よりも高濃度で溶液に入れることは難しい。この範囲よりも高い濃度では、製剤は「溶液」ではなく、ペプチドの「懸濁液」になる傾向がある。一般的な局所用医薬品と同様に、活性物質は、皮膚に最適に吸収されるために溶液である必要がある。外用懸濁液は、一般に、溶液と比較すると、ペプチドの固体塊が皮膚に吸収される前にまず崩壊し、分解される必要があるため、効果が低く、作用が遅い。
【0008】
また、ペプチドはかなり繊細な分子であり、溶液中では劣化に敏感である。そのため、通常、製剤にはかなりの量の防腐剤を含める必要がある。しかし、大量の防腐剤は、皮膚の自然な微生物叢を乱すことが知られており、防腐剤に対して過敏症やアレルギーを持つユーザもいる。同様に、消費者はパーソナルケア製品に含まれる異物に対する意識が高まっているため、製品の保存期間と安定性とを維持しながら、余分な防腐剤は配合させずに活性成分の割合を最大化するペプチド含有薬用化粧品を配合することは有利である。
【0009】
この点で、Pal-GHK-Cuなどの親油性ペプチドが、当該分野で通常利用可能な濃度よりも高い濃度で、溶液形態で配合され、過酷な溶媒またはアルコールを実質的に含まず、防腐剤が製剤に任意に使用される化粧品製剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
親油性ペプチドを0.2~1.1%の範囲の比較的高い濃度、好ましくは1.0%のレベルの比較的高濃度の親油性ペプチドを含む、新規の化粧品スキンケア組成物が現在開発されている。この製剤は、溶媒としてのアルコールの使用を含まず、防腐剤はこの製剤には必要ない。製剤は、さらに懸濁液ではなく、ペプチドの溶液を構成する。
【0011】
親油性ペプチドの好ましいタイプとしては、パルミトイル基を含むものが挙げられる。本技術で用いるのに特に好ましいペプチドは、Pal-GHK-Cuである。また、本技術の製剤は、別の親油性ペプチドであるPal-GHKを用いて調製することができる。
【0012】
Pal-GHK-Cuのような親油性ペプチドに関連する溶解性の問題を解決し、過酷な溶媒やアルコールの使用を大幅に回避する組成物の製剤化方法も提供される。
【0013】
したがって、本開示の一実施形態では、0.2~1.1%、好ましくは1.0%のレベルで溶液中に配合された親油性ペプチドを含む製剤が提供される。
【0014】
本開示の他の一実施形態では、糖脂質混合物に予め溶解している親油性ペプチドを含む製剤が提供され、前記製剤は、さらに1または複数の追加の化粧品成分を含んでいる。
【0015】
本開示の他の一実施形態では、Pal-GHK-Cuのような親油性ペプチドを糖脂質と組み合わせ、さらに、追加のオイルおよびスクロースベースと組み合わせることにより、水分活性の低く、したがって、外来の防腐剤を配合する必要のないゲル製剤をもたらす製剤が提供される。
【0016】
本開示のさらなる一実施形態では、糖脂質と結合した親油性ペプチドと、さらに追加の皮膚コンディショニング活性物質と結合した、体温レベルの熱を加えて皮膚に適用するとクリーミーな皮膚軟化感覚を有する物質に変化する透明または半透明のゲル製剤を形成する製剤が提供される。
【0017】
本開示のさらなる他の一実施形態では、糖脂質と結合したPal-GHK-CuまたはPal-GHKなどの親油性ペプチドと、皮膚コンディショニング活性物質とを組み合わせたゲル状の製剤であって、非感作性および毛穴を詰まらせないであり、スキンケア製剤として好適な製剤である。
【0018】
本開示のさらなる他の一実施形態では、少なくとも1つの親油性ペプチドを高濃度に有し、アルコールを実質的に含まないスキンケア組成物を製剤化する方法が提供される。
【0019】
本開示のさらなる他の一実施の形態では、少なくとも1つの親油性ペプチドを高濃度に有し、防腐剤を実質的に含まないスキンケア組成物を製剤化する方法が提供される。
【0020】
本技術には多くの利点がある。現在の化粧品組成物は、皮膚の再生を促進し、したがってより若々しい外観をもたらす、非常に高レベルの親油性で効力のあるペプチドを含むスキンケア製剤を提供する。このペプチドは、さらに他の多くのスキンケア活性剤と組み合わされ、皮膚への利益を増大させる。記載されているベース製剤では、使用されている成分のほぼ全てが、皮膚に何らかの利益をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【0022】
本開示の一実施形態および他の実施の形態は、以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で提供されるのは、化粧品製剤に配合した場合にペプチド溶液で達成された濃度よりも約10倍高い濃度で配合した親油性ペプチドを含む新規のスキンケア製剤であり、これにより、ユーザの表皮細胞層への局所送達のためのペプチドのレベルを高め、皮膚の再生を促進することが可能となる。
【0024】
この範囲よりも高いレベルの親油性ペプチドを主張し得る化粧品製剤が存在するが、本発明者らの知る限りでは、それらは懸濁液として提供されるペプチドであり、溶液中ではない。懸濁液としてではなく、溶液中にペプチドを配合した商業的に入手可能な製剤は、0.02~0.1%の範囲で提供されている。ペプチドを完全に可溶化することが有利であり、その作用の前にさらなる処理を必要とすることなく、即座に皮膚に利益をもたらす態勢を整えることができる。
【0025】
本技術の製剤は、メタノール、ペンチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、トリクロサン、トルエン、ジメチルイソソルビドおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコール類およびその他の溶媒を実質的に含まないものである。防腐剤については配合は任意である。Pal-GHK-Cuを使用した場合、完成品は透明な青色のゲルとなり、体温を加えて肌に塗布するとクリーム状の乳液に変化し、油性および脂性の感触なしに皮膚に素早く吸収される。Pal-GHKを使用した場合、形成されたゲルは半透明で青色を欠くが、その他の点では上記の透明ゲルと同様である。いずれの場合も、さらに市販の美容製品として好適に使用でき、十分な保存性を有し、非感作性および非コメドジェニック性を併せ持つ製品である。
【0026】
本技術の製剤で、記載された製剤方法と共に使用するための親油性ペプチドの好ましいタイプは、パルミトイル化ペプチドである。特に好ましいパルミトイル化ペプチドはPal-GHK-Cuであり、これは、これまで本発明者らに知られているいかなるスキンケア製剤にもうまく配合されていなかった。Pal-GHKは、様々な用途でより広く使用されているが、発明者らの知る限り、最終製剤の0.1%を超えるレベルまで、しかも溶液中で使用されたことはない。
【0027】
Pal-GHK-Cuの構造を図1に示す。GHKはグリシン-ヒスチジン-リジンペプチドに相当し、銅イオンとパルミトイル基とが結合したC3051CuN、銅酸化物(1-)として表すことができる、[glycylN-L-histidinyl-N,N-N-(1-oxohexadecyl)-L-lysinato(3-)]である。
【0028】
使用したPal-GHK-Cuは、NEORE(登録商標)Pharmaceutical Group Co.,Ltdによって青色の粉末として提供されたものである。銅イオンは通常緑色として存在するが、ペプチドと複合体を形成すると鮮やかな青色を形成し、この特定のペプチドを使用することによる視覚的な利点と魅力とが追加される。
【0029】
使用したPal-GHKは、NEORE Pharmaceutical Group Co.,Ltdによって提供されたものである。この成分は白色の微細な粉末である。
【0030】
以下、本開示の実施の形態について説明するが、これらは限定的に解釈されるべきではない。
[製剤方法]
【0031】
本技術の組成物を配合するためには、パーソナルケア配合物を混合するためのサイズおよび構成を有するほとんどの工業用均質化ミキサー(「ケトル」)が適切となる。ケトルは、均質化パドルとは別に制御可能な内部側壁スクレーパ(スイーパとも呼ばれる)などの標準機能を備える必要があり、ケトルはまた、試験サンプルを採取するために、底に弁を必要とする。また、必要に応じて混合物の内部温度を冷却できるように、ケトルにはジャケットを付ける必要がある。配合工程は全て室温環境で行われるが、ケトル内の混合物は、長時間混合が続くと通常加熱される。そのため、特に混合の後半では、ケトル内の室温を保つために混合物を冷却する必要がある。これは、ペプチドなどのデリケートな成分を扱う場合に特に重要となる。
【0032】
本技術の製剤は、3つの別々のコアフェーズ(フェーズA,B,C)で調製することができ、後述するように、いくつかのフェーズに対して任意の成分を追加することができる。防腐剤を含む場合には、さらにフェーズDを追加してもよい。図2は、フェーズA,B,Cを組み合わせたコアプロセスの概要を示したものである。
【0033】
各成分の全ての量は、特に明記しない限り、最終製剤中の重量パーセントとして表示している。
【0034】
フェーズCでは、親油性ペプチドが可溶化された状態になる。上記のように、特により高濃度が求められる場合、アルコールを用いずに親油性ペプチドを可溶化することには課題がある。いくつかの可溶化剤を試みたが成功しなかった。しかし、本発明者らは、糖脂質溶液が親油性ペプチドに対して1.1%のレベルまで高い溶解度を示し、良好な結果をもたらすことを見出した。一般に、練り歯磨き、クレンジングフォーム、ボディウォッシュおよびシャンプーなどの泡立つ製剤には糖脂質の溶液が推奨され使用されているため、これは意外であった。ペプチド製剤にとって泡立ちは好ましい特性ではなく、糖脂質溶液が粉末の親油性ペプチドをうまく可溶化することは期待されていなかった。しかしながら、発明者らは、糖脂質が比較的高濃度で粉末状の親油性ペプチドを可溶化するのに有効であることを見出した。
【0035】
他の可溶化剤を試した後、本発明者らは、RHEANCEONE(登録商標)という銘柄で販売されているEVONIK(登録商標)Nutrition&Care GmBHが提供する独自のスクロース由来の糖脂質溶液を用いることに成功した(そのINCI識別名は「糖脂質」である)。この成分は、糖脂質溶液(50%w/w)として販売されており、アルコールを含まず、低粘度の琥珀色の液体である。これは、最終製剤中に1~6重量%のレベルになる量で、最初にホモジナイザに添加される。最終的な製剤中の糖脂質溶液の好ましい量は1.25~5%の範囲である。糖脂質溶液は、約3,000RPMの速度で20分間攪拌され、さらに10PRMの速度で側壁スクレーパを用いて側面掃引が行われる。このような混合速度は、泡立つことなく適切な攪拌をもたらし、また、糖脂質溶液が追加成分の溶解を受け入れるための準備を十分に行うことがわかっている。
【0036】
上記のように20分間攪拌した後、Pal-GHK-Cuのような親油性ペプチドを糖脂質に添加することができる。Pal-GHK-Cuは微細な青色の粉末として存在し、NEORE(登録商標)Pharmaceutical Group Co.,Ltdから供給される。Pal-GHK-Cuの量は、最終製剤中に0.2~1.1重量%の結果レベルを達成することができるような量で提供され、これは、溶液中に最大0.1%を配合する先行技術の製剤と比較してはるかに高い割合の範囲である。このペプチドを可溶化するためのベースとして上記条件の特定の糖脂質混合物を使用する場合、より高いレベルの可溶化を達成することができる。Pal-GHK-Cuの好ましい量は、最終製剤中に1重量%である。
【0037】
粉末ペプチドを扱う場合、微粉末であるという成分の性質上、全ての粉末が配合されているか、過剰な粉末が容器の壁に付着していないかを目視で確認することが重要である。混合の過程で、未溶解の固体が凝集しやすいケトルの底から、ペプチドを配合した糖脂質混合物を定期的にサンプリングする必要がある。このサンプリングの工程は、バルブパージまたはバケットフリップと呼ばれる。サンプルは遠心分離して完全に溶解していることを確認する必要がある。
【0038】
親油性ペプチドが十分に配合され、溶液が均質であることが確認されると、これは典型的には3000RPM、サイドスイープ速度10RPMで3~5時間攪拌した後、フェーズCが完了する。これは、後述のフェーズAおよびフェーズBと混合する準備ができるまで、500RPMの範囲の低RPMで脇において維持することができる。
【0039】
例えば、LUCAS MEYER COSMETICS(登録商標)は、商標LANABLUE PARABEN FREE(登録商標)(「Lanablue」)の下で販売されている適切な藻類抽出物を提供しており、これはAphanizomenon flos-aquae var. flos aquae抽出物と、水および少量の水素化デンプン水解物(スキンコンディショナ)と、フェノキシエタノール(防腐剤)およびソルビン酸カリウム(防腐剤)とを混合したものである。Lanablueは、レチノイドに似た活性を持ちながらレチノイドの使用に伴う副作用がないと言われる藻類抽出物により、しわを目立たなくし、肌に滑らかさを与えるものとして宣伝されている。
【0040】
Lanablueを使用する場合、糖脂質と同時に混合容器に加え、フェーズCの最初の工程でうまく配合することができる。次に、Lanablueは、上記と同じ条件を用いて溶液に混合することができる。本技術の製剤での使用に適したLanablueの量は、最終製剤において3~5重量%の範囲であってもよい。例示した製剤では、5%に相当する量が使用される。
【0041】
フェーズCに配合することができる追加の任意のスキンケア活性成分は、インド原産の多年草であるベチバー植物(Vetiveria zizanioides, Chrysopogon zizanioides, Andropogon squarrosus、またはAndropogon muricatusとしても知られている)の根の抽出物である。ベチバーは、エッセンシャルオイルの原料として、高級香料の製造に使用されている。ベチバーの根の抽出物は、その心地よい香りに加えて、皮膚の保湿を改善し、しわを減らし、皮膚の針を高めるように機能するため、一般的なスキンコンディショナとしてさらなる効果をもたらすことが判明している。適切なベチバー抽出物は、VETIVYNE(登録商標)の商標でGIVAUDAN(登録商標)によって提供される。最終製剤中の1~3重量%のVETIVYNEに相当する量をうまく使用することができる。例示の製剤で使用される量は、最終的に3%の割合に相当する。
【0042】
使用する場合、VETIVYNEは、10RPMのサイドスイープ速度が3000RPMで混合する20分間のブロックの間に、フェーズCに配合することができる。VETIVYNEを添加するタイミングとしては、20分間の混合時間のうち約10分間が適当である。
【0043】
別の任意の成分はフィルム形成剤であり、最大5重量%のレベルで配合することができる。フィルム形成剤は、スキンケア製剤にしばしば配合されるポリマーであり、皮膚の表面に連続的な膜を形成し、保護層を提供すると共に、水分の保持を補助する機能を有する。柔軟性、撥水性、保持力および浸透性など、求められる特性に応じて多くのフィルム形成剤が販売されている。本技術の製剤に使用される好適なフィルム形成剤としては、GLYCOFILM1.5P(登録商標)(主成分:バイオサッカライドガム-4)およびFUCOGEL(登録商標)粉末(主成分:バイオサッカライドガム-1)が含まれ、これらは両方ともSOLABAI(登録商標)社から入手することができる。これらのフィルム形成剤は、皮膚への鎮静効果を有し、塗布後に滑らかな感触を提供することが知られている。
【0044】
フィルム形成剤を製剤に使用する場合には、前述のように、親油性ペプチドの添加後、10PRMでサイドスイープしながら3000RPMで3~5時間攪拌する間にフェーズCに配合することができる。
【0045】
フェーズCの処方例を表1に示す。
【表1】
【0046】
組成物のフェーズAは、ゲルの形成を促進する増粘成分および乳化剤を含んでいる。多くの選択肢があるが、適切で有益な選択肢は、ALFACHEMICALS(登録商標)から販売されているSUGRAGEL XL(登録商標)であることが判明した。SUCRAGEL XLは、製剤化時に増粘剤および乳化剤として作用することに加えて、スキンケア効果を有する成分を混合したものである。SUCRAGEL XLは、グリセリン(皮膚軟化剤および保湿剤)、カプリル酸およびカプリン酸トリグリセリド(保湿剤および一般的なスキンコンディショナ)、水、ラウリン酸スクロースおよびステアリン酸スクロース(ともに皮膚軟化剤およびコンディショナ)から構成されている。
【0047】
フェーズAでは、本技術に従ってSUCRAGEL XLを15~25%の範囲の量で使用することができる。好ましい量は20%である。
【0048】
フェーズAの調製は、SUCRAGEL XLを混合容器に加え、室温でサイドスイープ速度10RPM、800~1000RPMで10分間混合する。フェーズBを調製する間、この条件を維持することができる。フェーズAの処方例を表2に示す。
【表2】
【0049】
本技術の組成物であるフェーズBは、他の有益な皮膚活性成分を含んでいる。フェーズBは、油性成分を含み、MCTオイル(中鎖トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドまたはCCTGとしても知られている)を含む。スクワランはベースに寄与するために使用され、さらなる活性成分であるSYM3D(登録商標)がフェーズBに使用される。
【0050】
フェーズBは、MCTオイルを混合容器に加え、1または複数の油溶性活性成分などのさらなる成分を配合することによって調製することができる。成分は室温で3000RPMの速度で混合し、15RPMでサイロスイープレイピングを行う。ケトルの底にある弁から試料を取り出し、遠心分離によって試験し、溶液を目視で検査し、第2の成分が完全に溶解していることを確認する。混合物のサンプルの遠心分離は、第2の成分の完全な溶解を確認するための任意の工程である。
【0051】
使用されるMCTオイルは、厳密にはエステルである。これは、スキンコンディショニングに効果的であるため、パーソナルケア製剤によく使用される成分である。この製品は多くの供給元から入手することができる。本発明者らは、CUSTOM SYNTHESIS、LLC(登録商標)から販売されているC-SYN-MCT(登録商標)を使用した。最終製剤中に10%のレベルになるのに適した量のMTCオイルを使用する。10~20%のMTCオイルの範囲の量が製剤中に使用することができる。
【0052】
MTCオイルに配合される活性成分として、SYMRISE AG(登録商標)によって販売されているSYM3D(登録商標)がある。SYM3Dは、ジヒドロデヒドロジイソオイゲノールの商品名であり、INCI名はヒドロキシメトキシフェニルプロピルメチルメトキシベンゾフランである。これは、疎水性の白色粉末である。SYM3Dは、脂肪細胞への脂質の取り込みと蓄積とを促進し、脂肪形成および脂肪細胞のサイズを増加させ、最終的に若々しい肌をもたらすと、SYMRISEによって宣伝されている。また、SYM3Dには、抗酸化作用もある。
【0053】
本技術の製剤において有効となるSYM3Dの量は、製剤全体の0.1~1重量%の範囲である。本発明者らがサンプル製剤において使用した具体的な量は0.5%である。SYM3Dは、特定にオイルに選択的に溶解する。MTCオイルには、上記のような条件で可溶化できるが、例えばスクワランには溶解できない。そのため、MTCオイルのようにSYM3Dと相性の良いオイル成分を使用することが重要である。
【0054】
SYM3Dまたはその前後でMTCオイルに添加することができるさらなる成分は、ビサボロールとヒドロキシメトキシフェニルデカノンの混合物からなる鎮静成分であり、SYMRISE AGから販売されているSYMRELIEF S(登録商標)が挙げられる。これは、抗刺激剤のブレンドであり、抗酸化活性も提供するため、皮膚にとってさらに有益な成分である。SYMRELIEF Sは、使用する場合には、約0.1重量%の量で配合することができる。他の多くの鎮静剤も当業界で入手可能であり、使用することができる。
【0055】
MTCオイルに油溶性活性成分を添加し、完全に配合した後、さらなる油相成分であるNEOSSANCE(登録商標)から購入したスクワランを、25RPMの速度でサイドスイープスクレーパのみを用いて室温で穏やかに攪拌しながら10分間ゆっくりと添加した。スクワランは、スキンケア製剤に一般的に使用される効果的な皮膚軟化剤および保湿剤である。本発明者らは、製剤全体の55~60%の範囲をもたらす量でそれを使用したが、より低い量もまた有効である。
【0056】
フェーズBの処方例を表3に示す。
【表3】
【0057】
上記のようにフェーズA,B,Cを調製した後、フェーズは以下のように組み合わせることができる。まず、フェーズBを800~1000RPMで攪拌しながらフェーズAにゆっくりと加える。このとき、サイドスイープスクレーパは15RPMの速度で作動させる。フェーズBの約10%を最初に添加し、プーリングを避けるために混合物を目視で監視する必要がある。その後、プーリングを避けながら、徐々にフェーズBを追加することができる。サイドスイープおよびホモジナイザの速度は、フェーズBのフェーズAへの配合を監視しながら、それぞれ50RPMおよび3000RPMまで徐々に上げることができる。ケトル内のレベルが上がると、粘度が高くなり、攪拌しにくくなるので、ホモジナイザの回転数を徐々に上げる必要がある。フェーズBの添加が完了したら、サイドスイープおよびホモジナイザをそれぞれ50RPMおよび3000ROMで、室温で30分間混合を継続する。
【0058】
次の工程は、フェーズA/Bの混合物へのフェーズCの添加である。フェーズCは、50RPMのサイドスイープと3000ROMのホモジナイザ速度で攪拌しながら、一度のその体積の約10%の割合でフェーズA/B混合物にゆっくりと配合する必要がある。フェーズCが全て添加されたら、この速度での混合を室温で30分間続ける。この段階では、混合物を室温レベルに維持するために、ケトルの冷却ジャケットを作動させることが重要である。混合物が攪拌され続け、ホモジナイザの速度が上がると、ケトル内の温度は上昇する傾向がある。そのため、デリケートなペプチドを損なわないように、室温レベルおよび冷却を注意深く監視する必要がある。
【0059】
任意のフェーズDも工程に含まれることがある。フェーズDは、防腐剤の量から構成されてもよい。製剤に使用するのに適した防腐剤は、ISCA UK(登録商標)から入手できる周知の化粧品防腐剤であるISCAGUARD CPP(登録商標)である。ISCAGUARD CPPは、クロルフェネシンとフェノキシエタノールからなり、0.50%の範囲の量で使用することができる。フェーズDは、上記のように、フェーズCをフェーズA/Bに配合する後段で添加してもよい。
【0060】
フェーズDのサンプル処方例を表4に示す。
【表4】
【0061】
図2は、上記製造工程のコアフェーズA~Cの模式図である。
【0062】
表5は詳細な処方例を示したものである。
【表5】
【0063】
製剤は、製剤成分中の溶解度を条件として、追加の成分をさらに含んでいてもよい。そのような追加の成分は、親油性ペプチド製剤を増強または補足する化粧品成分を含んでいてもよい。本明細書では、「化粧品成分」という用語は、スキンケア効果を提供するなど、身体の何らかの特徴を改善または強化するための身体(例えば、皮膚、毛髪または爪)に適用するための製品を指すために使用される。したがって、コンディショナ、皮膚軟化剤、乳化剤、保湿剤、植物抽出物、天然オイル、シリコーン、日焼け止め、界面活性剤および増粘剤などの追加の化粧品成分を含んでいてもよい。化粧品成分の他の例としては、他のペプチド;アミノ酸(例えば、セリン、リジン、プロリン、グリシンおよびグルタミン);炭水化物(例えば、アルコルビルグルコシド、グルコシルヘスペリジンおよびサッカライドイソメレート);タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチンおよび加水分解されたルピンタンパク質);脂質(例えば、セラミド、スフィンゴ糖脂質およびリン脂質);ビタミン(例えば、ナイアシンアミド、ビチオン、アスコルビン酸、レチノール、レチノイン酸およびパンテノール);ステロール類(例えば、フィトステロール、ザクロステロールおよび7-デヒドロコレステロール);フラボノイド瑠衣(例えば、アピゲニン、ヘスペリジンおよびゲニステイン);エステル類(マンヌロン酸メチルシラノール、アボカド酸ブチルおよびホホバエステル);無機物(例えば、カオリン、亜鉛およびマグネシウム);植物性製品(例えば、Tasmannia Lanceolataの果実/葉の抽出物、Curculigo Orchioidesの根の抽出物およびバラの植物相);およびバイオテクノロジー製品(例えば、Pseudoalteromonasエキソサッカライド、Alteromonas発光ろ液およびヒアルロン酸ナトリウム)が挙げられる。
【0064】
また、本技術の製剤は、パンテノール、アスコルビン酸、ナイアシンアミドおよびトコフェロールなどのビタミン類およびその誘導体、例えば、アラントイン、フェタントリオール、スフィンゴシンおよびビサボロールなどの抗炎症成分、トリメチルグリシンおよびポリグルタミン酸などの他の保湿成分、フラボノイド、キサントン、イソフラボンおよびα-リポ酸などの抗酸化成分、β-グルカン、α-ヒドロキシ酸およびβ-ヒドロキシ酸などのアンチエイジング活性成分を含んでいてもよい。
【0065】
本製剤は、精油、植物抽出物または合成香料などの香料を含んでいてもよい。例えば、メロン、バニラ、キュウリ、アロエベラ、アーモンド、マンゴー、ココナッツ、ココアバター、シアバター、リナロール、シトロネロール、シナマル、リモネン、ゲラニオール、オイゲノール、ラベンダーオイル、バラの花エキス、ベルガモットオイル、イランイランオイル、レモン、ライム、オレンジ、タンジェリン、ペパーミント、スピアミントおよびユーカリなどが挙げられる。
【0066】
本明細書では、「約」という用語は、表示量の10%以下の量、好ましくは5%以下の量を指し、表示量より多いまたは少ないのいずれかである。
【0067】
したがって、本技術は、溶液中に約0.2~1,1%の親油性ペプチドを含むスキンケア製剤に対応する。本技術で使用するための好ましい親油性ペプチドは、Pal-GHK-CuおよびPal-GHKである。親油性ペプチドの特に好ましい量は1%である。
【0068】
本技術はまた、アルコールまたは他の過酷な溶媒を含まない糖脂質溶液中の親油性ペプチドのプレミックスに対応し、上記の濃度でのペプチドの溶解を容易にするものである。プレミックスは、最終的な製剤の濃度が1~6重量%の糖脂質および0.2~1.1重量%のペプチドになるような量の糖脂質を利用するものである。プレミックスでは、これらの範囲は、糖脂質に溶解した3.2~52.4ペプチド(w/w)の混合物に相当する。特に好ましいのは、処方例に示される量である。フェーズAを構成するプレミックスに1%のペプチドおよび1.25%の糖脂質を使用した場合、糖脂質に溶解した44%のペプチドw/wに相当する。フェーズAのプレミックスに1%のペプチドおよび5%の糖脂質が含まれている場合、17%のペプチドw/wが糖脂質に溶解していることに相当する。
【0069】
本技術はまた、最終製剤の重量パーセントとして、以下を含有するスキンケア製剤に対応するものである。
(a)親油性ペプチド、好ましくはPal-GHK-CuまたはPal-GHK、最も好ましくはPal-GHK-Cuを0.2~1.1%の量で含有すること。
(b)1~6%の量の糖脂質。
(c)15~25%の量の増粘剤。
(d)10.0~20.0%のカプリル酸カプリン酸トリグリセリド。
(e)残りはスクワラン。
但し、(a)~(e)の合計が100であることが必要である。
【0070】
本技術はまた、最終製剤の重量パーセントとして、以下を含有するスキンケア製剤に対応するものである。
(a)1.0%の量の親油性ペプチド。好ましくはPal-GHK-Cu。
(b)1.25~5.00%の量の糖脂質。
(c)20.00~21.57%の量の増粘剤。
(d)10.00%の量のカプリル酸カプリン酸トリグリセリド。
(e)0.50%の量の酸化防止剤、好ましくはヒドロキシメトキシフェニルプロピルメチルメトキシベンゾフラン。
(f)5.00%の量の藻類抽出物添加材。
(g)3.00%の量のベチバー抽出添加物。
(h)残りはスクワラン。
但し、(a)~(h)の合計が100であることが必要である。
【0071】
本技術はまた、最終製剤の重量パーセントとして、以下を含有するスキンケア製剤に対応するものである。
(a)1.0%の量の親油性ペプチド。好ましくはPal-GHK-Cu。
(b)1.25~5.00%の量の糖脂質。
(c)20.00~21.57%の量の増粘剤。特に好ましい量は20.00%、20.57%、21.45%または21.57%である。
(d)10.00%の量のカプリル酸カプリン酸トリグリセリド。
(e)0.50%の量の酸化防止剤、好ましくはヒドロキシメトキシフェニルプロピルメチルメトキシベンゾフラン。
(f)5.00%の量の藻類抽出物添加材。
(g)3.00%の量のベチバー抽出添加物。
(h)0.1~0.2%、好ましくは0.10%の量の鎮静剤。
(i)0.1~1.0%、好ましくは0.50%の量の防腐剤。
(h)残りはスクワラン。
但し、(a)~(h)の合計が100であることが必要である。
【0072】
本技術はまた、最終製剤の重量パーセントとして、以下を含有するスキンケア製剤に対応するものである。
(a)1.0%の量の親油性ペプチド。好ましくはPal-GHK-Cu。
(b)1.25~5.00%、好ましくは1.25%の量の糖脂質。
(c)20.00~21.57%の量の増粘剤。特に好ましい量は20.57%または21.45%である。
(d)10.00%の量のカプリル酸カプリン酸トリグリセリド。
(e)0.50%の量の酸化防止剤、好ましくはヒドロキシメトキシフェニルプロピルメチルメトキシベンゾフラン。
(f)5.00%の量の藻類抽出物添加材。
(g)3.00%の量のベチバー抽出添加物。
(h)0.1~0.2%、好ましくは0.10%の量の鎮静剤。
(i)0.1~5%、好ましくは0.24~2.00%の量のフィルム形成剤。
(j)0.1~1.0%、好ましくは0.50%の量の防腐剤。
(k)残りはスクワラン。
但し、(a)~(k)の合計が100であることが必要である。
【0073】
本明細書に記載の方法に従って製剤を調製すると、Pal-GHK-Cuを用いた場合には透明な青色の油性ゲルが得られ、Pal-GHKを用いた場合には半透明の油性ゲルが得られる。光による劣化に敏感なデリケートな成分であるペプチドを含むため、アルミニウムスクイズチューブなどの不透明な包装で包装することが望ましい。
【0074】
製剤は、洗顔後の適量を手に取り、肌に直接塗布して使用する。また、手の体温でゲルがクリーム状に変化し、肌にすり込むことで油っぽさを感じさせないことも特徴である。
[水分活性試験]
【0075】
表5に示され、上述したように、本技術の製剤は、主に皮膚に利益をもたらす成分からなる。この製剤はまた、トリクロサン、安息香酸ベンジル、メチルイソチアゾリノンまたはパラベンなどの余計な防腐剤の通常の要件を欠いている。一般的に、このような防腐剤は、細菌の増殖を抑制し、製剤に配合された繊細なペプチドの分解を防ぐために必要である。しかしながら、以下に詳述するように、この製剤は、防腐剤を必要としない低水分活性のゲルとして構成されている。これは、製剤が皮膚の生物相に干渉したり、乾燥やその他の悪影響を及ぼしたりする可能性のある防腐剤のレベルを使用せずに、製剤をほぼ完全に皮膚活性成分や有益な成分で構成できることを意味し、非常に有益なことである。
【0076】
KwまたはAwで表される水分活性は、保存期間を推定し、防腐剤が必要かどうかを決定するためにパーソナルケア製品で使用される標準的な尺度である。水分活性は、水分含有量とは異なる。むしろ、この試験は、グラム陽性およびグラム陰性菌、酵母菌または真菌などの微生物による生物学的反応に対応する水の生物学的利用能を測定するものである。参考までに、骨粉の水分活性は0、純水の水分活性は1.0である。
【0077】
化粧品分野において、水分活性が0.7未満の製剤は、防腐剤の必要がないことを示している。
【0078】
標準的な水分活性試験装置であるAQUALAB(登録商標)TDLを用いて本技術の製剤の水分活性を測定した。製剤の水分活性は0.65未満であり、この製剤は防腐剤を必要としないことを示した。これは、このペプチド製剤をゲルとして提供することのさらなる利点であり、水分活性を低下させ、防腐剤を不要にするだけでなく、そこに含まれる繊細なペプチドを安定化させる条件を提供するものである。業界では、ほとんどのペプチドは血清の形で提供されており、水分活性が高い傾向にあるため、低温保存条件または大量の防腐剤の添加が必要とされることがある。
【0079】
本技術の製剤に任意に配合するのに適した成分の中には、活性成分を保護するために少量の防腐剤を含有するものがあることを留意されたい。例えば、藻類抽出物を活性成分とするLANABLUEは、防腐剤であるフェノキシエタノールおよびソルビン酸カリウムも少量含んでいる。但し、LANABLUEのような成分は任意であるため、この成分を含まないバージョンを作成することは可能である。
【0080】
製剤はまた、処方例のいくつかに存在するISCAGUARD CPPのような、添加された保存剤を含むように調製され得る。水分活性が低いにも関わらず、製剤が汚染のない状態を保つことをさらに保証するものとして、いかなる場合にも一定量の防腐剤を含むことが有益であることがある。但し、防腐剤の添加は必須ではない。
【0081】
本技術の製剤はまた、外来アルコールまたは溶媒を含まず、確かに、本明細書で使用されるペプチドのような親油性成分を溶解するために通常必要とされるレベルではない。しかしながら、ある種の任意成分は、それ自体が少量のアルコールを含有することがある。例えば、VETIVYNEは、少量のプロパンジールを含む。ここでも、VETIVYNEは任意成分であるので、完全にアルコールを含んない実施形態を作製した場合には、この成分を省略または代替することは完全に実行可能である。
[その他の試験]
【0082】
本技術の製剤はまた、皮膚に対して非感作性または刺激性であると考えられる。閉塞性パッチ試験プロトコルに従った標準的な化粧品パッチ試験を50人のボランティアに対して行い、試験製品を適用し、閉塞性パッチ下で48時間皮膚と接触させたままにした。有害事象は観察されなかった。皮膚に対する刺激性および感作性の指標である平均刺激性指数レベルは「NOT IRRITANT」であることが確認された。
【0083】
本技術の製剤の安定性に関する標準的な試験も実施した。製剤のアリコートは、45℃、室温、4℃および-25℃の条件下ならびに紫外線暴露の条件下で試験した。試験結果は、通常の保管条件下で12ヶ月の貯蔵寿命を示し、これはこのような化粧品製剤にとって許容される期間である。
【0084】
40人のボランティアを対象とした標準的な面皰形成試験により、本製剤が非コメドジェニック性であることが確認された。
【0085】
したがって、本技術は、防腐剤およびアルコールまたは他の過酷な溶媒を実質的に含まない可能性のある製剤において、高濃度の親油性ペプチド溶液を提供することが確認された。本明細書に記載の方法、特に高濃度をもたらすために親油性ペプチドを可溶化する方法は新規であり、既存の溶液と比較して約10倍のペプチド濃度を有する製剤をもたらし、本明細書に記載のように皮膚に対する利点を有する。この製剤は、さらに皮膚用の化粧品として有用であり、非刺激性および非コメドジェニック性であり、市販品として十分な保存性を有するものである。
【0086】
本開示の様々な実施形態について説明してきた。これらの実施形態および他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1
図2