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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】改変DAAO及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/06 20060101AFI20240903BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240903BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240903BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C12N9/06 Z
C12N15/53 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022534287
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2020134540
(87)【国際公開番号】W WO2021115256
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】201911249924.4
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522223132
【氏名又は名称】フーナン リアー バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Hunan Lier Biotech Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シエ, シンカイ
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ジュンイン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509734(JP,A)
【文献】特表2005-518214(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109576236(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105567780(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109609582(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00- 9/99
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5~30、33~57及び62~86のうちの1つのアミノ酸配列、又は
配列番号5~30及び66~76のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、194位、210位、213位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、及び319位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、
配列番号33~57及び77~86のうちの1つと比較して、2位、54位、56位、58位、81位、97位、193位、210位、213位、221位、300位、337位及び342位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、若しくは
配列番号62~65のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、210位、213位及び221位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含み、配列番号1~3のうちの1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
を含むか、又はこれからなる改変DAAOであって、
前記改変DAAOが、D-グルホシネートの2-カルボニル-4-(ヒドロキシメチルホスホノ)酪酸(PPO)への酸化を触媒する活性を有し、
前記改変DAAOが有する前記活性が、配列番号4のポリペプチドが有する前記活性の少なくとも110%であり、及び/又は、前記改変DAAOが配列番号4のポリペプチドよりも優れた熱安定性を有する、改変DAAO。
【請求項2】
請求項1に記載の改変DAAOをコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項4】
請求項1に記載の改変DAAO、請求項2に記載のポリヌクレオチド又は請求項3に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項5】
L-グルホシネートを産生する方法であって、請求項1に記載の改変DAAO又は請求項4に記載の宿主細胞をD-グルホシネートと接触させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素工学の分野に関する。特に、本発明は、改変D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)及びグルホシネートの産生におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルホシネート(4-[ヒドロキシ(メチル)ホスホノ]-D,L-ホモアラニンとも称する)は、遺伝子組換え作物が耐性を持つ、世界売上ランキング2位の除草剤である。グルホシネートは、L-グルタミン合成酵素の活性を阻害することにより、植物の窒素代謝に妨害をもたらし、最終的に植物を死滅させる広範囲の接触死滅除草剤である。グルホシネートは、グリホサートと比較して、広い適用範囲、迅速な効果、長い持続期間、低毒性、安全性等の大きな利点を有する。そのため、グルホシネートの売上は急速に増大しており、来期も大きなニーズがあり、優れた見込みがある。
【0003】
しかし、グルホシネートの産生プロセスは複雑であり、そのために産生の難易度が高くなっている。また、価格が高いために、グリホサートからの急速な置き換えが妨げられている。現在、市販されているグルホシネートは、等量の2つの光学異性体(D,L-グルホシネート)を含むラセミ混合物であり、L-グルホシネートのみが生物学的に活性である。したがって、D,L-グルホシネートの脱ラセミ化によりキラル純粋L-グルホシネートを調製することは、近年のL-グルホシネート合成において実質的に重要であり、一般的になっている。
【0004】
近年、D,L-グルホシネートからL-グルホシネートを調製する方法が多く報告されている。化学的改変による従来の分解方法は、コストが高く、またD-グルホシネートを使用できないため、競争力がない。現在、報告されているD-グルホシネート-アンモニウムをL-グルホシネートに変換する主要且つ代表的な技術的経路は、以下の通りである。
【0005】
1. D,L-グルホシネートはN-アセチルグルホシネートに変換され、次いでL-N-アセチルグルホシネートの選択的加水分解によってL-グルホシネートが得られ、これはカルボキシペプチダーゼによって触媒されるが、D-N-アセチルグルホネートは加水分解できず、化学的又は酵素的ラセミ化後に加水分解ステップにリサイクルされ得る(例えば、中国特許出願公開第108690854号を参照)。この方法の欠点としては、反応のステップが複数であること、及び加水分解で得られるL-グルホシネートのN-アセチル化基質からの分離が必要なことが挙げられる。
【0006】
2. D-グルホシネートは、2-カルボニル-4-(ヒドロキシメチルホスホノ)酪酸(PPO)に酸化され、次いで、PPOが還元又はアミノ基転移されてL-グルホシネート-アンモニウムが生成される。殆どの文献において、D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)を使用してD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒し、ここで、生成した過酸化水素を除去するためにカタラーゼ(CAT)が通常添加される。PPOは炭素上のパラジウムの触媒作用によりギ酸で還元されて、D,L-グルホシネートを生成し得るため、D,L-グルホシネートは、DAAOの立体選択性により、徐々にL-グルホシネートに変換され得る(例えば、中国特許出願公開第105567780号を参照)。この解決法の欠点としては、パラジウム-炭素触媒が多量に必要であり、反応の原料(例えば、酸素及びギ酸アンモニウム)が浪費されることが挙げられる。
【0007】
PPOはまた、L-アミノ酸トランスアミナーゼ(L-TA)によって触媒される立体選択的なトランスアミノ化反応によって、L-グルホシネートに変換され得る(例えば、米国特許出願公開第20180030487号を参照)。この解決方法は、アミノ基転移ステップが平衡反応であるため、高い変換率(例えば、3当量のアミノドナーを供給する場合の変換率90%)を達成するために過剰量のアミノドナー(アミノ酸又は有機アミン)を供給する必要があり、過剰量のアミノドナー及び対応する副産物がその後の分離及び精製ステップに深刻な影響を与えるという欠点を有する。
【0008】
さらに、PPOは、L-アミノ酸デヒドロゲナーゼ(L-AADH)によって触媒される立体選択的還元反応により、L-グルホシネートに変換され得る(例えば、中国特許出願公開第107502647号、中国特許出願公開第109576236号及び中国特許出願公開第109609582号を参照)。この解決方法では、変換された基質の濃度が低いか、又は損失が大きい。
【0009】
D-アミノ酸オキシダーゼ及びL-アミノ酸デヒドロゲナーゼを用いる解決方法は、上記の解決方法と比較して、コスト面で利点を有する可能性がある。しかし、現在報告されている方法では、一般的に、変換され得る基質の濃度は高くないか、又は損失が大き過ぎるため、産生コストが過剰になっている。高濃度のD,L-グルホシネートの脱ラセミ化を達成することが、現在のプロセスのチョークポイントである。
【0010】
より高濃度の基質の変換を阻害する主な要因としては:組換えDAAO酵素の安定性が悪く、反応器の条件下で不安定であること、及び反応中に酵素が不活性化されることが挙げられる。
【0011】
他の制限要因は、D-グルホシネートに対する酵素の選択的な触媒活性である。先行技術において、D-グルホシネートに対する活性を付与するために、DAAOにおけるいくつかの改変が行われてきた。
【0012】
米国特許第7,939,709号では、D-グルホシネートからPPOを合成する目的で、ロドトルラ・トルロイデス(Rhodotorula toruloides)(ロドトルラ・グラシリス(Rhodotorula gracilis)としても知られている、https://www.atcc.org/products/all/10788.aspxを参照)由来のDAAOの変異体が使用された。前記特許に記載のロドトルラ・トルロイデス由来DAAOの変異体は、変異F58K、M213位におけるH、S、T、C、Q、G、N、及びAで置換されている変異、並びに223位及び238位における変異を含む。Tim Hawksら、2011(D-glufosinate as a male sterility agent for hybrid seed production,Plant Biotechnology Journal、(2011)9、pp.301~314)は、DAAOがロドトルラ・トルロイデス由来であり、58位及び213位における変異を含む上記特許と同様の内容を報告している。
【0013】
米国特許第9,834,802号では、ロドトルラ・トルロイデス由来のDAAOの変異体及びトランスアミナーゼ(TA)を使用して、D,L-グルホシネートからL-グルホシネートが合成された。また、DAAOは54位、56位、58位、213位、及び238位における1つ又は複数の変異を含むことが記載されており、いくつかの詳細な組合せが例示されている。
【0014】
中国特許出願公開第109576236号では、ロドトルラ・トルロイデス由来のDAAOに基づいて、D-グルホシネートを酸化することができる変異体も構築された。この変異体は、アミノ酸52位、54位、58位、213位、及び335位に1つ又は複数の変異を有する。
【0015】
中国特許出願公開第105567780号、中国特許出願公開第109609582号等の他の特許出願においても、D-グルホシネートをDAAOで酸化することが関与していたが、使用した酵素の配列は示されていない。
【0016】
しかしながら、より高い安定性及び/又はD-グルホシネートに対するより高い活性を有するDAAOが未だに必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
第1の態様において、本発明は、その野生型D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)と比較して、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の位置にアミノ酸置換を含む、改変DAAOを提供し、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、54位、56位、58位及び213位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はL、より好ましくはI又はVによって置換されている。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されている。好ましくは、58位におけるアミノ酸は、H又はQ、より好ましくはHによって置換されている。好ましくは、213位におけるアミノ酸はS又はT、より好ましくはSによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は221位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、210位におけるアミノ酸はA、G又はP、より好ましくはAによって置換されている。好ましくは、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは54位、58位、213位及び221位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸はVによって置換されており、58位におけるアミノ酸はQによって置換されており、213位におけるアミノ酸はSによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は56位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸はAによって置換されている。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、319位、337位、及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はS又はTによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はS又はHによって置換されている。
【0021】
或いは、いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。
【0022】
或いは、いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、300位、337位及び342位からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換をさらに含み、ここで、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、300位におけるアミノ酸はTによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はSによって置換されている。
【0023】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号1と比較して、54位、58位、194位及び213位にアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はLによって置換されており、58位におけるアミノ酸はH又はQによって置換されており、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、213位におけるアミノ酸はS又はTによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、56位、210位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸は、A、G又はPによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号5~86のうちの1つのアミノ酸配列を含むか、若しくはこれからなるか、又は改変DAAOは、配列番号5~30及び66~76のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、194位、210位、213位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、及び319位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、配列番号31~57及び77~86のうちの1つと比較して、2位、54位、56位、58位、81位、97位、193位、210位、213位、221位、300位、337位及び342位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、若しくは配列番号58~65のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、210位、213位及び221位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。
【0025】
第2の態様において、本発明は、本発明の改変DAAOをコードするポリヌクレオチド及び本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0026】
第3の態様において、本発明は、本発明の改変DAAO、それをコードするポリヌクレオチド又は前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0027】
第4の態様において、本発明は、L-グルホシネートを産生する方法であって、本発明の改変DAAO又は本発明の宿主細胞をD-グルホシネートと接触させるステップを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、D-グルホシネートの酸化を触媒して、L-グルホシネートを産生するための改変DAAOに主に関する。特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0029】
I.改変D-アミノ酸オキシダーゼ
本明細書中で使用する、用語「D-アミノ酸オキシダーゼ」及び「DAAO」は、D-アミノ酸の酸化を触媒してケト酸を生成する酵素(EC1.4.3.3)を指す。一般的に、天然に存在するDAAOは、D-グルホシネートの酸化を触媒することができない。したがって、本発明は、D-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒することができる改変DAAOを提供する。好ましくは、改変DAAOポリペプチドは、安定性の増大及び/又はD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性の増大を有する。
【0030】
本明細書中で使用する、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結した少なくとも2つのアミノ酸を含む鎖を意味する。用語「ポリペプチド」は、「タンパク質」と互換してもよく、10以上のアミノ酸残基を含む鎖を意味する。本明細書における全てのペプチド及びポリペプチドの化学式又は配列は、アミノ末端からカルボキシル末端への方向を示し、左から右の順に記載されている。
【0031】
用語「アミノ酸」は、タンパク質中に天然に存在するアミノ酸及び非天然アミノ酸を含む。タンパク質中に天然に存在するアミノ酸の従来の命名法(1文字及び3文字)が用いられており、これは、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)に見ることができる。
【0032】
【化1】
【0033】
本明細書中で使用する、用語「改変」は、ポリペプチドに対する化学的改変、例えば、アミノ酸(複数可)の置換、欠失、挿入及び/又は付加を指す。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、その野生型DAAOと比較して、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOは、D-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、その野生型DAAOと比較して、54位、56位、58位及び213位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はL、より好ましくはI又はVによって置換されている。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されている。好ましくは、58位におけるアミノ酸は、H又はQ、より好ましくはHによって置換されている。好ましくは、213位におけるアミノ酸はS又はT、より好ましくはSによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、その野生型DAAOと比較して、54V、56N、58H及び213S、又は54I、56N、58H及び213Sの置換の組合せを含む。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は221位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、210位におけるアミノ酸は、A、G又はP、より好ましくはAによって置換されている。好ましくは、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、54位、58位、213位及び221位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸はVによって置換されており、58位におけるアミノ酸はQによって置換されており、213位におけるアミノ酸はSによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は56位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸はAによって置換されている。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、319位、337位、及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、ここで、改変DAAOは、D-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸置換はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸置換はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸置換はTによって置換されており、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はS又はTによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はS又はHによって置換されている。
【0037】
或いは、本発明の改変DAAOは、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、ここで、改変DAAOは、D-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。
【0038】
或いは、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、300位、337位及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、300位におけるアミノ酸はTによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はSによって置換されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、配列番号1と比較して、54位、58位、194位及び213位にアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOは、D-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、54位におけるアミノ酸はI、V、T又はLによって置換されており、58位におけるアミノ酸はH又はQによって置換されており、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、213位におけるアミノ酸はS又はTによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、56位、210位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される位置における1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸は、A、G又はPによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、配列番号1と比較して、1つ若しくは複数のアミノ酸の保存された置換、又は1つ若しくは複数のアミノ酸の挿入若しくは欠失(insertion of deletion)をさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、その野生型と比較して、以下からなる群から選択されるアミノ酸置換の組合せを含む(位置は配列番号2を参照して番号付けされている):
54V、58Q、194V、213S;
54V、58Q、194C、213S;
54V、58Q、213S、273D;
54V、58Q、213S、317Y;
54V、58Q、213S、317W;
54V、58Q、213S、274E;
54V、58Q、213S、319K;
54V、58Q、194C、213S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、265C、317Y;
54V、58Q、194C、213S、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213T、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、210G、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、210P、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、210A、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、221R、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、237A、265C、300S、317Y;
54V、58Q、194C、213S、237V、265C、300S、317Y;
54V、56N、58Q、194C、213S、265C、300S、317Y;
54T、56N、58Q、194C、213S、265C、300S、317Y;
54I、56N、58Q、194C、213S、265C、300S、317Y;
54V、56N、58H、194C、213S、265C、300S、317Y;
54L、56N、58Q、194C、213S、265C、300S、317Y;
54I、56N、58H、194C、213S、265C、300S、317Y;
54V、56N、58H、194C、213S、237V、265C、300S、317Y;
54V、56N、58H、194C、213S、210A、237V、265C、300S、317Y;
54I、56N、58H、194C、213S、210A、221R、265C、300S、317Y;
54L、56N、58Q;
54T、56N、58Q;
54I、56N、58H;
54V、56N、58H;
54L、56N、58Q、213S;
54T、56N、58Q、213S;
54I、56N、58H、213S;
54V、56N、58H、213S;
2C、54V、56N、58H、213S;
2S、54V、56N、58H、213S;
54V、56N、58H、81Y、213S;
54V、56N、58H、97V、213S;
54V、56N、58H、193T、213S;
54V、56N、58H、213S、300T;
54V、56N、58H、213S、337S;
54V、56N、58H、213S、342S;
2S、54V、56N、58H、81Y、97V、193T、213S、337S;
54V、56N、58H、97V、193A、213S、337S、342H;
2C、54V、56N、58H、81Y、97V、213S、337S;
2C、54V、56N、58H、81Y、97V、193A、213S、342S;
54V、56N、58H、97V、193T、213S、337S、342H;
54V、56N、58H、81Y、97V、193T、213S、337S、342H;
54V、56N、58H、97V、193T、213S、300T、337S、342H;
54V、56N、58H、81Y、97V、193T、213S、300T、337S、342H;
54V、56N、58H、97V、193T、210A、213S、300T、337S、342H;
54V、56N、58H、97V、193T、213S、221R、300T、337S、342H;
54V、56N、58H、97V、193T、210A、213S、221R、300T、337S、342H;
58K、213T;
54V、56N、58H、210A、213S;
54V、56N、58H、213S、221R;
54V、56N、58H、210A、213S、221R;
54I、56N、58H、210A、213S;
54I、56N、58H、213S、221R;
54I、56N、58H、210A、213S、221R;
54V、58Q、213S;
54V、58Q、210A、213S;
54V、58Q、213S、221R;及び
54V、58Q、210A、213S、221R
【0041】
本明細書において、アミノ酸の改変を行う基礎となるDAAOポリペプチドを、開始DAAOと称する。開始DAAOは、野生型DAAOであってもよく、また、野生型DAAOのバリアントであってもよい。例えば、改変が配列番号1のポリペプチドに基づいて開始される場合、配列番号1のポリペプチドは、改変DAAOに関して「開始DAAO」であり、改変が配列番号1のバリアントポリペプチド(例えば、配列番号4~30)に基づいて開始される場合、このバリアントポリペプチドは、改変DAAOに関して「開始DAAO」である。
【0042】
本明細書中で使用する、用語「野生型DAAO」は天然に存在するDAAOを指す。いくつかの実施形態において、野生型DAAOは、ロドトルラ属由来のDAAOである。いくつかの実施形態において、野生型DAAOは、配列番号1~3のうちの1つである。配列番号1はロドトルラ・トルロイデス由来のDAAOのアミノ酸配列(GenBank受託(Assesion)番号CAJ87425.1)、配列番号2はロドトルラ種JG-1bのDAAO由来のアミノ酸配列(GenBank受託番号KWU45700.1)、及び配列番号3はロドトルラ・タイワネンシス(Rhodotorula taiwanensis)(GenBank受託番号POY70719.1)由来の推定DAAOのアミノ酸配列である。
【0043】
本発明では、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の間のパーセンテージ同一性を決定するために、最適な比較を目的として配列をアライメントする(例えば、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸配列又は核酸配列にギャップを導入し得る)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列のある位置が、第2の配列の対応する位置の同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、これらの分子はこの位置において同一である。2つの配列間のパーセンテージ同一性は、配列が共有する同一位置の数の関数である(すなわち、パーセンテージ同一性=同一位置の数/位置の総数(すなわち、重複する位置)×100)。好ましくは、2つの配列は長さが同じである。
【0044】
当業者は、種々のコンピュータプログラムを使用して、2つの配列間の同一性を決定し得ることを知っている。
【0045】
「アミノ酸同一性パーセンテージ」又は「アミノ酸配列同一性パーセンテージ」は、2つのポリペプチドのアミノ酸間の比較を指し、最適にアライメントした場合、2つのポリペプチドは、およそ指定されたパーセンテージの同一のアミノ酸を有する。例えば、「95%アミノ酸同一性」は、2つのポリペプチドのアミノ酸間の比較を指し、最適にアライメントされた場合、2つのポリペプチドのアミノ酸の95%が同一である。
【0046】
いくつかの実施形態において、野生型DAAOは、配列番号1~3のうちの1つと、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%又は95%、特に96%、97%、98%又は99%同一である。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、その野生型と比較して、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、54位、56位、58位及び213位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はL、より好ましくはI又はVによって置換されている。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されている。好ましくは、58位におけるアミノ酸は、H又はQ、より好ましくはHによって置換されている。好ましくは、213位におけるアミノ酸はS又はT、より好ましくはSによって置換されている。いくつかの好ましい実施形態において、改変DAAOは、その野生型と比較して、54V、56N、58H及び213Sの置換、又は54I、56N、58H及び213Sの置換を含む。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は221位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、210位におけるアミノ酸はA、G又はP、より好ましくはAによって置換されている。好ましくは、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。好ましくは、本発明の改変DAAOは、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。好ましくは、野生型DAAOは、配列番号1と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%又は95%、特に、96%、97%、98%又は99%同一である。
【0048】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは54位、58位、213位及び221位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸はVによって置換されており、58位におけるアミノ酸はQによって置換されており、213位におけるアミノ酸はSによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は56位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸はAによって置換されている。好ましくは、本発明の改変DAAOは、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、ここで、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。好ましくは、野生型DAAOは、配列番号1と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%又は95%、特に96%、97%、98%又は99%同一である。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、その野生型と比較して、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、54位、56位、58位及び213位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はL、より好ましくはI又はVによって置換されている。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されている。好ましくは、58位におけるアミノ酸は、H又はQ、より好ましくはHによって置換されている。好ましくは、213位におけるアミノ酸はS又はT、より好ましくはSによって置換されている。いくつかの好ましい実施形態において、改変DAAOは、その野生型と比較して、54V、56N、58H及び213Sの置換、又は54I、56N、58H及び213Sの置換を含む。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は221位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、210位におけるアミノ酸はA、G又はP、より好ましくはAによって置換されている。好ましくは、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。好ましくは、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、300位、337位及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、ここで、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、300位におけるアミノ酸はTによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はS又はHによって置換されている。好ましくは、野生型DAAOは、配列番号2と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%又は95%、特に96%、97%、98%又は99%同一である。
【0050】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは54位、58位、213位及び221位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされている。好ましくは、54位におけるアミノ酸はVによって置換されており、58位におけるアミノ酸はQによって置換されており、213位におけるアミノ酸はSによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は56位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸はAによって置換されている。好ましくは、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、300位、337位及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、ここで、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、300位におけるアミノ酸はTによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はS又はHによって置換されている。好ましくは、野生型DAAOは、配列番号2と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%又は95%、特に96%、97%、98%又は99%同一である。
【0051】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、その野生型と比較して、4~20、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6又は4~5のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、その野生型と比較して、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のアミノ酸置換を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、野生型DAAOは、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を含むという点で配列番号1~3のうちの1つとは異なる。いくつかの実施形態において、野生型DAAOは、配列番号1~3のうちの1つと比較して、1つ又は複数のアミノ酸の保存された置換を含む。いくつかの実施形態において、野生型DAAOは、配列番号1~3のうちの1つと比較して、1つ又は複数のアミノ酸の挿入又は欠失を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、その野生型DAAOと比較して、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、54位、56位、58位及び213位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、改変DAAOは、配列番号1~3のうちの1つと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%又は98%同一である。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はL、より好ましくはI又はVによって置換されている。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されている。好ましくは、58位におけるアミノ酸は、H又はQ、より好ましくはHによって置換されている。好ましくは、213位におけるアミノ酸はS又はT、より好ましくはSによって置換されている。いくつかの好ましい実施形態において、改変DAAOポリペプチドは、その野生型DAAOと比較して、54V、56N、58H及び213S、又は54I、56N、58H及び213Sの置換の組合せを含む。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は221位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、210位におけるアミノ酸はA、G又はP、より好ましくはAによって置換されている。好ましくは、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。
【0054】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは54位、58位、213位及び221位にアミノ酸置換を含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、改変DAAOは、配列番号1~3のうちの1つと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%又は98%同一である。好ましくは、54位におけるアミノ酸はVによって置換されており、58位におけるアミノ酸はQによって置換されており、213位におけるアミノ酸はSによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、210位及び/又は56位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸はAによって置換されている。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、319位、337位、及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はS又はTによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はS又はHによって置換されている。
【0056】
或いは、いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置における置換をさらに含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。
【0057】
或いは、いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、2位、81位、97位、193位、300位、337位、及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置における置換をさらに含み、位置は配列番号2を参照して番号付けされており、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。好ましくは、2位におけるアミノ酸はC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸はYによって置換されており、97位におけるアミノ酸はVによって置換されており、193位におけるアミノ酸はTによって置換されており、300位におけるアミノ酸はTによって置換されており、337位におけるアミノ酸はSによって置換されており、342位におけるアミノ酸はS又はHによって置換されている。
【0058】
いくつかの実施形態において、改変DAAは、配列番号1と比較して、54位、58位、194位及び213位にアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有し、改変DAAOは、配列番号1と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%又は98%同一である。好ましくは、54位におけるアミノ酸は、I、V、T又はLによって置換されており、58位におけるアミノ酸はH又はQによって置換されており、194位におけるアミノ酸はV又はCによって置換されており、213位におけるアミノ酸はS又はTによって置換されている。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、56位、210位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含む。好ましくは、56位におけるアミノ酸はNによって置換されており、210位におけるアミノ酸は、A、G又はPによって置換されており、221位におけるアミノ酸はRによって置換されており、237位におけるアミノ酸はVによって置換されており、265位におけるアミノ酸はCによって置換されており、273位におけるアミノ酸はDによって置換されており、274位におけるアミノ酸はEによって置換されており、300位におけるアミノ酸はSによって置換されており、317位におけるアミノ酸はY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸はKによって置換されている。いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOは、配列番号1と比較して、1つ若しくは複数のアミノ酸の保存された置換をさらに含むか、又は1つ若しくは複数のアミノ酸の挿入若しくは欠失を含む。
【0059】
用語「保存された置換」は、「相同」なアミノ酸残基による置換とも称し、アミノ酸が類似の側鎖を有するアミノ酸残基、例えば、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)で置き換えられる置換を意味する。
【0060】
一般的に、アミノ酸の保存された置換は、得られたタンパク質の活性に最小の影響をもたらす。そのような置換を以下に記載する。保存された置換は、アミノ酸を、サイズ、疎水性、電荷、極性、空間特性、及び芳香族性が類似したアミノ酸に置換することである。タンパク質の特性を正確に制御することが望ましい場合、一般的に置換は保存される。
【0061】
本明細書で使用する、「相同」なアミノ酸残基は、疎水性、電荷、極性、立体特性、芳香族特性等に関連する、類似の化学的特性を有するアミノ酸残基を指す。互いに相同なアミノ酸の例としては、正に荷電している、リジン、アルギニン、及びヒスチジン、負に荷電しているグルタミン酸及びアスパラギン酸、疎水性であるグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、及びフェニルアラニン、極性であるセリン、スレオニン、システイン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、芳香族であるフェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、化学的に類似の側鎖基を有する、セリンとスレオニン、又はグルタミンとアスパラギン、又はロイシンとイソロイシンが挙げられる。
【0062】
タンパク質における保存的なアミノ酸置換としては以下が挙げられる:AlaはSerによって置換されており、ArgはLysによって置換されており、AsnはGln又はHisによって置換されており、AspはGluによって置換されており、CysはSerによって置換されており、GlnはAsnによって置換されており、GluはAspによって置換されており、GlyはProによって置換されており、HisはAsn又はGlnによって置換されており、IleはLeu又はValによって置換されており、LeuはIle又はValによって置換されており、LysはArg又はGlnによって置換されており、MetはLeu又はIleによって置換されており、PheはMet、Leu又はTyrによって置換されており、SerはThrによって置換されており、ThrはSerによって置換されており、TrpはTyrによって置換されており、TyrはTrp又はPheによって置換されており、ValはIle又はLeuによって置換されている。
【0063】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号5~86のうちの1つのアミノ酸配列を含むか、若しくはこれからなるか、又は改変DAAOは、配列番号5~30及び66~76のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、194位、210位、213位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、及び319位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、配列番号31~57及び77~86のうちの1つと比較して、2位、54位、56位、58位、81位、97位、193位、210位、213位、221位、300位、337位及び342位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、若しくは配列番号58~65のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、210位、213位及び221位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含む、アミノ酸配列を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号5~86のうちの1つのアミノ酸配列を含むか、若しくはこれからなるか、又は改変DAAOは、配列番号5~30及び66~76のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、194位、210位、213位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、及び319位以外の位置に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含むか、若しくは配列番号31~57及び77~86のうちの1つと比較して、2位、54位、56位、58位、81位、97位、193位、210位、213位、221位、300位、337位及び342位以外の位置に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含むか、若しくは配列番号58~65のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、210位、213位及び221位以外の位置に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、改変DAAOはD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号1~3のうちの1つと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。
【0064】
本明細書で使用する、酵素の活性は、特定の条件下で単位質量当たりの酵素によって触媒される化学反応における単位時間当たりの基質の減少又は生成物の増加を指す。例えば、本発明の改変DAAOの活性は、特定の条件下における単位質量の改変DAAOの触媒の下における単位時間当たりのD-グルホシネートの減少量又はPPOの増加量によって表すことができる。
【0065】
また、本明細書における酵素の活性は、酵素の相対活性を指していてもよく、同一の反応を触媒する所定の酵素の活性に対する目的の酵素の活性の比、例えばパーセンテージ相対活性で表される。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOの活性は配列番号4と比較したパーセンテージ相対活性で表される。いくつかの実施形態において、改変DAAOのD-グルホシネートのPPOへの酸化の触媒に対する活性は、配列番号4のD-グルホシネートのPPOへの酸化の触媒に対する活性の少なくとも100%、105%、110%、120%、130%、150%、170%、200%、250%、300%又はそれ以上である。
【0067】
また、改変DAAOの安定性を改善させることは、工業生産上も有益である。いくつかの実施形態において、安定性とは熱安定性であり、これは、特定の温度(例えば40~60℃以上)で一定時間(例えば10分~1時間)インキュベーションした後に酵素の活性を維持する能力を指す。いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号4のポリペプチドよりも優れた熱安定性を有する。例えば、43~45℃で20分間インキュベーションした後、本発明の改変DAAOの活性は、配列番号4のポリペプチドの活性の100%、105%、110%、120%、130%、150%、170%、200%、250%、300%又はそれ以上の高さである。或いは、本発明の改変DAAOはより高いT50を有し、ここでT50は1時間のインキュベーション後に酵素活性が50%減少する温度を指す。いくつかの実施形態において、本発明の改変DAAOのT50は、配列番号4のポリペプチドよりも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10℃又はそれ以上高い。
【0068】
いくつかの実施形態において、改変DAAOは、配列番号4のポリペプチドよりも優れた熱安定性を有し、そのD-グルホシネートのPPOへの酸化の触媒に対する活性は、D-グルホシネートのPPOへの酸化の触媒に対する配列番号4の活性の少なくとも100%、105%、110%、120%、130%、150%、170%、200%、250%、300%又はそれ以上である。
【0069】
II.改変DAAOをコードするポリヌクレオチド
本明細書で使用する、用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)並びにヌクレオチドアナログを用いて産生されたDNA又はRNAのアナログを含む。核酸分子は、一本鎖であっても又は二本鎖であってもよく、好ましくは二本鎖DNAである。核酸の合成には、ヌクレオチドアナログ又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を使用し得る。このようなヌクレオチドは、例えば、塩基対形成能が変化した核酸又はヌクレアーゼ耐性が増大した核酸を調製するために使用し得る。
【0070】
また、本発明は、本発明の改変DAAOをコードするポリヌクレオチドを提供する。したがって、本発明において、改変という用語はまた、本発明のDAAOポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの遺伝的な操作も含む。改変は、ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及び/又は付加であり得る。
【0071】
本明細書で使用する、用語「コードする」は、ポリヌクレオチドが、そのタンパク質産物のアミノ酸配列を直接的に特定することを意味する。コード配列の境界は一般的に、オープンリーディングフレームによって決定され、これは一般的にATG開始コドン又は他の開始コドン、例えばGTG及びTTGで開始し、終止コドン、例えばTAA、TAG及びTGAで終わる。コード配列は、DNA、cDNA又は組換えヌクレオチド配列であり得る。
【0072】
さらに、本発明の核酸配列の全て又は一部をカバーする核酸分子は、配列中に含まれる配列情報に基づいて設計及び合成されるオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離し得る。
【0073】
本発明のポリヌクレオチドは、標準的なPCR増幅技術によって、鋳型としてのcDNA、mRNA又はゲノムDNA及び適切なプライマーを使用して増幅し得る。上記のように増幅した核酸は、適切なベクターにクローニングされ、DNA配列分析によって特徴づけ得る。
【0074】
本発明のポリヌクレオチドは、標準的な合成技術により、例えば、自動DNA合成装置を用いて調製し得る。
【0075】
本発明はまた、本明細書に記載する核酸分子の相補鎖に関する。他のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、他のヌクレオチド配列とハイブリダイズして安定的な二本鎖を形成することができるように十分にヌクレオチドに相補的である分子である。
【0076】
本明細書中で使用する、用語「ハイブリダイゼーション」は、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、及びより好ましくは少なくとも98%互いに相同であるヌクレオチド配列が、所与のストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、一般的に互いに対するハイブリダイゼーションを維持することである。
【0077】
当業者には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件等、種々のハイブリダイゼーションの条件が知られている。例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、N.Y.;及びAusubelら(編)、1995、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.を参照。
【0078】
当然のことながら、本発明のポリヌクレオチドは、ポリA配列(例えばmRNAの3’末端ポリ(A))又はポリT(又はU)残基の相補的伸長部にのみハイブリダイズするポリヌクレオチドを含まない。
【0079】
III.改変DAAOの発現及び産生
また、本発明の改変DAAOを発現させるために、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物及びベクター、例えば発現ベクターも提供される。
【0080】
本明細書中で使用する、用語「発現」は、ポリペプチドの産生に関わる任意のステップを含み、転写、転写後改変、翻訳、翻訳後改変及び分泌を含むが、これらに限定されない。
【0081】
用語「核酸構築物」は、天然に存在する遺伝子から単離されているか、又は天然には存在しない核酸セグメントを含むように改変された一本鎖又は二本鎖の核酸分子を指す。核酸構築物が本発明のコード配列を発現するのに必要な制御配列を含む場合、核酸構築物という用語は、「発現カセット」という用語と同義である。
【0082】
用語「発現ベクター」は、本明細書において、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドの発現のために提供されるさらなるヌクレオチド、例えば、制御配列に作動可能に連結して含む線状又は環状のDNA分子を指す。発現ベクターには、ウイルスベクター又はプラスミドベクターが含まれる。
【0083】
本明細書における用語「制御配列」は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するために必要又は有益な全てのエレメントを含む。各制御配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して天然であっても外来であってもよく、又は互いに天然であっても外来であってもよい。このような制御配列としては、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも、制御配列は、プロモーターと、転写及び翻訳の終了のためのシグナルとを含む。
【0084】
例えば、制御配列は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するために宿主細胞によって認識されるヌクレオチド配列である、適切なプロモーター配列であってもよい。プロモーター配列は、ポリペプチドの発現を媒介する転写制御配列を含む。プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を示す任意のヌクレオチド配列、例えば、大腸菌(E.Coli)のlacオペロンであり得る。プロモーターには、変異体、切断型、及びハイブリッドのプロモーターも含まれ、宿主細胞に対して相同又は異種である、細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。
【0085】
本明細書において、用語「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチド配列のコード配列に対して適切な位置に制御配列が配置され、それによって制御配列がポリペプチドコード配列の発現を指示する構成を指す。
【0086】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現を可能にする種々の操作に供し得る。それをベクターに挿入する前に、発現ベクターによるポリヌクレオチドの操作が望ましいか、又は必要である。組換えDNA方法を用いてポリヌクレオチド配列を改変する技術は、当技術分野でよく知られている。
【0087】
本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を特定及び選択するために、本発明のベクターは、好ましくは1つ又は複数の選択可能なマーカーを含み、これにより形質転換、トランスフェクション、形質導入等がされた細胞の容易な選択が可能になる。選択可能なマーカーは遺伝子であり、その生成物は殺生物剤又はウイルス耐性、重金属耐性、補助剤栄養素要求株等を提供するものである。例えば、細菌の選択可能なマーカーは、枯草菌(Bacillus subtilis)若しくはバシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のdal遺伝子であるか、又はアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール若しくはテトラサイクリン耐性等の抗生物質耐性を与えるマーカーである。
【0088】
本発明のベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれるか、又はゲノムから独立して、細胞内で自律的に複製され得る。宿主細胞のゲノムへの組み込み又は自律的複製に必要なエレメントは、当技術分野で公知である(例えば、上述のSambrookら、1989を参照)。
【0089】
ベクターDNAは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術によって原核細胞又は真核細胞に導入し得る。本明細書中で使用する、用語「形質転換」及び「トランスフェクション」は、宿主細胞に外来の核酸(DNA等)を導入するための種々の技術を指し、これは当技術分野でよく知られており、例えば、上述のSambrookら、1989;Davisら、Basic Methods in Molecular Biology(1986)及び他の研究室マニュアルに記載されている。
【0090】
本発明はまた、DAAOポリペプチドの組換え産生に好都合に使用される、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞に関する。本発明のポリクレオチドを含むベクターは、宿主細胞に導入され、これにより、ベクターは染色体組み込み体として、又は自己複製染色体外ベクターとして保持される。当業者には、タンパク質発現のための従来のベクター及び宿主細胞は知られている。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明の宿主細胞は、大腸菌細胞、例えば大腸菌BL21(DE3)である。いくつかの実施形態において、発現ベクターはpET-30a(+)である。
【0092】
本発明の改変DAAOは、非DAAOポリペプチド(例えば、異種アミノ酸配列)に作動可能に連結して、融合タンパク質を形成し得る。例えば、一実施形態において、融合タンパク質はGST-DAAO融合タンパク質であり、ここで、DAAO配列はGST配列のC末端に融合している。この融合タンパク質は、組換えDAAOの精製を容易にし得る。他の実施形態において、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含むDAAOタンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物及び酵母宿主細胞)において、DAAOの発現及び/又は分泌は、異種シグナル配列の使用により増大させることができる。
【0093】
IV. L-グルホシネートの産生
さらに、本発明は、L-グルホシネートを調製する方法であって、本発明の改変DAAO又は宿主細胞をD-グルホシネートと接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明のL-グルホシネート-アンモニウムを調製する方法は、以下のステップ:
(a)本発明の改変DAAOの活性及びD-グルホシネートを反応媒体に供給し、任意選択でカタラーゼ活性を反応媒体に供給するステップ、
(b)反応媒体をインキュベーションして、D-グルホシネートをPPOに酸化するステップ、及び
(c)L-グルホシネートを、PPOの還元又はアミノ基転移によって産生するステップ
を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、無細胞触媒作用方法を使用して、L-グルホシネートを産生し、本発明の改変DAAOはステップ(a)において供給される。いくつかの実施形態において、遊離しているか、又は固定化されている、本発明の改変DAAOを使用し得る。また、カタラーゼを固定化してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、インキュベーションは、20~50℃、好ましくは25~40℃、より好ましくは28~35℃、例えば30℃で行われる。
【0097】
いくつかの実施形態において、媒体は、PBS、及びTris-HCl緩衝液等の緩衝液である。一実施形態において、媒体は、50mM、pH8.0のTris-HCl緩衝液等のTris-HCl緩衝液である。
【0098】
いくつかの実施形態において、反応媒体は、一部又は全部が細胞培養培地から構成される媒体であり、本発明の改変DAAOの活性は、反応媒体中で培養される本発明の宿主細胞によって提供される。
【0099】
いくつかの実施形態において、反応媒体は、一部又は全部が細胞培養培地から構成される媒体であり、カタラーゼ活性は、反応媒体中の培養物である、本発明の宿主細胞又は第2の宿主細胞によって提供される。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の宿主細胞及び/又は第2の宿主細胞を細胞培地中で培養及び増殖させ、次いで増殖した宿主細胞を細胞培養培地から分離し、緩衝液又は水を使用してバイオマスを再懸濁させる。D-グルホシネートを、増殖させた宿主細胞の添加前、添加中、又は添加後に、緩衝液又は水に添加する。
【0101】
いくつかの実施形態において、細菌細胞、例えば大腸菌細胞を使用し得る。
さらなる実施形態は、以下のとおりである。
[実施形態1]
野生型D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)と比較して、54位、56位、58位及び213位にアミノ酸置換を含む改変DAAOであって、前記位置が配列番号2を参照して番号付けされており、54位におけるアミノ酸が、I、V、T又はLによって置換されており、56位におけるアミノ酸がNによって置換されており、58位におけるアミノ酸がH又はQによって置換されており、213位におけるアミノ酸がS又はTによって置換されており、改変DAAOがD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する、改変DAAO。
[実施形態2]
54位におけるアミノ酸がI又はVによって置換されており、58位におけるアミノ酸がHによって置換されており、213位におけるアミノ酸がSによって置換されている、実施形態1に記載の改変DAAO。
[実施形態3]
210及び/又は221位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含み、210位におけるアミノ酸が、A、G又はPによって置換されており、221位におけるアミノ酸がRによって置換されている、実施形態1又は2に記載の改変DAAO。
[実施形態4]
210位におけるアミノ酸がAによって置換されている、実施形態3に記載の改変DAAO。
[実施形態5]
野生型DAAOと比較して、54位、58位、213位及び221位にアミノ酸置換を含む改変DAAOであって、前記位置が配列番号2を参照して番号付けされており、54位におけるアミノ酸がVによって置換されており、58位におけるアミノ酸がQによって置換されており、213位におけるアミノ酸がSによって置換されており、221位におけるアミノ酸がRによって置換されており、改変DAAOがD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する、改変DAAO。
[実施形態6]
210位及び/又は56位におけるアミノ酸置換(複数可)をさらに含み、56位におけるアミノ酸がNによって置換されており、210位におけるアミノ酸がAによって置換されている、実施形態5に記載の改変DAAO。
[実施形態7]
2位、81位、97位、193位、194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、319位、337位及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、2位におけるアミノ酸がC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸がYによって置換されており、97位におけるアミノ酸がVによって置換されており、193位におけるアミノ酸がTによって置換されており、194位におけるアミノ酸がV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸がVによって置換されており、265位におけるアミノ酸がCによって置換されており、273位におけるアミノ酸がDによって置換されており、274位におけるアミノ酸がEによって置換されており、300位におけるアミノ酸がS又はTによって置換されており、317位におけるアミノ酸がY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸がKによって置換されており、337位におけるアミノ酸がSによって置換されており、342位におけるアミノ酸がS又はHによって置換されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載の改変DAAO。
[実施形態8]
194位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、194位におけるアミノ酸がV又はCによって置換されており、237位におけるアミノ酸がVによって置換されており、265位におけるアミノ酸がCによって置換されており、273位におけるアミノ酸がDによって置換されており、274位におけるアミノ酸がEによって置換されており、300位におけるアミノ酸がSによって置換されており、317位におけるアミノ酸がY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸がKによって置換されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載の改変DAAO。
[実施形態9]
2位、81位、97位、193位、300位、337位及び342位からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、2位におけるアミノ酸がC又はSによって置換されており、81位におけるアミノ酸がYによって置換されており、97位におけるアミノ酸がVによって置換されており、193位におけるアミノ酸がTによって置換されており、300位におけるアミノ酸がTによって置換されており、337位におけるアミノ酸がSによって置換されており、342位におけるアミノ酸がS又はHによって置換されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載の改変DAAO。
[実施形態10]
配列番号1と比較して、54位、58位、194位及び213位にアミノ酸置換を含む改変DAAOであって、54位におけるアミノ酸が、I、V、T又はLによって置換されており、58位におけるアミノ酸がH又はQによって置換されており、194位におけるアミノ酸がV又はCによって置換されており、213位におけるアミノ酸がS又はTによって置換されており、改変DAAOがD-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する、改変DAAO。
[実施形態11]
56位、210位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位及び319位からなる群から選択される位置における1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換をさらに含み、56位におけるアミノ酸がNによって置換されており、210位におけるアミノ酸が、A、G又はPによって置換されており、221位におけるアミノ酸がRによって置換されており、237位におけるアミノ酸がVによって置換されており、265位におけるアミノ酸がCによって置換されており、273位におけるアミノ酸がDによって置換されており、274位におけるアミノ酸がEによって置換されており、300位におけるアミノ酸がSによって置換されており、317位におけるアミノ酸がY又はWによって置換されており、319位におけるアミノ酸がKによって置換されている、実施形態10に記載の改変DAAO。
[実施形態12]
配列番号5~86のうちの1つのアミノ酸配列、又は
配列番号5~30及び66~76のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、194位、210位、213位、221位、237位、265位、273位、274位、300位、317位、及び319位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、
配列番号31~57及び77~86のうちの1つと比較して、2位、54位、56位、58位、81位、97位、193位、210位、213位、221位、300位、337位及び342位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含むか、若しくは
配列番号58~65のうちの1つと比較して、54位、56位、58位、210位、213位及び221位以外の位置に1~10のアミノ酸置換を含む、アミノ酸配列
を含むか、又はこれからなる改変DAAOであって、
D-グルホシネートのPPOへの酸化を触媒する活性を有する、改変DAAO。
[実施形態13]
実施形態1~12のいずれか1つに記載の改変DAAOをコードするポリヌクレオチド。
[実施形態14]
実施形態13に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[実施形態15]
実施形態1~12のいずれか1つに記載の改変DAAO、実施形態13に記載のポリヌクレオチド又は実施形態14に記載のベクターを含む宿主細胞。
[実施形態16]
L-グルホシネートを産生する方法であって、実施形態1~12のいずれか1つに記載の改変DAAO又は実施形態15に記載の宿主細胞をD-グルホシネートと接触させるステップを含む、方法。
【実施例
【0102】
当業者は、以下の実施例を通じて、本発明をより明確に理解することができるであろう。実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、例示のみのためのものであることが理解されるべきである。
【0103】
実施例1.材料及び方法
本発明で使用する実験方法は、特に断らない限り、全て慣用的な方法である。特定の遺伝子クローニング操作については、上述のSambrookら、1989に見ることができる。
【0104】
i)試薬:
DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR Max DNA Polymerase)及びDpnIエンドヌクレアーゼはTaKaRaから購入し;プラスミド分離キットはアキシジェンAxygenから購入し;カタラーゼはZaozhuang Quanding Biological Technology Co,Ltd.、商品番号QD-001から購入し;及びD,L-グルホシネートは、Lier Chemical Co, Ltd.から購入した。
【0105】
ii)ベクター及び株:
使用した発現ベクターはpET-30a(+)、プラスミドはNovagenから購入し;及び使用した宿主細胞はTiangen BioTech(Beijing)Co.,Ltd.から購入した大腸菌BL21(DE3)であった。
【0106】
iii)配列決定及びプライマー合成は、Synbio Technologies Co.,Ltd.によって達成された。
【0107】
iv)部位特異的変異導入:
変異が必要なアミノ酸位置に対応する塩基に所望の置換を導入するために、特定のプライマー対を設計した。単離した変異前プラスミド(野生型DAAOのコード配列とpET-30a(+)骨格とを含む)を鋳型として使用し、Quickchange技術(Nucleic Acids Research,2004、32(14):e115)を使用したPCRにより変異を導入した。PCR増幅後、増幅生成物をDpnIで4時間消化して、鋳型プラスミドを除去した。消化した産物を大腸菌BL21(DE3)コンピテントセルに形質転換した後、細胞をLB寒天培地(50mg/Lカナマイシンを含む)に広げ、シングルコロニーをLBブロス(50mg/Lカナマイシンを含む)に培養のために拾い、配列決定によって正しい変異体を検証した。検証されたクローンは、将来の使用のために-80℃で保存する。
【0108】
v)タンパク質の発現及び粗製酵素溶液の調製:
保存したクローンをLB寒天培地上で活性化した。その後、シングルコロニーをLBブロス(50mg/Lカナマイシンを含む)に接種し、37℃で12時間振とうしてインキュベーションした。1mLの培養液を50mLの新鮮なLBブロス(50mg/Lカナマイシンを含む)に移し、37℃でOD600が約0.6になるまで振とうしてインキュベーションし、IPTG(最終濃度0.4mM)添加後に25℃で16時間インキュベーションしてタンパク質発現を誘導した。
【0109】
インキュベーション後、培養物を4,000gで10分間、4℃で遠心分離し、上清を廃棄し、大腸菌細胞を収集した。収集した大腸菌細胞の細胞を15mLの予め冷却したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.0に懸濁し、4℃で超音波処理した。この細胞破砕溶液を6,000g、4℃で15分間遠心分離して沈殿物を除去し、得られた上清を組換え酵素を含む粗製酵素溶液(13g/L)とした。
【0110】
vi)酵素活性の決定
D,L-グルホシネーは50mM Tris-HCl緩衝液、pH=8に溶解し、溶液中のD,L-グルホシネートの最終濃度は100mMであった。上記溶液に粗製酵素2g/Lの粗製酵素及び2g/Lカタラーゼを添加し、次いで30℃で2時間振とう器で連続振とう(400rpm)した。サンプリングし、OPAプレカラム誘導体化高速液体クロマトグラフィーで検出することによって、D-グルホシネートの減少及びee値を検出し、触媒反応の初期速度を決定した。
【0111】
実施例2.ロドトルラ・トルロイデス由来のDAAO(RtDAAO)の変異体の調製及び検出
変異体は、鋳型としてRtDAAO(配列番号1)をコードする核酸を使用して実施例1の方法に従って調製した。得られた変異体を表1に示し、ここで、配列番号4の変異体は、米国特許第9,834,802号(RtDAAO N54V、F58Q、M213S)において報告されている変異体である。得られた変異体を45℃で20分間インキュベーションし、酵素活性を実施例1に記載する方法に従って測定した。結果を表1に示し、ここで、相対酵素活性は、変異体の活性対配列番号4の活性のパーセンテージ(インキュベーション後)を指す(100~150%は「+」、150~200%は「++」、及び200%超は「+++」と表す)。
【0112】
【表1】
【0113】
次に、配列番号12に基づいてさらに変異を導入し、得られた変異体を表2に示す。変異体の相対酵素活性を測定した(変異体の活性対配列番号4の活性のパーセンテージ、熱処理なし)。次に、得られた変異体を一連の温度(40~60℃)で1時間インキュベーションし、T50を測定した(この温度で1時間インキュベーションした後、酵素活性が50%低下した)。結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
配列番号14に基づいてさらにアミノ酸置換を導入し、変異体の酵素活性を試験した(熱処理なし)。結果を表3に示す。相対酵素活性とは、変異体の活性対配列番号4の活性の、熱処理なしのパーセンテージを指す(110~120%は「+」、120~150%は「++」、150~200%は「+++」、及び200%超は「++++」と表す)。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例3.ロドトルラ種JG-1b由来のDAAO(RsDAAO)の変異体の調製及び検出
RsDAAO(配列番号2)をコードする核酸を鋳型として使用し、実施例1の方法に従って変異体を調製し、酵素活性を測定した。得られた変異体及びその酵素活性を表4に示し、ここで、相対酵素活性は、変異体の活性対配列番号4の活性、熱処理なしのパーセンテージを指し(70%未満は「--」、70~100%は「-」、110~120%は「+」、120~150%は「++」、150~200%は「+++」、200%超は「++++」と表す)、野生型RsDAAO(配列番号2)の活性は、0である。
【0118】
【表4】
【0119】
配列番号38に基づいて、さらにアミノ酸置換を導入し、得られた変異体の酵素活性を測定した。得られた変異体を表5に示す。変異体(熱処理なし)の活性は配列番号38と同等である。配列番号38の変異体及びアミノ酸置換をさらに導入することによって得られた変異体を、43℃で20分間インキュベーションし、インキュベーションした変異体の活性を測定した。結果を表5に示し、ここで、相対酵素活性は、(43℃で20分間インキュベーションした後の)変異体の活性対配列番号38の活性のパーセンテージを指す(150~200%を「++」、及び200%超を「+++」と表す)。
【0120】
【表5】
【0121】
配列番号54に基づいて、さらにアミノ酸置換を導入し、得られた変異体の酵素活性を測定した。得られた変異体及びその酵素活性を表6に示し、ここで、相対酵素活性は、(熱処理なし)変異体の活性対配列番号4の活性のパーセンテージを指す(120~150%を「++」、150~200%を「+++」、及び200%超を「++++」と表す)。
【0122】
【表6】
【0123】
実施例4.ロドトルラ・タイワネンシス由来のDAAO(RtnDAAO)の変異体の調製及び検出
RtnDAAO(配列番号3)をコードする核酸を鋳型として使用して、実施例1の方法に従って変異体を調製し、酵素活性を測定した。得られた変異体及びその酵素活性を表7に示し、ここで、相対酵素活性は、変異体の活性対配列番号4の活性のパーセンテージを指し(70%未満は「--」、70~100%は「-」、110~120%は「+」、120~150%は「++」と表す)、野生型RtnDAAO(配列番号3)の活性は0である。
【0124】
【表7】
【0125】
実施例5:異なる野生型に基づく置換の種々の組合せを有する変異体の調製
上記実施例に記載の方法に従い、野生型RtDAAO及びRsDAAOに種々の変異の組合せを導入することによって変異体を調製し、その酵素活性を測定した。
【0126】
RtDAAOに基づく変異体及びその酵素活性を表8に示し、ここで、相対酵素活性は、変異体の活性対配列番号4の活性のパーセンテージを指す(110~120%は「+」、120~150%は「++」、150~200%は「+++」、及び200%超は「++++」と表す)。
【0127】
【表8】
【0128】
RsDAAOに基づく変異体及びその酵素活性を表9に示し、ここで、相対酵素活性は、変異体の活性対配列番号77の活性のパーセンテージを指す(110~120%は「+」、120~150%は「++」、150~200%は「+++」、及び200%超は「+++」と表す)。
【0129】
【表9】

【配列表】
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