IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧 ▶ NECプラットフォームズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】三次元形状計測システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 35/08 20210101AFI20240903BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240903BHJP
   G01B 11/245 20060101ALI20240903BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03B35/08
G03B17/56 A
G01B11/245 H
G01B11/25 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022542570
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2020030912
(87)【国際公開番号】W WO2022034694
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】藤森 修身
(72)【発明者】
【氏名】松島 孝明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 静生
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202928538(CN,U)
【文献】特開2009-270915(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199556(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0106707(KR,A)
【文献】特開2006-254074(JP,A)
【文献】実開平04-050839(JP,U)
【文献】特開昭52-037035(JP,A)
【文献】特開2010-107778(JP,A)
【文献】特開2004-124983(JP,A)
【文献】特開2015-075504(JP,A)
【文献】特開2013-174547(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066415(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108696736(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/08
G03B 17/56
G01B 11/245
G01B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがカメラを備えた複数の撮影ユニットと、前記複数の撮影ユニットが取り付けられるベースとを備え、前記複数の撮影ユニットは、互いに独立して、前記カメラのアライメントを調整可能である撮影装置と、
前記撮影装置から、前記複数の撮影ユニットが異なる方向から同じ対象を撮影した複数の画像データを取得する取得手段と、前記複数の画像データに基づいて、前記対象の三次元形状の少なくとも一部を計算する計算手段とを備えた画像分析装置とを備え、
前記複数の撮影ユニットの底面には、2つの窪みまたは穴が設けられており、前記2つの窪みまたは穴が、前記ベースに設けられた2つのピンに嵌合することによって、前記複数の撮影ユニットは、前記ベースの上で位置決めされており、
前記撮影装置は、前記ベースに対して傾斜したシールドプレートをさらに備え、前記2つのピンは、前記シールドプレートに向かって並べられており、
前記複数の撮影ユニットは、前記シールドプレートに沿って、前記ベースに対して傾斜している前面を有する
三次元形状計測システム。
【請求項2】
前記撮影ユニットは、前記ベースと接続される本体を備え、
前記カメラは前記本体に固定されており、
前記ベースを基準として、前記カメラの向きを調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測システム。
【請求項3】
前記撮影ユニットの前記本体には、複数のネジ穴が設けられており、
前記複数のネジ穴を通して、前記カメラにネジが挿入されることで、前記カメラは前記本体に固定されており、
少なくとも1つの前記ネジ穴の直径は、当該ネジ穴に通される前記ネジの太さよりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の三次元形状計測システム。
【請求項4】
前記ネジ穴の直径の範囲内で、前記ネジを動かすことにより、前記カメラの向きを調整可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の三次元形状計測システム。
【請求項5】
前記撮影ユニットの前記本体には、前記ベースと嵌合する嵌合手段が取り付けられており、
前記嵌合手段を取り付け可能な前記本体の位置に幅がある
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の三次元形状計測システム。
【請求項6】
前記本体に取り付ける前記嵌合手段の位置を変えることにより、前記ベースの上で前記撮影ユニットの向きを調整可能である
ことを特徴とする請求項5に記載の三次元形状計測システム。
【請求項7】
前記複数の撮影ユニットは、異なる方向から同じ対象を撮影する2つ1組の撮影ユニットを含む
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の三次元形状計測システム。
【請求項8】
前記複数の撮影ユニットが共に前記ベースに取り付けられる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の三次元形状計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、撮影装置、撮影ユニット、画像分析装置および三次元形状計測システムに関し、特に、複数の異なる方向から同一の物体を撮影する撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
警察、医療分野、および美容業界等において、人体の頭部の三次元形状のイメージを生成するニーズがある。そこで、複数のカメラを用いて、物体を複数の異なる方向から撮影し、得られた複数の画像データを分析することによって、物体の三次元形状を高精度に計測する三次元形状計測システムが開発されている(特許文献1)。関連する撮影装置は、複数の異なる方向から物体を撮影する。関連する画像分析装置は、関連する撮影装置により得られた複数の画像データに基づいて、物体の三次元形状を計測する。
【0003】
そして、関連する画像分析装置は、計測した結果に基づいて、物体の三次元形状のイメージを生成および出力する。人間などの動きがある物体が計測の対象である場合であっても、複数のカメラが同時又はほぼ同時に対象をそれそれぞれ撮影することにより、高速に撮影を完了させることができ、対象の三次元形状を高精度に計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-106491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この開示は、上述した先行技術文献に開示されている技術を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の一態様に係わる撮影装置は、それぞれがカメラを備えた複数の撮影ユニットと、前記複数の撮影ユニットが取り付けられるベースとを備え、前記複数の撮影ユニットは、互いに独立して、前記カメラのアライメントを調整可能である。
【0007】
この開示の一態様に係わる画像分析装置は、前記撮影装置から、前記複数の撮影ユニットが、異なる方向から同じ対象を撮影した複数の画像データを取得する取得手段と、前記複数の画像データに基づいて、前記対象の三次元形状の少なくとも一部を計算する計算手段とを備えている。
【0008】
この開示の一態様に係わる三次元形状計測システムは、前記撮影装置と、前記画像分析装置とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係わる三次元形状計測システムを一方から見た俯瞰図である。
図2】実施形態1に係わる三次元形状計測システムを他の一方から見た俯瞰図である。
図3】実施形態1に係わる三次元形状計測システムを側方から見た図である。
図4】実施形態1に係わる撮影装置の外観を示す斜視図である。
図5図1に示す三次元形状計測システムの要部を拡大した図であり、実施形態1に係わる撮影装置が備えたセンターユニットの断面を示す図である。
図6】実施形態1に係わる撮影装置がディスプレイに表示する画像の一例を示す図である。
図7図5に示す三次元形状計測システムの要部を拡大した図であり、実施形態1に係わる撮影装置が備えた撮影ユニットを取り外す方法を説明する図である。
図8】実施形態1に係わる三次元形状計測システムの一変形例を示す図である。
図9】実施形態2に係わる撮影装置の構成を示す図である。
図10】実施形態2に係わる撮影装置が備えた撮影ユニットの外観を示す図である。
図11図10に示す撮影ユニットの断面図である。
図12】実施形態3に係わる撮影ユニットの筐体内に搭載された本体の斜視図である。
図13】実施形態3に係わる撮影ユニットの本体の底面の裏側の一部を示す第1の図である。
図14】実施形態3に係わる撮影ユニットの本体の底面の裏側の一部を示す第2の図であり、嵌合部の一例を示す図である。
図15】実施形態3に係わる撮影ユニットの本体の底面の表側の一部を示す図であり、撮影ユニットの本体の底面の裏側に嵌合部が取り付けられた状態を示す図である。
図16】実施形態3に係わる撮影ユニットの左右方向のアライメントの調整を説明する図である。
図17】実施形態4に係わる撮影ユニットの本体の頂部を示す第1の図であり、本体の頂部に設けられた複数の穴の一例を示す図である。
図18】実施形態4に係わる撮影ユニットの本体の頂部を示す第2の図であり、ネジを使って、カメラを本体に取り付ける方法を示す図である。
図19】実施形態4に係わる撮影ユニットの本体の頂部を示す第3の図であり、上下方向のアライメントの調整を説明する図である。
図20】実施形態5に係わる画像分析装置の構成を示すブロック図である。
図21】対象の3Dモデルのイメージの一例を示す図である。
図22】実施形態6に係わる画像分析装置の構成を示すブロック図である。
図23】実施形態6の一変形例に係わる画像分析装置の構成を示すブロック図である。
図24】実施形態5,6またはその変形例に係わる画像分析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
図1から図7を参照して、実施形態1について説明する。
【0011】
(三次元形状計測システム1)
図1は、本実施形態1に係わる三次元形状計測システム1を一方から見た俯瞰図である。図1に示すように、三次元形状計測システム1は、右撮影ユニット20a、左撮影ユニット20b、ベース30、およびセンターユニット300を備えている。
【0012】
図2は、本実施形態1に係わる三次元形状計測システム1を他の一方から見た俯瞰図である。図2に示すように、三次元形状計測システム1は、椅子100、連結部材150、スタンド250、およびシールドプレート10をさらに備えている。シールドプレート10、右撮影ユニット20a、左撮影ユニット20b、ベース30、およびセンターユニット300は、本実施形態1に係わる撮影装置200を構成する。撮影装置200の構成について、後述する。
【0013】
三次元形状計測システム1は、実施形態5で説明する画像分析装置500または実施形態6で説明する画像分析装置600,600´をさらに備えていてもよい。この場合、撮影装置200の右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bがそれぞれ計測の対象を撮影することによって取得された画像データは、有線又は無線のネットワークを介して、画像分析装置500,600,あるいは600´へ送信される。
【0014】
椅子100には、人物が着座する。椅子100は、人物の頭部の位置を支持するヘッドレストを備えている。ヘッドレストは、計測の対象である人物の頭部の位置を固定する。なお、計測の対象が人物ではなく、犬や蛇などの生物、あるいは形状を持つ無生物を含む物体である場合、三次元形状計測システム1は、椅子100の代わりに、生物または物体を支持又は固定する部材を備えていてよい。以下、人物、その他の生物、および無生物を、まとめて単に「物体」と呼ぶ。
【0015】
図2に示すように、シールドプレート10には、複数の開口が設けられている。3つの開口LO1~LO3は、右撮影ユニット20aの前に設けられている。1つの開口LO4は、図1に示すセンターユニット300の前に設けられている。図2では、人物によって隠されているが、図1に示す左撮影ユニット20bの前にも、開口LO1~LO3と対応する3つの開口が、シールドプレート10には設けられている。
【0016】
連結部材150は、椅子100とスタンド250との間を連結する。椅子100とスタンド250との間の距離は、連結部材150により、一定に維持される。一定の距離は、例えば、ユーザがどれぐらいの精細な画像を得ることを所望するかに応じて、また、撮影装置200が備えたカメラ22(図11)の焦点距離に応じて、適宜に決められる。
【0017】
スタンド250には、撮影装置200が載置される。スタンド250の上には、撮影装置200のベース30が接続される。人物の顔のあごがどのような形状をしているかは、人物を特定または識別するために有用な情報となる。しかし、関連する技術では、人物の頭部を正面から撮影していたため、あごの部分が画像データに映らない場合がある。一方、本実施形態1において、スタンド250の高さは、右撮影ユニット20aおよび右撮影ユニット20bのそれぞれのカメラ22が、やや上向きに人物の頭部を撮影するように設定される。このようにすることで、人物の顔のあごの部分までカメラ22で撮影することができる。
【0018】
図3は、本実施形態1に係わる三次元形状計測システム1を側方から見た図である。図3において、2つの距離D1、D2が示されている。D2は、椅子100の背もたれから、スタンド250の脚部までの距離であり、D1は、人物の頭部からシールドプレート10の上端までの距離を表す。上述した連結部材150によって、D1が規定されている。
【0019】
人物の頭部からシールドプレート10の上端までの距離D1をさらに延ばすためには、シールドプレート10の傾きを大きくすることによって、シールドプレート10の下端に対する上端のオフセットを大きくすればよい。こうすることで、人物の目の前の空間を広げることができ、人物の圧迫感を緩和することができる。また、人物が前方に腕を伸ばしたとしても、シールドプレート10の上端まで手が届かないように、距離D1を決定してもよい。これにより、人物がシールドプレート10の上端を掴み、撮影装置200による撮影を妨害することを防止できる。ただし、シールドプレート10の上端が、シールドプレート10の後方にある撮影ユニット20a(20b)と接触しない範囲内で、シールドプレート10の傾きを大きくすることができる。
【0020】
(撮影装置200)
図4は、本実施形態1に係わる撮影装置200の斜視図である。図4に示すように、撮影装置200は、シールドプレート10、右撮影ユニット20a、左撮影ユニット20b、ベース30、スタンド250、およびセンターユニット300を備えている。
【0021】
シールドプレート10は、人物が撮影装置200の右撮影ユニット20a、左撮影ユニット20b、あるいはセンターユニット300と接触することを防止する。右撮影ユニット20a、左撮影ユニット20b、あるいはセンターユニット300に外力が印可されることで、これらの位置がずれたり、カメラ22,310等が破損したりする可能性があるからである。
【0022】
天井の照明からの光がシールドプレート10により反射して、人物の顔を照らすことを防止又は抑制するため、シールドプレート10は、反射率の低い素材で形成されていることが望ましい。一例では、シールドプレート10は、半透明のアクリル製である。また、天井からの光の入射角が大きいほど、シールドプレート10の反射率は高くなるため、垂直方向(図3では上下方向に相当する)に対するシールドプレート10の傾斜の角度R(図3)は、10度以下であることが好ましい。
【0023】
さらに、シールドプレート10による光の反射をより低減するために、シールドプレート10の表面を加工してもよい。例えば、シールドプレート10の表面は、マット色に塗装してもよいし、光を拡散するように、凹凸構造を設けてもよい。
【0024】
図5は、図1に符号(A)を付与した破線の枠の部分を拡大して示す。図5は、センターユニット300の一部の断面を示す図である。
【0025】
図5に示すように、センターユニット300は、カメラ310および光源320を備えている。カメラ310および光源320の前側には、図1に示すように、シールドプレート10が配置されている。
【0026】
カメラ310のカメラレンズと対応するシールドプレート10上の位置に、上述したシールドプレート10の開口LO4が設けられている。カメラ310は、開口LO4を通じて、人物の頭部を撮影することができる。また、シールドプレート10には、光源320の前側にも、光源320からの光を通すための開口が設けられている。ただし、図2では、この開口の図示を省略している。光源320は、一例ではLED(Light Emitting Diode)である。
【0027】
カメラ310は、ユーザが人物の頭部の位置を確認するために使用される。光源320は、撮影装置200が通電(電源ON)していることを示すいわゆるパイロットランプであり、また、椅子100に着座した人物が光源320のほうを見ることで、頭部の向きを調整する用途でも利用できる。カメラ310は、人物の頭部を撮影し、撮影装置200は、カメラ310によって取得した画像を図示しないディスプレイにリアルタイムで表示させる。ユーザは、ディスプレイに表示された画像を見て、人物の頭部の位置を確認する。そして、ユーザは、人物の頭部が所定の位置に収まるように調整する。
【0028】
図6は、撮影装置200がディスプレイ(図示せず)に表示する画像の一例を示す。図6に例示する画像では、3本のラインが示されている。横方向の2本のラインは、人物の頭頂とあごの位置の目標を示す。また、縦方向の1本のラインは、人物の鼻と口を通る中心線の位置の目標を示す。
【0029】
あるいは、撮影装置200は、シールドプレート10上あるいはその近傍など、人物が前方を向いたままで画面を視認できる位置に配置したディスプレイ上に、図6に例示する画像を表示してもよい。これにより、人物は、ディスプレイに表示される自分の顔を確認しながら、顔の位置及び当向きを適宜に調整することができる。
【0030】
なお、シールドプレート10およびセンターユニット300はオプションである。すなわち、撮影装置200は、シールドプレート10およびセンターユニット300の一方又は両方を備えていなくてもよい。例えば、人物が右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bに接触することが考えにくい場合、撮影装置200はシールドプレート10を備えていなくてもよい。また、人物の頭部の位置決めが不要である場合、撮影装置200はセンターユニット300を備えていなくてもよい。撮影装置200がシールドプレート10およびセンターユニット300の両方を備えていない場合について、実施形態2において説明する。
【0031】
図7は、図3に符号(B)を付与した破線の枠の部分を拡大して示す。図7は、ベース30からの右撮影ユニット20aの取り外しを説明する図である。なお、以下で説明する右撮影ユニット20aと同等の構造を、左撮影ユニット20bも備えている。
【0032】
図7に示すように、ベース30には、複数のピンが設けられている。右撮影ユニット20aの底面には、第1ピンおよび第2ピンと対応する位置関係で、2つの窪み又は穴が設けられている。第1ピンおよび第2ピンが、右撮影ユニット20aの底面に設けられた窪み又は穴と嵌合することにより、右撮影ユニット20aはベース30に取り付けられている。第1ピンおよび第2ピンは、ベース30上において、右撮影ユニット20aを位置決めするために利用される。右撮影ユニット20aを位置決めすると、右撮影ユニット20aが備えたカメラ22の位置も決まる。また、右撮影ユニット20aの筐体には、ユーザが右撮影ユニット20aを持ち運ぶために使われる取っ手40を備えている。
【0033】
図7中に矢印で示すように、ユーザは、右撮影ユニット20aを、斜め後方(図7中に矢印)に向かって持ち上げることによって、ベース30から右撮影ユニット20aを取り外すことができる。逆に、ユーザは、右撮影ユニット20aの底面に設けられた窪み又は穴が、ベース30の第1ピン及び第2ピンと嵌合するように、右撮影ユニット20aをベース30に近づけることで、ベース30に右撮影ユニット20aを取り付けることができる。なお、左撮影ユニット20bと、ベース30との間の関係は、右撮影ユニット20aと、ベース30との間の関係と同じであり、左撮影ユニット20bも、同様のやり方で、ベース30から取り外し、また取り付けることができる。
【0034】
このように、本実施形態1に係わる撮影装置200では、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bは、互いに独立して、ベース30から取り外し、またベース30に取り付けることができる。そのため、右撮影ユニット20a(または左撮影ユニット20b)のカメラ22(図11)が故障した場合、ユーザは、故障したカメラ22を含む右撮影ユニット20a(または左撮影ユニット20b)だけをベース30から取り外すことができる。この点は、複数のカメラが1つの撮影ユニットにまとめられている構成などと比較して、有利である。なぜならば、複数のカメラが1つの撮影ユニットにまとめられている場合、撮影ユニットのサイズが大きくならざるを得ないから、カメラの修理あるいは交換に関して、ユーザの利便性が悪い。また、そのような構成では、1つのカメラの修理あるいは交換後に、撮影ユニットをベースに取り付ける際、撮影ユニットに含まれる複数のカメラのアライメントの調整を行わなければならない。
【0035】
さらに、本実施形態1に係わる撮影装置200では、右撮影ユニット20a(または左撮影ユニット20b)のカメラ22のアライメントの再調整が必要になった場合、ベース30から、右撮影ユニット20a(または左撮影ユニット20b)のみを取り外して、カメラ22のアライメントを調整可能である。すなわち、本実施形態1に係わる撮影装置200では、複数の撮影ユニット(20a,20b)は、互いに独立して、カメラ22のアライメントを調整可能である。
【0036】
(変形例)
図8を参照して、実施形態1に係わる三次元形状計測システム1の一変形例である三次元形状計測システム1´を説明する。
【0037】
上述したように、D1は、人物の頭部からシールドプレート10の上端までの距離を表す。D2は、椅子100´の背もたれから、スタンド250の脚部までの距離を表す。
【0038】
図8に示すように、本変形例に係る三次元形状計測システム1´では、シールドプレート10が、スタンド250の軸方向とほぼ平行である。この点で、本変形例に係る三次元形状計測システム1´は、実施形態1に係わる三次元形状計測システム1とは異なる。
【0039】
実施形態1に係わる三次元形状計測システム1では、D1>D2である。これは、計測の対象である人物にとって、自分の足元よりも、顔に近い位置において、前方の空間が広いことを意味する。したがって、人物に対し、強い圧迫感を与えることが少ないという利点がある。一方、本変形例に係わる三次元形状計測システム1´は、D1<=D2の関係を満たす。すなわち、本変形例に係わる三次元形状計測システム1´は、図3に示す実施形態1に係わる三次元形状計測システム1と比較して、人物の頭部からシールドプレート10の上端までの距離D1が短い。
【0040】
本変形例の利点は、ユーザが保守作業をしやすいことである。本変形例の構成では、シールドプレート10が後方に傾いていないことから、ユーザは、シールドプレート10との接触をそれほどに注意することなく、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bを真上に引き上げることができる。
【0041】
〔実施形態2〕
図9から図11を参照して、実施形態2について説明する。本実施形態2では、前記実施形態1に係わる三次元形状計測システム1に適用される撮影装置200の一例を説明する。
【0042】
(撮影装置200)
図9は、本実施形態2に係わる撮影装置200の構成を示す図である。図9に示すように、本実施形態2に係わる撮影装置200は、右撮影ユニット20a、左撮影ユニット20b、およびベース30を備えている。本実施形態2に係わる撮影装置200は、センターユニット300を備えていない点で、前記実施形態1に係わる撮影装置200とは異なる。
【0043】
図9に示すように、右撮影ユニット20aは、ベース30に設けられた2つのピンによって、ベース30上で位置決めされる。すなわち、右撮影ユニット20aの底面には、符号F1,F2で示す2つの窪み又は穴が設けられており、これらの窪み又は穴F1,F2と、第1ピン及び第2ピンとがそれぞれ嵌合することによって、右撮影ユニット20aは、ベース30の面内方向には動かなくなる。
【0044】
同様に、左撮影ユニット20bも、ベース30に設けられた他の2つのピンによって、ベース30上で位置決めされる。
【0045】
また、右撮影ユニット20aが、それぞれ、1つではなく、2つで1組のピンによって位置決めされることにも意味がある。2つで1組のピンは、右撮影ユニット20aの位置及び向きを決める。すなわち、2つのピンの位置が、ベース30の面上での右撮影ユニット20aの位置を規定しており、2つのピンを通る直線の方向が、ベース30の面上での右撮影ユニット20aの向きを規定している。同様に、左撮影ユニット20bも、ベース30に設けられた他の2つで1組のピンによって、向きを決められる。ユーザは、右撮影ユニット20aまたは左撮影ユニット20bの底面に設けられた2つの窪み又は穴と、ベース30に設けられた他の2つで1組のピンとを位置合わせして、それらを嵌合させるだけでよい。そのため、ユーザは、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bの向きを合わせ込む手間がかからない。
【0046】
右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bは、上方向(ベース30から離れる方向)の動きをピンによって制限されない。したがって、ベース30から右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bを取り外すことは容易である。ユーザは、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bを斜め後方に持ち上げるだけでよい。
【0047】
(撮影ユニット20a(20b))
図10から図11を参照して、撮影ユニット20a(20b)について説明する。ここでは、「撮影ユニット20a(20b)」とは、右撮影ユニット20aまたは左撮影ユニット20bを意味する。右撮影ユニット20aまたは左撮影ユニット20bに共通する構成に関して、「撮影ユニット20a(20b)」として説明する。
【0048】
図10は、撮影ユニット20a(20b)の外観図である。図10に示すように、撮影ユニット20a(20b)の筐体には、3つの開口so1~so3が設けられている。
【0049】
図11は、図10に示す撮影ユニット20a(20b)の断面図である。図11に示すように、撮影ユニット20a(20b)の筐体内に、撮影ユニット20a(20b)の本体21が格納されている。本体21には、カメラ22、光源23、およびプロジェクタ24が取り付けられている。筐体の開口so1~so3の位置は、カメラ22、光源23、およびプロジェクタ24の位置と対応している。
【0050】
さらに、撮影ユニット20a(20b)の3つの開口so1~so3の位置は、前記実施形態1で説明したシールドプレート10の開口LO1~LO3の位置とも対応している。すなわち、本実施形態2に係わる撮影ユニット20a(20b)が、前記実施形態1に係る三次元形状計測システム1に適用された場合、右撮影ユニット20aの開口so1~so3と、図1に示すシールドプレート10の開口LO1~LO3とが重なる。
【0051】
したがって、撮影ユニット20a(20b)のカメラ22は、筐体の開口so1およびシールドプレートの開口LO1を通して、人物の頭部を撮影することができる。撮影ユニット20a(20b)の光源23は、筐体の開口so2およびシールドプレートの開口LO2を通して、人物の頭部を照射する。また、撮影ユニット20a(20b)のプロジェクタ24は、筐体の開口so3およびシールドプレートの開口LO2を通して、人物の頭部に光のパターンを投影する。
【0052】
光源23が対象を照射することで、暗い環境下においても、対象をきれいに撮影することができる。特に、照射する光の波長域を、キャプチャするスペクトルの波長域に適合させることで、ノイズ(S/N比)の小さい画像を取得することができる。
【0053】
プロジェクタ24によって対象に投影された光のパターンは、対象の表面上で、対象の表面に沿った形状に変化する。よって、この変化した形状に基づいて、対象の3次元の形状を算出することが可能である。なお、プロジェクタ24の投影する光パターンを用いる3次元の形状の分析手法として、一例では、特許文献1に開示された技術に関連する技術を適用できる。
【0054】
上述した撮影ユニット20a(20b)の構成要素のうち、光源23およびプロジェクタ24はどちらも必須ではない。すなわち、撮影ユニット20a(20b)は、光源23およびプロジェクタ24の一方又は両方を備えていなくてもよい。
【0055】
(アライメントの調整)
ここでは、撮影ユニット20a(20)が備えたカメラ22の位置決め(アライメントの調整)について説明する。図11中に示すxyz座標系は、続いて説明する図12中に示すxyz座標系と同等である。
【0056】
特許文献1に記載の関連する技術では、複数のカメラについて、位置及び向きが予め調整されたうえ、支持部材に固定されている。衝撃などの外力により、いずれかのカメラの位置または向きがずれたり、いずれかのカメラに故障が生じたりする場合がある。このような場合、1つのカメラの修理または交換のため、複数のカメラを支持部材ごと動かす必要がある。このため、複数のカメラのアライメントの調整を再び行わなければならない。
【0057】
一方、撮影ユニット20aおよび撮影ユニット20bは、互いに独立して、カメラ22のアライメントを調整可能である。一例では、撮影ユニット20a(20b)は、ベース30と接続される本体21を備え、カメラ22は本体21に固定されており、ベース30を基準として、カメラ22の向きを調整される。
【0058】
複数の撮影ユニット20a,20bが共にベース30に取り付けられているから、複数の撮影ユニット20a,20bは座標系を共有しているともいえる。そのベース30を基準とすることで、複数の撮影ユニット20a,20bのカメラ22の向きを独立して調整する前に、共通の座標系を決定しておく手間を省ける。
【0059】
アライメントの調整の具体例を、続く実施形態3および実施形態4で説明する。一例では、撮影装置200の撮影ユニット20a(20b)は、実施形態3および実施形態4でそれぞれ説明するアライメントの調整を実現する構造の一方又は両方を備えていてよい。
【0060】
〔実施形態3〕
図12から図16を参照して、実施形態3について説明する。本実施形態3では、前記実施形態2において説明したアライメントの調整の具体例を説明する。
【0061】
本実施形態3において、撮影ユニット20a(20b)の本体21には、ベース30と嵌合する嵌合手段が取り付けられており、嵌合手段を取り付け可能な本体21の位置に幅がある。そして、本体21に取り付ける嵌合手段の位置を変えることにより、ベース30上で撮影ユニット20a(20b)の向きを調整可能である。
【0062】
本体21に取り付けられた嵌合手段がベース30と嵌合することで、撮影ユニット20a(20b)は位置決めされる。嵌合手段を取り付け可能な本体21の位置に幅があるから、この幅内で、嵌合手段の位置を変えることで、撮影ユニット20a(20b)の向きを調整できる。特に、撮影ユニット20a(20b)の本体21に固定されたカメラ22の向きを変えるように、嵌合手段の位置を調整できる。つまり、嵌合手段の位置を調整することで、カメラ22の向きを調整することができる。
【0063】
以下で、本実施形態3の構成の一例を詳細に説明する。
【0064】
(左右方向のアライメント)
図12は、図11に示す撮影ユニット20a(20b)の本体21の外観を示す。ただし、図12では、図11に対し、y軸の向きを反転させて示している。図12には、本体21の底面に取り付けられる嵌合部25も示している。嵌合部25は、上述した嵌合手段の一例である。
【0065】
第1に、x軸の正負の方向、すなわち、y軸の正方向を前方向としたときの左右方向に、カメラ22の向きを調整する手順を説明する。
【0066】
図13は、図12に符号(C)で示す破線の枠内の部分を、本体21の下側(底面側)から見た図である。図13に破線の囲みで示すように、本体21の底面には、楕円形の凹みD1がある。凹みD1の中に、3つの穴G0~G2が並んで配置されている。それらのうち、真ん中の穴G0は円形で大きく、その両側の2つの穴G1,G2は細くて小さい。しかしながら、これらの3つの穴G0~G2の形状および配置は重要ではない。真ん中の穴G0には、図9に示すベース30の2つで1組のピンのうち、第2ピンが挿入される。真ん中の穴G0の直径は、第2ピンの太さよりも大きい。したがって、真ん中の穴G0に第2ピンを挿入した場合、第2ピンが穴G0内で動くことが可能である。
【0067】
図13に示す本体21の3つの穴G0~G2の形状および配置は、単なる一例である。これらの穴G0~G2はどのような形状および配置であっても構わない。さらに、穴G1,G2は、後述するように、嵌合部25にネジを挿入するためのネジ穴として設けられている。一方、嵌合部25をネジ以外で本体21に取り付ける場合、穴G1,G2は不要である。
【0068】
図14は、図13と同様に、本体21を底面側から見た図である。図14では、本体21の底面に設けられた凹みD1(図13)内に、嵌合部25が挿入されている。嵌合部25は、角の丸い長方形の板に半月型の欠損D0が形成された形状を有している。半月型の欠損D0と、本体21の底面の穴G0とが部分的に重なることによって、前記実施形態2の窪み又は穴F2(図9)と対応する機能を実現している。すなわち、ベース30の第2ピンが、欠損D0および穴G0によって形成される穴と嵌合することで、本体21が位置決めされる。本体21の底面の真ん中の穴G0の位置は、嵌合部25の欠損D0の位置と対応している。嵌合部25が挿入される本体21の底面の凹みD1よりも、嵌合部25は、x軸の方向(左右方向)に一回り小さい。そのため、嵌合部25は、凹みD1内でx軸の正負の方向に動くことが可能である。嵌合部25は、後述する方法で本体21に固定することにより、凹みD1内のどこにでも取り付けることができる。言い換えれば、嵌合部25を取り付け可能な本体21の位置に幅がある。図14において、嵌合部25を取り付け可能な本体21の位置の幅を、2つの両矢印で示している。
【0069】
図15は、図12に符号(C)で示す破線の枠内の部分を、本体21の上側から見た図である。図15では、本体21の底面にある穴G0の両側の2つの穴に、それぞれネジが通されている。ネジは本体21の底面側に取り付けられている嵌合部25に挿入されている。ただし、後述するアライメントの調整の実施前では、ネジは仮止めにされており、嵌合部25は、本体21の底面の凹みD1内で自由に動くことが可能である。
【0070】
図16を参照して、アライメントの調整の方法の一例を説明する。図16に示すように、本体21の前方(y軸の正方向)には、ターゲット(アライメントマークとも呼ばれる)が配置されている。アライメントの調整のためのベースには、2つで1組のピンA,Bが設けられている。これらのピンAおよびピンBは、ベース30の第1ピンおよび第2ピン(図3)を模擬している。すなわち、ピンAの形状および大きさは、ベース30の第1ピンの形状および大きさに等しい。ピンBの形状および大きさは、ベース30の第2ピンの形状および大きさに等しい。そして、これらのピンAとピンBとの間の距離は、第1ピンと第2ピンとの間の距離に等しい。
【0071】
ユーザは、まず、本体21の底面をピンAおよびピンBと嵌合させる。ピンAは、本体21の底面に設けられた窪みまたは穴F1(図11)に嵌め込まれ、ピンBは、図14に示す嵌合部25と嵌合する。そして、ユーザは、カメラ22によって撮影したターゲットの画像を参照しながら、カメラ22のカメラレンズの光軸と、ターゲットの中心とが一致するように、ピンAを支点、y軸を中心軸として、本体21をx軸の正負の方向に回転させる。この時、本体21の底面に取り付けられた嵌合部25は、本体21の底面の凹みD1内で、ユーザが本体を回転させた方向とは逆向きに動く。カメラ22のカメラレンズの光軸と、ターゲットの左右方向の中心とが一致したのち、ユーザは、本体21を通して嵌合部25に挿入されたネジ(図15)を締めることによって、嵌合部25の位置を固定する。このようにして、左右方向のアライメントの調整は完了する。
【0072】
本体21の回転の中心軸は、ピンAおよびカメラ22を通ることが好ましい。すなわち、回転の支点であるピンAは、カメラ22の真下に設置されていることが好ましい。これにより、本体21を中心軸周りに回転させたとき、x軸の正負の方向(左右方向)におけるカメラ22の位置が変わらないため、左右方向のアライメントの調整が容易となる。
【0073】
〔実施形態4〕
図17から図19を参照して、実施形態4について説明する。本実施形態4では、前記実施形態2において説明したアライメントの調整の具体例を説明する。
【0074】
本実施形態4において、撮影ユニット20a(20b)の本体21には、複数のネジ穴が設けられており、複数のネジ穴を通して、カメラ22にネジ(ボルトの先端)が挿入されることで、カメラ22は本体21に固定されており、少なくとも1つのネジ穴の直径は、当該ネジ穴に通されるネジの太さよりも大きい。カメラ22にネジを挿入し、カメラ22を本体21に仮止めしたのち、ネジ穴の直径の範囲内で、ネジを動かすことにより、カメラ22の向きを調整可能である。ここで、「撮影ユニット20a(20b)」とは、右撮影ユニット20aまたは左撮影ユニット20bを意味する。
【0075】
撮影ユニット20a(20b)の本体21に設けられた複数のネジ穴のうち少なくとも1つの直径は、ネジの太さよりも大きい。このことは、ネジ穴内で、自由にネジを動かせることを意味する。ネジの位置を決めると、カメラ22のz軸方向(すなわちy軸の正方向を前方向としたときの上下方向)の向きが決まる。つまり、ネジの位置を動かすことで、カメラ22のアライメントの調整を行うことが可能である。ネジの位置決めをした後、ネジをしっかりと締めれば、ネジの頭と本体との間の摩擦により、ネジの動きを止めることができる。
【0076】
以下で、本実施形態4の構成の一例を詳細に説明する。
【0077】
(上下方向のアライメント)
第2に、z軸の正負の方向、すなわち、y軸の正方向を前方向としたときの上下方向に、カメラ22の向きを調整する手順を説明する。
【0078】
図17は、図12に符号(D)で示す破線の枠内の部分を、本体21の右側(x軸の負方向)から見た図である。図17に示すように、本体21には、3つのネジ穴が設けられている。第1のネジ穴h1の直径は、これに通すネジの太さと等しい。一方、第2のネジ穴H2および第3のネジ穴H3の直径は、これらに通すネジの太さよりも大きい。図17では、第1のネジ穴h1よりも、第2のネジ穴H2および第3のネジ穴H3を大きく描いている。これは、第1のネジ穴h1、第2のネジ穴H2、および第3のネジ穴H3のいずれにも、同じ太さのネジを通すことを、一例として想定しているためである。
【0079】
しかしながら、必ずしも、第1のネジ穴h1よりも、第2のネジ穴H2および第3のネジ穴H3が大きくなくてもよい。例えば、第1のネジ穴h1を通すネジの太さよりも、第2のネジ穴H2および第3のネジ穴H3を通すネジの太さが細くてもよい。この場合、第1のネジ穴h1と、第2のネジ穴H2および第3のネジ穴H3との間の大きさの大小関係は限定されない。
【0080】
図18に示すように、第1のネジ穴h1および第2から第3までのネジ穴H2,H3の一方から、それぞれネジを通して、3つのネジ穴から突き出た3つのネジの先端を、カメラ22の対応する3つのネジ穴に挿入する。上述したように、本実施形態4では、第1のネジ穴h1に通すネジの太さと、第2から第3までのネジ穴H2,H3に通すネジの太さは等しい。なお、ネジの頭は、第1のネジ穴h1および第2から第3までのネジ穴H2,H3を通ることがない程度に十分大きい。
【0081】
図19は、3本のネジにより、カメラ22が仮止めされた状態を示す。第2のネジ穴H2および第3のネジ穴H3のそれぞれの直径は、ネジの太さよりも大きいため、カメラ22は、第1のネジ穴h1を軸として、z軸の方向、すなわち、y軸の正方向を前方向としたときの上下方向に動くことができる。
【0082】
その後、ユーザは、図16に例示する手順で、アライメントの調整を実行する。すなわち、ユーザは、カメラ22のカメラレンズの光軸と、ターゲットの上下方向の中心とが一致したのち、ユーザは、カメラ22に挿入された3本のネジ(図19)を締めることによって、カメラ22の位置を固定する。このようにして、アライメントの調整は完了する。
【0083】
〔実施形態5〕
図20から図21を参照して、実施形態5について説明する。本実施形態5では、前記実施形態1から4で説明した撮影装置200の右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bから、複数の画像データを取得および分析する画像分析装置500について説明する。本実施形態5に係わる画像分析装置500は、前記実施形態1で説明した三次元形状計測システム1(図1)に含まれていてもよい。すなわち、画像分析装置500は、三次元形状計測システム1の構成要素であってもよい。
【0084】
(画像分析装置500)
図20は、本実施形態5に係わる画像分析装置500の構成を示すブロック図である。図20に示すように、画像分析装置500は、取得部510および計算部520を備えている。
【0085】
取得部510は、撮影装置200(図1または図9)から、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bを含む複数の撮影ユニットが、異なる方向から同じ対象を撮影した複数の画像データを取得する。取得部510は、取得手段の一例である。
【0086】
一例では、取得部510は、図示しない通信部(ベース30の裏面に設置されている)を用いて、撮影装置200との通信を接続する。撮影装置200から、ネットワークを介して、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bがそれぞれ取得した複数の画像データが送信される。取得部510は、撮影装置200から送信された複数の画像データを受信する。
【0087】
取得部510は、取得した複数の画像データを、計算部520へ出力する。
【0088】
計算部520は、複数の画像データに基づいて、対象(一例では、人物の頭部)の三次元形状の少なくとも一部を計算する。計算部520は計算手段の一例である。
【0089】
一例では、計算部520は、右撮影ユニット20aが取得した画像データ上の計測点と、左撮影ユニット20bが取得した画像データ上の同じ計測点との間の視差に基づいて、基準位置(例えば右撮影ユニット20aと左撮影ユニット20bとの間の中間点)から計測点までの距離を計算する。計算部520は、画像データに映る対象上に複数の計測点をマッピングし、各計測点までの距離を上述の手法でそれぞれ計算することによって、対象の三次元形状の少なくとも一部を計算する。
【0090】
図20に示すように、計算部520は、対象の三次元形状の計算結果を、ディスプレイ等に出力してもよい。一例では、対象の三次元形状の計算結果は、対象を様々な方向から見たときの対象の見え方の変化に関する3Dモデルのデータを含む。あるいは、計算部520は、対象の三次元形状の計算結果を、図示しない記憶装置に保存してもよい。
【0091】
なお、右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bが、実施形態2に置いて説明したプロジェクタ24(図11)を備えている場合、計算部520は、プロジェクタ24の投影する光パターンを用いる3次元の形状の分析手法によって、対象の三次元形状を計算することもできる。 (一例;3Dモデルのイメージ)
図21は、計算部520の計算結果に基づく表示の一例を示す。ここでは、計測の対象は人物の頭部である。図21に示す表示の一例では、人物の頭部(つまり計測の対象)が、3Dモデルのイメージとして再現されている。図21の(a)として示す表示では、人物の頭部の左側が主に表示されている。図21の(b)として示す表示では、人物の頭部の右側が主に表示されている。ユーザの入力操作によって、図21の(a)として示す表示と、図21の(b)として示す表示との間で、人物の頭部の3Dモデルのイメージが遷移可能であってもよい。
【0092】
〔実施形態6〕
図22から図23を参照して、実施形態6について説明する。本実施形態6では、前記実施形態1から4で説明した撮影装置200の右撮影ユニット20aおよび左撮影ユニット20bから、複数の画像データを取得および分析する画像分析装置600と、その一変形例である画像分析装置600´について説明する。本実施形態6に係わる画像分析装置600あるいはその一変形例に係わる画像分析装置600´は、前記実施形態1で説明した三次元形状計測システム1(図1)に含まれていてもよい。すなわち、画像分析装置600,600´は、三次元形状計測システム1の構成要素であってもよい。
【0093】
(画像分析装置600)
図22は、本実施形態6に係わる画像分析装置600の構成を示すブロック図である。図22に示すように、画像分析装置600は、取得部510および計算部520に加え、合成部630をさらに備えている。本実施形態6に係わる画像分析装置600は、合成部630をさらに備えている点で、前記実施形態5に係わる画像分析装置500とは異なる。
【0094】
取得部510および計算部520に関して、前記実施形態5での説明を引用し、ここではその説明を省略する。
【0095】
合成部630は、複数の画像データを合成することにより、対象の三次元形状の少なくとも一部を示す画像データを生成する。合成部630は合成手段の一例である。
【0096】
異なる方向から同じ対象を撮影することで、複数の画像データを得られる。これらの画像データを合成することで、対象の三次元形状の少なくとも一部を示す画像データを得られる。合成した画像データを使うことで、例えば、対象の向きによらず、対象を正確に識別することができる。
【0097】
一例では、合成部630は、インテグラルフォトグラフィなど、周知の映像技術を用いる。合成部630は、異なる方向から同じ対象を撮影することによって得られた複数の画像データを取得部510から受信するとともに、対象の三次元形状の計算結果に含まれる3Dモデル(図21)のデータを、計算部520から取得する。そして、合成部630は、光線追跡法により、複数の画像データに基づいて、対象の3Dモデルの各点と対応する画素値を決定する。このようにして、3Dモデルの各点における画素値が決まれば、合成部630は、対象の三次元形状の少なくとも一部を示す画像データ(合成画像データと呼ぶ場合がある)を得られる。
【0098】
合成部630は、合成画像データを、ディスプレイ等に出力してもよい。あるいは、合成部630は合成画像データを、図示しない記憶装置に保存してもよい。
【0099】
合成画像データの利点は、計測の対象(例えば人物の頭部)の様々な側面をユーザが見ることができることである。例えば、右撮影ユニット20aにより人物の頭部の左側を撮影し、左撮影ユニット20bにより人物の頭部の右側を撮影することによって、人物の左耳の形状がわかる画像データと、人物の右耳の形状がわかる画像データとが得られる。これらの画像データを合成することで、両耳の形状を見ることが可能な合成画像データが得られる。
【0100】
(変形例)
一変形例として、合成部630が複数の画像データを合成する前に、複数の画像データを補正する構成を説明する。
【0101】
図23は、実施形態6に係わる画像分析装置600の一変形例である画像分析装置600´の構成を示すブロック図である。図23に示すように、画像分析装置600´は、取得部510、計算部520、および合成部630に加えて、補正部640をさらに備えている。
【0102】
本変形例に係わる画像分析装置600´は、補正部640をさらに備えている点で、実施形態6に係わる画像分析装置600とは異なる。
【0103】
補正部640は、カメラ22の向きの調整のずれに基づく複数の画像データの間の不整合を補正する。補正部640は、補正手段の一例である。本実施形態6では、合成部630(合成手段の一例)は、補正した複数の画像データを合成する。
【0104】
カメラ22の位置および向きは、アライメントの調整により決定されるが、基準からのずれがある場合がある。本変形例では、補正部640がそのずれの影響をキャリブレーションにより補正することで、基準の位置および向きにカメラ22がある場合の画像データが得られる。合成部630は、補正された画像データを合成することで、補正前の画像データを合成した場合よりも、不整合が小さい画像データを得られる。つまり、対象の正確な三次元形状を示す画像データを得られる。
【0105】
一例では、補正部640は、まず、アライメントの調整(図16)が正確であると仮定し、右撮影ユニット20aが備えたカメラ22の視界と、左撮影ユニット20bが備えたカメラ22の視界との間で、共通して見える領域を特定する。そして、補正部640は、異なる方向から同じ対象を撮影することによって得られた複数の画像データの間で、特定した領域における画素値同士を比較し、画素値同士が一致しない領域の大きさを計算する。次に、補正部640は、右撮影ユニット20aが備えたカメラ22の向きを第1のパラメータとし、左撮影ユニット20bが備えたカメラ22の向きを第2のパラメータとして、画素値同士が一致しない領域の大きさが最も小さくなるパラメータの組み合わせを探索する。
【0106】
一例では、補正部640は、上述の手順で特定した第1のパラメータおよび第2のパラメータに基づいて、右撮影ユニット20aが備えたカメラ22、および左撮影ユニット20bが備えたカメラ22のそれぞれについて、実際の向きを計算する。そして、補正部640は、右撮影ユニット20aが備えたカメラ22の向きの計算結果に基づいて、右撮影ユニット20aが取得した画像データのキャリブレーションを行う。また、補正部640は、右撮影ユニット20bが備えたカメラ22の向きの計算結果に基づいて、右撮影ユニット20bが取得した画像データのキャリブレーションを行う。
【0107】
一変形例では、補正部640は、右撮影ユニット20aが備えたカメラ22、および左撮影ユニット20bが備えたカメラ22のそれぞれについて、カメラ22の実際の向きが、基準からどれだけずれているのかを任意の手段で提示してもよいし、カメラ22のアライメントの調整をユーザに要求してもよい。
【0108】
補正部640は、以上のようにして補正した複数の画像データを、合成部630に出力する。上述したように、本変形例では、合成部630は、取得部510が取得した複数の画像データの代わりに、補正部640が補正した複数の画像データを合成する。
【0109】
〔ハードウェア構成〕
前記実施形態5~6および変形例で説明した画像分析装置500、600、600´の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。これらの構成要素の一部又は全部は、例えば図24に示すような情報処理装置900により実現される。図24は、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0110】
図24に示すように、情報処理装置900は、一例として、以下のような構成を含む。
【0111】
・プロセッサ901
・ROM(Read Only Memory)902
・RAM(Random Access Memory)903
・RAM903にロードされるプログラム904
・プログラム904を格納する記憶装置905
・記録媒体906の読み書きを行うドライブ装置907
・通信ネットワーク909と接続する通信インタフェース908
・データの入出力を行う入出力インタフェース910
・各構成要素を接続するバス911
上述のプロセッサ901は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。あるいは、プロセッサ901は、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。
【0112】
前記実施形態5~6で説明した画像分析装置500、600、600´の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム904をCPU901が読み込んで実行することで実現される。各構成要素の機能を実現するプログラム904は、例えば、予め記憶装置905やROM902に格納されており、必要に応じてCPU901がRAM903にロードして実行される。なお、プログラム904は、通信ネットワーク909を介してCPU901に供給されてもよいし、予め記録媒体906に格納されており、ドライブ装置907が当該プログラムを読み出してCPU901に供給してもよい。
【0113】
〔付記〕
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0114】
(付記1)
それぞれがカメラを備えた複数の撮影ユニットと、
前記複数の撮影ユニットが取り付けられるベースと
を備え、
前記複数の撮影ユニットは、互いに独立して、前記カメラのアライメントを調整可能である
撮影装置。
【0115】
(付記2)
前記撮影ユニットは、前記ベースと接続される本体を備え、
前記カメラは前記本体に固定されており、
前記ベースを基準として、前記カメラの向きを調整される
ことを特徴とする付記1に記載の撮影装置。
【0116】
(付記3)
前記撮影ユニットの前記本体には、複数のネジ穴が設けられており、
前記複数のネジ穴を通して、前記カメラにネジが挿入されることで、前記カメラは前記本体に固定されており、
少なくとも1つの前記ネジ穴の直径は、当該ネジ穴に通される前記ネジの太さよりも大きい
ことを特徴とする付記2に記載の撮影装置。
【0117】
(付記4)
前記ネジ穴の直径の範囲内で、前記ネジを動かすことにより、前記カメラの向きを調整可能である
ことを特徴とする付記3に記載の撮影装置。
【0118】
(付記5)
前記撮影ユニットの前記本体には、前記ベースと嵌合する嵌合手段が取り付けられており、
前記嵌合手段を取り付け可能な前記本体の位置に幅がある
ことを特徴とする付記2から4のいずれか1項に記載の撮影装置。
【0119】
(付記6)
前記本体に取り付ける前記嵌合手段の位置を変えることにより、前記ベース上で前記撮影ユニットの向きを調整可能である
ことを特徴とする付記5に記載の撮影装置。
【0120】
(付記7)
前記複数の撮影ユニットは、異なる方向から同じ対象を撮影する2つ1組の撮影ユニットを含む
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1項に記載の撮影装置。
【0121】
(付記8)
前記複数の撮影ユニットが共に前記ベースに取り付けられる
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の撮影装置。
【0122】
(付記9)
付記1から8のいずれか1項に記載の撮影装置が備えた撮影ユニット。
【0123】
(付記10)
前記撮影ユニットが撮影する対象に対し、光によるパターンを投影するプロジェクタをさらに備えた
ことを特徴とする付記9に記載の撮影ユニット。
【0124】
(付記11)
前記撮影ユニットが撮影する対象を照射する光源をさらに備えた
ことを特徴とする付記9または10に記載の撮影ユニット。
【0125】
(付記12)
付記1から6のいずれか1項に記載の撮影装置から、前記複数の撮影ユニットが異なる方向から同じ対象を撮影した複数の画像データを取得する取得手段と、
前記複数の画像データに基づいて、前記対象の三次元形状の少なくとも一部を計算する計算手段とを備えた
画像分析装置。
【0126】
(付記13)
前記複数の画像データを合成することにより、前記対象の三次元形状を示す画像データを生成する合成手段をさらに備えた
ことを特徴とする付記12に記載の画像分析装置。
【0127】
(付記14)
前記カメラの向きの調整のずれに基づく前記複数の画像データの間の不整合を補正する補正手段をさらに備え、
前記合成手段は、補正した前記複数の画像データを合成する
ことを特徴とする付記13に記載の画像分析装置。
【0128】
(付記15)
付記1から6のいずれか1項に記載の撮影装置と、
付記12から13のいずれか1項に記載の画像分析装置とを備えた
三次元形状計測システム。
【産業上の利用可能性】
【0129】
この開示は、一例では、複数のカメラを備え、異なる方向から物体を撮影可能な撮影装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 三次元形状計測システム
20a 右撮影ユニット
20b 左撮影ユニット
21 本体
22 カメラ
25 嵌合部
30 ベース
200 撮影装置
500 画像分析装置
510 取得部
520 計算部
600 画像分析装置
600´ 画像分析装置
630 合成部
640 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24