IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許7549035工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
<>
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図1
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図2
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図3
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図4
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図5
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図6
  • 特許-工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20240903BHJP
   B23G 1/16 20060101ALI20240903BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B23Q17/09 D
B23G1/16 C
G05B19/18 W
G05B19/18 X
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022565340
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2021042857
(87)【国際公開番号】W WO2022113957
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020194944
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保 守
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-127957(JP,A)
【文献】特開昭52-095386(JP,A)
【文献】登録実用新案第3117939(JP,U)
【文献】特開平04-075855(JP,A)
【文献】特開平03-049849(JP,A)
【文献】実開平06-050714(JP,U)
【文献】特開2020-178454(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0133974(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0001371(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
B23G 1/16
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、前記主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得するデータ取得部と、
前記座標値データ、または、前記回転速度データおよび前記座標値データに基づいて工具が行う加工の種類を判別し、判別した前記加工の種類に応じて、前記負荷データから前記工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する抽出部と、
前記評価データを用いて前記工具の損傷の発生を検出する検出部と、
前記検出部によって前記工具の損傷が検出された場合、前記工具の損傷の発生を示すデータを出力する出力部と、
を備える工具損傷検出装置。
【請求項2】
切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、前記主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得するデータ取得部と、
前記座標値データと前記回転速度データとに基づいて、前記負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する抽出部と、
前記評価データを用いて前記工具の損傷の発生を検出する検出部と、
前記検出部によって前記工具の損傷が検出された場合、前記工具の損傷の発生を示すデータを出力する出力部と、
を備える工具損傷検出装置。
【請求項3】
前記評価データは、前記切削送り区間のうち前記主軸が正転しており、かつ、前記主軸の回転速度が一定の区間の前記負荷データである請求項1または2に記載の工具損傷検出装置。
【請求項4】
前記抽出部が前記加工の種類をタップ加工であると判別した場合、前記切削送り区間のうち前記主軸が正転しており、かつ、前記主軸の回転速度が一定の区間の前記負荷データを前記評価データとして抽出する請求項1に記載の工具損傷検出装置。
【請求項5】
前記抽出部は、さらに、前記負荷データから前記工具の損傷を検出するための基準となる基準負荷データを抽出し、
前記検出部は、前記基準負荷データと前記評価データとに基づいて前記工具の損傷の発生を検出する請求項1~4のいずれか1項に記載の工具損傷検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記基準負荷データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つと、前記評価データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つに基づいて、前記工具の損傷の発生を検出する請求項5に記載の工具損傷検出装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記基準負荷データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つから、少なくとも1つのしきい値を算出し、算出した前記少なくとも1つのしきい値と前記評価データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つとを比較して前記工具の損傷の発生を検出する請求項6に記載の工具損傷検出装置。
【請求項8】
切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、前記主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得することと、
前記座標値データ、または、前記回転速度データおよび前記座標値データに基づいて工具が行う加工の種類を判別し、判別した前記加工の種類に応じて、前記負荷データから前記工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出することと、
前記評価データを用いて前記工具の損傷の発生を検出することと、
前記工具の損傷が検出された場合、前記工具の損傷の発生を示すデータを出力することと、
をコンピュータに実行させる命令を記憶する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項9】
切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、前記主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得することと、
前記座標値データと前記回転速度データとに基づいて、前記負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出することと、
前記評価データを用いて前記工具の損傷の発生を検出することと、
前記工具の損傷が検出された場合、前記工具の損傷の発生を示すデータを出力することと、
をコンピュータに実行させる命令を記憶する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具損傷検出装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械では、工具の損傷検出が行われている。工具の損傷検出が行われる場合、例えば、工具の回転が開始してから停止するまでの区間において主軸にかかる負荷を示す時系列データが取得される。そして、取得された区間における時系列データが、基準となる時系列データと比較され、工具の損傷が検出される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭52-95386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、タップ加工が行なわれる場合のように、加工サイクルの開始から終了までの間に取得される負荷データには、加減速トルクにより負荷が大きく変化する間のデータ、および非切削時の負荷を示すデータが含まれてしまう場合がある。
【0005】
この場合、取得された負荷データは、実際に工具によって切削が行われている区間において主軸にかかる負荷を正確に示していない。そのため、このような負荷データを用いて工具の損傷検出を行っても、精度よく工具の損傷を検出できないおそれがある。
【0006】
本発明は、主軸にかかる負荷の特徴を精度よく捉えることにより、工具の損傷を確実に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
工具損傷検出装置が、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得するデータ取得部と、前記座標値データ、または、前記回転速度データおよび前記座標値データに基づいて工具が行う加工の種類を判別し、判別した前記加工の種類に応じて、前記負荷データから前記工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する抽出部と、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出する検出部と、検出部によって工具の損傷が検出された場合、工具の損傷の発生を示すデータを出力する出力部と、を備える。
工具損傷検出装置が、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得するデータ取得部と、前記座標値データと前記回転速度データとに基づいて、前記負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する抽出部と、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出する検出部と、検出部によって工具の損傷が検出された場合、工具の損傷の発生を示すデータを出力する出力部と、を備える。
【0008】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得することと、前記座標値データ、または、前記回転速度データおよび前記座標値データに基づいて工具が行う加工の種類を判別し、判別した前記加工の種類に応じて、前記負荷データから前記工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出することと、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出することと、工具の損傷が検出された場合、工具の損傷の発生を示すデータを出力することと、をコンピュータに実行させる命令を記憶する。
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得することと、前記座標値データと前記回転速度データとに基づいて、前記負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出することと、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出することと、工具の損傷が検出された場合、工具の損傷の発生を示すデータを出力することと、をコンピュータに実行させる命令を記憶する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、主軸にかかる負荷の特徴を精度よく捉えることにより、工具の損傷を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】工作機械のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】数値制御装置の機能の一例を示すブロック図である。
図3】タップ加工時にデータ取得部によって取得された各データの一例を示す図である。
図4】フライス加工時にデータ取得部によって取得された各データの一例を示す図である。
図5】ドリル加工時にデータ取得部によって取得された各データの一例を示す図である。
図6】数値制御装置において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】数値制御装置において実行される処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態で説明する特徴のすべての組合わせが課題解決に必ずしも必要であるとは限らない。また、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。また、以下の実施形態の説明、および図面は、当業者が本発明を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【0012】
工具損傷検出装置は、工作機械の動作の動作中、または動作後に、工具の損傷を検出する装置である。工具の損傷とは、例えば、工具の折損、破損である。
【0013】
工具損傷検出装置は、例えば、工作機械の数値制御装置である。また、工具損傷検出装置は、工作機械の稼働状態を管理する管理サーバなどのコンピュータであってもよい。以下では、工具損傷検出装置が数値制御装置である場合の例について説明する。
【0014】
図1は、工作機械のハードウェア構成の一例を示す図である。工作機械1は、例えば、マシニングセンタ、複合加工機、ボール盤、タッピングセンタである。工作機械1は、数値制御装置2と、表示装置3と、入力装置4と、サーボアンプ5およびサーボモータ6と、スピンドルアンプ7およびスピンドルモータ8と、補助機器9とを備えている。
【0015】
数値制御装置2は、工作機械1全体を制御する装置である。数値制御装置2は、CPU201と、バス202と、ROM203と、RAM204と、不揮発性メモリ205とを備えている。
【0016】
CPU201は、システムプログラムに従って数値制御装置2全体を制御するプロセッサである。CPU201は、バス202を介してROM203に格納されたシステムプログラムなどを読み出す。また、CPU201は、加工プログラムに従って、サーボモータ6およびスピンドルモータ8を制御する。
【0017】
バス202は、数値制御装置2内の各ハードウェアを互いに接続する通信路である。数値制御装置2内の各ハードウェアはバス202を介してデータをやり取りする。
【0018】
ROM203は、数値制御装置2全体を制御するためのシステムプログラムなどを記憶する記憶装置、または記憶媒体である。
【0019】
RAM204は、各種データを一時的に格納する記憶装置である。RAM204は、CPU201が各種データを処理するための作業領域として機能する。
【0020】
不揮発性メモリ205は、工作機械1の電源が切られ、数値制御装置2に電力が供給されていない状態でもデータを保持する記憶装置である。不揮発性メモリ205は、例えば、SSD(Solid State Drive)で構成される。
【0021】
数値制御装置2は、さらに、第1のインタフェース206と、第2のインタフェース207と、軸制御回路208と、スピンドル制御回路209と、PLC(Programmable Logic Controller)210と、I/Oユニット211とを備えている。
【0022】
第1のインタフェース206は、バス202と表示装置3とを接続するインタフェースである。第1のインタフェース206は、例えば、CPU201が処理した各種データを表示装置3に送る。
【0023】
表示装置3は、第1のインタフェース206を介して各種データを受け、各種データを表示する装置である。表示装置3は、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイである。
【0024】
第2のインタフェース207は、バス202と入力装置4とを接続するインタフェースである。第2のインタフェース207は、例えば、入力装置4から入力されたデータをバス202を介してCPU201に送る。
【0025】
入力装置4は、各種データを入力するための装置である。入力装置4は、例えば、キーボード、およびマウスである。なお、入力装置4と表示装置3とは、例えば、タッチパネルのように1つの装置として構成されてもよい。
【0026】
軸制御回路208は、サーボモータ6を制御する回路である。軸制御回路208は、CPU201からの制御指令を受けてサーボモータ6を駆動させるための指令をサーボアンプ5に出力する。軸制御回路208は、例えば、サーボモータ6のトルクを制御するトルクコマンドをサーボアンプ5に送る。
【0027】
サーボアンプ5は、軸制御回路208からの指令を受けて、サーボモータ6に電流を供給する。
【0028】
サーボモータ6は、サーボアンプ5から電流の供給を受けて駆動する。サーボモータ6は、例えば、刃物台、主軸頭、テーブルを駆動させるボールねじに連結される。サーボモータ6が駆動することにより、刃物台、主軸頭、テーブルなどの工作機械1の構造物は、例えば、X軸方向、Y軸方向、またはZ軸方向に移動する。
【0029】
スピンドル制御回路209は、スピンドルモータ8を制御するための回路である。スピンドル制御回路209は、CPU201からの制御指令を受けてスピンドルモータ8を駆動させるための指令をスピンドルアンプ7に出力する。スピンドル制御回路209は、例えば、スピンドルモータ8のトルクを制御するトルクコマンドをスピンドルアンプ7に送る。
【0030】
スピンドルアンプ7は、スピンドル制御回路209からの指令を受けて、スピンドルモータ8に電流を供給する。スピンドルアンプ7はスピンドルモータ8に供給される電流の電流値を測定する電流計71を内蔵している。
【0031】
電流計71は、スピンドルモータ8に供給される電流の電流値を測定する。電流計71で測定された電流値は、主軸の負荷検出に利用される。
【0032】
スピンドルモータ8は、スピンドルアンプ7から電流の供給を受けて駆動する。スピンドルモータ8は、主軸に連結され、主軸を回転させる。スピンドルモータ8は、スピンドルモータ8の回転速度を検出する速度検出器81を備えている。
【0033】
速度検出器81は、スピンドルモータ8の回転速度を検出する。速度検出器81で検出されたスピンドルモータ8の回転速度を示すデータは、工具の損傷の発生を検出するための基準負荷データ、および評価データの抽出に利用される。基準負荷データ、および評価データについては、後に詳しく説明する。
【0034】
PLC210は、ラダープログラムを実行して補助機器9を制御する装置である。PLC210は、I/Oユニット211を介して補助機器9を制御する。
【0035】
I/Oユニット211は、PLC210と補助機器9とを接続するインタフェースである。I/Oユニット211は、PLC210から受けた指令を補助機器9に送る。
【0036】
補助機器9は、工作機械1に設置され、工作機械1がワークを加工する際の補助的な動作を行う。補助機器9は、工作機械1の周辺に設置される装置であってもよい。補助機器9は、例えば、工具交換装置、切削液噴射装置、または開閉ドア駆動装置である。
【0037】
次に、数値制御装置2の機能の一例について説明する。
【0038】
図2は、数値制御装置2の機能の一例を示すブロック図である。数値制御装置2は、制御部221と、データ取得部222と、抽出部223と、記憶部224と、検出部225と、出力部226とを備える。
【0039】
制御部221、データ取得部222、抽出部223、検出部225、および出力部226は、例えば、CPU201がROM203に記憶されているシステムプログラム、および各種データを用いて演算処理することにより実現される。CPU201は、作業領域としてRAM204を用いて演算処理を実行する。記憶部224は、入力装置4などから入力されたデータ、またはCPU201による演算処理の演算結果がRAM204、または不揮発性メモリ205に記憶されることにより実現される。
【0040】
制御部221は、工作機械1の各部を制御する。また、制御部221は、加工プログラムを読み込んで加工プログラムを解析する。制御部221は、解析した加工プログラムを実行してサーボモータ6、およびスピンドルモータ8を制御する。これにより、ワークの加工が行われる。また、制御部221は、補助機器9などの動作を制御する。
【0041】
データ取得部222は、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データとを取得する。
【0042】
切削送り区間とは、工具が切削送りによって移動している区間である。工具が切削送りによって移動している区間は、例えば、加工プログラムに記載された直線補間指令「G01」、円弧補間指令「G02」、または「G03」によって工具が移動している区間である。すなわち、切削送り区間には工具が早送りされる早送り区間は含まれない。切削送り区間では、数値制御装置2において切削中信号が出力されている。切削中信号は、例えば、制御部221が、サーボモータの速度制御を行うための速度制御信号である。
【0043】
主軸の負荷を示す負荷データとは、主軸の回転方向にかかる負荷を示す時系列データである。負荷データは、例えば、スピンドルモータ8に供給される電流の電流値で表される。負荷データは、例えば、スピンドルアンプ7に内蔵された電流計71によって測定される値の時系列データである。また、負荷データは、スピンドルモータ8に供給される電力の値を示す時系列データであってもよい。負荷データは、例えば、1[ms]ごとに取得される。
【0044】
主軸の回転速度を示す回転速度データは、主軸の回転速度を示す時系列データである。回転速度データは、例えば、スピンドルモータ8に設けられた速度検出器81によって検出される値の時系列データである。主軸が正転している場合、回転速度データは正の値を示す。主軸が逆転している場合、回転速度データは負の値を示す。回転速度データは、例えば、1[ms]ごとに取得される。
【0045】
データ取得部222は、例えば、正常工具によって最初にワークの加工が行われるとき、および2つ目以降のワークが加工されるときに、負荷データと、回転速度データとを取得する。正常工具とは、摩耗、損傷などが発生していない工具である。
【0046】
抽出部223は、正常工具によって最初にワークが加工される際に取得された負荷データ、および回転速度データに基づいて、工具の損傷を検出するための基準となる基準負荷データを抽出する。また、抽出部223は、2つ目以降のワークが加工される際に取得された負荷データ、および回転速度データに基づいて、工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する。
【0047】
抽出部223は、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、回転速度が一定の区間の負荷データを評価データとして抽出する。ここで、一定とはほぼ一定であればよく、例えば、切削中にわずかに回転速度が変動する場合も、回転速度が一定であるとみなす。
【0048】
抽出部223は、例えば、加工プログラムで指令された回転速度の±10[min-1]で主軸が回転している区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0049】
図3は、タップ加工時にデータ取得部222によって取得された各データの一例を示す図である。図3の(1)は切削中信号を示すデータ、図3の(2)は回転速度データ、図3の(3)は正常工具による最初のワークの加工時に取得された負荷データ、図3の(4)はタップが折損した状態において取得された負荷データを示している。
【0050】
タップ加工は、タップ加工サイクル指令によって実行される。タップ加工サイクルでは、切削中信号が出力されると、主軸が回転し始めるとともに、ねじのピッチのあわせて工具がZ軸のマイナス方向に移動する。
【0051】
主軸の回転が開始した後、回転速度が指令速度に到達するまでの間(図3の(2)のa1区間)、回転速度は急激に上昇する。すなわち、この区間は、主軸の回転速度が一定ではないため、抽出部223は、この区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出しない。なお、主軸の回転が開始した後、回転速度が指令速度に到達するまでの間は、加減速トルクにより主軸の回転方向にかかる負荷は大きく変化している。
【0052】
主軸が指令速度に到達すると、主軸の回転速度は一定になる(図3の(2)のb1区間)。したがって、抽出部223は、この区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出する。なお、タップがワークに接触して切削が行われると、主軸にかかる負荷は増大する。
【0053】
工具が穴の奥に到達して主軸の回転方向が反転するとき(図3の(2)のc1区間)、主軸の回転速度は指令速度から急激に低下する。すなわち、この区間は、主軸の回転速度が一定ではないため、抽出部223は、この区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出しない。なお、主軸の回転方向が反転する際、加減速トルクにより主軸の回転方向にかかる負荷は大きく変化している。
【0054】
工具が切削開始位置に戻って主軸が停止する際(図3の(2)のe1区間)にも主軸の回転速度は急激に上昇する。すなわち、この区間は、主軸の回転速度が一定ではないため、抽出部223は、この区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出しない。なお、工具が切削開始位置に戻って主軸が停止するとき、加減速トルクにより主軸の回転方向にかかる負荷は大きく変化している。
【0055】
主軸が逆転している間(図3の(2)のd1区間)は、主軸の回転速度は負の値となる。したがって、抽出部223は、この区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出しない。なお、主軸が逆転しながら工具が加工経路に沿って切削開始位置まで戻る動きをしている間は非切削状態となる。
【0056】
上述したとおり、図3の(3)は最初のワークの加工時に取得された負荷データを示している。したがって、図3の(3)に示す負荷データから抽出されるデータが基準負荷データである。2つ目以降のワークの加工が開始してから工具の損傷が発生するまでに抽出される評価データは、図3の(3)に示す負荷データとほぼ同じデータとなる。
【0057】
上述したとおり、図3の(4)はタップが折損した状態において取得された負荷データを示している。つまり、図3の(4)に示す負荷データから抽出されるデータが工具の損傷が発生したときの評価データである。
【0058】
図4は、フライス加工時にデータ取得部222によって取得された各データの一例を示す図である。図4の(1)は切削中信号を示すデータ、図4の(2)は回転速度データ、図4の(3)は最初のワークの加工時に取得された負荷データ、図4の(4)はフライスが折損した状態において取得された負荷データを示している。
【0059】
図4に示すように、主軸の回転が開始してから指令速度に到達するまでの区間(図4の(2)のa2区間)、および主軸が指令速度で回転している状態から停止するまでの区間(図4の(2)のb2区間)は、フライス加工における切削送り区間には含まれていない。また、フライス加工では、主軸は逆転しない。
【0060】
つまり、フライス加工が行われる際は、切削送り区間において、主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定である。したがって、抽出部223は、切削送り区間の全区間を基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0061】
上述したとおり、図4の(3)は最初のワークの加工時の負荷データを示している。つまり、図4の(3)に示す負荷データから抽出されるデータは基準負荷データである。また、2つ目以降のワークの加工が開始してから工具の損傷が発生するまでに抽出される評価データは、図4の(3)に示す負荷データとほぼ同じデータとなる。
【0062】
上述したとおり、図4の(4)はフライスが折損した状態において取得された負荷データを示している。つまり、図4の(4)に示す負荷データから抽出されるデータが工具の損傷が発生したときの評価データである。
【0063】
図5は、ドリル加工時にデータ取得部222によって取得された各データの一例を示す図である。図5の(1)は切削中信号を示すデータ、図5の(2)は回転速度データ、図5の(3)は最初のワークの加工時に取得された負荷データ、図5の(4)はドリルが折損した状態において取得された負荷データを示している。
【0064】
図5に示すように、主軸の回転が開始してから指令速度に到達するまでの区間(図5の(2)のa3区間)、および主軸が指令速度で回転している状態から停止するまでの区間(図5の(2)のb3区間)は、ドリル加工における切削送り区間には含まれていない。また、ドリル加工では、主軸は逆転しない。
【0065】
つまり、ドリル加工が行われる際は、切削送り区間において、主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定である。したがって、抽出部223は、切削送り区間の全区間を基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0066】
上述したとおり、図5の(3)は最初のワークの加工時の負荷データを示している。つまり、図5の(3)に示す負荷データから抽出されるデータは基準負荷データである。また、2つ目以降のワークの加工が開始してから工具の損傷が発生するまでに抽出される評価データは、図5の(3)に示す負荷データとほぼ同じデータとなる。
【0067】
上述したとおり、図5の(4)はドリルが折損した状態において取得された負荷データを示している。つまり、図5の(4)に示す負荷データから抽出されるデータが工具の損傷が発生したときの評価データである。
【0068】
ここで、図2の数値制御装置2の機能の説明を続ける。
【0069】
記憶部224は、抽出部223によって抽出された基準負荷データ、および評価データを記憶する。記憶部224は、例えば、基準負荷データ、および評価データをそれぞれ、時間情報と関連付けて記憶する。時間情報とは、例えば、加工プログラムの実行が開始されてから、基準負荷データ、または評価データとして抽出される負荷データが取得されるまでの時間を示す情報である。
【0070】
検出部225は、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出する。検出部225は、記憶部224に記憶された基準負荷データと評価データとに基づいて工具の損傷の発生を検出する。検出部225は、例えば、基準負荷データと評価データとを比較することにより工具の損傷の発生を検出する。検出部225は、例えば、時間情報に基づいて、評価データとこれに対応する基準負荷データとを判断する。検出部225は、評価データとこれに対応する基準負荷データとを比較することにより工具の損傷の発生を検出する。

【0071】
例えば、タップ加工、フライス加工、およびドリル加工において工具が折損した場合、切削送り区間では工具とワークとが接触しなくなる。したがって、評価データの値は、基準負荷データの値よりも小さくなる(図3の(3)および(4)、図4の(3)および(4)、ならびに図5の(3)および(4))。したがって、検出部225は、基準負荷データと評価データとを比較することにより、工具の損傷の発生を検出することができる。
【0072】
検出部225は、基準負荷データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つと、評価データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つに基づいて、工具の損傷の発生を検出する。検出部225は、例えば、基準負荷データの平均値と、評価データの平均値とを比較して工具に損傷が発生しているか否かを検出する。
【0073】
検出部225は、基準負荷データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つから、少なくとも1つのしきい値を算出し、算出した少なくとも1つのしきい値と評価データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つとを比較して工具の損傷の発生を検出してもよい。検出部225は、例えば、基準負荷データの平均値の50%に当たる値をしきい値として算出する。検出部225は、評価データの平均値が基準負荷データの平均値の50%未満となった場合、工具の損傷が発生したことを検出する。
【0074】
出力部226は、検出部225によって工具の損傷が検出された場合、工具の損傷の発生を示すデータを出力する。出力部226は、例えば、表示装置3に工具の損傷の発生を示すデータを出力する。表示装置3は、工具の損傷の発生を示すデータを受けると画面に工具の損傷が発生したことを表示する。
【0075】
検出部225が工具の損傷の発生を示すデータを検出した場合、制御部221は、例えば、工具の損傷が発生したこと示すアラームを発してもよい。また、制御部221は、アラームを発した場合に、工作機械1の動作を停止させてもよい。
【0076】
次に、数値制御装置2において実行される処理の流れについて説明する。
【0077】
図6は、数値制御装置2において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0078】
数値制御装置2では、まず、データ取得部222が、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データとを取得する(ステップSA1)。
【0079】
次に、抽出部223が、回転速度データに基づいて、負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する。このとき、抽出部223は、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定の区間の負荷データを評価データとして抽出する(ステップSA2)。
【0080】
次に、検出部225が、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出する(ステップSA3)。つまり、検出部225は、評価データを用いて工具の損傷が発生したか否かを判定する。
【0081】
検出部225によって工具の損傷が検出された場合(ステップSA3においてYesの場合)、出力部226は、工具の損傷の発生を示すデータを出力し(ステップSA4)、処理を終了する。出力部226は、例えば、数値制御装置2の表示装置3に工具の損傷の発生を示すデータ出力し、表示装置3に工具の損傷の発生を示すデータを表示させる。
【0082】
工具の損傷が検出されない場合(ステップSA3においてNoの場合)、ステップSA1に戻って負荷データおよび回転速度データの取得が継続される。
【0083】
以上説明したように、工具損傷検出装置2は、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データとを取得するデータ取得部222と、回転速度データに基づいて、負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出する抽出部223と、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出する検出部225と、検出部225によって工具の損傷が検出された場合、工具の損傷の発生を示すデータを出力する出力部226と、を備える。したがって、主軸にかかる負荷の特徴を精度よく捉えることにより、工具の損傷を確実に検出することができる。
【0084】
また、評価データは、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定の区間の負荷データである。評価データをこのようなデータとすることにより、タップ加工、フライス加工、およびドリル加工などの各種加工における工具の損傷を確実に検出することができる。
【0085】
抽出部223は、さらに、負荷データから工具の損傷を検出するための基準となる基準負荷データを抽出し、検出部225は、基準負荷データと評価データとに基づいて工具の損傷の発生を検出する。また、検出部225は、基準負荷データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つと、評価データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つに基づいて、工具の損傷の発生を検出する。したがって、時系列データをすべて比較する場合に比べて、検出部225におけるデータ処理の負荷が小さくなる。
【0086】
また、検出部225は、基準負荷データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つから、少なくとも1つのしきい値を算出し、算出した少なくとも1つのしきい値と評価データの最大値、最小値、および平均値のうちの少なくとも1つとを比較して工具の損傷の発生を検出する。したがって、作業者の経験によらずに自動的にしきい値が算出されることになり、作業者の負担が軽減される。
【0087】
上述した実施形態では、回転速度データに基づいて、評価データが抽出される。しかし、このような実施形態に限らず、加工の種類に応じて評価データが抽出されるようにしてもよい。
【0088】
この場合、データ取得部222は、切削点の座標値を示す座標値データを取得し、抽出部223は、座標値データのみに基づいて、あるいは、回転速度データと座標値データとに基づいて工具が行う加工の種類を判別し、加工の種類に応じて、評価データを抽出する。
【0089】
切削点の座標値を示す座標値データとは、例えば、ワーク座標系における工具の移動経路の座標値を示す時系列データである。切削点を示す座標値は、例えば、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれの方向に向けて配置されたリニアスケール(不図示)が検出する値に基づいて算出される。
【0090】
抽出部223は、例えば、座標値データから工具の移動方向を検出し、加工の種類を判別する。例えば、切削送り区間において工具の移動方向がX軸方向またはY軸方向であり、Z軸方向には移動しない場合、抽出部223は、加工の種類がフライス加工であると判別する。
【0091】
また、切削送り区間において工具の移動方向がZ軸方向のみである場合、抽出部223は、加工の種類がタップ加工、またはドリル加工であると判別する。
【0092】
さらに、切削送り区間において工具の移動方向がZ軸方向のみであり、かつ、切削送り区間において工具の回転速度が負の値になる区間を含む場合、すなわち、工具が逆転する区間を含む場合、抽出部223は、加工の種類がタップ加工であると判別する。切削送り区間において工具が逆転する区間を含まない場合、抽出部223は、加工の種類がドリル加工であると判別する。
【0093】
あるいは、抽出部223は、主軸の回転には正転と逆転が含まれており、かつ、主軸が正転するときの回転量と、逆転するときの回転量とが同じであると判定された場合に、加工の種類がタップ加工であると判別してもよい。
【0094】
抽出部223は、加工の種類がタップ加工であると判別した場合、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定の区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0095】
また、抽出部223が加工の種類をフライス加工、またはドリル加工であると判別した場合、切削送り区間の全区間を基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0096】
次に、加工の種類が判別され、加工の種類に応じて評価データが抽出される場合に、数値制御装置2において実行される処理の流れについて説明する。
【0097】
図7は、数値制御装置2において実行される処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【0098】
数値制御装置2では、まず、データ取得部222が、切削送り区間における主軸の負荷を示す負荷データと、主軸の回転速度を示す回転速度データと、切削点の座標値を示す座標値データとを取得する(ステップSB1)。
【0099】
次に、抽出部223が、加工の種類を判別する(ステップSB2)。
【0100】
加工の種類がタップ加工である場合(ステップSB2においてYesの場合)、抽出部223は、タップ加工用の評価データを抽出する(ステップSB3)。つまり、抽出部223は、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定の区間の負荷データを評価データとして抽出する。
【0101】
加工の種類がタップ加工ではない場合(ステップSB2においてNoの場合)、抽出部223は、フライス加工用、またはドリル加工用の評価データを抽出する(ステップSB4)。つまり、抽出部223は、切削送り区間の全区間を評価データとして抽出する。
【0102】
次に、検出部225が、評価データを用いて工具の損傷の発生を検出する(ステップSB5)。つまり、検出部225は、評価データを用いて工具の損傷が発生したか否かを判定する。
【0103】
検出部225によって工具の損傷が検出された場合(ステップSB5においてYesの場合)、出力部226は、工具の損傷の発生を示すデータを出力し(ステップSB6)、処理を終了する。出力部226は、例えば、数値制御装置2の表示装置3に工具の損傷の発生を示すデータ出力し、表示装置3に工具の損傷の発生を示すデータを表示させる。
【0104】
工具の損傷が検出されない場合(ステップSB5においてNoの場合)、ステップSB1に戻って負荷データ、回転速度データ、および座標値データの取得が継続される。
【0105】
以上説明したように、データ取得部222は、切削点の座標値を示す座標値データを取得し、抽出部223は、座標値データ、または、回転速度データおよび座標値データに基づいて工具が行う加工の種類を判別し、判別した加工の種類に応じて、評価データを抽出する。このように加工の種類を判別する場合、加工プログラムに記載されたGコードなどの指令コードの解析を行って加工の種類を判別する必要がない。そのため、指令コードに基づいて加工の種類を判別する機能を備えていない、すでに工場で従来使用されている工作機械1に対しても工具損傷検出装置を実装しやすくなる。
【0106】
また、抽出部223が加工の種類をタップ加工であると判別した場合、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定の区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出する。したがって、タップ加工、フライス加工、およびドリル加工などの各種加工における工具の損傷を確実に検出することができる。
【0107】
また、加工の種類がフライス加工である場合など、工具が折損する可能性が低い場合には、加工の種類を判別することによって、その加工に用いられる工具の損傷を検出対象から除外することができる。この場合、フライス加工時の基準負荷データ、または評価データを記憶部224に記憶させる必要がなく、記憶部224に記憶されるデータ量を削減することができる。
【0108】
なお、データ取得部222が、切削点の座標値を示す座標値データを取得し、抽出部223が、加工の種類を判別せずに、座標値データのみ、または回転速度データおよび座標値データに基づいて、負荷データから工具の損傷発生の評価に用いられる評価データを抽出するようにしてもよい。
【0109】
この場合、抽出部223は、座標値データから工具の移動方向を検出する。例えば、切削送り区間において工具の移動方向がX軸方向またはY軸方向であり、Z軸方向には移動しない場合、抽出部223は、切削送り区間の全区間を評価データとして抽出する。
【0110】
切削送り区間における工具の移動方向がZ軸方向であり、かつ、切削送り区間に主軸の回転速度が負の値となる区間が含まれる場合、抽出部223は、切削送り区間のうち主軸が正転しており、かつ、主軸の回転速度が一定の区間の負荷データを基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0111】
切削送り区間における工具の移動方向がZ軸方向であり、かつ、切削送り区間に主軸の回転速度が負の値となる区間が含まれない場合、抽出部223は、切削送り区間の全区間を基準負荷データ、または評価データとして抽出する。
【0112】
これにより、抽出部223は、加工の種類を判別する場合と同様に、評価データ、および基準負荷データを抽出することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 工作機械
2 数値制御装置(工具損傷検出装置)
201 CPU
202 バス
203 ROM
204 RAM
205 不揮発性メモリ
206 第1のインタフェース
207 第2のインタフェース
208 軸制御回路
209 スピンドル制御回路
210 PLC
211 I/Oユニット
221 制御部
222 データ取得部
223 抽出部
224 記憶部
225 検出部
226 出力部
3 表示装置
4 入力装置
5 サーボアンプ
6 サーボモータ
7 スピンドルアンプ
71 電流計
8 スピンドルモータ
81 速度検出器
9 補助機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7