(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】通信制御方法及びユーザ装置
(51)【国際特許分類】
H04W 76/40 20180101AFI20240903BHJP
H04W 72/231 20230101ALI20240903BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20240903BHJP
H04W 4/06 20090101ALI20240903BHJP
【FI】
H04W76/40
H04W72/231
H04W24/10
H04W4/06
(21)【出願番号】P 2022571378
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046549
(87)【国際公開番号】W WO2022138450
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020214243
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111901765(CN,A)
【文献】vivo,Dynamic PTM PTP switch for RRC Connected UE[online],3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #112-e R2-2010216,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_112-e/Docs/R2-2010216.zip>,2020年10月23日
【文献】Lenovo, Motorola Mobility,5G MBS dynamic switch between PTP and PTM with service continuity[online],3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #112e R2-2009880,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_112-e/Docs/R2-2009880.zip>,2020年10月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムにおいてユーザ装置が実行する通信制御方法であって
基地局から伝送されたRRCメッセージを受信することと、
PTP(Point-To-Point)伝送及びPTM(Point-To-Multipoint)伝送のいずれかの伝送方式で
前記基地局から伝送されるMBSデータを受信することと、
前記RRCメッセージに含まれる指示に基づいて、前記ユーザ装置の所定レイヤにおけるMBSデータの受信状態を示すステータス報告の送信をトリガすることと、
前記ステータス報告を前記基地局に送信することと、を有
し、
前記RRCメッセージは、MBSベアラと対応付けられたベアラ識別子を含む
通信制御方法。
【請求項2】
前記所定レイヤは、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤであって、
前記ステータス報告は、PDCPステータス報告である
請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記RRCメッセージは、RRC Reconfigurationメッセージである
請求項1記載の通信制御方法。
【請求項4】
マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いるユーザ装置であって、
基地局から伝送されたRRCメッセージを受信するとともに、PTP(Point-To-Point)伝送及びPTM(Point-To-Multipoint)伝送のいずれかの伝送方式で
前記基地局から伝送されるMBSデータを受信する受信部と、
前記RRCメッセージに含まれる指示に基づいて、前記ユーザ装置の所定レイヤにおけるMBSデータの受信状態を示すステータス報告の送信をトリガする制御部と、
前記ステータス報告を前記基地局に送信する送信部と、を備え
、
前記RRCメッセージは、MBSベアラと対応付けられたベアラ識別子を含む
ユーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信システムで用いる通信制御方法及びユーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代(5G)の移動通信システムが注目されている。5Gシステムの無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)であるNR(New Radio)は、第4世代の無線アクセス技術であるLTE(Long Term Evolution)に比べて、高速・大容量かつ高信頼・低遅延といった特徴を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP技術仕様書「3GPP TS 38.300 V16.3.0 (2020-09)」
【発明の概要】
【0004】
第1の態様に係る通信制御方法は、マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムにおいてユーザ装置が実行する通信制御方法であって、PTP(Point-To-Point)伝送及びPTM(Point-To-Multipoint)伝送のいずれかの伝送方式で基地局から伝送されるMBSデータを受信することと、前記伝送方式が前記PTP伝送と前記PTM伝送との間で切り替えられたことに応じて、前記ユーザ装置の所定レイヤにおけるMBSデータの受信状態を示すステータス報告の送信をトリガすることと、前記ステータス報告を前記基地局に送信することと、を有する。
【0005】
第2の態様に係るユーザ装置は、マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いるユーザ装置であって、PTP(Point-To-Point)伝送及びPTM(Point-To-Multipoint)伝送のいずれかの伝送方式で基地局から伝送されるMBSデータを受信する受信部と、前記伝送方式が前記PTP伝送と前記PTM伝送との間で切り替えられたことに応じて、前記ユーザ装置の所定レイヤにおけるMBSデータの受信状態を示すステータス報告の送信をトリガする制御部と、前記ステータス報告を前記基地局に送信する送信部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【
図3】一実施形態に係るgNB(基地局)の構成を示す図である。
【
図4】データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図5】シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る下りリンクの論理チャネル(Logical channel)とトランスポートチャネル(Transport channel)との対応関係を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るMBSデータの配信方法を示す図である。
【
図8】一実施形態に係るスプリットMBSベアラを示す図である。
【
図9】一実施形態に係るレグのアクティブ化及び非アクティブ化に関する動作例1を示す図である。
【
図10】一実施形態に係るレグのアクティブ化及び非アクティブ化に関する動作例2を示す図である。
【
図11】一実施形態に係るベアラ識別子(若しくは論理チャネル識別子)ごとの指示値を格納するMAC CE(1オクテット)の一例を示す図である。
【
図12】一実施形態に係るPDCPステータス報告の構成例を示す図である。
【
図13】一実施形態に係るPTM伝送からPTP伝送への切り替え動作を示す図である。
【
図14】一実施形態に係るPTP伝送からPTM伝送への切り替え動作を示す図である。
【
図15】一実施形態に係るPTP伝送からPTM伝送への切り替え動作の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
5Gシステム(NR)にマルチキャスト・ブロードキャストサービスを導入することが検討されている。NRのマルチキャスト・ブロードキャストサービスは、LTEのマルチキャスト・ブロードキャストサービスよりも改善されたサービスを提供することが望まれる。
【0008】
そこで、本開示は、改善されたマルチキャスト・ブロードキャストサービスを実現することを目的とする。
【0009】
図面を参照しながら、実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0010】
(移動通信システムの構成)
まず、実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。この移動通信システムは、3GPP規格の第5世代システム(5GS:5th Generation System)に準拠する。以下において、5GSを例に挙げて説明するが、移動通信システムにはLTE(Long Term Evolution)システムが少なくとも部分的に適用されてもよいし、第6世代(6G)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0011】
図1に示すように、移動通信システムは、ユーザ装置(UE:User Equipment)100と、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。
【0012】
UE100は、移動可能な無線通信装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であっても構わないが、例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)やタブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0013】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0014】
なお、gNBがLTEのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)に接続することもできる。LTEの基地局が5GCに接続することもできる。LTEの基地局とgNBとが基地局間インターフェイスを介して接続されることもできる。
【0015】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMFは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100のモビリティを管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0016】
図2は、一実施形態に係るUE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【0017】
図2に示すように、UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
【0018】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0019】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0020】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)とを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0021】
図3は、一実施形態に係るgNB200(基地局)の構成を示す図である。
【0022】
図3に示すように、gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0023】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0024】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0025】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUとを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0026】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。なお、gNBは、CU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)とで構成され(すなわち、機能分割され)、両ユニット間はF1インターフェイスで接続されてもよい。
【0027】
図4は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0028】
図4に示すように、ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0029】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0030】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0031】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0032】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0033】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPが無くてもよい。
【0034】
図5は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0035】
図5に示すように、制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、
図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0036】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッド状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドル状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間の接続がサスペンドされている場合、UE100はRRCインアクティブ状態にある。
【0037】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300BのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。
【0038】
なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。
【0039】
(MBS)
次に、一実施形態に係るMBSについて説明する。MBSは、NG-RAN10からUE100に対してブロードキャスト又はマルチキャスト、すなわち、1対多(PTM:Point To Multipoint)でのデータ送信を可能とするサービスである。MBSは、MBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service)と呼ばれてもよい。なお、MBSのユースケース(サービス種別)としては、公安通信、ミッションクリティカル通信、V2X(Vehicle to Everything)通信、IPv4又はIPv6マルチキャスト配信、IPTV、グループ通信、及びソフトウェア配信等がある。
【0040】
LTEにおけるMBSの送信方式には、MBSFN(Multicast Broadcast Single Frequency Network)送信及びSC-PTM(Single Cell Point To Multipoint)送信の2種類がある。
図6は、一実施形態に係る下りリンクの論理チャネル(Logical channel)とトランスポートチャネル(Transport channel)との対応関係を示す図である。
【0041】
図6に示すように、MBSFN送信に用いる論理チャネルはMTCH(Multicast Traffic Channel)及びMCCH(Multicast Control Channel)であり、MBSFN送信に用いるトランスポートチャネルはMCH(Multicast Control Channel)である。MBSFN送信は、主にマルチセル送信用に設計されており、複数のセルからなるMBSFNエリアにおいて各セルが同じMBSFNサブフレームで同じ信号(同じデータ)の同期送信を行う。
【0042】
SC-PTM送信に用いる論理チャネルはSC-MTCH(Single Cell Multicast Traffic Channel)及びSC-MCCH(Single Cell Multicast Control Channel)である。SC-PTM送信に用いるトランスポートチャネルは、DL-SCH(Downlink Shared Channel)である。SC-PTM送信は、主に単一セル送信用に設計されており、セル単位でブロードキャスト又はマルチキャストでのデータ送信を行う。SC-PTM送信に用いる物理チャネルはPDCCH(Physical Downlink Control Channel)及びPDSCH(Physical Downlink Control Channel)であり、動的なリソース割当が可能になっている。
【0043】
以下において、SC-PTM伝送方式と同様な方式を用いてMBSが提供される一例について主として説明するが、MBSFN伝送方式を用いてMBSが提供されてもよい。また、MBSがマルチキャストにより提供される一例について主として説明する。このため、MBSをマルチキャストと読み替えてもよい。但し、MBSがブロードキャストにより提供されてもよい。
【0044】
また、MBSデータとは、MBSにより提供されるデータをいい、MBS制御チャネルとは、MCCH又はSC-MCCHをいい、MBSトラフィックチャネルとは、MTCH又はSC-MTCHをいうものとする。但し、MBSデータは、ユニキャストで送信される場合もある。MBSデータは、MBSパケット又はMBSトラフィックと呼ばれてもよい。
【0045】
ネットワークは、MBSセッションごとに異なるMBSサービスを提供できる。MBSセッションは、TMGI(Temporary Mobile Group Identity)及びセッション識別子のうち少なくとも1つにより識別され、これらの識別子のうち少なくとも1つをMBSセッション識別子と呼ぶ。このようなMBSセッション識別子は、MBSサービス識別子又はマルチキャストグループ識別子と呼ばれてもよい。
【0046】
図7は、一実施形態に係るMBSデータの配信方法を示す図である。
【0047】
図7に示すように、MBSデータ(MBS Traffic)は、単一のデータソース(アプリケーションサービスプロバイダ)から複数のUEに配信される。5Gコアネットワークである5G CN(5GC)20は、アプリケーションサービスプロバイダからMBSデータを受信し、MBSデータのコピーの作成(Replication)を行って配信する。
【0048】
5GC20の観点からは、共有MBSデータ配信(Shared MBS Traffic delivery)及び個別MBSデータ配信(Individual MBS Traffic delivery)の2つの配信方法が可能である。
【0049】
共有MBSデータ配信では、5G無線アクセスネットワーク(5G RAN)であるNG-RAN10と5GC20との間に接続が確立され、5GC20からNG-RAN10へMBSデータを配信する。以下において、このような接続(トンネル)を「MBS接続」と呼ぶ。
【0050】
MBS接続は、Shared MBS Traffic delivery接続又は共有トランスポート(shared transport)と呼ばれてもよい。MBS接続は、NG-RAN10(すなわち、gNB200)で終端する。MBS接続は、MBSセッションと1対1で対応していてもよい。
【0051】
gNB200は、自身の判断でPTP(Point-to-Point:ユニキャスト)及びPTM(Point-to-Multipoint:マルチキャスト又はブロードキャスト)のいずれかの伝送方式を選択し、選択した伝送方式でUE100にMBSデータを送信する。
【0052】
他方、個別MBSデータ配信では、NG-RAN10とUE100との間にユニキャストのセッションが確立され、5GC20からUE100へMBSデータを個別に配信する。このようなユニキャストは、PDUセッション(PDU Session)と呼ばれてもよい。ユニキャスト(PDUセッション)は、UE100で終端する。
【0053】
(スプリットMBSベアラ)
次に、一実施形態に係るスプリットMBSベアラについて説明する。
【0054】
gNB200は、PTP通信パス及びPTM通信パスに分離されたMBSベアラ(以下、適宜「スプリットMBSベアラ」と呼ぶ)をUE100に設定し得る。これにより、gNB200は、UE100に対するMBSデータの送信をPTP(PTP通信パス)とPTM(PTM通信パス)との間で動的に切り替えることができる。或いは、gNB200は、PTP(PTP通信パス)及びPTM(PTM通信パス)を併用して同一のMBSデータを二重送信することにより信頼性を高めることができる。
【0055】
スプリットを終端する所定レイヤは、MACレイヤ(HARQ)、RLCレイヤ、PDCPレイヤ、又はSDAPレイヤである。以下において、スプリットを終端する所定レイヤがPDCPレイヤである一例について主として説明するが、所定レイヤは、MACレイヤ(HARQ)、RLCレイヤ、又はSDAPレイヤであってもよい。
【0056】
図8は、一実施形態に係るスプリットMBSベアラを示す図である。以下において、PTP通信パスをPTPレグと呼び、PTM通信パスをPTMレグと呼ぶ。また、各レイヤに相当する機能部をエンティティと呼ぶ。
【0057】
図8に示すように、gNB200のPDCPエンティティ及びUE100のPDCPエンティティのそれぞれは、MBSに用いるベアラ(データ無線ベアラ)であるMBSベアラをPTPレグ及びPTMレグに分離する。なお、PDCPエンティティはベアラごとに設けられる。
【0058】
gNB200及びUE100のそれぞれは、レグごとに設けられる2つのRLCエンティティと、1つのMACエンティティと、1つのPHYエンティティとを有する。PHYエンティティは、レグごとに設けられてもよい。なお、UE100が2つのgNB200との通信を行う二重接続(Dual Connectivity)の場合、UE100が2つのMACエンティティを有していてもよい。
【0059】
PHYエンティティは、UE100と1対1で割り当てられるセルRNTI(C-RNTI:Cell Radio Network Temporary Identifier)を用いて、PTPレグのデータを送受信する。PHYエンティティは、MBSセッションと1対1で割り当てられるグループRNTI(G-RNTI:Group Radio Network Temporary Identifier)を用いて、PTMレグのデータを送受信する。C-RNTIはUE100ごとに異なるが、G-RNTIは1つのMBSセッションを受信する複数のUE100で共通のRNTIである。
【0060】
gNB200からUE100に対してPTMレグを用いてMBSデータのPTM送信(マルチキャスト又はブロードキャスト)を行うためには、gNB200からUE100にスプリットMBSベアラが設定されており、且つ、PTMレグがアクティブ化(activation)されている必要がある。言い換えると、gNB200は、UE100にスプリットMBSベアラが設定されていても、PTMレグが非アクティブ(deactivation)状態にある場合は、このPTMレグを用いてMBSデータのPTM送信を行うことができない。
【0061】
また、gNB200及びUE100がPTPレグを用いてMBSデータのPTP送信(ユニキャスト)を行うためには、gNB200からUE100にスプリットMBSベアラが設定されており、且つ、PTPレグがアクティブ化されている必要がある。言い換えると、gNB200は、UE100にスプリットMBSベアラが設定されていても、PTPレグが非アクティブ状態にある場合は、このPTPレグを用いてMBSデータのPTP送信を行うことができない。
【0062】
UE100は、PTMレグがアクティブ化された状態において、MBSセッションと対応付けられたG-RNTIが適用されたPDCCH(Physical Downlink Control Channel)をモニタする(すなわち、G-RNTIを用いてPDCCHのブラインドデコーディングを行う)。UE100は、当該MBSセッションのスケジューリング機会にのみ当該PDCCHをモニタしてもよい。
【0063】
UE100は、PTMレグが非アクティブ化された状態において、MBSセッションと対応付けられたG-RNTIが適用されたPDCCHをモニタしない(すなわち、G-RNTIを用いたPDCCHのブラインドデコーディングを行わない)。
【0064】
UE100は、PTPレグがアクティブ化された状態において、C-RNTIが適用されたPDCCHをモニタする。UE100は、PTPレグにおける間欠受信(DRX:Discontinuous Reception)が設定されている場合、設定されたオン期間(OnDuration)においてPDCCHをモニタする。UE100は、MBSセッションと紐づいたセル(周波数)が指定されている場合、当該セルが非アクティブ化されていても、当該セルのPDCCHをモニタしてもよい。
【0065】
UE100は、PTPレグが非アクティブ化された状態において、MBSデータ以外の通常のユニキャスト下りリンク送信に備えて、C-RNTIが適用されたPDCCHをモニタしてもよい。但し、UE100は、MBSセッションと紐づいたセル(周波数)が指定されている場合、当該MBSセッションについて当該PDCCHをモニタしなくてもよい。
【0066】
なお、gNB200のRRCエンティティがUE100のRRCエンティティに対して送信するRRCメッセージ(例えば、RRC Reconfigurationメッセージ)により、上述のようなスプリットMBSベアラが設定されるものとする。
【0067】
(レグのアクティブ化及び非アクティブ化)
次に、一実施形態に係るレグのアクティブ化及び非アクティブ化について説明する。
【0068】
図9は、一実施形態に係るレグのアクティブ化及び非アクティブ化に関する動作例1を示す図である。
【0069】
図9に示すように、ステップS11において、gNB200のRRCエンティティは、
図8に示すスプリットMBSベアラ(スプリットベアラ)の設定を含むRRCメッセージをUE100に送信する。RRCメッセージは、例えばRRC Reconfigurationメッセージである。UE100のRRCエンティティは、gNB200から受信したRRCメッセージに含まれる設定に基づいてスプリットMBSベアラを確立する。以下において、UE100が確立するスプリットMBSベアラが1つである一例について主として説明するが、UE100は、gNB200からの設定に応じて複数のスプリットMBSベアラを確立してもよい。
【0070】
gNB200は、RRCメッセージ(RRC Reconfigurationメッセージ)でベアラ設定を行う際に、同メッセージにて各レグの初期状態(すなわち、各レグのアクティブ化又は非アクティブ化)をUE100に指示してもよい。gNB200のRRCエンティティは、スプリットMBSベアラのベアラ設定を含むRRCメッセージをUE100に送信するとき、ベアラ設定と共に、各レグのアクティブ化又は非アクティブ化の指示をRRCメッセージに含める。
【0071】
このようなRRCメッセージは、指示の対象となるレグ(PTPレグ、PTMレグ)の識別子、及び、アクティブ化及び非アクティブ化のいずれか一方を示す識別子のうち、少なくとも一方を含んでもよい。RRCメッセージは、指示の対象となるMBSセッション(スプリットMBSベアラ)と対応付けられた識別子(例えば、TMGI、G-RNTI、セッション識別子、QoSフロー識別子、ベアラ識別子)を含んでもよい。
【0072】
ステップS12において、gNB200は、PTPレグ及びPTMレグを個別にアクティブ化又は非アクティブ化するための指示をUE100に送信する。
【0073】
ここで、gNB200のMACエンティティは、当該指示を含むMAC制御要素(MAC CE)をUE100に送信してもよい。UE100のMACエンティティは、gNB200からMAC CEを受信する。或いは、gNB200のPHYエンティティは、当該指示を含む下りリンク制御情報(DCI)をUE100に送信してもよい。UE100のPHYエンティティは、gNB200からDCIを受信する。
【0074】
このようなMAC CE又はDCIは、指示の対象となるレグ(PTPレグ、PTMレグ)の識別子、及び、アクティブ化及び非アクティブ化のいずれか一方を示す識別子のうち、少なくとも一方を含んでもよい。MAC CE又はDCIは、指示の対象となるMBSセッション(スプリットMBSベアラ)と対応付けられた識別子(例えば、TMGI、G-RNTI、セッション識別子、QoSフロー識別子、ベアラ識別子)を含んでもよい。
【0075】
MAC CE又はDCIを用いて各レグのアクティブ化及び非アクティブ化を指示することにより、RRCメッセージを用いる場合に比べて動的な制御が可能である。
【0076】
UE100は、PTPレグをアクティブ化する指示の受信に応じて、C-RNTIを用いたデータの受信処理を開始する。UE100は、PTMレグをアクティブ化する指示の受信に応じて、G-RNTIを用いたMBSデータの受信処理を開始する。他方、UE100は、PTPレグを非アクティブ化する指示の受信に応じて、C-RNTIを用いたデータの受信処理を終了する。UE100は、PTMレグを非アクティブ化する指示の受信に応じて、G-RNTIを用いたMBSデータの受信処理を終了する。
【0077】
ステップS12において、gNB200は、アクティブ化された状態にあるPTMレグを介して、PTPレグをアクティブ化又は非アクティブ化する指示をUE100に送信(PTM送信)してもよい。これにより、複数のUE100のPTPレグをPTMで一括してアクティブ化又は非アクティブ化することができる。
【0078】
gNB200は、アクティブ化された状態にあるPTMレグを介して、PTMレグを非アクティブ化する指示をUE100に送信(PTM送信)してもよい。これにより、複数のUE100のPTMレグをPTMで一括して非アクティブ化することができる。
【0079】
ステップS12において、gNB200は、アクティブ化された状態にあるPTPレグを介して、PTMレグをアクティブ化又は非アクティブ化する指示をUE100に送信(PTP送信)してもよい。これにより、UE100ごとにPTMレグを個別にアクティブ化又は非アクティブ化することができる。
【0080】
gNB200は、アクティブ化された状態にあるPTPレグを介して、PTPレグを非アクティブ化する指示をUE100に送信(PTP送信)してもよい。これにより、UE100ごとにPTPレグを個別に非アクティブ化することができる。
【0081】
ステップS13において、UE100は、ステップS12でgNB200からPTPレグ及びPTMレグの少なくとも一方のレグをアクティブ化する指示を受信したことに応じて、受信した指示に対する応答をgNB200に送信してもよい。この応答は、例えば、UE100のMACエンティティからPTPレグを介してgNB200に送信されてもよい。UE100は、当該応答を送信後、アクティブ化されたレグにおけるデータ受信動作を開始してもよい。
【0082】
gNB200は、UE100からの応答の受信に応じて、アクティブ化されたレグを介してデータを送信する。すなわち、gNB200は、当該応答を受信後、当該レグにおけるデータ送信動作を開始する。
【0083】
なお、UE100は、ステップS12でgNB200からPTPレグ及びPTMレグの少なくとも一方のレグを非アクティブ化する指示を受信したことに応じて、受信した指示に対する応答をgNB200に送信してもよい。
【0084】
図10は、一実施形態に係るレグのアクティブ化及び非アクティブ化に関する動作例2を示す図である。動作例2の基本的な動作は動作例1と同様であるため、ここでは動作例1との相違点について主として説明する。なお、動作例2は動作例1と併用可能である。
【0085】
動作例2では、gNB200が、PTPレグ及びPTMレグの両方をアクティブ化又は非アクティブ化するための指示をUE100に送信する。例えば、gNB200のMACエンティティは、レグのアクティブ化又は非アクティブ化を指示するMAC CEに、PTPレグの制御指示及びPTMレグの制御指示の両方を含める。
【0086】
図10に示すように、ステップS21において、gNB200のRRCエンティティは、
図8に示すスプリットMBSベアラ(スプリットベアラ)の設定を含むRRCメッセージをUE100に送信する。上述のように、当該RRCメッセージは、各レグの初期状態を設定する情報を含んでもよい。各レグの初期状態を設定する情報は、後述のMAC CE又はDCIに含まれる指示と同様な情報であってもよい。
【0087】
ステップS22において、gNB200は、PTPレグ及びPTMレグの両方をアクティブ化又は非アクティブ化するための指示をUE100に送信する。上述のように、当該指示は、MAC CE又はDCIに含まれる。
【0088】
ここで、MAC CE又はDCIは、PTPレグ及びPTMレグの両方のアクティブ化(例えば、“1”)、又はPTPレグ及びPTMレグの両方の非アクティブ化(例えば、“0”)の指示値を含む。PTPレグ及びPTMレグの両方のアクティブ化は、スプリットMBSベアラのアクティブ化であってもよいし、2つのレグを用いた二重送信(Duplication)のアクティブ化であってもよい。また、PTPレグ及びPTMレグの両方の非アクティブ化は、スプリットMBSベアラの非アクティブ化であってもよいし、2つのレグを用いた二重送信の非アクティブ化であってもよい。
【0089】
MAC CE又はDCIは、指示の対象となるMBSセッション(スプリットMBSベアラ)と対応付けられた識別子(例えば、TMGI、G-RNTI、セッション識別子、QoSフロー識別子、ベアラ識別子)を含んでもよい。MAC CE又はDCIは、このような識別子ごとにアクティブ化又は非アクティブ化の指示を含んでもよい。
【0090】
図11は、一実施形態に係るベアラ識別子(若しくは論理チャネル識別子)ごとの指示値を格納するMAC CE(1オクテット)の一例を示す図である。
図11に示すように、MAC CEにおいて、M1乃至M8は、ベアラ#1乃至#8(若しくは論理チャネル#1乃至#8と対応する。M1乃至M8の各フィールドは1ビットであり、各フィールドにアクティブ化(例えば、“1”)又は非アクティブ化(例えば、“0”)の指示値が格納される。
【0091】
ステップS23は、動作例1と同様である。UE100は、応答をgNB200に送信してもよい。
【0092】
UE100のPDCPエンティティは、PTPレグ及びPTMレグの両方がアクティブ化された場合、二重送信(Duplication)で送信される2つの同一MBSパケットの重複破棄(duplicate packet discarding)処理を行ってもよい。
【0093】
UE100のRRCエンティティは、PTPレグが非アクティブ化された場合、RRC接続の解放をgNB200に促すためのメッセージ(RAI:Release Assistance Information/preference)をgNB200に送信してもよい。或いは、UE100は、PTPレグ及びPTMレグの動的切り替えが設定中であってもRAIの送信が許可されるとしてもよい。
【0094】
(PTP伝送とPTM伝送との切り替え動作)
次に、一実施形態に係るPTP伝送とPTM伝送との切り替え動作について説明する。
【0095】
スプリットMBSベアラを前提とする場合、PTP伝送は、PTPレグ(PTP通信パス)を用いてgNB200からUE100へMBSデータを伝送する方式であってもよい。PTM伝送は、PTMレグ(PTM通信パス)を用いてgNB200からUE100へMBSデータを伝送する方式であってもよい。
【0096】
或いは、スプリットMBSベアラを前提としなくてもよい。PTP伝送は、PTP用の第1データ無線ベアラであるPTPベアラ(PTP通信パス)を用いてgNB200からUE100へMBSデータを伝送する方式であってもよい。PTM伝送は、PTM用の第2データ無線ベアラであるPTMベアラ(PTM通信パス)を用いてgNB200からUE100へMBSデータを伝送する方式であってもよい。
【0097】
PTP伝送とPTM伝送との切り替え動作は、PTP伝送及びPTM伝送のうち、一方の伝送方式のMBSデータ伝送を終了するのと同時に、他方の伝送方式のMBSデータ伝送を開始する動作である。このような切り替えの際に、gNB200からUE100へ伝送されるMBSデータ(MBSパケット)が欠落する懸念がある。このようなパケットロスが発生した場合、通信の信頼性を高めるために、PDCPレイヤ(又はRLCレイヤ)における再送が行われることが望ましい。
【0098】
一実施形態に係るUE100において、受信部110は、PTP(Point-To-Point)伝送及びPTM(Point-To-Multipoint)伝送のいずれかの伝送方式でgNB200から伝送されるMBSデータを受信する。UE100の制御部130は、伝送方式がPTP伝送とPTM伝送との間で切り替えられたことに応じて、UE100の所定レイヤにおけるMBSデータの受信状態を示すステータス報告の送信をトリガする。UE100の送信部120は、ステータス報告をgNB200に送信する。
【0099】
これにより、gNB200は、PTP伝送とPTM伝送との切り替えに関してUE100のMBSデータの受信状態を把握できる。このため、gNB200は、PTP伝送とPTM伝送との切り替えの際にMBSパケットが欠落しても、欠落したMBSパケットを特定しやすくなる。よって、MBSパケットのパケットロスが発生した場合、PDCPレイヤ(又はRLCレイヤ)における再送が可能になるため、通信の信頼性を高めることができる。
【0100】
以下において、所定レイヤがPDCPレイヤであって、UE100からgNB200へ送信されるステータス報告がPDCPステータス報告(PDCP status report)である一例について説明する。但し、所定レイヤは、RLCレイヤであってもよい。UE100からgNB200へ送信されるステータス報告は、RLCステータス報告(RLC Status PDU)であってもよい。
【0101】
図12は、一実施形態に係るPDCPステータス報告の構成例を示す図である。
【0102】
図12に示すように、PDCPステータス報告は、主要な構成要素として、1ビット長の「D/C」フィールドと、3ビット長の「PDU Type」フィールドと、32ビット長の「FMC(First Missing COUNT)」フィールドと、可変ビット長の「Bitmap」フィールドとを有する。
【0103】
「D/C」フィールドは、このPDCP PDUがPDCP Data PDUであるか又はPDCP Control PDUであるかを示すフィールドである。PDCPステータス報告は、PDCP Control PDUに相当する。
【0104】
「PDU Type」フィールドは、このPDCP Control PDUが、「PDCP status report」、及び「Interspersed ROHC feedback」、及び「EHC feedback」のいずれであるかを示すフィールドである。
【0105】
「FMC(First Missing COUNT)」フィールドは、リオーダリングウィンドウ内で最初に欠落したPDCP SDUのカウント値(COUNT)を示すフィールドである。なお、カウント値(COUNT)は、HFN(Hyper Frame Number)及びPDCPシーケンス番号により構成される。
【0106】
「Bitmap」フィールドは、欠落したPDCP SDUと、受信側PDCPエンティティで正しく受信されたPDCP SDUとを示すフィールドである。具体的には、「Bitmap」フィールドは、FMC以降のPDCP SDUの受信状態を「0」(欠落)又は「1」(正しく受信)で示す。
【0107】
(1)PTM伝送からPTP伝送への切り替え動作
次に、一実施形態に係るPTM伝送からPTP伝送への切り替え動作について説明する。
図13は、一実施形態に係るPTM伝送からPTP伝送への切り替え動作を示す図である。以下の説明において、gNB200は、
図7に示す共有MBSデータ配信(Shared MBS Traffic delivery)のMBS接続を5GC20と確立しているものとする。
【0108】
図13に示すように、ステップS101において、gNB200は、MBSデータのPTM伝送を開始する。具体的には、gNB200は、あるMBSセッションに属するMBSデータのマルチキャスト伝送又はブロードキャスト伝送を開始する。
【0109】
ステップS102において、gNB200は、あるMBSセッションに属するMBSデータをPTMで送信する。UE100は、MBSデータを受信する。
【0110】
ステップS103において、UE100のPDCPエンティティは、PDCPステータス報告を生成するために、PTMで送信されるMBSデータ(PDCP SDU)のうち受信に成功したMBSデータのシーケンス番号及び受信に失敗したMBSデータのシーケンス番号をそれぞれ記録してもよい。
【0111】
ステップS104において、gNB200は、PTM伝送からPTP伝送へ切り替えるための指示をUE100に送信する。この指示は、PTMレグのディアクティベーション指示及び/又はPTPレグのアクティベーション指示であってもよい。この指示は、RRCメッセージ(例えば、RRC Reconfigurationメッセージ)による、PTMベアラからPTPベアラへの変更指示であってもよい。この指示は、PDCPステータス報告の送信指示又は送信設定を含んでもよい。但し、UE100は、gNB200からのPDCPステータス報告の送信指示又は送信設定がなくても、PDCPステータス報告を自発的にトリガ(ステップS107)及び送信してもよい(ステップS108)。
【0112】
ステップS105において、gNB200及びUE100は、PTM伝送からPTP伝送への切り替え処理を行う。具体的には、gNB200及びUE100は、あるMBSセッションに属するMBSデータのPTM伝送を終了するとともに、当該MBSセッションに属するMBSデータのPTP伝送を開始する。
【0113】
ステップS106において、gNB200は、当該MBSセッションに属するMBSデータをPTPで送信する。UE100は、MBSデータを受信する。
【0114】
UE100は、PTM伝送からPTP伝送への切り替え処理に伴い、PTMで送信される最後のMBSデータ(PDCP SDU)の受信に失敗し得る。この場合、UE100のPDCPエンティティは、PTMで送信されるMBSデータ(PDCP SDU)のうち受信に失敗したMBSデータ(PDCP SDU)のシーケンス番号を記録する。
【0115】
UE100は、PTM伝送からPTP伝送への切り替え処理に伴い、PTPで送信される最初のMBSデータ(PDCP SDU)の受信に失敗し得る。この場合、UE100のPDCPエンティティは、PTPで送信されるMBSデータ(PDCP SDU)のうち受信に失敗したMBSデータ(PDCP SDU)のシーケンス番号を記録する。
【0116】
ステップS107において、UE100のPDCPエンティティは、PDCPステータス報告の送信をトリガする。具体的には、UE100のPDCPエンティティは、
図12に示すようなPDCPステータス報告を生成し、PDCPステータス報告を下位レイヤに渡す。
【0117】
ここで、UE100のPDCPエンティティは、ステップS104の指示を受信したときにPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよいし、ステップS105の切り替え処理を行ったときにPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよい。
【0118】
UE100のPDCPエンティティは、ステップS104の指示を受信してから一定時間の経過後にPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよいし、ステップS105の切り替え処理を行ってから一定時間の経過後にPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよい。このような一定時間(タイマ値)は、gNB200からUE100に設定されてもよい。
【0119】
UE100がPDCPステータス報告の送信をトリガする条件として、PTMで最後に受信したMBSデータのシーケンス番号とPTPで最初に受信したMBSデータのシーケンス番号とが不連続であるという条件があってもよい。UE100のPDCPエンティティは、このような不連続を検知した場合に限り、PDCPステータス報告の送信をトリガする。UE100がPDCPステータス報告の送信をトリガする条件は、PTMで送信されたMBSデータにおける欠落(シーケンス番号の不連続)を検知したことであってもよい。
【0120】
ステップS108において、UE100の下位レイヤ(RLCエンティティ、MACエンティティ、及びPHYエンティティ)は、PDCPステータス報告をgNB200に送信する。gNB200は、PDCPステータス報告を受信する。
【0121】
ステップS109において、gNB200は、PDCPステータス報告に含まれる欠落パケット情報(FMC及びBitmap)に基づいて、欠落したMBSデータをPTPでUE100に再送する。UE100は、PTPで再送されたMBSデータを受信する。
【0122】
このように、PTM伝送からPTP伝送への切り替えの際に、UE100においてMBSデータが欠落しても、PDCPステータス報告に基づいて欠落MBSデータを特定し、PDCPレイヤにおける再送により欠落MBSデータを補完できる。
【0123】
(2)PTP伝送からPTM伝送への切り替え動作
次に、一実施形態に係るPTP伝送からPTM伝送への切り替え動作について説明する。
図14は、一実施形態に係るPTP伝送からPTM伝送への切り替え動作を示す図である。
【0124】
図14に示すように、ステップS201において、gNB200は、MBSデータのPTP伝送を開始する。具体的には、gNB200は、あるMBSセッションに属するMBSデータのユニキャスト伝送を開始する。
【0125】
ステップS202において、gNB200は、あるMBSセッションに属するMBSデータをPTMで送信する。UE100は、MBSデータを受信する。
【0126】
ステップS203において、UE100のPDCPエンティティは、PDCPステータス報告を生成するために、PTPで送信されるMBSデータ(PDCP SDU)のうち受信に成功したMBSデータのシーケンス番号及び受信に失敗したMBSデータのシーケンス番号をそれぞれ記録してもよい。
【0127】
ステップS204において、gNB200は、PTP伝送からPTM伝送へ切り替えるための指示をUE100に送信する。この指示は、PTPレグのディアクティベーション指示及び/又はPTMレグのアクティベーション指示であってもよい。この指示は、RRCメッセージ(例えば、RRC Reconfigurationメッセージ)による、PTPベアラからPTMベアラへの変更指示であってもよい。この指示は、PDCPステータス報告の送信指示又は送信設定を含んでもよい。但し、UE100は、gNB200からのPDCPステータス報告の送信指示又は送信設定がなくても、PDCPステータス報告を自発的にトリガ(ステップS207)及び送信してもよい(ステップS208)。
【0128】
ステップS205において、gNB200及びUE100は、PTP伝送からPTM伝送への切り替え処理を行う。具体的には、gNB200及びUE100は、あるMBSセッションに属するMBSデータのPTP伝送を終了するとともに、当該MBSセッションに属するMBSデータのPTM伝送を開始する。
【0129】
ステップS206において、gNB200は、当該MBSセッションに属するMBSデータをPTMで送信する。UE100は、MBSデータを受信する。
【0130】
UE100は、PTP伝送からPTM伝送への切り替え処理に伴い、PTPで送信される最後のMBSデータ(PDCP SDU)の受信に失敗し得る。この場合、UE100のPDCPエンティティは、PTPで送信されるMBSデータ(PDCP SDU)のうち受信に失敗したMBSデータ(PDCP SDU)のシーケンス番号を記録する。
【0131】
UE100は、PTP伝送からPTM伝送への切り替え処理に伴い、PTMで送信される最初のMBSデータ(PDCP SDU)の受信に失敗し得る。この場合、UE100のPDCPエンティティは、PTMで送信されるMBSデータ(PDCP SDU)のうち受信に失敗したMBSデータ(PDCP SDU)のシーケンス番号を記録する。
【0132】
ステップS207において、UE100のPDCPエンティティは、PDCPステータス報告の送信をトリガする。具体的には、UE100のPDCPエンティティは、
図12に示すようなPDCPステータス報告を生成し、PDCPステータス報告を下位レイヤに渡す。
【0133】
ここで、UE100のPDCPエンティティは、ステップS204の指示を受信したときにPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよいし、ステップS205の切り替え処理を行ったときにPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよい。
【0134】
UE100のPDCPエンティティは、ステップS204の指示を受信してから一定時間の経過後にPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよいし、ステップS205の切り替え処理を行ってから一定時間の経過後にPDCPステータス報告の送信をトリガしてもよい。このような一定時間(タイマ値)は、gNB200からUE100に設定されてもよい。
【0135】
UE100がPDCPステータス報告の送信をトリガする条件として、PTPで最後に受信したMBSデータのシーケンス番号とPTMで最初に受信したMBSデータのシーケンス番号とが不連続であるという条件があってもよい。UE100のPDCPエンティティは、このような不連続を検知した場合に限り、PDCPステータス報告の送信をトリガする。UE100がPDCPステータス報告の送信をトリガする条件は、PTPで送信されたMBSデータにおける欠落(シーケンス番号の不連続)を検知したことであってもよい。
【0136】
ステップS208において、UE100の下位レイヤ(RLCエンティティ、MACエンティティ、及びPHYエンティティ)は、PDCPステータス報告をgNB200に送信する。gNB200は、PDCPステータス報告を受信する。
【0137】
ステップS209において、gNB200は、PDCPステータス報告に含まれる欠落パケット情報(FMC及びBitmap)に基づいて、欠落したMBSデータをPTMでUE100に再送する。UE100は、PTMで再送されたMBSデータを受信する。
【0138】
このように、PTP伝送からPTM伝送への切り替えの際に、UE100においてMBSデータが欠落しても、PDCPステータス報告に基づいて欠落MBSデータを特定し、PDCPレイヤにおける再送により欠落MBSデータを補完できる。
【0139】
(3)PTP伝送からPTM伝送への切り替え動作の変更例
次に、一実施形態に係るPTP伝送からPTM伝送への切り替え動作の変更例について説明する。
図15は、一実施形態に係るPTP伝送からPTM伝送への切り替え動作の変更例を示す図である。
【0140】
図15に示すように、ステップS301乃至S308の動作は、
図14と同様である。但し、ステップS304及びS305において、gNB200及びUE100は、PTP通信パス(PTPレグ)をディアクティベーションせずにアクティブな状態を維持する。
【0141】
ステップS309において、gNB200は、PDCPステータス報告に含まれる欠落パケット情報(FMC及びBitmap)に基づいて、欠落したMBSデータをPTPでUE100に再送する。UE100は、PTPで再送されたMBSデータを受信する。
【0142】
このように、gNB200及びUE100は、MBSデータの初送処理をPTMで行いつつ、MBSデータの再送処理をPTPで行う。これにより、MBSデータの欠落が生じたUE100に対してのみ、当該MBSデータをPTPで再送できるため、効率的な再送処理を実現できる。なお、UE100は、欠落したMBSデータが再送により補完された場合、PTPでの受信処理を自発的に停止してもよい。
【0143】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、スプリットMBSベアラを用いて、PTP通信パスをPTPレグにより構成するとともに、PTM通信パスをPTMレグにより構成する一例について説明した。しかしながら、2つの無線ベアラ(データ無線ベアラ)を用いて、PTP通信パスをPTP用の第1無線ベアラにより構成するとともに、PTM通信パスをPTM用の第2無線ベアラにより構成してもよい。
【0144】
上述の実施形態において、所定レイヤがPDCPレイヤであって、UE100からgNB200へ送信されるステータス報告がPDCPステータス報告(PDCP status report)である一例について説明した。但し、上述の実施形態におけるPDCPエンティティをRLCエンティティと読み替え、PDCPステータス報告をRLCステータス報告(RLC Status PDU)と読み替えてもよい。
【0145】
上述の各動作フローは、別個独立に実施する場合に限らず、2以上の動作フローを組み合わせて実施可能である。例えば、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローに追加してもよいし、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローの一部のステップと置換してもよい。
【0146】
上述の実施形態において、基地局がNR基地局(gNB)である一例について説明したが基地局がLTE基地局(eNB)であってもよい。また、基地局は、IAB(Integrated Access and Backhaul)ノード等の中継ノードであってもよい。基地局は、IABノードのDU(Distributed Unit)であってもよい。
【0147】
UE100又はgNB200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0148】
また、UE100又はgNB200が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100又はgNB200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0149】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0150】
本願は、日本国特許出願第2020-214243号(2020年12月23日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
【符号の説明】
【0151】
10 :NG-RAN(5G RAN)
20 :5GC(5G CN)
100 :UE
110 :受信部
120 :送信部
130 :制御部
200 :gNB
210 :送信部
220 :受信部
230 :制御部
240 :バックホール通信部