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特許7549059変性ビスマレイミド樹脂及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】変性ビスマレイミド樹脂及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/452 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
C07D207/452 CSP
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023015744
(22)【出願日】2023-02-04
(65)【公開番号】P2024068058
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2023-02-05
(31)【優先権主張番号】111142080
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】陳 其霖
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-109960(JP,A)
【文献】特開平05-170735(JP,A)
【文献】特開2021-113303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 207/452
C08G 73/00-73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ッ素系ジアミンおよび無水マレイン酸を反応させ、縮合重合によって、変性ビスマレイミド樹脂を形成することを含み
前記フッ素系ジアミンが、下記の式(1)、式(2)、式(4)、式(6)、式(8)、式(11)、式(13)、式(15)及び式(16)で表される化合物のうちの任意の1つを含む変性ビスマレイミド樹脂の作製方法
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項2】
前記フッ素系ジアミンのモル数対前記無水マレイン酸のモル数の比率が、1:1~1:10である請求項1に記載の変性ビスマレイミド樹脂の作製方法
【請求項3】
その重量平均分子量が、100~1,500である請求項1に記載の変性ビスマレイミド樹脂の作製方法
【請求項4】
下記の式(A)で表される構造を有し、
【化10】
式(A)において、Lが、下記の式(1a)、式(2a)、式(4a)、式(6a)、式(8a)、式(11a)、式(13a)、式(15a)及び式(16a)で表される2価の有機基のうちの任意の1つを含む変性ビスマレイミド樹脂。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
式(1a)、式(2a)、式(4a)、式(6a)、式(8a)、式(11a)、式(13a)、式(15a)及び式(16a)において、*が、結合位置を示す。
【請求項5】
その重量平均分子量が、100~1,500である請求項に記載の変性ビスマレイミド樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマレイミド樹脂に関するものであり、特に、変性ビスマレイミド樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビスマレイミド樹脂は、優れた耐熱性、機械特性、比誘電率(dielectric constant, Dk)および誘電正接(dissipation factor, Df)、および他の特性を有するため、通常、高周波プリント基板や他の電子基板の絶縁材料に応用される。しかしながら、現在使用されているビスマレイミド樹脂は、溶解性が悪い、靱性が低い等の問題を有し、加工性が悪いという欠点も有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を提供することのできる変性ビスマレイミド樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の変性ビスマレイミド樹脂は、縮合重合によってフッ素系ジアミンおよび無水マレイン酸から形成される。フッ素系ジアミンは、フッ素基、フッ素含有置換基、またはその組み合わせを含み、さらに、アリーレン基、エーテル基、アルキレン基、アミド基、またはその組み合わせを含む。
【0005】
本発明の1つの実施形態において、フッ素系ジアミンのモル数対無水マレイン酸のモル数の比率は、1:1~1:10である。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、変性ビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は、100~1,500である。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、フッ素系ジアミンは、対称構造を有する。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、フッ素系ジアミンは、下記の式(1)~式(16)で表される化合物のうちの任意の1つを含む。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
【化4】
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【0018】
【化10】
【0019】
【化11】
【0020】
【化12】
【0021】
【化13】
【0022】
【化14】
【0023】
【化15】
【0024】
【化16】
【0025】
本発明の変性ビスマレイミド樹脂は、下記の式(A)で表される構造を有する。
【0026】
【化17】
【0027】
式(A)において、Lは、フッ素系ジアミンから誘導される2価の有機基を示し、フッ素系ジアミンは、フッ素基、フッ素含有置換基、またはその組み合わせを含み、さらに、アリーレン基、エーテル基、アルキレン基、アミド基、またはその組み合わせを含む。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、Lは、下記の式(1a)~式(16a)で表される2価の有機基のうちの任意の1つを示す。
【0029】
【化18】
【0030】
【化19】
【0031】
【化20】
【0032】
【化21】
【0033】
【化22】
【0034】
【化23】
【0035】
【化24】
【0036】
【化25】
【0037】
【化26】
【0038】
【化27】
【0039】
【化28】
【0040】
【化29】
【0041】
【化30】
【0042】
【化31】
【0043】
【化32】
【0044】
【化33】
【0045】
式(1a)~式(16a)において、*は、結合位置を示す。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明は、主鎖がフッ素を含み、優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を有するビスマレイミド樹脂を提供する。
【0047】
発明の特徴および利点をより分かり易くするため、いくつかの実施形態を以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下は、本発明の内容を詳しく説明する実施形態である。実施形態において提供される実施の詳細は、単なる例であり、本発明の内容の保護範囲を限定する意図はない。当業者であれば、実際の実施の必要に応じて、これらの実施の詳細を修飾または変更することができる。
【0049】
本明細書において使用される「2価の有機基」は、2つ結合位置を有する有機基である。そして、「2価の有機基」は、これらの2つの結合位置により2つの結合を形成することができる。
【0050】
本実施形態の変性ビスマレイミド樹脂は、縮合重合によってフッ素系ジアミンおよび無水マレイン酸から形成され、フッ素系ジアミンは、フッ素基、フッ素含有置換基、またはその組み合わせを含み、さらに、アリーレン基、エーテル基、アルキレン基、アミド基、またはその組み合わせを含む。
【0051】
そのため、本実施形態の変性ビスマレイミド樹脂は、主鎖がフッ素を含む構造を有し、変性ビスマレイミド樹脂に優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を持たせる。
【0052】
フッ素系ジアミンは、フッ素基、フッ素含有置換基、またはその組み合わせを含む。そして、フッ素系ジアミンは、さらに、アリーレン基、エーテル基、アルキレン基、アミド基、またはその組み合わせを含み、好ましくは、アリーレン基、エーテル基、またはその組み合わせを含む。本実施形態において、フッ素系ジアミンは、対称構造を有することができる。フッ素系ジアミンは、下記の式(1)~式(16)で表される化合物のうちの任意の1つを含むことができ、好ましくは、式(3)、式(4)、式(6)、式(12)、または式(13)で表される化合物を含む。
【0053】
【化1】
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
【化8】
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】
【化15】
【0068】
【化16】
【0069】
対称構造を有する変性ビスマレイミド樹脂(つまり、双極子モーメント(dipole moment)が0に近い)は、対称構造を有するフッ素系ジアミンと無水マレイン酸を反応させることによって得ることができる。それにより、変性ビスマレイミド樹脂は、優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を有することができる。
【0070】
<変性ビスマレイミド樹脂の作製方法>
変性ビスマレイミド樹脂は、縮合重合によってフッ素系ジアミンおよび無水マレイン酸から形成される。フッ素系ジアミンと無水マレイン酸を反応させる方法は、特に限定されず、例えば、周知の有機合成方法によって合成することができるため、ここでは詳しい説明を省略する。本実施形態において、フッ素系ジアミンのモル数対無水マレイン酸のモル数の比率は、1:1~1:10であり、好ましくは、1:2~1:3である。
【0071】
変性ビスマレイミド樹脂は、下記の式(A)で表される構造を有する。本実施形態において、変性ビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は、100~1,500であり、好ましくは、400~800である。
【0072】
【化17】
【0073】
式(A)において、Lは、フッ素系ジアミンから誘導される2価の有機基を示し、フッ素系ジアミンは、フッ素基、フッ素含有置換基、またはその組み合わせを含み、フッ素系ジアミンは、さらに、アリーレン基、エーテル基、アルキレン基、アミド基、またはその組み合わせを含み、好ましくは、アリーレン基、エーテル基、またはその組み合わせを含む。
【0074】
本実施形態において、Lは、下記の式(1a)~式(16a)で表される2価の有機基のうちの任意の1つを示し、好ましくは、式(3a)、式(4a)、式(6a)、式(12a)、または式(13a)で表される2価の有機基を示す。
【0075】
【化18】
【0076】
式(1a)において、*は、結合位置を示す。式(1a)で表される2価の有機基は、上記の式(1)で表される化合物から誘導される。
【0077】
【化19】
【0078】
式(2a)において、*は、結合位置を示す。式(2a)で表される2価の有機基は、上記の式(2)で表される化合物から誘導される。
【0079】
【化20】
【0080】
式(3a)において、*は、結合位置を示す。式(3a)で表される2価の有機基は、上記の式(3)で表される化合物から誘導される。
【0081】
【化21】
【0082】
式(4a)において、*は、結合位置を示す。式(4a)で表される2価の有機基は、上記の式(4)で表される化合物から誘導される。
【0083】
【化22】
【0084】
式(5a)において、*は、結合位置を示す。式(5a)で表される2価の有機基は、上記の式(5)で表される化合物から誘導される。
【0085】
【化23】
【0086】
式(6a)において、*は、結合位置を示す。式(6a)で表される2価の有機基は、上記の式(6)で表される化合物から誘導される。
【0087】
【化24】
【0088】
式(7a)において、*は、結合位置を示す。式(7a)で表される2価の有機基は、上記の式(7)で表される化合物から誘導される。
【0089】
【化25】
【0090】
式(8a)において、*は、結合位置を示す。式(8a)で表される2価の有機基は、上記の式(8)で表される化合物から誘導される。
【0091】
【化26】
【0092】
式(9a)において、*は、結合位置を示す。式(9a)で表される2価の有機基は、上記の式(9)で表される化合物から誘導される。
【0093】
【化27】
【0094】
式(10a)において、*は、結合位置を示す。式(10a)で表される2価の有機基は、上記の式(10)で表される化合物から誘導される。
【0095】
【化28】
【0096】
式(11a)において、*は、結合位置を示す。式(11a)で表される2価の有機基は、上記の式(11)で表される化合物から誘導される。
【0097】
【化29】
【0098】
式(12a)において、*は、結合位置を示す。式(12a)で表される2価の有機基は、上記の式(12)で表される化合物から誘導される。
【0099】
【化30】
【0100】
式(13a)において、*は、結合位置を示す。式(13a)で表される2価の有機基は、上記の式(13)で表される化合物から誘導される。
【0101】
【化31】
【0102】
式(14a)において、*は、結合位置を示す。式(14a)で表される2価の有機基は、上記の式(14)で表される化合物から誘導される。
【0103】
【化32】
【0104】
式(15a)において、*は、結合位置を示す。式(15a)で表される2価の有機基は、上記の式(15)で表される化合物から誘導される。
【0105】
【化33】
【0106】
式(16a)において、*は、結合位置を示す。式(16a)で表される2価の有機基は、上記の式(16)で表される化合物から誘導される。
【0107】
変性ビスマレイミド樹脂の実施例
以下、変性ビスマレイミド樹脂の実施例1~実施例16および比較例1について説明する。
【0108】
実施例1
104g(0.2モル)の式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物および43.1g(0.44モル)の無水マレイン酸を300mLのアセトンに添加して、反応用溶液を形成した。次に、反応用溶液を四つ口丸底反応フラスコに入れ、窒素を吹きかけて空気と水気を除去するとともに、100℃および常圧で1~3時間撹拌して、フッ素系ジアミンと無水マレイン酸を反応させた。反応温度が80℃に達した時、反応フラスコ内の溶液が赤茶色の透明な溶液になるのを観察した。この時、4gの酢酸ナトリウム、140mLの酢酸、および28mLのトリエチルアミンを順番に添加/滴下して、100℃の温度で14時間反応させ、赤茶色の透明な溶液を濃い赤茶色の粘性溶液にした。次に、沈殿および精製工程を行って、濃い赤茶色の粘性溶液から明るい茶色の樹脂粒子を沈殿させ、未反応モノマーや残留酸等の不純物を除去した後、実施例1の変性ビスマレイミド樹脂を得た(80gの赤茶色の変性ビスマレイミド樹脂粒子)。
【0109】
実施例2
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例2の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例2と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(2)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0110】
実施例3
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例3の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例3と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(3)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0111】
実施例4
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例4の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例4と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(4)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0112】
実施例5
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例5の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例5と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(5)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0113】
実施例6
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例6の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例6と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(6)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0114】
実施例7
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例7の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例7と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(7)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0115】
実施例8
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例8の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例8と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(8)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0116】
実施例9
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例9の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例9と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(9)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0117】
実施例10
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例10の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例10と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(10)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0118】
実施例11
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例11の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例11と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(11)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0119】
実施例12
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例12の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例12と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(12)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0120】
実施例13
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例13の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例13と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(13)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0121】
実施例14
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例14の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例14と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(14)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0122】
実施例15
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例15の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例15と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(15)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0123】
実施例16
実施例1と同じステップを使用し、表1に記載した合成条件を使用して、実施例16の変性ビスマレイミド樹脂を作製した。実施例16と実施例1の間の相違点は、式(1)で表されるフッ素系ジアミン化合物を式(16)で表されるフッ素系ジアミン化合物に置き換えたことである。得られた変性ビスマレイミド樹脂を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0124】
比較例1
比較例1のビスマレイミド樹脂は、市販されているビスマレイミド樹脂KI-70(商品名、下記の式(B)の構造を有する;ケイアイ化成(KI Chemical Industry Co., LTD)社製)である。これを下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0125】
【化34】
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
<評価方法>
実施例/比較例の変性ビスマレイミド樹脂/市販されているビスマレイミド樹脂を樹脂ワニスの形状の樹脂組成物にした。樹脂組成物は、実用に必要な様々な特性を向上させるために、機能性添加剤を含んでもよい。例えば、機能性添加剤は、難燃剤、溶剤、充填剤、および硬化促進剤のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0129】
次に、樹脂組成物を適切な温度(例えば、室温)で基板に印加した。基板は、特に限定されず、必要に応じて適切な基板を選択することができる。基板は、絶縁紙、ガラス繊維布、または他の適切な繊維材料を含むことができる。樹脂組成物を基板に印加する方法は、塗布または含浸を含むことができる。
【0130】
そして、樹脂組成物に印加された基板を適切な温度で一定期間乾燥させ、半硬化状態のプリプレグ(prepreg)を形成した。最後に、銅箔層を少なくとも1つのプリプレグの片側または両側にラミネートして、熱圧着を行い、銅箔基板を形成した。熱圧着の条件は、特に限定されず、樹脂組成物の組成に応じて、熱圧着の条件を調整してもよい。得られた銅箔基板を下記の各評価方法で評価し、その結果を表2に示した。
【0131】
a.ガラス転移温度(Glass Transition Temperature, Tg)
得られた変性ビスマレイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)を動的機械分析装置(dynamic mechanical analyzer, DMA)で測定した。Tgが大きければ大きいほど、変性ビスマレイミド樹脂は、位相変化に対して優れた耐性、つまり、優れた耐熱性を有する。
加熱速度:10℃/分
温度範囲25℃~350℃(加熱、冷却、加熱)
【0132】
b.比誘電率(Dielectric Constant, Dk)
得られた変性ビスマレイミド樹脂の10GHzの周波数における比誘電率(Dk)を誘電率分析装置(モデル:E4991A;アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies, Inc)社製)で測定した。比誘電率が比較的小さい時、変性ビスマレイミド樹脂は、優れた誘電特性を有する。
【0133】
c.誘電正接(Dissipation Factor, Df)
銅箔基板の10GHzの周波数における誘電正接(Df)を誘電率分析装置(モデル:E4991A;アジレント・テクノロジー社製)で測定した。誘電正接が比較的小さい時、変性ビスマレイミド樹脂は、優れた誘電特性を有する。
【0134】
d.溶解性
得られた変性ビスマレイミド樹脂/市販されているビスマレイミド樹脂を溶剤に添加した。溶剤は、100gのジメチルホルムアミド(dimethylformamide, DMF)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran, THF)である。溶剤がビスマレイミド樹脂を溶解できなくなった時、既に溶解されたビスマレイミド樹脂の重量が、溶解性である。溶剤がより多くの樹脂を溶解した時、変性ビスマレイミド樹脂は、優れた溶解性を有する。
【0135】
e.色
得られた変性ビスマレイミド樹脂/市販されているビスマレイミド樹脂の色を裸眼で直接観察した。
【0136】
<評価結果>
表2からわかるように、変性ビスマレイミド樹脂が、主鎖がフッ素を含む構造を有する時(実施例1~16)、変性ビスマレイミド樹脂は、優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を同時に有する。
【0137】
また、主鎖がフッ素を含まない変性ビスマレイミド樹脂(比較例1)と比較して、主鎖がフッ素を含む変性ビスマレイミド樹脂(実施例1~16)は、より優れた耐熱性、誘電特性、および/または溶解性を有する。
【0138】
また、式(1)、式(2)、式(5)、式(7)~式(11)、または式(14)~式(16)で表されるフッ素系ジアミン化合物と無水マレイン酸を反応させることによって形成される変性ビスマレイミド樹脂(実施例1、2、5、7~11、14~16)と比較して、式(3)、式(4)、式(6)、式(12)、または式(13)で表されるフッ素系ジアミン化合物と無水マレイン酸を反応させることによって形成される変性ビスマレイミド樹脂(実施例3、4、6、12、13)は、より優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を同時に有する。
【0139】
以上のように、本発明の変性ビスマレイミド樹脂は、主鎖がフッ素を含む構造を有するため、優れた耐熱性、誘電特性、および溶解性を有する。そのため、変性ビスマレイミド樹脂は、例えば、プリント基板に対して優れた応用性を有する。
【0140】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の変性ビスマレイミド樹脂は、高周波プリント基板および他の電子基板の絶縁材料に応用することができる。