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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】再循環流体反応器を有する試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240903BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023049797
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2019535972の分割
【原出願日】2017-09-12
(65)【公開番号】P2023085389
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】1615561.6
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519085408
【氏名又は名称】カタゲン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】オショネシー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ストーカー,ローズ マリー
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230486(JP,A)
【文献】特開2015-210240(JP,A)
【文献】特開2016-114474(JP,A)
【文献】特開2016-121678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00、3/02、3/04-3/38、9/00-11/00
F02D 13/00-28/00
G01M 13/00-15/14、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器及び制御システムを含む、試験システムであって、
前記反応器は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に前記流体回路内で流れる流体に前記少なくとも1つの品目を曝露するために前記流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において前記流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって前記流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン
を含み、
前記制御システムは、前記反応器の動作を制御し、前記制御情報を前記制御ゾーンに提供するために前記制御ゾーンと通信をし、
前記制御システムは以下の動作:
前記少なくとも1つのパラメータに対する少なくとも1つの試験値を指定する入力データを受信すること;
前記入力データおよび前記反応器の数理モデルを使用して、前記少なくとも1つの流体パラメータについて、前記流体の挙動を予測することであって、前記制御システムは少なくとも1つの人工ニューラルネットワーク(ANN)を用いて前記反応器を数学的にモデル化するように、または、モデル予測制御(MPC)を用いて前記反応器を制御するために前記数理モデルを使用するように構成される、前記流体の挙動を予測すること;
前記予測された流体の挙動に基づいて前記制御情報を計算すること;および
前記制御ゾーンのうちの少なくとも1つに前記制御情報を通信すること
を実行するよう構成され
前記制御システムは、前記流体回路における前記流体の化学組成および/または混合組成を操作することを、前記制御ゾーンのうちの1つまたは複数の制御ゾーンに実行させるため制御情報を提供するよう構成され、前記制御ゾーンのうちの少なくとも1つの制御ゾーンは流体注入器の形状の少なくとも1つの制御装置を有し、前記制御ゾーンのうちの少なくとも1つの制御ゾーンは、前記少なくとも1つの流体注入器が前記流体回路に1つまたは複数の流体を注入することにより、前記流体回路における前記流体の前記化学組成および/または前記混合組成を操作するため、前記制御情報に応じて動作可能である、
試験システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記流体の化学組成を示す流体組成パラメータ、前記流体の温度を示す温度パラメータ、および前記流体の流速を示す流速パラメータを含み、前記入力データおよび前記数理モデルを使用して、前記制御システムは、前記流体組成パラメータ、前記温度パラメータ、および前記流速パラメータのうちの2つ以上のパラメータに対する前記少なくとも1つの試験値の1つまたは複数の組み合わせから生じる前記流体の組成、温度、および流速のうちの任意の1つまたは複数に対する1つまたは複数の効果を計算するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御システムは、さらなる制御情報を前記予測された流体挙動に基づいて計算するために、および、前記さらなる制御情報を前記制御ゾーンのうちの少なくとも1つの制御ゾーンに通信するために、前記制御情報および前記反応器の前記数理モデルを使用して、前記少なくとも1つの流体パラメータに関して、前記流体回路における1つまたは複数の位置における前記流体の挙動を予測するよう構成されている、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御ゾーンのうちの少なくともいくつかの制御ゾーンは、前記それぞれの位置における前記流体の1つまたは複数の特性を測定するための少なくとも1つのセンサと、前記制御情報にしたがって前記流体の1つまたは複数の特性を制御するための少なくとも1つの制御装置と、を含み、前記制御システムは、前記制御情報を前記制御ゾーンに提供するよう、および、前記それぞれの少なくとも1つのセンサにより測定された前記流体の1つまたは複数の特性に対するそれぞれの実際値を示すフィードバック情報を前記制御ゾーンから受信するよう構成され、前記制御システムは、前記制御ゾーンのうちの1つまたは複数の制御ゾーンからの前記フィードバック情報に応答して、前記制御ゾーンのうちの少なくとも1つの制御ゾーンに対する少なくとも1つの新規設定値を計算し、前記制御ゾーンのうちの前記少なくとも1つの制御ゾーンに前記少なくとも1つの新規設定値を通信する、請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御システムは前記試験ゾーンにおいて所望の試験環境を作るために前記制御情報を計算するよう構成され、前記試験環境は前記少なくとも1つの流体パラメータにより定義される、請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御情報は1つまたは複数の設定値を含み、各設定値は、前記少なくとも1つの流体パラメータのうちのそれぞれ1つの流体パラメータに対する所望値を示し、
各制御ゾーンは、前記設定値を受信することに応答して、前記それぞれの設定値が達成されるよう前記流体の1つまたは複数のパラメータを操作するために、少なくとも1つのそれぞれの制御装置を作動させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
ポンプ圧送手段が前記流体回路に組み込まれ、前記ポンプ圧送手段は、前記流体を前記流体回路の周りで循環させるよう動作可能であり、
前記制御システムは、前記ポンプ圧送手段のそれぞれの動作特性に対する所望値を示す少なくとも1つの設定値を指定する制御情報を前記ポンプ圧送手段に提供するよう構成され、前記ポンプ圧送手段は前記制御情報に応答して、前記少なくとも1つの設定値にしたがって動作するかまたは動作しようとする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
加熱手段は、前記流体回路に組み込まれ、前記加熱手段は前記流体回路における前記流体を加熱するよう動作可能であり、
前記制御システムは、前記加熱手段のそれぞれの動作特性に対する所望値を示す少なくとも1つの設定値を指定する制御情報を前記加熱手段に提供するよう構成され、前記加熱手段は前記制御情報に応答して、前記少なくとも1つの設定値にしたがって動作するかまたは動作しようとする、請求項1~7のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
各制御ゾーンは、以下のシステムパラメータ、すなわち流体流速、前記流体回路への供給流体の送達、流体組成、流体温度、流体流および混合物の分布のうちの任意の1つまたは複数を監視および/または制御するよう動作可能であり、
前記制御システムは、(i)ポンプ圧送手段の前記動作を制御すること、(ii)複数の流体槽から、および/または、前記流体回路の複数の部分から、および/または複数の流体回路から、流体流を組み合わせること、および/または、(iii)1つまたは複数のバルブを制御すること、のうちの任意の1つまたは複数により流体流速を制御するように構成され、
前記制御システムは、(i)加熱手段の前記動作を制御すること、(ii)発熱反応または吸熱反応を促進するために前記流体組成を制御すること、のうちの任意の1つまたは複数により流体温度を制御するように構成される、請求項1~請求項8のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御システムは、1つまたは複数の位置において、前記1つまたは複数の位置における、および/または、前記流体回路における1つまたは複数の他の位置における、前記流体回路内の前記流体の1つまたは複数の検出された特性に応じて、前記流体回路に1つまたは複数の選択された流体を注入することを、前記制御ゾーンのうちの1つまたは複数の制御ゾーンに実行させるよう構成され、
前記制御システムは、前記制御システムにより計算され、かつ、注入されるべき前記流体または各流体の量と、注入されるべき前記流体または各流体の注入タイミングと、を指定する、それぞれの送達プロファイルにしたがって、前記1つまたは複数の選択された流体を注入するよう構成され、
注入されるべき前記1つまたは複数の流体は、および前記選択された送達プロファイルも、注入位置において、および/または、前記流体回路内の1つまたは複数の他の位置において、所望の化学反応を生じさせるために、前記制御システムにより選択され、および/または、前記流体回路内の1つまたは複数の他の位置において、流体組成に所望の変化を生じさせるために、前記制御システムにより選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体回路は流体流出口を含み、前記反応器は、前記流体流出口を開放または閉止するよう動作可能である排出制御装置を有する排出制御ゾーンを含み、
前記制御システムは、前記流体回路からの流体の排出を制御するために前記制御情報を用いて前記排出制御装置を動作させるよう構成される、請求項1~請求項10のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記流体回路を流れる前記流体は、少なくとも1つのバルク流体を含み、前記システムは、前記制御システムの制御下で前記流体回路に前記少なくとも1つのバルク流体を導入するための少なくとも1つの流体流入装置により前記少なくとも1つのバルク流体の供給源に接続され、
前記制御システムは、前記流体回路内の前記流体を希釈するために前記少なくとも1つのバルク流体を前記流体回路に導入することを制御することにより、前記流体回路内の前記流体の組成、温度、または流速のうちの任意の1つまたは複数を調整するよう構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記流体回路は前記流体回路内の前記流体を加熱するよう動作可能である加熱手段を含み、前記流体回路は、前記加熱手段の周りに流体を迂回させるためのバイパス回路部分と、前記バイパス回路部分ならびに前記加熱手段を通って流れる前記流体回路内の前記流体のそれぞれの割合を制御するよう動作可能である少なくとも1つのバルブと、を含み、前記制御システムは、前記流体回路内の前記流体の温度を制御するために、前記少なくとも1つのバルブの動作を制御するよう構成される、請求項11または請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製品試験システムに関する。本発明は特に、変動する環境状態における、および/または、一定時間にわたる、製品の性能を試験するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業者が、自社製品の性能を、例えば、特定の環境状態において自社製品がいかに経年変化または劣化するかを評価するために、変動する環境条件において、および/または、一定時間にわたり、試験することは一般的である。係る製品の特質は、広範な多様性を有し、電気的または電子的な構成要素、機械的構成要素、潤滑剤、燃料、塗料、被覆、および化学的化合物を含む。通常、専用の試験用機材は、特定の製品に適合するよう、および、特定の試験を実施するよう、設計される。
【0003】
従来の試験用機材は、エネルギー的に非効率的であり、融通がきかない傾向がある。したがって試験過程は、高価であり、範囲が限定され、低速となる傾向がある。したがって、改善された試験用機材を提供することが望まれるであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に該回路内で流れる流体に該少なくとも1つの品目を曝露するために該流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において該流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって該流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン、
を含む反応器と、
該反応器の動作を制御するための制御システムであって、該制御情報を該制御ゾーンに提供するために該制御ゾーンと通信する制御システムであって、
該少なくとも1つのパラメータに対する少なくとも1つの試験値を指定する入力データを受信すること、
該入力データおよび該反応器の数理モデルを使用して、該少なくとも1つの流体パラメータについて、該流体の挙動を予測すること、
該予測された流体挙動に基づいて該制御情報を計算すること、および、
該制御ゾーンのうちの少なくとも1つの制御ゾーンに該制御情報を通信すること、を実行するよう構成されている、
制御システムと、
を含む試験システムを提供する。
【0005】
数理モデルは、例えばモデル予測制御とともに使用するにあたり好適なモデルまたは人工ニューラルネットワークとともに使用するにあたり好適なモデルを含む任意の好適な形態を取り得る。
【0006】
本発明の第2の態様は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に該回路内で流れる流体に該少なくとも1つの品目を曝露するために該流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において該流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって該流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン、
を含む反応器と、
反応器の動作を制御するための制御システムであって、該制御情報を該制御ゾーンに提供するために該制御ゾーンと通信する制御システムと、
を含み、
該流体回路は流体流出口を含み、反応器は、該流体流出口を開放または閉止するよう動作可能である排出制御装置を有する排出制御ゾーンを含み、
該制御システムは、該流体回路からの流体の排出を制御するために該制御情報を用いて該排出制御装置を動作させるよう構成されている、
試験システムを提供する。
【0007】
本発明の第3の態様は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に該回路内で流れる流体に該少なくとも1つの品目を曝露するために該流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において該流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって該流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン、
を含む反応器と、
反応器の動作を制御するための制御システムであって、該制御情報を該制御ゾーンに提供するために該制御ゾーンと通信する制御システムと、
を含み、
該流体は、少なくとも1つのバルク流体を含む基礎流体を含み、該システムは、該制御システムの制御下で該流体回路に該少なくとも1つのバルク流体を導入するための少なくとも1つの流体流入装置により該少なくとも1つのバルク流体の供給源に接続され、
該少なくとも1つのバルク流体は、空気(通常は体積でおよそ10%~100%の範囲内)を含む、
試験システムを提供する。
【0008】
本発明の第4の態様は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に該回路内で流れる流体に該少なくとも1つの品目を曝露するために該流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において該流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって該流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン、
を含む反応器と、
反応器の動作を制御するための制御システムであって、該制御情報を該制御ゾーンに提供するために該制御ゾーンと通信する制御システムと、
を含み、
好適には該回路における該流体に対する基礎状態を確立するために該流体反応器における流体を希釈するために該流体反応器に該少なくとも1つのバルク気体の導入を制御することにより該流体回路における該流体の組成、温度、または流速のうちの任意の1つまたは複数を調整するよう構成されている、
試験システムを提供する。
【0009】
本発明の第5の態様は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に該回路内で流れる流体に該少なくとも1つの品目を曝露するために該流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において該流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって該流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン、
を含む反応器と、
反応器の動作を制御するための制御システムであって、該制御情報を該制御ゾーンに提供するために該制御ゾーンと通信する制御システムと、
を含み、
該流体回路は、該流体回路における該流体を加熱するよう動作可能である加熱手段を含み、
該流体回路は、該加熱手段の周りに流体を迂回させるためのバイパス回路部分を、および、バイパス回路部分および加熱手段を通って流れる該流体回路における該流体のそれぞれの割合を制御するよう動作可能である少なくとも1つのバルブを、含み、該制御システムは、該流体回路における流体の温度を制御するために、該少なくとも1つのバルブの動作を制御するよう構成されている、
試験システムを提供する。
【0010】
本発明の第6の態様は、
流体回路、
試験下の少なくとも1つの品目のための試験ゾーンであって、使用時に該回路内で流れる流体に該少なくとも1つの品目を曝露するために該流体回路に含まれる試験ゾーン、
それぞれの異なる位置において該流体回路に含まれる複数の制御ゾーンであって、各制御ゾーンは、制御情報にしたがって該流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つの制御装置を含む、制御ゾーン、
を含む反応器と、
反応器の動作を制御するための制御システムであって、該制御情報を該制御ゾーンに提供するために該制御ゾーンと通信する制御システムと、
を含み、
該流体回路は、該試験ゾーンの周りに流体を迂回させるためのバイパス回路部分を、および、試験ゾーンバイパス回路部分および試験ゾーンを通って流れる該流体回路における該流体のそれぞれの割合を制御するよう動作可能である少なくとも1つのバルブを、含み、該制御システムは、該試験ゾーンにおける流体の流速を制御するために、該少なくとも1つのバルブの動作を制御するよう構成されている、
試験システムを提供する。
【0011】
本発明の第7の態様は、流体反応器における流体の少なくとも1つのパラメータを制御する方法であって、該少なくとも1つのパラメータに対する少なくとも1つの試験値を指定する入力データを制御システムにおいて受信することと、該入力データおよび反応器の数理モデルを使用して、該少なくとも1つの流体パラメータについて、該流体の挙動を該制御システムにより予測することと、予測された流体挙動に基づいて制御情報を該制御システムにおいて計算することと、少なくとも1つの流体制御装置に該制御情報を通信することと、を含む方法を提供する。
【0012】
本発明の第8の態様は、流体反応器における流体の少なくとも1つのパラメータを制御する方法であって、該流体反応器における該流体の再循環の量を調整するために、および/または、計算された量の該流体を該流体反応器から除去するために、該流体反応器からの流体の排出を制御することを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の第9の態様は、流体反応器における流体の少なくとも1つのパラメータを制御する方法であって、少なくとも1つのバルク流体を該流体反応器に導入することを含み、該少なくとも1つのバルク流体は空気(通常は、体積でおよそ10%~100%の範囲内)を含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の第10の態様は、流体反応器における流体の少なくとも1つのパラメータを制御する方法であって、好適には、該流体反応器における流体を希釈するために該流体反応器に該少なくとも1つのバルク気体の導入を制御することにより、該反応器における該流体に対する基礎状態を確立するために、該流体反応器における該流体の組成、温度、または流速のうちの任意の1つまたは複数を調整することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明の第11の態様は、流体反応器における流体の少なくとも1つのパラメータを制御する方法であって、該反応器における流体の温度を制御するために加熱装置の周りに該流体の少なくとも一部を迂回させることを含む方法を提供する。
【0016】
本発明の第12の態様は、流体反応器における流体の少なくとも1つのパラメータを制御する方法であって、該試験ゾーンにおける流体の流速を制御するために試験ゾーンの周りに該流体の少なくとも一部を迂回させることを含む方法を提供する。
【0017】
好適な特徴は本明細書に添付の従属請求項に記載される。
【0018】
システムの好適な実施形態は、良好なエネルギー効率を有し、かつ、試験下の製品または材料が配置される1つまたは複数の反応(試験)ゾーンにおける化学組成、流れ、および温度を高精度で制御することを可能にする、再循環流体反応器を含む。数理モデルに基づく制御が1つまたは複数の制御ゾーンにおいて実装されると有利である。通常、反応器の動作は、1つまたは複数の気体および/または液体を、既知の一定体積の密閉系に送達することを含む。複数の測定値供給源、予測モデル、および較正された気体/液体送達システムの三角測量は、動的な環境における確度を保証する。
【0019】
好適な実施形態では、再循環気体または液体(流体)反応器は、少なくとも1つの(通常は2つ以上の)一体化された炉、格納槽、および送風機を有する再循環気体システム/回路を含む。熱は一体化された熱交換器を通して再利用され、システムの全域で格納され得る。
【0020】
本発明の好適な実施形態は、流体回路における既知の時間および場所における既知の濃度および既知の温度を有する既知の量の気体(単数または複数)の高精度に制御された送達を提供する。このことは、非常に高い既知のレベルの反復性において、確度および安定性を可能にし、性能に関する評価および比較を、および、広範な動作状態下にある広範なセンサおよび測定システムに対する測定システム能力の判定を、可能にする。
【0021】
好適な実施形態は、流速、温度、化学組成、分布、および攪拌を完全に再現する能力を有する。組成物は適宜、成分流体/気体、および/またはそれらの濃度を意味し得、適宜、化学組成物および/または混合組成物を含み得る。
【0022】
本発明のさらなる有利な態様は、特定の実施形態に関する以下の説明を検討し、添付の図面を参照することにより当業者に明らかとなるであろう。
【0023】
本発明の実施形態について、ここで添付の図面を参照して例示的に説明する。なおこれらの図面では、同様の番号は同様の部分を指すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の1つの態様を具体化する試験システムの概略図である。
図2図1の試験システムの部分である制御ゾーンの概略図である。
図3】それぞれが図1の試験システムの部分である、システム制御器と組み合わされた質量流量制御器の例示的な動作を示すフローチャートである。
図4】システム制御器により具体化される代表的な流れ制御動作を示す図である。
図5】試験システムの代替的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここでこれらの図面のうちの図1および図2を参照すると、本発明の1つの態様を具体化する、全体が参照番号10で示される試験システムが図示されている。試験システム10は、反応器12と、反応器12の動作を制御するための制御システム14と、を含む。反応器12は、化学反応を発生させ使用中の化学反応を制御することを意図されたものであり、化学反応器として説明され得る。反応器12は、1つまたは複数の試験下の製品(PUT:product under test。図示せず)を1つまたは複数の流体に曝露することを制御し、したがって流体反応器としても説明され得る。液体も使われ得るかまたは液体が代替的に使用され得るが、流体は通常、1つまたは複数の気体を含み、その場合、反応器12は、気体反応器として説明され得る。反応器12は1つまたは複数の流体回路を含み、その流体回路により流体が反応器12内で再循環され得、そのため、反応器12は再循環流体反応器として説明され得る。後により詳細に説明されるように、反応器12は、特に試験の実施中に、反応器12内の流体の全部または一部が反応器12から排出または除去されることが可能となるよう、1つまたは複数の排出口に接続された1つまたは複数のバルブを含み得る。したがって試験中、0%~100%の範囲内のいずれの流体も、排出が実施される場合には、いずれの排出が実施されるかに応じて、再循環され得る。試験中、関連するバルブを制御することにより、再循環される流体の量は、試験に適合するよう、変動され得る。
【0026】
システム10の好適な実施形態は、電気的構成部品ならびに物品、電子的構成要素ならびに物品、機械的構成要素ならびに物品、液体、および化学物質(液体または固体の形状を有する)を含むがこれらに限定されない任意の所望のPUTとの使用に対して好適である。特定的な製品の例としては、集積回路、ソリッドステート・ドライブ、自動車部品ならびに組立体、触媒、潤滑剤、燃料、塗料ならびに被覆材、金属、合金、材料、および複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
反応器12は1つまたは複数の流体回路16を含む。使用時に、この流体回路16の周りで流体が循環、および好適には再循環される。代替的な実施形態では、より少数またはより多数の流体回路が存在し得るが、この例示的な実施形態では、この反応器は、2つの流体回路16A、16Bを有する。流体回路16は、通常はパイプ(単数または複数)、チューブ(単数または複数)、筐体、ダクト(単数または複数)および/または他の流体導管のうちの任意の1つまたは複数を含む、任意の好都合な構成であり得る。これらはそれぞれ、任意の好都合な材料(例えば金属またはプラスチック)から形成され得、所望により断熱化され得る。
【0028】
各流体回路16は、少なくとも1つのそれぞれの試験ゾーン18を含む。使用時には、各試験ゾーンに1つまたは複数のPUTが配置される。試験ゾーン18は、任意の好適な形状を取り得る(例えば、それぞれの回路16にチャンバが組み込まれてもよく、または回路16を形成する導管の一部であってもよい)。試験ゾーン18は、使用時に流体が試験ゾーン18を通過し、それにより循環する流体にPUTが曝露されるよう、それぞれの流体回路16と流体連通する。所望により試験ゾーン18は、1つまたは複数の機械的力(例えば、振動、発振、応力、歪み、張力、ねじれ、圧縮、負荷、圧力、および/または摩擦)をPUTに作用させるための1つまたは複数の機械的装置を、および/または、電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)を、含み得る。任意の従来の機械的装置(単数または複数)(図示しないが、図1では「攪拌」として表されている)は、この目的のために使用され得る(例えば、振動または発振床、バネ(単数または複数)、クランプ(単数または複数)、アクチュエータ(単数または複数)、磁石、電磁石、および/または電場発生器)。加えて、PUTの環境状態も制御され得る。このシステムは、周囲環境、周囲湿度を加熱または冷却するための、および/または、周囲空気流および/または周囲空気圧を調整するための、任意の従来の装置のうちの任意の1つまたは複数を含む、この目的のための1つまたは複数の装置を含み得る。このことは、試験ゾーンの周囲において現実世界の環境状態をシミュレートすることを可能にする。
【0029】
反応器12は、既知の濃度を有する様々な量の気体(または液体)混合物を格納するための、および通常は(例えば、回路における流体と比較してより高い温度を有する流体を格納することにより)エネルギーも格納するための、1つまたは複数の流体槽24を含み得る。通常の実施形態では、各流体回路16A、16Bは、それぞれの槽24A、24Bを含む。代替的な実施形態(図示しない)では、これらの槽は省略可能である。
【0030】
反応器12は、流体を各回路16の周りに流れさせるためのポンプ圧送手段20を含む。このポンプ圧送手段により、1つまたは複数のそれぞれのバルブ15の設定に応じて、流体は、各回路16A、16Bの周りを流れさせられてもよく、または、各回路16A、16Bの全部または一部を含む組み合わされた流体回路の周りを流れさせられてもよい。各回路16A、16Bは、それ自身のポンプ圧送手段20A、20Bを有し得る。なおこれらのポンプ圧送手段は、それぞれ回路16A、16Bに組み込まれてもよく、または、任意の従来の手法でそれぞれの回路16に対して別様に動作可能に連結されてもよい。代替的に、一般的なポンプ圧送手段が2つ以上の流体回路に対して提供され得る。流体が気体である通常の実施形態では、ポンプ圧送手段は1つまたは複数のファンを含み得る。この例示的な実施形態では、それぞれのファン20A、20Bが各回路16A、16Bに提供されている。ファン20は、例えば、それぞれの回路16に直列に組み込まれ得る遠心ファンまたは送風機であり得る。より全般的には、このポンプ圧送手段は、軸流ファン、プロペラファン、遠心(ラジアル)ポンプ、混流ファンならびに横流ファン、遠心ポンプならびに容積移送式ポンプ、圧縮器、および/またはタービンを含む、任意の他の適切なポンプ圧送装置を含み得る。ポンプ圧送手段は、流れを、特に、回路16A、16Bまたは任意の実用可能な組み合わせ回路の周りの流体の流速を制御するよう制御可能である。
【0031】
この例示的な実施形態では、バルブ15A、15B、15Cは、流体が同時に両方の流体回路16A、16Bの周りでポンプ圧送され得る(すなわち、バルブ15A、15B、および15Cが開放された状態の場合)よう、または回路16A、16Bのうちのいずれか一方のみの周りでポンプ圧送され得る(すなわち、バルブ15A、15Bの一方が開放され、他方が閉止された状態の場合)よう、構成可能である。1つまたは複数の他のバルブ(図示せず)が、主要流体回路16A、16Bの全部または一部を含む1つまたは複数の複合流体回路を形成するために必要に応じて提供され得る。これらのバルブ15のうちの任意の1つまたは複数のバルブは、流体流を制御する手段として、バルブを通る流体流制限レベルを制御するよう動作可能であり得る。追加的なバルブ15Dが提供され得る。このバルブ15Dは、開放状態では、流体圧力が槽24A、24Bから排出されることを可能にする。1つまたは複数の関連するバルブを制御することにより、圧力が解放されることが要求されるか、または、低圧点が要求される、回路(単数または複数)の周りの任意の位置において、圧力は排出され得る。
【0032】
反応器12は各回路16における流体の温度を制御するための加熱手段22を含む。通常の実施形態では、加熱手段は、1つまたは複数の炉または他の加熱装置を含む。各回路16は1つまたは複数のそれぞれの加熱装置を有し得る。なお係る加熱装置は、それぞれの回路16に組み込まれてもよく、または、任意の従来の手法でそれぞれの回路16に対して別様に動作可能に連結されてもよい。代替的に、1つまたは複数の一般的な加熱装置が2つ以上の流体回路に対して提供され得る。この例示的な実施形態では、それぞれの炉22A、22Bが各回路16A、16Bに提供されている。炉22は、例えば、化学炉もしくはガス炉(例えばプロパンまたは天然ガス炉)であってもよく、電気炉(例えば、赤外線炉、電気チューブ炉、または平床炉)であってもよく、または、電気加熱器(単数または複数)、赤外線加熱器(単数または複数)、ガス加熱器(単数または複数)、および/または、加熱ランプ(単数または複数。例えばクォーツ加熱ランプまたはタングステン加熱ランプ)を含む任意の他の好都合な加熱装置であってもよい。加熱手段22は、それぞれの回路16における流体の温度を制御および/または調整し、それにより、試験ゾーン18における基準温度を制御および/または調整するよう、制御可能である。
【0033】
好適には、ポンプ圧送手段20および/または加熱手段22は、以下により詳細に説明するように比較的高精度の制御を提供し、それにより、出力が変調されること、および、所望の設定値が達成されることが支援されることが可能となるよう、制御されたインバータである。
【0034】
反応器12は、特に反応器12において所望の流体温度を高いエネルギー効率で維持することに関して反応器12の効率を改善するために、1つまたは複数の熱交換器26を含み得る。係る熱交換器または各熱交換器は、例えば2つ以上の流体担持導管が比較的近接し合う位置において、係る流体回路16A、16Bまたは各流体回路16A、16Bに組み込まれ得る。熱交換器は適宜、気体対気体型、気体対液体型、または液体対液体型であり得る。
【0035】
反応器12は少なくとも1つの(好適には複数の)制御ゾーン28を含む。好適には各流体回路16A、16Bは少なくとも1つの制御ゾーン28を含む。各制御ゾーン28は、それぞれの位置において、1つまたは複数の流体回路16A、16Bに組み込まれ得る。
【0036】
これらの制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数は、反応器の動作に関する少なくとも1つの側面を測定するために、装備され得る。通常、各制御ゾーン28は、各制御ゾーン28が組み込まれたそれぞれの流体回路16(単数または複数)におけるそれぞれの位置において、流体の1つまたは複数の特性を測定するよう構成され得る。後でより詳細に説明するように、各制御ゾーン28は、以下の流体特性(流速、温度、化学組成、圧力)のうちの任意の1つまたは複数を測定するよう構成され得る。
【0037】
これらの制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数の制御ゾーン28は、それぞれの流体回路16(単数または複数)における流体の1つまたは複数の特性(例えば、流体流速、温度、化学組成、および/または圧力)を制御し、および/または、例えば排出口に、もしくは複数の回路分岐のうちの選択された1つの回路分岐に、流体を迂回させるよう構成され得る。この目的のために、各制御ゾーン28は以下でより詳細に説明するように1つまたは複数の制御装置(例えば1つまたは複数のバルブ15、流体注入器30、または流体混合装置)を含み得る。それぞれの制御装置(単数または複数)のうちの任意の1つまたは複数の制御装置は、それぞれの制御ゾーン28に配置され得る。その場合、制御ゾーン28は、当該の制御ゾーン28の直接的な近傍における関連する流体特性を制御する。代替的に、それぞれの制御装置(単数または複数)のうちの任意の1つまたは複数の制御装置は、それぞれの制御ゾーン28から遠隔に配置され得る。その場合、制御ゾーン28は、当該の制御ゾーン28から遠隔にある流体回路(単数または複数)における1つまたは複数の位置における関連する流体特性を制御する。係る場合では、制御ゾーン28は、制御ゾーン28が制御装置の動作を制御するという点で、制御装置を含むと言われ得る。
【0038】
好適な実施形態では、制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数の制御ゾーン28は、制御ゾーン28が組み込まれているそれぞれの流体回路 16(単数または複数)に対する、1つまたは複数の流体(通常は気体)の導入を監視および制御するよう構成され得る。この目的のために、係る制御ゾーン28のそれぞれは1つまたは複数の流体注入器30を制御する。各流体注入器30は、例えば、1つまたは複数の流体供給源32(例えば、キャニスター、圧縮器、および/または、1つまたは複数の槽24(通常は加圧流体供給源))に接続された1つまたは複数のバルブ29および導管31(単数または複数)を含む任意の従来の形状を取り得る。各流体供給源32は、それぞれの制御ゾーンにより実施される用途および作業に応じて、単一の流体を、または2つ以上の流体の混合を、含み得る。各流体注入器30は、1つまたは複数の流体流入口(図示せず)を介して、それぞれの流体回路(単数または複数)に、1つまたは複数の流体を選択可能に注入するよう動作可能である。流体流入口(単数または複数)は、代替的または追加的に流体回路(単数または複数)の他の位置に配置され得るが、それぞれの制御ゾーン28に配置されていると好都合である。各流体注入器30は、代替的または追加的に流体回路(単数または複数)の他の位置に配置され得るが、それぞれの制御ゾーン28に配置されていると好都合である。所望により、1つまたは複数の流体注入器(図示せず)がこれらの槽(単数または複数)に流体(単数または複数)を注入するために提供され得る。
【0039】
通常の実施形態では、回路(単数または複数)において循環する流体は、以下の流体、すなわち、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、プロパン、酸化プロピレン、窒素酸化物(NOx)、またはメタンのうちの任意の1つまたは複数を含み得る。制御ゾーンまたは他の流体注入地点は、試験仕様により要求されるこれらの流体のうちの任意の1つまたは複数を導入するよう(必要に応じて槽への導入を含む)構成され得る。通常、循環する流体は、組み合わされた循環流体ストリームが作られるよう試験仕様を具体化するために必要に応じてこれらの制御ゾーンのうちの1つまたは複数の制御ゾーンにおいて1つまたは複数の他の流体が加えられる基礎流体を、含む。基礎流体は通常、1つまたは複数の酸素含有気体(例えば空気、O2、NOx、またはCO2)、および/または窒素、および/または水蒸気を含む。追加される流体は通常、1つまたは複数の炭化水素(通常は純粋な炭化水素)、気体(例えばプロパン、プロピレン、またはメタン)を含む。流体の組成およびその成分部分の濃度は、以下でより詳細に説明されるように、実施される試験に応じて、および/または試験の過程の間に、変動し得る。
【0040】
例えば、通常の試験は以下を含み得る。試験の開始時にシステムから空気を除去するために、全部の空気(または他の流体)が除去されるまで、90%のN2、および10%のCO2が反応器12に注入され得る。試験温度に達したら、必要に応じて空気およびプロパンまたはプロピレンまたはメタンまたはこれらの任意の組み合わせが(この事例では)制御ゾーン1および2に注入される。同時に、空気およびプロパンが制御ゾーン3に注入される。通常は0%~4%CO、500~3000ppmHC(炭化水素)、0%~21%O2、10~15%CO2、5~10%水蒸気、残余の窒素を含む完全な流入気体混合物が存在する。通常は安定状態の濃度が存在し得るが、実施される試験の仕様に応じて、それぞれが個別的に調整されてもよく、示された範囲が超過されてもよく、他の気体種類が加えられてもよい。
【0041】
所望により、これらの制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数の制御ゾーン28は、流体回路16(単数または複数)のうちの1つまたは複数における流体流均衡を制御するよう構成され得る。流体均衡の制御は通常、流れ測定装置(例えばベンチュリノズルまたはオリフィス板など)による各回路上での流れ測定を含む。リアルタイムの圧力測定値を示す信号が、質量流速計算が実施される主制御に送られる。1つの試験試料18が各回路上に示され得る。各試料は、異なる逆圧を有する異なる幾何学的形状を有し得、それにより流動力学が変動され得る。回路間で流れにおいて差異が存在することを主制御器が計算すると、主制御器は以下の2つの手段、すなわち、1.ファンインバータの使用によるファン20aおよび/または20bのrpmの調整、および/または、2.回転フローバルブの一方または両方の動作の調整(例えば回転フローバルブの一方または両方の変調による)して、一方または両方の回路において逆圧を増加させ、それにより試験試料の全体にわたり等しい質量流を達成すること、により、補償を実施し得る。
【0042】
関連する流体特性を監視するために、および/または、それぞれの流体注入器(単数または複数)による流体の注入を監視するために、各制御ゾーン28は1つまたは複数のセンサを含み得る。係るセンサは、図2では測定装置34(単数または複数)と総称される。例えば係るセンサは、熱電対、温度センサ、流体流測定装置(例えば、ベンチュリ、インペラ、オリフィス板、または他の既知の流れ測定装置)、質量流量制御器(MFC)、圧力トランスデューサ、lambda/02/NOxCANセンサ、圧力トランスデューサ、ガス分析器、流体分析器、スペクトロメータ(例えばFTIR分析器)、および/または放射分析器のうちの任意の1つまたは複数の事例を含み得る。前述のセンサのうちのいずれかのセンサがそれぞれの制御ゾーン28に配置されると好都合であり得る。各制御ゾーン28は、代替的に、または追加的に、1つまたは複数の遠隔配置されたセンサ(例えば1つまたは複数の放射分析器、スペクトロメータ、または他の流体分析器)と協働可能であり得る。いずれにせよ、係る制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28は、それぞれのセンサ(単数または複数)により検出された任意の測定値の分析を実施し得る。以下でより詳細に説明されるように、制御ゾーン28による測定値の分析により、制御システムにより使用されるための1つまたは複数のフィードバック信号が生成される。代替的にまたは追加的に、1つまたは複数のセンサ出力が分析なしに制御システムに提供され得る。
【0043】
係る制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数の制御ゾーン28は、1つまたは複数のバルブ15(単数または複数)を含み得る。係るバルブ15(単数または複数)は、それぞれの流体回路16(単数または複数)における流体の流れ(例えば制御ゾーン28自身に対する流入(1つまたは複数の流入口を介する)、通過(1つまたは複数の導管を介する)、および/または流出(1つまたは複数の流出口を介する))を制御(制限または選択的な阻止を含む)する。
【0044】
各制御ゾーン28の構成が同一である必要がなく、それぞれの制御ゾーン28がシステム10のいずれの特性(単数または複数)を制御するよう意図されているか、または、制御がいかにして実施されるか、に応じて変動し得ることに注意すべきである。
【0045】
遠隔分析器(単数または複数)および/または制御システムを含むシステム10の他の構成要素と通信するために、各制御ゾーン28は、必要に応じて1つまたは複数の有線および/または無線通信装置を含む通信システム38を含み得る。
制御ゾーン28は通常、その中にその構成要素15、29、31、32、38のうちの少なくとも一部が好都合に収容されるエンクロージャ40を含む。エンクロージャ40は例えば、それぞれの回路16(単数または複数)に組み込まれたチャンバを、もしくは、それぞれの回路16(単数または複数)のそれぞれの導管が接続されるかもしくは通過するチャンバを、含んでもよく、または、それぞれの回路16を形成する1つまたは複数の導管の一部分を含んでもよい。
【0046】
試験システム10は、制御ゾーン28(適宜、センサ34、バルブ15、29の動作を含む)、ファン20、炉22、機械的攪拌/力装置、および/または電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)を含むシステム構成要素の動作を制御するための制御システム14を含む。制御システム14は通常、1つまたは複数の好適にプログラムまたは構成されたハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェア制御器(例えば1つまたは複数の好適にプログラムまたは構成されたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または他のプロセッサ(例えばASIC、DSP、またはFPGAなどのICプロセッサ)を含む)を含む(図示せず)。制御システム14は好適には、リアルタイムで再構成可能であり、したがって制御システム14の少なくとも1部分はFPGAにより実装されると好都合であり得る。制御システム14は好都合なように、システム10の全体に分散されてもよく、または中心位置に提供されてもよい。
【0047】
好適な実施形態では、制御システム14は、例えば、任意の好都合な手段(例えば試験設定インターフェースユニット51)により制御システム14に提供され得る試験設定(図示せず)にしたがって試験を実装するためにシステム10の他の構成要素(例えば制御ゾーン28、ファン20、および/または炉22)に制御情報を通信する。試験設定は、それぞれの試験ゾーン18において係るPUTまたは各PUTが曝露される環境試験条件(例えば、温度(単数または複数)、化学組成物(単数または複数)、流速(単数または複数)、圧力(単数または複数)および/または攪拌もしくは他の機械的、電気的、磁気的な力に関する)を指定し得る。制御システム14は、システム10の他の構成要素、例えば制御ゾーン28および/または炉22からフィードバック情報を受信してもよく、それに応答して、制御システム14は1つまたは複数の関連するシステム構成要素にさらなる制御情報を発行し得る。この目的のために、制御システム14は、制御ゾーン28により提供される測定値または他の情報を分析し得る。この分析は制御システム14によりリアルタイムで自動的に実施され得る。代替的にまたは追加的に、システム測定値および性能は、リアルタイムで、またはオフラインで、操作員により分析され得る。操作員はインターフェースユニット51を解して制御命令を提供することによりシステム10の動作を調整し得る。
【0048】
制御システム14は、主制御器52および複数の副制御器54を含み得る。この例示的な実施形態では副制御器54は、1つまたは複数の1次制御器54Aと、1つまたは複数のゾーン制御器54Bと、を含み得る。1次制御器54Aは、ファン20ならびに炉22および/または他のシステム構成要素(例えば機械的攪拌/力装置、および/または、電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)など)の動作を制御する。それぞれの1次制御器が、各ファン20に、および/または各炉22に、および/または他のそれぞれのシステム構成要素に、提供され得る。ゾーン制御器54Bは制御ゾーン28の動作を制御する。それぞれのゾーン制御器54Bが各制御ゾーン28に提供され得る。主制御器52の制御下で、1次制御器54Aおよびゾーン制御器54Bは、それぞれのファン、炉、または制御ゾーンへ制御信号を送信し、それらからフィードバック信号を受信し得る。1次制御器54Aおよびゾーン制御器54Bは、それぞれのファン、炉、または制御ゾーンから受信されたフィードバックに基づいて、主制御器52にフィードバック信号を提供する。副制御器54は1つまたは複数の安全性制御器56も含み得る。この安全性制御器56は、システムに含まれ得る1つまたは複数のアラームセンサ58(例えば気体センサまたは漏出検出器または緊急停止装置)からアラーム信号を受信し、アラームセンサ58から受信されたアラーム信号に基づいて主制御器52にアラーム情報を提供し得る。主制御器52および副制御器54が任意の好都合な手法で(例えば、制御システム14全体の、1つまたは複数の別個のハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェア構成品として)実装され得ることが理解されるであろう。
【0049】
好適な実施形態では、制御システム14、およびより詳細には、主制御器52は、例えば、試験設定に、および/またはシステム10の動作中に1つまたは複数のシステム構成要素から受信されたフィードバック信号に、応じて、システム10の挙動を、特に反応器12の挙動を、制御システム14が数理的にモデル化するのを可能にする数理モデル化支持ソフトウェアまたはファームウェア60を支援することにより、システムモデル化ロジックを実装するよう構成される。
【0050】
好適には、制御システム14は、モデル予測制御(MPC)を実装するよう構成される。MPCを使用することにより制御システム14は、関連する設定値からの対応する逸脱が実際に発生する以前に、制御ゾーン28の制御動作を調整する。この予測能力は、従来のフィードバック動作と組み合わされると、制御システム14は、より滑らかで、かつ、他の方法で達成されるよりも最適制御動作値により近い調整を実行することを可能にする。システム10に対する制御モデルは例えばMatlab、Simulink、またはLabviewで書かれ、主制御器52により実行され得る。MPCがMIMO(マルチ入力、マルチ出力)システムを取り扱い可能であると有利である。
【0051】
代替的に制御システム14は人工ニューラルネットワーク(ANN)を実装するよう構成され得る。主制御器52はANNを実装すると好都合であり得る。例えばANNは、好適にはバイアスニューロンを有する、多層、フィードフォワードの人工ニューラルネットワークを含み得る。使用時、少なくとも1つのニューラルネットワークモデルは、システム10の関連部分を制御するための1つまたは複数の出力(例えば1つまたは複数の設定値)を生成するために、システム10の任意の関連部分から受信された入力データを使用して、少なくとも1つの学習アルゴリズム(および通常は1つまたは複数の費用関数)により訓練される。ANNは例えば、好適には自動化された学習率、慣性項、および/または、データ正規化を有するバックプロパゲーションアルゴリズムを使用して訓練され得る。使用時、ANNに基づく制御システム14、またはより詳細には主制御器52は、それが監視する各パラメータに対する設定値を各制御ゾーン28および/または各1次制御器54A(当てはまる場合)に提供し、ゾーン28および/または1次制御器54A(当てはまる場合)からフィードバックデータも受信する。ANNは、ANN自体の学習アルゴリズムによる決定にしたがって制御システム14/主制御器52が必要に応じて設定値を変化させることを可能にする。1次制御器54Aおよびゾーン制御器54Bはそれぞれのパラメータを監視し、必要に応じて制御動作を始動し得る。所望により1次制御器54Aおよび/またはゾーン制御器54Bは、関連する制御動作を実施するためにそれぞれの(局部的)ANN(常に変化し得る)を実装するよう構成され得る。
【0052】
ANNに基づく制御システム14は、反応器12の挙動により訓練された少なくとも1つのニューラルネットワークモデルを使用して反応器12を数理的にモデル化する。好適なANNに基づく制御システム14は、人工知能におけるパターン認識および計算学習理論に基づいて動作する。制御システム14はアルゴリズムを構築し、システム入力および履歴データから収集されたデータに基づいて、それぞれのゾーン28を制御するための予測を形成する。好適なANNに基づく制御システム14は、これらの制御パラメータのうちの各制御パラメータの分離、抑制、および制御をリアルタイムで実行する能力を提供する。
【0053】
例えば、ANNに基づく制御システム14は、反応器12におけるそれぞれの位置(例えば試験ゾーン18への流入口)に送達されることが望まれる1つまたは複数のパラメータプロファイル(例えばO2プロファイルまたは他の流体プロファイル)を入力として取り得る。入力プロファイルは試験仕様から得られ得る。入力は、(適宜1つまたは複数の制御ゾーンまたは1つまたは複数の試験ゾーンに関連し得る)1つまたは複数のセンサ34(例えばMFC)により提供される1つまたは複数の測定および/または送達された流体(例えばO2)プロファイル、または他のパラメータプロファイルも含み得る。入力は、ANNによる使用のために制御システム14により保持される履歴データ(例えば測定および/または送達される流体プロファイルおよび/または制御動作に関連する)をさらに含み得る。ANNを使用して、制御システム14は、反応器12におけるそれぞれの位置(例えば試験ゾーン18への流入口)に送達するための1つまたは複数のパラメータプロファイル(例えばO2プロファイルまたは他の流体プロファイル)を、および/または、計算されたプロファイル(単数または複数)を達成するための対応する制御情報を、出力として生成する。出力データは適宜、履歴データに加えられ、ANNを更新するために使用される。
【0054】
通常、主制御器52は、具体化されるべき試験仕様を定義する入力データを受信し、反応器の1つまたは複数の数理モデル(モデル予測制御(MPC)を具体化するために使用される数理モデル、または訓練されたニューラルネットワークモデルを適宜含み得る)に対して試験仕様を適用することにより、反応器における流体の少なくとも1つのパラメータに関して流体の挙動を予測する。制御器52は予測された流体挙動に基づいて制御ゾーンに対する制御情報を計算し、関連する制御情報を関連する制御ゾーンに通信する。
【0055】
好適な実施形態では、いずれの予測が作られたかおよび計算された制御情報に関する流体パラメータは、流体の化学組成を示す流体組成パラメータ、流体の温度を示す温度パラメータ、および流体の流速を示す流速パラメータを含む。化学組成は、どの流体(単数または複数)が反応器内の流体混合物全体に存在するかを、および/または、存在する流体の相対的濃度を含み得る。試験仕様および数理モデルを使用して制御器52は、当該のモデルにしたがって試験仕様の1つまたは複数の態様を具体化することから生じるであろう該流体の組成、温度、および流速のうちの任意の1つまたは複数に対する1つまたは複数の副作用、または、係る組成、温度、および流速のうちの任意の1つまたは複数間の他の相互作用を、計算する。係る副作用は、試験仕様において規定される流体組成、流体温度、および流体流速のうちの任意の2つ以上の間の予測される相互作用の結果として生じ得る。次に制御器52は、予測されるシステムの挙動に基づいて、制御ゾーンに対する制御情報を生成する。この制御情報(所望により、予測される副作用または他の予測される相互作用を中和または少なくとも緩和する動作を1つまたは複数の制御ゾーンに取らせる制御情報を含む)は、任意の予測される副作用を、または、他の予測される相互作用を、考慮に入れる。次に制御情報は関連する制御ゾーンに通信される。
【0056】
好適な実施形態では、制御器52は、予測される流体挙動に基づいてさらなる制御情報を計算するために、および、係るさらなる制御情報を係る関連する制御ゾーンまたは各関連する制御ゾーンに通信するために、制御情報および/または試験仕様、および反応器の数理モデルを使用して、流体回路における1つまたは複数の位置における流体の係る関連する流体パラメータまたは各関連する流体パラメータに関して、挙動を予測するよう構成される。制御器52が、係る位置または各位置に関連付けられた1つまたは複数の制御ゾーンに、係るさらなる制御情報を送信するとともに、通常は、流体回路(単数または複数)における1つまたは複数の他の位置に関連付けられた1つまたは複数の制御ゾーンに、制御情報を送信すると好都合である。かくして制御器52は、流体回路における特定の位置に関連付けられた1つまたは複数の制御ゾーンに、試験仕様を具体化することにより回路における1つまたは複数の特定の位置において生じるであろう予測される効果を、中和、緩和、または別様に考慮に入れる動作を取らせる能力を有する。制御のこの側面は、流体パラメータのうちの任意の1つまたは複数の流体パラメータに関して実行され得る。
【0057】
制御に関するモデルに基づく予想性は、既知の時間および流体回路における既知の位置における、既知の濃度および既知の温度を有する、高い既知のレベルの反復性、確度、および安定性を有する状態での、既知の量(単数または複数)の気体(単数または複数)の高精度の制御された送達を支援し、それにより、性能を評価および比較し、広範な動作条件下における広範なセンサおよび測定システムに対する測定システムの能力を判定すること、が可能となる。
【0058】
好適な実施形態では、制御システム14は、制御ゾーン28および他のシステム構成要素に通信するための制御情報(例えば設定値)を生成する際に最適化を実施するための最適化器62を含む。数学的関数により記述される入力値と出力値との間の変換が与えられると、最適化は、許容されるセット内から入力値を体系的に選択することにより、1つのセットの利用可能な代替物から最良解の生成および選択することと、関数の出力を計算することと、この処理の間に見出された最良出力値を記録することと、を含む。最適化器62は、例えばMatlab、Simulink、またはLabviewにおいて作られ、主制御器52により実行され得る。
【0059】
システム10の他の構成要素と通信するため、制御ゾーン28、ファン20、炉20、機械的攪拌/力装置、および、電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)を含む任意のシステム構成要素は、必要に応じて、任意の好都合な従来の有線および/または無線通信装置が提供される。制御ゾーン28、ファン20、炉、機械的攪拌/力装置、および/または、電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)を含むシステム構成要素は、制御システム14から受信された信号に応答して、以下でより詳細に説明する様に、1つまたは複数の対応する動作を実行し、および/または、1つまたは複数の動作の実施を変更する。
【0060】
通常、制御システム14は、制御ゾーン28、ファン20、炉22、機械的攪拌/力装置、および/または、電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)を含む他のシステム構成要素のうちの任意の1つまたは複数のシステム構成要素に、各設定値がそれぞれのシステム構成要素の動作に関連する1つまたは複数のパラメータの望ましい値を示す、1つまたは複数の設定値を提供する。例えば、これらのパラメータは、流体特性(流体均衡、流速、温度、化学組成、圧力)に関連してもよく、または、攪拌、他の機械的、電気的もしくは磁気的な力、および/またはファン速度または炉温度に関連してもよい。これらの設定値は、試験設定から取得されるかまたは導出されてもよく、および/または、制御ゾーン28、ファン20、炉22、機械的攪拌/力装置、および/または、電場および/または磁場を形成するための装置(単数または複数)を含む1つまたは複数の他のシステム構成要素から受信されたフィードバック信号に基づいて制御システム14により計算されてもよい。主システム制御器は、PUTに対する環境試験条件(例えばPUT上での大気温度(氷点下応用を含む)、高度、湿度、および流速、その他)も制御し得るが、これらのシステムは代替的に局所的制御器により独立的に制御されてもよい。好適な実施形態では、以上は適宜、1次制御器54Aおよびゾーン制御器54Bと併せて主システム制御器52により具体化される。
【0061】
好適な実施形態では、主システム制御器52は、リアルタイムで再構成可能な制御・監視システムと呼ばれ得、高速制御のためのカスタムハードウェア、直列型データ処理、および複雑なタイミングおよびトリガリング制御機能を有すると有利である、ユーザによりプログラム可能なFPGAを含み得る。
【0062】
好適な実施形態の通常の動作では、主システム制御器52は、副制御器54を含むシステム10の概観を取る。主制御器52は、各ゾーン制御器54Bおよび1次制御器54Aに、主制御期52が監視する係るパラメータまたは各パラメータに対するそれぞれの設定値を提供し、ゾーン54Bおよび1次制御器54Bからフィードバック信号も受信すると有利である。それにより、主制御器52は必要に応じて設定値を変化させることが可能となる。フィードバック信号に応答して設定値を計算することは、所望により適宜試験設定と併せて、モデル化ソフトウェア60により実施されると有利である。1次制御器およびゾーン制御器54A、54Bは、それぞれのシステム構成要素(例えば、炉22、ファン22、または制御ゾーン28)を監視することにより、それぞれのパラメータ(単数または複数)を監視し、それぞれの設定値からの逸脱が観測された場合に制御動作を起動し得る。制御動作は、それぞれのシステム構成要素の操作を調整すること(例えば、ファン20のスピードを変化させること、炉22の熱を変化させること、または、制御ゾーン28においてシステムに注入される流体(単数または複数)の量、速度、および/または組成を調整すること)を含み得る。そのため、それぞれのゾーン制御器54Bは、それぞれの制御ゾーン36のそれぞれの制御システム36の全部または一部を提供し得、それぞれの制御ゾーン28に配置されてもよく、それぞれの制御ゾーン28から遠隔に配置されてもよい。
【0063】
好適な実施形態では、システム10は継続的に監視し、必要に応じて、再循環流体回路16(単数または複数)において流れる流体の1つまたは複数の特性を制御する。なお係る特性は、流体の化学組成を含むと有利である。このことは、特に制御ゾーン28における供給気体(または他の流体)の統合化された制御により、および、流体(通常は気体)の化学反応(1次および2次)の、ならびに、流体回路(単数または複数)における1つまたは複数の位置における(特に、制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28における)流体温度ならびに流速の制御により、達成される。好適な実施形態では、システム10は、高い流体、および高温条件下で、化学反応を分離、抑制、および制御する能力を有する。
【0064】
好適な実施形態では、各制御ゾーン28は、以下のシステムパラメータ、すなわち、流体流速と、流体流均衡と、それぞれの流体回路16(単数または複数)への供給流体の送達と、流体組成(例えば、1つまたは複数のそれぞれの注入地点において注入される流体の、および/またはそれぞれの制御ゾーンにおいて流体回路内で流れる流体の)と、流体温度(例えば、1つまたは複数のそれぞれの注入地点において注入される流体の、および/またはそれぞれの制御ゾーンにおいて流体回路内で流れる流体の)と、流体流および混合部の分布と、うちの任意の1つまたは複数を監視および制御するよう動作可能である。
【0065】
試験ゾーン18を通って流れる流体のシステム流速(および、所望により流体回路間の流れ均衡)の制御は、(i)好適にはインバータ制御によるポンプ圧送手段20(例えば、ファン送風機/エアムーバー組立体(単数または複数))の制御と、(ii)複数の槽24A、24B、および/または流体回路16A、16Bからの流体流を組み合わせることと、(iii)バルブ15を制御すること(例えば完全開放状態と完全閉止状態との間での制御、または、異なる量により流体流を制限する1つまたは複数の部分的開放状態間での制御)と、のうちの任意の1つまたは複数により達成され得る。好適な実施形態では、ファン20または他のポンプ圧送手段の制御は、それぞれ1次制御器54Aにより実施される。制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28は、流れ制御方法(ii)および(iii)がそれにより実装され得る1つまたは複数のバルブ15を含むか、または係るバッファ15を別様に制御し得る。
【0066】
流れ均衡に関しては、試験の間、実質的に等しい(例えば、流速、圧力、および/または組成に関して)流体流が異なる試験ゾーン18に配置された複数の試験試料(PUT)のすべてに対して形成されることが望まれ得る。このことを達成することは、2つ以上のそれぞれの流体回路16を選択的に接続または分離し、2つ以上のそれぞれの流体回路16間の流体の流れを調整可能に制限するよう動作可能である、1つまたは複数のバルブ15の制御および変調(例えば、回転制御バルブの角度を制御することにより逆圧を制御し、それにより各回路の流速を制御すること)を含む。バルブ15は回転制御バルブであると好適である。これらの制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28が、流れ均衡制御の目的のために1つまたは複数のそれぞれのバルブ15の動作を制御すると好都合である。流れ均衡の制御は、反応器(特に流体回路)における対称性設計の使用により、および必要に応じて、逆圧を均衡するための流れ障害物の使用によっても支援され得る。
【0067】
流体回路16(単数または複数)に対する流体(単数または複数)の供給(特に、送達される流体の量および送達のタイミング)を高精度に制御する能力も望ましい。この目的のために、制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28は1つまたは複数の流体注入器30を含み得る。流体注入器30が、バルブ29(ソレノイドバルブであり得る)と併せて、高速かつ高精度の流体送達制御を支援するために、質量流量制御器(MFC)を含むと好適である。したがって好適な流体注入器30は、流体をそれぞれの流体回路16(単数または複数)に比較的高速で送達する能力を有する。それにより、任意の追加的な流体(単数または複数)が、時間に関する任意の所望の送達プロファイルでシステムに注入されることが可能となる。MFCは、制御ゾーン28が、したがって、制御システム14が、システム10に実際送達される流体プロファイルを判定(特に測定)することを可能にすると有利である。このことは、制御システム14により具体化されたフィードバック制御におけるエラーを判定し、係るエラーを訂正するよう活動することを支援する。
【0068】
制御ゾーン28における、または流体回路(単数または複数)における他の位置における、個々の気体組成物濃度は、以下の方法のうちの1つまたは複数の方法において操作され得る。
【0069】
A.それぞれの流体注入器30(単数または複数)を使用すること。これは、それぞれの流体回路16(単数または複数)に、通常は、それぞれの制御ゾーン28の位置において、制御された送達プロファイルを用いて一定時間にわたり流体が加えられることを有利に可能にする。このことは、質量流量制御器の好適な使用により支援される。好適な実施形態では、このようにして流体(単数または複数)を注入することは、既知の固定された体積の密閉系(すなわちそれぞれ流体回路16(単数または複数))への較正された既知の気体濃度の注入を含む。この体積は、回路(単数または複数)の構成が変化した場合、変化し得るが、再構成間の任意の既知の時間的期間では、既知であると考えられ得る。任意の所与の流体注入器30により注入される流体が純粋の気体もしくは液体であってもよく、または2つ以上の気体もしくは液体の混合物であってもよいこと、および、任意の所与の制御ゾーン28が1つまたは複数の係る流体注入器30の制御を有し得ることに、注意すべきである。
【0070】
B.高精度で時間指定されて作動する分離/バイパス、格納、および/または放出は、流体組成および/または濃度を制御するための他の重要な方法である。例えば望ましくない量または気体混合物の「パッケージ」が回路内に存在した場合、システムは、係る「パッケージ」が試験試料に到達しないことを、以下の技術のうちの任意の1つまたは複数の技術により、保証し得る。1.分離/バイパス-これは、他のパイプ(この目的のための迂回パイプを示す図5参照)に沿ってパッケージを送ることにより、1つまたは複数の関連するバルブを制御することにより、パッケージを試料から離間する方向に迂回させ、可能ならば、希釈のために槽に戻すこと、または、中和のために他の制御ゾーンに送ること、を含む。2.格納-望ましくない気体/流体のパッケージを槽に、この過程に呼び出され得るまで、格納することによる。3.放出-これは、主制御器により制御される1つまたは複数のバルブの使用による高精度で時間指定された回路から排出口へのパッケージの放出による気体混合物の望ましくないパッケージの排出を含む(排出は通常、反応器において低圧点を形成することにより達成される)。拡散を抑制するために、小さい断面積を有する配管を通して気体のパッケージを移動させ続けることが望ましい。係るパッケージの移動は、システム触媒(必要に応じて好適な制御ゾーンに提供されるか、または流体回路の他の場所に含まれてよい)における、または他の中和制御ゾーンにおける、中和が、より制御された様式で生じることも可能にする。放出を助長するために、流れが単一方向のみに移動することを保証するために、および「流れが存在しない」状況においてシステムの周りの圧力勾配を制御する手段を提供するために、単一方向バルブが使用され得る。
【0071】
C.流体回路16(単数または複数)において、新規の流体(単数または複数。特に気体(単数または複数))を生成するために化学反応を発生および/または制御すること。一定量の流体(特に気体)は、1つまたは複数のシステム触媒を提供すること、1つまたは複数の自然発生的な化学反応を発生させること、反応物質の表面積または流体濃度の制御された増加、1つまたは複数の酵素の提供、温度操作、圧力操作、電磁放射の提供、UV光の提供、のうちの任意の1つまたは複数を含む、任意の好都合な方法を使用して、流体回路16(単数または複数)における1つまたは複数の位置において所望の濃度において作られ得る。これらの方法のうちの任意の1つまたは複数の方法は、流体回路16(単数または複数)における任意の1つまたは複数の位置において、例えば制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28において、具体化され得る。上記の方法を具体化するための任意の必要な装置(例えばUV光源供給源もしくは他のEM放射源、加熱器、加圧装置)が、流体回路16(単数または複数)における任意の1つまたは複数の適切な位置が、例えば制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28の一部として、提供され得、制御ゾーン28の一部として制御システム14により制御され得る。上記の方法のうちのいくつかの方法が、1つまたは複数の流体(例えば適切な反応物質)を流体回路16(単数または複数)に、望ましい位置において、望ましい送達プロファイル(量およびタイミング)を用いて、注入することにより具体化され得ることが理解されるであろう。
【0072】
D.流体回路16(単数または複数)における望ましくない気体(または他の流体)混合物の中和。これは、流体回路(単数または複数)における1つまたは複数の位置(例えば制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28)において、1つまたは複数のシステム触媒を提供すること、および、流体注入器30のうちの1つまたは複数の流体注入器30に、1つまたは複数の適切な中和反応物質を、望ましい送達プロファイル(量およびタイミング)を用いて、関連する注入点において注入させること、を含み得る。
【0073】
E.拡散により、または流体力学的手段により、気体/流体濃度を低減または除去するための流体回路16(単数または複数)における1つまたは複数の流体フィルタ(例えばメンブレンフィルタ)の提供。
【0074】
制御ゾーン28における温度は、以下の方法、すなわち、(i)特に、炉に送達される電力の高精度かつ安定的な制御により、係る炉22または各炉22(または他の加熱器)の動作を制御すること(各炉は、所望の温度を作るために、異なる状態に設定され得る)と、(ii)気体/流体濃度の制御、および/または、温度に影響を及ぼす発熱性または吸熱反応を促進するために混合すること(これは、それぞれの流体注入器30(単数または複数)を使用して達成され得る)と、(iii)1つまたは複数の補助的加熱または冷却装置の提供、および/または、廃熱回収方法の具体化のうちの任意の1つまたは複数において制御され得る。
【0075】
流れおよび混合物分散のために、流体がそこを通って同時に流れる複数のアパーチャ(例えば、メッシュ、格子、またはグリルを含む)を有する流入口(図示せず)を通して流体(特に気体)を流体回路16(単数または複数)に送達することが好適である。これらのアパーチャのサイズおよび間隔は、注入された流体とすでに流体回路に存在する流体と混合および分散に影響を及ぼし、さらにこれにより、流体の注入時に起こり得る任意の化学反応に影響が及ぼされ得る。例えば、比較的高密度の比較的小さいアパーチャは、比較的微細な流体注入噴霧を促進し、それにより、主要な流体流に対する比較的高い均一性の混合が生じる。このことは、流体注入点において、または流体注入点付近において、局所的な化学反応を作り、促進することが望ましい場合には、有利である。逆に、比較的低密度のアパーチャは、化学反応を低減または遅延させる。したがって、任意の流体注入点(例えば任意の制御ゾーン28の流体注入器30(単数または複数)の)において、流入アパーチャのサイズおよび間隔は、望ましい混合特性がもたらされるよう、選択され得る。したがって選択されたアパーチャサイズおよび間隔は注入点ごとに異なり得る。アパーチャ流入口が、関連する制御ゾーンまたは流体回路の他の部分がそこから形成される導管または他の構造体の一部として提供されると好都合であり得る。流体注入器30は、流体が、流体回路のそれぞれの部分において、またはそれぞれの制御ゾーンにおいて、主要流体流に対して実質的に垂直に注入されるよう、構成され得る。注入の角度は、反応速度が高められるかまたは妨げられるよう、変化され得る。
【0076】
制御ゾーン28において生じる制御の程度が試験ゾーン18における環境状態に対して影響を及ぼすことは明らかであろう。
【0077】
図2では、分析要素A、制御要素C、システムモデル要素P、および最適化器要素Oを有する制御ゾーン28が示されている。これらは、制御ゾーン28に関する(MPC実施形態に対して)制御システム14により実施される、分析、モデル化、最適化、および制御を表し、必ずしも制御ゾーン自体の構成要素を表さない。
【0078】
所望により、1つまたは複数の1次流体回路16は、PUT(単数または複数)を試験条件に曝露するために提供され得、1つまたは複数の2次流体流回路(図示せず)が、主要な流体回路(単数または複数)の動作を指示するために提供され得る。2次回路(単数または複数)は例えば、1.1次回路から汚染物質を分離または洗浄することと、2.1次回路に対する反応気体/流体を作ることと、3.既知の気体濃度の2次反応気体(例えば、槽に、または配管に、格納されることが可能であり、必要時に制御システムにより1次回路(単数または複数)に送達される)を作ることと、のうちのいずれか1つまたは複数のために使用され得る。1つまたは複数のバルブ(図示せず)が、制御システム14の制御下で必要時に1次回路および2次回路を接続し、切り離すために、提供され得る。
【0079】
所望により、1つまたは複数の汚染物質(例えば毒物。固体、液体、または気体の形態であり得る)が制御システム14の制御下で流体回路16(単数または複数)に加えられ得る。汚染物質は、回路(単数または複数)における任意の所望の位置(好都合には制御ゾーン28または試験ゾーン18)において加えられ得る。流体注入器30または他の注入装置がこの目的のために使用され得る。汚染物質が固定である場合、溶媒に溶解されてもよく、必要に応じて、試験ゾーン18または他の回路位置に進入する前に蒸発されてもよい。
【0080】
本発明が、エネルギー効率が高く、反復可能な様式で、高い温度、高い流れ、変化する化学組成により制御される状況、を再現する試験設備として具体化され得ることは、以上から明らかであろう。好適なシステムは、状況および試験試料応答の高精度記録が保証されるよう、リアルタイムのシステムデータを測定および記録することが可能である。本発明を具体化するシステムは、以下の用途、すなわち、比較による製品評価のための現実世界シミュレーション;高い温度および高い流れ構成要素の寿命判定;材料、構成要素、潤滑剤、および燃料のための開発ツールとして;耐久性/経年変化ツールとして;一定時間にわたる高温での材料、化合物、製品コーティングの挙動に関する理解を形成するための実験ツールとして;試験試料/システム性能を特徴付けるアルゴリズムおよびモデルを開発および証明するためのシミュレーションツールとして、のうちの任意の1つまたは複数のために使用され得る。
【0081】
通常の実施形態では、最も複雑な制御ゾーン28は、試験ゾーン18(単数または複数)の直前、すなわち試験ゾーン18(単数または複数)のすぐ上流側に位置する制御ゾーン18である。通常、これらの制御ゾーン28は、複数の流体流入口、および複数の測定位置、および/または測定センサ34を有する。
【0082】
好適な実施形態では、それぞれの制御ゾーン28は、各試験ゾーン28の上流側、好適にはすぐ上流側に提供される。それぞれの制御ゾーン28が、各炉22の流出口に、すなわち、下流側(好適には、すぐ下流側)に提供されると好適である。所望により、この例示的な実施形態に示すように、制御ゾーン28は、試験ゾーン18の上流側(好適には、すぐ上流側)に配置されると同時に、炉の下流側(好適には、すぐ下流側)に配置されるよう、炉と試験ゾーン18との間に提供される。
【0083】
好適な実施形態では、それぞれの制御ゾーン28は、各熱交換器の上流側(好適にはすぐ上流側)に提供される。
【0084】
好適には、それぞれの制御ゾーン28は、各槽24と、それぞれの炉22への流入口と、の間(すなわち、槽の下流側かつ炉の上流側)に提供される。
【0085】
実際には、制御ゾーンの個数および位置は、システムにより実施される試験に依存する。したがって、図1で示されるよりも多数または少数の制御ゾーンが存在し得る。制御ゾーンは、その位置は制御ゾーンの目的(例えば、システムの他の位置において、化学反応を促進すること、または、特定の試験条件を達成すること)に依存するが、流体回路(単数または複数)の任意の位置に配置され得る。
【0086】
通常、回路16(単数または複数)に流体を注入するために装備された制御ゾーン(または、少なくともその流体注入器(単数または複数))は、炉22の前(例えば流入口)に、炉の後(例えば流出口)に、または熱交換器の前(例えば流入口)に、配置される。
【0087】
図1で示される実施形態では、制御ゾーン1、2、6、および7はそれぞれ、監視および制御機能の全部、すなわち、流体流速と、流体流均衡と、それぞれの流体回路16(単数または複数)への供給流体の送達と、流体組成(例えば、1つまたは複数のそれぞれの注入地点において注入される流体の、および/またはそれぞれの制御ゾーンにおいて流体回路内で流れる流体の)と、流体温度(例えば、1つまたは複数のそれぞれの注入地点において注入される流体の、および/またはそれぞれの制御ゾーンにおいて流体回路内で流れる流体の)と、流体流および混合物の分散と、を実施するため装備され得る。しかしこれらの制御ゾーンが必ずしもシステム10内で同一の機能を実施するとは限らない。例えば、制御ゾーン1および2は、それぞれの試験ゾーン18において特定の試験条件を達成するために制御システム14により使用され得る一方で、制御ゾーン6および7は流体回路内の流体を調節または洗浄するために使用され得る。制御ゾーン3も同様に装備され、流体調整/洗浄機能を実施するために使用され得る。制御ゾーン4は流体検査機能を実施するためのみに使用され、したがって、流体流の均衡および温度を監視(および所望により制御)するために装備され得る。制御ゾーン5は流体流の均衡、流速、および温度を監視(および所望により制御)するために使用および装備され得る。
【0088】
すでに説明した制御システム14の構成要素に加えて、いくつかのシステム構成要素(例えば独立バルブ、制御装置、またはアクチュエータ)が、それ自体の動作を制御するための、それ自体の制御器(例えばプロセッサ)を有し得ることに注意すべきである。これに関する具体例が、液体および気体の注入を測定および制御するために使用されると好適であるMFCとなるであろう。
【0089】
好適な実施形態では、制御ゾーン28のうちの各制御ゾーン28が、主制御器52により決定されたそれぞれの設定値にしたがって1つまたは複数のそれぞれの流体特性を制御するよう動作することが、上記から明らかとなるであろう。主制御器52は、全制御ゾーン28の動作を監視し、したがって全体的なシステム挙動を分析することが可能である。したがって主制御器52、好適には制御ゾーン28から受信された現在のフィードバック信号に基づいてシステム10の将来の挙動を予測することにより、統合化された様式で各制御ゾーンに対する制御動作を決定することが可能である。主制御器52が、設定値を調整することにより係る状態を相殺するために、および、それぞれの制御ゾーン28に協調的な様式でそれぞれの制御動作を具体化させる(すなわち、所望の制御動作を所望の位置(単数または複数)において、および、所望の時間(単数または複数)において、流体回路16(単数または複数)内で発生させる)ために、任意の所与の時間におけるシステム10の複数の位置における状態を予期および予測する能力を有すると有利である。制御システム14は、流体が流体回路16(単数または複数)の周りを移動するにつれて制御動作および修正を継続的に実施し得る。所望の流体混合物、流速、および温度の仕様は、試験設定に、および/または制御ゾーン28から受信されたフィードバックに応答する主制御器52による決定に、応じて各制御ゾーンにおいて時間の経過とともに変化し得る。
【0090】
図3では、主制御器52と、制御ゾーン1および3との間の相互作用の1例が、例えば、制御ゾーン1および3が、流体回路16Aへの流体の注入を制御するためのそれぞれのMFCを含み、設定値にしたがって特定量の流体を注入することが望まれているものと仮定して、示されている。301において、設定値は、試験設定に基づいて主制御器52により計算され、制御ゾーン1(特に関連する流体注入器30のMFC)に通信される。302において、MFCは設定値を受信し、設定値に到達しようとすることにより特定された注入を具体化し、高速で安定化しようとすることにより、特定された注入を具体化しようとする。303において、MFCは実際の流体送達を測定し、この情報を主制御器52に戻す。304において、主制御器52は、設定値と実際の送達との間の誤差を測定し、通常は制御ゾーン1のMFCに対する、可能ならば1つまたは複数の他の制御ゾーン(例えば制御ゾーン3)のMFCに対する、複数のデータポイントに基づいて、新規の設定値を計算し、協調的な具体化のために、関連する設定値をそれぞれの制御ゾーンに送信する。305において、制御ゾーン1のMFCは、試験ゾーン18Aにおける試験試料において基準化学反応を起動し得し、その一方で、制御ゾーン3のMFCは、その反応の生成物を抑制するよう、および/または、第2反応を促進することにより係る生成物を中和するよう、動作し得る。306において、誤差は最小化され、既知のセットの濃度が制御ゾーン3から流出する。
【0091】
図4では、主制御器52と、ファン20および回転制御バルブとの間の相互作用の1例が示されている。401において、それぞれの設定値(ファン速度に対する)が、試験設定に基づいて主制御器52により計算され、ファン20に通信される。402においてファン20はファン20の実際の速度を主制御器52にフィードバックする。主制御器52は制御ゾーン5から流速情報も受信する。403において、主制御器52は、他の制御ゾーン28のうちの1つまたは複数の制御ゾーン28において流体回路16(単数または複数)に流入する流体の流速に関する情報を受信し得る。404において、流速誤差を測定し、フィードバック情報に基づいてファン20に対する新規の設定値を計算する。405において主制御器52は、関連する制御ゾーン(単数または複数)において所望の流速を作るために、新規設定値をファン22に送信する。
【0092】
試験を実施するときは、試験ゾーンの上流側に位置する少なくとも1つの位置(すなわち、試験ゾーンの流入口に、または流入口の前方(例えば、通常の実施形態では、槽と試験ゾーンとの間の位置))において流体に対する1組の既知の基礎状態を確立することが望まれる。この基礎状態は通常、流体の組成、温度、流速により定義される。基礎状態が確立されると、組成、温度、および流速のパラメータのうちの1つまたは複数のパラメータは、試験ゾーンにおける物品が、試験仕様に規定される試験状態(通常は、試験ゾーンにおける流体の組成、温度、および流速を定義する)に曝露されるよう、例えば、既知の量の1つまたは複数の気体(通常は炭化水素気体)の注入により、試験仕様にしたがって(再び、試験ゾーンの上流側の位置において)調整され得る。試験ゾーンから流出する流体の対応する状態は、試験仕様にしたがってなされた任意の調整のためばかりではなく、場合によっては、試験ゾーンにおいて生じ得る機械的および/または化学的過程(実施される試験に、および、試験される物品に、依存する)の結果として、定義するパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータに関して基礎状態と異なる傾向を有する。効率化の理由のために、流体流出ストリームの少なくとも一部を再循環することが好適であり、そのため、関連する上流位置(単数または複数)において所望の基礎状態を再確立(または、試験仕様により要求されるように異なる1組の所望の基礎状態を確立)するために、必要に応じて、流体流出ストリームの組成、温度、および/または流速のうちの1つまたは複数を調整することが必要である。このことは、実施される係る試験または各試験が正確かつ反復可能となることを可能にする。基礎状態の確立および再確立は、図1図4を参照して上記で説明した技術および装置のうちの任意の1つまたは複数の技術および装置を使用して、制御器52により実施され得る。
【0093】
いくつかの試験に対して、試験仕様により規定される流体パラメータ値のうちの1つまたは複数の流体パラメータ値は、試験中に、連続する試験間で、および/または同一試験の連続するサイクル間で、比較的高速に変化し得る。係る過渡的な流体状態を高い信頼性で正確に発生させるためには、所望の基礎状態を極めて高速に確立および再確立することが必要である。これを達成するための好適な技術について、本発明を具体化する、全体が参照番号110で示される試験システムが図示される図5を参照してここで説明する。
試験システム110は図1のシステム10と同様であり、特記なき限り、当業者に明らかであるように、同様の参照番号は同様の部品を示すために使用され、同一または同様な説明が当てはまる。試験システム110は、反応器112と、反応器112の動作を制御するための制御システム(図示せず)と、流体回路116と、試験ゾーン118と、ポンプ圧送手段120(通常は1つまたは複数のファン)と、加熱手段122(通常は、炉)と、槽124と、複数の制御ゾーン128と、を含む。システム10の特徴のうちのいずれもがシステム110に含まれ得、逆にシステム110の特徴のうちのいずれもがシステム10に含まれ得ることも理解されるであろう。
【0094】
反応器112は、流出口170を開放または閉止するよう動作可能であるバルブ172を介して流体回路116に接続された流体流出口170(例えば排出口を含む)を含む。流出口170が開放状態にあるとき、回路116からの流体は流出口170を介して、通常は排出により、回路116から流出する。通常、回路116と開放状態の流出口との間の圧力差は、流体を回路116から排出させるにあたり十分な大きさを有するが、所望によりポンプが流体の除去を支援するために提供されてもよい。好適には、バルブ172は、完全開放状態および完全閉止状態のみを取るばかりでなく、流体が流出口170を介して回路116から流出することが可能となる速度を制御するために1つまたは複数の部分的開放状態も取るよう、動作可能である。好適な実施形態では、流出口170は試験ゾーン118の下流側(好適には試験ゾーン118の流出口)に配置される。代替的な実施形態(図示せず)では、2つ以上の流出口および制御バルブが、回路116の周りの任意の所望の位置(単数または複数)に提供され得る。流出口170は、所望により周囲環境に、またはタンク(図示せず)に、流体を排出し得る。バルブ172が制御ゾーン128Aに含まれると好都合である。以下でより詳細に説明されるように、バルブ172は、試験仕様を具体化するためにすべて制御システムの制御下で、回路116の周りに再循環される試験ゾーン118からの流出ストリームの部分を制御するよう、および/または、一定量の流体が所望の時間(単数または複数)において回路116から除去されることを可能にするよう、動作可能であり得る。特にバルブ172は、試験中に、および/または連続する試験間で、発生する再循環の量が調整されるよう、および/または不要な量の流体が除去されるよう、動作可能であり得る。このことは、所望の基礎状態から逸脱した組成、温度、および/または流速を有する流体を回路116から除去し、それにより回路116内の関連位置(単数または複数)において所望の基礎状態を確立することを支援するにあたり、特に有用である。
【0095】
流体温度の制御は炉122の動作を制御することにより実施され得る。しかし係る方法で流体温度を調整することは比較的低速である。したがって回路116は第1バイパス回路部分174を含むと好都合である。この第1バイパス回路部分174は、開放状態にあるとき、回路116内の流体の一部または全部が炉をバイパスすることを可能にする。通常、回路部分174は、炉122(または、当てはまり得る他の加熱器)の流入口の前方の回路116における位置175と、炉122の流出口の後方の回路における位置176と、の間で延長する。1つまたは複数のバルブ178が、バイパス回路部分174を通る流体の流れを制御するために提供され得る。これらのバルブ(単数または複数)は、回路116内の流体の一部または全部が炉122をバイパスすることが可能となるよう回路部分174を開放するために、または、回路部分174を閉止し、それにより、流体が炉122をバイパスすることを防止するために、動作可能であると好適である。バルブ178は、完全開放状態および完全閉止状態のみを取るばかりでなく、炉122をバイパスする流体の量を制御するために1つまたは複数の部分的開放状態も取るよう、動作可能であると好適である。通常、バイパス回路部分174を通って迂回されない任意の流体は炉122を通過する。所望により、1つまたは複数のバルブ179が、例えば回路116内の流体の全部が炉122をバイパスすることが望まれる場合に、いかなる流体も炉122を通過することがないよう防止するために提供され得る。この例示的な実施形態では、バルブ178および179は、例示目的のために、別のものとして示されているが、これらのバルブは同一のバルブであると好都合である。いずれの場合にも、係るバルブ178、179または各バルブ178、179は、試験仕様を具体化するために、通常は制御ゾーン28Bの一部である制御システムにより動作される。バイパス回路部分174を介して位置176に到着する流体は、炉により加熱されず、そのために、炉122を介して位置176に到着する流体と比較して比較的低温である。したがって、制御システムは、バイパス回路部分174を通って流れる流体の量を制御することにより、位置176における流体の温度を(比較的高速に)制御する能力を有する。この制御は、必要に応じて炉122の動作の制御と併せて実施され得、回路116における関連位置(単数または複数)における所望の基礎状態の確立を支援する。類似のバイパス回路部分が、システムに含まれる各炉または他の加熱器の周りに提供され得る。
【0096】
流体の流速の制御は、ファン120(単数または複数)の動作を制御することにより、実施され得る。しかし係る方法で流体の流速を調整することは比較的低速である。したがって回路116は第2バイパス回路部分180を含むと好都合である。この第2バイパス回路部分180は、開放状態にあるとき、回路116内の流体の一部または全部が試験ゾーン118をバイパスすることを可能にする。通常、回路部分180は、試験ゾーン118への流入口の前方の回路116における位置182と、試験ゾーン118の流出口の後方の回路116における位置184と、の間で延長する。1つまたは複数のバルブ186が、バイパス回路部分180を通る流体の流れを制御するために提供される。これらのバルブ(単数または複数)は、回路116内の流体の一部または全部が試験ゾーン118をバイパスすることが可能となるよう回路部分180を開放するために、または、回路部分180を閉止し、それにより、流体が試験ゾーン118をバイパスすることを防止するために、動作可能であると好適である。バルブ186は、完全開放状態および完全閉止状態のみを取るばかりでなく、試験ゾーン118をバイパスする流体の量を制御するために1つまたは複数の部分的開放状態も取るよう、動作可能であると好適である。通常、バイパス回路部分180を通って迂回されない任意の流体は試験ゾーン118を通過する。所望により、1つまたは複数のバルブ188が、例えば回路116内の流体の全部が試験ゾーン118をバイパスすることが望まれる場合に、いかなる流体も試験ゾーン118を通過することがないよう防止するために提供され得る。この例示的な実施形態では、バルブ186および188は、例示目的のために、別のものとして示されているが、これらのバルブは同一のバルブであると好都合である。いずれの場合にも、係るバルブ186、188または各バルブ186、188は、試験仕様を具体化するために、通常は制御ゾーン28Cの一部である制御システムにより動作される。制御システムは、回路部分180を通って流れる流体の量を制御することにより、試験ゾーン118内の流体の流速を(比較的高速に)制御する能力を有する。この制御は、必要に応じてファン(単数または複数)の動作の制御と併せて実施され得、回路116における関連位置(単数または複数)における所望の基礎状態の確立を支援する。類似のバイパス回路部分が、システム内の任意の他の試験ゾーン(単数または複数)の周りに、および/またはファン120(単数または複数)もしくは他のポンプ圧送装置の周りに、提供され得る。
【0097】
回路116内の流体は通常、試験仕様にしたがって1つまたは複数の他の流体が加えられる基礎流体を含む。図5で示されているように、加えられる流体(単数または複数。通常は1つまたは複数の炭化水素気体、および/または少なくとも1つの酸素含有気体を含む)は、試験ゾーン118への流入口における所望の試験状態を作るために、試験ゾーン118の流入口において加えられ得る。制御ゾーン128Dがこの目的のために試験ゾーン118の流入口において提供される。基礎流体は、システムに、および1つまたは複数の位置において回路116に、加えられ得る1つまたは複数のバルク流体を含む。通常、これらのバルク流体(単数または複数)のうちの少なくとも一部は槽124に加えられる。槽124から、係るバルク流体は、通常は1つまたは複数のバルブ(図示せず)を使用して制御システムの制御下で、回路116に導入され得る。代替的にまたは追加的に、バルク流体(単数または複数)の少なくとも一部は、1つまたは複数の他の位置(例えば制御ゾーン128Eおよび/またはファン120(単数または複数)の出力)において回路116に注入され得る。任意の好適な流体注入装置(図示せず)が、槽に、または回路116の他の位置に、流体を供給するために使用され得る。
【0098】
回路116において基礎状態を確立することを支援するために、利用可能なバルク流体のうちの任意の1つまたは複数のバルク流体の一定量が、回路116内の流体を希釈するために、回路116に導入され得る。この希釈は、流体組成を調整する(例えば、流体中に存在し得る望ましくない流体濃度の量を(所望の基礎状態と比較して)減少させる)にあたり特に有用であるが、回路116内の流体の温度および/または流速にも影響を及ぼし得る。
【0099】
上述の技術(すなわち、排出を制御することにより再循環の量を制御すること、炉をバイパスすることによる温度制御、試験ゾーンをバイパスすることによる流れ制御、および希釈)のうちの任意の1つまたは複数の技術は、回路116内の流体の組成、温度、および/または流速を調整するために、個別的にまたは任意の組み合わせで、実施され得る。これらの技術は、過渡的な試験状態を具体化する(例えば所望の基礎状態を高速で確立することを可能にする)ために、流体パラメータを高速調整するにあたり特に有用である。制御システムが試験仕様を具体化する方法を計算する際、制御システムは、これらの技術のうちの任意の1つまたは複数の技術を、任意の組み合わせで、および任意の他の利用可能な制御技術と併せて、使用し得る。したがって、制御システムにより生成された対応する制御情報は、関連するシステム構成要素(単数または複数。通常は関連する制御ゾーン(単数または複数)に配置される)に、試験仕様を具体化するにあたり要求される様式で、選択された制御技術を具体化させるための制御情報を含むであろう。この制御情報は、適宜、タイミングと、関連するバルブ(バルブ172、178、179、186、188。例えば回転制御バルブであり得る)の開放度と、を制御するための制御情報を含む。関連するバルブは、過渡的または安定的な、要求される試験状態を具体化するために、回路内の流体を(特に試験試料を通過する流体を)正確にかつ反復的に制御するよう、制御される。他の制御ゾーンと同様に、作動点においてバルブ位置の高速制御および位置測定が存在し、次に位置情報はリアルタイムで主制御器に戻される。
【0100】
基礎流体の組成は実施される試験(単数または複数)に依存する。一般に基礎流体は気体であり、1つまたは複数の気体と、所望により、水蒸気とを含む。基礎流体に加えられる流体も通常、気体であり、一般に、1つまたは複数の純粋な炭化水素気体、および/または、少なくとも1つの酸素含有気体を含む。従来、基礎流体は、多くの場合はより小さい濃度を有する1つまたは複数の他の合成ガスと併せて、主に不活性ガス(例えば窒素など)を含む。これは、バルク供給合成ガスが反応器に注入され得る速度に限界が存在するため、急速に変化する流体状態を反応器112において作るときに問題となり得る。加えてバルク合成ガスは比較的高価である。これらの問題を解決するために、本発明の好適な実施形態では、基礎流体を提供するためのバルクガスとして空気が使用される。空気である基礎流体の割合は、実施される試験に依存するが、好適には、およそ10%~100%の範囲内、さらに好適にはおよそ50%~100%の範囲内である。いくつかの実施形態では基礎気体は100%の空気である。基礎気体が100%の空気でない場合、1つまたは複数の他の合成ガス(例えば窒素または二酸化炭素)および/または水蒸気が、必要に応じて基礎気体を作るためのバルク気体として提供され得る。
【0101】
自由に入手可能であることとは別に、基礎流体の顕著な成分または好適には主要な成分として空気を使用することの利点は、空気は、任意の好適な空気ポンプまたは空気圧縮器または他の流体流入装置を使用して、好都合なことに周囲環境から、比較的高速に、反応器112に供給され、回路116に導入されることが可能であることである。これは、上述の希釈技術を支援する。好適な実施形態では、空気は、圧縮器(図示せず)により周囲環境から、槽124に、および/または、回路116内の1つまたは複数の他の位置に、供給される。
【0102】
本発明を具体化する好適なシステムが、高精度の静的または過渡的な状態の気体濃度、流れ、温度を試験試料に送達する能力を有することは、上記から明らかとなるであろう。静的状態試験では、基礎気体の流速は通常、試験の実施中、一定である。試験ゾーンの流入口における流体の温度は試験の実施中、一定であってもよく、または、2つ以上の設定値間で変動してもよい。試験ゾーン流入口における流体の組成は試験の実施中、一定であり得るが、より一般的には、1つまたは複数の成分流体の濃度は、2つ以上の設定値間で変化する。過渡的な試験状態に対して、組成、温度、および流れのパラメータのうちの各パラメータは、例えば車両スピード、加速度、およびエンジン負荷をシミュレートするために、試験の実施中実質的に継続的に変動し得る。
【0103】
軽油シミュレーションのために基礎気体として主に空気を使用することは、特に、過度量の窒素または他の供給される基礎気体を必要とすることなく、現実世界状態の完全な複製を可能にする。
【0104】
排気ガスシミュレーションを含むいくつかの試験に対して、基礎気体は体積で最大21%までの酸素を含む。例えばディーゼルエンジン排気シミュレーションを実施する試験に対して、基礎気体は、通常は体積で25%~100%の空気を使用して、体積でおよそ6%~21%の酸素を含む。ガソリンエンジン排気ガスシミュレーションなどの他のシミュレーションを実施する試験に対して、基礎気体は通常、体積で0~21%の酸素を含む。したがって、多数の係る試験に対して(特に、体積で10%~21%の酸素を要求する試験に対して)、空気が基礎気体の主要成分として使用される(通常は、必要に応じておよそ体積で50%~100%の範囲の基礎気体として存在する)と好都合である。
【0105】
好適な実施形態では、制御システムでは、望ましい気体を維持するために再循環および排出の組み合わせが使用され、流体中の不要な気体(例えば、自動車関連試験ではCO2またはCO)は放出される。再循環の量は、試験および試験対象の品目に応じて0~100%の範囲内であり得る。例えば、0%~50%の範囲の再循環が触媒試験試料に関して用いられ得、0%~100%の再循環が任意の他の試験試料タイプに対して用いられ得る。比較的低いレベルの再循環は、積極的な過渡的状態の制御を支援し、その一方で、再循環は流体供給要件を低下させ、エネルギー効率を最大化する。
【0106】
所望により、本発明を具体化するシステムは、試験ゾーン18、118の環境の周囲状態(試験試料が曝露される試験ゾーンの流体状態とは異なる)を制御するための1つまたは複数の装置(図示せず)を含み得る。係る装置は、周囲環境を加熱または冷却するための、および/または周囲空気流および/または周囲空気圧を調整するための、任意の従来の装置を含み得る。このことは、試験ゾーンの周囲において現実世界の環境状態をシミュレートすることを可能にする。
【0107】
したがって好適なシステムは、試験試料流入口試験状態を複製するのみではなく、試料外部(周囲)試験状態も複製することを可能にする。係る試料外部(周囲)試験状態は、例えば摂氏-30度~摂氏+50度の範囲の外部温度制御、大気制御チャンバまたは同様の圧力制御装置による、例えば100%真空~+1000バールの範囲の、変動する高度状態のシミュレーション、湿度チャンバもしくは他の装置および/または、空気移動装置(例えば送風機、ファン、その他など)を使用することにより複製された強制対流状態の使用による0%~100%の相対湿度状態、を含み得る。熱衝撃の複製は、試料の外部に対する化学反応および電熱器を介しての緊急加熱の提供により達成され得る。熱衝撃の複製は、水飛沫、水噴霧、液体窒素または他の適切な流体の使用により、試験試料の外部を冷却することによっても達成され得る。
【0108】
好適な実施形態は、比較による製品評価のための、世界的法的試験状態(例えば、EURO6cまたは他の放出法令にしたがって試験される放出制御システム)に対する準拠のための、現実世界シミュレーションを支援する。好適な実施形態は、既知の入力試験状態下で放出測定システムの性能を特徴付け、評価するために使用され得る。高レベルの精度で実施される性能評価は、反復性、再現性、確度、安定性、および解像度を含む。
【0109】
本発明は、本明細書で記載の実施形態(単数または複数)に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく修正または変更され得る。
図1
図2
図3
図4
図5