(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】改善されたカテーテル並びにそうしたカテーテルを組み込んだ装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61M25/00 630
A61M25/00 550
A61M25/00 620
A61M25/00 624
A61M25/00 504
A61M25/00 510
A61M25/00 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023071993
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2020531910の分割
【原出願日】2018-12-14
【審査請求日】2023-04-26
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519012378
【氏名又は名称】パーヒューズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】マリンス,リアム
(72)【発明者】
【氏名】イネラン,ダーラ
(72)【発明者】
【氏名】エスピノーサ,アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】リベラ,リサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ファーナン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ナグレイター,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ローガン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クラッグ,アンドリュー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-263088(JP,A)
【文献】特表2007-503970(JP,A)
【文献】特開平07-008560(JP,A)
【文献】特表2012-511410(JP,A)
【文献】特表2005-534407(JP,A)
【文献】特開2000-254235(JP,A)
【文献】特開2014-233534(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137098(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔を画定するジャケットを備え、その長さの少なくとも一部に沿ってジャケット材料によって封入されたらせん状の支持体を備えるカテーテル(1)であって、少なくとも近位部分(2)と、遠位端を有する遠位部分(3)とを備え、前記遠位部分は、その長さの少なくとも一部に波形の外面(15)を有し、この部分において前記らせん状の支持体は、前記外面の波形
によって当該外面の内側に形成されるらせん状チャネル内に封入され、
前記ジャケットが、前記管腔を画定する内側のライナー(1207,1208)を含み、
前記内側のライナーは、前記遠位部分におけるePTFEの管状層(1207)と、前記近位部分におけるPTFEの管状層(1208)と、前記内側のライナーの管状層が重なることなく接触する移行部(1152)、または前記管状層(1207、1208、1260、1261)が同心であるラップジョイントによって接触する移行部と、を備える、
カテーテル。
【請求項2】
前記内側のライナーの厚さが、0.025mmから0.3mmの間である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記PTFEの管状層と前記ePTFEの管状層との重なりは、1mmから30mmの間の長さである、請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記移行部分は、カテーテルの遠位端から5cmから30cmの間に位置する、請求項1から3の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記移行部分は、カテーテルの遠位端から少なくとも10cmに位置する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記移行部分は、リブおよび前記波形の外面(15)を有するカテーテル領域の近位の領域に生じている、請求項1から5の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記遠位部分では、前記波形の幅は、前記ジャケットの厚さの少なくとも60%であり、前記波形の深さは、前記ジャケットの厚さの少なくとも70%である、請求項1から6のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記波形の深さは、前記カテーテルの少なくとも1つの領域において前記ジャケットの厚さの5%から95%の間である、請求項1から7のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載のカテーテルを製造する方法であって、
前記ジャケットは、膜をらせん状構造上に配置し、前記膜がリフローして前記らせん状構造のまわりに形成するように熱を加え、テンションがかかったシンチワイヤーを前記膜の外側に巻き付けて前記らせん状構造の各ループ間の溝に押し込み、前記膜をヒートセット加工して波形を所定の位置に固定し、前記テンションがかかったシンチワイヤーをほどいて前記波形を残す、方法。
【請求項10】
前記波形は、波形がなく影響のない深さおよび幅から、前記ジャケットの厚さの少なくとも50%の深さまで巻かれた円形らせん状のシンチワイヤーの影響を表す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記波形は、波形がなく影響のない深さおよび幅から、前記ジャケット厚の少なくとも70%の深さまで巻かれた円形らせん状のシンチワイヤーの影響を表す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記波形は、波形がなく影響のない深さおよび幅から、前記ジャケットの厚さの少なくとも95%の深さまで巻かれた円形らせん状のワイヤーの影響を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カテーテルの前記長さの少なくとも一部では、前記波形の幅が当該波形のピッチの20%から45%の間である、請求項1から8のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記遠位部分の最も遠位の領域では、前記波形の幅が前記ジャケットの厚さの少なくとも60%で
ある、請求項1から8、または13のいずれか1項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カテーテル並びにそうしたカテーテルを組み込んだ装置およびシステム、並びにそれらの使用方法に関する。一例は、血管内処置のための柔軟なカテーテルである。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの血管内処置は、例えば、造影剤注入を送達するため、埋め込み型装置を送達するため、血管処置を行うため、又は吸引するために、柔軟なカテーテルの使用を必要とする。脈管構造の曲がりくねった性質のため、過度な力をかけず血管を通って移動するのに十分に柔軟であることがカテーテルにとって重要である。しかしながら、一般に、カテーテルの直径、追従性、柔軟性、及びよじれ耐性といった特徴の間にはトレードオフがある。カテーテルの直径を大きくすると、カテーテルの剛性が増す傾向があり、そのため追従性が低下し、血管のせん断力が危険なほど増大する可能性がある。柔軟性が増すと、カテーテルが脈管構造を通って押されるときにカテーテルがよじれる傾向が高まる傾向があり、カテーテルを、緩やかな曲線の血管に限定してしまう。一般に、壁の厚さを薄くすると柔軟性が増し、曲がりくねった血管へのアクセスが可能になり、曲げ剛性とよじれ耐性との間にはトレードオフがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、所望の曲げ剛性および柔軟性のために改善された特性を有するカテーテルを提供し、それにより、患者の血管における大きな湾曲および小さな寸法があるといった困難な場所での使用を可能にすることを目的とする。
【0004】
カテーテルは、管腔とらせん状の支持体とを画定するジャケットを備えている。カテーテルは、近位部分と遠位部分とを有し、遠位部分は、その長さの少なくとも一部が波形の外面を有する。移行部分は、遠位部分の曲げ剛性よりも小さく近位部分の曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有する。移行部分は、ジャケットの波形の幾何学的形状、または重なり合う管状層を含むジャケットの特徴によって、曲げ剛性の最適な移行を提供する。遠位部分の遠位端は、いくつかの例では、特に柔らかい先端を提供するために折り返されたライナー材料の延長を有し得る。他の例では、ライナーは、遠位先端の前で終了する。カテーテルは、流れ制限器と、当該流れ制限器の遠位にある遠位部分とを備えた吸引装置に特に適している。吸引システムは、血栓を最適に吸引するために負圧または正圧を動的に加えるポンプを備えたカテーテルを使用することができる。
【0005】
一態様では、管腔を画定し、その長さの少なくとも一部に沿ってジャケット材料にらせん状の支持体を備えるジャケットを備えるカテーテルであって、カテーテルは、少なくとも近位部分および遠位部分を備え、遠位部分は、少なくとも長さの一部において波形の外面を有する、カテーテルについて説明する。カテーテルは、好ましくは、近位部分と遠位部分との間に移行部分を備え、移行部分は、遠位部分の曲げ剛性よりも小さく近位部分の曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有する。移行部分は、好ましくは、波形の外面を有し、波形の外面の少なくともいくつかの波形は、遠位部分の表面の波形よりも深さおよび/または幅が小さい。
カテーテルの他の態様は、添付の請求項4から88に示されている。
【0006】
また、任意の実施形態のカテーテルを製造する方法であって、前記ジャケットは、膜をらせん状構造上に配置し、前記膜がリフローして前記らせん状構造のまわりに形成するよ
うに熱を加え、テンションがかかったシンチワイヤーを前記膜の外側に巻き付けて前記らせん状構造の各ループ間の溝に押し込み、前記膜をヒートセット加工して波形を所定の位置に固定し、前記テンションがかかったシンチワイヤーをほどいて前記波形を残す、方法について説明する。
【0007】
前記ジャケットがフルオロポリマーを含み、前記フルオロポリマーが互いにおよび/または他のポリマーと結合界面で結合されていてもよい。エッチング溶液を使用して前記界面に化学処理が適用されてもよい。エッチングされた前記フルオロポリマーは、ChronoFlexのようなウレタンの薄層でコーティングされ、熱が加えられると、この層が流動し、前記フルオロポリマーを第2のエッチングされたフルオロポリマー層または別のポリマー層に結合するように作用してもよい。
【0008】
一態様では、方法は、ライナーに結合されてベースアセンブリを形成するポリマージャケット内に前記らせん状の支持体を提供するステップと、前記ジャケットコイル上の前記ポリマージャケットに結合されない外側のライナーを配置するステップと、前記外側のライナーの外側にテンション下でらせん状に前記シンチワイヤーを巻き付け、それにより波形の形状を与えるステップと、加熱して前記材料をリフローまたは焼き戻し、前記材料を波形形状に設定するステップと、前記シンチワイヤーを取り外すステップと、前記外側のライナーを剥がすステップと、を含む。
【0009】
また、本明細書に記載の任意の実施形態のカテーテルと流れ制限器とを備える吸引装置であって、遠位部分が流れ制限器の遠位にある吸引装置について説明している。前記カテーテルが、前記近位部分と前記遠位部分との間に移行部分を備え、前記移行部分は、前記遠位部分よりも小さく前記近位部分よりも大きい曲げ剛性を有し、前記移行部分の少なくとも一部は、前記流れ制限器の遠位に延びる。
【0010】
前記流れ制限器はバルーンを備え、前記バルーンは血栓を前記カテーテル遠位部分に吸引する前に膨張して血流を遮断するように構成されてもよい。あるいは、血管系、腫瘍、または器官の領域への塞栓剤の正確な送達に先立って、血流を遮断するために使用されてもよい。
【0011】
前記遠位部分の長さは、遠位内頸動脈、内頸動脈の末端、近位M1、遠位M1、近位M2、遠位M2、脳底、または脊椎血管などの特定の解剖学的位置に到達するのに適しており、前記流れ制限器は、ICAのC1セグメント内または近位に留まる。
【0012】
また、任意の実施形態の吸引装置の使用方法であって、吸引装置を患者の血管内に展開するステップと、前記遠位部分を血管内の血栓まで通すステップと、前記流れ制限器に血流を遮断させるステップと、前記カテーテルを真空にして血栓を遠位部分に吸引するステップと、を含む、方法について説明している。
【0013】
一例では、方法は、
血管造影を実行して閉塞の位置、または錐体部または海綿状頸動脈と前記閉塞の間の距離を決定するステップと、
前記閉塞を引き起こす血栓に到達するのに適する遠位部分の長さを備え、標的血管に快適にフィットする外径の遠位先端を備えたカテーテルを選択するステップと、
前記カテーテルの遠位部分を血栓まで通すステップと、
流れが停止できるように前記流れ制限器を作動させ、吸引の有効性を低下させる可能性のある別の流路を最小限に抑えるステップと、
前記カテーテルの管腔を真空にして血栓を吸引するステップと、
血栓が回収された場合は、バルーンガイドカテーテルまたは診断カテーテルを介して別
の血管造影を実行するステップと、
前記カテーテルを取り外すステップと、を含む。
【0014】
また、任意の実施形態のカテーテルと、カテーテル近位部分に連結されたポンプと、血栓の吸引中に吸引圧力を変化させるように構成された制御部と、を備える吸引システムについて説明している。システムは、管腔圧力センサーを備え、前記制御部は、前記カテーテル管腔内の感知された圧力に従って吸引圧力を変化させるように構成されてもよい。
【0015】
前記システムは、管腔流体流量センサーを備え、前記制御部が管腔内の検知された流体変位に従って吸引圧力を変化させるように構成されていてもよい。
【0016】
前記制御部は、前記カテーテルの詰まりを防止することにより吸引の効率を改善するように、および/または血栓の離解および変形を促進して前記管腔を通過できるようにするように構成されてもよい。
【0017】
また、前記制御部が、血栓の吸引中に吸引圧力を変化させる、任意の実施形態の吸引システムの使用方法について説明している。管腔圧力センサーがあり、前記制御部は、前記カテーテル管腔内の検知された圧力に従って吸引圧力を変化させてもよい。管腔流体流量センサーがあり、前記制御部が管腔内の検知された流体変位に従って吸引圧力を変化させてもよい。好ましくは、前記制御部は、前記カテーテルの詰まりを防止することにより吸引の効率を改善するように、および/または血栓の離解および変形を促進して前記管腔を通過できるようにするように構成される。また、前記制御部は、測定された圧力に基づいて真空または正圧を提供し、方向を変えて圧力および流体変位を変えるように構成されていてもよい。
【0018】
前記制御部は、真空を適用するか加圧するかを決定するために、圧力または変位の上限値と下限値とを定義してもよく、および/または、それにより、前記制御部は、前記カテーテルに周期的に採取させ、必要に応じて少なくとも一部の血栓を排出させるように構成され、それにより血栓の変形が生じて血栓の効率が改善され、吸引の効率を向上させて前記カテーテルの詰まりを防止してもよい。前記制御部は、真空を引き始めて負圧が測定されるように構成されており、カテーテル先端の閉塞または部分的閉塞がない場合、これは、カテーテルを通る流体の自由な流れを表す公称読み取り値であり、カテーテルが前進して血栓と係合すると、真空の増加が観察されてもよい、
【0019】
前記制御部は、真空を増加させて血栓をより多く取り除き、圧力の下限値で逆行し、前記下限値は、真空中に血栓の一部が吸引されるが、血栓が不可逆的に詰まるほどではないように、および、完全な真空圧より高く設定され、カテーテルを詰まらせる可能性がある大きな血栓の採取を防ぐことができる。
【0020】
吸引システムの動作方法の他の態様は、添付の請求項113から135に示されている。例えば、前記制御部は、前記下限値を、-100mmHGと-200mmHgとの間、好ましくは-200mmHGと-300mmHgとの間、より好ましくは-400mHgと-500mHgとの間、より好ましくは600mmHgと-700mHgとの間に設定してもよく、前記ポンプの流体変位の方向を逆転させ、それにより、測定される圧力を増加させ、血栓をアンロードしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、添付の図面を参照して、例示として示される幾つかの実施形態の以下の説明からより明確に理解されるであろう。
【
図1】
図1は、カテーテルの遠位端の概略断面図である。
【
図2】
図2は、波形の深さが変化するカテーテル壁部分の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されるカテーテル全体の断面図である。
【
図5】
図5は、内側管状層と結合された外側管状層を有するカテーテル壁部分の概略断面図である。
【
図6】
図6は、遠位壁部分と近位壁部分との間の移行の概略断面図である。
【
図7】
図7は、遠位壁部分と近位壁部分との間の別の移行の概略断面図である。
【
図8】
図8は、従来のカテーテル設計(0.0254ミリメートル(0.001インチ)PTFEライナー上の0.127ミリメートル(0.005インチ)NiTiコイル上の0.80Aウレタンジャケット)と、非常に柔軟な波形ePTFE設計のとの3点曲げ試験で1mm変位で測定された力を示している。
【
図9】
図9は、制限に対して押されたときの圧縮下の従来のカテーテルの挙動を示している。
【
図10】
図10は、制限に対して押されたときの圧縮下の波形カテーテルの挙動を示している。
【
図11】
図11は、近位部分の遠位側の遠位先端内のカテーテル壁の漸進的により柔軟な(またはより少ない「押し込み性」)部分のカテーテル使用を示している。
【
図12】
図12は、内側のライナーを備えた、波形表面を有する外壁の断面図である。
【
図13】
図13は、内側のライナーがカテーテルの前に終端するカテーテルの断面を示す。
【
図14】
図14は、らせん状の支持体がカテーテルの管腔に露出されていないカテーテルの断面を示す。
【
図15】
図15は、近位部分および遠位部分で所望の柔軟性を達成するためのカテーテル壁のさらなる構造の詳細を示す。
【
図16】
図16は、らせん状の支持体を埋め込んで遠位端の近位側のカテーテルの部分の剛性をさらに増加させる、波形構造の外側に追加された外側管状層を示す。
【
図17】
図17は、波形ポリマージャケット付きカテーテル部分の製造ステップを示す図である。
【
図18】
図18は、ライナー、コイル、ならびに内側および外側管状層をそれぞれ有し、剛性を増大させるために充填されたカテーテル部分を示す。
【
図19】
図19は、内側と外側の両方の管状層の厚さが増加していることを示しており、この例では、コイルは、外側層と内側のライナーとの間で浮動していてもよいし拘束されていてもよい。
【
図20】
図20は、ライナー、コイルの下の外側ジャケット層、およびコイルの外側の2つの層を有するカテーテル部分を示しており、この例では、コイルはジャケット材料内で浮動していてもよいし拘束されていてもよい。
【
図21】
図21は、遠位先端の剛性の制御された変化を達成するために、正確なレベルの剛性を達成するために重ねられた複数の層を示しており、この例では、コイルはジャケット材料内で浮動していてもよいし拘束されていてもよい。
【
図22】
図22は、剛性を評価するための3点曲げ試験の結果を示すプロットである。
【
図23】
図23は、連続要素を形成するためにらせん状の支持体上で内側のライナーを反転させることによって仕上げられた遠位部分の最遠位端を示しており、この例では、コイルはジャケット材料内で浮動していてもよいし拘束されていてもよい。
【
図24】
図24は、らせん状の支持体の最後のコイルを越えて内側および外側管状層が延在することによって柔らかさが改善された遠位部分を示しており、この例では、コイルはジャケット材料内で浮動していてもよいし拘束されていてもよい。
【
図25】
図25Aおよび25Bは、内側のライナーが反転されて連続要素として戻るカテーテル構成のさらなる例を示しており、この例では、コイルはジャケット材料内で浮動していてもよいし拘束されていてもよい。
【
図26】
図26は、近位端と中間部分とを有するカテーテルにおいて、屈曲して戻されて連続している遠位端を含むカテーテルの全長に沿って延びるePTFE材料の内側管状層を示す。
【
図27】
図27は、カテーテルの遠位部分がePTFEであり、カテーテルのより近位部分がPTFEである内側管状層を示しており、近位ライナーが遠位ライナー内で同心であるバットジョイント(butt joint)が使用されている。
【
図28】
図28は、ポリマー材料からなる外側管状層と、異なる材料に移行する遠位ライナーとを有する、リブおよび凹部の波形の近位領域を示し、遠位ライナーが近位ライナー内で同心であるラップジョイント(lap joint)が使用されている。
【
図29】
図29は、らせん状の支持体がプラチナなどの放射線不透過性材料を覆うニチノールまたは他の材料の管状層で構成される、ジャケット内のらせん状の支持体のさらなる構成を示す図であり、この例では、コイルは浮動していてもよいし埋め込まれていてもよい。
【
図30】
図30は、らせん状の支持体がプラチナなどの放射線不透過性材料を覆うニチノールまたは他の材料の管状層で構成される、ジャケット内のらせん状の支持体のさらなる構成を示す図であり、この例では、コイルは浮動していてもよいし埋め込まれていてもよい。
【
図31】
図31は、その長さに沿った様々な位置に放射線不透過性マーカーを有するカテーテルを示す。
【
図32】
図32は、近位流れ閉塞を提供するための血栓切除処置におけるバルーンガイドカテーテルの典型的な従来技術のセットアップを示す一連の図である。
【
図33】
図33は、強化可撓性部分を遠位先端に有するバルーンカテーテルを示す。
【
図37】
図37の左の図は、C1およびC2セグメントを含む、外頸動脈、総頸動脈、および内頸動脈(ICA)を示す血管造影図を示し、右の図は、バルーンの許容可能な位置を示している。
【
図38】
図38は、同じ外径を有する近位シャフトと遠位シャフトとを示しており、近位シャフトは、2つの同心管腔を有し、中央管腔の直径は柔軟な遠位先端の直径よりも小さい。
【
図39】
図39は、バルーンと、近位部分よりも小さい外径を有する遠位部分とを備えたカテーテルを示している。
【
図40】
図40は、遠位部分の非波形の近位領域を有するカテーテルを示す。
【
図41】
図41は、柔軟な遠位先端の遠位端に放射線不透過性マーカーを有するカテーテル装置を示す。
【
図42】
図42は、大きいカテーテルが標的血管への流入を閉塞するために使用され、小さいカテーテルが血栓を回収するために使用される、母および娘カテーテル構成を示す図である。
【
図43】
図43の左の図は、薬物または塞栓の送達中に遠位標的血管(右)に到達できない小型カテーテルの使用、および結果として生じる非標的血管(左上の血管)への望ましくない送達を示す。右側の図は、標的血管を効果的に閉塞するように非常に柔軟な大径カテーテルが選択され、非標的血管を超えて配置できるため、塞栓の送達が標的血管にのみ生じる方法を示す。カテーテルは標的血管に留められることが好ましい。
【
図44】
図44(a)~
図44(e)は、吸引中の、カテーテル管腔内の圧力と血栓の挙動との間の関係を概説する概略図である。
【
図45】
図45は、ポンプを使用して身体から血栓または他の物質を吸引するために使用される設定を示す。
【
図46】
図46は、吸引処置中にポンプが真空を適用すべきか加圧すべきかを設定するための圧力監視を含むステップを示すフローダイアグラムである。
【
図47-1】
図47(a)~
図47(d)は、様々な実施例における血栓除去装置の動作を示す図である。
【
図47-2】
図47(e)~
図47(j)は、様々な実施例における血栓除去装置の動作を示す図である。
【
図47-3】
図47(k)~
図47(n)は、様々な実施例における血栓除去装置の動作を示す図である。
【
図49】
図49は、正の振動または振動信号の方法ステップを示すフローダイアグラムである。
【
図51】
図51(a)および
図51(b)は、真空および正の振動についてのフローダイアグラムおよび関連するプロットである。
【
図52】
図52(a)および
図52(b)は、吸引の正および負の調節についてのフローダイアグラムおよび関連するプロットである。
【
図53】
図53(a)および
図53(b)は、ポンプとその構成要素(ハウジング、接続管、オンオフスイッチ、バッテリーパック、脈動ポンプ、マザーボードなど)の画像であり、圧力センサーはカテーテルに接続されている管(または「管腔」)に接続されているためカテーテル内の圧力測定が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
様々な実施形態は、例示の目的で添付の図面に描かれており、実施形態の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。さらに、開示された異なる実施形態の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部である更なる実施形態を形成することができる。
【0023】
用語
「ジャケット」はカテーテルの壁であり、これらの用語は交換可能である。それは、長さ(縦方向)に沿ったすべてまたは一部の領域で波型になる場合がある。それは、ジャケット材料によって覆われたらせん状の支持体(または「コイル」)と内側のライナーとの何れか又はすべてを含み得る。内側のライナーは、存在する場合に管腔を画定するが、存在しない場合には他のジャケット材料が管腔を画定する。ライナーが存在する場合は、カテーテルにおける一部の場所で終端してもよい。
【0024】
「管状層」は、ジャケットの材料の層である。
「押し込み性」は、カテーテルの長さに沿って、カテーテルの近位部分に加えられた力および/または変位の、カテーテルのより遠位の部分への伝達として理解される。曲げ剛性が高いほど、押し込み性は高くなる。
「波形」は、カテーテルの外面にあるリブと凹部の形状であり、多くの場合スパイラルパターンである。
「遠位」は、使用中の臨床医から遠く、長手方向においてカテーテル先端に近いことを意味し、「近位」は、臨床医に近いことを意味する。
【0025】
図1は、柔軟性が高く、よじれに強いカテーテル1の実施形態を示す。カテーテル1は、遠位部分3、近位部分2、中央管腔5、およびカテーテルの長さ方向に延びるらせん状の支持体6などの補強構造を含む。近位部分および/または遠位部分と近位部分との間の移行部は、さまざまな実施形態において、2017年7月12日に出願された「高い柔軟性、よじれ耐性のカテーテルシャフト」と題された、付属書類に添付された米国特許出願
第15/647,763号に記載されているカテーテルの対応する特徴のいずれかを含み得る。内側の管状層および/または外側の管状層には、PTFE、ePTFE、エレクトロスパンPTFE、シリコーン、ラテックス、TecoThane、ナイロン、PET、Carbothane(Bionate)、SIBS、Tecoflex、Pellethane、PGLA、またはKynar、ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー、PEEKを含み得る。
【0026】
少なくとも遠位部分の内側および外側の管状層(
図1)は、材料の単一セクション、または類似もしくは異なる材料の多数の異なるセクションから形成することができる。この実施形態では、遠位部分の外側の管状層11は、ポリウレタン(例えば、Pellethane 80AE)から形成され、内側の管状層5は、ePTFEおよび/またはPTF
Eから形成される。
【0027】
この場合、カテーテルジャケットは、内側のライナー5と、らせん状の支持体6を備えた外側管11とで構成される。カテーテルの非常に柔軟な遠位部分3(左側)は、外側の管状層11の外面に波形15を形成することによって作成される。らせん状の支持体6は、
図1に示すように、外側の管状層11の波形と滑らかな内側の管状層5の外側との間に封入される。曲げられた波形壁構造の形成は、よじれの可能性を低減すると共に柔軟性を提供する。また、波形の外面は、カテーテルの外面が血管壁に接触したときに抵抗を減少させることができる。波形の深さは、
図2に示すように、カテーテルの長さに沿って剛性の望ましい変化を提供するように調整され得る。
【0028】
図1に示すように、パラメータ「D」は波形の深さであり、パラメータ「W」は波形の幅である。幅は、山から山への距離ではなく、むしろ谷の有効幅である。事実上、多くの実施形態について、これは、製造中に、管状層のまわりにシンチワイヤーを締め付け、熱処理し、シンチワイヤーを取り外して波形表面を提供することによって提供される。この場合の幅Wは、シンチワイヤーの直径とほぼ同じである。シンチワイヤーによって加えられる圧力がカテーテルの長さに沿って変化し、それによって一部の場所に他の場所よりも深いくぼみが形成されてもよいため、深さDは必ずしも均一ではない。
【0029】
図2は、内側層51と、らせん状のコイル支持構造52と、波形表面53を備えた外側層53とを有するカテーテル先端50の壁の断面図を示す。左側の波形の深さAは右側の深さBよりも大きい。より低い波形の深さBのセクションは、より柔軟性のある先端(左側)の前の移行領域として機能する。
【0030】
図1および
図3の例では、コイルはジャケットに埋め込まれており、まわりのジャケット素材に対する動きが制限されている。
【0031】
さらに、ピッチまたは波形幅の変動を使用して、波形領域の局所的な柔軟性を制御してもよい。また、柔軟性は、ジャケットに埋め込まれるか、または浮動されるコイルの長さを選択することによって製造中に設定されてもよく、浮動コイルを有する領域はより柔軟性を有する。コイルが浮動しているのは、ジャケットの管状層が内側のライナーへなど、波形のリブ間のスペースに取り付けられているジャケットの管状層の状況である。
【0032】
外側の管状層は、
図3および
図4(
図1のカテーテルをその全長で示す)に示すように、少なくとも非常に柔軟性の高い遠位部分の長さにわたって延びるか、または近位(中間部)長さに沿ってある程度の距離にわたって遠位部分を超えて延びるか、またはカテーテルの全長にわたって延びてもよい。外側の管状層をカテーテルの非常に柔軟な遠位部分を超えて少なくともある程度伸ばすことにより、カテーテルの遠位部分と近位部分との間の制御された剛性遷移、および外側の管状層と任意の更なる外側ジャケット材料との間の堅
固な接合の形成が可能になる。この場合も同様に、柔軟性は、
図3または
図4を参照して説明された実施形態のいずれかの場合と同様に、ジャケットに埋め込まれるかまたは浮動するコイルの長さを選択することによって製造中に設定され得る。
【0033】
管状膜に波形を形成するために、膜は、最初にらせん状の補強構造上に配置され得る。熱を加えると、外側の管状膜がリフローして、らせん状の構造の周囲に形成される。次に、テンションがかかったワイヤーを管状膜の外側に巻き付けて、膜の一部を、支持するらせん状の構造の各ループ間の溝に押し込むことができる。次に、管状膜をヒートセット加工して、波形を所定の位置に固定することができる。このプロセスの後、テンションがかかったワイヤーがほどかれ、波形が残される。
【0034】
内側の管状層は、カテーテルの近位部分まで延びて、途切れのない管腔を提供し、カテーテルの非常に柔軟な遠位部分とカテーテルの近位部分との間を結合する、または結合強度を改善し得る。内側の管状層の直径は一定であり得る(例えば、滑らかな表面)。
図4に示すように、内側の管状層は、ライナーの少なくとも一部または全体を形成し得る。内側の管状層は、ePTFEまたはPTFEなどの低摩擦材料から作製され得る。
【0035】
上記で説明したように、少なくとも遠位部分の外側の管状層は、ポリウレタン(例えば、Pellethane 80AE)から形成され、内側の管状層は、ePTFEおよび
/またはPTFEライナーから形成される。これらの層を一緒に取り付ける必要があり、フルオロポリマーは他の材料と強い結合を形成しないため、これは簡単に達成できない。
【0036】
フルオロポリマー(例えばePTFEやPTFE)間、およびフルオロポリマーとポリウレタン(例えばPellethane)などの他のポリマーとの間の結合を容易にするために、フルオロポリマーの外側または結合面を、FluoroEtchなどのナトリウムベースのエッチング液を使用して化学的に処理してもよい。エッチング液は、フルオロポリマーの表面からフッ素原子を取り除き、結合の準備をする。
【0037】
次に、エッチングされたフルオロポリマーを、ChronoFlexなどのウレタンの薄層でコーティングし得る。熱を加えると、この薄いChronoFlex層が流動し、
図5に示すように、フルオロポリマーを第2のエッチングされたフルオロポリマー層または別のポリマー層に結合するように機能する。これにより、コイルが埋め込まれる。
【0038】
この図は、その遠位部分150におけるカテーテルの断面の一部を示す。これは、ePTFEまたはPTFEのライナー151と、ウレタンまたはFEPテープまたはFEP粉末の結合層152とを含む。また、ePTFEまたはウレタン材料の外側ジャケット154にニチノール(登録商標)コイル153がある。ニチノールコイル153は、外側の管状波形層と滑らかな内側の管状層151との間に封入される。結合層151は、ライナー151を外側ジャケット材料に取り付ける目的を果たす。ライナーがePTFE材料の場合は、フッ素原子を剥がして結合層とのより良い結合を形成するようにエッチングする必要があろう。
【0039】
この場合も、
図6および
図7を参照して以下に説明する実施形態のいずれかの場合と同様に、ジャケットに埋め込むか、または浮動するコイルの長さを選択することにより、製造中に柔軟性を設定され得る。
【0040】
ChronoFlex(登録商標)の結合層152は非常に薄いため、壁の厚さに大きな変化は生じない。結合層の代替形式には、FEPの使用が含まれる。フルオロポリマーは、熱および圧力下で、コーティングされたフルオロポリマー層と第2の層との間に結合を形成するFEP粉末でスパッタコーティングされてもよい。極薄のFEPテープも同一
の適用で使用できる。
【0041】
らせん状の支持体は、
図5に示すように、波形の外側の管状層と滑らかな内側の管状層との間に封入される。内側の管状層と外側の管状層とは、結合層などの構造によって、らせん状の支持体の隣接するループ間のスペースに一緒に結合される。らせん状の支持体は、波形の外側の管状層によって形成されるらせん状チャネル内に結合され、つまり、らせん状の支持体は、分子的にまたは物理的に外側の管状層に結合される。また、らせん状の支持体は、滑らかな内側の管状層の外面に結合されてもよい。カテーテルの遠位部分は、波形の外側構造における固有の利点と、適切な剛性と厚さの材料を使用していることとにより、高い柔軟性とよじれ抵抗を保持する。
【0042】
本願の構成では、らせん状の支持体のピッチは、カテーテルの長さにわたって変化して、カテーテルの曲げ剛性に影響を及ぼしてもよい。例えば、らせん状の支持体は、遠位ループと比較して近位ループで異なるピッチを有し得る。
【0043】
カテーテルの遠位部分の外側の管状層がePTFEまたはPTFEなどのフルオロポリマーで形成されており、近位部分の外側の管状層が別のポリマーで形成されており、良好な結合が得られている場合、特に移行中の剥離に抵抗するものは難しいかもしれない。これは、
図6に示すように、カテーテルの近位部分の外層を、カテーテルの遠位部分の内側および外側の管状層の間に挟むことによって克服され得る。
【0044】
図6は、ライナーを備えた管腔201と、Pellethane 80AE材料の外層
203と、ニチノールコイル206とを有する、カテーテルの一部200を示す。右側では、カテーテルは滑らかな外面203を有し、遠位にある移行セクションには、深さが小さい波形204と、柔軟性を高めるために、より遠位にある深い波形205とがある。近位および遠位セクションの間に移行セクションを有する構成は、「サンドイッチ構成」と呼ばれ得る。
【0045】
カテーテルの遠位部分の内側の管状層が、近位部分の内側の管状層とは異なる材料または異なる材料部分から形成されている場合、
図7に示すように、小さなスリットまたは窓を、或る管状層に形成し、それを通して他の管状層の継ぎ合わせ長さを引っ張ることにより、管状層を結合することができる。次に、らせん状の支持体をこれらの層の外側に巻き付けて、それらをまとめる。
【0046】
図7は、近位端251、移行セクション252、および遠位先端253を有するカテーテルセクション250と、窓261を有する継ぎ合わされた近位層260とを示す。
【0047】
様々な実施形態では、らせん状の支持体は、カテーテル壁に拘束または埋め込まれることによって物理的に取り付けられ、その周囲の壁材料と共に移動する。このような埋め込みは、コイルとジャケット材料のみとの間の境界面、またはジャケット材料と内側のライナーとの境界面の組み合わせで達成され得る。
【0048】
埋め込みは、コイルと周囲の材料との間の非常にきついフィットによって達成され得る。概して、周囲の壁の材料とコイルとの間に隙間はない。コイルの3次元形状により、周囲の材料内では、独立して移動することはできない。
【0049】
コイルの周囲に材料を成形する製造技術のため、コイルとジャケットの間に遊びがなく、独立して移動することはできない。つまり、周囲のジャケット材料を同時に動かしたり変形させたりすることなく、コイルを動かすことはできない。
【0050】
この遊びの欠如とフィット感の堅さは、コイルと周囲の材料との間に境界面摩擦が存在することを意味し、さらに拘束を提供し、コイルと周囲の材料とが一緒に動かなければならないことを意味する。
【0051】
他の実施形態では、コイルは浮動してもよく、つまり、ジャケット内の材料とらせん状のコイルとの間にはきついフィットがなくてもよい。これらの例では、らせん状の支持体とジャケットとの間に多少の遊びがある。これは特に、らせん状の支持体を覆うジャケット材料がePEFEで構成される場合である。この場合、比較的タイトな幾何学的フィットが存在する場合でも、材料は非常にしなやかであり、ePTFEに対してらせん状の支持体を動かすことができる。
【0052】
概して、以下は、カテーテルの態様のいくつかの好ましいパラメータ範囲である。
カテーテルの長さの少なくとも一部では、波形の幅は、波形のピッチの50%以下である。
カテーテルの長さの少なくとも一部では、波形の幅は、波形のピッチの5%から49%の間であり、より好ましくは、波形の幅は、波形のピッチの15%から45%の間である。
カテーテルの長さの少なくとも一部では、波形の幅は、波形のピッチの20%から45%の間である。
【0053】
カテーテルの長さの少なくとも一部では、波形の幅は、ジャケットの厚さの少なくとも10%である。
テーテルの長さの少なくとも一部では、波形の幅はジャケットの厚さの少なくとも20%である。
【0054】
遠位部分の最も遠位の領域では、波形の幅がジャケットの厚さの少なくとも60%である。
遠位部分の最も遠位の領域では、波形の幅は壁の厚さの少なくとも60%であり、波形の深さは壁の厚さの少なくとも70%である。
【0055】
波形の深さに対する波形の幅の割合は、カテーテルの少なくとも1つの領域で少なくとも0.5である。
【0056】
以下に説明する実施形態では、特に明記しない限り、コイルは、カテーテルの一部またはすべての領域に埋め込まれていてもよいし浮動していてもよい。
【0057】
再びカテーテル構造の構成を参照して、柔軟性の高い遠位先端を備えたカテーテルを実現し、従来の構成よりも、曲げ剛性と押し込み性のスムーズな移行が、カテーテルの柔軟な遠位部分と近位部分の間で確実に達成されるようにしている。スムーズな移行により、カテーテルシャフト内に応力やひずみが集中する領域を防ぐ。そうした領域は、カテーテルのよじれ、材料の層の剥離、および/またはカテーテル内のキーボンド(key bonds)
への損傷を招く可能性がある。
【0058】
台上試験は、従来のカテーテル先端設計と非常に柔軟な波形設計の剛性の大きな違いを示す。このギャップをスムーズに埋めるには、技術的な課題がある。
【0059】
図8は、従来のカテーテル設計(0.025ミリメートル(0.001インチ)PTFEライナー上の0.45ミリメートル(0.018インチ)NiTiコイル上の0.80Aウレタンジャケット)と、非常に柔軟な波形ePTFE設計(内側および外側の0.05mm(0.002インチ)壁ePTFE0,9g/cm
3密度、0.125mm(0.
005インチ)NiTiコイル、0.45mm(0.018インチ)ピッチ)との3点曲げ試験で1mm変位で測定された力を示している。
【0060】
非常に優れたカテーテルシャフトの柔軟性により、カテーテルは小さな力で非常に曲がりくねった道を進むことができ、血管の損傷の可能性が低くなるが、押し込み性が多少損なわれる可能性もあることを理解されたい。明確にするために、押し込み性は、カテーテルの長さにわたって、カテーテルの近位部分に加えられた力および/または変位の、より遠位の部分への伝達として理解される。
【0061】
カテーテルの柔軟性は、カテーテルの近位部分に加えられた変位の、カテーテルの遠位部分への伝達を制限する場合がある。これは、
図9に示すように、変位の一部がカテーテルの全体的な変形によって吸収されることを意味する。
図9は、制限に対して押されたときの圧縮下の従来のカテーテルの動作を示す。この例では、カテーテル600の長さは変化していない。一般に、従来の構造のカテーテルで発生するのは、短縮の形式である。
【0062】
図10は、制限に対して押されたときの、圧縮下の波形カテーテル650の挙動を示す。薄い内側と外側の管状層を備えた波形の外側ジャケットの場合、変形はカテーテルの壁によって吸収される。カテーテルの内側と外側の管状層は局所的に、特に凹部内で変形する可能性があり、全長が短縮される。
図9に示すように、幾分かのカテーテルの全体的な変形も予想される。
【0063】
この柔らかい圧縮動作は、カテーテル先端が血管の損傷または切開を引き起こす前方に移動する能力が制限されるため、遠位先端において有利である。しかしながら、遠位先端が非常に長い場合、医師が意図したとおりに遠位および近位にカテーテルを通すことができるように、先端の近位部分ではある程度大きい押し上げ性が好ましい場合がある。
【0064】
一構成では、変化する押し込み性および柔軟性の1つまたは複数の領域が、リブおよび凹部構造の1つまたは複数の領域から構成されるカテーテル先端内に存在する。
図11は、カテーテル700において、近位部分702の遠位である、遠位先端内のカテーテル壁701の漸進的により柔軟なまたはより押し込み性の低い部分の使用を示す。一構成において、最も柔軟な領域は、カテーテルの遠位先端にある。
【0065】
押し込み性/曲げ剛性が増加/減少するこれらの領域は、らせん状の支持体の埋め込み、内側と外側の管状層の変更、または充填材の使用などの複数の機能によって実現される(らせん状の支持体は、内側と外側の管状層の間で浮動していてもよいし浮動していなくてもよい)。
【0066】
移行領域を介した剛性または押し込み性の変化は、緩やかな変化または複数の段階を介してもよい。段階的または緩やかに変化は、特定の管状層を終端させることによって、または波形の程度の変化もしくは材料の変化によって達成することができる。
【0067】
これらのアプローチのいずれかまたはすべてが、カテーテルシャフトの一部またはすべてで組み合わされることが想定される。以下に例を示す。
【0068】
少なくとも一部がらせん状の支持体を埋め込んだ波形材料からなる遠位先端であって、波形の程度は、剛性の増加を達成するように近位方向に徐々に変更される。最も遠位の領域には、ライナーがあってもよいし無くてもよい。ライナーはePTFEで、より近位の領域でPTFEに移行する。最も近位の部分は波形でなくてもよい。
【0069】
少なくとも一部が波形設計のePTFE層間の浮動コイルで構成された遠位先端であっ
て、ePTFE材料の厚さが近位に向かって次第にまたは段階的に増加する。これは、壁層の厚さを増加させることによって、または層の材料を追加することによって達成され得る。ePTFEライナーは、より近位の領域でPTFEに移行する。最も近位の部分は波形でなくてもよい。
【0070】
遠位領域は、波形設計のePTFE層の間の浮動コイルと、より近位で波形の埋め込まれた部分と、より近位で再び非波形部分とから構成され得る。ePTFEライナーは、より近位の領域でPTFEに移行する。遠位の波形領域は、壁の厚さを増すか、壁に材料の層を追加して剛性を増すことで、より近位の波形領域と組み合わされてもよい。最も近位の部分は波形でなくてもよい。
【0071】
一構成では、らせん状の支持体は、例えばePTFE材料の外側ジャケットに結合されることによって埋め込まれる。これは、浮動したらせん状の支持体と比較して、カテーテルの壁の構造を強化する効果があり、柔軟性が低下し、押し込み性が向上する。
【0072】
一構成では、カテーテル部分750において、らせん状の支持体752は、ePTFEなどの連続多孔質可撓性材料のマトリックス753に埋め込まれる。
図12に示すように、外壁は波形の表面を有する。
図12に示すように、内側の管状層、またはライナー751は、必要とされない場合がある。
【0073】
ePTFEはカテーテル構造に非常に柔らかい柔軟な材料を提供するが、その多孔性のために圧縮性もある。さらに、局所的に変形しやすい薄い管状層として使用する場合、カテーテルの領域が妨げられると、特に遠位先端が抵抗に遭遇すると、全体的な押し込み性が損なわれる可能性がある。高い柔軟性を維持しながら押し込み性を向上させるために、ePTFEなどの多孔質材料の代わりに、埋め込む目的で非圧縮性の柔軟な材料が使用されてもよい。これは、多孔質でない材料よりも容易に変形に対応できることを意味する。
【0074】
波形は局所的な変形を可能にし、連続的な非圧縮性材料の領域は、カテーテルの長さに沿った軸方向の力と変位の効率的な伝達を保証する。波形の深さを減少させ、それに応じて連続材料の厚さを増加させることにより、柔軟性が低下する一方で、カテーテルの押し込み性を増加させることができる。これは、波形ジャケット設計と記載され得る。
【0075】
一実施形態では、内側の管状層はePTFEで構成される。 一構成では、らせん状の
支持体は、ライナーに露出されないように、内側のライナーから移動される。これは、らせん状の支持体の移動または剥離を防ぎ、カテーテルのライナーに局所的な応力またはひずみが加わることを防ぐためである。波形の形状は、半円形、U字型の溝、V字型、または正方形の溝であり得る。
【0076】
一構成では、カテーテルの表面での波形の幅は、壁における壁の厚さの少なくとも5%である。好ましくは、少なくとも1つのセクションにおいて、カテーテルの表面における波形の幅は、壁における壁の厚さの少なくとも10%である。好ましくは、遠位先端の少なくとも1つの領域において、カテーテルの表面における波形の幅は、壁における壁の厚さの少なくとも30%である。
【0077】
一実施形態では、波形の深さは、カテーテル壁の厚さの5%から95%の間である。一構成では、波形の深さは、カテーテルの少なくとも1つのセクションにおけるカテーテル壁の厚さの少なくとも20%である。
【0078】
一実施形態では、波形の深さは、カテーテルの波形領域に沿って、遠位の大きな深さから近位の小さな深さまで変化する。一実施形態では、波形の幅は、カテーテルの波形領域
に沿って、遠位の大きな深さから近位の小さな深さまで変化する。別の実施形態では、波形の深さは、遠位の大きな深さから近位の小さな深さまで変化し、幅は、カテーテルの波形部分の長さに沿って実質的に一定である。
【0079】
一実施形態では、波形は、影響のない深さおよび幅、つまり波形無しの深さから、壁の厚さの少なくとも50%の深さまで巻かれた円形のらせん状のワイヤーの影響を表す。その場合、波形の幅は、0から、らせん状のワイヤーの直径に等しい最大幅、またはらせん状ワイヤーの除去後に残る影響に変化することを理解されたい。
【0080】
波形を生成するために、巻かれたシンチらせん状ワイヤーにテンションが必要であることを理解されたい。たとえば、2.2352mm(0.088インチ)内径の0,1524mm(0.006インチ)肉厚80Aのジャケット上に0.127mm(0.005インチ)の304ステンレス鋼の円形断面のワイヤーで、1Nの力で巻かれる1Nのテンションにより、波形の深さが10~20%になる。1Nテンション巻きのテンションを7Nの力に増加させると、波形の深さが40~70%になる。力のレベルを変化させると、さまざまな程度の波形を生じさせる。
図1に示されるような高さDの波形によってカテーテル部分が比較的低い力で屈曲できることを理解されたい。これは、カテーテルの全体的な曲がりが正に波形の凹部内に集中しているためである。
【0081】
しかしながら、波形が非常に狭い幅である場合、非常に深くて多数の波形であっても、カテーテルが対応できる屈曲の程度に制限がある。これは、隣接する波形が互いに接触し始めるためである。したがって、隣接する波形が互いに接触するまで、または「ボトムアウト」まで曲げ剛性は低くなり、その時点から曲げ剛性が増加する。続いて、カテーテル壁の残りの部分が変形することで曲がりに対応する(主として凹部内ではなくなる)。
【0082】
このボトムアウトは、カテーテルシャフトが、凹部内での変形を介して達成される曲げ半径の下限を持つことを意味する。ボトムアウトを超える曲げ変形は実現可能であるが、波形の凹部での変形によって対応されるのではなく、隣接する波形を互いに押し付けることで対応される。これは、概して、変形が凹部に集中しているときに低い曲げ半径で発生する変形と比較して、非常に大きな力によるものとなる。
【0083】
波形の幅は、凹部内で十分な変形に対応して、比較的低い曲げ力で曲げ半径の望ましい下限に到達するように十分な大きさになるように制御されることが求められる。医師は一般に、血管損傷の可能性を減らし、カテーテルが血管を変形させずに前進できるように、小さな力でカテーテルを操作できることを望んでいるため、これは重要である。
【0084】
波形の幅と深さは、カテーテルの曲げ剛性に寄与するが、幅は、カテーテルが変形できる曲げ半径の下限を規定し得る。したがって、波形の幅が大きいほど、小さい曲げ力での曲げ半径が小さくなり得る。
【0085】
内径2.2mm(0,088インチ)、壁の厚さ0.15mm(0.066インチ)、直径0.125mm(0.005インチ)のニチノールらせん状の支持体がePTFEライナー上で80Aに埋め込まれる例を考える。幅が0.1mm(0.004インチ)で波形の深さが0.1524mm(0.006インチ)のサンプルでは、0.05Nの3点曲げで1mmの変位、ボトムアウト半径5mmを生じさせる。波形の幅が0.175mm(0.007インチ)で波形の深さが0.1524mm(0.006インチ)のサンプルでは、3点曲げで同様の力が生じさせるが、ボトムアウト半径は3.5mmとなる。
【0086】
大きなカテーテルが脳血管に安全に入るようにし、頸動脈サイフォンのような低い半径の曲がりに対応するために、波形の幅は、ピッチや壁の厚さに対して最小値であることが
求められる。
【0087】
一実施形態では、波形の幅は、波形のピッチの50%以下である(らせん状の支持体のピッチと同一)。好ましくは、波形の幅は、波形のピッチの5%から49%の間である。より好ましくは、波形の幅は、波形の15%から45%の間である。より好ましくは、波形の幅は、波形の20%から45%の間である。
【0088】
一実施形態では、波形の幅は壁の厚さの少なくとも10%である。好ましくは、波形の幅は、壁の厚さの少なくとも20%である。一実施形態では、先端の最も遠位のセクションでは、波形の幅は、壁の厚さの少なくとも60%である。
【0089】
一実施形態では、先端の最も遠位のセクションでは、波形の幅は壁の厚さの少なくとも60%であり、波形の深さは壁の厚さの少なくとも70%である。
【0090】
別の実施形態では、波形は、影響のない深さおよび幅、つまり波形無しの深さから壁の厚さの少なくとも70%の深さまで巻かれた円形のらせん状のワイヤーの影響を表す。
【0091】
一構成では、内側の管状層(ライナー)は、カテーテルの遠位端の近位の領域で終端する。これにより、波形または非波形構成のカテーテルの剛性がさらに低下する。この場合、特にカテーテル壁がシリコーン、ウレタン、またはペバックスなどの材料で構成される場合、ライナーのない領域は粘着性であってもよい。一実施形態では、ライナーのないカテーテルの管腔の領域は、潤滑性をよくするために親水性または疎水性コーティングを有する。これは、外側ジャケット762に埋め込まれたらせん状の支持体761を有するカテーテル部分760について
図13に示され、内側のライナー763がこの長さの一部にわたって延在し、遠位端(左側)の前で終端している。
【0092】
一実施形態では、裏打ちされていない部分は、長さが少なくとも1cm、好ましくは長さが少なくとも2cmである。ライナーの終端は、カテーテルのより柔軟な部分を可能にする点で有利である。ただし、これにより、曲げ剛性と、よじれまたは高い応力またはひずみが発生する可能性のある場所とが、突然変化し得る。これは、波形パラメータの変更を使用するか、ライナーを削ることによって管理し得る。別の実施形態では、ライナーの終端はスカイブ(skive)、または山形(angular)カットである。
【0093】
一構成では、ライナーに近位で隣接する裏打ちされていないジャケット材料のセクションは、遠位および近位で裏打ちされていないジャケットのセクションよりも波形が少ない。これは、波形の深さを減らすことによって達成されてもよい。別の構成では、裏打ちされていないジャケットに隣接する裏打ちされているジャケットの波形セクションは、遠位および近位の裏打ちされていないジャケットのセクションよりも長いピッチを有する。
【0094】
一構成では、らせん状の支持体は、
図14に示すようにカテーテルの管腔に露出しないように内側のライナーから移動され、外側ジャケット772にらせん状の支持体771を有する。これは、カテーテルが曲がるときにらせん状の支持体のカテーテルの管腔への飛び出しを防ぐためである。一実施形態では、管腔かららせん状の支持体までの距離は、少なくとも0.005mmである。
【0095】
図15を参照すると、カテーテル部分780には、らせん状の支持体781と、外側ジャケット782および内側のライナー783とがある。外側ジャケット783は、波形のない近位の一部784と、波形のある遠位の一部785とを有する。内側のライナー783は、786で遠位端の近位で終端する。これは、遠位先端の最も遠位のセクションが、ライナーのない波形のジャケットで構成され、より近位のセクションが、波形でライナー
を含み、さらに近位の少なくとも1つのセクションがより波形であり、さらにより近位の少なくとも1つのセクションが再び波形ではない、構成の例である。一実施形態では、ジャケットのすべてのセクションは、同じ材料デュロメーターのものである。一実施形態では、材料は、デュロメーター80Aのウレタンである。別の実施形態では、より硬いウレタン製のより近位のジャケットまたはペバックスが存在する。ライナーはePTFEで構成されている。シャフトのより近位のセクションでは、ライナーはPTFEに移行する。一実施形態では、この移行は、波形の遠位先端のジャケットのそれよりも硬いデュロメーター材料で行われる。
【0096】
一実施形態では、カテーテル部分800は、カテーテル部分750と同様に、ライナー751と、らせん状の支持体752と、外側ジャケット753とを有する。ただし、この例では、波形構造の外側に追加された外側管状層801が追加されており、これは、
図16に示すように、らせん状の支持体を組み込んで、カテーテルの遠位端の近位側のセクションの剛性をさらに高めている。この層は、らせん状の支持体を覆うのに使用される材料と同一または異なる材料であり得る。この例では、PET、ナイロン、 PEEK、また
は他のポリマーなどの剛性の高い材料が、形状を大幅に増やすことなく使用され得る。一実施形態では、0.05mm以下、好ましくは0.025以下、より好ましくは0.0125mm以下の厚さを有するPETの層が追加される。
【0097】
波形ポリマージャケット付きカテーテルセクションを製造するために、いくつかのアプローチをとることができる。
図17に示すように、以下のステップを使用できる。
【0098】
ポリマージャケット753内に埋め込まれたコイル752を収容する従来のカテーテル構造が、PTFEライナー751に結合され、ベースアセンブリを形成するように構築される。
【0099】
次に、ポリマージャケットに結合しない外側のライナー811が、ジャケット付きコイルの上に配置される。FEPまたはPTFEまたはより好ましくはePTFEなどの高い柔軟性のフルオロポリマーを使用することができる。
【0100】
ワイヤー810は、テンション下で外側のライナーの外側にらせん状に巻かれ、構造に波形形状を与える。これは「シンチワイヤー」と呼ばれ得る。
【0101】
構造を加熱して材料をリフローまたは焼き戻しし、波形形状に設定する。
アセンブリを冷却する。
シンチワイヤー810を取り外す。
外側のライナー811をアセンブリから剥がして、プロセスを完了する。
【0102】
充填材は、柔軟性を管理し、押し込み性を向上させるために使用されてもよく、使用する場合にはコイルが埋め込まれてもよい。
図18は、ライナー851と、コイル852と、内側および外側の管状層853、854とをそれぞれ備え、剛性を高めるための充填物を備えたカテーテル部分850を示す。
【0103】
一実施形態では、材料は、
図18に示すように、らせん状の支持体のまわりの空間を部分的に満たすためだけに使用される。別の実施形態では、充填材は、内側の管状層と外側の管状層との間のらせん状の支持体のまわりのらせん状チャネルを完全に満たす。さらに別の実施形態では、充填材が溶融されて、らせん状チャネル内のすべての表面に材料の層が形成される。
【0104】
一実施形態では、外側および内側の管状層は、ePTFEまたはPTFEで構成され、
充填材はPET、PEEKまたはFEPである。
【0105】
らせん状チャネルは、外側の管状層の外側に一時的に配置されるらせん状に巻かれたワイヤー(シンチワイヤー)を使用して形成されてもよい。らせん状チャネルを恒久的に形成するために、次に、充填層が溶融してらせん状の支持体と、外側の管状層と、内側の管状層との間を流れるように構造を加熱してもよい。外側の管状層にあるらせん状に巻かれたシンチワイヤーを冷却して取り除くと、波形の形状が維持され、充填材を介してコンポーネント間に接着剤の化学結合が達成される。
【0106】
一構成では、充填材は、ポリウレタン、ペバックス、PET、シリコーン、ラテックス、TecoThane、ナイロン、PET、Carbothane、SIBS、Tecoflex、Pellethane、PGLA、またはKynar、ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー、PEEKであり得る。
【0107】
一構成では、ePTFEの内側の管状層と外側の管状層とは、焼結によって互いに結合される。フルオロポリマーの場合、特に内側および外側の管状層として使用するためのePTFEまたはPTFEの場合、焼結に必要な温度は500℃を超え得ることを理解されたい。この例では、PET、FEP、またはPEEKなどの高い処理温度と分解温度の充填用材料を使用することが望ましいかもしれない。ウレタンまたはペバックスなどの他の材料は、低温で劣化するため、適切でない。
【0108】
PETは比較的硬い材料であるため、少量で導入して、カテーテルの形状に大きな影響を与えたり、らせん状チャネルを完全に埋めたりすることなく、波形の構造を硬化させることができる。これにより、浮動および埋め込みコイルの領域が提供される。
【0109】
一構成では、管状層の一方または両方の厚さを変化させることにより、押し込み性または剛性の増加が達成される。厚さが増すと、壁の本来の剛性が増加する。また、局所的な材料の曲げや変形に利用できるスペースが減少する。そのため、柔軟性が低下し得る。さらに、厚さが増加するにつれて、力の伝達軸に沿った軸方向断面積およびカテーテルに沿った変位が増加する。
【0110】
一実施形態では、カテーテル部分950について、
図19に示すように、カテーテル部分900と比較して、内側と外側との両方の管状層の厚さが増加する。カテーテル部分900には、内側のライナー901と、コイル902と、外側の管状層903とがある。カテーテル部分950には、より厚い内側のライナー951と、コイル952と、より厚い外側の管状層953とがある。別の実施形態では、内側の管状層の厚さのみが増加する。さらに別の実施形態では、外側の管状層の厚さのみが増加する。
【0111】
別の構成では、同じ材料の1つまたは複数の層を追加することによって、外側の管状壁全体の厚さを変更することができる。
図20を参照すると、カテーテル部分1000は、ライナー1001と、コイル1005の下の外側ジャケット層1002と、コイル1005の外側の2つの層1003、1004とを有する。
【0112】
1つまたは複数の層を追加することによって、内側の管状層の壁全体の厚さを増加させることができる。これらの層は、同一のまたは異なる材料であってもよい。ePTFEの場合、拘束されていない構成における内側の管状層の合計の厚さは、0.025mmから0.3mmの間、好ましくは0.05mmから0.2mmの間であり得る。
【0113】
一構成では、内側および外側の管状層は、ePTFEの複数の層から構成され、外側の管状層と内側の管状層との間に少なくとも1つの層が存在する。1つまたは複数の層から
なる(例えば、ePTFE)管状層の総厚は、0.025mmから0.3mmの間、好ましくは0.05mmから0.2mmの間であり得る。材料の密度(再び、ePTFEなど)は約0.9g/cm3である。材料の密度を増加または減少させると、同じ効果を達成するために、壁の厚さを大きくまたは小さくする必要がある。
【0114】
別の実施形態では、内側の管状層の厚さは先端の長さに沿って一定であるが、外側の管状層の厚さは少なくとも1つの領域でより大きい。別の実施形態では、外側の管状層の厚さは、カテーテル先端の長さに沿って少なくとも一度近位に向かって増加する。
【0115】
遠位先端部の剛性の制御された変化を達成するために、カテーテル部分の一部に追加の外層1010が存在する
図21に示すように、複数の層を重ねて正確なレベルの剛性を達成し得る。この原理は、剛性の望ましい変化を達成するために、任意の数の層に使用できる。同様に、単一のより厚い層を近位で使用し、より遠位でより薄い層に接続して、同じ効果を達成してもよい。
【0116】
一実施形態では、先端は、先端の長さにわたって0.025mm~0.75mmの1つの外側の管状層を有する。より近位の領域に、厚さ0.025mm~0.75mmの第2の更なる外側の管状層が存在する。厚さ0.025mm~0.75mmの第3の更なる外側の管状層が、さらに近位の領域に存在する。厚さ0.025mm~0.75mmの第4の更なる層が、さらに近位の領域に存在する。
【0117】
一実施形態では、遠位先端は、先端の長さにわたって0.05mmの外側の管状層を含む。厚さ0.05mmの第2の更なる外側管状層が、より近位の領域に存在する。厚さ0.05mmの第3の更なる外側の管状層が、さらに近位の領域に存在する。厚さ0.05mmの第4の更なる層がさらに近位の領域に存在する。
【0118】
一構成では、管状層は互いに結合される。結合は、管状層の境界面全体にわたって存在し得る。あるいは、結合は、内側および外側の管状層が接触している領域の波形の凹部にのみ存在し得る。さらに別の実施形態では、結合は、波形のリブ領域と凹部領域の層間に存在する。別の実施形態では、内側または外側の管状層の材料を、より高い剛性を有するものに変更して、壁の剛性を高めてもよい。
【0119】
管状の層の間の強い結合を確保するための局所的な圧縮(圧力)の使用により、内側と外側の管状層、またはそれらの構成層の結合に続いて、管状層の厚さのいくらかの変動が局所的に存在し得ることに注意されたい。これは、多孔質の圧縮可能な材料であるePTFEで特に当てはまる。この局所的な圧縮により、その領域の壁の厚さが減少するかもしれない。
【0120】
上記の実施形態のサブセットを評価するために、内径2.2mm(0,088インチ)8Fカテーテルサンプルが構築され、3点曲げ試験で試験された。1mmの変位での力は、Zwick Roel引張試験機で50Nロードセルを使用して測定された。支持体間の距離は20mmであった。上記で概説したさまざまな構成を使用して、剛性の明確な変化が達成された。
【0121】
上述の実施形態は、必要に応じてカテーテル壁の剛性を変更するために使用できることを理解されたい。比較のために、神経血管系での使用が示されている6F Microvention Sofia Plusカテーテルが含まれている。
図22は、上述の様々な実施形態の剛性を評価するための3点曲げ試験の結果を示している。
【0122】
神経血管系では、M1、M2、ICA、脊椎および脳底動脈などの繊細な血管に入ると
きに、非外傷性の先端が非常に重要である。カテーテルの先端が血管の損傷を引き起こすのではなく、変形をゆがめるまたは吸収するように、遠位先端はその最も柔軟な部分の最小限の長さを有することが好ましい。
【0123】
一実施形態では、波形リブおよび凹部設計のカテーテルの遠位および可撓性セクションは、長さが最小で1cmであり、らせん状チャネル内に浮動するらせん状の支持体を備えた、波形構成における内側および外側の管状層から構成される。8Fカテーテル遠位先端の一実施形態では、20mmのスパンでの1mmのたわみでの3点曲げ試験における力は、0.1Nを超えない。
【0124】
図23に示されるように、一構成では、遠位部分の最遠位端1050は、らせん状の支持体上で内側の管状層1051を反転させて連続要素を形成することによって仕上げられる。
【0125】
図24を参照すると、別の実施形態では、遠位端1060において、遠位先端の柔らかさは、らせん状の支持体の最後のコイルを越えて内側および外側の管状層1061および1062を延ばすことによって改善される。
【0126】
図25Aに示されるように、遠位部分1070では、内側の管状層1071が遠位端1072で反転されて、連続要素として戻る。内側と外側の管状層は同一材料で構成されて連続する。波形セクションの端1072にePTFEの延長部分があり、先端の柔らかさを改善している。好ましくは、最後のコイルを超えた延長は、0.5から5.0mmの間である。より好ましくは、最後のコイルを越えた延長は、1.0から0.3mmの間である。また、遠位部分1070は、遠位端1072の前で終結する外側の管状層1073と、層1073の長さの一部について層1073のまわりにある同心のさらなる外側の管状層1074とを有する。この互い違いの重なり合う構成は、曲げ剛性の段階的変化を伴う遷移部分を提供する。
【0127】
図25Bは、遠位先端で外側に延びて延長部を形成する内側のライナー1081を備えたカテーテル遠位部1080を示す。この例では、重なり合った互い違いの外側の管状層1083および1084もある。
【0128】
カテーテル1070では、2つ以上の層が、カテーテルの長さまたは一部に沿って反転されて戻された同一材料片を使用することによって達成される。一例では、2つのePTFE片を使用して、1つの内側の管状層と3つの外側の波形管状層とを達成する。
【0129】
カテーテル1080では、更なる層が個別に追加されている。別の実施形態では、反転された連続層と離散層との組み合わせが使用される。カテーテルの近位部分(波形ではなく示されている)は、波形であっても波形でなくてもよい。
【0130】
PTFE材料はePTFEに比べて比較的硬い材料であるため、特に曲がりくねった血管を通過するときに著しく曲がる領域では、PTFEを内側の管状層(ライナー)として使用しないようにするのが望ましい。一実施形態では、
図26に示すように、近位端1101および中間部分1102を有するカテーテル1100では、内側の管状層はePTFE材料であり、これは遠位端1103を含むカテーテルの全長に沿って延び、遠位端1103で外側の管状層と連続するように曲げられる。
【0131】
一構成では、内側の管状層は、近位端1151、中間部分1152、遠位部分1153を有するカテーテル1150について、
図27に示すように、カテーテルの遠位部分におけるePTFEとカテーテルのより近位の部分におけるPTFEとである。中間領域と移
行領域とには、層の外側ジャケットの層がPTFE材料の外側ジャケットに融合および接合される移行領域1154がある。ePTFEからPTFEへの移行は、「バット(butt)」ジョイントによって達成され得る。このジョイントでは、PTFEとePTFEの内側の管状層が重なり合うことなく接触する。
【0132】
別の実施形態では、ePTFEの内側の管状層からPTFEへの移行は、使用中に著しい屈曲を受けないカテーテルの領域で生じる。一構成では、装置寸法は、M2、M1、および遠位内頸動脈を含む神経血管系への配置に適している。好ましくは、ePTFEからPTFEへの移行は、ICAの錐体部の近位で生じる。一構成では、ePTFEからPTFEの内側の管状層への移行は、カテーテルの遠位端から3から40cmの間、好ましくは遠位端から5から30cmの間、より好ましくは遠位端から少なくとも10cmにおいて生じる。
【0133】
一構成では、ePTFEの内側管状層からPTFEへの移行は、リブおよび波形凹部のカテーテル領域に近い領域で生じる。別の構成では、ePTFEの内側の管状層からPTFEへの移行は、リブと凹部の波型設計の最も柔軟な領域の近位で生じるが、リブおよび凹部の波形設計のより硬い領域内でも生じる。
【0134】
一実施形態では、リブおよび凹状の波形の近位領域は、
図28に示すように、ポリマー材料から構成される外側の管状層を有する。一構成では、ポリマー材料はウレタンまたはペバックスである。一実施形態では、ポリマー材料は、80Aウレタンである。
図40は、近位端1201、中間部分1202、遠位部分1203、および移行領域1204を有するカテーテル1200を示す。ePTFEの内側の管状層(ライナー)1207は、遠位先端の波形セクション内で中間部分におけるPTFEジャケット1205に移行する。PTFE管状層1208がePTFE管状層1207内で同心であるラップジョイントが使用される。
【0135】
別の実施形態では、ePTFEからPTFEへの移行は、ePTFEとPTFEの管状層の重なりがある「ラップ(lap)」ジョイントを介して達成されてもよい。一構成では
、PTFEとePTFEの間の重なりは、長さが1mmから30mmの間である。重なりを使用すると、接合のための境界面の面積が増加し、接合強度が向上する。
【0136】
図29に示すように、一例では、ePTFEは、PTFE内で同心である。この図では、カテーテル1250は、近位端1251、中間部分1252、および遠位部分1253を有する。内側のライナー1260は、遠位端を超えて曲げられ、遠位部分1253の外側ジャケットの部分を形成する。中間部分1252と遠位部分1253との間の移行領域で、内側のライナー1260はPTFE材料1261の管内にあり、オーバーラップ長さは少なくとも2mm、好ましくは少なくとも5mmである。管状層1261は、中間部分1252のジャケット材料1262内で近位に延在する。これは、遠位先端の波形セクション内のePTFEに内側の管状層(ライナー)がPTFEに移行する構成を提供する。
ePTFE管状層1260がePTFE管状層1261内で同心であるラップジョイン
トが使用される。
【0137】
一構成では、プラチナのらせん状コイルで構成されるマーカーが遠位先端に存在する。
一実施形態では、らせん状の支持体は、プラチナワイヤーなどの放射線不透過性材料から構成されてもよい。別の実施形態では、放射線不透過性でニチノールの超弾性特性を活用するために、らせん状の支持体は、プラチナまたは他の放射線不透過性材料で満たされた(ニチノール#1 DFT、Fort Wayne Metalsなどの)延伸ニチノール管で構成され得る。これにより、医師は、処置を通してX線で遠位先端の挙動を観察することができる。一実施形態では、らせん状の支持体管は、少なくとも10%のプラチ
ナで構成される。
図30は、カテーテル部分1280がそのまわりにコーティング1282がある放射線不透過性らせん状コイル1281を有し、外側ジャケット上に管状層1283がある構成を示す。
【0138】
一構成では、遠位先端の放射線不透過性は、より高い密度の放射線不透過性の領域が達成されるように、らせん状の支持ピッチが低減される領域を介してさらに高められる。
【0139】
図31は、その長さに沿った様々な位置にある放射線不透過性マーカー1270を備えたカテーテルを示している。利点と新しい態様は、医師が、カテーテルが血管系のよりデリケートな領域に配置されないように、より硬い領域を確保できることである。たとえば、柔軟な遠位先端の始点にある近位マーカーは、内頸動脈の頸部C1セグメントを超えて配置すべきでない近位カテーテルの領域を判断するために使用され得る。さらに、中間マーカーは、海綿状部分C4の前、中、または先に配置されるべきではない中間の柔軟性のある領域の端を区別するために使用され得る。中間マーカーと遠位マーカーとの間の領域は、内頸動脈のC4~C7領域、およびより遠位の血管に配置するのに適した最も柔軟な領域を確立する。
【0140】
装置が神経血管系への配置に適している一実施形態では、遠位の柔軟な先端の長さは少なくとも10cmであり、裏打ちされていない遠位部分は少なくとも3cmの長さである。装置が末梢血管系への配置に適している別の実施形態では、
【0141】
カテーテルを含む吸引装置。
任意の例のカテーテルは、例えば血栓切除のために使用されてもよい。
【0142】
最近の臨床データは、バルーンガイドカテーテルを使用して血流停止を使用すると、血栓摘出手術中の血栓摘出手術中の結果を改善できることを示している。これは以下によって行われる:
バルーンがICAの血栓の近位で膨張している間、血栓への流れが減少する。血流を減らすことにより、ステントリーバーまたは吸引カテーテルを使用した血栓の回収中に、遠位塞栓が壊れる、または遠位に運ばれる可能性が低くなる。
ステントリーバーまたは吸引カテーテルによって血栓がBGCに取り込まれ、標的部位から牽引された後、血栓がBGCに入るときに吸引用の管腔を提供する。
【0143】
血栓摘出手順におけるバルーンガイドカテーテルの先行技術のセットアップは、バルーン1300および先端1301を有する、
図32に概略的に示される。血栓摘出術で使用するためのバルーンガイドカテーテルは、マイクロカテーテルと遠位アクセスカテーテルの挿入を容易にしなければならない。これを行うには、バルーンガイドの内径が5F以上の範囲でなければならない。なお、カテーテルの外径は通常、8Fまたは9Fの範囲である。
【0144】
上記の寸法での既存のカテーテル技術は非常に硬い。これは、使用されているカテーテルの材料、設計、および構造によるものである。したがって、バルーンガイドカテーテルの遠位先端は、錐体部を超えて配置することはできません。過度の剛性は、カテーテルが、遠位ICAおよび血栓が配置されている可能性のある他の標的血管の蛇行性をたどるのに十分な柔軟性がなく、血管の損傷または穿孔の可能性が高いことを意味する。
【0145】
理想的には、バルーンガイドカテーテルの先端は、可能な限り血栓に近いべきである。これにより、血栓が標的血管からバルーンガイドカテーテル先端の位置まで牽引しなければならない距離が短くなる。また、カテーテルの先端が血栓に係合できるようになるため、医師が血栓を局所的に直接吸引できるようになる場合もある。
【0146】
いくつかのシナリオでは、バルーンが膨張している間に、バルーンガイドカテーテルを使用して血栓の遠隔吸引が行われる。遠隔吸引は、カテーテルの先端が血栓と接触することなく血栓が吸引される手順である。これは、代替の流路が存在しない閉じたシステムで特にうまく機能する。この技術の成功は、カテーテルの先端が血栓から遠く離れているという事実によってしばしば制限される。
【0147】
バルーンカテーテルは、PTAと塞栓保護のどちらに使用される場合でも、通常、バルーンに近接する長さに沿った二重管腔の2層構造である。これにより、2つの管腔が確保される。1つはガイドワイヤー、カテーテル、または流体の通路、もう1つは膨張用の管腔である。この2層構造は、必ずしも望みどおりの柔軟性を備えているわけではなく、よじれがちである。
【0148】
したがって、流れを止めることができ、遠位ICAなどの曲がりくねった血管を通って、またはMIもしくは他の血管系までたどることができる非常に柔軟な遠位部分を組み込んだバルーンガイドカテーテルが求められる。
【0149】
一実施形態では、バルーンカテーテルのバルーンの遠位に、近位セクションと比較して強化された可撓性を有するシャフトまたはセクションが存在する。この柔軟なセクションにより、バルーンの先端を血管系のより遠位に配置できる。強化された柔軟性のこのセクションは、「高柔軟性、よじれ耐性カテーテルシャフト」と題された2017年7月12日に提出された米国特許出願第15/647763号、および「高柔軟性、よじれ耐性カテーテルシャフト」2017年12月15日に提出された米国仮特許出願第62/599560号に記載されているタイプ、波形構造または他の設計(どちらも付属書類に含まれる)で構成される。
【0150】
この装置は、真空吸引のために遠位先端が血栓に到達して触れるのに十分に柔軟であるように設計され得る。(バルーンなどの)流れ制限器の遠位にある一部は、遠位部分、好ましくは移行部分の少なくとも一部を含む。流れ制限器の近位にある移行部分の一部が更にあってもよい。
【0151】
この柔軟なセクションの長さは、遠位内頸動脈、内頸動脈の末端、近位MI、遠位MI、近位M2、遠位M2、脳底、または脊椎血管などの特定の解剖学的位置に到達できるように変えてもよい。この長さは、カテーテルの先端が標的血管に到達できるときに、バルーンがICAの海綿状部分または錐体部を通過しないようにするのにも役立つ。これらのセグメントを超えてバルーンが膨張すると、血管の損傷を招くおそれがある。柔軟な部分の長さは、1cm~20cm、好ましくは3cm~15cmであってよい。
【0152】
この柔軟な先端の外径は、カテーテルの近位セクションの外径とは異なっていてもよい。一実施形態では、遠位セクションは、近位セクションよりも大きな直径を有する。さらに別の実施形態では、外径は、カテーテルの近位セクションの直径よりも小さい直径を有する。遠位セクションの直径のテーパーなどの変化も使用され得る。異なる直径の遠位セクションは、バルーンを位置させる領域を超えて特定の血管へのアクセスを確保するのに役立つ。
【0153】
図33は、バルーン1352から延在してその近位にY型部品1354から延在するカテーテル主要部1353がある柔軟な遠位カテーテル先端1351を備えた装置350を示す。
図10は、バルーン352と、内層膨張管腔1360と、外層膨張管腔1361とを示す。
【0154】
一構成では、バルーン膨張管腔の外層は、柔軟性が強化されてもよく、バルーン膨張管腔の内層は、単層材料、編組押出、コイル押出、または他の構造を備える従来の構造であり得る。これらの層は、内層1360、および外層1361を含む
図34に概略的に示されている。このようにして、外層が柔軟性の点で妥協を抑え、カテーテルの押し込み能力は内層によって維持され得る。さらに、力学により、管の外径に対する内径の割合が増加すると、ねじれ抵抗が減少するため、この構造はよじれを防止するのに役立つ。外側の強化された柔軟性のある構造を使用すると、従来のよじれが発生しやすいこの問題が解決される。
【0155】
別の実施形態では、二重層構造のバルーンカテーテルは、柔軟性が強化された構造のバルーン膨張管腔の内層と外層との両方を備える。これは、非常に柔軟でよじれに強いバルーンカテーテルとなろう。
【0156】
他の構成では、近位セクションは、通気孔および漏れ防止シールを備えた単一管腔設計、同軸管腔、または他の設計といった他の構造を利用してバルーンを膨張させてもよい。
【0157】
血栓に到達することができる長い遠位先端を有するバルーンガイドカテーテルは、以下のように血栓切除装置として使用され得ることに留意すべきである:
血管造影を実行して、閉塞の位置、および錐体または海綿状頸動脈と閉塞との間の距離を判定する。
遠位先端の長さが血栓に到達するのに適したバルーンカテーテルを選択し、バルーンの膨張が錐体または海綿状頸動脈を超えないようにする。
カテーテルの遠位先端を血栓まで操縦する。
流れを停止できるようにバルーンを膨らませ、吸引の効果を低下させる可能性のある代替の流路を最小限に抑える
カテーテルの管腔を真空にして血栓を吸引する。
血栓が回収されると、バルーンガイドカテーテルまたは診断カテーテルを介して別の血管造影を実行する。
バルーンガイドカテーテルを取り外す。
処置は終了される。
【0158】
上記の方法では、標的血管の径に近い大きな径の遠位先端を使用すると、完全な血栓の取り除きの可能性が高くことに留意されたい。
【0159】
さらに別の実施形態では、更なるらせん状のワイヤー支持なしで、代わりに波形構造を有する単純な管状構造を使用して、強化されたカテーテルシャフトの柔軟性およびよじれ抵抗を達成することができる。波形は、
図35と
図36にそれぞれ示すように、管の壁の厚さにおける隣接する円形のくぼみとして、または連続的ならせん状のくぼみとして定義され得る。これらの図において、先端は、波形1401(
図35)を備えた外層1400と、所望の柔軟性のためにより浅い波形を備えた外層1450とを有する。
【0160】
装置は、遠位先端が、真空吸引のために血栓に到達してそれに触れるのに十分な柔軟性があるように設計されてもよい。典型的な標的血管は、M1、M2、M3、遠位ICAである。
【0161】
遠位先端は、標的血管に到達するのに十分な長さであり、バルーンが内頸動脈(C2として知られている)の錐体部分を通過しないような長さである必要がある。これは、錐体セグメントを超えた血管と周囲の組織が損傷を受けやすく、壊滅的な結果をもたらす可能性があるためである。
【0162】
膨張したときのバルーンの位置が頸動脈のC1セグメント内であることを保証することが好ましい。効果的な血流制限および/または逆流を保証にするために、バルーンが外頸動脈の遠位にあることも好ましい。柔軟性部分の長さは、1cmから20cmの間、好ましくは3cmから20cmの間であり得る。
【0163】
図37の左の画像は、C1およびC2セグメントを含む、外頸動脈、総頸動脈、内頸動脈(ICA)を示す血管造影図を示し、右の画像は、遠位先端2281の近位にあるカテーテル2280内のバルーン2282の許容可能な位置を示している。カテーテルの遠位先端の長さは、ICAのC2セグメント内または近位の安全な位置を確保しながら、結線に到達するのに十分な長さである必要がある。
【0164】
遠位先端の近位部分の剛性から最遠位部分への移行を精緻化するための上記の任意のまたはすべての実施形態が使用されてもよい。
【0165】
近位シャフトは2つの機能を果たし、少なくとも2つの管腔を備えていなければならない。すなわち、1つはバルーンの膨張用で、流体と装置の送達用、および吸引用の主管腔である。柔軟な先端は1つの管腔しか必要としないため、近位セクションよりも管腔が大きくできる見込みがある。
【0166】
一実施形態では、柔軟な先端の内径は、近位シャフトと同じ内径である。
別の実施形態では、近位および遠位シャフトは同じ外径を有し、近位シャフトは2つの同心管腔を有し、
図38に示すように、中央管腔の直径は柔軟な遠位先端の直径よりも小さい。この図は、柔軟な波形遠位先端2302とバルーン2301とを備えたバルーンガイドカテーテル2300を示している。この例では、近位シャフト管腔2303の内径は、柔軟な波形遠位先端2302の内径よりも小さい。近位シャフトおよび遠位シャフトは、同じ外径を有する。
【0167】
別の実施形態では、近位シャフトの内径は、柔軟な遠位先端の内径と同一である。さらに別の実施形態では、遠位先端の外径は、近位シャフトの外径よりも小さい。遠位先端の内径は、近位シャフトの内径と同一であるか、それよりも小さくてよい。
図39は、バルーン2401と、近位部分2403よりも小さい外径を有する遠位部分2402とを備えたカテーテル1400を示している。
【0168】
一構成では、遠位先端は、遠位では柔軟な波形セクション、および近位では非波形セクションから構成される。
図40は、遠位領域2502の非波形の近位領域2501を備えたカテーテル1500を示す。
【0169】
一構成では、カテーテル装置2600について
図41に示すように、放射線不透過性マーカーが、柔軟な遠位先端の遠位端に存在する。マーカーは、バルーンのすぐ遠位または近位にも存在し、バルーンの位置を定義する。ICAのC2セグメントの遠位に配置するのに適さない剛性が増加した近位領域を定義するために、更なる中間遠位マーカーが遠位先端内に存在してもよい。
【0170】
一構成では、バルーンカテーテルは、直接的な頸動脈アクセスを介した使用に適している。この場合、近位シャフトが短いほど、医師の人間工学的に改善される。この例では、バルーンの近位のカテーテルシャフトの長さは40cmを超えず、好ましくは30cmを超えない。
【0171】
血管近傍閉塞または押し込み(wedging)による大口径カテーテルを使用した流れ制限
上述の実施形態により、医師は、従来のカテーテル技術を使用した場合よりも遠位に、
より大きなボアカテーテルを配置することができる。ただし、血管の直径がカテーテル自体よりも小さいために、より大きなカテーテルを標的血管に配置できない場合があり得る。この場合、より大きなカテーテルは、流れ制限を達成するために使用されてもよい。
【0172】
場合によっては、治療領域を灌流する更なる血管が存在する。たとえば、前大脳動脈の場合、ICAに配置されたバルーンガイドカテーテルを使用した近位閉塞は、標的治療部位への流入を妨げない。これは、2つの重要な流入血管(左椎骨動脈と右椎骨動脈)があり、標的の治療部位が脳底動脈または後連絡動脈である後脳卒中の問題でもある。
【0173】
一実施形態では、システムは、「母」および「娘」カテーテルで構成され、大きな口径の非常に柔軟な母カテーテルを標的治療部位の近位の血管位置に配置または押し込むことにより、有意な血流制限または血流停止が達成されてもよい。次に、より小さな娘カテーテルが親カテーテルを通じて治療部位に送られる。この場合、血流制限のための近位バルーンは必要ない。カテーテルを押し込むことなく、血管がほぼ閉塞すると、血流も劇的に減少する。これは
図42に示されており、結線2701を吸引するための大きなカテーテル2702と小さなカテーテル2703とがある。大口径の非常に柔軟なカテーテルは、可能な限り最も遠位の血流停止を可能にすることができる。
【0174】
塞栓術などの他の例では、より大きなボアカテーテルを使用した流れ制限が有利である場合もある。例えば、非標的血管の塞栓が主な関心事である塞栓形成では、隣接する非標的血管を塞ぐ更なる塞栓手順がしばしば使用される。非標的塞栓は、非標的血管閉塞、または非標的組織への薬物の送達を生じさせ得る。これは、カテーテル先端を押し込むなど、塞栓剤の送達の標的領域に供給する血管の遠位に大きな口径の非常に柔軟なカテーテルを配置する場合には回避し得る。塞栓剤を注入すると、押し込んだ状態は塞栓剤の逆流を防ぎ、非標的塞栓症を防ぐ。さらに、血管内の圧力勾配は、血行力学的圧力ではなく近位注入圧力を反映し、医師は塞栓の送達を完全に制御することができる。
【0175】
図43は、遠位部分2801を有するカテーテル2800におけるそうした構成を示し、左側は、薬物または塞栓剤の送達中に遠位標的血管(右側血管)に到達できない小さなカテーテルの使用、および結果として生じる非標的血管(左上の血管)への望ましくない送達を示す。右側の図は、標的血管を効果的に閉塞するように非常に柔軟な大径カテーテルが選択され、非標的血管を超えて配置できる方法の使用を示しており、塞栓剤の発生は標的血管にのみに生じている。カテーテルは標的血管内に押し込まれることが好ましい。
【0176】
さらに、塞栓術の対象となる血管の遠位の性質は、今日では血管に入ることができるのはマイクロカテーテルだけである場合が多いことを意味する。これにより、使用できる塞栓剤の種類が制限される(たとえば、より大きな035コイルまたはプラグが望ましい場合や、血管に入ることができる唯一のマイクロカテーテルに所望の粒子が詰まる場合は、018マイクロコイルを使用する必要がある)。これらの手順(特にBPHの塞栓術)の技術的な成功は、より大きなサポートカテーテルを遠位に配置できないことによっても制限される。
【0177】
移行構成の有無にかかわらず波形のカテーテルセクションは、特定の曲がりのまわりに柔軟性を提供するために、たとえば腸骨弓のまわりに制御された柔軟性を提供するアクセスシースとして、カテーテルの近位セクションとして使用され得る。これらの構成はまた、より柔軟な尿道ステント設計またはフォーリースタイルのカテーテルに組み込むこともでき、波形の壁の柔軟な内視鏡用に組み込むこともできる。
【0178】
装置は、血管系、腫瘍、または器官の領域への塞栓剤の正確な送達に先立って、血流を遮断するために使用され得る。
【0179】
圧力制御ポンプを備えた吸引システム
吸引は、脳血管系から血栓を回収するのに安全であることが示されている。ただし、技術にはいくつかの制限がある。特に、標的治療部位で血栓を取り除けないことがよくある。これは特に、固く、直径が大きく、血栓が長い場合である。
【0180】
完全に取り除かれない場合、医師は継続的な真空下で患者からカテーテルと付属の血栓を引き抜こうと試みる。この操作はリスクを伴い、時間がかかり、医師が標的血管にアクセスできなくなることを意味する。
【0181】
血管造影法に従って、標的領域が再灌流されていないと医師が判断した場合、血栓を回収するために更なる試みを行う必要がある。典型的に、パス(passes)と呼ばれる5回まで試行が必要とされる。平均して2回の試行が必要とされる。20%から30%のケースでは、何度も試みても吸引は成功せず、医師はステント回収装置の使用に切り替える(2015年、Almandozなど、2017年、Lapergueなど、2017年、Blancなど、2016年、Moehlenbruchなど)。これにより、処置の時間とコストがさらに増加する。
【0182】
医師がカテーテルを近位側のアクセス部位(通常は大腿動脈または橈骨動脈)に向かって引き抜くと、一部またはすべての血栓が壊れる可能性がある。血栓のこれらの断片は、塞栓として知られる。遠位塞栓は、血管造影法または他の画像法で評価すると、再灌流の不良な結果を招く。TICIスケールで定義されている再灌流の不良は、患者の復帰の不良に関連する。
【0183】
吸引技術のもう1つの制限は、カテーテルの先端を血栓の表面まで前進させることが常に可能であるとは限らないことである。これは、患者に存在する可能性のある極端な蛇行性が原因である。つまり、マイクロカテーテルなどの小径のカテーテルのみが血栓に到達できるということがよくある。口径の大きいカテーテルは、血栓を吸引する可能性が高いことが知られているが、硬すぎて血栓面まで移動できないことがよくある。この場合、医師は小径のカテーテルを使用するが、血栓をうまく吸引する可能性は低くなる。
【0184】
カテーテルの内径、および血栓の特性(直径、長さ、硬度/デュロメーター、弾性など)に応じて、カテーテルの管腔に吸引できる血栓の量には制限がある。この限界では、カテーテルが詰まると記載できる。大きな管腔のカテーテルは、詰まることなく、小さな管腔のカテーテルよりも多くの血栓を吸引することができる。吸引中、完全な真空に到達する前に、吸引できる血栓の量の限界に達することがある。これは、特定の制限に達した後、さらに真空を適用しても、吸引される血栓の量が必ずしも増加しないことを意味する。これは、血栓3501の吸引を試みるために使用されているカテーテル先端3500を示す
図44(a)~
図44(e)に概略的に示される。図示するように、不完全な吸引がある。既存の真空技術(真空ポンプとシリンジ)には、適用される真空が目詰まりを防止したり吸引の効率を最大にするように設計されていない制限を有する。
【0185】
上記で概説した問題に基づいて、血栓が単一の操作で標的部位において取り除かれるようにすることが望ましい。これにより、時間を節約し、手順の複雑さを軽減し、血栓の採取中に血栓が断片化する可能性を最小限に抑えることができる。
【0186】
血管または身体の他の領域から血栓または他の物質を吸引するために、任意の実施形態で上述したようなカテーテルに関連して使用するためのポンプが開示されている。
図45に吸引装置が概略的に示されており、カテーテル3500、ガイド3502、管3503、ならびにポンプおよびリザーバーアセンブリ3504を有する。
【0187】
本発明は、吸引の効率を改善するために、吸引中の制御および/または真空圧の変化および/または流体変位を利用する。カテーテルチップでの圧力変化および/または流体変位は、以下の達成に役立ち得る。
- カテーテルの詰まりを防ぐ
- 血栓の離解と変形を促進し、管腔を通過できるようにする
【0188】
ポンプ3504は、負の流体変位を提供し、それにより圧力を減少させ(真空を可能にし)てもよいし、または正の変位を提供し、それにより圧力を増加させてもよい。ポンプはカテーテルに接続されており、カテーテル管腔に正圧または負圧をかけることができる。ポンプには、カテーテル管腔の圧力を測定するセンサーが組み込まれている。
【0189】
この圧力の大きさは、真空または加圧の信号がカテーテルに適用されるべきかどうかを決定するために使用され得る。測定された圧力に基づいて、ポンプは方向を変更し、それにより圧力と流体変位を変更する。
【0190】
図46に状態図の形で概略的に示される一実施形態では、ポンプは、定義された上限値および下限値を使用して、真空または加圧を適用するかを決定する。これらの制限により、カテーテルは、少なくとも一部の血栓を循環させて取り除き、必要に応じて排出できる。この血栓の変形は、吸引の効率を改善し、カテーテルの詰まりを防ぐ。
【0191】
説明のために、
図47(a)でポンプが起動される前の初期圧力は、すべての図で0mmHg(0インチHg)と定義されている。実際には、血圧のため、ゼロ以外の圧力が存在する。これは、60から120mmHg(2.4から4.8インチHg)の領域にあり得る。
【0192】
ポンプは、処置中にカテーテル管腔内の圧力を継続的に測定する。ポンプが停止されている場合、この測定値は動脈圧になる。ポンプが起動され、ある程度の真空が引き込まれ始めると、負圧が測定される(
図47(b))。カテーテル先端の閉塞または部分的閉塞がない場合、これは公称読み取り値であり、カテーテルを通る流体の自由な流れを表す。カテーテルが前進し、血栓と係合すると、真空の増加が観察される(
図47(c))。
【0193】
最初にポンプが起動されると、真空が適用され、カテーテルが血栓の一部を取り除くことができるようになる(
図47(d))。真空がさらに増加すると、血栓がより多く取り除かれるが(
図47(e))、真空圧の増加による血栓の取り除きの効率の上昇は減少する(
図47(f))。このため、ポンプは、ある下限圧力で逆行する(
図47(g))。下限値は、真空中に血栓の一部が吸引されるが、血栓が不可逆的に詰まるほどではないように定義される。重要な側面は、真空の下限を-760mmHgの完全な真空圧よりもはるかに高く設定して、カテーテルを詰まらせる可能性のある大きすぎる血栓の取り除きを防ぐことであろう。一実施形態では、下限値は、-100mmHgから-200mmHgの間で設定される。別の実施形態では、下限値は、-200mmHgから-300mmHgの間で設定される。別の実施形態では、下限値は、-400mmHgから-500mmHgの間で設定される。別の実施形態では、下限は、-600mmHGから-700mmHgの間で設定される。
【0194】
ポンプの流体変位の方向が逆行される。逆行すると、カテーテルは加圧し始め、それによって測定される圧力が増加する(
図47(g))。カテーテルが加圧される(真空が反転する)と、血栓を取り除くために加えられた負荷が減少し、それによって血栓がアンロードされ、血栓の一部またはすべてがカテーテルの先端に向かって遠位に押されることすら許容する(
図47(h))。このローディング/アンローディングの間、血栓は離解さ
れているため、カテーテル内でより「自由」になる。
【0195】
上限値に達するまで、圧力はさらに増加する。一実施形態では、この上限値は、取り除かれた血栓がカテーテルから完全に排出されないように定義される。
【0196】
下限値と上限値の間の血栓の更なる循環(
図47(i)から(j))が血栓をさらに離解させ、同じ下限値の真空でより多くの血栓を取り除けるようにし(
図47(m))、最終的に血栓を完全に取り除く(
図47(n))。
【0197】
一実施形態では、上限値は負圧である。別の実施形態では、上限値は0mmHgであり得る。さらに別の好ましい実施形態では、上限値は正圧である(
図48(a)~(c))。
【0198】
ポンプからの圧力信号がない場合、血管内血圧の存在は、カテーテルの遠位先端からポンプへの物質の送達をサポートする力が存在することを意味する。一実施形態では、処置が開始される前に、初期の血圧測定値を取得してもよい。この読み取り値を使用して、必要とされる正確な上限値を計算してもよい」。平均血圧、収縮期血圧、または拡張期血圧が使用されてもよい。このポンプシステムの新しい側面は、フィードバックをポンプアルゴリズムに組み込んで、より効果的な圧力サイクルを生成することである。つまり、ポンプの状態(たとえば、圧力または流体変位)を測定し、その動作を継続または変更するポンプの能力である。
【0199】
一実施形態では、加えられる圧力信号は、振動(oscillation)または「揺れ(shake)」信号を組み込む。振れ信号は、
図50(a)、(b)に示すように、2つの圧力制限間でパルスサイクリングを適用することを意味する。信号は、血栓の変形およびまたは断片化を引き起こしてカテーテルを通る送達を改善するために、血栓の急峻な吸引を提供する。別の側面は、負圧信号と正圧信号の割合式のサイクリングの組み込みである。血栓の弾性係数を超える原因となり得る振動周波数が定義されてもよく、それにより、カテーテル内の血栓を断片化して送達を容易にする。
この振動の追加は、
図49の状態図の形で示されている。
【0200】
一実施形態では、揺れ信号は、予め定められた数のサイクルで開始されてもよい。別の実施形態では、圧力が血圧に戻るまで、揺れ信号が使用されてもよい。この場合、カテーテル内の物質は、大きな抵抗なしに効果的に流れることができる。別の実施形態では、この揺れ信号は、カテーテル閉塞または部分閉塞を示す特定の圧力に基づいて開始されてもよく、自由流れまたは部分閉塞を示すカテーテル内の圧力の測定に基づいて終了されてもよい。
【0201】
これらの図は概して時間に対する圧力の三角波を示していますが、実際にはそうではなくてもよいことを指摘しておこう。グラフは、本発明によって開始および制御される圧力の方向変化を示すことを意図している。たとえば、血栓の特性、およびポンプの起動または逆行の速度に応じて、信号はより正方形、のこぎり波、または正弦波の形になってもよい。さらに、結果となる圧力-時間の関係には、繰り返しがまったくなくてもよい。
【0202】
一実施形態では、本発明は、真空と正の加圧信号において振動または揺れ信号の両方を含む。これは、
図51(a)、(b)に概略的に示されている。さらに別の実施形態では、システムは、真空振動のみを組み込んでもよい。
【0203】
下限圧力および上限圧力との範囲は、静的吸引技術と比較して血栓輸送の効率を向上させ得る。一実施形態では、取り除くことができる血栓の量が単一のサイクルで最大になる
ように、圧力下限値を定めることが好ましい。別の実施形態では、単一のサイクルで取り除くことができる血栓の量が最大化されず、代わりに少量の血栓採取と最大血栓採取との間の中間状態を表すように、圧力下限値が定められることが好ましい。実際の数字は、実験に基づいて将来加えることができよう。
【0204】
別の実施形態では、下限値はリアルタイムで定義されてもよい。一実施形態では、真空サイクル中の圧力の変化割合の変化が使用され得る。例えば、カテーテルが詰まると、一般に真空圧が急速に増加する。この真空圧力の突然の変化は、ポンプの方向を切り替える信号として使用され得る。同様に、上限圧力は、加圧サイクル中の圧力の突然の変化に基づいて定義されてもよい。一実施形態では、これは、カテーテルが詰まっている状態を識別するために定義され得る。
【0205】
上限値と下限値とは、圧力の変化割合の組み合わせ、または特定の圧力値、または両方の組み合わせによって定義され得ることを理解されたい。
【0206】
別の構成では、流れ変位、または流量計が組み込まれる。これは、ポンプの方向(吸引または真空)を確立するための上限値と下限値を定義するために使用され得る。一実施形態では、流量計は、カテーテルの詰まりを示唆した流体変位がないかどうかを検出することができる。
【0207】
別の実施形態では、ポンプは、正および負の流体変位を使用して、カテーテルを交互に送出および吸引してもよい。一実施形態では、送出対吸引サイクルの比率は、0.01から0.99の間であり得る。好ましくは、比は、0.1と0.9の間、またはより好ましくは、0.4と0.9の間であろう。
【0208】
一構成では、ポンプは、無菌フィールド内で、または患者に隣接する患者テーブルで使用できる無菌ユニットである。これにより、医師は無菌領域外の技術者を必要とせずにすべての操作を行うことができる。ユニットは一度の使用で使い捨てであってもよい。
【0209】
一構成では、ポンプは、蠕動ポンプ機構を組み込んでいる。これにより、ポンプ部品との血液接触がなくなる。ポンプは、吸引液を収集するためのリザーバーを組み込んでもよい。
図53(a)、
図53(b)は、ポンプおよび構成要素を示す。管、オン/オフスイッチ、バッテリーパック、脈動ポンプ、及びマザーボードを接続するハウジングが示されている。圧力センサーは、カテーテルに接続されている管管腔に接続され、カテーテル内の圧力測定が可能である。
【0210】
一実施形態では、ポンプは、一連のLEDまたはインジケータを組み込んでいる。これらは、カテーテルの先端と血栓の相互作用の状態に基づいて医師にフィードバックを提供することを目的としている。これは、カテーテル内の圧力によって提供される。例えば、カテーテル内の自由流動に関連する圧力範囲、または部分的な閉塞、または完全な閉塞、吸引または詰まり。
【0211】
さらに、インジケータは、ポンプが振動または振れ状態にあることを医師に示すために使用されてもよい。
【0212】
医師がインジケータからのフィードバックを使用して、カテーテル先端の必要な調整を定義する方法が開示されている。
【0213】
カテーテルの先端を血栓に隣接させる。ポンプを起動する。自由な流れが観察されることをポンプが示す場合、カテーテルは、血栓にさらに係合するように遠位に移動されるべ
きである。カテーテルが部分的または完全な閉塞で吸引している場合、医師はポンプが再び自由に流れるまで待機する。医師は再びカテーテルの先端を遠位に動かして、次の血栓に係合させる。このようにして、血管全体から血栓を取り除くことができる。ポンプが詰まった場合、従来のカテーテル抜去技術が適切であり得るという信号が医師に提供されてもよい。
【0214】
この出願に記載されている実施形態は、概して、医師が、非常に柔軟な波形のカテーテルを用いて、困難な解剖学的構造を提供する身体の領域にアクセスできるようにすることを目的としている。カテーテルの設計は、移行、並びに流れ制限部および非常に効果的なポンプなどの他の要素の追加によって最適化されている。この態様の制御された柔軟性を維持しながらより大きなカテーテルを作成する機能は、血栓の除去、身体への塞栓送達などの治療の改善を可能にする。
【0215】
本発明は、説明された実施形態に限定されず、構造および詳細において変更されてもよい。