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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】有価媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/125 20190101AFI20240903BHJP
   G07D 11/235 20190101ALI20240903BHJP
   G07D 11/26 20190101ALI20240903BHJP
【FI】
G07D11/125
G07D11/235
G07D11/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023075600
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2019054534の分割
【原出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2023093740
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】岩田 泰治
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-123073(JP,U)
【文献】特開2008-056481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/125
G07D 11/235
G07D 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を外部から受け入れる紙幣受入部と、
前記紙幣受入部に設けられ、紙幣が投入される縦長の紙幣受入口と、
前記紙幣受入口の下端を含む一部に設けられた、スリットが形成される第2ガイド部材と、
を備え、
前記スリットの幅は、前記紙幣受入口の下部の幅よりも小さな幅となっている、
紙幣処理装置。
【請求項2】
前記スリットを介して前記紙幣受入口に投入された紙幣を、前記紙幣受入部の内部壁面に押すための押し部材をさらに備える、
請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記紙幣受入口の上部に設けられる第1ガイド部材をさらに備え、
前記第1ガイド部材の下端縁は、前記紙幣受入口が外側に向かって広がらない構成となっている、
請求項2記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記押し部材、前記第1ガイド部材、および前記第2ガイド部材の少なくとも一つは着脱自在となっている、
請求項3記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣等の有価媒体の処理を行う有価媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙幣や硬貨等の貨幣の処理を行う貨幣処理装置として様々なタイプのものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。一般的な貨幣処理装置では、筐体の内部に複数の収納繰出部が設けられており、貨幣の入金処理が行われる際に操作者により投入口から筐体の内部に投入された貨幣は、識別部により金種等が識別された後に、各収納繰出部に金種毎に収納されるようになっている。また、このような貨幣処理装置では、貨幣の出金処理が行われる際に各収納繰出部から繰り出された貨幣が投出口から筐体の外部に投出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-162121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の貨幣処理装置では、紙幣投入口に投入された紙幣の隅部が折れてしまい、紙幣詰まり等のトラブルが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、紙幣詰まり等のトラブルが発生することを抑制するための紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有価媒体処理装置は、有価媒体がそれぞれ収納される複数の収納部と、各前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを制限するためのアクセス制限手段と、を備え、前記アクセス制限手段は、複数の前記収納部のうち所定の条件を満たす前記収納部に収納されている有価媒体のみへのアクセスを許容する第1アクセス許容状態および全ての前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容する第2アクセス許容状態のうちいずれかの許容状態で各前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容することを特徴とする。
【0008】
このような有価媒体処理装置によれば、特定の収納部のみから有価媒体を取り出し可能となる第1アクセス許容状態および全ての収納部から有価媒体を取り出し可能となる第2アクセス許容状態のうちいずれかを選択することができるため収納部から有価媒体を取り出す際の用途に応じてアクセス許容状態を選択することができ、しかも第1アクセス許容状態では所定の条件を満たさない収納部から有価媒体が取り出されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0009】
本発明の有価媒体処理装置においては、各前記収納部には、前記収納部に収納されている有価媒体に関するエラーが発生したときにエラーが発生したことを検知するエラー検知部がそれぞれ設けられており、前記アクセス制限手段は、前記エラー検知部によりエラーが発生したことが検知されたときに、当該エラー検知部が設けられている前記収納部が前記所定の条件を満たしたと判断し、前記第1アクセス許容状態において前記所定の条件を満たす前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容してもよい。
【0010】
また、各前記収納部には、当該収納部に収納されている有価媒体を前記収納部から繰り出す繰出部がそれぞれ設けられており、前記アクセス制限手段は、前記第1アクセス許容状態において所定の条件を満たす前記収納部に設けられた前記繰出部へのアクセスを許容してもよい。
【0011】
また、前記アクセス制限手段は、各前記収納部に対応して設けられる複数の第1扉部と、各前記第1扉部に対応して設けられ、各前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを制限するよう前記第1扉部を施錠する複数の第1施錠部とを有しており、前記アクセス制限手段は、前記所定の条件を満たす前記収納部に対応する前記第1施錠部による前記第1扉部の施錠を解除することにより、前記第1アクセス許容状態において前記第1扉部の施錠が解除された前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容してもよい。
【0012】
この場合、前記アクセス制限手段は、全ての前記収納部にまたがって設けられる第2扉部と、全ての前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを制限するよう前記第2扉部を施錠する第2施錠部とを有しており、各前記第1扉部は前記第2扉部に設けられており、前記アクセス制限手段は、前記第2施錠部による前記第2扉部の施錠を解除することにより、前記第2アクセス許容状態において全ての前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容してもよい。
【0013】
また、各前記第1施錠部は、通電すると対応する前記第1扉部の施錠を解除してもよい。
【0014】
また、前記第2施錠部は、物理的な力が与えられると前記第2扉部の施錠を解除してもよい。
【0015】
また、前記アクセス制限手段は、前記所定の条件を満たす前記収納部に対応する前記第1施錠部による前記第1扉部の施錠を解除した後、当該第1扉部が前記収納部を完全に塞ぐ位置から浮き上がるようにしてもよい。
【0016】
本発明の有価媒体処理装置は、操作者が内部指示を入力するための操作部を更に備え、複数の前記収納部のうちある前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容する旨の内部指示が前記操作部により入力されると、前記アクセス制限手段は、前記操作部により入力された内部指示に係る前記収納部が前記所定の条件を満たしたと判断し、前記第1アクセス許容状態において前記所定の条件を満たす前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容してもよい。
【0017】
この場合、本発明の有価媒体処理装置は、前記操作部を操作する操作者の権限の認証を行う認証手段を更に備え、前記アクセス制限手段は、前記認証手段により操作者の権限が所定の権限であると認証された場合においてのみ、複数の前記収納部のうちある前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容する旨の内部指示が前記操作部により入力されると、前記操作部により入力された内部指示に係る前記収納部が前記所定の条件を満たしたと判断してもよい。
【0018】
本発明の有価媒体処理装置は、別の装置から通信により外部指示を受け付けるための指示受付部を更に備え、複数の前記収納部のうちある前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容する旨の外部指示が前記指示受付部により受け付けられると、前記アクセス制限手段は、前記指示受付部により受け付けられた外部指示に係る前記収納部が前記所定の条件を満たしたと判断し、前記第1アクセス許容状態において前記所定の条件を満たす前記収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを許容してもよい。
【0019】
本発明の有価媒体処理装置においては、各前記収納部に収納される有価媒体は貨幣であり、各前記収納部には貨幣が金種毎に収納されるようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有価媒体処理装置によれば、収納部から有価媒体を取り出す際の用途に応じてアクセス許容状態を選択することができ、しかも第1アクセス許容状態では所定の条件を満たさない収納部から有価媒体が取り出されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態による貨幣処理機の外観を示す斜視図である。
図2図1に示す貨幣処理機の硬貨処理装置の内部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す構成図である。
図3図2に示す硬貨処理装置におけるリジェクト部および収納部の構成を示す側面図である。
図4図2に示す硬貨処理装置の内側筐体を外側筐体から手前側に引き出したときの状態を示す斜視図である。
図5図4に示す状態から収納扉を上方に開いたときの状態を示す斜視図である。
図6図2に示す硬貨処理装置において収納扉およびこの収納扉に設けられた複数の金種別扉の構成を概略的に示す上面図である。
図7図2に示す硬貨処理装置において収納扉を上方に開いたときの状態を示す側面図である。
図8図2に示す硬貨処理装置において金種別扉を上方に開いたときの状態を示す側面図である。
図9図2に示す硬貨処理装置において金種別扉を施錠する第1施錠部の構成を概略的に示す側面図である。
図10図9に示す状態から第1施錠部による金種別扉の施錠が解除されたときの状態を示す側面図である。
図11図2に示す硬貨処理装置において硬貨払出部が上蓋により隠れているときの状態を示す構成図である。
図12図2に示す硬貨処理装置において硬貨払出部が上蓋から前方に進出して外部に露出したときの状態を示す構成図である。
図13図2に示す硬貨処理装置における制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図14図1に示す貨幣処理機の紙幣処理装置の内部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す構成図である。
図15図14に示す紙幣処理装置の内側筐体を外側筐体から手前側に引き出した後、収納扉を上方に開いたときの状態を示す斜視図である。
図16図14に示す紙幣処理装置の紙幣受入部の構成を示す斜視図である。
図17図16に示す紙幣受入部の正面図である。
図18図14に示す紙幣処理装置の紙幣受入部に第1ガイド部材および第2ガイド部材を取り付けたときの構成を示す斜視図である。
図19図18に示す紙幣受入部およびこの紙幣受入部に取り付けられた第1ガイド部材および第2ガイド部材の正面図である。
図20図14に示す紙幣処理装置の紙幣受入部の内部構成を概略的に示す側面図である。
図21図14に示す紙幣処理装置の紙幣受入部に第1ガイド部材および第2ガイド部材を取り付けたときの内部構成を概略的に示す側面図である。
図22図14に示す紙幣処理装置の紙幣受入部に投入される湾曲した紙幣の斜視図である。
図23図14に示す紙幣処理装置の紙幣受入部に投入された紙幣の隅部が折れ曲がったときの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図23は、本実施の形態に係る貨幣処理機を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による貨幣処理機の外観を示す斜視図であり、図2乃至図13は、図1に示す貨幣処理機の硬貨処理装置の構成を説明するための図であり、図14乃至図23は、図1に示す貨幣処理機の紙幣処理装置の構成を説明するための図である。なお、図3において、本実施の形態による硬貨処理装置により処理される硬貨を参照符合Cで示す。また、図22および図23において、本実施の形態による紙幣処理装置により処理される紙幣を参照符合Pで示す。
【0023】
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗において、顧客が立ち入ることができるフロント領域には様々な商品が陳列された商品棚が設置されているとともに、このフロント領域の精算所には図1に示すような貨幣処理機1(貨幣釣銭機)やPOSレジスタ(図示せず)が設置されている。顧客がこのような精算所で精算処理を行う際に、店員は、顧客から受け取った商品の代金としての貨幣を貨幣釣銭機としての貨幣処理機1に入金したり、釣銭としての貨幣を貨幣処理機1から出金して顧客に返却したりするようになっている。また、POSレジスタにより、顧客が購入した商品に係る情報や貨幣処理機1に収納されている貨幣に係る情報等の管理が行われるようになっている。また、このような店舗における顧客の立ち入りが禁止されたバックヤード領域(具体的には、例えば入金室)には、貨幣処理機1から回収された売上金としての貨幣を入金する出納機等の貨幣入出金機が設置されている。また、貨幣処理機1において釣銭としての貨幣が不足する場合には、貨幣入出金機から釣銭補充金としての貨幣を出金し、この貨幣入出金機から出金された釣銭補充金としての貨幣を貨幣処理機1に補充することができるようになっている。このような貨幣処理機1、ならびに当該貨幣処理機1を構成する硬貨処理装置10および紙幣処理装置110の詳細について図1乃至図23を用いて説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態による貨幣処理機1は、略直方体形状の外側筐体1aと、左右に並ぶよう配置され、外側筐体1aからそれぞれ手前側に引出可能となっている硬貨処理装置10および紙幣処理装置110とを備えており、硬貨処理装置10や紙幣処理装置110の上面にはPOSレジスタ(図示せず)が載置されるようになっている。硬貨処理装置10および紙幣処理装置110は、それぞれ、硬貨や紙幣の入金処理および出金処理を行うようになっている。以下、硬貨処理装置10および紙幣処理装置110の構成の詳細について述べる。
【0025】
図2等に示すように、硬貨処理装置10は、略直方体形状の内側筐体11と、内側筐体11の前面側に設けられ、硬貨の入金処理を行う際に操作者によって硬貨が投入される硬貨受入部12と、内側筐体11の前面側に設けられ、硬貨の出金処理を行う際に硬貨が払い出される硬貨払出部36と、内側筐体11の内部で硬貨を金種毎に収納する複数の硬貨収納部30a~30fとを備えている。また、硬貨処理装置10の内側筐体11は外側筐体1aから手前側に引き出し可能となっている。また、複数の硬貨収納部30a~30fは内側筐体11の幅方向(すなわち、図2の左右方向)に沿って並列に並ぶよう配置されており、各硬貨収納部30a~30fにはそれぞれ50円硬貨、5円硬貨、500円硬貨、100円硬貨、10円硬貨および1円硬貨がこの順で収納されるようになっている。
【0026】
硬貨受入部12は、硬貨投入口を介して受け入れた硬貨を1層1列状態で1枚ずつ内側筐体11内に取り込むようになっている。また、硬貨受入部12には残留検知センサ13が設けられており、硬貨受入部12に受け入れられた硬貨は残留検知センサ13によって検知されるようになっている。また、硬貨受入部12には、図2における左方向に移動する繰出ベルト14a等からなる繰出部14が設けられており、硬貨受入部12に受け入れられた硬貨が残留検知センサ13によって検知されるとこの繰出部14が駆動されることにより当該繰出部14によって硬貨が内側筐体11の内部に1枚ずつ繰り出されるようになっている。また、図2に示すように、硬貨受入部12には、繰出部14により内側筐体11の内部に繰り出された硬貨を1層1列状態で搬送する入金搬送部16が接続されている。
【0027】
図3に示すように、入金搬送部16は、略水平方向に延びる搬送面16cを有しており、この搬送面16c上で硬貨は略水平方向の姿勢で搬送されるようになっている。また、入金搬送部16は、複数のプーリ16bにより張架された循環ベルト16aを有しており、繰出部14により内側筐体11の内部に繰り出された硬貨は循環ベルト16aとの間で働く摩擦力により内側筐体11の内部で搬送されるようになっている。具体的には、循環ベルト16aは搬送面16cからわずかな大きさの隙間(具体的には、概ね硬貨1枚分の厚さと略同一の大きさの隙間)を隔てて搬送面16cの上方に配置されている。また、複数のプーリ16bのうちある一つのプーリ16bには駆動モータが接続されており、当該駆動モータによりプーリ16bが回転させられることにより循環ベルト16aは図2における反時計回りの方向に循環移動するようになっている。また、循環ベルト16aの下端部には搬送面16c上の硬貨を押動するための押動ピン(図示せず)が等間隔で複数設けられており、循環ベルト16aが図2における反時計回りの方向に循環移動すると、搬送面16c上の硬貨が押動ピンにより内側筐体11の奥行き方向に押動されるようになる。このようにして、繰出部14により内側筐体11の内部に繰り出された硬貨は内側筐体11の内部における右側の領域において搬送面16c上で略水平方向の姿勢で当該内側筐体11の奥行き方向に搬送されるようになる。
【0028】
図2に示すように、入金搬送部16の途中には、硬貨の金種、真偽、正損、表裏、新旧、搬送状態等の識別を行う識別部18が設けられている。また、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨を入金搬送部16の搬送面16cから分岐させて後述するリジェクト口26により内側筐体11の外部に排出するリジェクト部24が設けられている。図3に示すように、リジェクト部24は、硬貨を立位状態で自重により送るリジェクトシュート24aを有している。なお、図3において、入金搬送部16により搬送される硬貨やリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に立位状態で送られる硬貨を参照符合Cで示している。ここで、リジェクトシュート24aは水平方向に対して斜め下方に傾斜しており、このリジェクトシュート24aの下流側の端部には、内側筐体11の前面側に設けられたリジェクト口26が設けられている。リジェクト口26は内側筐体11の前面側からアクセス可能となっており、リジェクトシュート24aからリジェクト口26に送られた硬貨(リジェクト硬貨)を操作者は内側筐体11の前面側から当該内側筐体11の外部に取り出して硬貨受入部12に再投入等することができるようになる。また、リジェクトシュート24aの上流側端部には、入金搬送部16からリジェクトシュート24aへの硬貨の入口が設けられている。また、リジェクト部24は、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨を入金搬送部16の搬送面16cから分岐させるためのゲート部材25を有している。
【0029】
図3に示すように、ゲート部材25は略水平方向に延びる軸25aを有しており、この軸25aを中心として揺動するようになっている。このような軸25aは、入金搬送部16による硬貨の搬送方向の下流側の端部に配置されている。また、ゲート部材25は、図3において実線で示すような、略水平方向の姿勢となる閉止位置と、図3において二点鎖線で示すような、このような閉止位置から上方に突出する分岐位置との間で軸25aを中心として揺動するようになっており、ゲート部材25が閉止位置に位置しているときには、このゲート部材25の上面25bは入金搬送部16の搬送面16cと略同一平面上に位置するようになる。このことにより、ゲート部材25が閉止位置に位置しているときには、入金搬送部16における搬送面16c上で搬送される硬貨は当該ゲート部材25によりリジェクト部24のリジェクトシュート24aに分岐されずにゲート部材25の上面25bを通って各金種別分岐部22に送られるようになる。一方、ゲート部材25が分岐位置に位置しているときには、入金搬送部16における搬送面16c上で搬送される硬貨は当該ゲート部材25によって入金搬送部16からリジェクト部24のリジェクトシュート24aに分岐され、このリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に送られるようになる。
【0030】
図2に示すように、入金搬送部16による硬貨の搬送方向におけるゲート部材25の更に下流側には複数の金種別分岐部22が各硬貨収納部30a~30eに対応して直列に並ぶよう設けられている。具体的には、識別部18により識別された硬貨の金種が50円である場合には、図2における最も右側に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該50円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30aに送られるようになる。同様に、識別部18により識別された硬貨の金種が5円である場合には、図2における右側から2番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該5円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30bに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が500円である場合には、図2における右側から3番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該500円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30cに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が100円である場合には、図2における右側から4番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該100円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30dに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が10円である場合には、図2における右側から5番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該10円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30eに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が1円である場合には、図2における右側から6番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該1円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30fに送られるようになる。このようにして識別部18により識別された硬貨が各硬貨収納部30a~30fに金種別に振り分けられてこれらの硬貨収納部30a~30fに収納されるようになる。これらの各金種別分岐部22は、上述したゲート部材25と同様の構成のゲート部材によって、入金搬送部16により搬送される硬貨を選択的に入金搬送部16から分岐させるようになっている。
【0031】
また、図2に示すように、入金搬送部16による硬貨の搬送方向における各金種別分岐部22の上流側には通過検知センサ23が設けられており、入金搬送部16により搬送される硬貨は当該通過検知センサ23により検知されるようになっている。また、入金搬送部16における奥行き方向に延びる搬送路にも通過検知センサ23が設けられている。また、金種別分岐部22は、当該金種別分岐部22により入金搬送部16から分岐されるべき硬貨が、金種別分岐部22よりも2つ前に位置する通過検知センサ23により検知されたときに、入金搬送部16から硬貨を分岐させる動作を開始するようになっている。
【0032】
図3に示すように、各硬貨収納部30a~30fは、複数の硬貨が収納される硬貨収納領域31を有している。また、各硬貨収納部30a~30fには、硬貨収納領域31に収容されている硬貨を当該硬貨収納領域31から1枚ずつ繰り出す繰出部50が設けられている。繰出部50により各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から繰り出された硬貨は硬貨払出部36に送られ、この硬貨払出部36に集積されるようになっている。より詳細には、図2に示すように、6つの硬貨収納部30a~30fのうち右から3つの硬貨収納部30a~30cの手前側には、硬貨払出部36に向かって斜め下方にわずかに傾斜している硬貨案内溝34が形成されており、繰出部50により硬貨収納部30a~30cの硬貨収納領域31から繰り出された硬貨はこの硬貨案内溝34に立位状態で入り、硬貨案内溝34において図2における左方向に硬貨が立位状態で転がりながら移動することにより硬貨払出部36に送られるようになる。一方、6つの硬貨収納部30a~30fのうち左から3つの硬貨収納部30d~30fの硬貨収納領域31から繰出部50により繰り出された硬貨は硬貨払出部36に直接送られるようになる。また、硬貨払出部36は内側筐体11の外部に露出しており、操作者はこの硬貨払出部36に集積されている硬貨を手で掴んで内側筐体11の外部に取り出すことができるようになっている。
【0033】
図3に示すように、繰出部50は、硬貨収納領域31の底部に配置され、複数のプーリ54により張架された帯状の繰出ベルト52と、複数のプーリ54のうちある一つのプーリ54に接続され、当該プーリ54を正逆両方向に回転させる駆動モータ(図示せず)と、繰出ベルト52との間でわずかな隙間(具体的には、硬貨収納部30a~30fに収納されるべき金種の硬貨の厚さよりもわずかに大きな隙間)を隔てて当該繰出ベルト52の上方に配置される逆転ローラ56とを有している。ここで、硬貨収納領域31に収容される硬貨は繰出ベルト52上に載置されるようになっている。また、繰出ベルト52は無端状の(言い換えると、環状の)平ベルトからなり、当該繰出ベルト52の幅の大きさは硬貨収納領域31の幅の大きさと略同一となっている。そして、駆動モータによりこの駆動モータに接続されるプーリ54が硬貨の繰出方向に回転させられると繰出ベルト52は図3における時計回りの方向に循環移動し、この繰出ベルト52上に載置されている硬貨は略水平姿勢で図3における右方向に搬送され、逆転ローラ56と繰出ベルト52との間に形成される隙間を通って硬貨案内溝34または硬貨払出部36に送られるようになる。ここで、逆転ローラ56は繰出ベルト52による硬貨の繰出方向と逆方向(すなわち、図3における時計回りの方向)に回転するようになっている。このことにより、繰出ベルト52により繰り出される硬貨が逆転ローラ56と繰出ベルト52との間に形成される隙間を通る際に当該硬貨は1層1列状態に整列されるようになり、整列された硬貨が繰出ベルト52により硬貨案内溝34または硬貨払出部36に送られるようになる。また、本実施の形態では、駆動モータがプーリ54を硬貨の繰出方向とは逆方向に回転させることにより、繰出ベルト52は硬貨の繰出方向と逆方向にも循環移動することができるようになっている。
【0034】
また、各硬貨収納部30a~30fには、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーが発生したときにエラーが発生したことを検知するエラー検知部32(図13参照)がそれぞれ設けられている。具体的には、各硬貨収納部30a~30fには、繰出部50により硬貨案内溝34または硬貨払出部36に繰り出される硬貨を検知する硬貨検知センサ(図示せず)が設けられている。そして、駆動モータによりこの駆動モータに接続されるプーリ54が硬貨の繰出方向に回転させられることによって繰出ベルト52が図3における時計回りの方向に循環移動しているにもかかわらず、硬貨検知センサにより硬貨が検知されない場合には、エラー検知部32は、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーが発生したことを検知する。
【0035】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10では、図4および図5に示すように、各硬貨収納部30a~30fを覆う収納扉40が設けられており、この収納扉40を上方に開くと各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるようになっている。より詳細には、図7に示すように、収納扉40は水平方向に延びる軸41を中心として回転自在となっており、図7における点線の位置から実線の位置となるよう収納扉40を上方に開くことができるようになっている。また、図4等に示すように、収納扉40は全て硬貨収納部30a~30fをまたがるよう設けられている。このことにより、収納扉40により各硬貨収納部30a~30fが閉じられているときには、どの硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にもアクセスすることができない。一方、収納扉40が上方に開かれると、全ての硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるようになる。また、図6に示すように、収納扉40には、各硬貨収納部30a~30fを閉じた状態で(言い換えると、図7における点線の位置に維持された状態で)収納扉40を施錠する第2施錠部42が設けられている。具体的には、第2施錠部42にはカギ穴が形成されており、このカギ穴に特定の鍵44を差し込んで回転させると第2施錠部42による収納扉40の施錠が解除されるようになっている。すなわち、通常時は、収納扉40は各硬貨収納部30a~30fを閉じた状態となっており(言い換えると、図7における点線の位置に維持された状態となっており)、このような状態で収納扉40は第2施錠部42によって施錠されることにより上方に開くことができないようになっている。一方、第2施錠部42に形成されたカギ穴に特定の鍵44を差し込んで回転させることによって第2施錠部42による収納扉40の施錠が解除されると、収納扉40を上方に開く(言い換えると、図7において軸41を中心として点線の位置から実線の位置に回転させる)ことができるようになる。
【0036】
また、図6に示すように、各硬貨収納部30a~30fに対応するよう収納扉40には複数(具体的には、6つ)の金種別扉46が設けられている。ここで、図8に示すように、各金種別扉46は、それぞれ水平方向に延びる軸47を中心として回転自在となっており、図8における点線の位置から実線の位置となるよう金種別扉46を上方に開くことができるようになっている。ここで、収納扉40が各硬貨収納部30a~30fを閉じた状態となっていても、各金種別扉46を上方に開くと、この金種別扉46に対応する硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるようになっている。また、図6に示すように、収納扉40には、各金種別扉46に対応するよう複数(具体的には、6つ)の第1施錠部48が設けられている。各第1施錠部48は、対応する金種別扉46を施錠するようになっている。ここで、通常時は、各金種別扉46は第1施錠部48により施錠されることによって図7図8において点線の位置に維持されるようになっており、各金種別扉46を収納扉40から上方に開くことができないようになっている。一方、第1施錠部48による金種別扉46の施錠が解除されると、金種別扉46を収納扉40から上方に開く(言い換えると、図8において軸47を中心として点線の位置から実線の位置に回転させる)ことができるようになる。
【0037】
このような第1施錠部48の構成の詳細について図9および図10を用いて説明する。なお、図9は、第1施錠部48により金種別扉46が施錠されているときの状態を示す側面図であり、図10は、第1施錠部48による金種別扉46の施錠が解除されたときの状態を示す側面図である。図9に示すように、金種別扉46における軸47が設けられた側と反対側の端部にはロックピン46aが設けられている。また、第1施錠部48は、ロックピン46aに係合するロック部材48aと、ロック部材48aが先端に取り付けられたプランジャ48cと、プランジャ48cを図9等における左右方向に進退させるソレノイド48eとを有している。ここで、ロック部材48aは軸48bを中心として回転可能となっている。また、プランジャ48cの周囲にはコイルバネ48dが巻かれている。第1施錠部48により金種別扉46が施錠されているときには、ソレノイド48eはプランジャ48cを図9における左方向に伸ばすようになっている。このことにより、このプランジャ48cの先端に設けられたロック部材48aがロックピン46aに係合することにより、収納扉40に対して金種別扉46を図9に示す状態から上方に開くことができなくなる。なお、第1施錠部48により金種別扉46が施錠されているときには、ソレノイド48eは通電しないようになっている。一方、ソレノイド48eが通電するとプランジャ48cが図9における右方向に引っ張られる。このことにより、プランジャ48cの周囲に設けられたコイルバネ48dが収縮状態となる。また、このプランジャ48cの先端に設けられたロック部材48aは軸48bを中心として図10における時計回りの方向に回転し、ロック部材48aがロックピン46aから外れるようになる。このため、収納扉40に対して金種別扉46を図10に示す点線の位置から上方に開くことができるようになる。そして、金種別扉46が収納扉40に戻された後、図10に示すような状態でソレノイド48eが再び通電しないようになると、収縮状態にあるコイルバネ48dが元の形状に戻ろうとしてプランジャ48cを図10における左方向に移動させる。このことにより、図9に示すようにロック部材48aによりロックピン46aがロックされ、よって金種別扉46が再び第1施錠部48によって施錠されるようになる。
【0038】
また、本実施の形態では、第1施錠部48による金種別扉46の施錠が解除された後、この金種別扉46が収納扉40から(すなわち、図9において点線で示す位置から)自動的に上方に少しだけ浮き上がるようになっていてもよい。具体的には、第1施錠部48による金種別扉46の施錠が解除されると、金種別扉46が図9において点線で示す位置から実線で示す位置に自動的に移動するようになっていてもよい。この場合には、複数の金種別扉46のうち、第1施錠部48による施錠が解除された金種別扉46が一目で分かるようになる。
【0039】
なお、本実施の形態の硬貨処理装置10では、収納扉40や各金種別扉46を上方に開くと各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるようになるということは、硬貨収納領域31に収納されている硬貨にアクセスしてこの硬貨を取り出すことができるということを意味するとともに、各硬貨収納部30a~30fに設けられている繰出部50にもアクセスすることができるということを意味している。
【0040】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10では、図11に示すように、硬貨払出部36の上方に上蓋37が設置されるようになっていてもよい。このような態様では、硬貨払出部36が上蓋37に覆われているときにはこの硬貨払出部36に集積されている硬貨を操作者は当該硬貨払出部36から取り出すことができないようになる。一方、このような態様では、硬貨払出部36は移動可能な支持部38に設置されるようになっており、この支持部38はリニアアクチュエータ等の駆動部39(図13参照)によって図11に示す状態から手前側(すなわち、図11における下方向)に向かって往復移動を行うことができるようになっている。支持部38が駆動部39によって上蓋37から手前側に引き出されて図12に示すような状態になると、操作者は硬貨払出部36に集積されている硬貨を当該硬貨払出部36から取り出すことができるようになる。
【0041】
また、図13に示すように、本実施の形態の硬貨処理装置10には、当該硬貨処理装置10の各構成部材の制御を行う制御部80が設けられている。より詳細には、図13に示すように、制御部80には、残留検知センサ13、繰出部14、入金搬送部16、識別部18、各金種別分岐部22、各通過検知センサ23、リジェクト部24、各エラー検知部32、各繰出部50、各第1施錠部48および駆動部39がそれぞれ接続されている。そして、識別部18による硬貨の識別結果に係る信号や各エラー検知部32によるエラーの検知結果に係る信号等が制御部80に送られるとともに、制御部80は硬貨処理装置10の各構成部材に指令信号を送ることによりこれらの構成部材の動作を制御するようになっている。
【0042】
また、図13に示すように、制御部80には操作表示部82、記憶部84および通信インターフェース部86がそれぞれ接続されている。操作表示部82は例えばタッチパネル等からなり、硬貨処理装置10における硬貨の入金処理や出金処理等の処理状況や、各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨の在高等に関する情報が操作表示部82に表示されるようになっている。また、操作者は操作表示部82を操作することにより制御部80に対して様々な指令を与えることができるようになっている。記憶部84には、硬貨処理装置10における硬貨の入金処理や出金処理等の処理履歴や、各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨の在高等に関する情報が記憶されるようになっている。また、制御部80は通信インターフェース部86を介して本実施の形態による硬貨処理装置10とは別に設けられた外部装置(具体的には、例えばPOSレジスタや紙幣処理装置110)に対して信号の送受信を行うことができるようになっている。
【0043】
また、図13に示すように、制御部80には、操作表示部82を操作する操作者の権限の認証を行う認証手段88が接続されている。認証手段88は、操作表示部82により入力された操作者の識別情報(例えば、操作者の氏名や識別番号)およびパスワードに基づいて、当該操作者の権限の認証を行うようになっている。他の例として、硬貨処理装置10にカードリーダが設けられており、操作者が所持するIDカードがカードリーダによって読み取られたときにこの読み取られたIDカードの情報に基づいて認証手段88が操作者の権限の認証を行うようになっていてもよい。
【0044】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、上述した収納扉40、各金種別扉46、各第1施錠部48、第2施錠部42および制御部80等により、アクセス制限手段90が構成されている。ここで、アクセス制限手段90は、各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを制限するためのものである。より詳細には、アクセス制限手段90は、複数の硬貨収納部30a~30fのうち所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨のみへのアクセスを許容する第1アクセス許容状態、および全ての硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する第2アクセス許容状態のうちいずれかの許容状態で各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容するようになっている。具体的には、アクセス制限手段90は、各硬貨収納部30a~30fに対応して設けられる複数の金種別扉46(第1扉部)と、各金種別扉46に対応して設けられ、各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを制限するよう各金種別扉46を施錠する複数の第1施錠部48とを有している。そして、アクセス制限手段90は、所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに対応する第1施錠部48による金種別扉46の施錠を解除することにより、第1アクセス許容状態において金種別扉46の施錠が解除された硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。また、アクセス制限手段90は、全ての硬貨収納部30a~30fにまたがって設けられる収納扉40(第2扉部)と、全ての硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを制限するよう収納扉40を施錠する第2施錠部42とを有している。そして、アクセス制限手段90は、第2施錠部42による収納扉40の施錠を解除することにより、第2アクセス許容状態において全ての硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。このようなアクセス制限手段90の機能の詳細については後述する。
【0045】
次に、このような構成からなる硬貨処理装置10の動作について説明する。なお、以下に示すような硬貨処理装置10の動作は、制御部80が硬貨処理装置10の各構成部材を制御することにより行われるようになっている。
【0046】
まず、硬貨処理装置10において硬貨の入金処理が行われる際の動作について説明する。硬貨処理装置10において硬貨の入金処理が行われる際に、操作者は最初に内側筐体11の上面手前側に設けられた硬貨投入口に硬貨を投入する。硬貨投入口に投入された硬貨は硬貨受入部12に受け入れられるようになる。そして、硬貨受入部12に受け入れられた硬貨が残留検知センサ13により検知されると、繰出部14が駆動されることにより当該繰出部14によって硬貨が内側筐体11の内部に1枚ずつ繰り出される。そして、繰出部14によって内側筐体11の内部に繰り出された硬貨は入金搬送部16により1枚ずつ搬送され、識別部18によりその金種、真偽、正損、表裏、新旧、搬送状態等の識別が行われる。ここで、識別部18により正常であると識別された硬貨はリジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられることなく当該入金搬送部16により内側筐体11の奥側の領域に送られ、各金種別分岐部22により金種毎に入金搬送部16から分岐させられることにより各硬貨収納部30a~30fに収納されるようになる。一方、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨はリジェクト硬貨としてリジェクト部24のゲート部材25により入金搬送部16から分岐させられ、この分岐させられたリジェクト硬貨はリジェクトシュート24aによりリジェクト口26に送られる。また、上述したように、リジェクト口26は内側筐体11の前面側からアクセス可能となっているため、リジェクトシュート24aからリジェクト口26に送られたリジェクト硬貨を操作者は内側筐体11の前面側から当該内側筐体11の外部に取り出して硬貨受入部12に再投入等することができるようになる。
【0047】
次に、硬貨処理装置10において硬貨の出金処理が行われる際の動作について説明する。硬貨処理装置10において硬貨の出金処理が行われる際に、操作者が操作表示部82によって出金されるべき硬貨の金種毎の枚数や合計金額等の出金処理に係る情報を入力したり、外部装置から通信インターフェース部86を介して制御部80に出金されるべき硬貨の金種毎の枚数や合計金額等の出金処理に係る情報が送られたりすると、出金されるべき硬貨の金種に対応する硬貨収納部30a~30fにおいて繰出部50の繰出ベルト52が硬貨の繰出方向に循環移動させられる。このことにより、硬貨収納領域31に収納されている硬貨が繰出部50により硬貨案内溝34または硬貨払出部36に繰り出されるようになる。また、硬貨案内溝34に送られた硬貨は、当該硬貨案内溝34において図2における左方向に立位状態で転がりながら移動することにより硬貨払出部36に送られるようになる。このようにして、出金されるべき硬貨が硬貨払出部36に集積されるようになる。また、図11および図12に示すように硬貨払出部36の上方に上蓋37が設けられている場合には、出金されるべき硬貨が全て硬貨払出部36に集積されると、駆動部39が支持部38を手前側に移動させてこの支持部38により支持されている硬貨払出部36を上蓋37から露出させるようにする。このことにより、硬貨払出部36は内側筐体11の前面側からアクセス可能となるため、操作者は硬貨払出部36に手を入れることにより出金硬貨を内側筐体11の前面側から当該内側筐体11の外部に取り出すことができるようになる。
【0048】
また、このような硬貨処理装置10では、一日の取引が終了した後、所定の権限を有する操作者(例えば、管理者)は各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨を取り出して計数等を行いたい場合がある。この場合には、所定の権限を有する操作者は、硬貨処理装置10の内側筐体11を外側筐体1aから手前側に引き出した後、収納扉40の第2施錠部42に形成されているカギ穴に特定の鍵44を差し込んで回転させる。このことにより、第2施錠部42による収納扉40の施錠が解除され、この収納扉40を上方に開くことができるようになる。なお、第2施錠部42に形成されているカギ穴に適合する鍵44は、所定の権限を有する操作者のみが所有するようになっており、店舗の一般の店員等の、所定の権限を有さない操作者は第2施錠部42による収納扉40の施錠を解除することができないようになっている。そして、第2施錠部42による収納扉40の施錠が解除され、この収納扉40が上方に開かれると、操作者は全ての硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるようになる(第2アクセス許容状態)。このようにして、操作者は各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から硬貨を取り出して計数等を行うことができるようになる。
【0049】
また、硬貨の出金処理が行われる際に、繰出部50により各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から硬貨が繰り出されるときに硬貨の詰まり等のトラブルが発生すると、硬貨処理装置10を操作していた操作者(例えば、店舗の店員)は各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から詰まりの原因となる硬貨を取り除く必要がある。ここで、本実施の形態では、このように各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から詰まりの原因となる硬貨を取り除く場合に、トラブルの原因となる硬貨が収納されている硬貨収納部30a~30fを覆う金種別扉46のみが開かれ、その以外の金種別扉46は開かれない。具体的には、硬貨の出金処理が行われる際に、繰出部50により各硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から硬貨が繰り出されるときに硬貨の詰まり等のトラブルが発生すると、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーが発生したことがエラー検知部32によって硬貨収納部30a~30f毎に検知される。この場合は、制御部80は、エラー検知部32によってエラーが検知された硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31のみが外部からアクセス可能となるよう、この硬貨収納部30a~30fに対応する金種別扉46の施錠を解除するよう第1施錠部48を制御する。すなわち、制御部80は、6つの第1施錠部48のうちエラー検知部32によってエラーが検知された硬貨収納部30a~30fに対応する第1施錠部48のみに指令信号を送ることにより、この第1施錠部48による金種別扉46の施錠を解除させる。このことにより、硬貨処理装置10の内側筐体11が外側筐体1aから手前側に引き出されると、第1施錠部48により施錠が解除された金種別扉46は収納扉40から(すなわち、図9において点線で示す位置)から自動的に上方に少しだけ浮き上がる。この場合には、複数の金種別扉46のうち、第1施錠部48による施錠が解除された金種別扉46が一目で分かるようになる。そして、第1施錠部48による金種別扉46の施錠が解除され、この金種別扉46が上方に開かれると、操作者は金種別扉46が上方に開かれた硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるようになる(第1アクセス許容状態)。このようにして、操作者は硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31から詰まりの原因となる硬貨を繰出部50から取り出してエラーを解消することができるようになる。
【0050】
また、6つの硬貨収納部30a~30fのうちエラー検知部32によってエラーが検知された硬貨収納部30a~30fに対応する金種別扉46の施錠が解除されると、金種別扉46の施錠が解除されて硬貨収納領域31にアクセス可能となった硬貨収納部30a~30fの位置を示すガイダンス画面が操作表示部82に表示されるようになっていてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態では、第1施錠部48による金種別扉46の施錠が解除されるのは、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーが発生したことがエラー検知部32によって検知された場合に行われるような態様に限定されることはない。他の例として、操作者が操作表示部82によって特定の金種別扉46の施錠を解除するような指令を入力することができるようになっていてもよい。より詳細には、複数の硬貨収納部30a~30fのうちある硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨にアクセスしたいという指示が操作者によって操作表示部82により入力されると、制御部80は、操作表示部82により入力された情報に基づいて、特定の金種別扉46の施錠が解除されるようこの金種別扉46に対応する第1施錠部48を制御する。このことにより、操作者はこの金種別扉46を上方に開いて当該金種別扉46に対応する硬貨収納部30a~30fから硬貨を取り出すことができるようになる。
【0052】
また、操作者が操作表示部82によって特定の金種別扉46の施錠を解除するような指令を入力することによりこの金種別扉46の施錠が解除される場合において、所定の権限を有する操作者でないと金種別扉46の施錠を解除するような指令を操作表示部82により入力することができないようになっていてもよい。具体的には、操作表示部82を操作する操作者の権限の認証が認証手段88により行われるが、認証手段88により操作者の権限が所定の権限であると認証された場合においてのみ、制御部80は操作表示部82により入力された情報に基づいて特定の金種別扉46の施錠が解除されるようこの金種別扉46に対応する第1施錠部48を制御する。この場合には、所定の権限を有する管理者は任意の硬貨収納部30a~30fの硬貨収納領域31にアクセスすることができるが、店舗の店員等、所定の権限を有しない操作者は、操作表示部82によってエラーが発生した硬貨収納部30a~30f以外の硬貨収納部30a~30fから硬貨を取り出すことができなくなるため、防盗性を高めることができるようになる。
【0053】
また、更に別の例では、制御部80は、通信インターフェース部86を介して外部装置(例えば、POSレジスタ)から受信した情報に基づいて、特定の金種別扉46の施錠が解除されるようこの金種別扉46に対応する第1施錠部48を制御するようになっていてもよい。このことにより、例えば操作者がPOSレジスタ等の外部装置を用いて特定の硬貨収納部30a~30fから硬貨を取り出す旨の指示を硬貨処理装置10の制御部80に送信した場合でも、外部装置からの指示に基づいて金種別扉46の施錠を解除することにより、操作者はこの金種別扉46を上方に開いてこの金種別扉46に対応する硬貨収納部30a~30fから硬貨を取り出すことができるようになる。
【0054】
以上のような構成からなる本実施の形態の硬貨処理装置10によれば、各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを制限するためのアクセス制限手段90が設けられており、このアクセス制限手段90は、複数の硬貨収納部30a~30fのうち所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨のみへのアクセスを許容する第1アクセス許容状態および全ての硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する第2アクセス許容状態のうちいずれかの許容状態で各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容するようになっている。このことにより、硬貨収納部30a~30fから硬貨を取り出す際の用途に応じてアクセス許容状態を選択することができる。しかも、第1アクセス許容状態では所定の条件を満たさない硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスが制限されるため、所定の条件を満たさない硬貨収納部30a~30fから硬貨が取り出されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0055】
具体的には、各硬貨収納部30a~30fには、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーが発生したときにエラーが発生したことを検知するエラー検知部32がそれぞれ設けられている。そして、アクセス制限手段90は、エラー検知部32によりエラーが発生したことが検知されたときに、当該エラー検知部32が設けられている硬貨収納部30a~30fが所定の条件を満たしたと判断し、第1アクセス許容状態において所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。ここで、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーとは、例えば硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨が繰出部50により繰り出される際に詰まり等が発生することにより硬貨の繰出不良が生じることをいう。しかしながら、硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨に関するエラーは、このような硬貨の繰出不良に限定されることはなく、それ以外のトラブルがエラーとしてエラー検知部32により検知されるようになっていてもよい。また、変形例に係る硬貨処理装置では、エラー検知部32が設けられていなくてもよい。この場合には、第1アクセス許容状態において収納されている硬貨へのアクセスが許容される「所定の条件」の硬貨収納部30a~30fは、硬貨の繰出不良が生じたものではなく、他の条件を満たす(例えば、収納されている硬貨へのアクセスを許容する旨の指示が操作表示部82により入力されたり、収納されている硬貨へのアクセスを許容する旨の指示が通信インターフェース部86により受け付けられたりした)硬貨収納部30a~30fとなる。
【0056】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、各硬貨収納部30a~30fには、当該硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨を硬貨収納部30a~30fから繰り出す繰出部50がそれぞれ設けられており、アクセス制限手段90は、第1アクセス許容状態において所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに設けられた繰出部50へのアクセスを許容するようになっている。この場合には、繰出部50による硬貨の繰出不良が生じた場合にこの繰出不良の原因となる硬貨を操作者は確実に繰出部50から取り除くことができるようになる。
【0057】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、アクセス制限手段90は、各硬貨収納部30a~30fに対応して設けられる複数の金種別扉46(第1扉部)と、各金種別扉46に対応して設けられ、各硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを制限するよう金種別扉46を施錠する複数の第1施錠部48とを有している。そして、アクセス制限手段90は、所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに対応する第1施錠部48による金種別扉46の施錠を解除することにより、第1アクセス許容状態において金種別扉46の施錠が解除された硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。また、アクセス制限手段90は、全ての硬貨収納部30a~30fにまたがって設けられる収納扉40(第2扉部)と、全ての硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを制限するよう収納扉40を施錠する第2施錠部42とを有しており、各金種別扉46は収納扉40に設けられている。そして、アクセス制限手段90は、第1施錠部48による収納扉40の施錠を解除することにより、第2アクセス許容状態において全ての硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。また、各第1施錠部48は、通電すると対応する金種別扉46の施錠を解除するようになっており、第2施錠部42は、物理的な力が与えられると(具体的には、カギ穴に特定の鍵44を差し込んで回転させると)収納扉40の施錠を解除するようになっている。
【0058】
なお、第1施錠部48は、通電すると対応する金種別扉46の施錠を解除するようなものに限定されることはない。第1施錠部48として、他の態様により対応する金種別扉46の施錠を解除するようなものが用いられてもよい。また、第2施錠部42は、物理的な力が与えられると収納扉40の施錠を解除するようなものに限定されることはない。第2施錠部42として、他の態様により収納扉40の施錠を解除するようなものが用いられてもよい。
【0059】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、アクセス制限手段90は、所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに対応する第1施錠部48による金種別扉46の施錠を解除した後、当該金種別扉46が硬貨収納部30a~30fを完全に塞ぐ位置から浮き上がるようにする。このことにより、複数の金種別扉46のうち、第1施錠部48による施錠が解除された金種別扉46が一目で分かるようになる。
【0060】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、操作者が指示(内部指示)を入力するための操作部として操作表示部82が設けられており、複数の硬貨収納部30a~30fのうちある硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する旨の指示が操作表示部82により入力されると、アクセス制限手段90は、操作表示部82により入力された指示に係る硬貨収納部30a~30fが所定の条件を満たしたと判断し、第1アクセス許容状態において所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。また、この場合、操作表示部82を操作する操作者の権限の認証を行う認証手段88が設けられているときには、アクセス制限手段90は、認証手段88により操作者の権限が所定の権限であると認証された場合においてのみ、複数の硬貨収納部30a~30fのうちある硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する旨の指示が操作表示部82により入力されると、操作表示部82により入力された指示に係る硬貨収納部30a~30fが所定の条件を満たしたと判断するようになっていてもよい。
【0061】
なお、本実施の形態では、認証手段88が設けられていなくてもよい。この場合には、操作者の権限に関係なく、複数の硬貨収納部30a~30fのうちある硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する旨の指示が操作表示部82により入力されると、アクセス制限手段90は、操作表示部82により入力された指示に係る硬貨収納部30a~30fが所定の条件を満たしたと判断し、第1アクセス許容状態において所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。
【0062】
また、本実施の形態の硬貨処理装置10においては、別の装置から通信により指示(外部指示)を受け付けるための指示受付部として通信インターフェース部86が設けられており、複数の硬貨収納部30a~30fのうちある硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する旨の指示が通信インターフェース部86により受け付けられると、アクセス制限手段90は、通信インターフェース部86により受け付けられた指示に係る硬貨収納部30a~30fが所定の条件を満たしたと判断し、第1アクセス許容状態において所定の条件を満たす硬貨収納部30a~30fに収納されている硬貨へのアクセスを許容する。
【0063】
次に、紙幣処理装置110の構成の詳細について図14乃至図23を用いて説明する。図14は、紙幣処理装置110の内部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す構成図である。図1および図14に示すように、紙幣処理装置110は、略直方体形状の内側筐体111と、紙幣を外部から受け入れる紙幣受入部122と、筐体の内部で紙幣を搬送する搬送部130と、搬送部130に設けられ、当該搬送部により搬送される紙幣の金種、真偽、正損、搬送状態等の識別を行う識別部132と、搬送部130に接続され、当該搬送部130から送られた紙幣を金種毎に収納するとともに収納されている紙幣を搬送部130に繰り出し可能な複数(図14に示す例では3つ)の紙幣収納部140、142、144と、搬送部130に接続され、当該搬送部130により搬送される紙幣を筐体の外部に出す紙幣出口部124とを有している。ここで、紙幣処理装置110の内側筐体111は外側筐体1aから手前側に引き出し可能となっている。また、紙幣処理装置110には、紙幣の出金処理が行われる際に正常な紙幣ではないと識別部132により識別された紙幣が搬送部130から送られる出金リジェクト部126が設けられている。また、紙幣処理装置110には紙幣収納カセット128が着脱自在に装着されるようになっており、紙幣処理装置110に紙幣収納カセット128が装着されると、当該紙幣収納カセット128に収納されている紙幣を搬送部130に繰り出すとともに搬送部130から紙幣収納カセット128に紙幣を送って当該紙幣収納カセット128に収納させることができるようになっている。以下、このような紙幣処理装置110の各構成要素の詳細について説明する。
【0064】
紙幣受入部122には紙幣受入口122aが設けられており、この紙幣受入口122aは紙幣処理装置110の筐体の前面に配置されている。操作者はこの紙幣受入口122aを介して1または複数の紙幣を重ねた状態で筐体の外部から紙幣受入部122に投入することができるようになっている。この際に、操作者は筐体の外部から1または複数の紙幣をその長手方向に沿った方向で紙幣受入口122aに投入する。また、紙幣受入部122には、当該紙幣受入部122に重なった状態で受け入れられた紙幣を1枚ずつ搬送部130に繰り出す紙幣繰出機構(図示せず)が設けられている。
【0065】
図14に示すように、搬送部130は、周回搬送部分130aと、周回搬送部分130aから放射状に延びる複数の接続搬送部分130bとを有している。また、周回搬送部分130aには識別部132が設けられており、当該周回搬送部分130aにおいて周回移動している紙幣の金種、真偽、正損、搬送状態等が識別部132により識別されるようになっている。また、複数の接続搬送部分130bは、周回搬送部分130aと、紙幣受入部122、紙幣出口部124、出金リジェクト部126、紙幣収納カセット128、各紙幣収納部140、142、144の各々とをそれぞれ接続するようになっている。
【0066】
各紙幣収納部140、142、144には、搬送部130から送られた紙幣が金種毎に収納されるようになっている。具体的には、紙幣収納部140には千円札が収納され、紙幣収納部142には五千円札および二千円札が混合状態で収納され、紙幣収納部144には一万円札が収納されるようになっている。また、各紙幣収納部140、142、144には、それぞれ、収納されている紙幣を1枚ずつ搬送部130に繰り出す繰出部141、143、145が設けられている。
【0067】
紙幣出口部124は搬送部130から送られた紙幣を一時的に保留するようになっている。また、紙幣処理装置110の筐体の前面には紙幣放出口124aが設けられており、紙幣の出金処理において出金されるべき枚数の紙幣が搬送部130から紙幣出口部124に送られて当該紙幣出口部124に保留されると、この紙幣出口部124に保留されている紙幣が紙幣放出機構(図示せず)により紙幣放出口124aから筐体の外部に放出されるようになっている。このとき、出金されるべき枚数の紙幣が複数であった場合には、それらの紙幣は紙幣出口部124に重なった状態で保留され、紙幣放出機構(図示せず)により紙幣放出口124aから筐体の外部にまとめて放出される。このことにより、操作者は筐体の外部へ出金紙幣を取り出すことができるようになる。
【0068】
また、図14に示すように、搬送部130の周回搬送部分130aや接続搬送部分130bに、複数の搬送検知センサ130cや識別部132が設けられている。これらの搬送検知センサ130cや識別部132は、それぞれ、発光素子および受光素子を有するフォトセンサ等から構成されている。これらの複数の発光素子と受光素子との間の光路が紙幣により遮られると当該紙幣が各搬送検知センサ130cにより検知されるようになっている。搬送部130による紙幣の搬送状態については、複数の搬送検知センサ130cや識別部132に基づいて、紙幣の搬送状態(具体的には、搬送部130により搬送される紙幣が斜行しているか否かや、搬送部130により搬送される紙幣間の間隔の大きさ等)が検知されるようになる。
【0069】
また、本実施の形態の紙幣処理装置110では、図15に示すように、各紙幣収納部140、142、144を覆う収納扉150が設けられており、紙幣処理装置110の内側筐体111を外側筐体1aから引き出した後、この収納扉150を上方に開くと各紙幣収納部140、142、144の紙幣収納領域にアクセスすることができるようになっている。より詳細には、硬貨処理装置10の収納扉40と同様に、収納扉150は水平方向に延びる軸を中心として回転自在となっており、各紙幣収納部140、142、144を覆う状態から収納扉150を上方に開いて図15に示す状態にすることができるようになっている。また、図15に示すように、収納扉150は全ての紙幣収納部140、142、144をまたがるよう設けられている。このことにより、収納扉150により各紙幣収納部140、142、144が閉じられているときには、どの紙幣収納部140、142、144の紙幣収納領域にもアクセスすることができない。一方、収納扉150が上方に開かれると、全ての紙幣収納部140、142、144の紙幣収納領域にアクセスすることができるようになる。また、収納扉150には、各紙幣収納部140、142、144を閉じた状態で収納扉150を施錠する第2施錠部151が設けられている。このような第2施錠部151は、硬貨処理装置10の第2施錠部42と略同一の構成となっている。具体的には、第2施錠部151にはカギ穴が形成されており、このカギ穴に特定の鍵を差し込んで回転させると第2施錠部151による収納扉150の施錠が解除されるようになっている。すなわち、通常時は、収納扉150は各紙幣収納部140、142、144を閉じた状態となっており、このような状態で収納扉150は第2施錠部151によって施錠されることにより上方に開くことができないようになっている。一方、第2施錠部151に形成されたカギ穴に特定の鍵を差し込んで回転させることによって第2施錠部151による収納扉150の施錠が解除されると、収納扉150を上方に開くことができるようになる。
【0070】
また、図6に示すように、各紙幣収納部140、142、144に対応するよう収納扉150には複数(具体的には、3つ)の金種別扉152が設けられている。ここで、硬貨処理装置10の各金種別扉46と同様に、各金種別扉152は、それぞれ水平方向に延びる軸を中心として収納扉150に対して回転自在となっており、このことにより収納扉150から各金種別扉152を上方に開くことができるようになっている。ここで、収納扉150が各紙幣収納部140、142、144を閉じた状態となっていても、各金種別扉152を上方に開くと、この金種別扉152に対応する紙幣収納部140、142、144の紙幣収納領域にアクセスすることができるようになっている。また、図15に示すように、収納扉150には、各金種別扉152に対応するよう複数(具体的には、3つ)の第1施錠部153が設けられている。各第1施錠部153は、対応する金種別扉152を施錠するようになっている。ここで、通常時は、各金種別扉152は第1施錠部153により施錠されることによって収納扉150に固定されるようになっており、各金種別扉152を収納扉150から上方に開くことができないようになっている。一方、第1施錠部153による金種別扉152の施錠が解除されると、金種別扉152を収納扉150から上方に開くことができるようになる。このような各第1施錠部153の構成は、硬貨処理装置10の第1施錠部48の構成と略同一となっている。
【0071】
なお、本実施の形態の紙幣処理装置110では、収納扉150や各金種別扉152を上方に開くと各紙幣収納部140、142、144の紙幣収納領域にアクセスすることができるようになるということは、紙幣収納領域に収納されている紙幣にアクセスしてこの紙幣を取り出すことができるということを意味するとともに、各紙幣収納部140、142、144に設けられた繰出部141、143、145にもアクセスすることができるということを意味している。
【0072】
また、図14に示すように、紙幣処理装置110には制御部180が設けられており、紙幣処理装置110の各構成部材がそれぞれ当該制御部180に接続されている。そして、識別部132による紙幣の識別結果や、各搬送検知センサ130cによる紙幣の検知結果が制御部180に送られるようになっている。また、制御部180は、紙幣受入部122に設けられている紙幣繰出機構(図示せず)、紙幣出口部124、搬送部130、繰出部141、143、145、各第1施錠部153の各構成部材に指令を送ることによりこれらの構成部材の制御を行うことができるようになっている。
【0073】
また、本実施の形態の紙幣処理装置110においては、上述した収納扉150、各金種別扉152、各第1施錠部153、第2施錠部151および制御部180等により、アクセス制限手段190が構成されている。ここで、アクセス制限手段190は、各紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを制限するためのものである。より詳細には、アクセス制限手段190は、複数の紙幣収納部140、142、144のうち所定の条件を満たす紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣のみへのアクセスを許容する第1アクセス許容状態、および全ての紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを許容する第2アクセス許容状態のうちいずれかの許容状態で各紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを許容するようになっている。具体的には、アクセス制限手段190は、各紙幣収納部140、142、144に対応して設けられる複数の金種別扉152(第1扉部)と、各金種別扉152に対応して設けられ、各紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを制限するよう各金種別扉152を施錠する複数の第1施錠部153とを有している。そして、アクセス制限手段190は、所定の条件を満たす紙幣収納部140、142、144に対応する第1施錠部153による金種別扉152の施錠を解除することにより、第1アクセス許容状態において金種別扉152の施錠が解除された紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを許容する。また、アクセス制限手段190は、全ての紙幣収納部140、142、144にまたがって設けられる収納扉150(第2扉部)と、全ての紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを制限するよう収納扉150を施錠する第2施錠部151とを有している。そして、アクセス制限手段190は、第2施錠部151による収納扉150の施錠を解除することにより、第2アクセス許容状態において全ての紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスを許容する。
【0074】
このようなアクセス制限手段190が設けられている紙幣処理装置110によれば、アクセス制限手段90が設けられている硬貨処理装置10と同様に、紙幣収納部140、142、144から紙幣を取り出す際の用途に応じてアクセス許容状態を選択することができる。しかも、第1アクセス許容状態では所定の条件を満たさない紙幣収納部140、142、144に収納されている紙幣へのアクセスが制限されるため、所定の条件を満たさない紙幣収納部140、142、144から紙幣が取り出されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0075】
次に、本実施の形態の紙幣処理装置110における紙幣受入部122の構成の詳細について図16乃至図23を用いて説明する。図16および図17に示すように、紙幣受入部122には紙幣受入口122aが設けられており、この紙幣受入口122aは紙幣処理装置110の筐体の前面に配置されている。操作者はこの紙幣受入口122aを介して1または複数の紙幣を重ねた状態で筐体の外部から紙幣受入部122に投入することができるようになっている。この際に、操作者は筐体の外部から1または複数の紙幣をその長手方向に沿った方向で紙幣受入口122aに投入する。しかしながら、紙幣受入口122aに紙幣が真っ直ぐではなく上下方向において斜めに投入されると、この紙幣は斜行した状態で紙幣繰出機構に送られるが、この際に紙幣の隅部が折れてしまい、紙幣繰出機構により紙幣が繰り出される際に詰まり等のトラブルが発生するおそれがある。また、図16および図17に示すように、操作者が紙幣受入口122aに紙幣を投入しやすくなるよう、紙幣受入口122aの下部は間口が広くなっている。しかしながら、このような紙幣受入口122aでは、図22に示すように湾曲した状態で紙幣が紙幣受入口122aに投入される場合があり、この場合には図23に示すように紙幣の隅部が折れてしまう可能性が高くなる。なお、図22および図23において紙幣受入口122aへの紙幣の投入方向を矢印で示している。
【0076】
これに対し、本実施の形態の紙幣処理装置110ではこのようなトラブルが発生することを抑制するために様々な工夫を行っている。具体的には、本実施の形態の紙幣処理装置110の紙幣受入部122には第1ガイド部材170および第2ガイド部材172がそれぞれ着脱自在に装着されるようになっている。具体的には、第1ガイド部材170は紙幣受入口122aの上半分を覆うよう装着され、第2ガイド部材172は紙幣受入口122aの下半分を覆うよう装着されるようになっている。図18図19および図21は、紙幣受入部122に第1ガイド部材170および第2ガイド部材172がそれぞれ装着されたときの状態を示す図である。
【0077】
一方、図20は、第1ガイド部材170および第2ガイド部材172が紙幣受入部122に装着されていないときの状態を示す図である。本実施の形態の紙幣処理装置110では、図20に示すように、1または複数の紙幣を外部から投入しやすくするために、紙幣受入口122aの上部に、外側に向かって広がる傾斜部122bを設けることにより紙幣受入口122aの間口を広くしていた。しかしながら、このような傾斜部122bが設けられていることにより、紙幣受入口122aに紙幣が上下方向において斜めに投入されるおそれがあった。これに対し、図21に示すように第1ガイド部材170の下端縁170aは、当該第1ガイド部材170が紙幣受入部122に装着された場合に、紙幣受入口122aが外側に向かって広がらないような構成となっている。このため、第1ガイド部材170を紙幣受入部122に装着することによって、紙幣受入口122aに紙幣が上下方向において斜めに投入されることを防止することができ、よって紙幣受入口122aに投入された紙幣の隅部が折れてしまい詰まり等のトラブルが発生することを抑制することができる。
【0078】
また、図18および図19に示すように、第2ガイド部材172には紙幣受入口122aの下部の幅よりも小さな幅のスリット172aが形成されており、操作者は1または複数の紙幣をこのスリット172aを介して紙幣受入口122aに投入するようになっている。また、図19に示すように、第2ガイド部材172は、紙幣受入口122aから奥側(筐体の内部)に向かって延びる弾性体172bを有しており、スリット172aを介して紙幣受入口122aに投入された1または複数の紙幣は、弾性体172bにより紙幣受入部122の内部壁面に押されるようになっている。このような第2ガイド部材172が紙幣受入部122に装着された場合には、図22に示すような湾曲した状態の紙幣を紙幣受入部122に投入する場合でも、幅が小さいスリット172aを通ることおよびこのスリット172aを通った後に弾性体172bにより紙幣受入部122の内部壁面に押されることによって、紙幣は湾曲した状態から真っ直ぐな状態に矯正され、この紙幣は矯正された状態で紙幣繰出機構により搬送部130に繰り出されるようになる。このように、第2ガイド部材172によって紙幣は湾曲した状態から真っ直ぐな状態に矯正されることにより、紙幣受入口122aに投入された紙幣の隅部が折れてしまい詰まり等のトラブルが発生することを抑制することができる。
【0079】
なお、上記の説明では第1ガイド部材170および第2ガイド部材172の両方が紙幣受入部122に装着されるような態様について述べたが、変形例に係る紙幣処理装置として、第1ガイド部材170および第2ガイド部材172のうち一方のガイド部材のみが紙幣受入部122に装着されるような構成のものが用いられてもよい。
【0080】
また、本発明に係る有価媒体処理装置は、硬貨の処理を行う硬貨処理装置10や紙幣の処理を行う紙幣処理装置110に限定されることはない。本発明に係る有価媒体処理装置として、硬貨や紙幣以外の有価媒体(例えば、カジノのチップ、商品券、小切手等)の処理を行うものが用いられてもよい。この場合には、硬貨や紙幣以外の有価媒体がそれぞれ収納される複数の収納部が設けられるとともに、各収納部に収納されている有価媒体へのアクセスを制限するためのアクセス制限手段が有価媒体処理装置に設けられるようになる。そして、有価媒体処理装置のアクセス制限手段は、硬貨処理装置10のアクセス制限手段90や紙幣処理装置110のアクセス制限手段190と同様の機能を果たすようになる。
【符号の説明】
【0081】
1 貨幣処理機
1a 外側筐体
10 硬貨処理装置
11 内側筐体
12 硬貨受入部
13 残留検知センサ
14 繰出部
14a 繰出ベルト
16 入金搬送部
16a 循環ベルト
16b プーリ
16c 搬送面
18 識別部
22 金種別分岐部
23 通過検知センサ
24 リジェクト部
24a リジェクトシュート
25 ゲート部材
25a 軸
25b 上面
26 リジェクト口
30a~30f 硬貨収納部
31 硬貨収納領域
32 エラー検知部
34 硬貨案内溝
36 硬貨払出部
37 上蓋
38 支持部
39 駆動部
40 収納扉
41 軸
42 第2施錠部
44 鍵
46 金種別扉
46a ロックピン
47 軸
48 第1施錠部
48a ロック部材
48b 軸
48c プランジャ
48d コイルバネ
48e ソレノイド
50 繰出部
52 繰出ベルト
54 プーリ
56 逆転ローラ
80 制御部
82 操作表示部
84 記憶部
86 通信インターフェース部
88 認証手段
90 アクセス制限手段
110 紙幣処理装置
111 内側筐体
122 紙幣受入部
122a 紙幣受入口
122b 傾斜部
124 紙幣出口部
124a 紙幣放出口
126 出金リジェクト部
128 紙幣収納カセット
130 搬送部
130a 周回搬送部分
130b 接続搬送部分
130c 搬送検知センサ
132 識別部
140、142、144 紙幣収納部
141、143、145 繰出部
150 収納扉
151 第2施錠部
152 金種別扉
153 第1施錠部
170 第1ガイド部材
170a 下端縁
172 第2ガイド部材
172a スリット
172b 弾性体
180 制御部
190 アクセス制限手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23