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特許7549079樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240903BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 33/30 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 33/20 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C43/34
B29C45/64
B29C33/30
B29C33/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023086277
(22)【出願日】2023-05-25
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆太
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 拓人
(72)【発明者】
【氏名】林 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】安田 信介
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165134(JP,A)
【文献】特開2005-131837(JP,A)
【文献】特開2022-125946(JP,A)
【文献】特開2020-185754(JP,A)
【文献】特開2018-058285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 43/34
B29C 45/64
B29C 33/30
B29C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材を介して成形型を型締めする型締め機構と、
前記ベース部材よりも外側に位置する突出し位置に前記成形型をスライドさせる成形型スライド機構と、
前記突出し位置にある前記成形型に対して搬送対象物の搬送を行う搬送機構と、
前記成形型スライド機構及び前記搬送機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記搬送対象物の搬送を行う搬送位置への前記搬送機構の移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置へのスライド動作よりも先に開始する、又は、前記移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作を行わせるものであり、
前記成形型は、上型及び下型を有し、
前記成形型スライド機構は、前記上型及び前記下型それぞれに対応して設けられ、
前記制御部は、前記成形型スライド機構を制御して、前記上型及び前記下型を別々に前記突出し位置に移動させる、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記移動動作が完了した後に前記スライド動作を行わせる、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動動作及び前記スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させる、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記ベース部材は、
固定プラテンと、
前記型締め機構により昇降可能な可動プラテンと、
前記固定プラテン及び前記可動プラテンの間に配置される中間プレートとを有し、
前記成形型は、前記固定プラテン及び前記中間プレートの間、及び、前記中間プレート及び前記可動プラテンの間それぞれに設けられた上型及び下型を有する、請求項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記可動プラテン及び前記中間プレートの側方両側に配置された一対の側壁部材と、
前記中間プレートを前記一対の側壁部材に対して上下方向に沿ってスライドさせるスライド機構と、
前記可動プラテンの昇降に前記中間プレートの昇降を連動させる昇降連動機構とをさらに備え、
前記昇降連動機構は、
一端部が前記側壁部材に対して固定され、他端部が前記可動プラテンとともに移動して、前記可動プラテンの昇降により伸び縮みするパンタグラフ機構と、
前記パンタグラフ機構の交差リンク部及び前記中間プレートを連結する連結機構とを有する、請求項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記搬送機構は、前記突出し位置にある前記成形型に対して成形対象物の搬送を行う成形対象物搬送機構を有し、
前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記成形対象物の搬送を行う搬送位置への前記成形対象物搬送機構の第1移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置への第1スライド動作よりも先に開始する、又は、前記第1移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記第1スライド動作を行わせる、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記成形対象物搬送機構は、
前記突出し位置にある前記成形型に前記成形対象物を供給する成形対象物供給部と、
前記突出し位置にある前記成形型から樹脂成形された前記成形対象物を受け取る成形対象物受取部とを有し、
前記制御部は、前記搬送位置において、前記成形対象物受取部の受取動作及び前記成形対象物供給部の供給動作を連続して行わせる、請求項に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記搬送機構は、前記突出し位置にある前記成形型に対して樹脂材料の搬送を行う樹脂材料搬送機構を有し、
前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記樹脂材料の搬送を行う搬送位置への前記樹脂材料搬送機構の第2移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置への第2スライド動作よりも先に開始する、又は、前記第2移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記第2スライド動作を行わせる、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
前記樹脂材料搬送機構は、
前記突出し位置にある前記成形型に前記樹脂材料を供給する樹脂材料供給部と、
前記突出し位置にある前記成形型から使用済みの離型フィルムを回収するフィルム回収部とを有し、
前記制御部は、前記搬送位置において、前記フィルム回収部の回収動作及び前記樹脂材料供給部の供給動作を連続して行わせる、請求項に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
搬送機構を用いて搬送対象物を成形型に搬送する搬送工程と、
ベース部材を介して型締めされる型締め位置から型締め方向と交差するスライド方向に沿って前記成形型をスライドさせて、前記ベース部材よりも外側に位置する突出し位置に移動させる第1スライド工程と、
前記突出し位置から前記スライド方向に沿って前記成形型をスライドさせて、前記型締め位置に移動させる第2スライド工程と、
前記型締め位置にある前記成形型を型締めして樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含み、
前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記搬送対象物の搬送を行う搬送位置への前記搬送機構の移動動作を、前記成形型の前記型締め位置から前記突出し位置へのスライド動作よりも先に開始される、又は、前記移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作が行われるものであり、
前記成形型は、上型及び下型を有し、
前記上型及び前記下型それぞれに対して前記搬送工程、前記第1スライド工程及び前記第2スライド工程が施され、前記樹脂成形工程において前記上型及び前記下型が型締めされる、樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記移動動作が完了した後に前記スライド動作が行われる、請求項10に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記移動動作及び前記スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させる、請求項10に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
搬送機構を用いて搬送対象物を成形型に搬送する搬送工程と、
ベース部材を介して型締めされる型締め位置から型締め方向と交差するスライド方向に沿って前記成形型をスライドさせて、前記ベース部材よりも外側に位置する突出し位置に移動させる第1スライド工程と、
前記突出し位置から前記スライド方向に沿って前記成形型をスライドさせて、前記型締め位置に移動させる第2スライド工程と、
前記型締め位置にある前記成形型を型締めして樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含み、
前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記搬送対象物の搬送を行う搬送位置への前記搬送機構の移動動作を、前記成形型の前記型締め位置から前記突出し位置へのスライド動作よりも先に開始される、又は、前記移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作が行われるものであり、
前記成形型は、複数組の上型及び下型を有し、
前記複数組の前記上型に対して前記搬送工程、前記第1スライド工程及び前記第2スライド工程が施され、
前記複数組の前記下型に対して前記搬送工程、前記第1スライド工程及び前記第2スライド工程が施され、
前記樹脂成形工程において前記複数組の前記上型及び前記下型が型締めされる、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、圧縮成形装置において、固定プラテンに支持される固定型(下型)を、金型クランプ位置と金型外の取出し位置との間で移動可能としたものが考えられている。
【0003】
この圧縮成形装置では、下型を金型クランプ位置から取出し位置に移動させて待機させた状態で、ローダーによって基板を吐出位置に搬送して基板に液状樹脂を供給し、その後、液状樹脂が供給された基板を取出し位置にある下型に搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-165134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、下型を取出し位置で待機させた状態で、ローダーの移動を開始して基板を下型に搬送しており、下型の温度が低下してしまう。また、取出し位置での待機時間が長くなってしまい、下型のコンタミネーション(例えば異物の付着や混入など)が生じ易くなり、又は、タクトタイムが長くなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、成形型の温度維持、成形型のコンタミネーションの低減又はタクトタイムの短縮等の条件を満たしつつ樹脂成形品を製造することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る樹脂成形装置は、ベース部材を介して成形型を型締めする型締め機構と、前記ベース部材よりも外側に位置する突出し位置に前記成形型をスライドさせる成形型スライド機構と、前記突出し位置にある前記成形型に対して搬送対象物の搬送を行う搬送機構と、前記成形型スライド機構及び前記搬送機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記搬送対象物の搬送を行う搬送位置への前記搬送機構の移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置へのスライド動作よりも先に開始する、又は、前記移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、成形型の温度維持、成形型のコンタミネーションの低減又はタクトタイムの短縮等の条件を満たしつつ樹脂成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2】第1実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す正面図である。
図3】第1実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す側面図である。
図4】第1実施形態の成形型の構成を模式的に示す図である。
図5】第1実施形態の側壁部材の周辺構造を模式的に示す拡大断面図である。
図6】第1実施形態のパンタグラフ機構を模式的に示す拡大図である。
図7】第1実施形態の弾性部材の周辺構造を模式的に示す拡大断面図である。
図8】第1実施形態の弾性部材の動作を模式的に示す断面図である。
図9】第1実施形態の成形型スライド機構及び間隔変更機構を主として示す側面図である。
図10】第1実施形態の(a)上型の成形型スライド機構、及び、(b)下型の成形型スライド機構を主として示す平面図である。
図11】第1実施形態において上型を突出し位置に移動させた状態を示す側面図である。
図12】第1実施形態において下型を突出し位置に移動させた状態を示す側面図である。
図13】第1実施形態において(a)上型及びベース部材の間隔変更、及び、(b)下型及びベース部材の間隔変更を模式的に示す側面図である。
図14】第1実施形態における樹脂成形品の製造方法のフローチャートである。
図15】第1実施形態における基板搬送機構の動作及び上型のスライド動作を示すフローチャートである。
図16】第1実施形態における基板搬送機構の動作及び上型のスライド動作の各状態を示す模式図である。
図17】第1実施形態における樹脂材料搬送機構の動作及び下型のスライド動作を示すフローチャートである。
図18】第1実施形態における樹脂材料搬送機構の動作及び下型のスライド動作の各状態を示す模式図である。
図19】第2実施形態に係る樹脂成形装置の構成を模式的に示す正面図である。
図20】第2実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す側面図である。
図21】変形実施形態の弾性部材の周辺構造を模式的に示す側面図、断面図及び正面図である。
図22】変形実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る技術について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の技術により限定されない。
【0011】
本発明に係る技術1の樹脂成形装置は、ベース部材を介して成形型を型締めする型締め機構と、前記ベース部材よりも外側に位置する突出し位置に前記成形型をスライドさせる成形型スライド機構と、前記突出し位置にある前記成形型に対して搬送対象物の搬送を行う搬送機構と、前記成形型スライド機構及び前記搬送機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記搬送対象物の搬送を行う搬送位置への前記搬送機構の移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置へのスライド動作よりも先に開始する、又は、前記移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作を行わせることを特徴とする。
【0012】
この樹脂成形装置であれば、突出し位置にある成形型に対して搬送対象物の搬送を行う搬送位置への搬送機構の移動動作を、成形型スライド機構による突出し位置へのスライド動作よりも先に開始する、又は、移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作を行わせるので、成形型が突出し位置に留まる時間を短くすることができる。その結果、突出し位置にある成形型の温度低下を防ぎ、成形型の温度維持をしやすくすることができる。また、成形型のコンタミネーションの低減することができ、又はタクトタイムを短縮することができる。したがって、成形型の温度維持、成形型のコンタミネーションの低減又はタクトタイムの短縮等の条件を満たしつつ樹脂成形品を製造することができる。
【0013】
本発明に係る技術2の樹脂成形装置は、上記の技術1の構成に加えて、前記制御部は、前記移動動作が完了した後に前記スライド動作を行わせることが望ましい。
この構成であれば、成形型が突出し位置に留まる時間を短くすることができ、成形型の温度低下を防ぎ、また、成形型、樹脂成形品又は樹脂材料等のコンタミネーションを防止することができる。
【0014】
本発明に係る技術3の樹脂成形装置は、上記の技術1の構成に加えて、前記制御部は、前記移動動作及び前記スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させることが望ましい。
この構成であれば、樹脂成形装置のタクトタイムを短縮することができ、樹脂成形装置の生産性を向上することができる。なお、この構成であっても、成形型が突出し位置に留まる時間を短くすることができ、成形型の温度低下を防ぎ、また、成形型、樹脂成形品又は樹脂材料等のコンタミネーションを防止することができる。
【0015】
本発明に係る技術4の樹脂成形装置は、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成に加えて、前記成形型は、上型及び下型を有し、前記成形型スライド機構は、前記上型及び前記下型それぞれに対応して設けられ、前記制御部は、前記成形型スライド機構を制御して、前記上型及び前記下型を別々に前記突出し位置に移動させることが望ましい。
この構成であれば、上型及び下型を互いに独立して突出し位置に移動させることができ、上型及び下型それぞれに対して搬送対象物を搬送することができる。
【0016】
本発明に係る技術5の樹脂成形装置は、上記の技術4の構成に加えて、前記ベース部材は、固定プラテンと、前記型締め機構により昇降可能な可動プラテンと、前記固定プラテン及び前記可動プラテンの間に配置される中間プレートとを有し、前記成形型は、前記固定プラテン及び前記中間プレートの間、及び、前記中間プレート及び前記可動プラテンの間それぞれに設けられた上型及び下型を有することが望ましい。
この構成であれば、成形型の数を増やすことができ、樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る技術6の樹脂成形装置は、上記の技術5の構成に加えて、前記可動プラテン及び前記中間プレートの側方両側に配置された一対の側壁部材と、前記中間プレートを前記一対の側壁部材に対して上下方向に沿ってスライドさせるスライド機構と、前記可動プラテンの昇降に前記中間プレートの昇降を連動させる昇降連動機構とをさらに備え、前記昇降連動機構は、一端部が前記側壁部材に対して固定され、他端部が前記可動プラテンとともに移動して、前記可動プラテンの昇降により伸び縮みするパンタグラフ機構と、前記パンタグラフ機構の交差リンク部及び前記中間プレートを連結する連結機構とを有することが望ましい。
この構成であれば、複数の中間プレートは、パンタグラフ機構により可動プラテンの昇降に連動するので、複数の中間プレートの間それぞれに成形型を設ける構成としても、各部材の大型化を防ぐとともに装置全体の大型化も抑えることができ、高剛性の部材を不要にすることもできる。
【0018】
本発明に係る技術7の樹脂成形装置は、上記の技術1乃至6の何れか1つの構成に加えて、前記搬送機構は、前記突出し位置にある前記成形型に対して成形対象物の搬送を行う成形対象物搬送機構を有することが考えられる。そして、本技術7の樹脂成形装置において、前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記成形対象物の搬送を行う搬送位置への前記成形対象物搬送機構の第1移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置への第1スライド動作よりも先に開始する、又は、前記第1移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記第1スライド動作を行わせることが望ましい。
この構成であれば、成形対象物を保持する成形型(例えば上型)が突出し位置に留まる時間を短くすることができ、成形型の温度低下を防ぎ、また、成形型又は樹脂成形品のコンタミネーションを防止することができる。
【0019】
本発明の技術8の樹脂成形装置は、上記の技術7の構成に加えて、前記成形対象物搬送機構は、前記突出し位置にある前記成形型に前記成形対象物を供給する成形対象物供給部と、前記突出し位置にある前記成形型から樹脂成形された前記成形対象物を受け取る成形対象物受取部とを有し、前記制御部は、前記搬送位置において、前記成形対象物受取部の受取動作及び前記成形対象物供給部の供給動作を連続して行わせることが望ましい。
この構成であれば、成形対象物受取部の受取動作及び成形対象物供給部の供給動作が連続して行われるので、成形対象物を保持する成形型が突出し位置に留まる時間を短縮することができる。
【0020】
本発明に係る技術9の樹脂成形装置は、上記の技術1乃至8の何れか1つの構成に加えて、前記搬送機構は、前記突出し位置にある前記成形型に対して樹脂材料の搬送を行う樹脂材料搬送機構を有することが考えられる。そして、本技術9の樹脂成形装置において、前記制御部は、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記樹脂材料の搬送を行う搬送位置への前記樹脂材料搬送機構の第2移動動作を、前記成形型スライド機構による前記突出し位置への第2スライド動作よりも先に開始する、又は、前記第2移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記第2スライド動作を行わせることが望ましい。
この構成であれば、樹脂材料が供給される成形型(例えば下型)が突出し位置に留まる時間を短くすることができ、成形型の温度低下を防ぎ、また、成形型又は樹脂材料のコンタミネーションを防止することができる。
【0021】
本発明に係る技術10の樹脂成形装置は、上記の技術9の構成に加えて、前記樹脂材料搬送機構は、前記突出し位置にある前記成形型に前記樹脂材料を供給する樹脂材料供給部と、前記突出し位置にある前記成形型から使用済みの離型フィルムを回収するフィルム回収部とを有し、前記制御部は、前記搬送位置において、前記フィルム回収部の回収動作及び前記樹脂材料供給部の供給動作を連続して行わせることが望ましい。
この構成であれば、フィルム回収部の回収動作及び樹脂材料供給部の供給動作が連続して行われるので、離型フィルム及び樹脂材料が供給される成形型が突出し位置に留まる時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明に係る技術11の樹脂成形品の製造方法は、搬送機構を用いて搬送対象物を成形型に搬送する搬送工程と、ベース部材を介して型締めされる型締め位置から型締め方向と交差するスライド方向に沿って前記成形型をスライドさせて、前記ベース部材よりも外側に位置する突出し位置に移動させる第1スライド工程と、前記突出し位置から前記スライド方向に沿って前記成形型をスライドさせて、前記型締め位置に移動させる第2スライド工程と、前記型締め位置にある前記成形型を型締めして樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含み、前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記突出し位置にある前記成形型に対して前記搬送対象物の搬送を行う搬送位置への前記搬送機構の移動動作を、前記成形型の前記型締め位置から前記突出し位置へのスライド動作よりも先に開始される、又は、前記移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作が行われることを特徴とする。
【0023】
この樹脂成形品の製造方法であれば、突出し位置にある成形型に対して搬送対象物の搬送を行う搬送位置への搬送機構の移動動作を、成形型スライド機構による突出し位置へのスライド動作よりも先に開始する、又は、移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように前記スライド動作を行わせるので、成形型が突出し位置に留まる時間を短くすることができる。その結果、突出し位置にある成形型の温度低下を防ぎ、成形型の温度維持をしやすくすることができる。また、成形型のコンタミネーションの低減することができ、又はタクトタイムを短縮することができる。
【0024】
本発明に係る技術12の樹脂成形品の製造方法は、上記の技術11の構成に加えて、前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記移動動作が完了した後に前記スライド動作が行われることが望ましい。
この構成であれば、成形型が突出し位置に留まる時間を短くすることができ、成形型の温度低下を防ぎ、また、成形型、樹脂成形品又は樹脂材料等のコンタミネーションを防止することができる。
【0025】
本発明に係る技術13の樹脂成形品の製造方法は、上記の技術11の構成に加えて、前記搬送工程及び前記第1スライド工程において、前記移動動作及び前記スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させることが望ましい。
この構成であれば、樹脂成形装置のタクトタイムを短縮することができ、樹脂成形装置の生産性を向上することができる。なお、この構成であっても、成形型が突出し位置に留まる時間を短くすることができ、成形型の温度低下を防ぎ、また、成形型、樹脂成形品又は樹脂材料等のコンタミネーションを防止することができる。
【0026】
本発明に係る技術14の樹脂成形品の製造方法は、上記の技術11乃至13の何れか1つの構成に加えて、前記成形型は、上型及び下型を有し、前記上型及び前記下型それぞれに対して前記搬送工程、前記第1スライド工程及び前記第2スライド工程が施され、前記樹脂成形工程において前記上型及び前記下型が型締めされることが望ましい。
この構成であれば、上型及び下型を互いに独立して突出し位置に移動させることができ、上型及び下型それぞれに対して搬送対象物を搬送することができる。
【0027】
本発明に係る技術15の樹脂成形品の製造方法は、上記の技術11乃至13の何れか1つの構成に加えて、前記成形型は、複数組の上型及び下型を有し、前記複数組の前記上型に対して前記搬送工程、前記第1スライド工程及び前記第2スライド工程が施され、前記複数組の前記下型に対して前記搬送工程、前記第1スライド工程及び前記第2スライド工程が施され、前記樹脂成形工程において前記複数組の前記上型及び前記下型が型締めされることが望ましい。
この構成であれば、成形型の数を増やすことができ、複数組の上型及び下型それぞれに対して一斉に搬送工程を行うことにより、樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
【0028】
<1.本発明の第1実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0029】
<1-1.樹脂成形装置の全体構成>
第1実施形態の樹脂成形装置100は、成形対象物である基板Wに固定された電子部品Wxを、樹脂材料Jを用いた樹脂成形により樹脂封止して樹脂成形品Pを製造するものである。
【0030】
ここで、基板Wとしては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、リードフレーム、シリコンウエハ、ガラスウエハ等を挙げることができる。その他、基板Wは、配線が施されていないキャリアであってもよい。また、樹脂材料Jは、例えば粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂を含む)、液状樹脂等を挙げることができる。また、電子部品Wxとしては、例えば半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子、又はこれら電子素子の少なくとも1つが樹脂封止された形態の電子部品を挙げることができる。
【0031】
この樹脂成形装置100は、図1に示すように、基板供給・収納モジュールAと、2つの樹脂成形モジュールBと、樹脂材料供給モジュールCとを、それぞれ構成要素として備える。各構成要素(各モジュールA~C)は、それぞれの構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0032】
基板供給・収納モジュールAは、外部から成形前基板Wを受け入れる基板受入部11と、成形済基板W(樹脂成形品P)を収納する基板収納部12と、成形前基板W及び樹脂成形品Pを搬送する基板搬送機構13と、基板搬送機構13に対して成形前基板W及び樹脂成形品Pの搬送すなわち受け渡しを行う例えば搬送ロボット等の受け渡し機構14とを有する。
【0033】
基板搬送機構13は、成形前基板Wを基板供給・収納モジュールAから樹脂成形モジュールBに搬送し、樹脂成形モジュールBにおいて成形前基板Wを成形型5a、5bに供給する。成形前基板Wの樹脂成形後に、基板搬送機構13は、樹脂成形モジュールBにおいて成形型5a、5bから樹脂成形後の成形済基板Wである樹脂成形品Pを受け取って、基板供給・収納モジュールAに搬送する。また、受け渡し機構14は、成形前基板Wを基板受入部11から基板搬送機構13に受け渡し、樹脂成形品Pを基板搬送機構13から基板収納部12に受け渡す。
【0034】
各樹脂成形モジュールBは、基板Wを保持する第1型である上型51と、キャビティ52Cが形成された第2型である下型52とを有し、それらを型締めすることにより基板Wに固定された電子部品Wxを、樹脂材料Jを用いた樹脂成形により樹脂封止する。なお、樹脂成形モジュールBの具体的構成は後述する。
【0035】
樹脂材料供給モジュールCは、移動テーブル15と、移動テーブル15上に載置される樹脂材料収容部16と、樹脂材料収容部16に樹脂材料Jを計量して投入する樹脂材料投入機構17と、樹脂材料収容部16を搬送して下型52のキャビティ52Cに樹脂材料Jを供給する樹脂材料搬送機構18とを有する。ここで、樹脂材料収容部16は、離型フィルムFを保持する保持枠を用いて構成されており、樹脂材料投入機構17により保持枠に保持された離型フィルムF上に樹脂材料Jが投入される。
【0036】
移動テーブル15は、樹脂材料供給モジュールC内において、樹脂材料投入機構17による樹脂投入位置と樹脂材料搬送機構18に樹脂材料収容部16を渡すための搬送位置との間で移動する。また、樹脂材料搬送機構18は、樹脂材料Jを収容した樹脂材料収容部16を樹脂材料供給モジュールCから樹脂成形モジュールBに搬送し、樹脂成形モジュールBにおいて離型フィルムF及び樹脂材料Jを成形型5a、5bに供給する。その後、樹脂材料搬送機構18は、樹脂材料Jを供給した後の樹脂材料収容部16を樹脂成形モジュールBから樹脂材料供給モジュールCに搬送する。
【0037】
<1-2.樹脂成形モジュールBの具体的構成>
樹脂成形モジュールBは、図2及び図3に示すように、固定プラテン2と、型締め機構10により昇降可能な可動プラテン3と、固定プラテン2及び可動プラテン3の間に配置される中間プレート4と、固定プラテン2及び中間プレート4の間、及び、中間プレート4及び可動プラテン3の間それぞれに設けられた上型51及び下型52を含む第1成形型5a及び第2成形型5bと、可動プラテン3及び中間プレート4の側方両側(ここでは左右両側)に配置された一対の側壁部材61、62と、中間プレート4を一対の側壁部材61、62に対して上下方向に沿ってスライドさせる昇降スライド機構7と、可動プラテン3の昇降に中間プレート4の昇降を連動させる昇降連動機構8とを備えている。
【0038】
固定プラテン2の下面には、第1成形型5aの上型51が直接又は別の部材を介して設けられる。また、固定プラテン2の左右両側には、一対の側壁部材61、62が接続されている。なお、一対の側壁部材61、62を固定プラテン2と一体形成しても良い。本実施形態の固定プラテン2は、平面視において概略矩形状の平板形状をなすものである。
【0039】
可動プラテン3の上面には、第2成形型5bの下型52が直接又は別の部材を介して設けられる。また、可動プラテン3は、可動プラテン3の下方に設けられた型締め機構10により昇降移動するものである。なお、本実施形態の可動プラテン3は、平面視において概略矩形状の平板形状をなすものである。また、可動プラテン3には固定用部材31が接続されており、固定用部材31には後述するパンタグラフ機構81の下端部(下端リンク部813)が固定されている。
【0040】
本実施形態の型締め機構10は、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構を用いて可動プラテンを昇降させる直動方式のものであるが、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動プラテンに伝達するリンク方式のものであっても良い。
【0041】
中間プレート4の上面には、第1成形型5aの下型52が直接又は別の部材を介して設けられる。また、中間プレート4の下面には、第2成形型5bの上型51が直接又は別の部材を介して設けられる。なお、本実施形態の中間プレート4は、平面視において概略矩形状の平板形状をなすものである。
【0042】
ここで、第1成形型5a、第2成形型5bについて、図4を参照して説明する。
各成形型5a、5bの上型51は、基板Wの裏面を吸着して保持するものである。上型51の下面には吸引口(不図示)が形成されており、上型51の内部には吸引口に繋がる吸引流路(不図示)が形成されている。この吸引流路は外部の吸引装置(不図示)に接続されている。
【0043】
また、各成形型5a、5bの下型52は、基板Wに固定された電子部品Wx及び樹脂材料Jを収容するキャビティ52Cを有している。具体的に下型52は、キャビティ52Cの底面を形成する底面部材521と、当該底面部材521を取り囲む側面部材522とを有している。この底面部材521の上面と側面部材522の内周面によってキャビティ52Cが形成される。また、側面部材522は、底面部材521に対して相対的に上下移動可能に設けられている。具体的に側面部材522は、下型52のベースプレート523に対してコイルばね等の複数の弾性部材524によって支持されている。さらに、本実施形態の下型52は、樹脂成形品Pの離型性を向上させるために離型フィルムFで覆われる。また、側面部材522の上面(側面部材522と基板Wとの当接面)に、空気やガスを排出するためエアベント(不図示)を設けても良い。その他、上型51及び下型52の周囲には、樹脂成形時に成形型5a、5bの周囲を真空引きするための側壁部及びOリング等のシール部材等からなる密閉構造50(図2及び図5には不図示)が設けられている。
【0044】
一対の側壁部材61、62は、図2及び図3に示すように、固定プラテン2を基盤101に対して所定の高さに固定するとともに、中間プレート4をスライド可能に支持するものである。ここで、各側壁部材61、62の上端部は、固定プラテン2に接続されており、側壁部材61、62の下端部は、基盤101に接続されている。なお、本実施形態の各側壁部材61、62は、上下方向に延びる縦長の平板形状をなすものである。
【0045】
昇降スライド機構7は、一対の側壁部材61、62に対して中間プレート4を上下方向に沿って直線移動させるものである。具体的に昇降スライド機構7は、一直線状に延びる直動レール71と、当該直動レール71をスライドする直動ブロック72とを有している。
【0046】
本実施形態では、中間プレート4の左右両側に平板状の側面プレート41が接続されており、当該側面プレート41に直動ブロック72が設けられ、側壁部材61、62の内面に上下方向(鉛直方向)に沿って直動レール71が設けられている。
【0047】
詳細には、図5に示すように、各側壁部材61、62の内面に2つの直動レール71が前後並列に設けられ、各側面プレート41に2つの直動レール71に対応して前後2列の直動ブロック72が設けられている。ここでは、各側面プレート41に設けられた直動ブロック72の列は2つの直動ブロック72により構成される(図2参照)。つまり、各側面プレート41には計4つの直動ブロック72が設けられることになる。
【0048】
詳細には、図2及び図5に示すように、2つの直動レール71が、各側壁部材61、62の内面に設けられている。ここで、2つの直動レール71は、上下方向(鉛直方向)に延びている。また、2つの直動レール71は、前後方向に並んで配置されている。一方、直動ブロック72が、各側面プレート41に設けられている。ここで、直動ブロック72は、2つの直動レール71に対応するように、各側面プレート41において、前後方向に並ぶ2列に配列されている。直動ブロック72は、各側面プレート41において、各列で上下方向(鉛直方向)に2つ配置されている。つまり、各側面プレート41には計4つの直動ブロック72が設けられることになる。なお、直動ブロック72は、例えば、図2において、後述する連結部材822により隠れている部分に、各側面プレート41に対して1つずつ追加して計6つを配置しても良い。
【0049】
昇降連動機構8は、図2図3図5図7に示すように、可動プラテン3の昇降に中間プレート4の昇降を連動させて第1成形型5a及び第2成形型5bの型締め及び型開きを同期させるものである。つまり、昇降連動機構8は、第1成形型5aの型締め速度と第2成形型5bの型締め速度を同じにしつつ、同時に型締めができるようにするものである。
【0050】
具体的に昇降連動機構8は、可動プラテン3の昇降により伸び縮みするパンタグラフ機構81と、パンタグラフ機構81の交差リンク部811及び中間プレート4を連結する連結機構82とを備えている。
【0051】
パンタグラフ機構81は、図2に示すように、一対の側壁部材61、62の左右外側に設けられている。つまり、可動プラテン3及び中間プレート4は、左右2つのパンタグラフ機構81によって昇降が連動することになる。なお、左右のパンタグラフ機構81は、互いに同一の構成である。
【0052】
具体的に各パンタグラフ機構81は、図3及び図6に示すように、1つの交差リンク部811と、上端リンク部812と、下端リンク部813とから構成されている。交差リンク部811は、第1リンク81a及び第2リンク81bをそれらの中央部において互いに交差させ、その交差部を回転軸81cにより回転可能に連結したものである。また、上端リンク部812は、第3リンク81d及び第4リンク81eそれぞれの下端部を回転軸81fにより第1リンク81a及び第2リンク81bそれぞれの上端部に回転可能に連結し、第3リンク81d及び第4リンク81eそれぞれの上端部を回転軸81gにより互いに回転可能に連結したものである。さらに、下端リンク部813は、第5リンク81h及び第6リンク81iそれぞれの上端部を回転軸81jにより第1リンク81a及び第2リンク81bそれぞれの下端部に回転可能に連結し、第5リンク81h及び第6リンク81iそれぞれの下端部を回転軸81kにより互いに回転可能に連結したものである。
【0053】
そして、パンタグラフ機構81の上端部(上端リンク部812)が側壁部材61、62の上端部に固定されており、パンタグラフ機構81の下端部(下端リンク部813)が可動プラテン3とともに移動する固定用部材31に固定されている。したがって、パンタグラフ機構81の下端部(下端リンク部813)が、固定用部材31を介して可動プラテン3に接続され、可動プラテン3の移動に伴って移動する。本実施形態では、図6に示すように、パンタグラフ機構81の交差リンク部811の回転軸81c、上端リンク部812の回転軸81g、および、下端リンク部813の回転軸81kが上下方向(鉛直方向)に配置されるとともに、側面視において側壁部材61、62の幅方向中央部に位置するように配置されている。
【0054】
連結機構82は、図2図3図5及び図7に示すように、パンタグラフ機構81の交差リンク部811及び中間プレート4を連結するものである。具体的に連結機構82は、交差リンク部811に接続された接続部材821と、接続部材821を中間プレート4に連結させる連結部材822と、接続部材821及び連結部材822の間に介在する弾性部材823a、823bとを有している。なお、左右の連結機構82は、互いに同一の構成である。
【0055】
接続部材821は、図3図5及び図6に示すように、パンタグラフ機構81の伸び縮みを阻害することなく交差リンク部811に接続されている。具体的に接続部材821は、矩形長尺状のものであり、その中央部が交差リンク部811の回転軸81cに接続されている。この接続部材821は、前後方向(水平方向)に延びて設けられている。
【0056】
連結部材822は、接続部材821を中間プレート4に連結させるものであり、本実施形態では、中間プレート4の側方両側(ここでは左右両側)に接続された側面プレート41それぞれに接続されている(図2参照)。この連結部材822は、側壁部材61、62の前後から外側に延びている(図5参照)。
【0057】
弾性部材823a、823bは、基板Wの厚み等のばらつきを吸収するためのものであり、連結部材822及び接続部材821の間に介在して設けられている。また、弾性部材823a、823bは、側壁部材61、62の外側に設けられている。
【0058】
具体的に弾性部材823a、823bは、図2図3図5及び図7に示すように、接続部材821に対する中間プレート4の上方への変位を吸収する上側弾性部材823aと、下方への変位を吸収する下側弾性部材823bとを有している。これら弾性部材823a、823bは、図7に示すように、連結部材822に設けられた変位吸収機構83a、83bを構成するものである。
【0059】
変位吸収機構83a、83bは、連結部材822において接続部材821の上側及び下側にそれぞれ設けられている。上側の変位吸収機構83aは、接続部材821の上面に接触する上側接触部831と、当該上側接触部831を接続部材821の上面に向けて力を与える(付勢する)上側弾性部材823aと、上側接触部831を上方に移動可能に支持する上側支持部832とを有している。また、下側の変位吸収機構83bは、接続部材821の下面に接触する下側接触部833と、当該下側接触部833を接続部材821の下面に向けて力を与える(付勢する)下側弾性部材823bと、下側接触部833を下方に移動可能に支持する下側支持部834とを有している。上側支持部832及び下側支持部834は、連結部材822に対して固定されている。
【0060】
ここで、上側接触部831には、上側支持部832の上面に接触可能なように周囲に突出して下方への移動を制限する上側ストッパ831aが形成されている。下側接触部833には、下側支持部834の下面に接触可能なように周囲に突出して上方への移動を制限する下側ストッパ833aが形成されている。
【0061】
また、連結部材822は、上側接触部831の上端面の上側で対向する対向面を形成するように突出する上側突出部822aと、下側接触部833の下端面の下側で対向する対向面を形成するように突出する下側突出部822bとを有する。なお、上側接触部831の上端面と連結部材822の上側突出部822aの下面(上側接触部831の上端面の対向面)との間には、後述する変位吸収機構83a、83bの動作により接触しない程度の間隔が設けられている。また、下側接触部833の下端面と連結部材822の下側突出部822bの上面(下側接触部833の下端面の対向面)との間にも、変位吸収機構83a、83bの動作により接触しない程度の間隔が設けられている。
【0062】
次に、変位吸収機構83a、83bの基本動作について説明する。
変位吸収機構83a、83bの初期状態(図7参照)において、弾性部材823aは、上端が連結部材822の上側突出部822aの下面(上側接触部831の上端面の対向面)に接触し、下端が上側接触部831の上側ストッパ831aの上面に接触し、伸縮していない状態となる。また、変位吸収機構83a、83bの初期状態において、弾性部材823bは、上端が下側接触部833の下側ストッパ833aの下面に接触し、下端が連結部材822の下側突出部822bの上面(下側接触部833の下端面の対向面)に接触し、伸縮していない状態となる。
【0063】
そして、中間プレート4が接続部材821に対して相対的に下方に変位すると、図8(a)に示すように、中間プレート4に接続された連結部材822が接続部材821に対して相対的に下方に変位する。そうすると、接続部材821及び上側接触部831が静止した状態で、上側支持部832及び連結部材822の上側突出部822aも相対的に下方に変位するので、上側弾性部材823aが収縮する。言い換えれば、接続部材821及び上側接触部831が連結部材822の上側突出部822aに対して相対的に上方に移動して、上側弾性部材823aが収縮する。これにより、接続部材821に対する中間プレート4の下方への相対的な変位が吸収される。
【0064】
一方、中間プレート4が接続部材821に対して相対的に上方に変位すると、図8(b)に示すように、中間プレート4に接続された連結部材822が接続部材821に対して相対的に上方に変位する。そうすると、接続部材821及び下側接触部833が静止した状態で、下側支持部834及び連結部材822の下側突出部822bも相対的に上方に変位するので、下側弾性部材823bが収縮する。言い換えれば、接続部材821及び下側接触部833が連結部材822の下側突出部822bに対して相対的に下方に移動して、下側弾性部材823bが収縮する。これにより、接続部材821に対する中間プレート4の上方への相対的な変位が吸収される。
【0065】
さらに、本実施形態の樹脂成形装置100では、図2図5及び図7に示すように、接続部材821と連結部材822との間に介在して設けられたガイド機構84を更に備えている。このガイド機構84は、接続部材821と連結部材822とが相対移動する際に、その移動をガイドするものである。
【0066】
このガイド機構84は、接続部材821の上下方向の移動をガイドするものであり、接続部材821と連結部材822との対向面の間に設けられている。具体的にガイド機構84は、接続部材821又は連結部材822の一方に設けられた直動レール841と、接続部材821又は連結部材822の他方に設けられた直動ブロック842とを有している。本実施形態では、連結部材822に直動レール841が設けられており、接続部材821に直動ブロック842が設けられている。
【0067】
<1-3.樹脂成形装置100の具体的構成>
そして、本実施形態の樹脂成形装置100は、図9図13に示すように、型開きされた成形型5a、5bを型締め方向に交差するスライド方向にスライドさせる成形型スライド機構20と、成形型スライド機構20による成形型5a、5bのスライド時にベース部材及び成形型5a、5bの互いの対向面(型締め方向において対向する面)の間隔を変更する間隔変更機構30とをさらに備えている。なお、図1図4図6では、成形型スライド機構20及び間隔変更機構30の図示を省略している。
【0068】
ここで、型締め方向は、上下方向(鉛直方向)であり、スライド方向は、前後方向(上下方向及び左右方向に直交する方向)である。また、本実施形態のベース部材は、固定プラテン2、可動プラテン3、及び中間プレート4である。
【0069】
成形型スライド機構20は、図9図12に示すように、成形型5a、5bにおいて上型51及び下型52それぞれに対応して設けられている。そして、成形型スライド機構20は、型締めされる型締め位置Qと、スライド方向においてベース部材2~4よりも外側に位置する突出し位置Rとの間で、上型51及び下型52をスライドさせるものである。
【0070】
具体的に成形型スライド機構20は、上型51又は下型52を支持する支持フレーム201と、ベース部材2~4に対してスライド方向に沿った支持フレーム201の移動をガイドするガイド部202と、支持フレーム201をスライド方向に沿って移動させる駆動アクチュエータ203とを備えている。
【0071】
支持フレーム201は、図9図12に示すように、上型51を支持する上型支持フレーム201aと、下型52を支持する下型支持フレーム201bとを有している。各支持フレーム201a、201bは、図10に示すように、平面視において矩形枠形状をなすものであり、その開口部において上型51又は下型52を支持する構成である。
【0072】
そして、上型支持フレーム201aは、上型51を型締め方向に移動可能に支持するものであり、上型51の縁部が載置されるストッパ部204を有している。このストッパ部204は、上型51の4隅に対応して設けられている(図10参照)。また、下型支持フレーム201bは、下型52を型締め方向に移動可能に支持するものであり、下型52の縁部を支持する弾性体205を有している。この弾性体205は、下型52の4隅に対応して設けられており(図10参照)、下型52に接触する接触部206を介して下型52を支持する。なお、接触部206は下型支持フレーム201bに上下移動可能に設けられている。
【0073】
ガイド部202は、図9図12に示すように、ベース部材2~4に対して固定された固定部材40と支持フレーム201との間に介在して設けられている。具体的にガイド部202は、直動ガイドを用いて構成されており、固定部材40又は支持フレーム201の一方に設けられ、スライド方向に沿って一直線状に延びる直動レール202aと、固定部材40又は支持フレーム201の他方に設けられ、直動レール202aをスライドする移動する直動ブロック202bとを有している。
【0074】
駆動アクチュエータ203は、図9図12に示すように、各支持フレーム201に対応して設けられており、支持フレーム201をガイド部202に沿って移動させるものである。この駆動アクチュエータ203により、上型51及び下型52は、型締め位置Qと突出し位置Rとの間を移動する。本実施形態の駆動アクチュエータ203は、支持フレーム201に設けられたラックギア203aと、当該ラックギア203aに噛み合わされたピニオンギア203bと、当該ピニオンギア203bを回転させる例えばサーボモータ等のモータ203cとを有している。なお、駆動アクチュエータ203は、上記のラックアンドピニオンを用いた構成に限られず、ボールねじ機構を用いたものやエアシリンダを用いたもの等であっても良い。
【0075】
本実施形態では、固定プラテン2の下面に設けられる第1成形型5aの上型51は、固定プラテン2に対して固定された固定部材40を介して上型支持フレーム201aによりスライドする構成である。中間プレート4の上面に設けられる第1成形型5aの下型52は、当該中間プレート4に対して固定された固定部材40を介して下型支持フレーム201bによりスライドする構成である。また、中間プレート4の下面に設けられる第2成形型5bの上型51は、当該中間プレート4に対して固定された固定部材40を介して上型支持フレーム201aによりスライドする構成である。つまり、第1成形型5aの下型52の下型支持フレーム201bと第2成形型5bの上型51の上型支持フレーム201aとは共通の固定部材40を介してスライドする構成とされている。さらに、可動プラテン3の上面に設けられる第2成形型5bの下型52は、可動プラテン3に対して固定される固定部材40を介して下型支持フレーム201bによりスライドする構成である。
【0076】
また、成形型スライド機構20は、図9図11図13に示すように、型締め位置Qに移動する上型51及び下型52の側面に接触して、上型51及び下型52を型締め位置Qに位置決めする位置決め部207を有している。この位置決め部207は、ベース部材2~4に対して上型51及び下型52を水平方向(前後方向及び左右方向)において位置決めするものである。
【0077】
なお、成形型スライド機構20は、上記の位置決め部207を有することなく、また、上記の位置決め部207に加えて、駆動アクチュエータ203による位置制御によって、上型51及び下型52を型締め位置Qに位置決めする構成としても良い。
【0078】
間隔変更機構30は、図9図13に示すように、成形型スライド機構20と同様に、成形型5a、5bにおいて上型51及び下型52それぞれに対応して設けられている。そして、間隔変更機構30は、成形型スライド機構20により上型51及び下型52を型締め位置Qと突出し位置Rとの間でスライドさせる際に、ベース部材2~4と上型51及び下型52との互いの対向面の間隔を変更するものである。
【0079】
第1成形型5aの上型51に対応して設けられた間隔変更機構30は、固定プラテン2における上型51が装着される下面と、第1成形型5aの上型51における固定プラテン2に装着される上面との間隔を変更する。第1成形型5aの下型52に対応して設けられた間隔変更機構30は、中間プレート4における下型52が装着される上面と、第1成形型5aの下型52における中間プレート4に装着される下面との間隔を変更する。第2成形型5bの上型51に対応して設けられた間隔変更機構30は、中間プレート4における上型51が装着される下面と、第2成形型5bの上型51における中間プレート4に装着される上面との間隔を変更する。第2成形型5bの下型52に対応して設けられた間隔変更機構30は、可動プラテン3における下型52が装着される上面と、第2成形型5bの下型52における可動プラテン3に装着される下面との間隔を変更する。
【0080】
具体的に間隔変更機構30は、成形型スライド機構20の駆動アクチュエータ203を用いて構成されている。また、間隔変更機構30は、上型51及び下型52とベース部材2~4との間に介在して設けられたカム機構301を有している。そして、この間隔変更機構30では、駆動アクチュエータ203による支持フレーム201の移動に伴い、カム機構301が上型51及び下型52とベース部材2~4との互いの対向面の間隔を変更する。
【0081】
本実施形態のカム機構301は、上型51及び下型52に設けられた接触面を有する第1カム部302と、ベース部材2~4に対して固定され、第1カム部302の接触面に接触する第2カム部303とを備えている。ここで、接触面は、図9の「第1カム部の構成」に示すように、上型51及び下型52とベース部材2~4との互いの対向面の間隔を縮める又は拡げるための傾斜面302aと、縮まった間隔を維持する平坦面302bとを有している。また、第1カム部302は、上型51及び下型52の両側それぞれに2箇所設けられており、第2カム部303は、第1カム部302に対応してベース部材2~4の両側それぞれに2箇所設けられている。なお、第2カム部303は、ローラ部材、転動体(ベアリング)やブッシュ等により構成することができる。
【0082】
<1-3-1.上型51及びベース部材2、4の間隔変更のメカニズム>
具体的に上型支持フレーム201aに対応するカム機構301は、上型支持フレーム201aのストッパ部204に載置されている上型51をストッパ部204から持ち上げる構成であり、第1カム部302の傾斜面302aは、図9の「第1カム部の構成(a)」に示すように、下向き面であり、突出し位置Rから型締め位置Qに向かって上り勾配を有する面である。
【0083】
この構成により、上型51が突出し位置Rから型締め位置Qにスライドすると、図13(a)に示すように、第1カム部302の傾斜面302aが、対応する第2カム部303に接触して乗り上げて、上型51がストッパ部204から持ち上げられ、上型51の上面がベース部材2、4の下面に近づいて、それらの間隔が小さくなる。なお、型締め位置Qでは、第1カム部302の平坦面302bが第2カム部303に接触した状態である。
【0084】
一方で、上型51が型締め位置Qから突出し位置Rにスライドすると、上型51の第1カム部302が、対応する第2カム部303から離れて、上型51が自重により移動してストッパ部204に載置され、上型51の上面がベース部材2、4の下面から離れて、それらの間隔が大きくなる。
【0085】
<1-3-2.下型52及びベース部材3、4の間隔変更のメカニズム>
具体的に下型支持フレーム201bに対応するカム機構301は、下型支持フレーム201bの弾性体205及び接触部206に支持されている下型52を弾性体205(ベース部材2~4)側に押し込む構成であり、第1カム部302の傾斜面302aは、図9の「第1カム部の構成(b)」に示すように、上向き面であり、突出し位置Rから型締め位置Qに向かって下り勾配を有する面である。
【0086】
この構成により、下型52が突出し位置Rから型締め位置Qにスライドすると、図13(b)に示すように、下型52の第1カム部302の傾斜面302aが、対応する第2カム部303に接触して、下型52が弾性体205側に押し込まれて、下型52の下面がベース部材3、4の上面に近づいて、それらの間隔が小さくなる。なお、型締め位置Qでは、第1カム部302の平坦面302bが第2カム部303に接触した状態である。
【0087】
一方で、下型52が型締め位置Qから突出し位置Rにスライドすると、下型52の第1カム部302が、対応する第2カム部303から離れて、下型52が弾性体205から加わる力により上方に移動して、下型52の下面がベース部材3、4の上面から離れて、それらの間隔が大きくなる。
【0088】
ここで、間隔変更機構30のカム機構301は、型締め位置Qにおいて、上型51及び下型52とベース部材2~4との互いの対向面を接触させることなく、若干の隙間が空いた状態としている。そして、型締め機構10が成形型5a、5bを型締めすることによって、上型51及び下型52とベース部材2~4との互いの対向面が接触する。このとき、上型51及び下型52がベース部材2~4に密着することによって、上型51及び下型52に設けられた第1カム部302と第2カム部303とは離れることになり、型締めによりカム機構301が破損することは無い。なお、カム機構301は、型締め位置Qにおいて、上型51及び下型52とベース部材2~4との互いの対向面を接触させる構成としても良い。
【0089】
<1-4.搬送機構13、18の具体的構成>
次に、本実施形態の基板搬送機構13及び樹脂材料搬送機構18の具体的構成について説明する。
【0090】
基板搬送機構13は、突出し位置Rにある上型51に対して、搬送対象物である基板W及び樹脂成形品Pの搬送を行うものである。この基板搬送機構13は、図11に示すように、突出し位置Rにある上型51に対して基板W及び樹脂成形品Pの搬送を行う搬送位置X1に移動する。ここで、搬送位置X1とは、基板搬送機構13が突出し位置Rにある上型51の下方に位置し、基板W及び樹脂成形品Pの搬送すなわち受け渡しを行うための位置である。なお、基板搬送機構13により上型51に対して基板W及び樹脂成形品Pの搬送を行う際には、下型52は型締め位置Qにあり、上型51に対する基板W及び樹脂成形品Pの搬送を邪魔しないようにしている。また、基板搬送機構13は、搬送位置X1と退避位置(不図示)との間で左右方向に移動するように構成されている。ここで、搬送位置X1は、突出し位置Rにある成形型である上型51と基板搬送機構13との間で、搬送対象物である基板Wを受け渡す受け渡し位置と表現することもできる。
【0091】
具体的に基板搬送機構13は、図1に示すように、突出し位置Rにある上型51に基板Wを供給する基板供給部131と、突出し位置Rにある上型51から樹脂成形品Pを受け取る基板受取部132とを有している。この基板供給部131と基板受取部132とは、各上型51に対応して設けられており、それらは左右方向に横並びに設けられている。
【0092】
そして、基板搬送機構13は、搬送位置X1において左右に移動して、基板受取部132の受取動作及び基板供給部131の供給動作を連続して行う。基板受取部132の受取動作を行う場合、基板受取部132が突出し位置Rにある上型51の下方に位置し、基板供給部131の供給動作を行う場合、基板供給部131が突出し位置Rにある上型51の下方に位置する。
【0093】
樹脂材料搬送機構18は、突出し位置Rにある下型52に対して、搬送対象物である樹脂材料J及び離型フィルムFの搬送を行うものである。この樹脂材料搬送機構18は、図12に示すように、突出し位置Rにある下型52に対して樹脂材料J及び離型フィルムFの搬送を行う搬送位置X2に移動する。ここで、搬送位置X2とは、樹脂材料搬送機構18が突出し位置Rにある下型52の上方に位置し、樹脂材料J及び離型フィルムFの搬送すなわち受け渡しを行うための位置である。なお、樹脂材料搬送機構18により下型52に樹脂材料J及び離型フィルムFの搬送を行う際には、上型51は型締め位置Qにあり、下型52に対する樹脂材料J及び離型フィルムFの搬送を邪魔しないようにしている。また、樹脂材料搬送機構18は、搬送位置X2と退避位置(不図示)との間で左右方向に移動するように構成されている。ここで、搬送位置X2は、突出し位置Rにある成形型である下型52と樹脂材料搬送機構18との間で、搬送対象物である樹脂材料Jを受け渡す受け渡し位置と表現することもできる。
【0094】
具体的に樹脂材料搬送機構18は、図1に示すように、突出し位置Rにある下型52に樹脂材料J及び使用前の離型フィルムFを供給する樹脂材料供給部181と、突出し位置Rにある下型52から使用済みの離型フィルムFを回収するフィルム回収部182とを有している。この樹脂材料供給部181とフィルム回収部182とは、各下型52に対応して設けられており、それらは左右方向に横並びに設けられている。
【0095】
そして、樹脂材料搬送機構18は、搬送位置X2において左右に移動して、フィルム回収部182の回収動作及び樹脂材料供給部181の供給動作を連続して行う。フィルム回収部182の回収動作を行う場合、フィルム回収部182が突出し位置Rにある下型52の上方に位置し、樹脂材料供給部181の供給動作を行う場合、樹脂材料供給部181が突出し位置Rにある下型52の上方に位置する。
【0096】
<1-5.樹脂成形装置100の動作の一例>
次に、樹脂成形装置100の動作の一例を図1図2図4及び図8を参照して説明する。以下に示す動作は、例えば基板供給・収納モジュールAに設けられた制御部COMが樹脂成形装置100の各部を制御することにより行われる。なお、制御部COMは、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換器等を有する専用又は汎用のコンピュータである。
【0097】
<1-5-1.全体動作>
まず、昇降連動機構8により各成形型5a、5bを型開きした状態(図2参照)で、図1に示す基板供給・収納モジュールAにより各成形型5a、5bの上型51に基板Wを搬送して保持させる。また、樹脂材料供給モジュールCにより各成形型5a、5bの下型52のキャビティ52C内に離型フィルムF及び樹脂材料Jを収容する。このようにして、成形対象物である基板Wと離型フィルムF及び樹脂材料Jとが、各成形型5a、5bに供給された状態となる。
【0098】
次に、型締め機構10により可動プラテン3を上昇させる。この可動プラテン3の上昇に伴いパンタグラフ機構81が縮み、パンタグラフ機構81の交差リンク部811の回転軸81cに接続された中間プレート4が上昇する。ここで、可動プラテン3の上昇に伴い、図5に示す密閉構造50により成形型5a、5bの周囲が密閉されて、図示しない真空ポンプにより成形型5a、5bの周囲が真空引きされる。
【0099】
そして、各成形型5a、5bの下型52の上面(具体的には、側面部材522の上面、又は、離型フィルムFがある場合には離型フィルムF)が上型51に吸着保持された基板Wに接触する。このとき、第1成形型5a及び第2成形型5bにおける下型52が上型51に接触するタイミングが異なる場合には、下型52の弾性部材524よりも先に、上側弾性部材823a又は下側弾性部材823bが変形する。つまり、上側弾性部材823a及び下側弾性部材823bのばね定数は、下型52の弾性部材524のばね定数よりも小さい。
【0100】
例えば、中間プレート4上の下型52(第1成形型5aの下型52)が、可動プラテン3上の下型52(第2成形型5bの下型52)よりも先に、対応する上型51に吸着保持された基板Wに接触すると、中間プレート4が接続部材821に対して下方に変位するとともに、上側弾性部材823aが収縮する(図8(a)参照)。
【0101】
一方、可動プラテン3上の下型52(第2成形型5bの下型52)が、中間プレート4上の下型52(第1成形型5aの下型52)よりも先に、対応する上型51に吸着保持された基板Wに接触すると、中間プレート4が接続部材821に対して上方に変位するとともに、下側弾性部材823bが収縮する(図7(b)参照)。
【0102】
これらにより、第1成形型5a及び第2成形型5bにおける下型52が上型51に接触するタイミングの違いを解消しつつ、型締め動作が行われる。また、上側弾性部材823a及び下側弾性部材823bが吸収するのは、基板Wの厚みのばらつきだけでなく、キャビティ52Cに収容される樹脂材料Jの量のばらつき、基板Wに固定されている電子部品Wxの体積のばらつき等を挙げることができる。
【0103】
その後、型締め機構10が可動プラテン3をさらに上昇させることで、第1成形型5a及び第2成形型5bの型締めが完了し、この状態を所定時間(例えば樹脂材料Jの硬化時間)維持することによって樹脂成形が完了する。このようにして、昇降連動機構8を用いて各成形型5a、5bを型締めし、樹脂成形を行う。その後、型締め機構10が可動プラテン3を下降させると、各成形型5a、5bが型開きされる。そして、基板供給・収納モジュールAにより樹脂成形品Pが基板収納部12に収納される(図1参照)。このようにして、昇降連動機構8を用いて各成形型5a、5bを型開きし、樹脂成形された成形対象物である基板W(樹脂成形品P)を、各成形型5a、5bから取り出し、基板収納部12に収納して、樹脂成形品Pを製造する。
【0104】
<1-5-2.樹脂成形工程前(後)の搬送工程の詳細>
次に、樹脂成形工程前(後)の搬送工程の詳細について、図11図14等を参照して説明する。
【0105】
(樹脂成形品受取ステップ:S1(図14参照))
各成形型5a、5bが型開きした状態(図2参照)で、図11に示すように、成形型スライド機構20により、各成形型5a、5bの上型51を一斉に型締め位置Qから突出し位置Rに移動させる(第1上型スライド工程)。また、基板搬送機構13が搬送位置X1に移動する。なお、第1上型スライド工程では、図13(a)に示すように、間隔変更機構30によりベース部材2、4と上型51との互いの対向面の間隔が大きくなる。そして、基板搬送機構13の基板受取部132が、突出し位置Rにある上型51から一斉に樹脂成形品Pを受け取る。
【0106】
(成形前基板供給ステップ:S2(図14参照))
次に、基板搬送機構13の基板供給部131が、突出し位置Rにある上型51に成形前基板Wを一斉に供給して保持させる(基板搬送工程)。その後、成形型スライド機構20により、成形前基板Wを保持した上型51を一斉に突出し位置Rから型締め位置Qに移動させる(第2上型スライド工程)。また、基板搬送機構13が退避位置に移動する。なお、第2上型スライド工程では、図13(a)に示すように、間隔変更機構30によりベース部材2、4と上型51との互いの対向面の間隔が小さくなる。
【0107】
(使用済フィルム回収ステップ:S3(図14参照))
図12に示すように、成形型スライド機構20により、各成形型5a、5bの下型52を一斉に型締め位置Qから突出し位置Rに移動させる(第1下型スライド工程)。また、樹脂材料搬送機構18を搬送位置X2に移動させる。なお、第1下型スライド工程では、図13(b)に示すように、間隔変更機構30によりベース部材3、4と下型52との互いの対向面の間隔が大きくなる。そして、樹脂材料搬送機構18のフィルム回収部182が、突出し位置Rにある下型52から一斉に使用済みの離型フィルムFを回収する。
【0108】
(樹脂材料供給ステップ:S4(図14参照))
次に、樹脂材料搬送機構18の樹脂材料供給部181が、下型52に使用前の離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する(樹脂材料搬送工程)。その後、成形型スライド機構20により、離型フィルムF及び樹脂材料Jが供給された下型52を一斉に突出し位置Rから型締め位置Qに移動させる(第2下型スライド工程)。また、樹脂材料搬送機構18が退避位置に移動する。なお、第2下型スライド工程では、図13(b)に示すように、間隔変更機構30によりベース部材3、4と下型52との互いの対向面の間隔が小さくなる。
【0109】
その後、次の樹脂成形工程が行われる。また、基板搬送機構13により受け取られた樹脂成形品Pは、基板収納部12に収納される(図1参照)。さらに、樹脂材料搬送機構18により回収された使用済みの離型フィルムFは、図示しない廃棄ボックスに廃棄される。
【0110】
<1-5-3.上型51のスライド動作及び基板搬送機構13の移動動作>
本実施形態では、突出し位置Rにある上型51に対して基板Wの受け渡しすなわち搬送を行う搬送位置X1への基板搬送機構13の第1移動動作を、成形型スライド機構20による上型51の突出し位置Rへの第1スライド動作よりも先に開始する、又は、第1移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第1スライド動作を行わせる。
【0111】
第1移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第1スライド動作を行わせるとは、第1移動動作と第1スライド動作とが少なくとも一部の期間で同時に実行されることや、第1移動動作と第1スライド動作とで同時に実行される期間が存在することを意味する。
【0112】
具体的には、図15の(a)第1動作パターン及び図16に示すように、第1移動動作が完了した後に第1スライド動作を行わせることが考えられる。つまり、基板搬送機構13が搬送位置X1に移動した後に(図16(a)参照)、成形型スライド機構20が上型51のスライドを開始して突出し位置Rに移動させる(図16(b)参照)。そして、基板搬送機構13の基板受取部132により突出し位置Rにある上型51から樹脂成形品Pを受け取る(図16(c)参照)。また、基板搬送機構13の基板供給部131により突出し位置Rにある上型51に成形前基板Wを供給する(図16(d)参照)。基板搬送機構13から上型51に成形前基板Wが供給された後は、成形型スライド機構20が上型51のスライドを開始して型締め位置Qに移動させる(図16(e)参照)。上型51が型締め位置Qに移動した後に、基板搬送機構13が搬送位置X1から退避位置に退避する。このように予め基板搬送機構13を搬送位置X1に移動させておくことで、上型51が突出し位置Rに留まる時間を短くすることができ、上型51の温度低下を防ぎ、また、上型51又は樹脂成形品Pのコンタミネーション(例えば異物の付着や混入など)を防止することができる。
【0113】
また、第1移動動作及び第1スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させることも考えられる。この場合、図15の(b)第2動作パターンに示すように、基板搬送機構13が退避位置から搬送位置X1に移動する時間を計算する。この移動時間は予め計算しておき、メモリに記憶させておいても良い。なお、上型51が型締め位置Qから突出し位置Rに移動する移動時間は予め計算されている。そして、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達する時間に合わせて、上型51のスライド動作を行う。これにより、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達するのと同時に上型51が突出し位置Rに到達する。また、基板搬送機構13から基板Wが供給された後は、上型51の突出し位置Rから型締め位置Qへのスライド動作と、基板搬送機構13の搬送位置X1から退避位置への動作を同時又は所定のタイミングで開始する。このように基板搬送機構13の第1移動動作及び上型51の第1スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させることで、樹脂成形装置100のタクトタイムを短縮することができ、樹脂成形装置100の生産性を向上することができる。
【0114】
その他、第1移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第1スライド動作を行わせる態様としては、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達する前に上型51のスライド移動を開始し、上型51が突出し位置Rに到達する前に、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達するものであってもよい。つまり、上型51が型締め位置Qから突出し位置Rに移動する間に、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達するものであってもよい。この構成であっても、上型51が突出し位置Rに留まる時間を短くすることができ、上型51の温度低下を防ぎ、また、上型51又は樹脂成形品Pのコンタミネーション(例えば異物の付着や混入など)を防止することができる。
【0115】
また、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達する前に上型51のスライド移動を開始し、上型51が突出し位置Rに到達した後に、基板搬送機構13が搬送位置X1に到達するものであってもよい。
【0116】
<1-5-4.下型52のスライド動作及び樹脂材料搬送機構18の移動動作>
突出し位置Rにある下型52に対して離型フィルムF及び樹脂材料Jの受け渡しすなわち搬送を行う搬送位置X2への樹脂材料搬送機構18の第2移動動作を、成形型スライド機構20による下型52の突出し位置Rへの第2スライド動作よりも先に開始する、又は、第2移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第2スライド動作を行わせる。
【0117】
第2移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第2スライド動作を行わせるとは、第2移動動作と第2スライド動作とが少なくとも一部の期間で同時に実行されることや、第2移動動作と第2スライド動作とで同時に実行される期間が存在することを意味する。
【0118】
具体的には、図17の(a)第1動作パターン及び図18に示すように、第2移動動作が完了した後に第2スライド動作を行わせることが考えられる。つまり、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に移動した後に(図18(a)参照)、成形型スライド機構20が下型52のスライドを開始して突出し位置Rに移動させる(図18(b)参照)。また、樹脂材料搬送機構18のフィルム回収部182により突出し位置Rにある下型52から使用済みの離型フィルムFを回収する(図18(c)参照)。また、樹脂材料搬送機構18の樹脂材料供給部181により突出し位置Rにある下型52に使用前の離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する(図18(d)参照)。樹脂材料搬送機構18から下型52に使用前の離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給された後は、成形型スライド機構20が下型52のスライドを開始して型締め位置Qに移動させる(図18(e)参照)。下型52が型締め位置Qに移動した後に、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2から退避位置に退避する。このように予め樹脂材料搬送機構18を搬送位置X2に移動させておくことで、下型52が突出し位置Rに留まる時間を短くすることができ、下型52の温度低下を防ぎ、また、下型52のコンタミネーション(例えば異物の付着や混入など)を防止することができる。
【0119】
また、第2移動動作及び第2スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させることも考えられる。この場合、図17の(b)第2動作パターンに示すように、樹脂材料搬送機構18が退避位置から搬送位置X2に移動する時間を計算する。この移動時間は予め計算しておき、メモリに記憶させておいても良い。なお、下型52が型締め位置Qから突出し位置Rに移動する移動時間は予め計算されている。そして、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達する時間に合わせて、下型52のスライド動作を行う。これにより、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達するのと同時に下型52が突出し位置Rに到達する。また、樹脂材料搬送機構18から離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給された後は、下型52の突出し位置Rから型締め位置Qへのスライド動作と、樹脂材料搬送機構18の搬送位置X2から退避位置への動作を又は所定のタイミングで開始する。このように樹脂材料搬送機構18の第2移動動作及び下型52の第2スライド動作を同時又は所定の時間内に完了させることで、樹脂成形装置100のタクトタイムを短縮することができ、樹脂成形装置100の生産性を向上することができる。
【0120】
その他、第2移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第2スライド動作を行わせる態様としては、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達する前に下型52のスライド移動を開始し、下型52が突出し位置Rに到達する前に、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達するものであってもよい。つまり、下型52が型締め位置Qから突出し位置Rに移動する間に、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達するものであってもよい。この構成であっても、下型52が突出し位置Rに留まる時間を短くすることができ、下型52の温度低下を防ぎ、また、下型52のコンタミネーション(例えば異物の付着や混入など)を防止することができる。
【0121】
また、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達する前に下型52のスライド移動を開始し、下型52が突出し位置Rに到達した後に、樹脂材料搬送機構18が搬送位置X2に到達するものであってもよい。
【0122】
<1-6.第1実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、突出し位置Rにある上型51に対して成形前基板W及び樹脂成形品Pの搬送を行う搬送位置X1への基板搬送機構13の第1移動動作を、成形型スライド機構20による突出し位置Rへの第1スライド動作よりも先に開始する、又は、第1移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第1スライド動作を行わせるので、上型51が突出し位置Rに留まる時間を短くすることができる。その結果、突出し位置Rにある上型51の温度低下を防ぎ、上型51の温度維持をしやすくすることができる。また、上型51のコンタミネーションの低減することができ、又はタクトタイムを短縮することができる。したがって、上型51の温度維持、上型51のコンタミネーションの低減又はタクトタイムの短縮等の条件を満たしつつ樹脂成形品Pを製造することができる。
【0123】
また、突出し位置Rにある下型52に対して離型フィルムF及び樹脂材料Jの搬送を行う搬送位置X2への樹脂材料搬送機構18の第2移動動作を、成形型スライド機構20による突出し位置Rへの第2スライド動作よりも先に開始する、又は、第2移動動作の少なくとも一部の期間に重なるように第2スライド動作を行わせるので、下型52が突出し位置Rに留まる時間を短くすることができる。その結果、突出し位置Rにある下型52の温度低下を防ぎ、下型52の温度維持をしやすくすることができる。また、下型52のコンタミネーションの低減することができ、又はタクトタイムを短縮することができる。したがって、下型52の温度維持、下型52のコンタミネーションの低減又はタクトタイムの短縮等の条件を満たしつつ樹脂成形品Pを製造することができる。
【0124】
さらに、成形型スライド機構20により成形型5a、5bを型締め位置Qと突出し位置Rとの間でスライドさせる際に、ベース部材2~4及び成形型5a、5bの互いの対向面の間隔を変更しているので、ベース部材2~4及び成形型5a、5bの互いの対向面をスライド時に離すことができる。その結果、成形型5a、5bのスライドにより生じる摩耗を低減することができる。また、成形型5a、5bを突出し位置Rに移動させることにより、当該突出し位置Rにおいて成形型5a、5bに対して搬送対象物(成形前基板W、樹脂成形品P、離型フィルムF及び樹脂材料J)を搬送することができる。その結果、型開き時の成形型5a、5b同士の間隔を大きくする必要がなく、樹脂成形装置100を低背化することができる。
【0125】
パンタグラフ機構81の交差リンク部811及び中間プレート4を連結する連結機構82が、交差リンク部811に接続された接続部材821と、接続部材821を中間プレート4に連結させる連結部材822と、接続部材821及び連結部材822の間に介在する弾性部材823a、823bとを有するので、各成形型5a、5bにおける基板Wの厚み等のばらつきを吸収することができる。
【0126】
例えば、第1成形型5aの上型51に保持された成形前基板Wの厚みと、第2成形型5bの上型51に保持された成形前基板Wの厚みとがばらついていても、弾性部材823a、823bが弾性変形することにより、それら成形前基板Wの厚み等のばらつきを吸収しつつ、型締めすることができる。その結果、複数の成形型5a、5bを型締めする樹脂成形装置100において、複数の成形型5a、5bの型締めを同期させつつ、各成形型5a、5bにおける成形前基板Wの厚み等のばらつきを吸収して樹脂成形することができる。
【0127】
また、パンタグラフ機構81を用いて可動プラテン3の昇降と中間プレート4の昇降とを連動させているので、各部材の大型化を防ぐとともに装置全体の大型化も抑えることができ、高剛性の部材を不要にすることもできる。
【0128】
<2.本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下では、第1実施形態とは異なる部分について説明し、同一部材については同一符号を付して説明する。
【0129】
第2実施形態の樹脂成形装置100は、前記第1実施形態(1つの中間プレート4を用いて2組の成形型を有する構成)とは異なり、複数の中間プレート4を用いて複数組の成形型を有する構成である。例えば、2つの中間プレート4を用いて3組の成形型を有する構成、3つの中間プレート4を用いて4組の成形型を有する構成、4つの中間プレート4を用いて5組の成形型を有する構成、また、5つ以上の中間プレート4を用いて6組以上の成形型を有する構成としても良い。
【0130】
具体的に樹脂成形装置100は、図19に示すように、固定プラテン2及び可動プラテン3の間に上下方向に沿って複数の中間プレート4が配置されている。また、複数の中間プレート4の間それぞれに上型51及び下型52を含む成形型5b、5cが設けられている。なお、図19では、固定プラテン2から3つの中間プレート4までの構成を図示しており、それよりも下部分は省略している。
【0131】
複数の中間プレート4それぞれは、前記第1実施形態と同様に、パンタグラフ機構81の複数の交差リンク部811それぞれに連結機構82を介して連結されている。これにより、複数の中間プレート4は、可動プラテン3の昇降に連動して昇降する。
【0132】
ここで、パンタグラフ機構81は、図20に示すように、複数の中間プレート4に対応した数の複数の交差リンク部811と、上端リンク部812と、下端リンク部813とから構成されている。そして、複数の交差リンク部811は、直列的に接続されている。具体的には、隣り合う交差リンク部811において、一方の交差リンク部811の第1リンク81aの上端部が、他方の交差リンク部811の第2リンク81bの上端部と回転軸81lにより回転可能に連結され、一方の交差リンク部811の第2リンク81bの上端部が、他方の交差リンク部811の第1リンク81aの上端部と回転軸81mにより回転可能に連結される。なお、上端リンク部812及び下端リンク部813の構成は、第1実施形態と同様である。
【0133】
また、複数の中間プレート4それぞれに接続された側面プレート41は、互いに干渉しないように水平方向にずれて配置されている。具体的には、図19に示すように、上下方向において互いに隣り合う中間プレート4の側面プレート41が左右(水平方向)にずれて互い違いとなるように配置されている。
【0134】
例えば、上から1番目の中間プレート4の側面プレート41aが内側に位置し、上から2番目の中間プレート4の側面プレート41bが外側に位置するように配置されている。また、上から2番目の中間プレート4の側面プレート41bが外側に位置し、上から3番目の中間プレート4の側面プレート41cが内側に位置するように配置されている。ここで、上から2番目の中間プレート4の側面プレート41bには、内側に位置する側面プレート41a、41c(上から1番目、上から3番目)に配置される直動ブロック842の移動を阻害しないように、直動ブロック842の移動範囲に亘って図示しない貫通孔又は切り欠き部等が形成されている。
【0135】
<2-1.第2実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、3つ以上の成形型5a~5cを用いて樹脂成形することができ、樹脂成形品Pの生産性を向上させることができる。また、複数の中間プレート4の側面プレート41が互いに干渉しないように水平方向にずれて配置されているので、樹脂成形装置100の高さ寸法を抑えることができる。
【0136】
<3.その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0137】
例えば、図2及び図3の構成において、固定プラテン2と成形型5aの上型51との間、中間プレート4と成形型5aの下型52との間、中間プレート4と成形型5bの上型51との間、又は可動プラテン3と成形型5bの下型52との間に、別途ベース部材を設けても良い。
【0138】
また、前記実施形態では、連結部材822が側壁部材61、62の前後から外側に延びる構成であったが、図21に示すように、側壁部材61、62に形成した貫通部6Hを通じて連結部材822と接続部材821とを連結する構成としても良い。
【0139】
具体的には、側壁部材61、62において交差リンク部811に対応する部分に貫通部6Hを形成する。ここで、貫通部6Hは、中間プレート4の移動量を考慮して、連結部材822の移動を干渉しないように形成されている。また、連結部材822は、中間プレート4の側面プレート41に接続されるとともに、側壁部材61、62の貫通部6Hを通じて側壁部材61、62の外側に延びており、側壁部材61、62の外側に弾性部材823a、823b(変位吸収機構83a、83b)を支持する。この弾性部材823a、823b(変位吸収機構83a、83b)により、連結部材822は接続部材821に連結される。
【0140】
また、接続部材821と連結部材822との間にはガイド機構84が設けられている。具体的にガイド機構84は、接続部材821又は連結部材822の一方に設けられた直動レール841と、接続部材821又は連結部材822の他方に設けられた直動ブロック842とを有している。
【0141】
前記第1、第2実施形態で用いられる複数の成形型は、互いに同一の成形型であっても良いし、互いに異なる成形型であっても良い。ここで、複数の成形型が互いに異なるとは、上型が互いに異なるものであっても良いし、下型が互いに異なるものであっても良い。
【0142】
前記実施形態では、昇降スライド機構7の直動レール71を側壁部材61、62に、直動ブロック72を側面プレート41に設けているが、昇降スライド機構7の直動レール71を側面プレート41に、直動ブロック72を側壁部材61、62に設けても良い。
【0143】
前記実施形態では、パンタグラフ機構81を用いて複数の成形型5a、5bを連動させる構成であったが、レバー機構(特開2019-77144号)、ラックアンドピニオン機構(特開2010-094931号)等を用いた他の方式の昇降連動機構8を用いても良い。
【0144】
例えば、レバー機構を用いた昇降連動機構8は、図22(a)に示すように、一端部を支点60aとして回転するアーム60を有し、当該アーム60の互いに異なる位置に可動プラテン3及び中間プレート4が連結部材70a、70bを介して連結されている。そして、可動プラテン3が型締め機構10により駆動されると、それに伴ってアーム60が支点60a周りに回転し、アーム60に連結された中間プレート4が可動プラテン3に連動して上下移動する。
【0145】
また、ラックアンドピニオン機構を用いた昇降連動機構8は、図22(b)に示すように、一対のラックギア80a、80bとそれらラックギア80a、80bに噛み合うピニオンギア80cとを有しており、一方のラックギア80aが側壁部材61、62に設けられており、他方のラックギア80bが可動プラテン3側に設けられている。そして、それら一対のラックギア80a、80bに噛み合うピニオンギア80cが中間プレート4側に設けられている。ピニオンギア80cを図示しないモータで正回転又は逆回転させることにより、可動プラテン3及び中間プレート4が連動して上下方向に移動する。
【0146】
前記実施形態の成形型は、複数組の上型51及び下型52を有するものであったが、1組の上型51及び下型52を有する構成であっても良い。この場合、ベース部材は、固定プラテン2及び可動プラテン3である。そして、上型51は成形型スライド機構20により、固定プラテン2に対して型締め方向と交差するスライド方向にスライドする。また、下型52は成形型スライド機構20により、可動プラテン3に対して型締め方向と交差するスライド方向にスライドする。
【0147】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0148】
100・・・樹脂成形装置
W・・・成形対象物
P・・・樹脂成形品(樹脂成形された成形対象物)
J・・・樹脂材料
F・・・離型フィルム
2・・・固定プラテン(ベース部材)
3・・・可動プラテン(ベース部材)
4・・・中間プレート(ベース部材)
5a、5b、5c・・・成形型
51・・・上型
52・・・下型
61、62・・・一対の側壁部材
7・・・昇降スライド機構
81・・・パンタグラフ機構
82・・・連結機構
10・・・型締め機構
13・・・基板搬送機構(成形対象物搬送機構)
X1・・・搬送位置
131・・・基板供給部(成形対象物供給部)
132・・・基板受取部(成形対象物受取部)
18・・・樹脂材料搬送機構
X2・・・搬送位置
181・・・樹脂材料供給部
182・・・フィルム回収部
20・・・成形型スライド機構
201(201a、201b)・・・支持フレーム
Q・・・型締め位置
R・・・突出し位置
203・・・駆動アクチュエータ
207・・・位置決め部
30・・・間隔変更機構
301・・・カム機構
【要約】
【課題】成形型の温度維持、成形型のコンタミネーションの低減又はタクトタイムの短縮等の条件を満たしつつ樹脂成形品を製造する。
【解決手段】ベース部材2~4を介して成形型51、52を型締めする型締め機構10と、ベース部材2~4よりも外側に位置する突出し位置Rに成形型51、52をスライドさせる成形型スライド機構20と、突出し位置Rにある成形型51、52に対して搬送対象物の搬送を行う搬送機構13、18と、成形型スライド機構20及び搬送機構13、18を制御する制御部COMとを備え、制御部COMは、突出し位置Rにある成形型51、52に対して搬送対象物の搬送を行う搬送位置X1、X2への搬送機構13、18の移動動作を、成形型スライド機構20による突出し位置Rへのスライド動作よりも先に開始する、又は、移動動作の少なくとも一部の期間に重なるようにスライド動作を行わせる。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22