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特許7549096延焼防止シートおよびその製造方法ならびにバッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】延焼防止シートおよびその製造方法ならびにバッテリー
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/06 20060101AFI20240903BHJP
   B32B 25/04 20060101ALI20240903BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240903BHJP
【FI】
B32B15/06 Z
B32B25/04
H01M50/204 401F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023117171
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-022278(JP,U)
【文献】特開2023-034388(JP,A)
【文献】特開平10-000736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0235271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/06
B32B 25/04
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源同士の間に介在させて熱源間の延焼を防止可能な延焼防止シートであって、
第1ゴムシートと、第2ゴムシートとの間に金属膜を挟んだラミネート構造を有し、
前記金属膜は、金属粒子が堆積した状態の膜であり、
前記第1ゴムシートは、スポンジ状の多孔シートであり、
前記金属膜は、前記第1ゴムシートの片面において、孔以外の面および孔の内部に入り込んで形成されていることを特徴とする延焼防止シート。
【請求項2】
前記第2ゴムシートは、スポンジ状の多孔シートであることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項3】
前記第1ゴムシートおよび前記第2ゴムシートの内の少なくとも1つのゴムシートは、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項4】
前記金属膜は、アルミニウム、銅、スズもしくはこれらの元素の内の少なくとも1つを含む合金の1または2以上の膜であることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の延焼防止シートを製造する方法であって、
第1ゴムシートの厚さ方向片面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記第1ゴムシートの前記金属膜の面に第2ゴムシートを積層する積層工程と、
を含む延焼防止シートの製造方法。
【請求項6】
前記金属膜形成工程に先立ち、前記第1ゴムシートの前記厚さ方向片面に、前記金属膜の形成を容易にするプライマー処理工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の延焼防止シートの製造方法。
【請求項7】
前記金属膜形成工程は、蒸着成膜またはスパッタリング成膜の処理により行われることを特徴とする請求項5に記載の延焼防止シートの製造方法。
【請求項8】
複数個のバッテリーセルを並べて備えるバッテリーであって、
請求項1から4のいずれか記載の延焼防止シートを前記バッテリーセル同士の間に介在させていることを特徴とするバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止シートおよびその製造方法ならびにバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の動力は、ガソリンや軽油などの化石燃料を用いたエンジンから、バッテリーからの電気を用いたモータへと移行しつつある。バッテリーの1種であるリチウムイオンバッテリーでは、一般的に、複数個のバッテリーセル(単に「セル」ともいう。)が筐体内に配置されている。
【0003】
バッテリーセルは、充電時および放電時に発熱することがある。バッテリーセルが異常過熱すると、その熱が隣のバッテリーセルに伝わる結果、バッテリー全体が過熱して発火のリスクが高まる。このような事態を防止するには、バッテリーセル間の熱伝導を低減する材料をバッテリーセル間に介在させるのが好ましい。一方、バッテリーセルが過熱するとバッテリーセルの容器が膨張する。このような膨張を吸収するには、バッテリーセル間に弾性変形に富む材料を介在させるのが好ましい。
【0004】
本出願人の発明者は、本発明に先立ち、ゴム状弾性体からなるゴムシートと、ゴムシートの両面に積層されていて隣り合う複数の熱源の間の伝熱を低減可能な断熱シートと、ゴムシートと断熱シートとの間に介在してゴムシートの両面に断熱シートを接着する接着層と、を備える延焼防止シートを開発した(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2023-062546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、上記の従来から公知の延焼防止シートの知見に基づきさらに開発を行った結果、以下のような改良を考えるに至った。1つは、バッテリーセル等の熱源から発せられる熱を反射させやすくすることである。もう1つは、延焼防止シートが熱源の膨張をより確実に吸収できるだけの弾性変形を実現できるようにすることである。
【0007】
アルミニウムに代表される高熱伝導率の金属板をゴムシートの厚み方向両側に配置した積層シートを熱源同士の間に挟むと、過熱した熱源からの熱は、すぐに金属板に伝わる。この結果、金属板自体が熱くなるので好ましくない。また、通常の金属板を用いると、積層シートを構成するゴムシートの弾性変形を阻害する。この結果、熱源が膨張したときにその膨張に対応したゴムの弾性変形が発揮できなくなる。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づき、熱源からの熱の反射を実現しながらも、熱源の膨張を効率的に吸収させる弾性変形を実現可能な延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止シートは、熱源同士の間に介在させて熱源間の延焼を防止可能なシートであって、第1ゴムシートと、第2ゴムシートとの間に金属膜を挟んだラミネート構造を有し、前記金属膜を、金属粒子が堆積した状態の膜としている。
(2)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記第1ゴムシートおよび前記第2ゴムシートの内の少なくとも1つのゴムシートは、スポンジ状の多孔シートであっても良い。
(3)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記第1ゴムシートおよび前記第2ゴムシートの内の少なくとも1つのゴムシートは、シリコーンゴムであっても良い。
(4)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記金属膜は、アルミニウム、銅、スズもしくはこれらの元素の内の少なくとも1つを含む合金の1または2以上の膜であっても良い。
(5)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止シートの製造方法は、上述のいずれかの延焼防止シートを製造する方法であって、第1ゴムシートの厚さ方向片面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記第1ゴムシートの前記金属膜の面に第2ゴムシートを積層する積層工程と、を含む。
(6)別の実施形態に係る延焼防止シートの製造方法において、好ましくは、前記金属膜形成工程に先立ち、前記第1ゴムシートの前記厚さ方向片面に、前記金属膜の形成を容易にするプライマー処理工程を行っても良い。
(7)別の実施形態に係る延焼防止シートの製造方法において、好ましくは、前記金属膜形成工程は、前記金属の蒸着成膜またはスパッタリング成膜の処理により行われても良い。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーは、複数個のバッテリーセルを並べて備えるバッテリーであって、上述のいずれかの延焼防止シートを前記バッテリーセル同士の間に介在させている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱源からの熱の反射を実現しながらも、熱源の膨張を効率的に吸収させる弾性変形を実現可能な延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーの主要部およびその一部Aの拡大図を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に係る延焼防止シートの斜視図を示す。
図3図3は、図2の延焼防止シートの主な製造工程を示す。
図4図4は、図2の延焼防止シートの製造工程の最初の段階を示す。
図5図5は、図4の状態に続く段階を示す。
図6図6は、図5の状態に続く段階を示す。
図7図7は、この実施形態に係る延焼防止シートの一例の延焼防止性能の評価手法(7A)および評価結果(7B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーの主要部およびその一部Aの拡大図を示す。
【0014】
この実施形態に係るバッテリー1は、例えば電気自動車用のバッテリーであって、好ましくはリチウムイオンバッテリーである。バッテリー1は、多数のバッテリーセル(単に、「セル」ともいう。)5を並べて搭載しており、バッテリーセル5同士の間に延焼防止シート10を挟んでいる。延焼防止シート10は、一部のバッテリーセル5が過熱状態となり、最悪、発火した場合でも隣のバッテリーセル5への延焼を最小限に抑えるためのシートである。また、延焼防止シート10は、その厚さ方向に弾性変形可能なシートである。複数のバッテリーセル5は、その並ぶ方向に圧縮してバッテリー1内にセットされる。このとき、延焼防止シート10は、バッテリーセル5からの圧縮を受けて圧縮変形する。一方、複数のバッテリーセル5の圧縮を解放すると、延焼防止シート10は元の厚さに回復する。さらに、延焼防止シート10は、熱源の一例であるバッテリーセル5が熱膨張したときに、その膨張に伴うバッテリーセル5の変形に応じて弾性的に変形可能である。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る延焼防止シートの斜視図を示す。
【0016】
この実施形態に係る延焼防止シート10は、当該シート10の厚さ方向両側をバッテリーセル5に接触するようにバッテリー1内に備えられる。ただし、複数の延焼防止シート10の内の1つは、当該シート10の厚さ方向片側をバッテリーセル5に、当該片側の反対側をバッテリー1の筐体(不図示)に接触するようにバッテリー1内に備えられていても良い。延焼防止シート10は、熱源の一例であるバッテリーセル5同士の間に介在させて熱源間の延焼を防止可能なシートである。
【0017】
延焼防止シート10は、第1ゴムシート11と、第2ゴムシート12との間に金属膜13を挟んだラミネート構造を有する。金属膜13は、金属粒子が堆積した状態の膜である。本願では、金属粒子は、金属原子を含むように広義に解釈される。
【0018】
第1ゴムシート11および第2ゴムシート12の各厚さは、相対的にいずれが大きくあるいは同一でも良いが、好ましくは同一である。この結果、金属膜13は、延焼防止シート10の厚さのちょうど中央に配置される。第1ゴムシート11および第2ゴムシート12の各厚さの範囲は、特に制約はないが、好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは2mm以上5mm以下である。金属膜13の総厚は、好ましくは0.1μm以上4.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上1.5μm以下である。金属膜13を構成する金属粒子の平均直径は、好ましくは0.1μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上1.5μm以下である。金属膜13は、金属粒子が1層または2層以上が堆積した形態を有する。ここで、「平均直径」とは、SEM像から100個の粒子を任意に選んで得られた直径の平均値をいう。
【0019】
第1ゴムシート11および第2ゴムシート12は、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。第1ゴムシート11および第2ゴムシート12としては、耐熱性に優れるシリコーンゴムシートが好ましい。第1ゴムシート11および第2ゴムシート12は、シリカ、グラファイト等のフィラーを含んでいても良い。また、第1ゴムシート11および第2ゴムシート12としては、伸縮性に富む多孔質のシート(スポンジ状の多孔シートともいう。)が好ましい。この実施形態では、第1ゴムシート11および第2ゴムシート12のより好ましい形態として、シリコーンゴム製の多孔質のシートを用いている。第1ゴムシート11および第2ゴムシート12の内部に空気を含む小さな空孔を有すると、シートの断熱性をより高めることができる。
【0020】
なお、第1ゴムシート11および第2ゴムシート12は、同じ種類のゴムから構成されていなくとも良い。例えば、第1ゴムシート11または第2ゴムシート12のいずれかのみをシリコーンゴムから構成し、他方を非シリコーンゴムから構成しても良い。また、第1ゴムシート11または第2ゴムシート12のいずれかのみをスポンジ状の多孔シートとし、他方を非スポンジ状のシートとしても良い。
【0021】
金属膜13は、金属の種類に特別な制約はないが、好ましくはアルミニウム、銅、スズもしくはこれらの元素の内の少なくとも1つを含む合金の膜である。金属膜13は、1種類の成分の膜でもよく、または2種類の成分の膜が積層された膜でも良い。金属膜13は、例えば、アルミニウムの膜、銅の膜、スズの膜、アルミニウム合金の膜、銅合金の膜、スズ合金の膜、または上記単一の膜を2層以上積層した膜でも良い。金属膜13は、金属の粒子(好ましくは結晶粒)が島状に堆積して成る薄膜である。金属膜13は、前述した例示的厚みからもわかるように、非常に薄い。このため、金属膜13が延焼防止シート10の厚さ方向における弾性変形を阻害するリスクを低減できる。また、金属膜13は、延焼防止シート10の厚さ方向の内部に存在する。このため、熱源であるバッテリーセル5が発熱したときに、その熱を反射してバッテリーセル5に戻すリスクを低減できる。
【0022】
図3は、図2の延焼防止シートの主な製造工程を示す。図4から図6は、図2の延焼防止シートの製造工程を段階的に斜視図で示す。図5は、金属膜13における一部B1を拡大し、さらにB1中のB2をも拡大して示す。
【0023】
この実施形態に係る延焼防止シート10の製造方法は、図3に示すように、好ましくは、プライマー処理(S100)と、金属膜形成工程(S200)と、積層工程(S300)と、を含む。プライマー処理は、オプションの工程であり、必須の工程ではない。
【0024】
(1)プライマー処理(S100)
この工程は、金属膜形成工程(S200)に先立ち、第1ゴムシート11の厚さ方向片面に、金属膜13の形成を容易にする工程である。プライマー処理は、第1ゴムシート11の材料により種々選択可能である。例えば、第1ゴムシート11がシリコーンゴムの場合には、プライマー処理として、シランカップリング剤の塗布を例示できる。シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性アルコキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性アルコキシシランなどが挙げられる。
【0025】
(2)金属膜形成工程(S200)
この工程は、図5に示すように、第1ゴムシート11の厚さ方向片面に金属膜13を形成する工程である。プライマー処理工程(S100)を実施した場合には、金属膜13は、第1ゴムシート11のプライマー処理面に形成される。金属膜形成工程(S200)は、好ましくは、金属の蒸着成膜またはスパッタリング成膜の処理により行われる。蒸着は、真空チャンバ内にて金属を蒸発させて第1ゴムシート11の片面に金属膜13を形成する方法である。金属を蒸着させる手法としては、抵抗加熱方式、電子ビーム照射方式、レーザ加熱方式、高周波誘導方式などを例示できる。スパッタリングは、真空チャンバ内にて、金属をターゲットにして、アルゴン等の不活性な気体をイオンとして当該ターゲットに衝突させて金属原子をターゲットから飛び出させて第1ゴムシート11に金属膜13を成膜させる方法である。スパッタリングの種類としては、マグネトロンスパッタリング、RFスパッタリング、反応性スパッタリング、DCスパッタリングなどを例示できる。
【0026】
図5の一部B1の拡大図およびその中の一部B2の拡大図にも示すように、金属膜13は、金属粒子15が堆積した膜である。第1ゴムシート11がスポンジ状の多孔シートの場合、金属膜13は、第1ゴムシート11の孔14以外の面に形成される。なお、金属粒子15は孔14の内部にも入り込む。このため、金属膜13の一部は、孔14の内部にも形成され得る。
【0027】
(3)積層工程(S300)
この工程は、図6に示すように、第1ゴムシート11の金属膜13の面に第2ゴムシート12を積層する工程である。この工程に先立ち、第2ゴムシート12における金属膜13との接触側の面に、プライマー処理工程(S100)と同様の処理を行っても良い。また、積層工程(S300)では、加熱、または加熱と加圧の併用を行っても良い。また、耐熱性の接着剤を用いて積層しても良い。
【0028】
図7は、この実施形態に係る延焼防止シートの一例の延焼防止性能の評価手法(7A)および評価結果(7B)を示す。(7B)のグラフの横軸は経過時間(sec)を、縦軸は温度(℃)を示す。
【0029】
延焼防止性能は、(7A)に示すように、発熱体(800℃)20と温度測定板21との間にサンプルXを挟み、発熱体が800度に達した時点で発熱体20と温度測定板21との間を加圧する方法で行った。加圧時の圧力は0.1MPaとした。温度の測定は、温度測定板21の位置で行った。サンプルXには、次の3種類を用いた。1つ目のサンプルは、比較材(Sample A)として用いた厚さ4.2mmの発泡シリコーンゴムシート(比重:0.36)である。2つ目のサンプルは、この実施形態の一例(Sample B)として用いたシートであり、2枚の厚さ2.1mmの発泡シリコーンゴムシート(比重:0.36)の間に厚さ1μmの銅の薄膜と厚さ0.3μmのスズ系合金(Sn-Ag-P合金)の薄膜との積層膜を挟んだ形態のシートである。銅の薄膜は、厚さ2.1mmの発泡シリコーンゴムシートの片面に蒸着によって形成された。上記のスズ系合金の薄膜は、銅の薄膜の表面に蒸着によって形成された。蒸着は、ULVAC社製のバッチ式蒸着装置(型番:LP1300BSD)を用いて、チャンバ内の真空度を1×10―4~1×10―6Paの範囲として行った。また、蒸着は、蒸着用の金属を抵抗加熱方式で加熱して行った。3つ目のサンプルは、比較材(Sample C)として用いたシートであり、2枚の厚さ2.1mmの発泡シリコーンゴムシート(比重:0.36)の間に厚さ10μmのアルミニウム箔を挟んだ形態のシートである。
【0030】
(7B)に示すように、時間の経過に従い、Sample A、Sample BおよびSample Cは、ともに温度上昇を示した。全てのSampleとも、400℃以下の温度を維持していることから、発熱体の温度(800℃)に比べて、大幅な温度上昇抑制効果を示した。また、Sample Bは、Sample Aに比べて大きな温度上昇抑制効果を示すことがわかった。さらに、Sample Cは、Sample Bよりも大きな温度上昇抑制効果を示した。しかし、Sample Cのようにアルミニウム箔を発泡シリコーンゴムシート間に挟んだ構造の場合、積層シートの中央部に荷重を集中しても圧縮しにくいことがわかった。これは、アルミニウム箔が伸びにくいために、当該箔が発泡シリコーンゴムシートの変形を抑制したからと考えられる。このような現象は、Sample Bの構造には見られなかった。以上の結果から、遮熱効果が比較的大きく、かつシリコーンゴムの変形をできるだけ抑制しないSample Bが総合的に優れた構造であると判断した。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されず、種々変形可能である。
【0032】
上述の実施形態において、第1ゴムシート11および第2ゴムシート12は、共に、スポンジ状の多孔シートであるが、いずれか一方のゴムシート11,12のみをスポンジ状の多孔シートとしても良い。また、両方のゴムシート11,12を非スポンジ状のゴムシートとしても良い。
【0033】
上述の実施形態において、金属膜13は、第1ゴムシート11の片面の全領域に形成されている。しかし、金属膜13は、当該片面の一部における1または2以上の部位に形成されていても良い。
【0034】
延焼防止シート10は、バッテリーセル5同士の間に配置されるのみならず、バッテリーセル5とバッテリーセル5を格納する筐体との間に配置されていても良い。また、延焼防止シート10は、バッテリー1に設置される用途のみならず、電子機器における回路基板同士の間、電子部品同士の間、または回路基板と電子部品の間に配置される用途を有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、自動車用のバッテリーに利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・バッテリー、5・・・バッテリーセル(熱源の一例)、10・・・延焼防止シート、11・・・第1ゴムシート(例えば、スポンジ状の多孔シート)、12・・・第2ゴムシート(例えば、スポンジ状の多孔シート)、13・・・金属膜、14・・・孔、15・・・金属粒子。

【要約】
【課題】
熱源からの熱の反射を実現しながらも、熱源の膨張を効率的に吸収させる弾性変形を実現可能な延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供する。
【解決手段】
本発明は、熱源5同士の間に介在させて熱源5間の延焼を防止可能な延焼防止シート10であって、第1ゴムシート11と、第2ゴムシート12との間に金属膜13を挟んだラミネート構造を有し、金属膜13を、金属粒子15が堆積した状態の膜とした延焼防止シート10、その製造方法およびバッテリーに関する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7