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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】排水配管継手
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
E03C1/12 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023220161
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2020070377の分割
【原出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2024023947
(43)【公開日】2024-02-21
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】安部 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】三浦 琢夢
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7413132(JP,B2)
【文献】特開2020-094481(JP,A)
【文献】特開2014-098305(JP,A)
【文献】特開2015-175187(JP,A)
【文献】特開2009-108939(JP,A)
【文献】特開2017-014762(JP,A)
【文献】米国特許第08272082(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体と、前記床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、前記床スラブの下方に突出し下階に排水を流下させる排水立管を接続する下立管接続部と、前記床スラブの上方で排水横枝管を接続する横枝管接続部とを備えた排水配管継手であって、
前記横枝管接続部の下方に設けられた上方の熱膨張性耐火材と、前記上方の熱膨張性耐火材の下方において前記上方の熱膨張性耐火材とは別に間隔をあけて設けられた下方の熱膨張性耐火材と、を含むことを特徴とする排水配管継手。
【請求項2】
前記排水配管継手は、外周の少なくとも一部に配置される外層部材をさらに備え、
前記下方の熱膨張性耐火材が、前記外層部材の内周面に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の排水配管継手。
【請求項3】
前記管本体は、直管部を少なくとも備え、
前記直管部の高さ範囲において、径方向の異なる位置に前記上方の熱膨張性耐火材および前記下方の熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排水配管継手。
【請求項4】
前記管本体は、直管部を少なくとも備え、
前記直管部の高さ範囲において、上下方向の異なる位置に前記上方の熱膨張性耐火材および前記下方の熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排水配管継手。
【請求項5】
前記管本体は、直管部と前記直管部の下方の縮径部とを少なくとも備え、
前記直管部と前記縮径部とに、前記上方の熱膨張性耐火材および前記下方の熱膨張性耐火材がそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排水配管継手。
【請求項6】
前記上方の熱膨張性耐火材および前記下方の熱膨張性耐火材のうちの少なくとも1つは前記床スラブに対応する位置に設けられることを特徴とする、請求項1~請求項のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項7】
前記熱膨張性耐火材は、シート状であって前記排水配管継手の周りに環状に設けられることを特徴とする、請求項1~請求項のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項8】
前記環状形態で設けられた前記シート状の熱膨張性耐火材により制振性が発現することを特徴とする、請求項に記載の排水配管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手に関し、特に、最適な延焼防止効果を発現し得る排水配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。このうちの排水設備は、建物の各階層を上下に貫く縦管と、各階層内に設置される横管と、これらを接続する排水配管継手とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。
そして、このような排水配管継手は、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体と、床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、床スラブの下方に突出し下階に排水を流下させる排水立管を接続する下立管接続部と、床スラブの上方で排水横枝管を接続する横枝管接続部とを備える。さらに、管本体には、排水配管継手内の排水の流れを変化させる部分(たとえば旋回羽根、偏流板等)を備えるものが多い。また、このような排水配管継手として、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成されたものが広く知られている。
【0003】
このような排水配管継手を用いた排水配管構造が備え付けられた建築物において、階下にて火災等が発生した場合に火炎や煤煙、有毒ガスが排水配管構造の焼損部位または溶損部位を通じて上層階へ流出することを防止するために、排水配管継手に熱膨張性耐火材を、配管材の外周に別途設けたり、配管材の壁部内に埋設したりして、火災時には床スラブの貫通孔をこの熱膨張性耐火材によって閉塞された状態を維持することが行われている。
【0004】
このような技術として、特許第6576711号公報(特許文献1)は、建物の床スラブを貫通して配管される排水管継手であって、排水管が接続される継手本体と、前記継手本体の前記床スラブに貫通する部分の外面を被覆する第1の被覆材と、を備え、前記継手本体は、熱可塑性樹脂からなり、前記第1の被覆材は、内側からこの順で配置された、スポンジ材からなる第1の吸音層、無機繊維の集合体からなる第2の吸音層及び防水性と遮音性の表皮層と、前記第1の吸音層と前記第2の吸音層との間に挟まれて、前記継手本体の回りに少なくとも一条環状に設けられた熱膨張材と、を一体で備える、排水管継手を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6576711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された排水配継手においては、
継手本体の床スラブに貫通する部分の外面を第1の被覆材で被覆、床スラブの上面から突出する部分の外面を第2の被覆材で被覆
(1)第1の被覆材の構成は内側から
・スポンジ材からなる第1の吸音層(ウレタンフォーム)
・第1の吸音層と第2の吸音層との間に挟まれた熱膨張材
・無機繊維の集合体からなる第2の吸音層(グラスウール)
・防水性と遮音性の表皮層(アルミガラスクロス)
(2)第2の被覆材の構成は内側から
・吸音材からなる上部吸音層(フェルト)
・遮音材からなる上部遮音層(ブチルゴム)
という構造を開示している。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に開示された構造では、先行技術文献は、熱膨張材は継手本体の大径直管部の周りに環状に一条設けられていること、熱膨張材は第1の吸音層と第2の吸音層に挟まれていること、第1の被覆材に内包される熱膨張材はモルタルで埋め戻されていること、を開示しているに過ぎず、これでは最適な延焼防止効果を発現し得るとは言えない。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手であって、最適な延焼防止効果を発現し得る排水配管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る排水配管継手は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る排水配管継手は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体と、前記床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、前記床スラブの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管を接続する排水管接続部と、前記床スラブの上方で排水横枝管を接続する横枝管接続部とを備えた排水配管継手であって、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材が設けられたことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記排水配管継手における径方向の異なる位置に前記2種類の熱膨張性耐火材が設けられ、内層側に設けられる熱膨張性耐火材が外層側に設けられる熱膨張性耐火材よりも前記熱膨張率が高いように構成することができる。
さらに好ましくは、前記排水配管継手における上下方向の異なる位置に前記2種類の熱膨張性耐火材が設けられ、上側に設けられる熱膨張性耐火材と下側に設けられる熱膨張性耐火材とで前記熱膨張率が異なるように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記管本体は、直管部と前記直管部の下方の縮径部とを少なくとも備え、前記直管部の高さ範囲において、径方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記管本体は、直管部と前記直管部の下方の縮径部とを少なくとも備え、前記直管部と前記縮径部とに、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材がそれぞれ設けられているように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記2種類の熱膨張性耐火材は、互いに重なった部分を備えるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記2種類の熱膨張性耐火材のうちの少なくとも1つは前記床スラブに対応する位置に設けられるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記熱膨張性耐火材は、シート状であって前記排水配管継手が備える直管部の周りに環状に設けられる環状形態、または、パテ状であって前記排水配管継手が備えるくぼみに充填されて設けられる充填形態のいずれかの形態で設けられるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記環状形態で設けられた前記シート状の熱膨張性耐火材、および、前記充填形態で設けられた前記パテ状の熱膨張性耐火材により制振性が発現するように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手であって、最適な延焼防止効果を発現し得る排水配管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る排水配管継手100が採用された排水配管構造を示す(A)上面図、(B)側面図である。
図2図1の排水配管構造を示す図であって、(A)排水配管継手100に外層部材700が設けられた後の状態を示す斜視図であって、(B)排水配管継手100に外層部材700が設けられる前の状態を示す斜視図である。
図3】排水配管継手100を示す図であって、(A)熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712が設けられた後の状態を示す斜視図であって、(B)熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712が設けられる前の状態を示す斜視図である。
図4】(A)図3(B)に示す排水配管継手100の分解図であって、(B)管壁を透視した管本体110の斜視図である。
図5】排水配管継手100が採用された排水配管構造を示す、図1の5-5断面図である。
図6図5を部分的に拡大した断面図(くぼみ断面なし)である。
図7図5を部分的に拡大した断面図(くぼみ断面あり)である。
図8】(A)図5に示す3層構造の外層部材700を形成する(耐火性無機繊維によって形成された)振動絶縁体720の一例であるロックウールの展開図であり、(B)その比較例である振動絶縁体726の一例であるロックウールの展開図である。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る排水配管継手200が採用された排水配管構造を示す(A)上面図、(B)側面図である。
図10図9の排水配管構造を示す図であって、(A)排水配管継手200に外層部材800が設けられた後の状態を示す斜視図であって、(B)排水配管継手200に外層部材800が設けられる前の状態を示す斜視図である。
図11】排水配管継手200を示す図であって、(A)熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712が設けられた後の状態を示す斜視図であって、(B)熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712が設けられる前の状態を示す斜視図である。
図12】(A)図11(B)に示す排水配管継手200の分解図であって、(B)管本体210の断面図であって、(C)熱膨張性耐火材612が充填されるくぼみ212を説明するための管本体210の断面図である。
図13】排水配管継手200が採用された排水配管構造を示す、図1の13-13断面図である。
図14図13を部分的に拡大した断面図である。
図15】(A)~(E)熱膨張性耐火材の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の第1の実施の形態に係る排水配管継手100を図1図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る排水配管継手200を図9図15を参照して、施工方法を含めて詳しく説明する。ここで、図2図4および図10図12に示す斜視図は模式的に記載されたものであって、その他の図(たとえば図5および図13)との整合性が完全には一致していない場合(たとえば、排水配管継手100または排水配管継手200に接続される排水管の有無、上立管接続部120の受口部分以外および横枝管接続部140の受口部分以外に設けられた制振材714の有無、旋回羽根114の形状)がある。また、以下の説明において、外周面と外表面と外側、外層側と外周側と外側、内層側と内周側と内側、とは、明確に区別して記載していない場合がある。
【0017】
<概要>
図1および図5ならびに図9および図13に示すように、本発明の実施の形態に係る排水配管継手100または排水配管継手200を用いた排水配管構造は、建築物における床スラブSを上下に貫通する貫通孔に設けられる排水配管継手100または排水配管継手200と、床スラブSの上方でこれらの排水配管継手100または排水配管継手200に接続され上階からの排水を流入させる上階側の排水立管520と、床スラブSの上方でこれらの排水配管継手100または排水配管継手200に接続される(ここではそれぞれ3本ずつの)排水横枝管510と、床スラブSの下方でこれらの排水配管継手100または排水配管継手200に接続され下階に排水を流出させる下階側の排水立管530または90度ベント管540とを有している。排水配管継手100を用いた排水配管構造は最下階以外で採用され、排水配管継手200を用いた排水配管構造は最下階で採用される点が異なり、床スラブSより上方においてはこれらの排水配管構造は同じ構造を備える。なお、これらの排水配管構造は一例であって、例示した排水配管構造に限定して本発明に係る排水配管継手が採用されるものではない。
【0018】
ここで、これらの排水配管構造に採用される排水配管継手100または排水配管継手200およびこれらの排水配管継手に接続される排水管は、非耐火性の樹脂製が採用される。しかしながら、本発明に係る排水配管継手は、このような非耐火性の樹脂製に限定される場合と樹脂製に限定されることなく鋳鉄等の樹脂製以外を含む場合とが混在する。このため、以下においては、排水配管継手100および排水配管継手200ならびにこれらの排水配管継手に接続される排水管は非耐火性の樹脂製であるとして説明して、樹脂製に限定されない場合については、説明の中において随時記載する。ここで、「非耐火性」とは、建築物内で火災が生じたときに、これによる熱によって変形、溶融または燃焼可能な性質をいい、たとえば樹脂製のものが該当する。また、樹脂製が採用される場合、たとえば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレンあるいはナイロン等によって、排水配管継手100、排水配管継手200、これらに接続される配管(排水横枝管510、上階側の排水立管520、下階側の排水立管530、90度ベント管540)は成形されている。なお、排水立管には、たとえばいわゆる耐火2層管を用いてもよい。
【0019】
排水配管継手100は図4(A)および図5に示すように、排水配管継手200は図12(A)および図13に示すように、ひとつまたは複数(ここでは一例ではあるが7つ)の樹脂製の射出成形品で形成されている。そして、排水配管継手100は、図1図4(A)および図5に示すように、建築物に施工された際に、床スラブSの貫通孔に配置される管本体110と、その床スラブSの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管520を接続する上立管接続部120と、その床スラブSの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管(ここでは排水立管530)を接続する排水管接続部130と、その床スラブSの上方で排水横枝管510を接続する横枝管接続部140とを備える。また、排水配管継手200は、図9図12(A)および図13に示すように、建築物に施工された際に、床スラブSの貫通孔に配置される管本体210と、床スラブSの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管520を接続する上立管接続部120と、床スラブSの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管(ここでは取付部材Tにより床スラブSの下階側に吊り下げられた90度ベント管540)を接続する排水管接続部230と、床スラブSの上方で排水横枝管510を接続する横枝管接続部140とを備える。このように、排水配管継手100と排水配管継手200とでは、管本体110と管本体210とで異なり、排水管接続部130と排水管接続部230とで異なり、(後述する)外層部材700と外層部材800とで異なる。すなわち、排水配管継手100と排水配管継手200とでは、床スラブSより上方において共通している。これらの共通する部分については、排水配管継手100と排水配管継手200とで同じ符号を付している。
【0020】
これらの図に示すように、共通する部分として、排水配管継手100および排水配管継手200においては、横枝管接続部140は、平面視で90°間隔で3箇所に開口部を備えた集水室142と、その開口部の位置に対応して排水横枝管を接続するための第1の横枝管接続部材144と、第2の横枝管接続部材146と、第3の横枝管接続部材148とで構成されている。ここで、限定されるものではないが、第1の横枝管接続部材144、第2の横枝管接続部材146および第3の横枝管接続部材148は、いずれも縮径等せずに排水横枝管510を接続しているが、管径が変化するものであっても構わない。
【0021】
排水配管継手100が備える管本体110と、排水配管継手200が備える管本体210とでは、以下の点が異なる。管本体210は、管本体110に対して排水方向の長さが短く、管本体110が備える縮径部118(テーパ状)を備えず、管本体110が備える管本体110における横枝管接続部140と排水管接続部130との間における管本体110の内面に突出する突出部としての旋回羽根114を備えない。そして、管本体110の外面にはこの突出部(ここでは旋回羽根114)に対応するくぼみ112が形成され、図3に示すようにこのくぼみ112の部分にパテ状の熱膨張性耐火材612が充填されている。一方、管本体210は、管本体110が備えるくぼみ112に替えてくぼみ212を備え、図11に示すようにこのくぼみ212の部分にパテ状の熱膨張性耐火材612が充填されている。
【0022】
ここで、くぼみ112の部分またはくぼみ212の部分に充填される熱膨張性耐火材612について説明する。熱膨張性耐火材612は、たとえば、ブチルゴムを主成分とする樹脂分、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、含水無機物及び金属炭酸塩を含有する樹脂組成物、または、エポキシ樹脂、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛および無機充填剤を含有する樹脂組成物等から形成される。この熱膨張性耐火材612には、たとえば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」(反応温度200℃で5~40倍に膨張)が使用される。また、この他に、因幡電機産業株式会社製の商品名「熱膨張性耐熱シール材IP」(120℃から膨張を開始し、体積が4倍以上に膨張する)や、株式会社古河テクノマテリアル製の商品名「ヒートメル」(膨張開始温度120℃、顕著な膨張温度260℃、4~8倍に膨張する)等を熱膨張性耐火材612として使用できる。
【0023】
なお、熱膨張性耐火材612は、上記したものに限らず、反応温度、膨張率の異なる多種多様のものを使用でき、したがって建築物内の施工場所に応じて要求される反応温度、管径等の諸条件を満たす最適なものを選択して使用できる。
この熱膨張性耐火材612は、非硬化の不乾性のパテ状に形成されており、排水配管継手100の管本体110の外面のくぼみ112または排水配管継手200の管本体210の外面のくぼみ212が、管本体110または管本体210の外径程度まで埋まるように(後述する熱膨張性耐火シート712とともにまたは熱膨張性耐火シート712を備えることなく所望の耐火性を十分に実現できる量が)充填されている。
【0024】
ここで、管本体110が備える突出部は、排水配管継手100内の排水の流れを変化させる部分であれば、旋回羽根114に限定されるものではなく、偏流板等であっても構わず、管本体110の外面に対応するくぼみ112が形成されるものであれば、旋回羽根にも偏流板にも限定されない。さらに、管本体210が備えるくぼみ212は図示した形状に限定されるものではない。いずれの排水配管継手100および排水配管継手200であっても熱膨張性耐火材612はこれらの排水配管継手が備える外周面のくぼみに充填される。なお、図12(B)に示すように、管本体210が備えるくぼみは、管本体210において縮径されることに伴い形成されるものであるが、その下流側において管本体210の内壁が広がっているために管本体110が備える縮径部118とは区別するために、管本体210が縮径部(テーパ部)を備えるものとしては説明しない。
【0025】
さらに、管本体110の床スラブSに対応する高さ位置に対応して、図3図5に示すようにシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110の外周面に巻き付けるようにして設けられ、管本体210の床スラブSに対応する高さ位置に対応して、図11図13に示すようにシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110の外周面に巻き付けるようにして設けられている。これらの熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712とは、管本体110では上下方向に離隔していることに対して、管本体210では上下方向に離隔せずに径方向に互いに重なっている部分を備える。なお、図3および図11における一点鎖線は取り外すことを意味している。
【0026】
このような排水配管構造を採用した建築物において、排水配管継手100または排水配管継手200等が燃焼した場合に、その熱によって熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712とが径方向の内側に膨張し、排水配管継手100または排水配管継手200の本体がその中空部を押しつぶして排水配管継手100または排水配管継手200を閉塞するようになっている。これによって、これらの排水配管継手100または排水配管継手200を用いた排水配管構造は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断できるようになっている。
【0027】
ここで、このような熱膨張性耐火物(熱膨張性耐火材612、熱膨張性耐火シート712)が設けられるのは上述したように樹脂製に限定され、後述するように、このような熱膨張性耐火物のうちの熱膨張性耐火シート712が(理由の如何にかかわらずこの部分に)設けられない場合には熱膨張性耐火シート712に替えて制振材714が設けられることが好ましい。
排水配管継手100については図5図7を参照して、排水配管継手200については図13図14を参照して、管本体110の外周または管本体210と排水管接続部230との外周に巻き付けるように設けてある外層部材700および外層部材800について説明する。
【0028】
これらの図に示すように、この外層部材700および外層部材800は、3層構造を備え、排水配管継手100または排水配管継手200の外表面から、制振材714(または熱膨張性耐火シート712)、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体720または振動絶縁体820、遮音カバー730の順に、管本体110の外面または管本体210と排水管接続部230との外面に設けられている。振動絶縁体720と振動絶縁体820とでは、詳しくは後述するが、展開した時の形状が異なる。
くぼみ112またはくぼみ212の部分には熱膨張性耐火材612が充填されており、耐火性能(延焼防止機能)を発現するとともに、空洞部であるくぼみ112またはくぼみ212がパテ状の熱膨張性耐火材612により充填されていることにより制振性能および遮音性能も発現している。
【0029】
そして、排水配管継手100においては、制振材714は、くぼみ112の部分に充填された熱膨張性耐火材612を覆うように、管本体110の外面(の全面にたとえば接着剤または粘着剤等で)に貼り付けられている。そして、耐火性能に関して、熱膨張性耐火材612が充填されたくぼみ112の部分よりも上方の管本体110の位置において、制振材714に替えて熱膨張性耐火シート712が管本体110の外面に貼り付けられている。このように管本体110の外面に貼り付けられた熱膨張性耐火シート712も制振材714と同様に(性能は同等でない可能性があるが)制振性能を発現する。また、排水配管継手200においては、制振材714は、排水管接続部230の外面に(たとえば接着剤または粘着剤等で)貼り付けられている。そして、耐火性能に関して、排水管接続部230よりも上方の管本体210の位置において、制振材714に替えて熱膨張性耐火シート712が管本体210の外面に貼り付けられている(さらにその径方向内周側には熱膨張性耐火材612がくぼみ212に充填されている)。このように管本体210の外面に
貼り付けられた熱膨張性耐火シート712も制振材714と同様に(性能は同等でない可能性があるが)制振性能を発現する。
【0030】
詳しくは後述するが、熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712とでは熱膨張率が異なる。ここで、一般的に、熱膨張性耐火材料は、熱膨張率が高いと膨張後の形状保持性が低く、熱膨張率が低いと膨張後の形状保持性が高いとされている。熱膨張率が低いと十分な耐火性能を発現できない可能性があり、形状保持性が低いと熱膨張材が落下してしまう可能性がある。このトレードオフの特性、および、熱膨張率(さらにはその差の絶対値等)を勘案して、それぞれの位置、重量、形状、反応速度、および、膨張開始温度等に対応させて熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712に含有される熱膨張性材料が選択される。
【0031】
このように、この3層構造における最内層710は、熱膨張性耐火シート712および制振材714のいずれかである。
制振材714は、ブチル系(ブチルゴム等)またはアスファルト系(ゴムアスファルト、改質アスファルト等)の材料を含んで形成され、遮音カバー730は、ゴム系(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)、エラストマー系またはオレフィン系(ポリエチレン樹脂等)の材料を含んで形成され、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体720および振動絶縁体820は、耐火性を備えた無機繊維の集合体(多孔質材料)からなる。
【0032】
ここで、無機繊維としては、人造鉱物繊維が挙げられ、たとえば、グラスウール、ロックウールまたはセラミックファイバー等であって、これらは振動絶縁性能が高い点に加えて吸音性能が高い点でも好ましい。管本体110または管本体210および排水管接続部230を流下する排水による振動(たとえば旋回羽根114に当たって発生する振動)を、制振材714で抑制した上で、さらに、このロックウール等で形成された振動絶縁体720により振動を遮断して(および/または振動に伴う騒音を吸収して)、さらに、EPDM製等のゴムカバーで形成された遮音カバー730により振動に伴う騒音の伝搬を遮断する。ここで、ロックウールとは天然岩石または高炉スラグなど鉄鋼スラグなどを主原料として製造されたものの総称であって、グラスウールとはガラス繊維で構成された綿状のものの総称であって、ともに耐火性および遮炎性を有する。
【0033】
なお、以下においては、制振材714としてブチルゴムを採用し、振動絶縁体720としてロックウールを採用し、遮音カバー730としてEPDM製のゴムカバーを採用した場合について説明する場合があるが、これらの材料は一例に過ぎない。
振動絶縁体720として、このロックウールを採用する場合には、抄造により製造されたシート状のロックウールを用いることが好ましい。しかしながら、このように抄造で製造されたロックウールシートは、縫製等により、排水配管継手100における管本体110の立体的な形状(直管部+縮径部(テーパ部))に形成する加工は難しく、縫製等することなく平面形状のロックウールシート(以下において単にロックウールと記載する場合があるがその場合でも本発明における振動絶縁体720の形状としてはシート状であることが好ましい)を、たとえばテープで貼るなどの方法で管本体110にセットしても火災時に落下してしまう場合がある。そのため、ロックウールシートの展開形状(平面形状)を、たとえば図8(A)に示すようにしている。
【0034】
このようにすると、床スラブSが薄い場合でも切れ目が縦方向(管本体110における上下方向)1箇所にしか表れないようにすることができる。さらに、図8(B)に示すロックウールシートの展開図においても切れ目が縦方向1箇所にしか表れないようにする点では同じであるが、管本体110の立体的な形状(直管部+縮径部(テーパ部))に対応するために、図8(A)はロックウールシートにおける床スラブSの位置に切れ目(詳し
くは後述する細溝722であって5箇所の切れ目)を入れているのに対して、図8(B)は長方形と部分円環形とを円弧で接合している。図8(A)で示す展開図の場合における切れ目は床スラブSの位置になるためにこの部分に切れ目(この部分は力学的に弱いまたは耐火性が劣る可能性がある)があってもその位置が床スラブSの位置であって床スラブSが燃えないためにロックウールの耐火性に問題がなく火災時に落下してしまうこともない。これに対して、図8(B)に示すロックウールシートの展開図において点線で示す接合部分が床スラブSの位置にない場合にはもちろんのこと床スラブSの位置にある場合であっても、接合部分の長さが短くかつ下方に接合されている部分円環形の重量が大きいこと等を理由として、この接合部分の位置から切れて火災時にロックウールシートが落下してしまう可能性がある。なお、この振動絶縁体720の形状およびその形状に基づく作用効果の詳細については後述する。また、振動絶縁体820については、排水配管継手200において振動絶縁体820が設けられる管本体210および排水管接続部230が略直管形状であって管本体110のような立体的な形状(直管部+縮径部(テーパ部))を備えないために、上述した図8(A)に示す展開形状のロックウールシートは採用してしなくても構わないが、採用しても構わない。
【0035】
さらに、このロックウールが採用された振動絶縁体720は、内層側の制振材714または熱膨張性耐火シート712に対して共鳴による騒音伝搬を抑制するために、緩く、かつ、全周に亘って固定するのではなく周方向の数か所で固定するようにして、設けられている。特に、ロックウールを固定する(より詳しくは遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーにロックウールを固定する)この周方向の数か所の固定位置についての高さ位置については、熱膨張材(熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712)よりも上方であって、火災発生時にロックウールが落下することを防止している。また、この落下することを防止する取付方法は、接着剤、両面テープ等による接合がその一例として挙げられる。
【0036】
以下において、この3層構造の外層部材700を備えた排水配管継手100または外層部材800を備えた排水配管継手200の(施工方法ではない)製造方法であって、外層部材700または外層部材800の取付手順について説明する。
まず、くぼみ112またはくぼみ212にパテ状の熱膨張性耐火材612を充填する。そして、熱膨張性耐火シート712を貼る。排水配管継手100においては、熱膨張性耐火シート712は、パテ状の熱膨張性耐火材612から離隔しているが、排水配管継手200においては、パテ状の熱膨張性耐火材612の全部または一部を覆うようにして熱膨張性耐火シート712が貼られている。さらに、制振材714を管本体110または排水管接続部230の外周面に接着剤または粘着剤で貼り付ける。このとき、この3層構造における最内層710は、熱膨張性耐火シート712および制振材714のいずれかが存在する。なお、層状ではないが、これらの排水配管継手100および排水配管継手200においては、熱膨張性耐火シート712のさらに内層側に、くぼみ112またはくぼみ212に充填された熱膨張性耐火材612が存在する。
【0037】
熱膨張性耐火シート712および制振材714を設けた上から、振動絶縁体720としての(展開図が図8(A)に示される)ロックウールシート、または、振動絶縁体820としての(展開図を図示しないが矩形状の)ロックウールシートを巻く。さらに、その上から遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーで被覆する。ここで、この遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーは、止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させる。なお、この遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカバーは、一体成形して、排水配管継手100または排水配管継手200に接着して止水性を発現するようにしても構わないし、接着しないで(ゴムの有する伸縮性により発現する)テンションのみで止水性を発現するようにしても構わない。この場合において、図5図7または図13図14に示す断面形状に示されるように、この遮音カバー730としてのEPDM製のゴムカ
バーの上側の端部には円環状で厚みの厚い上端止水部732および/または下側の端部には同じく(径は異なるが)円環状で厚みの厚い下端止水部734を設けるようにして、止水性を高めることも好ましい。
【0038】
上述のように概要を説明したこれらの排水配管継手100または排水配管継手200によると、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、建築物の床スラブSを貫通して設けられ、耐火性能を十分に発揮させ、排水振動を抑制することができる。特に、3層構造の外層部材700または外層部材800における、最内層710としてブチルゴムを一例とする制振材714を管本体110の外表面または管本体210と排水管接続部230との外表面に密着させて設けて振動を極めて効果的に抑制して、中間層としてロックウールシートを一例とする振動絶縁体720または(展開形状が振動絶縁体720とは異なる)振動絶縁体820を緩くかつ数か所で固定して設けて吸音性と耐火性と遮音性と振動絶縁性とを発現させ、最外層としてEPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を設けて止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させて、管本体110または管本体210および排水管接続部230を流下する排水による(たとえば旋回羽根114に当たって発生する)振動を、制振材714により抑制した上で、振動絶縁体720または振動絶縁体820により振動をさらに遮断して、さらに、遮音カバー730により振動に伴う騒音の発生を遮断するために、排水振動を極めて効果的に抑制することができる。また、2つの熱膨張性耐火材(熱膨張性耐火材612および熱膨張性耐火シート712)を設けるとともに、それらの外側には耐火性能を発現する層を含む複数の層で覆うように構成されているために、耐火性能を十分に発揮させることができる。
【0039】
次に、以下において、排水配管継手100または排水配管継手200について、さらに詳しく説明する。なお、排水配管継手100については図1図8を参照して、排水配管継手200については図9図15を参照する点は上述した概要の説明と同じである。また、排水配管継手100と排水配管継手200とで共通する構成については排水配管継手100で代表させて説明する場合がある。
【0040】
<制振材:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定されない>
排水配管継手100の外層部材700を構成する最内層710の制振材714は、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に一体的に設けられている。なお、管本体110の外周面の全体に設けられているものに限定されず、管本体110の外周面の一部のみに設けられているものであっても(その位置が床スラブSにかかっていれば)構わない。また、排水配管継手200の外層部材800を構成する最内層710の制振材714は、管本体210における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に一体的に設けられているともに、排水管接続部230にも設けられている。なお、管本体210の外周面の全体に設けられているものに限定されず、管本体210の外周面の一部のみに設けられているものであっても(その位置が床スラブSにかかっていれば)構わない。ここでは、図10図14とは異なり、管本体210には、熱膨張性耐火シート712に替えて制振材714が一体的に設けられている。
【0041】
そして、この制振材714は、この制振材714が設けられている外周面においては、その面全体に粘着または接着されて一体的に設けられていることが好ましい。さらに、この制振材714は、シート状に形成され、外周面に巻着されていることが好ましい。
このように最内層710としてブチルゴムを一例とする制振材714を、管本体110の外周面(外表面)または管本体210と排水管接続部230との外周面(外表面)の少なくとも一部に密着させて排水配管継手と一体化させて設けることにより、排水配管継手に発生する振動を極めて効果的に抑制することができる。
【0042】
また、この制振材714のさらに外周にロックウールを一例とする振動絶縁体720または振動絶縁体820を設けた2層構造の外層部材とすることも好ましく、さらに、振動絶縁体720または振動絶縁体820のさらに外周にEPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を設けた3層構造の外層部材とすることも好ましい。この3層構造を採用する場合において、振動絶縁体720または振動絶縁体820は、内層側の制振材714ではなく外層側の遮音カバー730に固着されているように設けることが好ましい。
【0043】
さらに詳しくは、排水配管継手100においては、管本体110は直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備えるものであって、この場合には、振動絶縁体720は、直管部116に対応する高さ範囲において、遮音カバー730の周方向に断続的に固定されているように設けることが好ましい。また、排水配管継手100および排水配管継手200においては、振動絶縁体720または振動絶縁体820は、外層側の遮音カバー730の周方向2箇所~4箇所において点付けで固定されているように設けることが好ましい。
【0044】
このように中間層としてロックウールシートを一例とする振動絶縁体720または(展開形状が振動絶縁体720とは異なる)振動絶縁体820を緩くかつ数か所で内層側の制振材714ではなく外層側の遮音カバー730に固定して設けることにより吸音性と耐火性(制振材714に替えて/加えて熱膨張性耐火材を設ける場合)と遮音性と振動絶縁性とを発現させて、最外層としてEPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を設けて止水性と遮音性と振動絶縁性とを発現させることにより、排水配管継手に発生する振動を極めて効果的に抑制することができる。
【0045】
なお、上述したように、これらの排水配管継手100および排水配管継手200が、ひとつまたは複数(ここでは7つ)の樹脂製の射出成形品(非耐火性)で形成されている場合(排水配管継手が樹脂製に限定される場合)においては、制振材714の少なくとも一部に替えてシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110または管本体210における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面に設けられている(貼り付けられている)部分を備えることも好ましい。この場合において、排水配管継手100においては、管本体110に設けられた制振材714の一部に替えてシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体110に設けられる。排水配管継手200においては、管本体210に設けられた制振材714の全部に替えてシート状の熱膨張性耐火シート712が管本体210に設けられる(貼り付けられている)。
【0046】
このようにすると、排水配管継手100または排水配管継手200等が燃焼した場合に、その熱によって熱膨張性耐火シート712が径方向の内側に膨張し、排水配管継手100または排水配管継手200の中空部を押しつぶして排水配管継手100または排水配管継手200を閉塞することによって、これらの排水配管継手100または排水配管継手200を用いた排水配管構造は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断することができる。
【0047】
また、排水配管継手100においては、管本体110は直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備えるものであって、この場合には、振動絶縁体720の内層側に制振材714の一部に替えて熱膨張性耐火シート712が設けられ、その熱膨張性耐火シート712よりも上方の位置であって直管部116に対応する高さ位置において振動絶縁体720が外層側の遮音カバー730に固定されていることも好ましい。
【0048】
このようにすると、排水配管継手100等が燃焼した場合であっても、熱膨張性耐火シート712により閉塞される排水配管継手100の高さ位置よりも上方の位置であって直
管部116に対応する高さ位置において振動絶縁体720が外層側の遮音カバー730に固定されているために、火災時において振動絶縁体720が落下することを防止することができる。
【0049】
<遮音カバー:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定されない>
排水配管継手100の外層部材700を構成する最外層の遮音カバー730は、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周の少なくとも一部に設けられた振動絶縁体720の上下方向の全長に亘って振動絶縁体720の外周に設けられている。排水配管継手200の外層部材800を構成する最外層の遮音カバー730は、管本体210における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周の少なくとも一部に設けられた振動絶縁体820の上下方向の全長に亘って振動絶縁体820の外周に設けられている。
【0050】
EPDM製のゴムカバーを一例とする遮音カバー730を振動絶縁体720または振動絶縁体820の上下方向の全長に亘ってそれらの外周に設けることにより、高い遮音性能を発現することができる。
EPDM製のゴムカバーを一例とする、この遮音カバー730は、止水効果、遮音効果および振動絶縁効果を備えるものである。このため、上述した遮音性能に加えて、高い止水性能および高い振動絶縁性能を発現することができる。
【0051】
また、この遮音カバー730は、上側の端部に上端止水部732および/または下側の端部に下端止水部734を備えることが好ましく、上端止水部732および/または下端止水部734は、排水配管継手100または排水配管継手200の外表面に当接(接着剤等で接合されて当接されている場合を含む)するように設けられている。これらの上端止水部732および下端止水部734は、遮音カバー730の本体よりも厚みが厚い肉厚部により形成されている。このため、高い止水性能を発現することができるとともに強度的にも優れている。
【0052】
また、この遮音カバー730は、上端止水部732および/または下端止水部734を含んで振動絶縁体720または振動絶縁体820の上下方向の全長に対応した長さを備えたカバー本体とともに一体成形されており、遮音カバー730自体が伸縮性を備えることが好ましい。
このように遮音カバー730自体が伸縮性を備えると、遮音カバー730自体が備える伸縮性を用いて、振動絶縁体720または振動絶縁体820における上下方向の全長に亘ってそれらの外周に設けることができる。
【0053】
<振動絶縁体::基本的に排水配管継手が樹脂製に限定されないが縮径部が必要>
排水配管継手100においては、管本体110は直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備えるものであって、この場合には、排水配管継手100の外層部材700を構成する中間層の振動絶縁体720は、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周の少なくとも一部に設けられている。そして、この振動絶縁体720は、展開状態において図8(A)に示す所定の形状を備えたシートであって(ここでは図8(B)に示す振動絶縁体726の形状であっても構わない)、このシートの端縁どうしを当接させて、直管部116の外周面および縮径部118の外周面に巻き付けられて設けられている。さらに、建築物に排水配管継手100が施工された後であって、この振動絶縁体720のさらに外周に装着物がない状態において、この振動絶縁体720は、図5図8に示すように、図8(A)または図8(B)に示す端縁720S1どうしまたは端縁726S1どうしを当接させた部分を含めて床スラブSの上階側へ露出せずに、端縁どうしを当接させた部分を1箇所(図8(A)または図8(B)に示す端縁720S2どうしまたは端縁726S2どうしを当接させた一点鎖線部分)とし
た状態で床スラブSの下階側に露出するように設けられている。
【0054】
このため、床スラブSが薄い場合でも振動絶縁体720または振動絶縁体726の切れ目が縦方向(管本体110における上下方向)1箇所(端縁720S2どうしまたは端縁726S2どうしを当接させた切れ目)にしか表れないようにすることができるので、床スラブSが燃えないために、かつ、床スラブSからは強度の弱い振動絶縁体720の切れ目が縦方向(管本体110における上下方向)1箇所にしか表れないために、振動絶縁体720の耐火性に問題がなく火災時に落下してしまうことを防止することができる。
【0055】
さらに、詳しくは、図8(A)に示すように、振動絶縁体720における所定の形状は、部分円環形状であって、円環形状の円環外周から円環内周へ向けて、床スラブSに覆われる振動絶縁体720の長さL(1)に対応した長さL(2)を備え、かつ、所定の幅を備えた複数(ここでは5つ)の細溝722を備える。なお、円環外周側が管本体110の上方である。各複数の細溝722をそれぞれ閉じるようにして(それぞれの細溝722を形成する溝辺722Sどうしを当接させるようにして、かつ、シートの端縁720S1どうしを当接させるようにして)直管部116の外周面に巻き付けられるとともに、シートの端縁720S2どうしを当接させて縮径部118の外周面に巻き付けられる。
【0056】
振動絶縁体720を、このような展開形状のシートとして、管本体110の外周面に巻き付つけることにより、管本体110が直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備える場合であっても、振動絶縁体720の耐火性に問題がなく火災時に落下してしまうことがない。
特に、振動絶縁体720として抄造されたロックウールシートを採用する場合には、抄造で製造されたロックウールシートは、縫製等により、排水配管継手100における管本体110の立体的な形状(直管部+縮径部(テーパ部))に形成する加工は難しくても、縫製等することなく振動絶縁体720を管本体110に設けることができるとともに、火災時に振動絶縁体720が落下してしまうことを防止することができる。
【0057】
<熱膨張性耐火材:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定される>
排水配管継手100または排水配管継手200においては、熱膨張性耐火材612と熱膨張性耐火シート712との、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材が設けられているが、これについて、図15を参照して詳しく説明する。
まず、これらの排水配管継手100または排水配管継手200において、径方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられる場合には、図15(A)に示すように、内層側に設けられる熱膨張性耐火材が外層側に設けられる熱膨張性耐火材よりも熱膨張率が高いことが好ましい。
【0058】
次に、これらの排水配管継手100または排水配管継手200において、上下方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられる場合には、図15(B)に示すように、上側に設けられる熱膨張性耐火材が下側に設けられる熱膨張性耐火材よりも熱膨張率が高いことが好ましい。なお、後述するように、この上下方向の熱膨張率の関係が成立しない場合(一例として排水配管継手100)もある。
【0059】
ここで、上述したように、一般的に、熱膨張性耐火材料は、熱膨張率が高いと膨張後の形状保持性が低く、熱膨張率が低いと膨張後の形状保持性が高いとされているので、図15(A)および図15(B)に示すように、熱膨張率が低いと十分な耐火性能を発現できない可能性があり、形状保持性が低いと熱膨張材が落下してしまう可能性があるというトレードオフの特性を備えた関係が成立する。このような特性を勘案し(特性を利用し)、さらには、それぞれの位置、重量、形状、反応速度、および、膨張開始温度等に対応させて2種類の熱膨張性耐火材が選択される。
【0060】
熱膨張性耐火材の形状による特性として、本実施の形態で採用したパテ状とシート状とでは、図15(C)に示すように、一般的に、パテ状の熱膨張性耐火材の方がシート状の熱膨張性耐火材よりも熱膨張率が高い。
図15(D)を参照して、熱膨張性耐火材の配置を排水配管継手(床スラブSの貫通孔に施工されるが縮径部の有無は不問)に採用される可能性がある4つの例を説明する。
【0061】
まず、図15(D)に示す第2例目は、図15(A)に対応するものであって、第2の実施の形態に係る排水配管継手200が該当する。高さ方向の位置が同じであるが(ここでの同じとは熱膨張性耐火材の配置を検討するほどの高さ方向の差がないという意味である)、径方向の位置が異なる場合には、径方向の内層側の熱膨張性耐火材の熱膨張率が外層側の熱膨張性耐火材の熱膨張率よりも高い。より具体的には、排水配管継手200においては、内層側の熱膨張性耐火材として、くぼみ212に充填されたパテ状の熱膨張性耐火材612が採用され、外層側の熱膨張性耐火材として、くぼみ212に充填されたパテ状の熱膨張性耐火材612の外層に接するように設けられた熱膨張性耐火シート712が採用されている。パテ状のほうがシート状よりも熱膨張率が高いために、内層側の熱膨張性耐火材612が外層側の熱膨張性耐火シート712よりも熱膨張率が高い。
【0062】
次に、図15(D)に示す第3例目は、図15(B)に対応するものであって、径方向の位置が同じであるが(ここでの同じとは熱膨張性耐火材の配置を検討するほどの径方向の差がないという意味である)、高さ方向の位置が異なる場合には、高さ方向の上側の熱膨張性耐火材の熱膨張率が下側の熱膨張性耐火材の熱膨張率よりも高い。
さらに、図15(D)に示す第4例目であって、径方向の位置も高さ方向の位置もともに異なる場合には、高さ方向が上側で径方向の内層側に熱膨張率の高い熱膨張性耐火材が配置され、高さ方向が下側で径方向の外層側に熱膨張率の低い熱膨張性耐火材が配置される。
【0063】
最後に、図15(D)に示す第1例目であって、第1の実施の形態に係る排水配管継手100が該当する。この場合、上下方向に異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられる場合であるために、通常であれば図15(B)に示すように(また図15(D)の第3例目および第4例目のように)高さ位置の上側に熱膨張率の高い熱膨張性耐火材が配置され、高さ位置の下側に熱膨張率の低い熱膨張性耐火材が配置されることになるが、排水配管継手100においては、下側の熱膨張性耐火材として、くぼみ112に充填されたパテ状の熱膨張性耐火材612が採用され、上側の熱膨張性耐火材として、シート状の熱膨張性耐火シート712が採用されている。パテ状のほうがシート状よりも熱膨張率が高いために、下側の熱膨張性耐火材612が上側の熱膨張性耐火シート712よりも熱膨張率が高いことになり図15(B)に沿わない。
【0064】
これは、排水配管継手100において、管本体110は、直管部116の下方に縮径部118を備え、その縮径部118にパテ状の熱膨張率が高い熱膨張性耐火材612を採用して管径の小さい縮径部118を高い熱膨張率のパテ状の熱膨張性耐火材612で速やかに閉塞させる。一方、形態安定性が低くなるために(落下しやすくなるために)、熱膨張性耐火材612の外層側を耐火性および遮炎性をも有するロックウールに代表される振動絶縁体720で被覆するとともに、管径が次第に小さくなっている縮径部118の形状により保持することにより、このパテ状の熱膨張性耐火材612が落下することを防止して、形態安定性が低いことを補っている。
【0065】
このように、熱膨張率に基づく熱膨張性耐火材の配置における、高さ方向については例外があり得る。なお、図15(D)における熱膨張性耐火材はシート状を示すような矩形で表されているが、図15(D)における熱膨張性耐火材は、シート状であってもパテ状
であっても構わず、シート状とシート状の組み合わせ、パテ状とパテ状の組み合わせ、シート状とパテ状との組み合わせのいずれであっても構わないし、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材が採用されていれば、2箇所に限らず3箇所目に3種類目の熱膨張性耐火材が採用されているものも本発明の範囲である。
【0066】
また、上述した熱膨張性耐火材の配置の例に加えて、管本体110のように、直管部116とこの直管部116の下方の縮径部118とを少なくとも備える場合においては、直管部116の高さ範囲において、径方向の異なる位置に2種類の熱膨張性耐火材が設けられていることが他の例として挙げられる。
さらに、これらの直管部116と縮径部118とに、熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材がそれぞれ設けられていることが他の例として挙げられる。たとえば、排水配管継手100がこのような例である。
【0067】
また、このような熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材は、互いに重なった部分を備えるように設けられていることが他の例として挙げられる。たとえば、排水配管継手200がこのような例である。
また、このような熱膨張率が異なる2種類の熱膨張性耐火材のうちの少なくとも1つは床スラブSに対応する位置に設けられていることが他の例として挙げられる。たとえば、排水配管継手100および排水配管継手200がこのような例であって、熱膨張性耐火シート712が床スラブSに阻害されて外層側へ膨張できずに径方向の内層側に膨張するしかなく、排水配管継手100または排水配管継手200の中空部を速やかに押しつぶして閉塞することができる。
【0068】
上述したように、このような熱膨張率が異なる熱膨張性耐火材は、シート状であって排水配管継手100が備える直管部116の周りに環状に設けられる環状形態、または、パテ状であって排水配管継手100が備えるくぼみ112または排水配管継手200が備えるくぼみ212に充填されて設けられる充填形態のいずれかの形態で設けられていることが好ましい。そして、このように、環状形態で設けられたシート状の熱膨張性耐火材、および、充填形態で設けられたパテ状の熱膨張性耐火材により、制振性を発現させることができる。
【0069】
<排水配管継手の施工方法:基本的に排水配管継手が樹脂製に限定される>
排水配管継手を、建築物の床スラブSの貫通孔に配置して施工する施工方法について以下に説明する。
この施工方法に好適に採用される排水配管継手は、排水配管継手100および排水配管継手200において、さらに以下の構造上の特徴を備える。以下においては、排水配管継手100を代表させて説明する。
【0070】
この排水配管継手100は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品でその全体が形成されて、建築物に施工された際に、床スラブSの貫通孔に配置される管本体110と、その床スラブSの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管520を接続する上立管接続部120と、その床スラブSの下方に突出し下階に排水を流出させる排水管(ここでは排水立管530)を接続する排水管接続部130と、その床スラブSの上方で排水横枝管510を接続する横枝管接続部140とを備えた排水配管継手であって、さらなる構造上の特徴として、上立管接続部120または横枝管接続部140は透明樹脂で形成され、管本体110の外周面の少なくとも一部に制振材714が管本体110と一体的に設けられ、上立管接続部120の受口部分または横枝管接続部140の受口部分は、その透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えない。このように、この排水配管継手100は、その施工前において、管本体110における少なくとも床スラブSの貫通孔内を通る部分の外周面の少なくとも一部に制振材714が管本体110と一体的に設けられ、上立管接続
部120または横枝管接続部140は透明樹脂で形成され、上立管接続部120の受口部分または横枝管接続部140の受口部分は、その透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えない。
【0071】
図5に示すように、この排水配管継手100は、上立管接続部120または横枝管接続部140は透明(無色透明も有色透明も含む)樹脂で形成され、施工前において上立管接続部120の受口部分または横枝管接続部140の受口部分にはその透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えていない。なお、ここでは、施工前において、上立管接続部120の受口部分以外または横枝管接続部140の受口部分以外には制振材714が設けられているが、これらの制振材714が全く設けられていなくて施工後に後付けで設けるようにしてもかまわない。
【0072】
このような構造上の特徴をさらに備えた排水配管継手100を、建築物の床スラブSの貫通孔に配置して施工する施工方法は、上立管接続部120と排水立管520との嵌合状態を上立管接続部120の透明樹脂を介して目視で認識して(認識しながら)排水立管520を上立管接続部120に接続したり、横枝管接続部140と排水横枝管510との嵌合状態を横枝管接続部140の透明樹脂を介して目視で認識して(認識しながら)、排水横枝管510を横枝管接続部140に接続したりする。
【0073】
そして、このように透明樹脂の受口部分を目視で確認して(認識しながら)、排水立管520を上立管接続部120に接続したり排水横枝管510を横枝管接続部140に接続したりして、さらに、排水配管継手100を床スラブSの貫通孔に配置が完了した後に、床スラブSの貫通孔と排水配管継手100との隙間にモルタルMを充填する。
さらに、このモルタルMを充填した後に、上立管接続部120の外周または横枝管接続部140の外周に、遮音部材を設ける。この遮音部材は上述してきた遮音カバー730とは(同じである場合も含むが基本的には)異なるものであって、名称通りの遮音性に加えて制振性および/または振動絶縁性を備える一般的な名称として記載されるものである。このような遮音部材の一例として、上述した制振材714を受口部分に設けたり、この制振材714に替えて/加えて上述したロックウールに代表される振動絶縁体720および/またはEPDM製等のゴムカバーで形成された遮音カバー730を設けたり、この制振材714に替えて/加えてロックウールとは異なるグラスウールの振動絶縁体および/または塩化ビニル製等のカバーで形成された遮音カバーを設けたりする。また、この場合において、上立管接続部120または横枝管接続部140の受口部分に(施工前に受口部分以外に制振材714が設けられていない場合には受口部分を含めて他の部分にも)制振材714を、この遮音部材の内層側に設けることも好ましい。
【0074】
この場合において、この遮音部材を排水配管継手100の外周側から被せるようにして設けるようにして施工されたり、この遮音部材に吸音材としてのグラスウールと遮音カバーとしての塩化ビニル製の遮音シートとを含むようにしてこのグラスウールからなる吸音材を(内層側の制振材714ではなく)外層側の塩化ビニル製の遮音カバーに固着(縫製、接着剤等で固定されている場合を含む)されるようにして施工されたりする。
【0075】
このように、排水配管継手100の施工前には透明樹脂で形成された上立管接続部120または横枝管接続部140の受口部分がその透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えていないために、上立管接続部120と排水立管520との嵌合状態または横枝管接続部140と排水横枝管510との嵌合状態を、その透明樹脂を介して目視で認識して排水管を接続することができるので、施工ミスを抑制することができる。また、ロックウールやグラスウール等を吸音材として含む遮音部材は、モルタルMの埋め戻し後に排水配管継手100に取り付けられるために、モルタルMの埋め戻し時に排水配管継手100の外径が大きくならずモルタルMを埋め戻しやすく、また、モルタルMの水分がロックウールやグ
ラスウール等に飛散してこれらを濡らしてしまう可能性を排除することができる。
【0076】
以上のようにして、排水配管継手100の排水管の接続部を透明樹脂で形成するとともに施工前において、それらの接続部における受口部分の透明樹脂を目視できる状態(受口部分の透明樹脂が目視できなくなる遮蔽物を備えていない状態)で排水配管継手100の施工を開始するために、目視で排水配管継手100と他の排水管との接続状態を目視で確認しながら接続できるので、施工ミスを抑制することができたり、モルタル埋め戻し後にロックウールやグラスウール等を吸音材として含む遮音部材が設けられるためにモルタルMを埋め戻しやすく、また、モルタルMの水分によりロックウールやグラスウール等を濡らしてしまう可能性を排除することができる。そして、この排水配管継手100の施工後は、上述したように、排水振動を極めて効果的に抑制することができたり、耐火性能を十分に発揮させることができたり、高い止水性能を発現できたりする。
【0077】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、建築物の床スラブSを貫通して設けられる排水配管継手に好ましく、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手であって、最適な延焼防止効果を発現し得る点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0079】
100、200 排水配管継手
110、210 管本体
112、212 くぼみ
114 旋回羽根
120 上立管接続部
130、230 排水管接続部
140 横枝管接続部
142 集水室
144、146、148 横枝管接続部材
520 (上階側)排水立管
530 (下階側)排水立管
540 (下階側)90度(コンパクト)ベント管
612 熱膨張性耐火材
700、800 外層部材
710 最内層
712 熱膨張性耐火シート
714 制振材
720、820 (耐火性無機繊維によって形成された)振動絶縁体
730 遮音カバー
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図2
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