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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】皮膚トリートメント装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240903BHJP
   B26B 19/42 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
B26B19/42
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023500022
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2021055821
(87)【国際公開番号】W WO2022003567
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】20183548.5
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508117514
【氏名又は名称】ブラウン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベールヴェルト
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ビールフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ダリボル ダディック
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ハイネマン
(72)【発明者】
【氏名】アロイス コープル
(72)【発明者】
【氏名】アネッテ フリードリヒ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0038673(US,A1)
【文献】特表2017-536913(JP,A)
【文献】特表2019-521521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0151238(US,A1)
【文献】特表2014-526345(JP,A)
【文献】米国特許第03756105(US,A)
【文献】特表2014-513619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0040235(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
B26B 19/40-19/42
A45D 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に基づく脱毛、又は光に基づく皮膚トリートメントを行う皮膚トリートメント装置(1)であって、
人間であるユーザの手に保持されるように構成されたハンドル部(20)と、
光源(41)を備える皮膚トリートメントユニット(10)と、皮膚接触面(301、3101、3111)を有する皮膚接触フレーム(30)とを有しており、前記皮膚接触フレーム(30)は、皮膚トリートメント領域(302)を少なくとも部分的に取り囲むトリートメントヘッド部(10)と、
前記皮膚接触フレーム(30)に結合し、超音波周波数で前記皮膚接触フレーム(30)の少なくとも一部分(310、311)の振動を生じさせ、前記皮膚接触面(301、3101、3111)に対して本質的に平行に前記皮膚接触フレーム(30)のスティックスリップ、又は静止摩擦を効果的に低減する、振動発生ユニット(31A)と、
を備える、皮膚トリートメント装置。
【請求項2】
前記振動発生ユニット(31A)は、圧電セラミックアクチュエータを備える、請求項1に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項3】
前記振動発生ユニット(31A)が生じさせる前記皮膚接触フレーム(30)の前記振動は、少なくとも直線往復振動成分を含む、請求項1又は2に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項4】
前記振動発生ユニット(31A)が生じさせる前記皮膚接触フレーム(30)の前記振動は、少なくとも回転軸の周りの振動回転成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項5】
前記振動の周波数(f)は、20kHzと1MHzとの間にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項6】
前記振動の振幅(A)は、0.1μmと5.0μmとの間にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項7】
前記振動発生ユニット(31A)、前記振幅(A)及び前記周波数(f)を互いに反比例して変化させるように制御される、請求項5及びを引用する皮膚トリートメント装置。
【請求項8】
前記皮膚トリートメント装置(1)は、前記振動の振幅(A)、又は周波数(f)の少なくとも一方を制御するための少なくとも1つのユーザ操作入力要素(22、23)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項9】
前記皮膚トリートメント装置(1)は、前記皮膚接触フレーム(30)に作用する力(F)を決定するためのセンサ(53A)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項10】
前記皮膚トリートメント装置(1)は、皮膚トリートメントパラメータに基づいて前記振動発生ユニット(31A)を制御するように構成された制御ユニット(50A)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項11】
前記皮膚トリートメントパラメータは、処置時間、又は皮膚に対する前記皮膚接触フレーム(30)の運動、又は前記皮膚接触フレーム(30)に作用する力である、請求項10に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項12】
前記制御ユニット(50A)は、前記振動発生ユニット(31A)の制御を前記皮膚トリートメントユニット(40)の制御と同期するように構成され、前記振動発生ユニット(31A)がオフに切り替えられるときに前記皮膚トリートメントユニット(40)がオンに切り替えられる、請求項10又は11に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項13】
前記皮膚トリートメント装置(1)は、前記振動発生ユニット(31A)の少なくとも1つの態様を制御し、前記振動発生ユニット(31A)をオン及びオフに切り替えるための少なくとも1つのユーザ操作入力要素(21)を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【請求項14】
前記皮膚トリートメント装置(1)は、前記皮膚トリートメント装置(1)の運動を決定するための少なくとも1つのセンサ(55A)を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の皮膚トリートメント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚トリートメントユニットと、動作中に皮膚に接触するように意図された皮膚接触フレームとを備えるトリートメントヘッド部を有する皮膚トリートメント装置に関し、特に、皮膚接触フレームが皮膚に接触している最中に移動させられるように意図された皮膚トリートメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光に基づく皮膚トリートメント装置などの皮膚トリートメント装置が知られており、例えば処置光の適用など、皮膚の処置が行われるときに、強い光がユーザの目にとって有害となる可能性があるため、そのような強い光が漏れることがないように、皮膚接触フレームを皮膚に密接に接触させなければならない。そのような装置は、皮膚接触フレームが皮膚に密接に接触していることを確実に確認する皮膚接触センサを備えることができる。皮膚の他のスポットに処置光を適用するために、皮膚トリートメント装置を皮膚から引き離し、別のスポットにおいて皮膚に密接に接触させることがあり得る。ユーザは、皮膚上で皮膚トリートメント装置を移動させること、すなわち皮膚接触フレームと皮膚との間の密接な皮膚接触を維持したままで装置を移動させることが、より便利であると考える可能性がある。皮膚上での皮膚接触フレームの運動を支援するために、皮膚と皮膚接触フレームとの間の摩擦を低減すべく、皮膚との摩擦係数が低い材料を選択することができ、或いは潤滑剤を皮膚に塗布することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、既知の皮膚トリートメント装置を改善し、特に、そのような皮膚トリートメント装置の使用の容易さを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様によれば、人間であるユーザの手に保持されるように構成されたハンドル部、皮膚トリートメントユニットと、皮膚接触面を有する皮膚接触フレームとを有しており、皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント領域を少なくとも部分的に取り囲むトリートメントヘッド部、及び皮膚接触フレームに結合し、超音波周波数で皮膚接触フレームの少なくとも一部分を振動させる振動発生ユニット、を有する皮膚トリートメント装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示は、例示的実施形態の詳細な説明及び図面の参照により、更に明瞭にされる。図中、
図1】例示的な皮膚トリートメント装置の概略図である。
図2】ユーザの皮膚に適用される例示的な皮膚トリートメント装置の概略図であり、皮膚トリートメント装置の構成要素が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示によれば、ハンドル部及びトリートメントヘッド部を有する皮膚トリートメント装置が提案され、トリートメントヘッド部は、皮膚トリートメントユニット及び皮膚接触フレームを有する。幾つかの実施形態において、トリートメントヘッド部は、ハンドル部に繰り返し着脱可能である。これに加え、或いは代えて、皮膚接触フレームは、幾つかの実施形態において、トリートメントヘッド部に繰り返し着脱可能である。皮膚接触フレームは、処置対象の皮膚に密接に接触するための皮膚接触面を有する。皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント領域を完全に取り囲むことができ、或いは皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント領域を部分的にのみ取り囲む1つ又は幾つかの皮膚接触フレーム要素を含んでもよく、例えば、皮膚接触フレームは、対向して配置されたバー要素を含んでもよい。更に、皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント領域を覆ってもよく、例えば、皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント装置によって皮膚へと適用される処置光に関して透明である皮膚接触フレーム要素を備えてよく、或いはそのような皮膚接触フレーム要素で構成されてよい。これは、幾つかの実施形態において、皮膚接触フレームが皮膚トリートメント領域を横切って延び、処置光のための窓を備えてよいことを意味する。皮膚トリートメントユニットは、1つ又は幾つかのかみそり刃など、皮膚の処置を実行するために皮膚に接触することができる1つ又は幾つかの皮膚トリートメント要素を備えてもよいが、皮膚接触フレームの皮膚接触面は、それ以外では、皮膚トリートメント装置の通常の動作の最中に処置対象の皮膚と接触するように意図された皮膚トリートメント装置の唯一の部分であってよい。これは、当然ながら、ハンドル部が、典型的には、動作中にユーザ少なくとも一方の手の皮膚と接触してよいことを、除外するものではない。
【0007】
皮膚トリートメント装置は、光に基づく脱毛装置、光に基づく皮膚トリートメント装置、手動かみそり、電気シェーバー、脱毛装置、皮膚クレンジング装置、皮膚マッサージ装置、又は皮膚角質除去装置のうちの1つとして実現されてよいが、これらは、可能な皮膚トリートメント装置の非限定的な列挙として理解されるべきである。皮膚トリートメントユニットは、処置光を適用するための光源、1つ又は幾つかのかみそり刃、脱毛ローラ、シェーバーヘッド、トリマー、マッサージヘッド、角質除去ヘッド、又はブラシのうちの少なくとも1つを備えてよい。
【0008】
皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント装置のうち、皮膚トリートメント装置の残りの部分に対する皮膚接触フレームの振動を可能にする浮動式にて取り付けられた部分であってよく、例えば、皮膚接触フレームは、皮膚トリートメント装置の取付部分に少なくとも1つの弾性要素によって取り付けられてよい。少なくとも1つの弾性要素は、コイルばねや板ばねなどのばね、或いは人工又は天然のゴム要素などの弾性要素であってよい。幾つかの実施形態においては、皮膚接触フレームの全体を駆動して振動させるよりもむしろ、皮膚接触フレームが、駆動されて振動する少なくとも1つの部分を備える。皮膚接触フレームは、例えば3つ、4つ、又は5つの部分など、駆動されて振動する2つ以上の部分を備えることができる。異なる部分は、異なる種類の振動へと駆動されてよく、例えば、異なる部分が異なる周波数及び/又は振幅で振動してもよく、或いは振動が異なる方向を有してもよい。異なる部分を、振動発生ユニットの異なる振動発生要素に結合させることができる。皮膚接触フレームが取り外し可能である上述のような幾つかの実施形態において、振動発生ユニットは、皮膚接触フレームと一緒に取り外し可能である。
【0009】
対向する表面にて互いに滑る2つの物体が、継続的に滑るのではなく自然発生的なけいれん様の運動を生じるいわゆるスティックスリップ現象(スリップスティック現象、又は単にスティックスリップとしても知られる)に直面する可能性が、一般に知られている。表面の互いの粘着と互いの滑りとが交互に繰り返されるこの現象は、2つの表面の間の摩擦を静止摩擦と動摩擦とに分離することによって説明することができると考えられる。静止摩擦係数は典型的には動摩擦係数よりも大きいが、加えられた力が静止摩擦に打ち勝つことができ、全体的な摩擦が動摩擦へと減少することで、2つの物体間の移動速度の急な増加が生じ得る。薄肉のワイングラス等の縁に沿って濡れた指をこすることによるグラスハープの演奏が、スティックスリップ現象の一例である。
【0010】
本開示によれば、皮膚接触フレームの少なくとも一部分を振動発生ユニットに結合させて、皮膚接触フレームの少なくとも一部分又は皮膚接触フレーム全体の高周波振動、特に、0.1μm~5μmの振幅を有する微小振動を引き起こすことが提案される。皮膚接触フレームの一部分又は皮膚接触フレーム全体の振動は、2つの表面(すなわち、皮膚表面と、皮膚接触フレームの少なくとも一部分又は皮膚接触フレーム全体の皮膚接触面と)の間の摩擦が本質的に常に動摩擦係数によって支配されるように、皮膚表面がその慣性ゆえに皮膚接触フレームの一部分又は皮膚接触フレーム全体のこの振動に追従できないような振動であるべきである。皮膚接触フレームの全体、すなわち皮膚接触フレームの皮膚接触面の全体について上述の効果を達成するために、皮膚接触フレームの一部分(例えば、皮膚接触フレームの皮膚接触面の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%に相当する部分)を振動させるだけで充分であり得る。
【0011】
振動は、少なくとも直線往復成分及び/又は振動回転成分を有することができる。振動は、皮膚接触フレームと皮膚との間の接触面に平行なベクトル成分を有するべきであり、この成分は、特に、振動全体の少なくとも約50%、或いは少なくとも約60%、70%、80%、80%、90%、95%、又は技術的に可能な限り約100%の近くであってよい。振動回転又は偏心振動回転の場合、回転軸は、皮膚に対して少なくとも約45度、或いは少なくとも約50度、60度、70度、80度、85度、又は約90度の角度を有してよい。皮膚に対する角度は、当然ながら、皮膚接触フレームの皮膚接触面によって定められる平面又はわずかに湾曲した表面に対する角度によって与えられる。
【0012】
振動発生ユニットは、圧電アクチュエータ、特に、圧電セラミックアクチュエータによって実現されてよく、圧電セラミック材料は、何を振動させるかに応じて、それぞれ皮膚接触フレームの少なくとも一部分又は皮膚接触フレームの全体に堅固に接続されてよい。幾つかの独立した皮膚接触フレーム要素が皮膚接触フレームを協働して形成する場合、皮膚接触フレーム要素の各々に、該当の振動発生要素、例えば圧電セラミックアクチュエータを結合させ、特に、堅固に結合させることができ、これらの振動発生要素が振動発生ユニットを協働して形成する。
【0013】
皮膚接触フレームの皮膚接触面と皮膚表面との間の静止摩擦は、皮膚接触フレームの少なくとも一部分の振動によって効果的に低減されるが、これは、皮膚接触フレームの皮膚接触面の巨視的構造又は微視的テクスチャ、或いは皮膚及び/又は皮膚接触フレームの皮膚接触面に塗布される潤滑剤など、2つの表面の間の摩擦を低減するための他の手段も同様に用いられることを、除外するものではない。後者の場合、皮膚トリートメント装置は、皮膚に潤滑剤を塗布するように構成されてよい。これを可能にするために、皮膚接触フレームは、潤滑剤を皮膚へと適用することができる少なくとも1つの潤滑剤送出オリフィスを備えることができる。
【0014】
振動発生ユニットは、20kHz~1MHzの間(すなわち、超音波範囲の周波数)、特に、20kHz~100kHzの間の周波数、例えば約30kHz、40kHz、50kHz、60kHz、70kHz、80kHz、90kHz、又は上記の範囲内の任意の他の周波数を有する振動を発生させるように構成されてよい。皮膚接触フレームの振動の振幅は、0.1μm~5.0μmの間(すなわち、微小振動であるとして特徴付けることができる振動)、特に、0.2μm~2.0μmの間、例えば約0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm又は1.9μm、或いは上述の範囲内の任意の他の値であってよい。皮膚接触フレームと皮膚とのスティックスリップを効果的に低減するために必要な振動の振幅Aが、周波数fに反比例する、すなわち、A≒1/fであることが明らかになった。例えば、1MHzなどの高い周波数において、0.1μmの振幅を適用することができ、20kHzなどの低い周波数において、5.0μmの振幅を適用することができる。30kHzの周波数において、1.0μmの振幅を適用することができる。
【0015】
皮膚トリートメント装置は、以下で更に説明されるように、皮膚トリートメント装置の少なくとも1つの態様又は種々の態様を制御するための制御ユニットを備えることができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、皮膚トリートメント装置は、振動発生ユニットの少なくともオン又はオフの切り替え、並びに/或いは振動発生ユニットが生じさせる振動の振幅又は周波数の少なくとも一方を制御するために、ボタン、スイッチ、タッチパネル、又はタッチ感応ディスプレイなどの少なくとも1つのユーザが操作することができる入力又はインタフェース要素を備える。振動発生ユニットをオン又はオフに切り替えるユーザの一般的な関心が存在し得る一方で、皮膚接触フレームの振動をオフに切り替えることは、特に、(静止摩擦係数の急な増大に起因して)皮膚への皮膚接触フレームの「接着」をもたらすことができ、従って、この接着は、例えば美肌、ざ瘡の処置、或いは一時的又は永続的な脱毛のための処置光の印加などの皮膚の処置の適用のために、選択されたスポットに皮膚接触フレームを位置させ続ける上でユーザを支援することができる。上述のユーザ操作入力要素は、制御ユニットに結合されてよい。
【0017】
幾つかの実施形態において、制御ユニットは、少なくとも1つの皮膚トリートメントパラメータに基づく振動発生ユニットのオン又はオフへの切り替えの少なくとも一方、並びに/或いは振動発生ユニットが発生させる振動の振幅又は周波数の少なくとも一方を制御するように構成される。皮膚トリートメントパラメータは、処置時間(すなわち、開始の事実から現在の時点までの処置の継続時間)、皮膚接触フレームに印加される力、或いは皮膚トリートメント装置の運動又は速さ若しくは速度、特に、皮膚に対する皮膚接触フレームの運動であってよい。従って、皮膚トリートメント装置は、クロック機能、皮膚接触フレームに対して印加される力を測定するための力センサ、及び/又は皮膚トリートメント装置の運動、特に、皮膚に対する皮膚接触フレームの運動を決定するための運動センサを備えることができる。力センサの場合、力センサは、静電容量式力センサによって実現されてよい。運動センサの場合、運動センサは、少なくとも1つの慣性センサ(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、及び/又は磁気計)、及び/又は光学式コンピュータマウスから一般に知られているような光学式センサによって実現されてよい。
【0018】
2つの表面の間の静止摩擦は、一方の表面を他方の表面に押し付ける力によって増大する傾向があるため、制御ユニットは、皮膚接触フレームへの印加力に応じて振幅又は周波数のうちの少なくとも1つを変化させて、例えば印加力の値にスティックスリップ防止効果を適応させるように構成されてよい。更に、制御ユニットは、皮膚接触フレームへの印加力がしきい値を超えて増加したときに、ユーザが現在のスポットにおいて皮膚の処置を行うことを望んでいると推定して、振動発生ユニットをオフに切り替えるように構成されてもよい。振動がオフに切り替えられると、上述のとおりの「接着効果」が生じ、現在のスポットに処置を施すことを可能にする。
【0019】
制御ユニットは、皮膚接触フレームが以前の処置位置と現在の位置との間で特定の距離だけ移動させられた場合に、振動発生ユニットをオフに切り替えるように構成されてよい。更に、制御ユニットは、その後に現在のスポットにおいて皮膚の処置を提供するために皮膚トリートメントユニットの皮膚トリートメント要素をオンに切り替えるように構成されてよく、例えば、皮膚トリートメント要素は、処置光を適用するための光源であってよい。一般に、制御ユニットは、振動発生ユニット及び皮膚トリートメント要素の動作を同期させるように構成されてよい。
【0020】
図1が、フラッシュランプとして実現される皮膚トリートメント要素41を備える皮膚トリートメントユニット40から処置光を放射する光に基づく皮膚トリートメント装置として実現される例示的な皮膚トリートメント装置1の概略図である。皮膚トリートメント装置1は、トリートメントヘッド部10と、ハンドル部20とを備える。トリートメントヘッド部20は、皮膚接触面301を有する皮膚接触フレーム30を備え、皮膚接触フレーム30は、ここでは、図示の実施形態においては皮膚トリートメント要素41からの光をユーザの皮膚へと適用できる光出口窓として実現される皮膚トリートメント領域302を完全に取り囲む。
【0021】
図1に示される皮膚接触フレーム30は、2つの部分310及び311を含み、部分310は、皮膚接触フレームの皮膚接触面301の全体のうちの一部分を形成する皮膚接触面3101を有し、部分311は、同様の皮膚接触面3111を有する。少なくとも1つのモードにおいて、部分310及び311を含む皮膚接触フレーム30の全体を、振動発生ユニットによって駆動して振動させることができ、少なくとも1つの他のモードにおいては、部分310及び311の一方又は両方だけが駆動されて振動する。少なくとも1つのモードにおいて、皮膚接触フレームは、部分310或いは部分310及び311とは異なるように駆動されて振動する。図1の実施形態は、限定ではないと理解される。
【0022】
ここで、皮膚トリートメント装置1は、装置全体のためのオン/オフボタンとして実現されてよい第1のユーザ操作入力要素21と、振動発生ユニットのためのオン/オフボタンとして実現されてよい第2のユーザ操作入力要素22とを備える。第3のユーザ操作入力要素23を、振動発生ユニットによって引き起こされる振動の周波数を変化させるためのスライダとして実現することができる。
【0023】
図2は、例示的な皮膚トリートメント装置1A及びその幾つかの構成要素の概略図である。皮膚トリートメント装置1Aは、トリートメントヘッド部10Aと、ユーザの手によって便利に把持できるように配置されてよいハンドルハウジング21Aを有するハンドル部20Aとを備える。皮膚トリートメント装置1Aは、ここでは皮膚トリートメント装置1Aの動作の最中に処置対象の皮膚表面90Aに接触しているように図示されている皮膚接触フレーム30Aを備え、皮膚接触フレーム30Aは、振動発生ユニット31Aに結合している。更に、皮膚トリートメント装置1Aは、皮膚トリートメント要素41Aと皮膚トリートメントユニットハウジング42Aとを備える皮膚トリートメントユニット40Aを備え、種々のユーザ操作入力要素51A、52A、センサ53A、55A、及びインジケータ要素54Aに結合した制御ユニット50Aを更に備える。
【0024】
図示の例において、皮膚接触フレーム30Aは、弾性要素32Aによってトリートメントヘッド部10Aの取付構造11Aに浮動式にて取り付けられる。皮膚接触フレーム30Aは、皮膚トリートメント領域302Aを取り囲み、この皮膚トリートメント領域を介して、皮膚の処置、ここでは皮膚トリートメント要素41Aによって放射される処置光の適用を行うことができる。振動発生ユニット31Aは、圧電セラミックアクチュエータとして実現されてよい。振動発生ユニット31Aの動作は、制御ユニット50Aによって制御される。振動発生ユニット31Aは、ここでは、両矢印Vによって示されるように、皮膚接触フレーム30Aの皮膚接触面301Aに本質的に平行に、皮膚接触フレーム30Aの全体を振動させることができる。振動は、周波数f及び振幅Aを特徴とすることができる。振動発生ユニット31Aは、特定の範囲内の周波数及び振幅の非決定論的な変化を有する振動を引き起こしてもよいため、これを限定として理解すべきでない。皮膚トリートメント装置1Aは、ここでは、皮膚トリートメント装置1Aをオン及びオフに切り替えるための第1のユーザ操作入力要素51Aを備える。ここで、皮膚トリートメント装置1Aは、静止摩擦の低減の効果を最適化し、更には/或いは動作をユーザの好みにカスタマイズするために、ユーザが振動発生ユニット31Aによって引き起こされる振動の周波数f及び/又は振幅Aを変更することを可能にできる第2のユーザ操作入力要素52Aを更に備える。幾つかの実施形態において、周波数f又は振幅Aのうちの一方の変化は、周波数f又は振幅Aのうちの他方の反比例の変化をもたらすことができる。
【0025】
皮膚トリートメント装置1Aは、ここでは、皮膚接触フレーム30Aを皮膚表面90Aに対して押し付ける力Fを測定するための力センサ53Aを備える。皮膚接触フレーム30Aの皮膚接触面301Aと皮膚表面90Aとの間の静止摩擦が皮膚上の皮膚接触フレーム30Aの粘着又は接着をもたらすように、ユーザが、しきい値を上回る力Fを加えることで、制御ユニット50Aによって振動発生ユニット31Aをオフに切り替えることができる。ユーザが、皮膚上で皮膚トリートメント装置1Aを更に移動させることが容易には不可能であるため、皮膚の処置が、ユーザが選択したスポットにおいて実行される。これに加え、且つ/又は代えて、制御ユニット50Aを、例えば、皮膚トリートメント領域49Aが皮膚上で以前に処置された皮膚領域に隣接する皮膚領域に移動したと運動センサ55Aが判定したときに、振動発生ユニット31Aを自動的に停止させるように構成してもよい。少なくとも1つのインジケータ要素54Aを、例えば皮膚の処置が現時点において実行中であるという情報をユーザに示すために、ハンドル部のハウジング21A上に配置することができる。
【0026】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
図1
図2