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特許7549126効率的なバルク未溶融粉末除去システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】効率的なバルク未溶融粉末除去システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/68 20210101AFI20240903BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240903BHJP
   B22F 10/73 20210101ALI20240903BHJP
   B22F 12/20 20210101ALI20240903BHJP
   B22F 12/37 20210101ALI20240903BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240903BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240903BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240903BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240903BHJP
【FI】
B22F10/68
B22F10/28
B22F10/73
B22F12/20
B22F12/37
B29C64/153
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023508550
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2021046081
(87)【国際公開番号】W WO2022036304
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/065,859
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ホイ,アーレン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キャシー,ターナー アシュビー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイラン,アレクサンダー ジェイ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196205(JP,A)
【文献】特開2017-125255(JP,A)
【文献】特開2018-039252(JP,A)
【文献】特表2017-536259(JP,A)
【文献】特表2018-529547(JP,A)
【文献】特表2020-509234(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111497247(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/28,10/68,10/73,12/20,12/37
B29C 64/153,64/35
B33Y 10/00,30/00,40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)物品を製造するための付加製造システムであって、
粉末材料の溶融または結合によって層ごとに前記物品を製造するように構成されたプリントエンジン;
粉末ビンおよび造形プレートを含む造形ボックス;
製造後粉末除去装置;
搬送機構;および
コントローラ
を備え、
前記製造後粉末除去装置は、
内部レセプタクルキャビティを画定する回転フレーム;
対応する複数のアクチュエータに連結された複数のクランプ;
リフト装置に連結されたクランププレート;
前記クランププレートに取り付けられた撹拌装置
を含み、
前記コントローラは、以下:
(1)前記搬送機構を動作させ、前記造形ボックスを前記内部レセプタクルキャビティに搬送する工程;
(2)前記複数のアクチュエータを動作させ、前記造形ボックスを複数のクランプと係合させて、前記造形ボックスを前記回転フレームに固定する工程;
(3)前記回転フレームを動作させ、未溶融粉末が前記造形ボックスから出始めるまで該造形ボックスを回転させる工程;および
(4)前記撹拌装置を動作させ、前記造形ボックスからの未溶融粉末の注入を促進する工程
を実行するように構成される、
ことを特徴とする、付加製造システム。
【請求項2】
前記プリントエンジンが、エネルギービームの作用によって前記粉末材料の層を溶融および融合するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項3】
前記工程(1)の前に、前記搬送機構は、前記造形ボックスを前記プリントエンジンから冷却ステーションに搬送し、前記工程(1)は、前記造形ボックスを前記冷却ステーションから前記内部レセプタクルキャビティに搬送する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項4】
前記複数のクランプが、前記工程(2)において前記造形ボックスを垂直にクランプするための上側クランプを含むことを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項5】
前記複数のクランプが、前記工程(2)中に前記造形ボックスを水平にクランプするための複数の側方クランプを含むことを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項6】
前記複数のクランプが、前記工程(2)中に垂直軸および横軸に沿って前記造形ボックスをクランプするための上側クランプおよび少なくとも1つの側方クランプを含むことを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項7】
前記リフト装置が、前記クランププレートを上昇させて該クランププレートを前記造形プレートに係合させることを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項8】
前記粉末ビンが、前記造形プレートを前記粉末ビンに固定するための少なくとも1つのラッチを含み、前記リフト装置の動作により前記少なくとも1つのラッチが係合解除されることを特徴とする、請求項7に記載の付加製造システム。
【請求項9】
前記工程(4)の前に、前記リフト装置は、前記粉末ビンから前記造形プレートを取り出すように移動することを特徴とする、請求項7に記載の付加製造システム。
【請求項10】
前記工程(1)および(2)の間、前記回転フレームは、前記造形ボックスの開放頂部が上を向く0度の回転基準位置にあり、前記工程(3)の間、前記回転フレームは、中心軸の周りで前記基準位置から80度回転されることを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項11】
前記撹拌装置の動作が、主に垂直軸に沿って行われることを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項12】
前記工程(4)の間、前記回転フレームは、Y軸に平行な中心軸に沿って前後に回転し、未溶融粉末除去をさらに促進することを特徴とする、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項13】
3D物品を製造する方法であって、以下:
粉末材料の溶融または結合によって層ごとに前記3D物品を製造するように構成されたプリントエンジン;
粉末ビンおよび造形プレートを含む造形ボックス;
製造後粉末除去装置;
搬送機構
を提供する工程であって、
前記製造後粉末除去装置は、
内部レセプタクルキャビティを画定する回転フレーム;
対応する複数のアクチュエータに連結された複数のクランプ;
リフト装置に連結されたクランププレート;
前記クランププレートに取り付けられた撹拌装置
を含む、工程、および、
(1)前記搬送機構を動作させ、前記造形ボックスを前記内部レセプタクルキャビティに搬送する工程;
(2)前記複数のアクチュエータを動作させ、前記造形ボックスを複数のクランプと係合させて、前記造形ボックスを前記回転フレームに固定する工程;
(3)前記回転フレームを動作させ、未溶融粉末が前記造形ボックスから出始めるまで該造形ボックスを回転させる工程;および
(4)前記撹拌装置を動作させ、前記造形ボックスからの未溶融粉末の注入を促進する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記複数のクランプが、前記工程(2)において前記造形ボックスを垂直にクランプするための上側クランプを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のクランプが、前記工程(2)中に前記造形ボックスを水平にクランプするための複数の側方クランプを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(2)の後であるが前記工程(3)の前に、前記リフト装置が、前記クランププレートを上昇させて造形プレートを前記クランププレートに係合させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(4)の前に、前記リフト装置は、前記粉末ビンから前記造形プレートを取り出すように移動することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(4)の前に、前記リフト装置は、前記クランププレートを前記造形プレートとのクランプ係合に移動させ、次いで再び移動させて前記粉末ビンから前記造形プレートを取り出すことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
3次元(3D)物品を製造するための付加製造システムであって、
粉末材料の溶融または結合によって層ごとに前記物品を製造するように構成されたプリントエンジン;
粉末ビンおよび造形プレートを含む造形ボックス;
製造後粉末除去装置;
搬送機構;および
コントローラ
を備え、
前記製造後粉末除去装置は、
内部レセプタクルキャビティを画定する回転フレーム;
上側クランプおよび少なくとも1つの側方クランプを含み、アクチュエータに個々に連結された複数のクランプ;
リフト装置に連結されたクランププレート;および
前記クランププレートに取り付けられた撹拌装置
を含み、
前記コントローラは、以下:
(1)前記搬送機構を動作させ、前記造形ボックスを前記内部レセプタクルキャビティに搬送する工程;
(2)前記複数のクランプを動作させ、前記造形ボックスを前記回転フレームに固定する工程;
(3)前記リフト装置を動作させ、前記クランププレートを前記造形プレートに係合およびクランプする工程;
(4)前記回転フレームを動作させ、未溶融粉末が前記造形ボックスから出るように該造形ボックスを回転させる工程;
(5)前記リフト装置を動作させ、前記粉末ビンから前記造形プレートを取り出す工程;
(6)前記撹拌装置を動作させ、前記造形プレートを攪拌して前記造形ボックスからの未溶融粉末の注入を促進する工程;および
(7)前記攪拌装置を動作させて前記造形プレートを攪拌するのと同時に、前記回転フレームを動作させて前記造形ボックスを前後に振動させ、未溶融粉末の除去をさらに促進する工程
を実行するように構成される、
ことを特徴とする、付加製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府権利の陳述
本発明は、米国陸軍研究所(U.S.Army Research Laboratory)によって授与された許可番号W911NF-18-9-000.3および国立製造科学センター(National Center for Manufacturing Sciences)(NCMS)によって授与されたAMMPコンソーシアムメンバー許可番号201935の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本非仮特許出願は、2020年8月14日に出願されたAhren Hoyらによる「EFFICIENT BULK UNFUSED POWDER REMOVAL SYSTEM AND METHOD」と題された米国仮特許出願第63/065,859号に対する優先権の利益を主張する;その内容は、U.S.C.119(e)号の利益の下で参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、粉末材料を選択的に溶融または結合することによって3次元(3D)物品を層ごとに製造するための装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、材料で充填されたときに手作業で取り扱いおよび持ち上げるには概して大きすぎかつ重すぎる造形ボックスから未溶融または未結合の粉末を効率的に除去するための脱粉末(de-powdering)システムに関する。
【背景技術】
【0004】
3次元(3D)プリントシステムは、プロトタイピングならびに高価値および/またはカスタマイズされた物品の製造などの目的のために急速に使用が増加している。1つのタイプの3次元プリンタは、層ごとのプロセスを利用して、粉末材料から3次元製造物品を形成する。粉末材料の各層は、レーザ、電子、または粒子ビームなどのエネルギービームを使用して選択的に溶融されるか、または結合剤マトリクスと組み合わされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物理的に大きな物品を製造することができる大容量システムを有することが望まれている。そのようなシステムに関する1つの課題は、作製が完了した後に未溶融または未結合の粉末を除去するための効率的かつ安全な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様では、3次元(3D)物品を製造するための付加製造システムは、少なくともプリントエンジンと、製造後粉末除去装置と、搬送機構と、コントローラとを含む。製造後除去装置は、内部レセプタクルキャビティを画定する回転フレームと、対応する複数のアクチュエータに連結された複数のクランプと、リフト装置に連結されたクランププレートと、クランププレートに取り付けられた撹拌装置とを含む。コントローラは、以下の工程を実行するように構成される:(1)搬送機構を動作させ、造形ボックスを内部レセプタクルキャビティに搬送する。(2)複数のアクチュエータを動作させ、造形ボックスを複数のクランプと係合させて、造形ボックスを回転フレームに固定する。(3)回転フレームを動作させ、未溶融粉末が造形ボックスから出始めるまで造形ボックスを回転させる。(4)撹拌装置を動作させ、造形ボックスからの未溶融粉末の注入を促進する。
【0007】
開示されたシステムは、3D物品からの未溶融粉末の効率的かつ完全に自動化されたバルク除去を可能にする。クランプの動作は、造形ボックスの非常に滑らかな回転を確保する。3D物品および未溶融粉末の重量が大きいため、大型の金属粉末造形ボックスにとって適切なクランプが特に重要である。撹拌装置をクランププレートに直接取り付けることにより、造形プレートを通して伝達される撹拌エネルギーの割合が最大になり、最小の撹拌エネルギーで粉末の除去が促進される。
【0008】
一実装形態では、プリントエンジンは、エネルギービームを使用して粉末材料の層を溶融および融合するように構成される。エネルギービームは、レーザ、電子ビーム、または粒子ビームとすることができる。
【0009】
別の実装形態では、搬送機構は、プリントエンジンから冷却ステーションに造形ボックスを搬送する。工程(1)は、造形ボックスを冷却ステーションから回転フレームの内部レセプタクルキャビティに搬送する工程を含む。
【0010】
さらに別の実装形態では、複数のクランプは、工程(2)中に垂直軸および横軸に沿って造形ボックスをクランプするための上部クランプおよび少なくとも1つの側方クランプを含む。側方クランプは、対向する横方向から係合する側方クランプを含むことができる。複数の軸に沿ったクランプを提供することは、非常に重い造形ボックスを支持および回転させる場合に有利である。
【0011】
さらなる実装形態では、工程(4)の前に、リフト装置は、クランププレートを造形プレートとのクランプ係合に移動させ、次いで、粉末ビンから造形プレートを取り出すために再び移動させる。これにより、撹拌装置の動作中に造形プレートと粉末ビンとの間に振動防止が提供される。ワイヤロープは、造形プレートと回転フレームとの間の振動防止を提供することができる。振動防止により、振動出力レベルの要求が低減される。振動防止および低減された振動出力レベルは、NVH(ノイズ、振動、およびハーシュネス)を低減し、これは様々な理由で有利である。これは、造形ボックス、回転フレーム、および粉末除去装置の他の構成要素を含む製造システムの構造構成要素への振動による損傷を低減する。これはまた、プリントエンジンなどの製造システムの他の構成要素への振動エネルギー伝達を低減する。粉末堆積およびビームシステムはいずれも振動に敏感である。
【0012】
さらなる実装形態では、工程(1)および(2)の間、回転フレームは、造形ボックスの開放頂部が上を向く0度の回転基準位置にある。工程(3)の間、回転フレームは、中心軸の周りで基準位置から約180度回転される。
【0013】
別の実装形態では、回転フレームは、中心軸に沿って前後に回転して、工程(4)の間の未溶融粉末除去をさらに促進する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】3次元(3D)物品を製造するための付加製造システムの一実施形態の概略ブロック図である。
図2】3Dプリントエンジンの概略図である。図示の実施形態では、3Dプリントエンジンは、金属粉末層の層ごとの溶融融合によって3D物品を作製する。
図3A】造形ボックスの一実施形態を概ね下向きに見た等角図である。この図および続く図では、相互に直交する軸X、Y、およびZが使用される。X軸およびY軸は、概して、横方向または水平方向である。Z軸は、概して垂直であり、重力基準と位置合わせされる。「概して」とは、方向が設計によるものであるが、製造公差内で変動し得ることを想定する。
図3B】造形ボックスの一実施形態を概ね上向きに見た等角図である。
図4】粉末ビンおよび造形プレートを含む造形ボックスの一部分の等角図である。造形プレートを粉末ビン内に固定する下側ラッチが強調される。
図5】バルク粉末除去装置内に回転可能に取り付けられた回転フレームの等角図である。
図6】YZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの断面等角図である。
図7】造形ボックスからバルク未溶融粉末を除去するための方法の一実施形態のフローチャートである。
図8A】YZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。回転フレームは、造形ボックスが装填された内部レセプタクルキャビティを画定する。図示の実施形態では、造形ボックスは、横方向Y軸に平行な方向に装填されている。
図8B】XZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。回転フレームは、「回転基準」またはゼロ度位置にあり、造形ボックスの開放頂部は+Z方向で上を向いている。回転フレームは、横方向Y軸に平行な中心軸上で回転するように構成される。
図8C】垂直YZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。図8Aと比較すると、上部クランプが下降し、造形ボックスの頂部と垂直クランプ係合している。上側クランプは、Z軸に沿って下降し、Z軸に沿ったクランプを提供する。
図8D】横方向XY平面に平行に水平切断された等角断面図である。回転フレームは回転基準位置にある。側方クランプは、内向きに延在し、造形ボックスと側方クランプ係合している。側方クランプは、横方向X軸に沿って移動し、横方向X軸に沿ってクランプを提供する。
図8E】XZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。回転フレームは回転基準位置にある。図8Bと比較すると、造形ボックスは垂直方向および横方向にクランプされており、クランププレートは造形プレートにクランプされている。クランププレートは、リフト装置によって造形プレートと係合するようにZ軸に沿って移動される。
図8F】XZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。図8Eと比較すると、回転フレームは、基準位置からY軸に平行な中心軸の周りに180度回転される。中心軸は、回転フレームの回転軸として定義され、概して、XZ平面に対して回転フレームの中心にある。
図8G】XZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。図8Fと比較すると、クランププレートは、上向き(+Z)方向に粉末ビンから造形プレートを取り出している。リフト装置は、クランププレートをZ軸に沿って持ち上げて造形プレートを取り出すように動作している。
図8H】粉末ビン、造形プレート、造形プレートクランプ、および造形プレートに取り付けられた3D物品を示す概略側断面図である。造形ボックスの開放側が下向きになるように、配向は基準位置から180度である。クランププレートは、粉末ビンに対して取り出された位置で造形プレートを支持する。
図8I】粉末ビン、造形プレート、および造形プレートクランプの等角図である。造形プレートクランプは、粉末ビンに対して取り出された位置で造形プレートを支持している。取り出し位置では、造形プレートは粉末ビンから振動防止される。さらに、造形プレートを回転フレームから少なくとも部分的に振動防止する特徴が示されている。
図8J】XZ平面に平行に垂直切断された回転フレームの側断面図である。図8Gと比較すると、回転フレームは、回転基準位置に対して90~270度で回転振動している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、3次元(3D)物品100(図8H)を製造するための付加製造(AM)システム2の一実施形態の概略ブロック図である。システム2は、プリントエンジン4、冷却ステーション6、バルク粉末除去装置またはステーション8、微粉末除去装置またはステーション10、搬送装置12、ガス処理システム14、およびコントローラ16を少なくとも含む複数の構成要素を含む。様々な構成要素4~14は、それらの内部機能を制御するための別個の「下位レベル」コントローラを個々に有することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、中央コントローラとして機能することができる。以下の説明では、コントローラ16は、構成要素4~14の外部または内部に存在し得る全てのコントローラを含むと見なされる。コントローラ16は、AMシステム2の内部にあってもよく、AMシステム2の外部にあってもよく、またはAMシステム2の内部および外部の両方にある部分を含んでもよい。
【0016】
搬送装置12は、製造される3D物品の作製、冷却、および脱粉末を含む順序で、様々な構成要素4~10を介して造形ボックス18を搬送するためのものである。ガス処理システム14は、構成要素4~10の環境を制御するためのものである。一実施形態では、ガス処理システムは、構成要素4~10を排気し、次いで、造形ボックス18を非酸化性環境内に維持するために、アルゴンまたは窒素などの非酸化性ガスで再充填するように構成される。
【0017】
コントローラ16は、ソフトウェア命令を記憶する非一時的または不揮発性の情報記憶デバイスに連結されたプロセッサを含む。プロセッサによって実行されると、ソフトウェア命令は、システム2のいずれかまたは全ての部分を動作させる。例示的な実施形態では、作製、冷却、脱粉末、および他の機能は、コントローラ16によって完全に自動化された方法で実行することができる。
【0018】
コントローラ16は、以下のような工程を実行するように構成される:(1)ガス処理システム14を動作させ、構成要素4~10を排気し、再充填する、(2)プリントエンジン4を動作させ、造形ボックス18内に3D物品100を作製する、(3)搬送装置12を動作させ、造形ボックス18(現在は3D物品および未溶融粉末を含む)を冷却ステーション6に搬送する、(4)適切な冷却時間の後、搬送装置を動作させ、造形ボックス18を傍系粉末除去ステーション8に搬送する、(5)バルク粉末除去装置8を動作させ、造形ボックス18から未溶融粉末の大部分を除去する、(6)搬送装置12を動作させ、造形ボックス18を微粉末除去ステーション10に搬送する。微粉末除去ステーション10において、残留する未溶融粉末は、自動的にまたは手動で除去される。その間ずっと、コントローラ16は、ガス処理システム14を動作させ、必要に応じて構成要素4~10内の非酸化性ガス環境を維持する。
【0019】
AMシステム2は、検査ステーションまたは造形ボックス18からの3D物品100の取り出しを容易にするためのステーションなどの他の構成要素を有することができる。追加の構成要素は、手動で動作させることができ、またはコントローラ16の制御下におくことができる。
【0020】
図2は、3Dプリントエンジン4の一実施形態の概略図である。図2の説明においておよび以降の図について、互いに直交する軸X、Y、およびZを用いることができる。軸XおよびYは、概して水平である横軸である。軸Zは、重力基準と概ね位置合わせされた垂直軸である。「概して」とは、設計によってそうであることを意図するが、製造または他の公差により変化し得る。
【0021】
造形ボックス18は、造形プレート22を収容する粉末ビン20を含む。造形プレート22は上面24を有し、垂直位置決めシステム26に機械的に連結される。造形ボックス18は、分配された金属粉末(図示せず)を収容するように構成される。造形ボックス18は、ハウジング30によって囲まれたチャンバ28内に収容される。
【0022】
金属粉末ディスペンサ32は、造形プレート22の上面24上に、または以前に分配された金属層上に金属粉末の層を分配するように構成される。図示の実施形態では、第2の粉末ディスペンサ34は、別の金属または支持材料などの追加の粉末を分配するように構成される。粉末ディスペンサ32および34は、それぞれ粉末供給部36および38から粉末を受け取るように構成される。
【0023】
プリントエンジン4は、分配された金属粉末の層を選択的に溶融するためのビーム42を生成するように構成されたビームシステム40を含む。例示的な実施形態では、ビームシステム40は、少なくとも100ワット、少なくとも500ワット、または約1000ワット以上の光パワー層を個々に有する放射ビームを生成するための複数の高出力レーザを含む。ビームシステム40は、金属粉末の層の上面と一致する造形平面を横切って放射ビームを個別に操向するための光学系を含むことができる。代替的な実施形態では、ビームシステム40は、電子ビーム、粒子ビーム、または異なるビームタイプのハイブリッド混合を生成することができる。
【0024】
コントローラ16は、プリントエンジン4を動作させて3D物品を作製するように構成することができる:(1)垂直位置決めシステム26を動作させ、造形プレート22の上面24または以前に堆積された粉末の層を、1つの粉末層厚さだけ造形面の下に配置する、(2)ディスペンサ32を動作させ、上面24上に金属粉末の層を分配する、(3)ビームシステムを動作させ、分配されたばかりの金属粉末の層を選択的に溶融し、次いで、工程1~3を繰り返して、3D物品の作製を終了する。コントローラはまた、作製の一部として、粉末ディスペンサ34およびプリントエンジン4の他の構成要素を動作させることができる。
【0025】
図3Aおよび図3Bは、粉末ビン20内に造形プレート22を含む造形ボックス18の一実施形態の等角図である。粉末ビン20は、Y軸に沿って粉末ビン20の端部から延びる上側クランプレシーバ46を有する開放端44を含む。粉末ビン20はまた、システム2内で搬送するためのローラ50を備えた一対のレール48を有する。レール48およびローラ50は、システム2を通る搬送方向である軸Yに沿って延在する。Yは横方向の搬送方向であり、Xは直交する横方向である。4つの側方クランプレシーバ52は、粉末ビン20の(Y軸に対して)対向する端部にあり、X軸に対して外向きに面する。
【0026】
図4は、造形プレート22を粉末ビン20に固定するためのラッチ54を強調するための造形ボックス18の一部分の等角図である。粉末ビン20は、作製および冷却プロセス中に造形プレート22を固定し、その下限を提供する4つの下側ラッチ54を含む。下側ラッチ54は、造形プレート22に係合するための上面56を個々に有する。下側ラッチ54は、Y軸に平行な回転軸を有するヒンジ58の周りに個々に回転可能に取り付けられる。
【0027】
図5は、バルク粉末除去装置8内に回転可能に取り付けられた回転フレーム60の等角図である。回転フレーム60は、中心軸62を中心にして最大で完全な360度回転まで回転するように構成される。中心軸62は、Yと平行であり、回転フレーム60の円形断面の略中心である。回転フレーム60は、造形ボックス18を受け入れるための内部レセプタクルキャビティ64を画定する。造形ボックス18は、Y軸に沿って内部レセプタクルキャビティ64内に受け入れられる。図5に示す回転フレーム60の向きは、回転フレーム60の回転「基準(home)」位置である。90度または180度などの回転角度は、基準位置から中心軸62を中心にした時計回りの回転を指す。
【0028】
回転フレーム60は、粉末ビン20の開放端44および上側クランプレシーバ46を係合およびクランプするための上側クランプ66を含む。上側クランプ66と回転フレーム60との間に、垂直軸Zに沿って上側クランプ66を昇降させるためのアクチュエータ68が連結される。上側クランプ66は、開放頂部70を有し、約180度の回転角度で粉末が出ることを可能にする。
【0029】
図6は、回転フレーム60の断面等角図である。軸X、Y、およびZは、図5および図6に関して同じ向きを有する。回転フレーム60は、粉末ビン20の4つの側方クランプレシーバ52と係合および係合解除するために、X軸に沿って伸縮するように構成された4つの側方クランプ72を含む。側方クランプ72と回転フレーム60との間には、側方クランプレシーバ52をX軸に沿って伸縮させるためのアクチュエータ74が連結されている。
【0030】
回転フレーム60は、造形プレート22を係合し、クランプし、変位させるように構成されたクランププレート76を含む。クランププレート76と回転フレーム60との間には、クランププレート76を造形プレート22と係合するように移動させ、造形プレート22を粉末ビン20から取り出すためのリフト装置78(さらなる検討については図8B、8Iを参照)が連結されている。クランププレート76は、造形プレート22の一部を把持するための1つまたは複数の空気圧チャック77を含む。
【0031】
図7は、バルク粉末除去装置8を使用して造形ボックス18からバルク粉末を除去するための方法80の一実施形態のフローチャートである。方法80の前に:(1)プリントエンジン4は、造形プレート22の上面24上に3D物品100を作製した;未溶融粉末は、上面の上方で粉末ビン20内で3D物品を取り囲む。(2)搬送装置は、造形ボックス18を冷却ステーションに搬送し、造形ボックス18の内容物が冷却される時間が経過した。
【0032】
82によれば、搬送装置12は、造形ボックス18を回転フレーム60の内部レセプタクルキャビティ64に搬送する(Y軸に沿ってブロック矢印83によって示される移動の方向)。クランプ(66、72、76)のいずれかが造形ボックス18の一部に係合する前の造形ボックス18を含む回転フレーム60の、図8AはYZ側断面図であり、図8BはXZ側断面図である。したがって、クランプ(66、72、76)は、それらの収縮状態にある。
【0033】
84によれば、アクチュエータ68を収縮させて上側クランプ66を下降させ、粉末ビン20の開放端44および上側クランプレシーバ46と係合させる。図8Cは、工程84を示すYZ平面を通る側断面図である(ブロック矢印85によって示される移動の方向)。次いで、上側クランプ66は、造形ボックス18に垂直クランプ力を加える。
【0034】
86によれば、アクチュエータ74は、X軸に沿って内向きに拡張されて、側方クランプ72を側方クランプレシーバ52と係合させる。図8Dは、工程86を示す等角断面図である。工程84および86の後、造形ボックス18は、垂直および横方向にクランプされ、制止される。
【0035】
88によれば、リフト装置78は、クランププレート76を上昇させ、これは造形プレート22に係合してクランプする。図8Eは、工程88を示す、X平面に平行に水平切断された側断面図である。上方への移動は、造形プレート22を下側ラッチ54から持ち上げ、造形プレート22は、クランププレート76の一部である少なくとも1つの空気圧チャック77(図6)でクランプされる。
【0036】
90によれば、粉末ビン20および造形プレート22が回転フレーム60に別々にクランプされている間に、回転フレーム60が180度回転される。図8Fは、工程90を示すXZ側断面図である。粉末ビン20は、造形プレート22の反対側の端部で開放されているので、未溶融粉末の大部分は、垂直下向きに落下し、回転フレーム60の下方のバルク粉末除去装置8の捕捉部に入る。また、回転フレーム60の180度反転位置では、ラッチ54は内向きに回転し、工程92において造形プレート22を取り出すことができる。
【0037】
92によれば、リフト装置は、クランププレート76を上昇させ、粉末ビン20から造形プレート22を取り出す。これは、粉末ビン20からの造形プレート22の振動防止を提供するための重要な工程である。図8Gは、工程92を示すXZ側断面図であり、リフト装置78は、クランププレート76を持ち上げて造形プレート22を取り出す。
【0038】
図8Hは、クランププレート76に連結された造形プレート22に連結されている未溶融粉末が付着した3D物品100を含む分離された部品を示す概略側断面図である。3D物品100は、粉末ビン20の内面104と3D物品100との間に間隙102を有して作製されている。
【0039】
図8Iは、粉末ビン20、造形プレート22、およびクランププレート76の等角図である。図8G、8H、および8Iはすべて、造形プレート22が粉末ビン20から取り出され、したがって造形プレート22が粉末ビン20から機械的に分離される、工程92に対応する。ワイヤロープアイソレータ106はまた、クランププレート76を回転フレーム60に機械的に連結する。したがって、クランププレート76は、粉末ビン20からおよび回転フレーム60から振動的に隔離される。ワイヤロープアイソレータ106は、X軸に沿ってより高い剛性Kを有し、Y軸に沿ってより低い剛性K=0.5Kを有し、Z軸に沿ってより低い剛性K=0.5Kを有する。
【0040】
クランププレート76には2つの攪拌装置108が取り付けられている。図示の実施形態では、撹拌装置108は、偏心ウェイトに連結されたモータを個々に含む。モータは、X軸と位置合わせされた回転軸を有する。主振動力方向は、垂直Z軸(造形プレートの上面24に垂直)に沿う。二次振動力方向は、上面24に平行なY軸に沿う。
【0041】
94によれば、撹拌装置108の一方または両方を作動させて、未溶融粉末の除去を促進し、強化する。造形プレートクランプは粉末ビン20および回転フレーム60から振動隔離されているので、振動エネルギーのほぼすべてが伝達され、さもなければ粉末ビン20および/または回転フレーム60を振動させるであろう無駄なエネルギーを最小限に抑えて粉末を除去するために利用される。
【0042】
96によれば、撹拌装置108の動作と同時に、回転フレームは図8Gの位置から前後に回転する。図8Jは、中心軸62(図5)の周りのこの揺動回転運動を示す。この揺動運動は、未溶融粉末の除去をさらに促進し、強化する。例示的な実施形態では、揺動運動は、Y軸の周りで図8Gの位置からプラスマイナス90度(または図8Bの位置から90~270度の間)である。
【0043】
上述の特定の実施形態およびその適用は、例示のみを目的としており、以下の特許請求の範囲によって包含される修正および変形を排除するものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J