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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】マイクロソーのバランス調整システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/12 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61C3/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023514839
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021074231
(87)【国際公開番号】W WO2022049178
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】20194548.2
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517313109
【氏名又は名称】ビエン - エア ホールディング ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モシマン、サミュエル
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03642002(US,A)
【文献】特開2001-009632(JP,A)
【文献】特開2004-098282(JP,A)
【文献】特開2013-236959(JP,A)
【文献】米国特許第06406280(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0066032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断工具(3)用の伝達モジュール(2)を備えたハンドピース(4)と、該ハンドピース(4)に取り外し可能に接続されたモータ(10)とを備える、外科用または歯科用の切断装置(1)であって、前記伝達モジュール(2)は、
前記モータ(10)によって回転が設定されるように構成されたモータ連結部と、
前記モータ(10)の回転運動を、偏心体(23)を備えた回転伝達シャフト(22)を介してブレードホルダー(27)の第1の直線往復運動(M1)に変換する運動チェーンと
を備える、前記切断装置(1)において、
前記伝達モジュール(2)は、前記ブレードホルダー(27)の前記第1の直線往復運動(M1)と同期し、前記第1の直線往復運動(M1)とは反対方向の第2の直線往復運動(M2)に従って動くように配置されたカウンターマス(5)をさらに備え
前記運動チェーンは、前記偏心体(23)の第1の部分(231)に取り付けられた、前記ブレードホルダー(27)の第1の駆動フィンガー(241)、ならびに前記偏心体(23)の第2の部分(232)に取り付けられた、前記カウンターマス(5)の第2の駆動フィンガー(242)を備えることを特徴とする、外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項2】
前記偏心体(23)は、「V」字形に対称的に配置され、前記ブレードホルダー(27)の前記第1の駆動フィンガー(241)は、前記偏心体(23)の前記第1の部分(231)の周りの第1の一連の軸受(251)に取り付けられ、前記ブレードホルダー(27)の前記第2の駆動フィンガー(242)は、前記偏心体(23)の前記第2の部分(232)の周りの第2の一連の軸受(252)に取り付けられている、請求項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項3】
前記カウンターマス(5)の幾何学的形状は、前記切断工具(3)および前記ブレードホルダー(27)の幾何学的形状に適合されている、請求項1または請求項2に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項4】
前記カウンターマス(5)は、前記カウンターマス(5)に形成された少なくとも1つのガイド穴(52)に挿入された少なくとも1つの軸方向ガイド要素(26)によって、前記ブレードホルダー(27)および前記切断工具(3)の長手方向変位の方向にベクトル的に対応する第1の伝達軸(A-A)に沿って軸方向に案内される、請求項1~のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項5】
前記軸方向ガイド要素(26)は、前記モータ(1)に接続されたフレーム(20)の第1の部分(201)を、前記伝達モジュール(2)の前記ブレードホルダー(27)を支持し、軸方向に案内する、前記フレーム(20)の第2の部分(202)に平行に接続する、第1の軸方向ガイドレール(261)および第2の軸方向ガイドレール(262)によって形成され、前記第1の軸方向ガイドレール(261)および前記第2の軸方向ガイドレール(262)は、前記カウンターマス(5)のそれぞれのガイド穴(52)に挿入されている、請求項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項6】
前記伝達モジュール(2)は、前記カウンターマス(5)用の冷却装置(7)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項7】
前記第1の軸方向ガイドレール(261)は、第1の一体型冷却ダクト(2610)を備える、および/または前記第2の軸方向ガイドレール(262)は、第2の一体型冷却ダクト(2620)を備えることを特徴とする、請求項に従属する場合の請求項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項8】
前記伝達モジュール(2)は、前記モータ(10)に取り外し可能に接続され、前記カウンターマス(5)の重量は、前記伝達モジュール(2)の前記モータ(10)への接続解除力(Fd)、前記切断工具(3)の移動長(D)、および前記切断工具(3)の往復運動の揺動の周波数(f)の関数として、前記ブレードホルダー(27)および前記切断工具(3)によって形成されるアセンブリの合計重量に関連して定義される最小値よりも大きくなるように決定されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項9】
前記カウンターマス(5)の重量は、熱収支によって決定される所定の値よりも小さくなるように決定されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項10】
前記カウンターマス(5)の重量は、前記ブレードホルダー(27)と前記切断工具(3)によって形成されるアセンブリの合計重量の25%~50%の範囲であることを特徴とする、請求項7に従属する場合の請求項のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項11】
前記カウンターマス(5)の密度は、7000kg/m3よりも大きいことを特徴とする、請求項10のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項12】
前記伝達モジュール(2)の前記モータ連結部は、Oリング(111)が挿入される一連の溝(110)を備える、前記モータ(10)の標準的な連結ノーズ(11)と協働する溝付き連結穴(21)からなることを特徴とする、請求項1~1のいずれか一項に記載の外科用または歯科用の切断装置(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の外科用または歯科用切断装置(1)用の伝達モジュール(2)を備えるハンドピース(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用または外科用のマイクロソー、すなわち切断工具を備えたハンドピースの分野に関するものである。より具体的には、本発明は、そのようなマイクロソー用のバランス調整モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソーの直線往復運動を生成する一体型モータを備えた電動ハンドピースが知られており、Strykerの製品「Core Reciprocating Saw」は、約3mmの移動長とモータ速度に応じて毎分10,000~30,000往復の周波数で往復運動を行う往復切断工具を備えたそのようなマイクロソーの一例である。この製品は、現在失効した特許文献1の対象であった。
【0003】
この技術では、モータの回転運動は、伝達軸に対して軸外に向けられたボール軸受に取り付けられたフィンガーを介して、ブレードホルダーの往復直線運動に変換される。
【0004】
この技術の欠点は、ハンドピースの質量中心が周期的に大きく動くため、施術者の手に直接伝達する高レベルの振動が発生することである。また、振動は切断効率を制限し、速度とモータに加えられる電力が増加するとピークに達し、実際、振動が増加するため、電力が増加すると効率が低下する。したがって、切断の精度と速度は、駆動シャフトクランプブレードシステムの質量中心の移動によって制限される。
【0005】
外科分野では、骨を切断するためのソーも知られており、例えば、特許文献2から、これはチェーンソーのように動作し、すなわち砥粒歯を備えた1つまたは複数の可撓性ベルトに基づいており、(例えば、ペアで、固定された高剛性ガイド部品の周りで反対方向に)回転駆動される。しかしながら、この技術は、小さな寸法を含む高精度の操作には適しておらず、切断工具の構成も工具の操作性を大幅に低下させる。
【0006】
依然として外科分野では、例えば、特許文献3に記載されている技術のように、反対の動きで駆動されるいくつかのブレードを使用して振動を補償する技術も知られている。しかしながら、この技術は、実施が比較的複雑であり、工具の作業領域に関しては非常に扱いにくいものである。
【0007】
特許文献4はさらに、低周波の往復運動と非常に高周波の超音波振動の両方が与えられる切断工具を記載している。駆動ピンが配置される斜めの溝を備えた変換要素は、往復運動をそれぞれブレード駆動シリンダおよび共同でカウンターウエイトシリンダに付与することを可能にする。しかしながら、このタイプの工具の欠点は、統合されたバランス調整装置により、モータ部分とブレード駆動装置の部分との間の分離ができないことである。
【0008】
はるかにより古い特許文献5に開示された技術は、モータシャフトと一体のロータに接続された接続ロッドシステムを備え、ロータにカウンターウェイトが設けられた、手術器具に関するものである。このような技術の欠点は、カウンターウェイトがモータ部分に直接組み込まれており、これは、その性能に影響を与え、さらにバランス調整装置のモジュール構成を妨げる。したがって、これらの既知の制約のない技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4,036,236号明細書
【文献】米国特許第5,725,530号明細書
【文献】国際公開第97/10765号
【文献】米国特許出願公開第2015/066032号明細書
【文献】米国特許第3,642,002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、バランス調整が簡単かつ効率的な方法で実行され、ハンドピースからモータ部分を切り離すこともできる、歯科用または外科用の新しいマイクロソーを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、既存の技術と比較して最小限の空間要件で、適合に必要なものが最小限である、歯科用または外科用の新しいマイクロソーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、これらの目的は、切断工具用の伝達モジュールを備えたハンドピースに接続されたモータを備える、外科用または歯科用の切断装置であって、伝達モジュールは、
モータによって回転駆動するように構成されたモータ連結部と、
モータの回転運動を、偏心体を備えた回転伝達シャフトを介してブレードホルダーの第1の直線往復運動に変換する運動チェーンとを備える、切断装置によって達成される。
【0013】
伝達モジュールは、ブレードホルダーの第1の直線往復運動と同期し、第1の直線往復運動とは反対方向の第2の直線往復運動で動くように配置されたカウンターマスをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
提案された解決手段の1つの利点は、複雑なソリューションを同時に実装する必要がなく、ハンドピースと切断工具の作業領域の両方に大幅な追加スペースを作ることなく、振動のレベルを低減することである。
【0015】
提案された解決手段の別の利点は、操作レベルでハンドピースとモータとの間の十分な接続強度と、モータ部分を他の外科用工具と組み合わせて使用するための簡単な分解との両方を保証する伝達変換システムのモジュール構造を提供することである。
【0016】
好ましい一実施形態によれば、伝達モジュールの第1の運動チェーンは、偏心体の第1の部分に取り付けられたブレードホルダー用の第1の駆動フィンガー、ならびに偏心体の第2の部分に取り付けられたカウンターマス用の第2の駆動フィンガーを備える。
【0017】
この解決手段の利点は、フィンガーを2倍にするだけで、かつ効果的に振動を低減せず、むしろ振動を増加させる、寄生振動の原因となり得るカウンターマス用の並列伝達機構を作り出す必要なしに、既存の技術に簡単に統合できることである。
【0018】
さらにより好ましい一実施形態によれば、偏心体は、「V」字形に対称的に配置され、ブレードホルダーの第1の駆動フィンガーは、偏心体の第1の部分の周りの第1の一連の軸受に取り付けられ、ブレードホルダーの第2の駆動フィンガーは、偏心体の第2の部分の周りの第2の一連の軸受に取り付けられている。
【0019】
この解決手段の利点は、伝達運動チェーンで通常の形の偏心体を使用し、一連の軸受に対称的に取り付けられた第2のフィンガーを単に追加して、カウンターマスの逆同期運動を生成できることである。したがって、カウンターマス作動システムの統合は、同じ運動チェーン上で最小限の空間要件で特に簡単に行われる。
【0020】
別の好ましい一実施形態によれば、カウンターマスの幾何学的形状は、切断工具およびブレードホルダーの幾何学的形状に適合され、バランス調整システムの設計に最大の柔軟性を与える。したがって、好ましくは、カウンターマスは、同様に円筒形であるシャフトの形態のブレードホルダーに対応するように円筒形である。
【0021】
別の好ましい設計によれば、カウンターマスは、カウンターマスに作製された少なくとも1つのガイド穴に挿入された少なくとも1つの軸方向ガイド要素によって、ブレードホルダーおよび切断工具の長手方向変位の方向にベクトル的に対応する伝達軸に沿って軸方向に案内される。
【0022】
この解決手段の技術的な利点は、通常はこの方向にも案内されるブレードホルダーによって駆動される切断工具の前後の動きによって発生する振動を可能な限り補償できることである。したがって、振動は同一方向に限定され、干渉する動きを制御する必要がなく、自動平衡動作がより簡単になる。
【0023】
この実施形態に対応するさらにより好ましい一変形例によれば、軸方向ガイド要素は、モータに接続された第1のフレーム部分を、伝達モジュールのブレードホルダーを支持し、軸方向に案内する、第2のフレーム部分に平行に接続する、第1の軸方向ガイドレールおよび第2の軸方向ガイドレールによって形成され、第1の軸方向ガイドレールおよび第2の軸方向ガイドレールは、カウンターマスのそれぞれのガイド穴に挿入される。
【0024】
この変形例の追加の技術的利点は、一方でカウンターマスの案内特性を最大化できることと、他方でブレードホルダー用の連結シューを収容するために中央に空間を空けることができることである。また、レールが同時にカウンターマス用のガイドピンとして、また伝達モジュールのフレーム用の接続要素として機能するという事実により、その実現に必要な部品の数を減らし、したがって製造コストを削減することができる。
【0025】
さらに別の好ましい一実施形態では、本発明に係る外科用または歯科用の切断装置は、伝達モジュールがカウンターマス用の冷却装置も備えることを特徴とする。
【0026】
この解決手段の利点は、システム全体の運動エネルギーが増加したときに摩擦から生じる望ましくない加熱の影響を最小限に抑えることによって、カウンターマスを介して得られる装置のバランス調整を最適化できることである。
【0027】
このような冷却装置を実現するさらにより好ましい一実施形態によれば、第1の軸方向ガイドレールは、第1の一体型冷却ダクトを備える、および/または第2の軸方向ガイドレールは、第2の一体型冷却ダクトを備える。
【0028】
この解決手段の利点は、冷却機構をガイド要素に直接組み合わせることができることであり、これにより、システム全体のサイズが最小化され、したがって直接統合された要素によって実行されるこの追加の技術的冷却機能を実行するための専用部品が不要になり、したがって、他の機能を同時に実行することができる。
【0029】
さらに別の好ましい一実施形態では、伝達モジュールは、モータに取り外し可能に接続され、カウンターマスの重量は、伝達モジュールのモータとの接続解除力、切断工具の移動長、および切断工具の往復運動の揺動の周波数の関数として、ブレードホルダーおよび切断工具の合計重量に関連して定義される最小値よりも大きくなるように決定される。
【0030】
別の好ましい一実施形態では、カウンターマスの重量は、熱収支によって決定される所定の値よりも低くなるように決定される。
【0031】
これら2つの解決手段のそれぞれの1つの利点は、重量が必ずしも切断工具とブレードホルダーによって形成されるアセンブリと同じではないが、好ましくはそれよりも小さいカウンターマスを画定できることである。したがって、このカウンターマスの寸法を縮小し、そのような自動平衡システムの全体寸法を最小化することが可能であると同時に、例えば、実行される操作の機能として使用時の加熱のレベルに対するモータ連結部の信頼性を優先するかどうかに応じて、ニーズに応じたシステムの設計レベルを最大化することができる。
【0032】
したがって、別の特に好ましい一実施形態によれば、カウンターマスの重量は、ブレードホルダーと切断工具によって形成されるアセンブリの合計重量の単純に25%~50%であり、連結の信頼性および使用中の加熱に関して最適である。
【0033】
さらに別の好ましい一実施形態によれば、カウンターマスの密度は、7000kg/m3より大きく、これによりカウンターマスの体積がさらに減少し、したがって所与の重量に対するその嵩が減少し、その結果、摩擦のレベルおよび使用中に発生する加熱が最小限に抑えられる。
【0034】
さらに別の好ましい一実施形態では、伝達モジュールのモータ連結部は、Oリングが挿入される一連の溝を備える、前記モータの標準的な連結ノーズと協働する溝付き穴からなる。
【0035】
伝達モジュールのそのような構成は、任意の標準的な歯科用または外科用マイクロモータの適合を必要とせずに、それとの連結を可能にする。したがって、提案された解決手段は、発生する可能性のある非互換性の問題を解決する。
【0036】
さらに、伝達モジュールは、任意のタイプの通常のマイクロモータと互換性があり、したがって、そのような伝達モジュールを備えるハンドピースは、それらを容易に連結および分離できる「モータ」部品とは別に販売することができるので、本発明は、モータから独立したそのような伝達モジュールを備えたそのようなハンドピースにも関するものでもある。
【0037】
非限定的な例として与えられ、添付の図面によって表される本発明の特定の実施形態の以下の説明から、他の有利な構成が、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る外科用または歯科用切断工具の機能部品、すなわちマイクロモータおよびハンドピース/マイクロソーの側面図を示す。
図2A】歯科または外科用途向けの一般的なマイクロモータの三次元プロファイル図を示す。
図2B】歯科または外科用途向けの一般的なマイクロモータの連結ノーズの矢状断面図を示す。
図3】短いカウンターマスによってバランス調整された伝達モジュールが設けられている、本発明の好ましい一実施形態に係る、外科用または歯科用の切断工具の斜視図である。
図4】カウンターマスが長い、本発明の別の好ましい一実施形態に係る、外科用または歯科用の切断工具用の伝達モジュールの斜視図である。
図5図3の好ましい実施形態に係る、外科用または歯科用切断工具用の伝達モジュールの分解斜視図である。
図6図3および図4に示される伝達モジュールの矢状断面図である。
図7A】前述の図を参照して説明された好ましい実施形態に係る、伝達シャフトと、ブレードホルダーおよびカウンターマスをそれぞれ作動させるための偏心体およびフィンガーの平面図である。
図7B】前述の図を参照して説明された好ましい実施形態に係る、伝達シャフトと、ブレードホルダーおよびカウンターマスをそれぞれ作動させるための偏心体およびフィンガーの矢状断面図である。
図8】長いカウンターマスを備え、一体型冷却機構をさらに備えた、好ましい一実施形態に係る、外科用または歯科用の切断工具用の伝達モジュールの三次元プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明に係る外科用または歯科用切断工具の機能部品の側面図を示し、従来の歯科用ハンドピースと同様に、モータを含む第1の部分と、ハンドピース自体を構成する別の部分、すなわち、歯科医師によって操作される部分とを備える。
【0040】
したがって、図1の右側では、マイクロモータ10と、その連結ノーズ11とを区別することができ、連結ノーズ11は、慣例的に、一連の溝を含み、その中には、この同図の矢印Rによって示される回転運動を伝達するためのOリングが配置される。図2Aは、そのようなマイクロモータ10を斜視図で示しており、これは、連結ノーズの詳細の矢状断面を示す図2Bに見られる一連の溝110に収容されたOリング111が配置された短い連結ノーズ11を有するハンドピース用の通常のマイクロモータ10とあらゆる点で似ている。
【0041】
図1の左側には、ハンドピースハウジング4(すなわち、その外側ケーシング)が見られ、以下に説明する伝達モジュール2を取り囲んでいる。この伝達モジュール2は、ハンドピース4の入口で加えられる回転運動を、この図には示されていない切断工具の往復運動M1に変換することを可能にし、これは、ブレードホルダー27(すなわち、切断工具3を支持する要素)の移動に対応するものとして、以下で「第1の」往復運動M1と呼ばれる。これらの2つの要素は、本発明の好ましい一実施形態に係る伝達および自動平衡機構の概要を示す図3にさらに示されている。
【0042】
ハンドピース4の左端には、加熱を最小限に抑えるように、外科的に治療された領域61に生理学的流体を供給するための統合された灌注チャネル61に対応するフィンが設けられた切断工具3用のクランプ装置6が示されている。このエリアの。例えば出願人の欧州特許第2316356号明細書に記載されているように、切断工具を伝達機構に連結する解決手段は、例えば、本発明の範囲内で切断工具3を取り付けるのに非常に適している可能性があり、このため、切断工具3をハンドピース4の伝達モジュール2に取り付けるこれらの態様に関して、以下ではさらなる詳細は提供されない。
【0043】
このように提案されたモジュール構造は、マイクロモータ10に対して取り外し可能なマイクロソーを形成するための切断工具3を支持するハンドピース4を備えており、したがって、一方では、同じ外科用マイクロモータ10をハンドピース4と組み合わせて使用するだけでなく、病院または医療行為で利用可能な他の機械式ハンドピース(例えば、インプラント用コントラアングル)と組み合わせて使用する可能性を提供し、他方では、ハンドピース4のすべての要素(特に、灌注液と接触し、したがって患者と間接的に接触する構成要素)のより効率的な洗浄、除染、および滅菌プロセスを保証することが可能になる。実際、ハンドピース4をモータから接続解除する可能性により、ハンドピース4のより良い手動洗浄、または洗浄機または熱消毒器で洗浄する際の専用器具の使用が可能になる。
【0044】
図3は、本発明の好ましい一実施形態に係る伝達機構をより詳細に示しており、使用されるカウンターマス5は、短いカウンターマス5Bであり、したがって、その目的は、自動平衡を達成するために摩擦および過剰な熱の発生を最小限に抑えることである。それは、ハンドピース4に組み付けられたマイクロモータ10から構成される完全なアセンブリの三次元斜視図からなり、ハンドピース4のケーシングは、内部(特に、点線で囲まれた伝達モジュール2)を見るために取り外されており、所定の移動長Dによる第1の往復運動M1に従って、モータの運動を切断工具3に伝達することを意図している。
【0045】
並進の往復運動による切断工具3は、ブレードホルダー27によって駆動され、外科治療領域に生理学的流体を供給する一体型灌注チャネル61を備えたクランプ装置6を介してブレードホルダーに取り付けられる。モータの回転運動のブレードホルダー27の並進運動への変換は、第1のフィンガー241を介して実行され、その構造は、図7aおよび図7bを用いて詳細に説明され、この目的のために設けられた連結シュー271の第1の挿入穴272に挿入される。連結シュー271とクランプ装置との間のブレードホルダー27の接続部分は、次に円筒体270によって構成される。
【0046】
図3に見ることができるように、伝達モジュールは、マイクロモータ10と接続するための第1の部分201と、U字形でブレードホルダー27の支持を構成する第2の部分202とによって形成されるフレーム20を備える。第1の部分201および第2の部分202は、2つの円筒形ロッドによってそれぞれ互いに接続され、第1の軸方向ガイドレール261および第2の軸方向ガイドレール262を平行に形成し、カウンターマス5(ここでは短いカウンターマス5B)用の軸方向ガイド要素26を構成する。このようにして、フレーム20は、専用部品の追加を必要とせずにカウンターマス5のための案内機能を実行することができる。短いカウンターマス5Bは、カウンターマス5の第2の穴51に挿入される第2のフィンガー242を介して、切断工具の第1の往復運動M1とは逆の第2の往復運動M2で駆動される。
【0047】
したがって、従来技術の技術と比較して、フレームの構造、駆動機構、および特に図6および図7a/7bに示される、特に偏心体23を実質的に修正する必要なしに、フィンガーを2倍にするだけで自動平衡が達成された。伝達シャフト22の軸と同じ軸の周りを回転するこの偏心体は、フィンガーの端部の往復並進運動を生成する一方で、偏心体全体に沿った回転軸に対して一定でない距離のために、フィンガーの下端に向かう方向および下端から離れる方向の動きをそれぞれ引き起こす。
【0048】
図4は、本発明の別の好ましい一実施形態に係る伝達モジュール2の拡大図を示しており、今回は、前の図3に示されている短いカウンターマス5Bの代わりに長いカウンターマス5Aを使用している。この図に示されている他の部分は、図3のものとすべての点で同一であり、詳細には再説明しない。マイクロモータ10を介して入力として供給される回転運動Rからブレードホルダー27の第1の往復運動M1を生成し、長いカウンターマス5Aの第2の往復運動M2を並行して生成することを可能にすることによって、伝達およびバランス調整機構は、前の実施形態のものと同一のままとなる。カウンターマスの第2の往復運動M2は、第1の往復運動M1に対して逆位相で同期され、これらの2つの運動M1およびM2は、それぞれ第1のフィンガー241および第2のフィンガー242を介して常に生成され、その端部のみが見え、残りは長いカウンターマス5Aの下に隠されている。第1のフィンガーS1の運動方向は、常に第2のフィンガーS2の運動方向と反対である。
【0049】
図5は、前の図4の好ましい実施形態に係る、すなわち、長いカウンターマス5Bを有する、外科用または歯科用の切断工具用の伝達モジュール2の分解斜視図である。円筒体270および連結シュー271を見ることができるブレードホルダー27の変位軸に平行に向けられた軸方向ガイドレールの各々のそれぞれの挿入を可能にする2つの長手方向ガイド穴52も有する、駆動フィンガー(すなわち、ブレードホルダー27の第1の駆動フィンガー241と、カウンターマス5Aの第2の駆動フィンガー242)の各々の本体をここで見ることができる。この図では、第1の軸方向ガイドレール261のみが見える。この図は、伝達モジュール2の溝付き連結穴21をさらに強調しており、これは、以下の図に示す、伝達シャフトに回転運動を付与するためにモータの連結ノーズ11と協働することを意図しており、したがって、伝達モジュール2のモータ連結部分の実装のための好ましい構造的変形例を構成している。
【0050】
図3および図4に示される伝達モジュールの好ましい実施形態で使用することができる伝達モジュールの矢状断面図である図6は、ブレードホルダー27を介した切断工具3の運動の第1の長手軸A-Aを示す。マイクロモータ10の回転運動Rは、第1の長手軸A-Aに平行な第2の長手軸B-Bに沿って延在する回転駆動シャフト22に伝達される。この第2の長手軸は、読みやすさのためにこの図には示されていないが、特に以下に説明する図7aおよび図7bで見ることができる。伝達シャフト22は、伝達モジュール2のフレーム20の第1部分201および第2部分202とそれぞれ一体の入力軸受28と出力軸受29との間に回転可能に取り付けられる。また、この回転伝達軸22には、左右対称にV字状に構成された偏心体23が取り付けられている。偏心体23は、第1フィンガー241が取り付けられる第1の部分231であって、その往復運動がブレードホルダー27、およびその結果として切断工具3を駆動する、第1の部分231と、第2のフィンガー242が取り付けられる第2の部分232であって、システムの自動平衡を達成するために、カウンターマス5を駆動するために設けられる、第2の部分232とを備える。この図では、第2のフィンガー242のためにカウンターマス5に配置された第2の挿入穴51がはっきりと見える。偏心体23の回転運動をフィンガーの往復運動に変換できるようにするために、これらのフィンガーの各々の本体には、一連の軸受(すなわち、第1のフィンガー241用の第1の一連の軸受251、および対応して、第2のフィンガー用の第2の一連の軸受252)も設けられる。
【0051】
伝達機構、またはより正確には、入力に加えられた回転運動を並進運動の往復運動に変換することを、図7aおよび図7bを用いて詳細に説明し、図7aおよび図7bは、偏心体とそれに取り付けられたフィンガーを備えた伝達シャフト22の矢状面図および上面図をそれぞれ示す。
【0052】
図7aに見ることができるように、伝達シャフト22は、その軸(すなわち、第2の長手軸B-B)を中心に回転する。それは、フレーム201の第1の部分に対して入力軸受28を介して、伝達モジュール2のフレーム20の第2の部分202に対して出力軸受29を介して、フレーム20に対して回転可能に取り付けられる。その回転中、それは偏心体23を駆動し、第1のフィンガー241が第1の一連の軸受251を介して取り付けられる第1の部分231は、第1の方向S1に第1の往復運動M1を生成するのに対し、第2のフィンガー242が第2の一連の軸受252を介して取り付けられる第2の部分は、同一の振幅を有するが方向は単に反対である(すなわち、第2の方向S2に沿った)第2の往復運動M2を生成する。図7bは、上から見たフィンガーを示しており、内部に見えなくなった軸受を除いて、図示のすべての要素は図7aのものと同じである。この図は、第2の長手軸B-Bに沿ったこれらのフィンガーの各々の並進運動を視覚化することを容易にし、第1のフィンガー241によってブレードホルダー27を介して切断工具3を連結し、第2のフィンガー242を介してカウンターマス5によってバランス調整を実施することがより興味深い理由を説明することが可能になる。実際、切断工具3は、切断工具の端部に配置されるので、連結シューをこの同じ端部、すなわちこれらの図で可能な限り右に配置するのがより自然である。
【0053】
図8は、本発明を実施するための伝達モジュール2の特に好ましい一実施形態を示しており、そのフレーム20には、カウンターマス5用の一体型冷却機構7が設けられている。長いカウンターマス5Bを使用するこの図示された実施形態によれば、これは、提案された切断装置の動作中の可能な限り最も効果的なバランス調整を達成し、この図には示されていないが、回転運動Rが図8の右側に示されている、マイクロモータの連結穴21を介したハンドピース4に対する連結を最良に保証することを目的としている。図示の好ましい変形例によれば、一体型冷却装置7は、一体型冷却ダクトを組み込むことによって、第1のフレーム部分201と第2のフレーム部分202との間の長手方向接続要素(すなわち、軸方向ガイド要素26を平行に形成する円筒ビーム)を有利に使用する。したがって、図8の点線で見ることができるように、第1の軸方向ガイドレール261には第1の一体型冷却ダクト2610が設けられ、同様に、第2の軸方向ガイドレール262には第2の一体型冷却ダクト2620が設けられる。したがって、流体供給ダクト71は、マイクロモータに近いフレームの端部に直接配置することができ、生理学的流体の供給のために直接使用することができ、例えば、特に図3に見られる灌注チャネル61に取って代わる。この図の好ましい実施形態によれば、2つのチャネルが冷却ダクトに使用されるが、そのような構成は十分であるにすぎず、本発明の実装に必須ではないこと、および単一のガイドレールのみを含む軸方向ガイド要素26に一体化された単一の冷却ダクトのみを使用することも考えられることが理解されるであろう。
【0054】
カウンターマス5のガイドレール内部に1つまたは複数の供給チャネルを実現すると、これは灌注管になり、操作レベルで2つの特に興味深い利点を有する。
・灌注液は、カウンターマス5の摩擦ゾーンを局所的に冷却することを可能にし、したがって、図8に示される長いカウンターマスなどのより重いカウンターマスの使用を可能にし、したがって、より長くて重い外科用ブレードの使用を可能にする。
・通常、灌注ラインの接続は、外科医の指に近く、作業領域にも近くなり、誤ってラインを接続解除するリスクも伴うが、内部機構を介した切断工具の灌注は、灌注ラインをブレードホルダーに接続する必要がない。
【0055】
したがって、この解決手段は、外科医の人間工学と患者の安全性を大幅に改善すると同時に、必要に応じて工具を調整する際の柔軟性を高める。
【0056】
さらに、本発明を実施するための好ましい一実施形態によれば、カウンターマス5の重量は、モータとワークピースと手との接続解除力、切断工具3の最大往復周波数、図3に示されるような、切断工具の移動長D、および切断工具3-ブレードホルダー27の質量に依存する最小値と、マイクロソー/ハンドピース4の冷却能力および切断工具の把持直径に依存する最大値との間にある。したがって、カウンターマスの重量は、切断工具と一体で往復運動に駆動されるアセンブリの重量と必ずしも等しくない。
【0057】
これらの制約は、点の力学に関する物理法則に従って具現化された系に準拠したモデル化に従って力学の基礎方程式を取り上げる次式(1)で定式化される。特に、カウンターマス5の質量Mcは、次の式(1)によって定義される限界値よりも大きくなければならない。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

ここで、Msは切断工具3の質量であり、Mpはブレードホルダー27(すなわち、円筒体270と連結シュー271)の質量であり、Fdは接続解除力、δは切断工具3の移動長D、fは往復運動の最大周波数である。
【0058】
上記の式(1)は、切断工具3がモータモジュール(すなわち、マイクロモータ10に対応するワークピース)から、様々な作業状況中に誤って接続解除されないことを保証する。このために、システムの最大加速度が、システムに加えられる力の合計が質量に加速度を掛けた値に等しいことを示す式から計算され、推定される。
【0059】
一方ではブレードホルダー27および切断工具3をモデル化し、他方ではカウンターマス5を質点としてモデル化することは、固体の構成要素が非常に小さな振幅で高い周波数の振動を受けるという仮定によって正当化され、したがって、低周波の動的挙動は、本質的に重心の移動によって与えられる。唯一のアクティブな自由度は、(好ましくは、2つの軸方向ガイドレール261、262によって形成される)軸方向ガイド部材26に沿った長手方向の動きからなるため、考えられる枢動中心に対する重心の位置を考慮する必要がある回転駆動効果はない。
【0060】
したがって、カウンターマス5の質量は、マイクロソーの熱バランスによって画定される限度よりも低い必要があるが、等式(2)が厳密に順守される自動平衡システムを構成する必要はない。

【数5】

【0061】
ガイド要素26(例えば、第1のガイドレール261および伝達軸(すなわち、第2の長手軸B-B)に平行な第2のガイドレール262)上でのカウンターマス5の往復運動によって生成される熱出力は、特に以下の要因に関連する。
(i)マイクロソーキャップの外面および材料(ハンドピース4の周囲の対流に本質的に依存する冷却)。
(ii)カウンターマス5の最大直径、したがって、カウンターマス5の重心と往復運動の第1の伝達フィンガー241との間のレバーアームの最大直径を決定する、マイクロソーのハンドルの直径。
(iii)往復運動の周波数fと移動長D。
(iv)カウンターマス5のガイドレール261、262の軸と、伝達シャフト22の第2の長手軸B-Bなどの往復運動の伝達軸との間の距離。
【0062】
したがって、例えば長いカウンターマス5Aなどのより重いカウンターウェイトは、伝達モジュール2を備えるハンドピース4によるマイクロモータモジュール10の保持をより確実にすることを可能にする。しかしながら、これにより、レバーアームの重心と第2の伝達フィンガー242との間のレバーアームが大きくなり、したがって、ハンドピース4の長さを最小限に抑えるために、カウンターマス5が、ハンドル内部の自由空間(すなわち、歯科医が握るその外側ケーシング)のすべてを占有することが好ましい。これは、図3の短いカウンターマス5Bの特定の形状と、図4の長いカウンターマス5Aの特定の形状を説明し、その断面は、ガイド穴を無視すれば、切頭円筒リングに実質的に対応する。したがって、カウンターマス5が長くなればなるほど、その重心はハンドルの中心軸に近づき、他方、カウンターマス5を駆動する第2の伝達フィンガー242の端部は、カウンターマス5に加えられる往復運動の移動長を最大化するために、ハンドピース4の中心から可能な限り離れていることが好ましい。
【0063】
国際規格では、マイクロソーが到達できる最大温度(現在、通常の使用では55℃)が設定されており、したがって、これはカウンターマス5の存在によって生成できる最大熱出力を推定することを可能にし、カウンターマス5は、青銅、銅、鋼、または貴金属および重金属などの金属材料でできており、7,000kg/m3を超える密度を有するようにすることが好ましく、したがって、伝達モジュールの残りの部分(特に、切断工具3自体を駆動するための運動チェーン)に対して大きすぎて扱いにくい体積を必要とせずに、十分な質量を得ることが可能になる。
【0064】
先の図を用いて説明した好ましい実施形態によれば、少なくとも2つのガイドレールによって案内されるカウンターマスを有するという事実により、摩擦および加熱を低減することが可能になる。
【0065】
特に有利な一実施形態によれば、本発明に係るカウンターマス5の質量は、切断工具3/ブレードホルダー27アセンブリの総質量の25%~50%であり、さらに自動平衡による追加の加熱を最小限に抑える。さらにより好ましくは、本発明に係るカウンターマス5の質量は、2.5g~6gであり、切断工具の質量は、1~3グラムである。
【0066】
したがって、本発明によれば、切断工具の質量中心の変位をカウンターマスで相殺する有効な手段が提案され、これは、
動作速度とは無関係であり、
バランス調整されるマイクロソー構成要素の質量および形状への依存を最小限に抑え、
ハンドピースの平均効率(回転運動から往復運動への変換)への影響を最小限に抑え、
軸受の摩耗率への影響を最小限に抑え、
ハンドピースの過熱を発生させず、
図1に示されるように、機械式ハンドピース4(電源を必要としないマイクロソーを形成するモジュール)と、同じく図1に示されるマイクロモータ10などの出力モータとの間のモジュール式の物理的分離を可能にし、30N(3kg)程度の切断力のおかげで、手術用切断工具とモータの接続および接続解除が簡単かつ迅速であることを保証する。
【0067】
説明した好ましい実施形態によれば、カウンターマスと、カウンターマスおよびブレードへの回転運動の「対称」伝達システムの存在により、振動を低減することが可能になる。カウンターマスはブレードと完全な同位相で移動するため、振動の低減は、モータの回転速度とは無関係に保証される。また、カウンターマスを案内することで、伝達チェーンに重い構成要素を追加することによって発生する可能性のある熱および摩耗を回避する。各々の伝達フィンガー用の玉軸受を2倍にすることで、摩耗を減らすことができる。また、モータ投入電力に対する効率の逆依存性(バランス調整されていないシステムでは電力増加に伴い効率が低下する)を小さくすることができ、したがって切断効率を高めることができる。
【0068】
以上、例としていくつかの実施形態のみを説明したが、これらはすべての可能な実施形態の網羅的な説明を意図するものではないことが理解されるであろう。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、記載された手段を均等の手段に置き換えることが考えられることを理解するであろう。
【0069】
さらに、本発明の範囲を逸脱することなく、使用される切断工具およびブレードホルダーの幾何学的形状に応じて、電子装置または電磁気装置を介してカウンターマスの形状を修正することも可能である。このような解決手段を実施するための好ましい一実施形態は、例えば、カウンターマスの2つの部分のうちの1つに配置された(電磁石タイプの)電磁気装置およびカウンターマスの第2の部分に配置された磁石を介して、カウンターマスの2つの部分を接続することである。したがって、電磁石の極性の変化により、カウンターマスの2つの部分を引き合わせる(磁気引力)か、または分離する(磁気反発力)ことが可能になる。より重い切断工具を使用する場合、使用者は、強制的に2つの部品を1つにすることができ(「重い」カウンターマス)、一方、軽い切断工具を使用する場合、使用者は、カウンターマスの2つの部品間に反発力を強いることができ、したがって、より軽いカウンターマスを使用することができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8